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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】放流警報システムおよび点検方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/00 20060101AFI20250310BHJP
   G08B 29/12 20060101ALI20250310BHJP
   G08B 29/16 20060101ALI20250310BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
G08B29/00 Z
G08B29/12
G08B29/16
G08B27/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021089088
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022181884
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 有希
(72)【発明者】
【氏名】中村 充孝
(72)【発明者】
【氏名】江篭 徹也
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-165097(JP,U)
【文献】特開昭55-97694(JP,A)
【文献】特開2020-126672(JP,A)
【文献】特開平9-91582(JP,A)
【文献】特開平1-93299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムを監視する監視装置からの指示に応じて警報装置が警報音を発する放流警報システムであって、
前記警報装置は、
拡声放送を行うためのスピーカと、
前記スピーカからの拡声放送を集音することが可能なマイクロホンと、
マイクロホン点検のスケジュールにしたがって、前記警報音とは異なる拡声放送を前記スピーカを用いて行うとともに、この拡声放送を前記マイクロホンによって集音して点検を行うマイクロホン点検制御部と
を具備する放流警報システム。
【請求項2】
ダムを監視する監視装置からの指示に応じて警報装置が警報音を発する放流警報システムであって、
前記監視装置は、
前記警報装置にマイクロホン点検の指示を行うマイクロホン点検指示部を具備し、
前記警報装置は、
拡声放送を行うためのスピーカと、
前記スピーカからの拡声放送を集音することが可能なマイクロホンと、
前記監視装置からのマイクロホン点検の指示にしたがって、前記警報音とは異なる拡声放送を前記スピーカを用いて行うとともに、この拡声放送を前記マイクロホンによって集音して点検を行うマイクロホン点検制御部と
を具備する放流警報システム。
【請求項3】
前記監視装置は、さらに、
定時点検のスケジュールにしたがって、前記警報装置に定時点検を指示する定時点検指示部を備え、
前記警報装置は、さらに、
前記警報音を発するサイレンと、
前記定時点検の指示にしたがって、前記サイレンに関する点検を行う定時点検制御部と、
前記マイクロホン点検制御部による点検の結果と、前記定時点検制御部による点検の結果を合わせて前記監視装置に報告する報告制御部と、
請求項1または請求項2に記載の放流警報システム。
【請求項4】
前記監視装置は、さらに、
前記拡声放送の点検に用いられる音声データを記憶するデータ記憶部を備え、
前記マイクロホン点検制御部は、前記音声データに基づく拡声放送を行う、
請求項2または請求項3に記載の放流警報システム。
【請求項5】
前記警報装置は、さらに、
前記拡声放送の点検に用いられる音声データを記憶するデータ記憶部を備え、
前記マイクロホン点検制御部は、前記音声データに基づく拡声放送を行う、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放流警報システム。
【請求項6】
ダムを監視する監視装置からの指示にしたがって警報音を発する警報装置における点検方法であって、
マイクロホン点検のスケジュールにしたがって、前記警報音とは異なる拡声放送をスピーカを用いて行う過程と、
前記拡声放送をマイクロホンによって集音して点検を行う過程と
を具備する点検方法。
【請求項7】
ダムを監視する監視装置からの指示に応じて警報装置が警報音を発する放流警報システムにおける点検方法であって、
前記監視装置が、前記警報装置にマイクロホン点検を指示する過程と、
前記警報装置が、前記監視装置からの指示にしたがって、前記警報音とは異なる拡声放送をスピーカを用いて行う過程と、
前記警報装置が、前記拡声放送をマイクロホンによって集音して点検を行う過程と
を具備する点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、放流警報システムおよび点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、放流警報システムは、雨天時のダムの水位上昇などにより、ダム管理所にてダムの放流が決定すると、監視局から警報局への制御信号をトリガとして放流警報が発報され、これにより、警報局から河川周辺にむけて注意を喚起する拡声放送(スピーカ放送)、サイレン吹鳴を行うためのシステムである。
【0003】
放流警報システムは、一般に、監視局(ダム管理所の監視装置)、中継局、警報局(放流警報装置)から成るシステムである。親局である監視局と子局である警報局は、直接、または中継局を経由して、無線、有線、光回線、専用回線を用いて接続されており、その多くが無線で接続される。
【0004】
ところで、放流警報システムは、平常時において、毎日1回の定時点検を実施し、サイレン吹鳴および拡声放送が可能な状態にあるかを点検する必要がある。しかしながら、実際にサイレンの吹鳴を行うと周辺住民への騒音となるため、サイレンを吹鳴させずに点検を行うことが求められる。このため、サイレン吹鳴の点検については、駆動モータの低回転動作によるインバータの故障判定で異常を判定し、拡声放送の点検については、アンプのインピーダンス計測による故障判定で異常を判定する。
【0005】
また、実際にサイレン吹鳴を行う際には、集音マイク(マイクロフォン)を用いて、集音レベルにより、サイレン吹鳴の正常動作の判定(確認)を行う。
【0006】
しかしながら、集音マイクが故障した場合には、サイレン吹鳴の正常動作判定を正しく行うことができず、場合によっては、正常にサイレン吹鳴が行われているにもかかわらず、誤って異常判定を行うことになる。
【0007】
