(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】基板処理装置、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20250310BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2021100477
(22)【出願日】2021-06-16
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝佳
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023165(JP,A)
【文献】特開2002-155381(JP,A)
【文献】特開2002-134460(JP,A)
【文献】特開2014-150135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
H01L 21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理姿勢に保持しながら、前記基板の主面の中心部を通る中心軸線まわりに前記基板を回転させる回転保持ユニットと、
薬液を内部に保持し、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面に接触することによって、内部に保持している前記薬液を前記基板の主面に塗布する薬液塗布部材と、
リンス液を内部に保持し、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面に接触することによって、内部に保持している前記リンス液を前記基板の主面に塗布するリンス液塗布部材であって、前記基板の主面において当該リンス液塗布部材が接触する領域を洗い流すリンス液塗布部材と、
前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を支持する支持アームと、
前記支持アームを駆動して、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面の周縁部に接触する周縁位置と、前記基板の主面の中心部に接触する中心位置との間で、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を移動させる塗布部材移動ユニットとを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面において前記薬液塗布部材によって薬液が塗布された領域に前記リンス液塗布部材が接触するように、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を移動させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記塗布部材移動ユニットは、前記回転保持ユニットが前記基板を一回転させるために必要な時間または当該時間よりも長い時間の間に、前記基板の主面において前記薬液塗布部材が接触する接触領域の直径に相当する距離だけ、前記薬液塗布部材を、前記中心軸線を中心とする半径方向に移動させる、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面に沿う方向における前記薬液塗布部材の移動速度と、前記基板の主面に沿う方向における前記リンス液塗布部材の移動速度とが同速度となるように、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を移動させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記塗布部材移動ユニットが、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する間、前記薬液塗布部材の前記移動速度を一定に維持する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記塗布部材移動ユニットは、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する際、前記薬液塗布部材の位置に応じて前記薬液塗布部材の前記移動速度を変化させる、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記支持アームが、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材の両方を支持するアームを有し、
前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面に対して平行に前記アームを移動させるアーム平行移動機構を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記支持アームが、前記薬液塗布部材を支持する第1アームと、前記リンス液塗布部材を支持する第2アームとを有し、
前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面に対して平行に前記第1アームを移動させる第1アーム平行移動機構と、前記基板の主面に対して平行に前記第2アームを移動させる第2アーム平行移動機構とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記薬液塗布部材が、毛細管現象により薬液を内部に保持し、内部に保持している前記薬液を前記基板の主面との接触によって前記基板の主面に供給する薬液ブラシである、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記薬液塗布部材が、0.1μm以上5μm以下の厚さを有する薬液膜を塗布する、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記リンス液塗布部材が、毛細管現象によりリンス液を内部に保持し、内部を保持している前記リンス液を前記基板の主面との接触によって前記基板の主面に供給し、前記基板の主面上の薬液を吸収するリンス液ブラシを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記リンス液塗布部材が、0.1μm以上5μm以下の厚さを有するリンス液膜を塗布する、請求項1~11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記薬液塗布部材に薬液を供給する薬液流路をさらに含み、
前記薬液流路が、前記支持アームの内部に形成された薬液内部流路と、前記支持アームの外部に設けられ前記薬液内部流路に薬液を供給する薬液供給流路とを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記支持アームが、開口部および底部を有する収容凹部であって、前記薬液塗布部材の一部が前記開口部よりも前記底部から離れる方向に突出するように前記薬液塗布部材を収容する収容凹部を有し、
前記薬液内部流路が、前記収容凹部の前記底部で開口し、前記薬液塗布部材に薬液を供給する薬液供給口を有する、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記薬液流路が、0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力で薬液を前記薬液塗布部材に供給する、請求項13または14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記薬液供給流路に設けられ、前記薬液供給流路を開閉する薬液バルブをさらに含み、
前記薬液供給流路が、前記薬液バルブおよび前記薬液内部流路に直接的に接続される下流薬液配管と、前記薬液供給流路に薬液を供給する薬液供給源および前記薬液バルブに直接的に接続される上流薬液配管とを有する、請求項13~15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記リンス液塗布部材にリンス液を供給するリンス液流路をさらに含み、
前記リンス液流路が、前記支持アームの内部に形成されたリンス液内部流路と、前記支持アームの外部に設けられ前記リンス液内部流路にリンス液を供給するリンス液供給流路とを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記リンス液流路が、0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力でリンス液を前記リンス液塗布部材に供給する、請求項17に記載の基板処理装置。
【請求項19】
基板を処理姿勢に保持しながら、前記基板の主面の中心部を通る中心軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転工程と、
回転状態の前記基板の主面に薬液塗布部材を接触させながら、前記基板の主面の周縁部に接触する周縁位置と、前記基板の主面の中心部に接触する中心位置との間で、前記薬液塗布部材を移動させることで前記基板の主面に薬液を塗布する薬液塗布工程と、
前記基板の主面において前記薬液塗布部材によって薬液が塗布された箇所にリンス液塗布部材が接触するように前記リンス液塗布部材を移動させることで前記基板の主面にリンス液を塗布して前記基板の主面から薬液を除去するリンス液塗布工程とを含む、基板処理方法。
【請求項20】
前記薬液塗布工程が、前記基板を一回転させるために必要な時間または当該時間よりも長い時間の間に、前記基板の主面において前記薬液塗布部材が接触する接触領域の直径に相当する距離だけ、前記薬液塗布部材を、前記中心軸線を中心とする半径方向に移動させる工程を含む、請求項19に記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記リンス液塗布工程が、前記基板の主面に沿う方向における前記薬液塗布部材の移動速度と、前記基板の主面に沿う方向における前記リンス液塗布部材の移動速度とが同速度となるように、前記リンス液塗布部材を移動させる工程を含む、請求項19または20に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記薬液塗布工程が、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する間、前記薬液塗布部材の移動速度を一定に維持する工程を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項23】
前記薬液塗布工程が、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する際、前記薬液塗布部材の位置に応じて前記薬液塗布部材
の移動速度を変化させる工程を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置、および、基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、平坦な第1円環状面を有する基板支持部材と、基板の上面にフッ硝酸を供給するフッ硝酸ノズルとを含む基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板支持部材の第1円環状面は、基板の主面上のフッ硝酸と第1円環状面上のフッ硝酸とが、連続した液膜を形成するように基板に接近して配置されている。そのため、基板を低回転速度で回転させた場合であっても、基板の上面の周縁部におけるエッチング液の液溜まりの発生を防止または抑制することができる。したがって、基板の上面上の液溜まりに含まれる失活したエッチング液に起因する、基板の上面の周縁部におけるエッチングレートの低下を抑制し、エッチングの面内均一性の向上を図ることできる。
【0005】
液体の連続流を基板の主面に供給する場合、基板の主面上の着液点から液体が広がるため、液体と基板の主面との接触時間の制御には困難性が生じる。基板の上面の中心部に薬液が接触する時間と基板の上面の周縁部に薬液が接触する時間との差に起因する基板の上面内における処理むらを低減することができれば、薬液による処理の面内均一性を一層向上させることができる。
【0006】