なお、サイレン吹鳴が正常動作していないと判定された場合、サイレン吹鳴に代わる注意喚起のため、拡声放送による疑似音吹鳴が開始される。国電通仕第27号では、サイレン吹鳴に対して、10秒間の無音を検知すると、サイレン吹鳴からスピーカによる疑似音吹鳴に移行することが定められている。したがって、集音マイクが故障すると、正常に動作しているサイレン吹鳴が中止され、疑似音吹鳴が行われる状況に陥る。
【0008】
また、サイレンやスピーカの点検を行うためには、実際に、警報音を発生させ集音マイクを用いた集音レベルの検知により点検することが確実である。しかし、日常的に実施する必要がある定時点検の度に、警報音を発生させる点検は、騒音苦情や誤認識、警報慣れなどの新たな問題が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】”国電通仕第27号 放流警報装置標準仕様書(改訂平成30年9月28日)”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、新たな問題が発生するおそれが少ない、集音マイクを用いた点検を行うことが可能な放流警報システムおよび点検方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の放流警報システムは、ダムを監視する監視装置からの指示に応じて警報装置が警報音を発する放流警報システムであって、警報装置は、スピーカと、マイクロホンと、マイクロホン点検制御部と備える。マイクロホン点検制御部は、マイクロホン点検のスケジュールにしたがって、警報音とは異なる拡声放送をスピーカを用いて行うとともに、この拡声放送をマイクロホンによって集音して点検を行う。
【0012】
また他の実施形態の放流警報システムは、ダムを監視する監視装置からの指示に応じて警報装置が警報音を発する放流警報システムであって、監視装置がマイクロホン点検指示部を備え、警報装置は、スピーカと、マイクロホンと、マイクロホン点検制御部と備える。マイクロホン点検制御部は、監視装置からのマイクロホン点検の指示にしたがって、警報音とは異なる拡声放送をスピーカを用いて行うとともに、この拡声放送をマイクロホンによって集音して点検を行う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】放流警報システムを示す図。
図2】第1の実施形態に係わる警報装置の動作を説明するためのフローチャート。
図3】第1の実施形態に係わる放流警報システムの動作を説明するためのシーケンス図。
図4】第2の実施形態に係わる警報装置の動作を説明するためのフローチャート。
図5】第2の実施形態に係わる放流警報システムの動作を説明するためのシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、一実施形態に係わる放流警報システムについて説明する。
なお、以下では、第1の実施形態と第2の実施形態をそれぞれ例に挙げて説明するが、いずれの実施形態も、初期の設定を変えるだけで同様の構成で実現できることは当業者によって容易に理解できる。このため、以下の説明において、構成については区別することなく説明し、後述する動作以降の説明においては、第1の実施形態と第2の実施形態を区別して説明することにする。
【0015】
放流警報システムは、ダム管理所にてダム上流の降水量やダムの水位などを監視し、ダムの放流に際して、ダム下流域の河川周辺に向けて注意を喚起する警報を発報するものである。
図1に示すように、放流警報システムは、主たる構成要素として、監視装置100、中継装置200、警報装置300を備える。
【0016】
図1では、説明を簡明にするために、中継装置200および警報装置300をそれぞれ1つだけ示しているが、それぞれ複数備えるようにしてもよく、また中継装置200と警報装置300は同数でなくてもよい。
【0017】
また、この実施形態では、テレメータシステムを含む放流警報システムを例に挙げている。テレメータシステムは、例えば河川情報システムや、ダム管理システムにおいて、河川やダム上流の降水量や、河川やダムの水位を観測するために設けられる。
【0018】
監視装置100は、管理者が駐在するダム管理所などに設置される監視局(親局)に相当するものであり、当該放流警報システムの制御中枢であって、警報装置300に対して観測、警報発令(サイレン吹鳴や拡声放送)、点検などの指示、警報装置300にて観測されたデータ(例えば、降水量、水位等)の収集や記録(保存)、上位システムへのデータ転送や指示の受け付け、管理者からの指示の受け付けや映示などを含むデータ出力などを行う。
【0019】
国電通仕第21号方式のもとでは、監視装置100は、例えば10分、15分、30分、または1時間間隔の正定時ごとに、警報装置300が備えるテレメータ37で観測された観測データを収集する。なお、複数の警報装置300が存在する場合、収集に際して監視装置100は(必要に応じて中継装置200を介して)、複数の警報装置300に対して、既定の間隔で一括呼出を実施し、これに対して複数の警報装置300は、順次応答する方式がとられる。
【0020】
監視装置100は、例えば、制御部10、アンテナ11aを備えた無線部11、通信部12、操作卓(又はディスプレイ卓)13、遠隔操作用のディスプレイ卓14、プリンタ15、電源部16、記憶部17を備える。
【0021】
無線部11は、警報装置300と無線通信を行うための無線通信装置であって、警報装置300に対して指示やデータを送信したり、あるいはデータや報告を受信するものである。監視装置100と警報装置300の間で用いられる無線信号は、例えば、70MHz帯/400MHz帯/450MHz帯のいずれかである。
【0022】
通信部12は、例えば、専用の通信網やインターネットなどのネットワークNWを通じて、上位システムと通信するための通信装置であって、データの転送や上記上位システムからの要求や指示を受信する。
【0023】
操作卓(又はディスプレイ卓)13は、ダム管理所の管理者が当該放流警報システムに対して指示を与えたり、設定を行うためのマンマシンインタフェースであって、液晶ディスプレイや、キーボードやマウスなどを備える。
【0024】
遠隔操作用のディスプレイ卓14は、操作卓13と同様に、指示や設定を行うためのマンマシンインタフェースであって、警報装置300を遠隔でコントロールするのに適した入力デバイスや表示装置を備える。
【0025】
プリンタ15は、種々の情報を紙媒体に印刷して出力する。
電源部16は、例えば商用電源から供給される電力を用いて、当該監視装置100の動作電力を供給する。
【0026】
記憶部17は、制御部10の制御プログラムや制御データ、警報装置300から収集した観測データ、この観測データに基づいて解析された解析結果などを記憶する。
【0027】
カードインタフェース17aは、CF(コンパクトフラッシュ(登録商標))カードやSDカードといったフラッシュメモリなどの記憶媒体であるメモリカード17bが着脱され、上記メモリカード17bに対してデータの読み書きを行うためのインタフェースである。カードインタフェース17aおよびメモリカード17bは、データ記憶部の一例である。
【0028】
そして、カードインタフェース17aは、制御部10の制御により、上記メモリカード17bに記録された音声データを読み出し、制御部10に出力する。この音声データは、人の声や合成音声などの音声メッセージなどの他に、点検用楽曲データとして、10秒以上の虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などの音片データ(楽曲データ)が含まれる。
【0029】
制御部10は、当該監視装置100の各部と統括して制御するものであって、プロセッサやメモリを備える。メモリには、記憶部17から読み込んだ制御プログラムや制御データが記憶され、プロセッサが上記制御プログラムを実行して上記制御データにしたがって、種々の制御や処理を行う。すなわち、制御部10は、マイクロホン点検指示部、定時点検指示部の一例である。
【0030】
具体的には、例えば、操作卓13やディスプレイ卓14からの指示や設定の受け付け、それに応じた各部の制御、情報の処理や出力、プリンタ15を通じた情報の出力、警報装置300の遠隔制御、サイレン吹鳴や警報の発報の制御、定時点検の指示、これらのための通信制御、時刻の計時などがある。
【0031】
中継装置200は、監視装置100と警報装置300との間で無線通信を中継するものであって、監視装置100と警報装置300の間で双方向に中継を行う。なお、監視装置100と警報装置300の設置距離が近い場合、中継装置200を介さずに直接無線通信を行う。
【0032】
中継装置200は、制御部20、アンテナ21aおよび21bを備えた無線部21、電源部22を備える。アンテナ21aは、監視装置100との無線通信に適した場所に設置され、アンテナ21bは、警報装置300との無線通信に適した場所に設置される。
【0033】
無線部21は、アンテナ21aを通じて監視装置100から受信した無線信号を増幅して、アンテナ21bより警報装置300に向けて送信するとともに、アンテナ21bを通じて警報装置300から受信した無線信号を増幅して、アンテナ21aより監視装置100に向けて送信する。
【0034】
電源部22は、例えば商用電源から供給される電力を用いて、当該中継装置200の動作電力を供給する。
【0035】
制御部20は、当該中継装置200の各部と統括して制御するものであって、プロセッサやメモリを備える。メモリには、制御プログラムや制御データが記憶され、プロセッサが上記制御プログラムを実行して上記制御データにしたがって、種々の制御や処理を行う。
【0036】
警報装置300は、ダムの下流域の河川周辺に設置される警報局や観測局に相当する子局であって、監視装置100からの指示にしたがって、警報発令(サイレン吹鳴や拡声放送)、種々の観測や観測データの送信、自身の点検を行う。
【0037】
警報装置300は、例えば、制御部30、アンテナ31aを備えた無線部31、スピーカ32aを備えたアンプ部32、サイレン33aを備えたサイレン制御部33、集音マイク34、回転灯35aを備えた回転灯制御部35、表示板36aを備えた表示板制御部36、テレメータ37、電源部38、記憶部39を備える。
【0038】
無線部31は、監視装置100と無線通信を行うための無線通信装置であって、監視装置100から指示やデータを受信したり、あるいはデータや報告を送信するものである。
【0039】
アンプ部32は、制御部30からの指示にしたがって、制御部30から入力されるアナログ音声信号を増幅し、スピーカ32aに出力する。これにより、上記アナログ音声信号は、スピーカ32aから拡声出力され、近隣地域に向けた拡声放送が実現する。
【0040】
サイレン制御部33は、制御部30からの指示にしたがって、サイレン33aが備えるモータを駆動制御する。これにより、サイレン33aは、吹鳴し、近隣地域に向けた警報を発する。
【0041】
集音マイク34は、スピーカ32aから出力される拡声放送や、サイレン33aから発せされる吹鳴音を集音するために耐候性に配慮したマイクロフォンであって、集音によって得たアナログ集音信号は、制御部30に出力される。なお、スピーカ32aやサイレン33aに対応づけて、1つずつ設けるようにしてもよい。
【0042】
回転灯制御部35は、制御部30からの指示にしたがって、回転灯35aを駆動制御するものである。回転灯35aは、警告光を発する光源、この光源が発する光を反射・拡散させる反射鏡、反射鏡を回転させる駆動機構やモータ、光源や反射鏡などを屋外環境から保護するための無色(あるいは有色)の透明カバーを備え、周囲に光を放つことで注意を呼びかける。
【0043】
表示板制御部36は、制御部30からの指示にしたがって、表示板36aにメッセージや図形を表示されるものである。表示板36aは、LEDや電球などの照明部材を平面上に多数整列させた電光掲示板(サインボード)であって、上記照明部材を画素として明滅制御することで、様々な表示を行い、視覚的に情報を提供する。
【0044】
テレメータ37は、設置された環境を観測するセンサであって、観測(検出)結果を観測データとして、制御部30に出力する。上記センサの一例としては、降水量を計測するための雨量計、ダムや河川、湖沼の水位を計測する水位計、温度を計測する温度センサ、大気圧を観測する気圧センサなどが考えられる。図1では、テレメータ37として1つを示しているが、実際には、上述した複数の異なるセンサを設ける。
【0045】
電源部38は、例えば商用電源から供給される電力を用いて、当該警報装置300の動作電力を供給する。
【0046】
記憶部39は、制御部30の制御プログラムや制御データ、テレメータ37が観測した観測データ、自律点検スケジュールデータ、制御部10の処理データ(判定結果)、当該警報装置300に固有に割り当てられた識別データ、チャイム音の音源データ、表示板36aにメッセージや図形を表示するための表示データなどを記憶する。
【0047】
上記自律点検スケジュールデータは、集音マイク34を用いた点検を当該警報装置300が自律的に行うために、点検の実施時間(実施時刻)を定めたデータであって、例えば、定時点検よりも前の時刻が設定される。
【0048】
カードインタフェース39aは、CFカードやSDカードといったフラッシュメモリなどの記憶媒体であるメモリカード39bが着脱され、上記メモリカード39bに対してデータの読み書きを行うためのインタフェースである。カードインタフェース39aおよびメモリカード39bは、データ記憶部の一例である。
【0049】