そこで、この発明の1つの目的は、基板の主面上の各位置において薬液が接触する時間を良好に制御することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、基板を処理姿勢に保持しながら、前記基板の主面の中心部を通る中心軸線まわりに前記基板を回転させる回転保持ユニットと、薬液を内部に保持し、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面に接触することによって、内部に保持している前記薬液を前記基板の主面に塗布する薬液塗布部材と、リンス液を内部に保持し、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面に接触することによって、内部に保持している前記リンス液を前記基板の主面に塗布するリンス液塗布部材であって、前記基板の主面において当該リンス液塗布部材が接触する領域を洗い流すリンス液塗布部材と、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を支持する支持アームと、前記支持アームを駆動して、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面の周縁部に接触する周縁位置と、前記基板の主面の中心部に接触する中心位置との間で、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を移動させる塗布部材移動ユニットとを含む、基板処理装置を提供する。
【0008】
この装置によれば、薬液塗布部材を基板の主面に接触させて基板の主面に薬液を塗布(apply)することができる。薬液塗布部材を用いて基板の主面に薬液を塗布すれば、連続流の薬液を基板の主面に供給する場合と比較して、少量の薬液を基板の主面に供給できる。そのため、薬液の流体運動を抑制できるので、基板の主面上において薬液が塗布された領域(薬液塗布領域)から薬液が広がることを抑制できる。
【0009】
また、リンス液塗布部材によって基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域を洗い流すことができる。そのため、基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域から薬液を除去することができる。
また、リンス液塗布部材は、基板の主面との接触によって基板の主面にリンス液を塗布する。そのため、連続流のリンス液を基板の主面に供給する場合と比較して、少量のリンス液を基板の主面に供給できる。そのため、リンス液の流体運動を抑制できるので、基板の主面上においてリンス液が広がることを抑制できる。
【0010】
したがって、基板の主面上においてリンス液塗布部材が接触していない領域からの薬液の意図しない除去を抑制できる。その結果、基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域からの薬液を除去しつつ、基板の主面上においてリンス液塗布部材が接触していない領域から薬液を除去することを抑制できる。したがって、基板の主面の各位置において薬液が接触する時間を良好に制御できる。
【0011】
また、塗布部材移動ユニットは、回転している基板の主面の周縁部に接触する周縁位置と、基板の主面の中心部に接触する中心位置との間で、薬液塗布部材およびリンス液塗布部材を移動させることができる。そのため、基板を回転させながら、薬液塗布領域にリンス液塗布部材が接触するように薬液塗布部材およびリンス液塗布部材を移動させることで、薬液塗布部材によって基板の主面の所望の領域に薬液を塗布しつつ、基板の主面に塗布された薬液をリンス液塗布部材によって除去できる。そうすることで、薬液の連続流を基板の主面に供給する場合と比較して基板の主面の各位置において薬液が接触する時間を一層良好に制御できる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記塗布部材移動ユニットは、前記回転保持ユニットが前記基板を一回転させるために必要な時間または当該時間よりも長い時間の間に、前記基板の主面において前記薬液塗布部材が接触する接触領域の直径に相当する距離だけ、前記薬液塗布部材を、前記中心軸線を中心とする半径方向に移動させる。
この構成によれば、接触領域の直径に相当する距離だけ半径方向に薬液塗布部材が移動する間に、基板が少なくとも一回転する。そのため、半径方向において中心軸線から或る距離の位置での薬液塗布部材の接触が開始してから薬液塗布部材が基板の主面上の当該位置を通り過ぎるまでの間に、基板の主面上の当該位置における薬液の塗布が回転方向の全周において完了する。したがって、周縁位置および中心位置の間で薬液塗布部材が移動させる際に、基板の主面において一度も薬液が塗布されない領域が発生すること抑制できる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面に沿う方向における前記薬液塗布部材の移動速度と、前記基板の主面に沿う方向における前記リンス液塗布部材の移動速度とが同速度となるように、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材を移動させる。
そのため、薬液塗布部材の移動速度を調整することで、薬液が基板の主面に接触している時間を調整することができる。詳しくは、薬液塗布部材の移動速度を高くすると薬液が基板の主面に接触している時間を短くすることができる。逆に、薬液塗布部材の移動速度を低くすると薬液が基板の主面に接触している時間を長くすることができる。したがって、薬液塗布部材の移動速度を制御することによって、基板の主面の各位置において薬液が接触する時間を良好に制御できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記塗布部材移動ユニットが、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する間、前記薬液塗布部材の前記移動速度を一定に維持する。
そのため、基板の主面上の各位置において薬液が塗布されてからリンス液によって薬液が除去されるまでの時間のばらつきを低減できる。すなわち、基板の主面の各位置において薬液が基板の主面に接触している時間のばらつきを低減できる。したがって、薬液による処理の面内均一性を向上できる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記塗布部材移動ユニットは、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する際、前記薬液塗布部材の位置に応じて前記薬液塗布部材の前記移動速度を変化させる。そのため、薬液塗布部材の移動速度の変化に応じて基板の主面の薬液による処理の度合を変化させることができる。
詳しくは、基板の主面において薬液塗布部材が高速度で移動した領域では、薬液による処理の進行を抑制でき、基板の主面において薬液塗布部材が低速度で移動した領域では、薬液による処理の進行を促進できる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記支持アームが、前記薬液塗布部材および前記リンス液塗布部材の両方を支持するアームを有する。そして、前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面に対して平行に前記アームを移動させるアーム平行移動機構を有する。
すなわち、薬液塗布部材およびリンス液塗布部材が単一のアームに共通に支持されており、アームが、単一のアーム平行移動機構によって基板の主面に対して平行に移動される。そのため、薬液塗布部材およびリンス液塗布部材が互いに異なる駆動機構によって移動される構成と比較して、薬液塗布部材とリンス液塗布部材との距離を一定に保ちながら、薬液塗布部材およびリンス液塗布部材を同じ移動速度で移動させ易い。そのため、薬液塗布部材の移動速度を調整することで、薬液が基板の主面に接触している時間を調整することができる。
【0017】
特に、リンス液塗布部材の移動軌跡が薬液塗布部材の移動軌跡と重なるように薬液塗布部材およびリンス液塗布部材を移動させれば、半径方向における薬液塗布部材とリンス液塗布部材との間の距離を一定に保ち易い。そのため、基板の主面の各位置における薬液が接触する時間を制御し易い。
この発明の一実施形態では、前記支持アームが、前記薬液塗布部材を支持する第1アームと、前記リンス液塗布部材を支持する第2アームとを有する。そして、前記塗布部材移動ユニットが、前記基板の主面に対して平行に前記第1アームを移動させる第1アーム平行移動機構と、前記基板の主面に対して平行に前記第2アームを移動させる第2アーム平行移動機構とを有する。
【0018】
すなわち、薬液塗布部材およびリンス液塗布部材が、第1アームおよび第2アームのそれぞれに支持されており、第1アームおよび第2アームが互いに異なる機構によって移動される。そのため、薬液塗布部材とリンス液塗布部材との距離を適宜変更でき、かつ、薬液塗布部材の移動速度およびリンス液塗布部材の移動速度を適宜変更することができる。その一方で、第1アームおよび第2アームを同じ速度で移動させることもできる。第1アームおよび第2アームを同じ速度で移動させれば、薬液塗布部材とリンス液塗布部材との距離を一定に保ち易い。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記薬液塗布部材が、毛細管現象により薬液を内部に保持し、内部に保持している前記薬液を前記基板の主面との接触によって前記基板の主面に供給する薬液ブラシである。
薬液ブラシは、基板の主面と接触することによって外力を受けて、薬液ブラシの内部に保持されている(溜められている)薬液を放出する。そのため、連続流の薬液を基板の主面に供給する場合と比較して、非常に少量の薬液を基板の主面に塗布することができる。そのため、基板の主面上において薬液ブラシによって薬液が塗布された位置から薬液が移動することを抑制できる。
【0020】
薬液塗布部材は、0.1μm以上5μm以下の厚さを有する薬液膜を塗布できることが好ましい。0.1μm以上5μm以下の厚さは、薬液の境界層以下の厚さである。そのため、薬液膜を構成する薬液の、流体としての挙動を効果的に制限できる。これにより、基板の主面において薬液塗布部材が接触する領域に薬液を滞留させることができる。
この発明の一実施形態では、前記リンス液塗布部材が、毛細管現象によりリンス液を内部に保持し、内部を保持している前記リンス液を前記基板の主面との接触によって前記基板の主面に供給し、前記基板の主面上の薬液を吸収するリンス液ブラシを有する。
【0021】
リンス液ブラシは、基板の主面と接触することによって外力を受けて、リンス液ブラシの内部に保持されている(溜められている)リンス液を放出する。そのため、連続流のリンス液を基板の主面に供給する場合と比較して、非常に少量のリンス液を基板の主面に塗布することができる。そのため、基板の主面上をリンス液が流れることを抑制できる。
リンス液塗布部材は、0.1μm以上5μm以下の厚さを有するリンス液膜を塗布できることが好ましい。0.1μm以上5μm以下の厚さは、リンス液の境界層以下の厚さである。そのため、リンス液膜を構成するリンス液の、流体としての挙動を効果的に制限できる。これにより、基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域にリンス液を滞留させることができる。
【0022】
さらに、リンス液塗布部材は、基板の主面上の薬液を吸収することができる。リンス液の塗布および薬液の吸収によって、基板の主面上においてリンス液塗布部材が接触する領域をリンス液で洗い流して薬液を除去することができる。したがって、連続流のリンス液を基板の主面に供給することなく、基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域から薬液を選択的に除去することができる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記薬液塗布部材に薬液を供給する薬液流路をさらに含む。前記薬液流路が、前記支持アームの内部に形成された薬液内部流路と、前記支持アームの外部に設けられ前記薬液内部流路に薬液を供給する薬液供給流路とを有する。
支持アームの内部に形成された薬液内部流路から薬液塗布部材に薬液を供給することによって、薬液塗布部材が薬液を保持している状態を安定的に維持することができる。薬液内部流路が0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力で薬液を薬液塗布部材に供給すれば、薬液塗布部材から基板の主面に適切な量の薬液を供給することができる。具体的には、0.1μm以上5μm以下の厚さを有する薬液膜を塗布することができる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記支持アームが、開口部および底部を有する収容凹部であって、前記薬液塗布部材の一部が前記開口部よりも前記底部から離れる方向に突出するように前記薬液塗布部材を収容する収容凹部を有する。前記薬液内部流路が、前記収容凹部の前記底部で開口し、前記薬液塗布部材に薬液を供給する薬液供給口を有する。
この構成によれば、収容凹部の底部で開口する薬液供給口から薬液塗布部材に薬液が供給される。そのため、底部から開口部に向かって、薬液塗布部材内で薬液が拡散する。そのため、薬液塗布部材の全体に薬液を充分に保持させ易い。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記薬液供給流路に設けられ、前記薬液供給流路を開閉する薬液バルブをさらに含む。前記薬液供給流路が、前記薬液バルブおよび前記薬液内部流路に直接的に接続される下流薬液配管と、前記薬液供給流路に薬液を供給する薬液供給源および前記薬液バルブに直接的に接続される上流薬液配管とを有する。
【0026】
この構成によれば、薬液供給流路において、薬液内部流路および薬液供給源の間には、薬液バルブが設けられているが、薬液の流体運動に関連するパラメータを調整するための部材が設けられていない。薬液塗布部材を基板の主面に接触させて基板の主面に薬液を塗布する構成を採用すれば、薬液の流体運動に関連するパラメータを調整するための部材を用いることなく、薬液の流体運動を抑制できる。具体的には、薬液の流量を調整する流量調整バルブ、薬液供給流路内の薬液の温度を調整するヒータ、薬液供給流路内の薬液の温度を測定する温度計等の部材を薬液供給流路に設ける必要がない。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記リンス液塗布部材にリンス液を供給するリンス液流路をさらに含む。前記リンス液流路が、前記支持アームの内部に形成されたリンス液内部流路と、前記支持アームの外部に設けられ前記リンス液内部流路にリンス液を供給するリンス液供給流路とを有する。
支持アームの内部に形成されたリンス液内部流路からリンス液塗布部材にリンス液を供給することによって、リンス液塗布部材がリンス液を保持している状態を安定的に維持することができる。リンス液流路が0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力でリンス液をリンス液塗布部材に供給すれば、リンス液塗布部材から基板の主面に適切な量のリンス液を供給することができる。具体的には、0.1μm以上5μm以下の厚さを有するリンス液膜を塗布することができる。
【0028】
この発明の他の実施形態は、基板を処理姿勢に保持しながら、前記基板の主面の中心部を通る中心軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転工程と、回転状態の前記基板の主面に薬液塗布部材を接触させながら、前記基板の主面の周縁部に接触する周縁位置と、前記基板の主面の中心部に接触する中心位置との間で、前記薬液塗布部材を移動させることで前記基板の主面に薬液を塗布する薬液塗布工程と、前記基板の主面において前記薬液塗布部材によって薬液が塗布された箇所にリンス液塗布部材が接触するように前記リンス液塗布部材を移動させることで前記基板の主面にリンス液を塗布して前記基板の主面から薬液を除去するリンス液塗布工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0029】
この発明の他の実施形態では、前記薬液塗布工程が、前記基板を一回転させるために必要な時間または当該時間よりも長い時間の間に、前記基板の主面において前記薬液塗布部材が接触する接触領域の直径に相当する距離だけ、前記薬液塗布部材を、前記中心軸線を中心とする半径方向に移動させる工程を含む。
この発明の他の実施形態では、前記リンス液塗布工程が、前記基板の主面に沿う方向における前記薬液塗布部材の移動速度と、前記基板の主面に沿う方向における前記リンス液塗布部材の移動速度とが同速度となるように、前記リンス液塗布部材を移動させる工程を含む。
【0030】
この発明の他の実施形態では、前記薬液塗布工程が、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する間、前記薬液塗布部材の移動速度を一定に維持する工程を含む。
この発明の他の実施形態では、前記薬液塗布工程が、前記薬液塗布部材が前記周縁位置および前記中心位置の一方から他方に向けて移動する際、前記薬液塗布部材の位置に応じて前記薬液塗布部材の前記移動速度を変化させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成例を説明するための平面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、前記処理ユニットに備えられているエッチング液塗布部材、リンス液塗布部材、および、これらの周辺の部材の断面図である。
【
図4】
図4は、前記エッチング液塗布部材および前記リンス液塗布部材が基板の上面にエッチング液およびリンス液をそれぞれ塗布しているときの基板の上面の様子について説明するための斜視図である。
【
図5】
図5は、前記エッチング液塗布部材および前記リンス液塗布部材が基板の上面にエッチング液およびリンス液をそれぞれ塗布しているときの基板の上面の様子について説明するための側面図である。
【
図6】
図6は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【
図7A】
図7Aは、前記基板処理装置によるエッチング処理の第1例を説明するための平面図である。
【
図7B】
図7Bは、第1例のエッチング処理を説明するための平面図である。
【
図7C】
図7Cは、第1例のエッチング処理を説明するための平面図である。
【
図8A】
図8Aは、第1例のエッチング処理の変形例について説明するための模式図である。
【
図8B】
図8Bは、第1例のエッチング処理の変形例について説明するための模式図である。
【
図9A】
図9Aは、第1例のエッチング処理をリセス工程に適用した場合における基板の主面の表層部の変化の一例について説明するための模式図であり、エッチング処理前の基板の主面の表層部の状態を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、第1例のエッチング処理をリセス工程に適用した場合における基板の主面の表層部の変化の一例について説明するための模式図であり、エッチング処理後の基板の主面の表層部の状態を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、第1例のエッチング処理をリセス工程に適用した場合における基板の主面の表層部の変化の別の例について説明するための模式図であり、エッチング処理前の基板の主面の表層部の状態を示す図である。
【
図10B】
図10Bは、第1例のエッチング処理をリセス工程に適用した場合における基板の主面の表層部の変化の別の例について説明するための模式図であり、エッチング処理後の基板の主面の表層部の状態を示す図である。
【
図11】
図11は、前記基板処理装置によるエッチング処理の第2例を説明するための模式図である。
【
図12A】
図12Aは、第2例のエッチング処理をウェハシニング工程に適用した場合における基板の厚さの変化の一例について説明するための模式図であり、エッチング処理前の基板の状態を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、第2例のエッチング処理をウェハシニング工程に適用した場合における基板の厚さの変化の一例について説明するための模式図であり、エッチング処理後の基板の状態を示す図である。
【
図13】
図13は、前記基板処理装置の第1変形例について説明するための模式図である。
【
図14A】
図14Aは、前記基板処理装置の第2変形例について説明するための模式図である。
【
図14B】
図14Bは、前記基板処理装置の第2変形例について説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、前記基板処理装置の第3変形例について説明するための模式図である。
【
図16】
図16は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成を説明するための模式図である。
【
図17A】
図17Aは、第2実施形態に係る処理ユニットに備えられているエッチング液塗布部材およびその周辺の部材の断面図である。
【
図17B】
図17Bは、第2実施形態に係る処理ユニットに備えられているリンス液塗布部材およびその周辺の部材の断面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられているエッチング液塗布部材およびリンス液塗布部材が基板の上面にエッチング液およびリンス液をそれぞれ塗布しているときの基板の上面の様子について説明するための斜視図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る基板処理装置によるエッチング処理について説明するため平面図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係る基板処理装置によるエッチング処理について説明するため平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態に係る基板処理装置の構成>
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成例を説明するための平面図である。
基板処理装置1は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状を有する。
【0033】
基板Wは、シリコンウエハ等の基板であり、一対の主面を有する。主面は、凹凸パターンを有するデバイスが形成されたデバイス面であってもよいし、デバイスが形成されていない非デバイス面であってもよい。
基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを備える。
【0034】
搬送ロボットIRは、キャリアCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。
各搬送ロボットIR,CRは、たとえば、いずれも、一対の多関節アームARと、上下に互いに離間するように一対の多関節アームARの先端にそれぞれ設けられた一対のハンドHとを含む多関節アームロボットである。
【0035】
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーを形成している。各処理タワーは、上下方向に積層された複数の処理ユニット2を含む。4つの処理タワーは、ロードポートLPから搬送ロボットIR,CRに向かって延びる搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている。
処理ユニット2は、基板Wを収容するチャンバ4を備えている。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0036】
図2は、処理ユニット2の構成を説明するための模式図である。
処理ユニット2は、基板Wを処理姿勢に保持しながら回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5によって回転されている基板Wの上面に接触することで基板Wの上面に薬液としてのエッチング液を塗布するエッチング液塗布部材6と、スピンチャック5によって回転されている基板Wの上面に接触することで基板Wの上面にリンス液を塗布するリンス液塗布部材7とを含む。エッチング液塗布部材6は、薬液塗布部材の一例である。