そして、カードインタフェース39aは、制御部10の制御により、上記メモリカード39bに記録され音声データを読み出し、制御部30に出力する。この音声データは、人の声や合成音声などの音声メッセージなどの他に、点検用楽曲データとして、10秒以上の虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などの音片データ(楽曲データ)が含まれる。
【0050】
制御部30は、当該警報装置300の各部と統括して制御するものであって、プロセッサやメモリを備える。メモリには、記憶部39から読み込んだ制御プログラムや制御データが記憶され、プロセッサが上記制御プログラムを実行して上記制御データにしたがって、種々の制御や処理を行う。すなわち、制御部30は、マイクロホン点検制御部、定時点検制御部、報告制御部の一例である。
【0051】
具体的には、例えば、図示しない操作部や監視装置100からの指示や設定の受け付け、それに応じた各部の制御、サイレン吹鳴や警報の発報の制御、テレメータ37が検出したデータの収集と整理、監視装置100に宛てた報告(情報の伝送制御)、定時点検の実施、通信制御、時刻の計時などがある。
【0052】
なお、制御部30は、音源ボードを備えており、監視装置100から受信したり、あるいは、メモリカード39bに記憶される、音声メッセージのデータや楽曲データ、チャイム音の音源データに基づいて、アナログ音声信号を生成することができる。
【0053】
次に、放流警報システムの動作について説明する。以下の説明では特に、システムの点検に関わる動作について説明する。また、前述したように、第1の実施形態と、第2の実施形態に分けて説明する。
【0054】
[第1の実施形態]
まず、図2を参照して、第1の実施形態に関わる警報装置300における点検と報告の制御動作について説明する。図2は、警報装置300の制御部30によってなされる点検制御機能の制御フローを説明するためのフローチャートである。
【0055】
当該放流警報システムの運用が開始されると、警報装置300においては、制御部30が、いくつかの制御フローを並行して実行するが、その1つが図2に示す制御フローである。図2に示す制御フローは、警報装置300の動作が停止されるか、監視装置100などから警報装置300に対して停止命令があるまで、繰り返し実行される。
【0056】
まず、ステップS201において制御部30は、記憶部39に予め記憶した自律点検スケジュールデータを参照し、現在の時刻と比較して、自律点検の時刻が到来したか否かを判定する。ここで、自律点検の時刻が到来した場合には、ステップS202に移行し、一方、上記時刻が到来していない場合には、再びステップS201に移行して、上記時刻の到来を監視する。
【0057】
ステップS202において制御部30は、自律点検として、集音マイク34を用いた点検を実施し、この点検の結果をマイク点検結果として記憶部39に保存して、ステップS203に移行する。
【0058】
具体的には、制御部30は、メモリカード39bに予め記憶した点検用楽曲データをカードインタフェース39aを通じて読み出し、この点検用楽曲データに基づいて、虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などのアナログ音声信号を生成し、アンプ部32に出力する。
【0059】
アンプ部32は、上記アナログ音声信号を所定の利得で増幅し、スピーカ32aに出力する。これにより、虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などがスピーカ32aより拡声出力される。なお、緊急時などの拡声放送では、放送内容の前後にチャイム音を拡声出力することが定められているが、それととは異なり、上記拡声出力(テスト音の拡声出力)の前後でチャイム音の拡声出力は行わない。
【0060】
一方、集音マイク34は、スピーカ32aの拡声出力を集音し、電気信号に変換して、制御部30に出力する。制御部30は、上記アナログ音声信号の出力のタイミングに合わせて、集音マイク34から入力される電気信号のレベルを検出し、このレベルをマイク点検結果として、上記時刻に対応付けて、記憶部39に保存する。
【0061】
ステップS203において制御部30は、監視装置100から定時点検の実施を指示する制御信号を受信したか否かを判定する。ここで、上記指示を受信した場合には、ステップS204に移行し、一方、上記指示を受信していない場合には、再びステップS203に移行して、上記指示の受信を監視する。
【0062】
具体的には、制御部30は、無線部31が受信信号から復調および復号した情報を監視し、当該警報装置300の識別情報に対応付けられた情報、すなわち、当該警報装置300に宛てて送信された情報に、定時点検の実施を指示する情報が含まれているか否かを判定する。つまり、ステップS203では、監視装置100から警報装置300に対して上記指示が与えられたことを検出する。
【0063】
ステップS204において制御部30は、毎日1回、実施するように定められた定時点検を実施し、この定時点検の結果を記憶部39に保存して、ステップS205に移行する。なお、定時点検の結果は、点検を行った時刻に対応付けて保存する。
【0064】
具体的には、定時点検として、少なくとも、スピーカ32aを用いた拡声放送のスピーカテストと、サイレン33aの吹鳴のサイレンテストを実施する。
【0065】
スピーカテストでは、制御部30が、アンプ部32のアナログ音声信号の出力端におけるインピーダンスを計測し、予め記憶部39に保存された正常基準値の範囲内にあるか否かを判定する。範囲内にあれば、正常と判定し、一方、範囲外であれば、異常と判定する。なお、スピーカ32aとアンプ部32からなるセットが、複数存在する場合には、
サイレンテストでは、制御部30が、サイレン制御部33に指示を与えて、この指示にしたがってサイレン制御部33が内蔵するインバータを制御して、サイレン33aが備えるモータを低回転動作させ、インバータが正常に機能しているか否かを判定する。
【0066】
ここで、サイレン制御部33が回転数を検出し、モータが所定の範囲の回転数で動作している場合には、正常と判定し、一方、範囲外であれば、異常と判定する。なお、ここでいう低回転動作とは、サイレン33aが大きなサイレン音が発することのないレベルの回転数である。
【0067】
ステップS205において制御部30は、ステップS204の定時点検の結果を記憶部39から読み出して参照し、スピーカテストの判定結果が正常(OK)であったか否かを判定する。ここで、スピーカテストが正常(OK)であった場合には、ステップS206に移行し、一方、スピーカテストが異常(NG)であった場合には、ステップS209に移行する。なお、スピーカ32aとアンプ部32からなるセットが、複数存在する場合には、1セットでも異常があれば、ステップS209に移行する。
【0068】