【0037】
回転軸線A1は、基板Wの上面の中心部を通り、基板Wの主面に対して直交する中心軸線である。すなわち、回転軸線A1は、鉛直に延びる鉛直軸線である。処理姿勢は、たとえば、
図2に示す基板Wの姿勢であり、基板Wの主面が水平面となる水平姿勢である。
処理ユニット2は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の両方を支持する支持アーム8(アーム)と、支持アーム8を駆動する塗布部材移動ユニット9と、エッチング液塗布部材6にエッチング液を供給すエッチング液流路10と、リンス液塗布部材7にリンス液を供給するリンス液流路11とをさらに含む。エッチング液流路10は、薬液流路の一例である。
【0038】
スピンチャック5は、基板Wの下面に吸着し基板Wを水平な姿勢に保持するスピンベース20と、回転軸線A1に沿って延び、スピンベース20に結合された回転軸21と、回転軸21を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ22とを含む。
スピンベース20は、基板Wの下面に吸着する吸着面20aを有する。吸着面20aは、たとえば、スピンベース20の上面であり、その中央部を回転軸線A1が通る円形状面である。吸着面20aの直径は基板Wの直径よりも小さい。回転軸21の上端部は、スピンベース20に結合されている。
【0039】
スピンベース20および回転軸21には、吸引経路25が挿入されている。吸引経路25は、スピンベース20の吸着面20aの中心から露出する吸引口25aを有する。吸引経路25は、吸引配管26に連結されている。吸引配管26は、真空ポンプ等の吸引装置27に連結されている。吸引装置27は、基板処理装置1の一部を構成していてもよいし、基板処理装置1を設置する施設に備えられたものであってもよい。
【0040】
吸引配管26には、吸引配管26を開閉するための吸引バルブ28が設けられている。吸引バルブ28を開くことによって、スピンベース20の吸着面20aに配置された基板Wが吸引経路25の吸引口25aに吸引される。それによって、基板Wは、吸着面20aに下方から吸着されて、所定の処理姿勢に保持される。
スピンモータ22によって回転軸21が回転されることにより、スピンベース20が回転される。これにより、スピンベース20と共に、基板Wが回転軸線A1まわりに回転される。スピンモータ22は、基板Wを回転軸線A1まわりに回転させる基板回転ユニットの一例である。スピンチャック5は、基板Wを処理姿勢に保持しながら、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる回転保持ユニットの一例である。スピンチャック5は、基板Wを吸着面20aに吸着させながら基板Wを回転させる吸着回転ユニットともいう。
【0041】
エッチング液塗布部材6によって基板Wの上面に塗布されるエッチング液は、たとえば、過酸化水素水(H2O2)、フッ酸(HF)、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)、混酸、塩酸(HCl)、アンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(TMAH液)、アンモニア水過酸化水素水混合液(APM液)のうちの少なくとも1つを含有する。混酸は、リン酸、硝酸、酢酸、および、水の混合液である。混酸中のこれらの成分の比率は、たとえば、リン酸:硝酸:酢酸:水=70:2:10:18(質量パーセント濃度[wt%])である。
【0042】
エッチング液塗布部材6は、毛細管現象によりエッチング液を吸収して内部にエッチング液を保持し(溜め)、外力が作用することで、内部に保持しているエッチング液を放出するエッチング液ブラシである。エッチング液ブラシは、薬液ブラシの一例である。エッチング液塗布部材6は、基板Wの上面と接触することによって外力を受けて、エッチング液を放出する。そのため、エッチング液塗布部材6は、薬液の連続流を基板Wの上面に供給する場合と比較して、基板Wの上面に適切な量の薬液を塗布することができる。
【0043】
エッチング液塗布部材6は、たとえば、多孔質状のスポンジブラシ、または、複数の繊維によって形成された毛束を備えるブラシである。この実施形態では、エッチング液塗布部材6は、略鉛直方向に延びる円柱状のスポンジブラシである。スポンジブラシは、たとえば、PVA(ポリビニルアルコール)ブラシである。エッチング液塗布部材6は、必ずしもブラシである必要はなく、基板Wの上面に接触することによって、内部に保持するエッチング液を基板Wの上面に塗布できる部材であればよい。
【0044】
リンス液塗布部材7によって基板Wの上面に塗布されるリンス液は、たとえば、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する。
リンス液塗布部材7は、毛細管現象によりリンス液を吸収して内部にリンス液を保持し(溜め)、内部に保持しているリンス液を、外力が作用することで放出するリンス液ブラシである。リンス液塗布部材7は、基板Wの上面と接触することによって外力を受けて、リンス液を放出する。そのため、リンス液塗布部材7は、リンス液の連続流を基板Wの上面に供給する場合と比較して、基板Wの上面に適切な量のリンス液を塗布することができる。
【0045】
リンス液塗布部材7は、たとえば、多孔質状のスポンジブラシ、または、複数の繊維によって形成された毛束を備えるブラシである。この実施形態では、リンス液塗布部材7は、略鉛直方向に延びる円柱状のスポンジブラシである。スポンジブラシは、たとえば、PVAブラシである。リンス液塗布部材7は、必ずしもブラシである必要はなく、基板Wの上面に接触することによって、内部に保持するリンス液を基板Wの上面に塗布できる部材であればよい。
【0046】
支持アーム8は、長尺な板状または棒状の部材であり、基板Wの上面と平行になるように(この実施形態では、水平方向に)配置されている。支持アーム8は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を保持するホルダ30と、ホルダ30を支持し塗布部材移動ユニット9から出力される駆動力が伝達されるアーム部31とを含む。ホルダ30は、アーム部31の一端(先端)に設けられている。
【0047】
塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を、基板Wの周縁よりも外側の退避位置と、基板Wの上面の中心部に対向する中心位置との間で基板Wの上面に対して平行に(この実施形態では、水平方向に)移動させる。すなわち、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を、退避位置と、中心位置と、退避位置および中心位置の間の任意の位置とに配置することができる。
【0048】
塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が基板Wの上面に接触する接触位置と、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が基板Wの上面から離間する離間位置との間で基板Wの上面に対する直交方向(この実施形態では、鉛直方向)に移動させる。
塗布部材移動ユニット9は、たとえば、シリンダ機構、ボールねじ機構、リニアモータ機構、および、ラックアンドピニオン機構の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0049】
塗布部材移動ユニット9の構成の詳細は、以下のとおりである。塗布部材移動ユニット9は、基板Wの上面に対して平行に(この実施形態では、水平方向に)支持アーム8を移動させるアーム平行移動機構35(アーム水平移動機構)と、基板Wの上面に対する直交方向(この実施形態では、鉛直方向)に支持アーム8を移動させるアーム直交移動機構36(アーム鉛直移動機構)とを含む。
【0050】
この実施形態では、支持アーム8は、回転軸線A1の平行に延びる回動軸線A2まわりに回動する回動式のアームである。そのため、塗布部材移動ユニット9は、支持アーム8のアーム部31に連結された回動軸37をさらに有し、アーム平行移動機構35は、回動軸37を回動させることで支持アーム8を回動させる。回動軸線A2は、たとえば、回動軸37の中心軸線である。回動軸37は、アーム部31の他端(基端)に連結されている。アーム平行移動機構35は、たとえば、回動軸37を回動させるモータ等の駆動源を有する。
【0051】
アーム直交移動機構36は、回動軸37を昇降させることで支持アーム8を直交方向に移動させる。回動軸37は、支持アーム8を昇降させる昇降軸でもある。アーム直交移動機構36は、たとえば、回転モータ等の駆動源を有する。アーム直交移動機構36は、駆動源の回転を直線運動に変換して回動軸37に伝達する動力伝達機構を有していてもよい。動力伝達機構は、たとえば、ボールねじ機構であるがこれに限られない。動力伝達機構は、ボールねじ機構、リニアモータ機構、ラックアンドピニオン機構またはこれらの機構の組み合わせであってもよい。また、アーム直交移動機構36は、駆動源として、回転モータの代わりに、リニアモータ機構を有していてもよい。
【0052】
エッチング液流路10は、支持アーム8の内部に形成されたエッチング液内部流路40と、支持アーム8の外部に設けられエッチング液内部流路40にエッチング液を供給するエッチング液供給流路41とを有する。エッチング液内部流路40は、薬液内部流路の一例であり、エッチング液供給流路41は、薬液供給流路の一例である。
エッチング液供給流路41は、たとえば、配管(エッチング液供給配管)によって構成されている。処理ユニット2は、エッチング液流路10を開閉するエッチング液バルブ42をさらに含む。エッチング液バルブ42が開かれると、エッチング液塗布部材6は、エッチング液内部流路40から供給されるエッチング液を吸収し、その内部にエッチング液を保持する。エッチング液バルブ42は、薬液バルブの一例である。
【0053】
エッチング液バルブ42は、エッチング液供給流路41(厳密には、エッチング液供給配管)に設けられている。エッチング液供給流路41は、エッチング液バルブ42およびエッチング液内部流路40に直接的に接続される下流エッチング液配管41Aと、エッチング液供給流路41にエッチング液を供給するエッチング液供給源43およびエッチング液バルブ42に直接的に接続される上流エッチング液配管41Bとを有する。下流エッチング液配管41Aは、下流薬液配管の一例であり、上流エッチング液配管41Bは、上流薬液配管の一例である。
【0054】
エッチング液供給源43は、たとえば、基板処理装置1内においてエッチング液を貯留するエッチング液タンクである。エッチング液供給源43は、基板処理装置1が設置される施設に設けられたタンク、または、当該タンクに連結される配管であってもよい。エッチング液供給源43は、薬液供給源の一例である。
リンス液流路11は、支持アーム8の内部に形成されたリンス液内部流路45と、支持アーム8の外部に設けられリンス液内部流路45にリンス液を供給するリンス液供給流路46とを有する。
【0055】
リンス液供給流路46は、たとえば、配管(リンス液供給配管)によって構成されている。処理ユニット2は、リンス液流路11を開閉するリンス液バルブ47をさらに含む。リンス液バルブ47が開かれると、リンス液塗布部材7は、リンス液内部流路45から供給されるリンス液を吸収し、その内部にリンス液を保持する。
リンス液バルブ47は、リンス液供給流路46(厳密には、リンス液供給配管)に設けられている。リンス液供給流路46は、リンス液バルブ47およびリンス液内部流路45に直接的に接続される下流リンス液配管46Aと、リンス液供給流路46にリンス液を供給するリンス液供給源48およびリンス液バルブ47に直接的に接続される上流リンス液配管46Bとを有する。
【0056】
リンス液供給源48は、たとえば、基板処理装置1内においてリンス液を貯留するエッチング液タンクである。リンス液供給源48は、基板処理装置1が設置される施設に設けられたタンク、または、当該タンクに連結される配管であってもよい。
図3は、エッチング液塗布部材6、リンス液塗布部材7、および、これらの周辺の部材の断面図である。
【0057】
支持アーム8のホルダ30は、基板Wの上面から離れる方向(この実施形態では上方)に窪む第1収容凹部50および第2収容凹部60を有する。第1収容凹部50には、エッチング液塗布部材6が収容されている。第2収容凹部60には、リンス液塗布部材7が収容されている。
第1収容凹部50は、第1開口部51および第1底部52を有する。第1収容凹部50は、エッチング液塗布部材6の一部が第1開口部51よりも第1底部52から離れる方向(この実施形態では、下方)に突出するようにエッチング液塗布部材6を収容する。
【0058】
エッチング液塗布部材6は、支持アーム8に対して着脱可能である。たとえば、エッチング液塗布部材6は、第1収容凹部50に下方から収容することで支持アーム8に取り付けられ、第1収容凹部50から下方に引き抜かれることで、支持アーム8から取り外される。この実施形態とは異なり、エッチング液塗布部材6は、支持アーム8に対して取り外しできないようにホルダ30に接着されていてもよい。
【0059】
エッチング液内部流路40は、支持アーム8に形成された第1貫通孔53に挿入されたエッチング液内部配管44によって形成されている。
図3に示す例では、第1貫通孔53が、ホルダ30およびアーム部31の両方に亘って形成されているが、第1貫通孔53は、ホルダ30のみに形成されていてもよい。また、
図3に示す例とは異なり、エッチング液内部配管44が設けられておらず、エッチング液内部流路40は、第1貫通孔53によって形成されていてもよい。
【0060】
エッチング液内部流路40は、第1収容凹部50の第1底部52で開口し、エッチング液塗布部材6にエッチング液を供給するエッチング液供給口40aと、支持アーム8の表面(たとえば、アーム部31の上面)で開口し、エッチング液供給流路41から供給されるエッチング液を取り込むエッチング液取込口40bとを有する。
エッチング液供給口40aからエッチング液塗布部材6にエッチング液を供給することで、エッチング液塗布部材6にエッチング液が染み込む(吸収される)。エッチング液塗布部材6に染み込んだ(吸収された)エッチング液は、第1底部52から第1開口部51に向かって(上方から下方へ向かって)、エッチング液塗布部材6内で拡散する。そのため、たとえば、第1開口部51の近傍においてエッチング液塗布部材6にエッチング液が供給される場合と比較して、エッチング液塗布部材6の全体にエッチング液を充分に保持させ易い。
【0061】
第2収容凹部60は、第2開口部61および第2底部62を有する。第2収容凹部60は、リンス液塗布部材7の一部が第2開口部61よりも第2底部62から離れる方向(この実施形態では、下方)に突出するようにリンス液塗布部材7を収容する。
リンス液塗布部材7は、支持アーム8に対して着脱可能である。たとえば、リンス液塗布部材7は、第2収容凹部60に下方から収容することで支持アーム8に取り付けられ、第2収容凹部60から下方に引き抜かれることで、支持アーム8から取り外される。この実施形態とは異なり、リンス液塗布部材7は、支持アーム8に対して取り外しできないようにホルダ30に接着されていてもよい。
【0062】
リンス液内部流路45は、支持アーム8に形成された第2貫通孔63に挿入されたリンス液内部配管49によって形成されている。
図3に示す例では、第2貫通孔63が、ホルダ30およびアーム部31の両方に亘って形成されているが、第2貫通孔63は、ホルダ30のみに形成されていてもよい。
図3に示す例とは異なり、リンス液内部配管49が設けられておらず、リンス液内部流路45は、第2貫通孔63によって形成されていてもよい。
【0063】
リンス液内部流路45は、第2収容凹部60の第2底部62で開口し、リンス液塗布部材7にエッチング液を供給するリンス液供給口45aと、支持アーム8の表面(たとえば、アーム部31の上面)で開口し、リンス液供給流路46から供給されるリンス液を取り込むリンス液取込口45bとを有する。
リンス液供給口45aからリンス液塗布部材7にリンス液を供給することで、リンス液塗布部材7にリンス液が染み込む(吸収される)。リンス液塗布部材7に染み込んだ(吸収された)リンス液は、第2底部62から第2開口部61に向かってリンス液塗布部材7内で拡散する。そのため、たとえば、第2開口部61の近傍においてリンス液塗布部材7にエッチング液が供給される場合と比較して、リンス液塗布部材7の全体にリンス液を充分に保持させ易い。
【0064】
次に、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7によってエッチング液およびリンス液がそれぞれ基板Wの上面に塗布されるときの、塗布部材移動ユニット9の動作および基板Wの上面の様子について説明する。
図4および
図5は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が基板Wの上面にエッチング液およびリンス液をそれぞれ塗布しているときの基板Wの上面の様子について説明するための模式図である。
図4は、斜視図であり、
図5は、側面図である。
【0065】
塗布部材移動ユニット9は、支持アーム8を駆動して、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を対向位置に配置することができる。対向位置は、基板Wの上面に対向する位置である。塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が対向位置に位置する状態で、支持アーム8を駆動して基板Wの上面に向けてエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることで、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を接触位置に配置することができる。
【0066】
塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が退避位置に位置する状態で、基板Wの上面と同じ高さにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させた後に、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を水平移動させることも可能である。
基板Wの上面と同じ高さとは、たとえば、エッチング液塗布部材6の下端部およびリンス液塗布部材7の下端部が、基板Wの上面と同じ高さまたは基板Wの上面よりも僅かに下方に位置することを意味する。そのようにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることで、基板Wの上面にエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を接触させる(接触位置に配置する)ことも可能である。
【0067】
塗布部材移動ユニット9は、基板Wの上面においてエッチング液塗布部材6によってエッチング液が塗布された領域にリンス液塗布部材7が接触するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を基板Wの上面に沿って水平に移動させることができる。そうすることによって、エッチング液塗布部材6によって塗布されたエッチング液が、リンス液塗布部材7によって基板Wの上面から除去される。
【0068】
具体的には、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の進行方向においてエッチング液塗布部材6がリンス液塗布部材7よりも前側に位置するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させる。言い換えると、塗布部材移動ユニット9は、リンス液塗布部材7がエッチング液塗布部材6に追従するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させる。
【0069】
「リンス液塗布部材7がエッチング液塗布部材6に追従する」とは、エッチング液塗布部材6とリンス液塗布部材7とが回転軸線A1まわりの半径方向RDにおいて同じ側に移動するようにリンス液塗布部材7がエッチング液塗布部材6の後を追って移動することをいう。リンス液塗布部材7の移動軌跡ML2がエッチング液塗布部材6の移動軌跡ML1と一致しない場合も、リンス液塗布部材7をエッチング液塗布部材6に追従させることができる。
【0070】
エッチング液は、エッチング液塗布部材6と基板Wの上面との接触によって基板Wの上面に塗布される。エッチング液塗布部材6を用いて基板Wの上面にエッチング液を塗布すれば、エッチング液の連続流を基板Wの上面に供給する場合と比較して、基板Wの上面に少量のエッチング液を塗布することができる。そのため、エッチング液の流体運動を抑制できるので、基板Wの上面上においてエッチング液が塗布された領域(エッチング液塗布領域PA1)から薬液が広がることを抑制できる。
【0071】
詳しくは、エッチング液塗布部材6が接触位置に配置されると、エッチング液塗布部材6に基板Wから外力が作用する。これにより、エッチング液塗布部材6からエッチング液が染み出して基板Wの上面にエッチング液が塗布(供給)されて、エッチング液膜100が形成される。エッチング液膜100は、薬液膜の一例である。エッチング液塗布部材6が回転状態の基板Wに接触するため、エッチング液は、
図4に示すように、基板Wの回転方向の全域に塗布される。
【0072】
エッチング液塗布部材6から染み出るエッチング液が基板Wに塗布されるため、エッチング液膜100の厚さT1は、エッチング液の連続流によって形成される液膜の厚さよりも非常に小さい。そのため、基板Wの上面上をエッチング液が流れることを抑制できる。エッチング液膜100の厚さT1は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
詳しくは、エッチング液膜100の厚さT1が0.1μm以上5μm以下であれば、エッチング液膜100の厚さT1はエッチング液の境界層以下の厚さである。エッチング液膜100の厚さT1がエッチング液の境界層以下の厚さであれば、エッチング液は粘性の影響を強く受けエッチング液の流速が限りなく零に近づく。このことは、他の流体(たとえば、リンス液)においても同様である。そのため、基板Wの回転速度にかかわらず、エッチング液が基板Wの上面上で流れずに、塗布された位置に留まる。すなわち、基板Wの回転速度が高速回転(たとえば、2000rpm)であっても、エッチング液が基板Wの上面上のエッチング液塗布領域PA1に留まる。このように、エッチング液膜100を構成するエッチング液の、流体としての挙動が効果的に制限される。これにより、エッチング液塗布領域PA1からエッチング液が広がることを抑制でき、エッチング液塗布領域PA1にエッチング液を滞留させることができる。
【0073】
エッチング液バルブ42を開いて、エッチング液内部流路40からエッチング液塗布部材6にエッチング液を供給することによって、エッチング液塗布部材6がエッチング液を保持している状態を安定的に維持することができる。エッチング液膜100を適切な厚さに維持するためには、適切な圧力でエッチング液内部流路40からエッチング液塗布部材6にエッチング液を供給することが好ましい。具体的には、エッチング液内部流路40が0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力でエッチング液をエッチング液塗布部材6に供給すれば、エッチング液塗布部材6から基板Wの上面に適切な量のエッチング液を供給することができる。具体的には、0.1μm以上5μm以下の厚さを有するエッチング液膜100を塗布することができる。
【0074】
なお、0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力でのエッチング液の供給は、エッチング液流路10に特別な部材(たとえば、ポンプ等)を設けることなく、エッチング液バルブ42を開くことによって達成可能である。そのため、エッチング液内部流路40およびエッチング液供給源43の間において、エッチング液供給流路41には、エッチング液バルブ42が設けられていればよい。
【0075】