ステップS206において制御部30は、ステップS202のマイク点検結果を記憶部39から読み出して参照し、集音マイク34を用いた点検で、スピーカ32aからの拡声出力が正常な状態であるか否かを判定する。
【0069】
より具体的には、マイク点検結果が示すレベルと、記憶部39が予め記憶する正常レベルの閾値とを比較し、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満でないか否かを判定する。
【0070】
ここで、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満でない場合には、集音マイク34が正常(OK)であることが確認できたとして、ステップS207に移行する。
【0071】
一方、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満である場合には、集音に異常(NG)があることが確認できたとして、ステップS208に移行する。なお、集音マイク34が複数存在する場合には、1つでも異常があれば、ステップS208に移行する。
【0072】
ステップS207において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力と、集音マイク34による集音がともに正常に行えることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS212に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0073】
ステップS208において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力は正常に行えるが、集音マイク34による集音に異常が生じていることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS212に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0074】
ステップS209において制御部30は、ステップS206と同様にして、ステップS202のマイク点検結果を記憶部39から読み出して参照し、集音マイク34を用いた点検で、スピーカ32aからの拡声出力が正常な状態であるか否かを判定する。
【0075】
ここで、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満でない場合には、集音マイク34が正常(OK)であることが確認できたとして、ステップS210に移行し、一方、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満である場合には、集音に異常(NG)があることが確認できたとして、ステップS211に移行する。なお、集音マイク34が複数存在する場合には、1つでも異常があれば、ステップS211に移行する。
【0076】
ステップS210において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力に異常が生じている可能性があるが、集音マイク34による集音は正常であることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS212に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0077】
ステップS211において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力と、集音マイク34による集音に、それぞれ異常が生じている可能性があることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS212に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0078】
ステップS212において制御部30は、ステップS207、ステップS208、ステップS210あるいはステップS211で生成した報告データを記憶部39から読み出して、無線部31を制御して、監視装置100に宛てて上記報告データ(返送信号)を送信し、ステップS201に移行する。
【0079】
次に、図3を参照して、放流警報システムにおける点検と報告のシーケンスについて説明する。図3は、上記シーケンスを説明するためのシーケンス図である。
【0080】
シーケンスS301として警報装置300は、ステップS201で自律点検を実行する時刻が到来したことを検出したことに合わせて、ステップS202の集音マイク34を用いた点検を実行し、聞き心地のよい環境音楽などをスピーカ32aから拡声出力するとともに、集音マイク34を用いた集音を実施する。
【0081】
その後、シーケンスS302として、予め設定された定時点検の時刻が到来すると、監視装置100は、制御部10が無線部11を制御して、警報装置300に宛てて定時点検を実施するように指示する信号を送信する。上記信号には、制御部10によって、警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0082】
シーケンスS303として、上記指示を含む信号を送信した監視装置100は、制御部10が無線部11を制御して、受信信号から得られるデータを監視し、上記警報装置300から報告データの受信の待ち受けを開始する。
【0083】
すなわち、この待ち受け動作は、上記指示を含む信号を送信すると開始され、上記警報装置300から報告データを受信するか、あるいは、この開始から予め設定した時間が経過すると終了する。つまり、監視装置100は、警報装置300からの送信を常に受信できる状態にあるわけではなく、指示を行った後の一定時間の間だけ、受信を待ち受ける仕様となっている。
【0084】
一方、シーケンスS304として、監視装置100から上記信号を受信した警報装置300は、ステップS204の定時点検を実行し、少なくとも、スピーカ32aを用いた拡声放送のスピーカテストと、サイレン33aの吹鳴のサイレンテストを実施する。
【0085】
つづいて、シーケンスS305として、警報装置300は、ステップS205~S211までの判定処理とステップS212の報告データの生成処理を行う。前述したように、上記判定処理では、スピーカ32aによる拡声出力と、集音マイク34による集音について、それぞれ正常/異常が判定され、上記生成処理では、判定結果に基づく報告データが生成される。
【0086】
報告データの生成が完了すると、シーケンスS306として、警報装置300は、制御部30が無線部31を制御して上記報告データを点検結果の報告として、監視装置100に宛てて送信する。
【0087】