また、エッチング液塗布部材6を基板Wの上面に接触させて基板Wの上面にエッチング液を塗布する構成を採用すれば、エッチング液の流体運動に関連するパラメータを調整するための部材を用いることなく、エッチング液の流体運動を抑制できる。具体的には、エッチング液の流量を流量調整バルブ、エッチング液供給流路41内のエッチング液の温度を調整するためのヒータ、エッチング液供給流路41内のエッチング液の温度を測定する温度計等の部材をエッチング液供給流路41に設ける必要がない。
【0076】
一方、この実施形態とは異なり、基板Wの上面をエッチングするために連続流のエッチング液をノズルから基板Wの上面に供給する構成では、エッチング液の流量、温度等を制御するための部材、すなわち、流量調整バルブ、温度計等が必要となる。
リンス液は、リンス液塗布部材7と基板Wの上面との接触によって基板Wの上面に塗布される。リンス液塗布部材7を用いて基板Wの上面にリンス液を塗布すれば、リンス液の連続流を基板Wの上面に供給する場合と比較して、基板Wの上面に少量のリンス液を塗布することができる。そのため、リンス液の流体運動を抑制できるので、基板Wの上面上においてリンス液が塗布された領域(リンス液塗布領域PA2)からリンス液が広がることを抑制できる。
【0077】
したがって、基板Wの上面上においてリンス液塗布部材7が接触していない領域からエッチング液を除去することを抑制できる。したがって、基板Wの上面においてリンス液塗布部材7が接触する領域からのエッチング液を除去しつつ、基板Wの上面上においてリンス液塗布部材7が接触していない領域からエッチング液を除去することを抑制できる。したがって、基板Wの主面の各位置においてエッチング液が接触する時間を良好に制御できる。
【0078】
リンス液塗布部材7が接触位置に配置されると、リンス液塗布部材7に基板Wから外力が作用する。これにより、リンス液塗布部材7からリンス液が染み出して基板Wの上面にリンス液が塗布(供給)されて、リンス液膜101が形成される。リンス液塗布部材7が回転状態の基板Wに接触するため、リンス液は、基板Wの回転方向の全域に塗布される。
リンス液塗布部材7から染み出るリンス液が基板Wに塗布されるため、リンス液膜101の厚さT2は、連続流のリンス液によって形成される液膜の厚さよりも非常に小さい。そのため、基板Wの上面上をリンス液が流れることを抑制できる。リンス液膜101の厚さT2は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0079】
詳しくは、リンス液膜101の厚さT2が0.1μm以上5μm以下であれば、リンス液膜101の厚さT2はリンス液の境界層以下の厚さである。そのため、リンス液膜101を構成するリンス液の、流体としての挙動が効果的に制限される。これにより、基板Wの上面においてリンス液が塗布された領域からリンス液が広がることを抑制でき、当該領域にリンス液を滞留させることができる。
【0080】
リンス液バルブ47を開いて、リンス液内部流路45からリンス液塗布部材7にリンス液を供給することによって、リンス液塗布部材7がリンス液を保持している状態を安定的に維持することができる。リンス液膜101を適切な厚さに維持するためには、適切な圧力でリンス液内部流路45からリンス液塗布部材7にリンス液を供給することが好ましい。具体的には、リンス液内部流路45が0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力でリンス液をリンス液塗布部材7に供給すれば、リンス液塗布部材7から基板Wの上面に適切な量のリンス液を供給することができる。具体的には、0.1μm以上5μm以下の厚さを有するリンス液膜101を塗布することができる。
【0081】
なお、0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力でのリンス液の供給は、リンス液流路11に特別な部材(たとえば、ポンプ等)を設けることなく、リンス液バルブ47を開くことによって達成可能である。
そのため、リンス液内部流路45およびリンス液供給源48の間において、リンス液供給流路46には、リンス液バルブ47が設けられていればよく、リンス液の流体運動に関連するパラメータを調整するための部材を設ける必要がない。
【0082】
また、リンス液塗布部材7を基板Wの上面に接触させて基板Wの上面にリンス液を塗布する構成を採用すれば、リンス液の流体運動に関連するパラメータを調整するための部材を用いることなく、リンス液の流体運動を抑制できる。具体的には、流量調整バルブ、ヒータ、温度計等の部材を設ける必要がない。
この実施形態とは異なり、複数のノズルから複数の液体を基板Wの上面にそれぞれ供給する構成であれば、各液体を吐出するノズル毎に、流量調整バルブ、ヒータ、温度計等の部材を設ける必要がある。一方、この実施形態では、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を用いることで、基板Wの上面に液体を供給するための構成を簡素化できる。
【0083】
さらに、リンス液塗布部材7は、エッチング液塗布領域PA1に接触することで、基板Wの上面上のエッチング液を吸収することができる。リンス液の供給およびエッチング液の吸収によって、基板Wの上面上においてリンス液塗布部材7が接触する領域をリンス液で洗い流してエッチング液を除去することができる。したがって、連続流のリンス液を基板Wの上面に供給することなく、基板Wの上面においてリンス液塗布部材7が接触する領域からエッチング液を選択的に除去することができる。
【0084】
この実施形態では、回転している基板Wの上面の周縁部に接触する周縁位置と、基板の主面の中心部に接触する中心位置との間で、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることができる。そのため、エッチング液塗布領域PA1にリンス液塗布部材7が接触するようにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることができる。これにより、エッチング液塗布部材6によって基板Wの上面の所望の領域にエッチング液を塗布しつつ、基板Wの上面に塗布されたエッチング液をリンス液塗布部材7によって除去できる。したがって、連続流のエッチング液を基板Wの上面に供給する場合と比較して、基板Wの上面の各位置においてエッチング液が接触する時間を良好に制御できる。
【0085】
エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7は、単一の支持アーム8に共通に支持されており、支持アーム8が、単一のアーム平行移動機構35によって基板Wの上面に対して平行に移動される。そのため、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が互いに異なる駆動機構によって移動される構成と比較して、エッチング液塗布部材6とリンス液塗布部材7との距離を一定に保ちながら、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を同じ移動速度V1で移動させやすい。そのため、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を調整することで、エッチング液が基板Wの上面に接触している時間を調整することができる。
【0086】
後述する
図7Bに示すように、リンス液塗布部材7の中心と支持アーム8の回動軸線A2との間の距離L1は、エッチング液塗布部材6の中心と回動軸線A2との間の距離L2と同じである。そのため、リンス液塗布部材7は、エッチング液塗布部材6と同じ移動軌跡ML1に沿って、エッチング液塗布部材6に追従しながら水平移動する。言い換えると、リンス液塗布部材7の移動軌跡ML2がエッチング液塗布部材6の移動軌跡ML1と重なるようにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が移動する。
【0087】
リンス液塗布部材7は、エッチング液塗布部材6と同じ移動軌跡ML1に沿って水平移動するため、半径方向RDにおけるエッチング液塗布部材6とリンス液塗布部材7との間の距離を一層一定に保ち易い。そのため、基板Wの上面の各位置におけるエッチング液が接触する時間を制御し易い。
図6は、基板処理装置1の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
【0088】
具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。とくに、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ22、塗布部材移動ユニット9、吸引バルブ28、エッチング液バルブ42、リンス液バルブ47等を制御するようにプログラムされている。
【0089】
基板処理装置1を用いることで、基板Wの上面をエッチングするエッチング処理を実行することができる。エッチング処理の以下の各工程は、コントローラ3がこれらの構成を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
<基板処理装置1によるエッチング処理の第1例>
図7A~
図7Cは、基板処理装置1によるエッチング処理の第1例を説明するための平面図である。
図7A~
図7Cでは、支持アーム8および塗布部材移動ユニット9を二点鎖線で図示しており、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の符号を、それぞれ、エッチング液塗布部材6と基板Wの上面との接触領域(第1接触領域CA1)、および、リンス液塗布部材7と基板Wの上面との接触領域(第2接触領域CA2)と併記している。このことは、後述する
図8Aおよび
図8Bにおいても同様である。
【0090】
以下では、
図2を参照して、エッチング処理の詳細について説明する。
図7A~
図7Cについては適宜参照する、まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図1参照)によってキャリアCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(基板搬入工程)。具体的には、搬送ロボットCRによって基板Wがスピンベース20の吸着面20aに載置され、吸着面20aに基板Wが載置されている状態で吸引バルブ28が開かれる。これにより、基板Wは、スピンチャック5の吸着面20aに吸着されて水平姿勢に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5は、基板Wを水平姿勢に保持しながら基板Wを所定の回転速度で回転させる(基板回転工程)。そして、エッチング液バルブ42およびリンス液バルブ47が開かれる。
【0091】
塗布部材移動ユニット9は、
図7Aに示すように、エッチング液塗布部材6が基板Wの上面の周縁部に対向する周縁位置にエッチング液塗布部材6を配置する。エッチング液塗布部材6が周縁位置に位置し、かつ、エッチング液バルブ42およびリンス液バルブ47が開かれている状態で、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6を接触位置に配置する。
図7Aに示す位置では、エッチング液塗布部材6のみが周縁位置に位置し、リンス液塗布部材7は、基板Wの周縁よりも外側に位置する。
【0092】
エッチング液塗布部材6が周縁位置で基板Wの上面に対する接触を開始すると、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を中心位置に向けて移動させる。エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が中心位置に向かう途中で、リンス液塗布部材7は、基板Wの上面との接触を開始する。
その後、エッチング液塗布部材6が、
図7Bに示すように、中心位置に向かって移動する。エッチング液塗布部材6が中心位置を通った後、
図7Cに示すように、塗布部材移動ユニット9は、移動方向を変更することなくエッチング液塗布部材6を移動させ、中心位置を挟んで先ほどの周縁位置(第1周縁位置)とは反対側の周縁位置(第2周縁位置)にエッチング液塗布部材6を位置させる。
【0093】
このように、エッチング処理では、基板Wの上面にエッチング液塗布部材6を接触させながら、周縁位置と中心位置との間で、エッチング液塗布部材6を移動させることで基板Wの上面にエッチング液が塗布される(エッチング液塗布工程、薬液塗布工程)。そして、基板Wの上面においてエッチング液塗布部材6によってエッチング液が塗布された箇所にリンス液塗布部材7が接触するようにリンス液塗布部材7を移動させることで基板Wの上面にリンス液を塗布して基板Wの上面からエッチング液が除去される(リンス液塗布工程)。
【0094】
塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が基板Wの周縁よりも外側に位置し、リンス液塗布部材7が周縁位置する状態で、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を基板Wの上面から離間するように上方に移動させる。
その後、エッチング液バルブ42およびリンス液バルブ47が閉じられる。さらにその後、スピンチャック5が基板Wの回転を停止させ、吸引バルブ28が閉じられる。その後、搬送ロボットCR(
図1を参照)が、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(基板搬出工程)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIR(
図1を参照)へと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。これにより、エッチング処理が完了する。
【0095】
第1例のエッチング処理において、基板Wの回転速度は、100rpm以下であることが好ましく、10rpm以下であることが一層好ましい。基板Wの回転が速すぎると、基板Wの上面の周縁が乾燥したり、基板Wの上面の周縁に接着するエッチング液の濃度および温度が変化したりするおそれがある。
エッチング液およびリンス液の塗布が終了した後、基板Wが搬出される前に、基板Wを高速回転(たとえば、2000rpmで回転)させて、基板W上のリンス液を乾燥させてもよい。
【0096】
また、第1例のエッチング処理において、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が第1周縁位置から中心位置を経由して第2周縁位置にまで移動する間、エッチング液塗布部材6と回転軸線A1との距離にかかわらず、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を一定速度(たとえば、10mm/秒)に維持する。
塗布部材移動ユニット9は、基板Wが一回転するために必要な時間または当該時間よりも長い時間の間に、第1接触領域CA1の直径D1に相当する距離だけ、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を、半径方向RDに移動させる。
【0097】
具体的には、第1接触領域CA1の直径D1が10mmであり、基板Wの回転速度が60rpmである場合には、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度V1が、10mm/秒以下であることが好ましい。すなわち、基板Wの回転速度をR1とし、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度をV1とした場合には、「V1≦D1/(R1/60)」の関係が成り立つことが好ましい。
【0098】
このエッチング処理では、第1接触領域CA1の直径D1に相当する距離だけ半径方向RDにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が移動する間に基板Wが少なくとも一回転する。そのため、半径方向RDにおいて回転軸線A1から或る距離の位置でのエッチング液塗布部材6の接触が開始してからエッチング液塗布部材6が基板Wの上面上の当該位置を通り過ぎるまでの間に、基板Wの上面上の当該位置におけるエッチング液の塗布が回転方向の全周において完了する。したがって、周縁位置および中心位置の間でエッチング液塗布部材6が移動させる際に、基板Wの上面において一度もエッチング液が塗布されない領域が発生すること抑制できる。
【0099】
厳密には、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度として、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度の半径方向成分が、上記関係式を満たせば、基板Wの上面においてエッチング液が一度も塗布されない領域が発生すること抑制できる。
基板Wが比較的低速で回転することによって基板W上の所定の位置をエッチング液塗布部材6が1回のみ塗布する場合と比較して、基板Wが比較的高速で回転することによって基板W上の所定の位置をエッチング液塗布部材6が複数回塗布する場合には、エッチング液膜100の厚さが厚くなる。
【0100】
しかしながら、基板Wの上面の表層部においてエッチング対象である部分の厚さはナノメートルオーダーであるため、0.1μm以上5μm以下の厚さを有するエッチング液膜100を基板Wの上面に塗布すれば、基板Wの上面には充分な量のエッチング成分が供給されたことになる。そのため、エッチング液塗布部材6の塗布回数が処理の度合に及ぼす影響は、エッチング液の接触時間が処理の度合に及ぼす影響と比較して小さい。そのため、第1接触領域CA1の直径D1に相当する距離だけ半径方向RDにエッチング液塗布部材6が移動する間に基板Wが少なくとも一回転すれば、エッチングに充分な量のエッチング液が基板Wの上面に塗布される。
【0101】
第1例のエッチング処理では、エッチング液塗布部材6の移動速度V1とリンス液塗布部材7の移動速度V2とが同速度である。そのため、エッチング液塗布部材6の移動速度を調整することで、エッチング液が基板Wの上面に接触している時間を調整することができる。詳しくは、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を高くするとエッチング液が基板Wの上面に接触している時間を短くすることができ、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を低くするとエッチング液が基板Wの上面に接触している時間を長くすることができる。したがって、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を制御することによって、基板Wの上面の各位置においてエッチング液が接触する時間を良好に制御できる。
【0102】
第1例のエッチング処理では、エッチング液塗布部材6が周縁位置および中心位置の間で移動する間、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を一定に維持する。そのため、基板Wの上面上の各位置においてエッチング液が塗布されてからリンス液によってエッチング液が除去されるまでの時間のばらつきを低減できる。すなわち、基板Wの上面の各位置においてエッチング液が基板Wの上面に接触している時間のばらつきを低減できる。したがって、エッチング液による処理の面内均一性を向上できる。
【0103】
エッチング液塗布部材6が周縁位置および中心位置の間で移動する間、エッチング液塗布部材6の移動速度V1を一定に維持する場合、回転軸線A1からの距離に応じて、単位面積当たりあたりに塗布されるエッチング液の量が異なる。
詳しくは、中心位置付近においてエッチング液塗布部材6が単位時間当たりに回転方向に移動する距離は、周縁位置付近においてエッチング液塗布部材6が単位時間当たりに回転方向に移動する距離よりも小さい。そのため、単位時間当たりにエッチング液塗布部材6から染み出るエッチング液の量が等しいと仮定すれば、基板Wの上面の中心領域において単位面積当たりに塗布されるエッチング液の量が、基板Wの上面の周縁領域において単位面積当たりに塗布されるエッチング液の量よりも多い。中心領域は、基板Wの上面の中心部およびその周辺の部分を含む領域である。周縁領域は、基板Wの上面の周縁部およびその周辺の部分を含む領域である
上述したように、基板Wの上面の表層部においてエッチング対象である部分の厚さはナノメートルオーダーである。そのため、基板Wの上面上のいずれの位置においても、エッチング液塗布部材6によって基板Wの上面に塗布されるエッチング液の量は、基板Wの上面の表層部においてエッチング対象である部分のエッチングに充分な量である。したがって、回転軸線A1とエッチング液塗布部材6との間の距離が処理の度合に及ぼす影響は、エッチング液の接触時間が処理の度合に及ぼす影響と比較して小さい。
【0104】
図7A~
図7Cに示す例では、エッチング液塗布部材6は、周縁位置から中心位置に向けて移動した後、中心位置を通り、移動方向を維持したまま再び周縁位置に位置する。しかしながら、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が中心位置に達した時点でエッチング液塗布部材6を基板Wの上面から離間させてもよい。
あるいは、
図8Aに示すように、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6を中心位置に配置した状態でエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を基板Wの上面に接触させ、
図8Bに示すように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を中心位置から周縁位置に向けて移動させてもよい。すなわち、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を、周縁位置および中心位置の一方から他方に向けて移動させればよい。
【0105】
あるいは、中心位置と周縁位置との間を、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が往復してもよいし、第1周縁位置と第2周縁位置との間を、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が往復してもよい。
エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を回転軸線A1との間の距離にかかわらず、一定の速度で水平移動させる第1例のエッチング処理は、たとえば、リセス工程に適用することができる。リセス工程は、トレンチ内に埋設された絶縁体層または金属層の表面をトレンチの底部に向けて後退させる工程であり、基板Wの上面の全域において均一性高く絶縁体層または金属層をエッチングする必要がある。
【0106】
以下では、リセス工程における基板Wの上面の表層部110の変化について説明する。
図9Aおよび
図9Bは、第1例のエッチング処理による基板Wの表層部110の変化の一例について説明するための模式図である。
図9Aは、エッチング処理前の基板Wの表層部110の状態を示す図であり、
図9Bは、エッチング処理後の基板Wの表層部110の状態を示す図である。
【0107】
図9Aを参照して、第1例のエッチング処理の対象となる基板Wの上面の表層部110には、たとえば、複数のトレンチ111が形成された半導体層112と、複数のトレンチ111にそれぞれ埋設された複数の絶縁体層113とが形成されている。半導体層112は、たとえば、ポリシリコン等の半導体層である。絶縁体層113は、たとえば、酸化シリコン(SiO
2)または窒化チタン(TiN)である。酸化シリコンは、たとえば、基板Wの上面に形成されるデバイス同士を電気的に分離するための素子分離層である。
【0108】
トレンチ111の深さ方向DD1は、基板Wの厚さ方向TD(基板Wの主面に対する法線方向)でもある。トレンチ111は、たとえば、10nm以上10000nm以下の深さDp1を有する。トレンチ111は、トレンチ111の深さ方向DD1から見て10nm以上100nm以下の幅W1を有する。
トレンチ111は、たとえば、ライン状である。ライン状のトレンチ111の幅W1は、トレンチ111が延びる方向および基板Wの厚さ方向TDに直交する方向におけるトレンチ111の大きさのことである。
【0109】
トレンチ111は、必ずしもライン状である必要はなく、平面視で(基板Wの主面に対する法線方向から見て)円形状であってもよい。トレンチ111が円形状である場合、幅W1は、トレンチ111の直径に相当する。複数のトレンチ111は、半導体層112によって完全に隔てられていてもよいし、トレンチ111内の絶縁体層113同士が連結してもよい。