これに対して監視装置100は、制御部10が無線部21から報告データを受け取ると、シーケンス307において、無線部21を制御して受信動作を終了させて、シーケンスS308に移行する。
【0088】
シーケンスS308において監視装置100は、警報装置300から受信した報告データを解析し、上記警報装置300の報告データとして、以前に受信した報告データと対応付けて記憶部17に保存するとともに、操作卓13を通じた管理者からの要請に応じて、上記報告データに基づく情報(および/または、上記解析に基づく情報)をディスプレイ卓14の表示装置に映像出力したり、あるいは、プリンタ15を制御して、紙媒体に印刷して表示出力する。
【0089】
以上のように、上記第1の実施形態の放流警報システムでは、警報装置300が監視装置100からの定時点検の指示に先立って、予め集音マイク34を用いた拡声放送の自律点検を実施しておき、上記指示があった場合には、定時点検を実施し、この定時点検と自律点検の両結果に基づいて警報装置300の動作に関する報告データを生成して、監視装置100に報告するようにしている。
【0090】
したがって、上記第1の実施形態の放流警報システムによれば、サイレン吹鳴を行うような状況に陥る前であっても、集音マイク34を点検することができるので、集音マイク34の故障に伴って、サイレンが正常にもかかわらず、正常に動作しているサイレン吹鳴が中止され、サイレン吹鳴から疑似音吹鳴へ移行されることを防止できる。
【0091】
また、集音マイク34を用いた点検は、定時点検に先立って行われて、定時点検の結果報告に合わせて報告することができる。なお、集音マイク34の点検は、警報装置300毎に任意の時刻に設定することができる。
【0092】
また集音マイク34を用いた点検では、通常の拡声放送と異なり、チャイム音を鳴らすことはなく、また虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などを拡声出力するようにしているので、日常的に実施しても、騒音苦情や誤認識、警報慣れなどの新たな問題が発生するおそれが極めて少ない。
【0093】
また集音マイク34を用いた点検では、拡声出力に用いる点検用楽曲データは、警報装置300のメモリカード39bに予め記憶させたものであるため、警報装置300毎に任意の楽曲やメッセージを設定することができ、また監視装置100において限りある記憶容量(あるいは、記憶上限ファイル数)を圧迫することもない。
【0094】
[第2の実施形態]
次に、図4を参照して、第2の実施形態に関わる警報装置300における点検と報告の制御動作について説明する。
図4は、警報装置300の制御部30によってなされる点検制御機能の制御フローを説明するためのフローチャートである。
【0095】
当該放流警報システムの運用が開始されると、警報装置300においては、制御部30が、いくつかの制御フローを並行して実行するが、その1つが図4に示す制御フローである。図4に示す制御フローは、警報装置300の動作が停止されるか、監視装置100などから警報装置300に対して停止命令があるまで、繰り返し実行される。
【0096】
まず、ステップS401において制御部30は、監視装置100から定時点検の実施を指示する制御信号を受信したか否かを判定する。ここで、上記指示を受信した場合には、ステップS402移行し、一方、上記指示を受信していない場合には、再びステップS401に移行して、上記指示の受信を監視する。
【0097】
具体的には、制御部30は、無線部31が受信信号から復調および復号した情報を監視し、当該警報装置300の識別情報に対応付けられた情報、すなわち、当該警報装置300に宛てて送信された情報に、定時点検の実施を指示する情報が含まれているか否かを判定する。つまり、ステップS401では、監視装置100から警報装置300に対して上記指示が与えられたことを検出する。
【0098】
ステップS402において制御部30は、集音マイク34を用いた点検を実施し、この点検の結果をマイク点検結果として記憶部39に保存して、ステップS403に移行する。
【0099】
具体的には、制御部30は、メモリカード39bに予め記憶した点検用楽曲データをカードインタフェース39aを通じて読み出し、この点検用楽曲データに基づいて、虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などのアナログ音声信号を生成し、アンプ部32に出力する。
【0100】
アンプ部32は、上記アナログ音声信号を所定の利得で増幅し、スピーカ32aに出力する。これにより、虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などがスピーカ32aより拡声出力される。なお、緊急時などの拡声放送では、放送内容の前後にチャイム音を拡声出力することが定められているが、それととは異なり、上記拡声出力(テスト音の拡声出力)の前後でチャイム音の拡声出力は行わない。
【0101】
一方、集音マイク34は、スピーカ32aの拡声出力を集音し、電気信号に変換して、制御部30に出力する。制御部30は、上記アナログ音声信号の出力のタイミングに合わせて、集音マイク34から入力される電気信号のレベルを検出し、このレベルをマイク点検結果として、現在の時刻に対応付けて、記憶部39に保存する。
【0102】
ステップS403において制御部30は、毎日1回、実施するように定められた定時点検を実施し、この定時点検の結果を記憶部39に保存して、ステップS404に移行する。なお、定時点検の結果は、点検を行った時刻に対応付けて保存する。
【0103】
具体的には、定時点検として、少なくとも、スピーカ32aを用いた拡声放送のスピーカテストと、サイレン33aの吹鳴のサイレンテストを実施する。
【0104】
スピーカテストでは、制御部30が、アンプ部32のアナログ音声信号の出力端におけるインピーダンスを計測し、予め記憶部39に保存された正常基準値の範囲内にあるか否かを判定する。範囲内にあれば、正常と判定し、一方、範囲外であれば、異常と判定する。なお、スピーカ32aとアンプ部32からなるセットが、複数存在する場合には、各セットについて判定を行う。
【0105】
サイレンテストでは、制御部30が、サイレン制御部33に指示を与えて、この指示にしたがってサイレン制御部33が内蔵するインバータを制御して、サイレン33aが備えるモータを低回転動作させ、インバータが正常に機能しているか否かを判定する。
【0106】
ここで、サイレン制御部33が回転数を検出し、モータが所定の範囲の回転数で動作している場合には、正常と判定し、一方、範囲外であれば、異常と判定する。なお、ここでいう低回転動作とは、サイレン33aが大きなサイレン音が発することのないレベルの回転数である。
【0107】
ステップS404において制御部30は、ステップS403の定時点検の結果を記憶部39から読み出して参照し、スピーカテストの判定結果が正常(OK)であったか否かを判定する。ここで、スピーカテストが正常(OK)であった場合には、ステップS405に移行し、一方、スピーカテストが異常(NG)であった場合には、ステップS408に移行する。なお、スピーカ32aとアンプ部32からなるセットが、複数存在する場合には、1セットでも異常があれば、ステップS408に移行する。
【0108】
ステップS405において制御部30は、ステップS402のマイク点検結果を記憶部39から読み出して参照し、集音マイク34を用いた点検で、スピーカ32aからの拡声出力が正常な状態であるか否かを判定する。
【0109】
より具体的には、マイク点検結果が示すレベルと、記憶部39が予め記憶する正常レベルの閾値とを比較し、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して、上記閾値以上であるか否かを判定する。
【0110】
ここで、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満でない場合には、集音マイク34が正常(OK)であることが確認できたとして、ステップS406に移行する。
【0111】
一方、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満である場合には、集音に異常(NG)があることが確認できたとして、ステップS407に移行する。なお、集音マイク34が複数存在する場合には、1つでも異常があれば、ステップS407に移行する。
【0112】
ステップS406において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力と、集音マイク34による集音がともに正常に行えることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS411に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0113】
ステップS407において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力は正常に行えるが、集音マイク34による集音に異常が生じていることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS411に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0114】
ステップS408において制御部30は、ステップS405と同様にして、ステップS402のマイク点検結果を記憶部39から読み出して参照し、集音マイク34を用いた点検で、スピーカ32aからの拡声出力が正常な状態であるか否かを判定する。
【0115】
ここで、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満でない場合には、集音マイク34が正常(OK)であることが確認できたとして、ステップS409に移行し、一方、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満である場合には、集音に異常(NG)があることが確認できたとして、ステップS410に移行する。なお、集音マイク34が複数存在する場合には、1つでも異常があれば、ステップS410に移行する。
【0116】
ステップS409において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力に異常が生じている可能性があるが、集音マイク34による集音は正常であることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS411に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0117】
ステップS410において制御部30は、スピーカ32aによる拡声出力と、集音マイク34による集音に、それぞれ異常が生じている可能性があることを示す報告データを生成し、この報告データを記憶部39に保存して、ステップS411に移行する。なお、上記報告データには、当該報告データを生成した時刻と、当該警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0118】
ステップS411において制御部30は、ステップS406、ステップS407、ステップS409あるいはステップS410で生成した報告データを記憶部39から読み出して、無線部31を制御して、監視装置100に宛てて上記報告データ(返送信号)を送信し、ステップS401に移行する。
【0119】
次に、図5を参照して、放流警報システムにおける点検と報告のシーケンスについて説明する。図5は、上記シーケンスを説明するためのシーケンス図である。
【0120】
予め設定された定時点検の時刻が到来すると、シーケンスS501として監視装置100は、制御部10が無線部11を制御して、警報装置300に宛てて定時点検を実施するように指示する信号を送信する。上記信号には、制御部10によって、警報装置300を識別するための識別情報が含まれる。
【0121】
上記指示を含む信号を送信した監視装置100は、シーケンスS502として、制御部10が無線部11を制御して、受信信号から得られるデータを監視し、上記警報装置300から報告データの受信の待ち受けを開始する。
【0122】
すなわち、この待ち受け動作は、上記指示を含む信号を送信すると開始され、上記警報装置300から報告データを受信するか、あるいは、この開始から予め設定した時間が経過すると終了する。つまり、監視装置100は、警報装置300からの送信を常に受信できる状態にあるわけではなく、指示を行った後の一定時間の間だけ、受信を待ち受ける仕様となっている。
【0123】
一方、監視装置100から上記信号を受信した警報装置300は、シーケンスS503として、ステップS402の集音マイク34を用いた点検を実行し、聞き心地のよい環境音楽などをスピーカ32aから拡声出力するとともに、集音マイク34を用いた集音を実施する。
【0124】
さらに、警報装置300は、シーケンスS504としてステップS403の定時点検を実行し、少なくとも、スピーカ32aを用いた拡声放送のスピーカテストと、サイレン33aの吹鳴のサイレンテストを実施する。
【0125】
つづいて警報装置300は、シーケンスS505として、ステップS404~S410までの判定処理とステップS411の報告データの生成処理を行う。前述したように、上記判定処理では、スピーカ32aによる拡声出力と、集音マイク34による集音について、それぞれ正常/異常が判定され、上記生成処理では、判定結果に基づく報告データが生成される。
【0126】
報告データの生成が完了すると、警報装置300は、シーケンスS506として、制御部30が無線部31を制御して上記報告データを点検結果の報告として、監視装置100に宛てて送信する。
【0127】
これに対して監視装置100は、制御部10が無線部21から報告データを受け取ると、シーケンス507により無線部21を制御して受信動作を終了させて、シーケンスS508に移行する。
【0128】
シーケンスS508において監視装置100は、警報装置300から受信した報告データを解析し、上記警報装置300の報告データとして、以前に受信した報告データと対応付けて記憶部17に保存するとともに、操作卓13を通じた管理者からの要請に応じて、上記報告データに基づく情報(および/または、上記解析に基づく情報)をディスプレイ卓14の表示装置に映像出力したり、あるいは、プリンタ15を制御して、紙媒体に印刷して表示出力する。
【0129】
以上のように、上記第2の実施形態の放流警報システムでは、警報装置300が監視装置100から定時点検の指示を受けると、集音マイク34を用いた拡声放送の点検を実施するとともに、定時点検を実施し、集音マイクを用いた点検と定時点検の両結果に基づいて警報装置300の動作に関する報告データを生成して、監視装置100に報告するようにしている。
【0130】
したがって、上記第2の実施形態の放流警報システムによれば、サイレン吹鳴を行うような状況に陥る前であっても、集音マイク34を点検することができるので、集音マイク34の故障に伴って、サイレンが正常にもかかわらず、正常に動作しているサイレン吹鳴が中止され、サイレン吹鳴から疑似音吹へ移行されることを防止できる。
【0131】
また、集音マイク34を用いた点検は、定時点検に合わせて行われるので、定時点検の結果報告に合わせて報告することができる。
【0132】
また集音マイク34を用いた点検では、通常の拡声放送と異なり、チャイム音を鳴らすことはなく、また虫の鳴き声や鳥のさえずり、聞き心地のよい環境音楽などを拡声出力するようにしているので、日常的に実施しても、騒音苦情や誤認識、警報慣れなどの新たな問題が発生するおそれが極めて少ない。
【0133】
また集音マイク34を用いた点検では、拡声出力に用いる点検用楽曲データは、警報装置300のメモリカード39bに予め記憶させたものであるため、警報装置300毎に任意の楽曲やメッセージを設定することができ、また監視装置100において限りある記憶容量(あるいは、記憶上限ファイル数)を圧迫することもない。
【0134】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0135】
例えば、上記実施形態では、集音マイク34を用いた点検において用いる点検用楽曲データは、警報装置300のメモリカード39bに予め記憶させるようにしたが、定時点検を行う場合に、監視装置100から警報装置300にアナログ音声信号として無線送信したり、あるいは、データを送信して警報装置300でアナログ音声信号を生成するようにしてもよい。この場合、点検用楽曲データは、監視装置100のメモリカード17bに予め記憶させるようにしてもよい。
【0136】
また第2の実施形態では、警報装置300における集音マイク34を用いた点検を、監視装置100からの定時点検の指示に応じて実施するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、監視装置100は、集音マイク34を用いた点検と定時点検を異なる時間(時刻)に指示するようにしてもよい。
【0137】
また上記実施形態では、集音マイク34を用いた点検について、正常/異常にかかわらず、常に点検結果として報告するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、集音マイク34を用いた点検が異常(あるいは正常)の場合にのみ、点検結果を報告するようにしてもよい。
【0138】
また上記実施形態では、集音マイク34を用いた点検の結果報告を、定時点検の結果報告と合わせて、監視装置100に送信するようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、集音マイク34を用いた点検の結果が得られた場合に、予め設定した時間(時刻)に報告を行ったり、あるいは、異常を検出した場合に、即座に報告を行うようにしてもよい。この場合、監視装置100は、警報装置300からの報告を常に(あるいは予め設定した時間に)受信できるように設定されることはいうまでもない。
【0139】
また上記実施形態では、集音マイク34を用いた点検では、マイク点検結果が示すレベルが10秒以上継続して上記閾値未満でない場合に、集音マイク34が正常であると判定するようにしたが、これに限定されるものではない。警報装置300の設置環境などを考慮して、10秒未満で判定を行うようにしてもよい。これに伴い、点検用楽曲データのデータサイズを10秒未満とすることができる。
【0140】
また上記実施形態では、集音マイク34を用いた点検では、通常の緊急時などの拡声放送において放送内容の前後にチャイム音を拡声出力しないものとして説明した。このための制御として、例えば、制御部30が、拡声放送に際して出力されるチャイム音のアナログ音声信号が、実際には拡声出力されないようにアンプ部32の動作タイミングや利得を制御したり、信号出力の停止制御を行うようにしてもよい。
【0141】
また上記実施形態では、集音マイク34を用いた点検および定時点検について、結果判定を警報装置300で行うものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、集音マイク34を用いた点検と定時点検とのうち、少なくとも一方の点検結果については、監視装置100に送信して、監視装置100の制御部10が判定を行うようにしてもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0142】
10…制御部、11…無線部、11a…アンテナ、12…通信部、13…操作卓、14…ディスプレイ卓、15…プリンタ、16…電源部、17…記憶部、17a…カードインタフェース、17b…メモリカード、20…制御部、21…無線部、21a…アンテナ、21b…アンテナ、22…電源部、30…制御部、31…無線部、31a…アンテナ、32…アンプ部、32a…スピーカ、33…サイレン制御部、33a…サイレン、34…集音マイク、35…回転灯制御部、35a…回転灯、36…表示板制御部、36a…表示板、37…テレメータ、38…電源部、39…記憶部、39a…カードインタフェース、39b…メモリカード、100…監視装置、200…中継装置、300…警報装置。
図1
図2
図3
図4
図5