【0110】
第1例のエッチング処理によって、
図9Bに示すように、絶縁体層113が部分的に除去され、絶縁体層113の表面がトレンチ111の底部へ向けて後退する。
リセス工程が素子分離層リセス工程(STI酸化膜リセス工程)である場合、絶縁体層113が酸化シリコンである。その場合、エッチング液として希フッ酸およびバッファードフッ酸のうちの少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0111】
リセス工程がチタンナイトライドリセス工程である場合、エッチングの対象となる絶縁体層113が窒化チタンである。その場合、エッチング液として、塩酸およびAPM液のうちの少なくとも一方を用いることが好ましい。
図10Aおよび
図10Bは、第1例のエッチング処理をリセス工程に適用した場合における基板Wの表層部114の変化の別の例について説明するための模式図である。
図10Aは、エッチング処理前の基板Wの表層部114の状態を示す図であり、
図10Bは、エッチング処理後の基板Wの表層部114の状態を示す図である。
【0112】
図10Aを参照して、第1例のエッチング処理の対象となる基板Wの上面の表層部114には、複数のトレンチ115が形成された絶縁体層116と、複数のトレンチ115を埋めて絶縁体層116を被覆する金属層117とが形成されていてもよい。絶縁体層116は、たとえば、酸化シリコン(SiO
2)または窒化チタン(TiN)である。金属層117は、たとえば、タングステン(W)等が挙げられる。
【0113】
トレンチ115の深さ方向DD2は、基板Wの厚さ方向TD(基板Wの主面に対する法線方向)に対して直交する方向である。トレンチ115は、たとえば、10nm以上10000nm以下の深さDp2を有する。トレンチ115は、トレンチ115の深さ方向DD2から見て10nm以上10nm以下の幅W2を有する。
図10Aに示す表層部114を有する基板Wに第1例のエッチング処理を行うと、
図10Bに示すように、金属層117の不要な部分が除去される。詳しくは、金属層117の表面がトレンチ115の底部へ向けて後退し、金属層117は、絶縁体層116が露出するまで除去される。これにより、複数のトレンチ115内に複数の埋設金属層118がそれぞれ形成される。リセス工程がタングステンリセス工程である場合、エッチングの対象となる金属層117がタングステンである。その場合、エッチング液として、混酸を用いることが好ましい。
【0114】
<基板処理装置1によるエッチング処理の第2例>
第2例のエッチング処理が第1例のエッチング処理と異なる点は、塗布部材移動ユニット9が、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度V1,V2を、エッチング液塗布部材6の位置に応じて変化させる点である。言い換えると、塗布部材移動ユニット9が、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度V1,V2を、回転軸線A1からの距離に応じて変化させる。
【0115】
以下では、第2例のエッチング処理が第1例のエッチング処理と異なる点を中心に説明し、第1例のエッチング処理と共通する事項についての説明を省略する。
第2例のエッチング処理では、塗布部材移動ユニット9は、半径方向RDに沿って分けられた複数の領域のそれぞれにおいて異なる速度でエッチング液塗布部材6を水平移動させる。具体的には、塗布部材移動ユニット9は、回転軸線A1に近い領域ほど移動速度が高速となるようにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を水平移動させる。
【0116】
より具体的には、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が中心位置を含む第1領域Ar1に位置するときにエッチング液塗布部材6を基板Wの上面に沿う方向に第1移動速度MV1で移動させる。塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が第1領域Ar1に隣接し第1領域Ar1よりも中心位置から遠い第2領域Ar2に位置するときにエッチング液塗布部材6を基板Wの上面に沿う方向に第1移動速度MV1よりも低い第2移動速度MV2で移動させる。塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が第2領域Ar2に隣接し周縁位置を含む第3領域Ar3に位置するときにエッチング液塗布部材6を基板Wの上面に沿う方向に第2移動速度MV2よりも低い第3移動速度MV3で移動させる。
【0117】
言い換えると、エッチング液塗布部材6は、基板Wの上面の中心領域に接触するときに、第1移動速度MV1で移動し、基板Wの上面の外周領域に接触するときに、第2移動速度MV2で移動し、基板Wの上面の周縁領域に接触するときに、第3移動速度MV3で移動する。外周領域は、基板Wの上面において、中心領域および周縁領域の間の領域である。
【0118】
第2例のエッチング処理においても、基板Wの回転速度をR1とし、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度をV1とした場合には、「V1≦D1/(R1/60)」の関係が成り立つことが好ましい。第2例のエッチング処理では、第1接触領域CA1の直径D1が10mmであり、基板Wの回転速度が60rpmである場合、たとえば、第1移動速度MV1が10mm/秒であり、第2移動速度MV2が7.5mm/秒であり、第3移動速度MV3が5mm/秒である。
【0119】
第2例のエッチング処理においても第1例のエッチング処理と同様に、エッチング液塗布部材6の移動速度とリンス液塗布部材7の移動速度とが同速度である。第2例のエッチング処理のように、エッチング液塗布部材6の位置に応じてエッチング液塗布部材6の移動速度を変化させれば、エッチング液塗布部材6の移動速度の変化に応じて基板Wの上面のエッチング液による処理の度合を変化させることができる。詳しくは、基板Wの上面においてエッチング液塗布部材6が高速度で移動する領域では、エッチング液による処理の進行を抑制でき、基板Wの上面においてエッチング液塗布部材6が低速度で移動する領域では、エッチング液による処理の進行を促進できる。
【0120】
エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動速度がエッチング液塗布部材6の位置に応じて変化する第2例のエッチング処理は、たとえば、ウェハシニング工程に適用することができる。ウェハシニング工程は、基板Wの表面を平坦にするために基板Wの表面の表層部をエッチングにより除去する工程である。以下では、ウェハシニング工程における基板Wの厚さの変化について説明する。
【0121】
図12Aおよび
図12Bは、第2例のエッチング処理をウェハシニング工程に適用した場合における基板Wの厚さの変化の一例について説明するための模式図である。
図12Aは、エッチング処理前の基板Wの状態を示す図であり、
図12Bは、エッチング処理後の基板Wの状態を示す図である。
図12Aを参照して、基板Wは、半導体層120と、半導体層120上に形成されたエピタキシャル層121とを含む。半導体層120は、たとえば、シリコンからなる。エピタキシャル層121は、たとえば、シリコン等の半導体からなる。エピタキシャル層121の厚さT22は、均一ではなく、回転軸線A1からの距離に応じて異なっている。
【0122】
具体的には、エピタキシャル層121の厚さT22が回転軸線A1に向かうにしたがって小さくなっているため、エピタキシャル層121の表面が平坦ではなく傾斜している。たとえば、中心領域におけるエピタキシャル層121の厚さT22は、10μm以上100μm以下であり、周縁領域におけるエピタキシャル層121の厚さT22は、11μm以上101μm以下である。
【0123】
第2例のエッチング処理では、第1移動速度MV1が第2移動速度MV2よりも高く、第2移動速度MV2が第3移動速度MV3よりも高い。そのため、周縁領域において最もエピタキシャル層121のエッチングが進行し、外周領域においてエピタキシャル層121のエッチングが次に早く進行する。そして、中心領域においてエピタキシャル層121のエッチングが最も遅く進行する。
【0124】
そのため、
図12Bに示すように、各領域におけるエピタキシャル層121の厚さT22の差が低減される。エッチング処理により、エピタキシャル層121の厚さT22は、回転軸線A1からの距離にかかわらず、1μm以上5μm以下となる。
エピタキシャル層121の表面の形状によって、エッチング液塗布部材6の移動速度を、第2例のエッチング処理から変更することも可能である。たとえば、第2例のエッチング処理とは異なり、エピタキシャル層121の厚さT22が回転軸線A1に近づくほど大きい場合には、第1移動速度MV1、第2移動速度MV2および第3移動速度MV3の大小関係は第2例のエッチング処理とは逆であってもよい。すなわち、第3移動速度MV3が最も高く、第1移動速度MV1が最も低くてもよい。
【0125】
また、第2移動速度MV2が第1移動速度MV1および第3移動速度MV3よりも高いエッチング処理、または、第2移動速度MV2が第1移動速度MV1および第3移動速度MV3よりも低いエッチング処理を実行することも可能である。
また、エッチング液塗布部材6は、半径方向RDに沿って分けられた2つの領域のそれぞれにおいて異なる速度で水平移動してもよい。また、エッチング液塗布部材6は、半径方向RDに沿って分けられた4つ以上の領域のそれぞれにおいて異なる速度で水平移動してもよい。
【0126】
また、エッチング液塗布部材6の移動速度は、段階的に変化する必要はなく、回転軸線A1に近づくほど移動速度が高くなるように無段階に変化してもよい。エッチング液塗布部材6の移動速度は、回転軸線A1に近づくほど移動速度が低くなるように無段階に変化してもよい。
<基板処理装置1の変形例>
以下では、
図13~
図15を用いて、基板処理装置1の第1変形例~第3変形例について説明する。
図13~
図15では、支持アーム8および塗布部材移動ユニット9を二点鎖線で図示しており、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の符号を、それぞれ、エッチング液塗布部材6と基板Wの上面との接触領域(第1接触領域CA1)、および、リンス液塗布部材7と基板Wの上面との接触領域(第2接触領域CA2)と併記している。
【0127】
図13は、基板処理装置1の第1変形例について説明するための模式図である。リンス液塗布部材7と回動軸線A2との間の距離L2は、エッチング液塗布部材6と回動軸線A2との間の距離L1と必ずしも同じである必要はなく、
図13に示すように、リンス液塗布部材7と回動軸線A2との間の距離L2は、エッチング液塗布部材6と回動軸線A2との間の距離L1と異なっていてもよい。この場合、リンス液塗布部材7の移動軌跡ML2は、エッチング液塗布部材6の移動軌跡ML1とは異なるが、リンス液塗布部材7は、エッチング液塗布部材6に追従する。
【0128】
図14Aおよび
図14Bは、基板処理装置1の第2変形例について説明するための模式図である。支持アーム8は、必ずしも回動式のアームである必要はなく、直線的に移動する直動式のアームであってもよい。
支持アーム8が直動式のアームである場合、塗布部材移動ユニット9は、回動軸37の代わりに、支持アーム8のアーム部31を支持する支持軸39をさらに有する。
【0129】
支持アーム8が直動式のアームである場合、アーム平行移動機構35は、たとえば、リニアモータ機構である。その場合、アーム平行移動機構35は、固定子に取り付けられたコイルと、移動子に取り付けられた永久磁石とを含み、これらの磁気作用により、移動子を固定子に対して水平方向に移動させる。アーム平行移動機構35の移動子は、支持アーム8に連結されており、アーム平行移動機構35の固定子は、支持軸39に連結されている。
【0130】
アーム平行移動機構35は、リニアモータ機構に限られず、支持アーム8を直線的に水平移動さえることができる機構であれば、リニアモータ機構、ボールねじ機構、ラックアンドピニオン機構、またはこれらの機構の組み合わせを有していてもよい。
アーム直交移動機構36は、支持軸39を昇降させることで支持アーム8を直交方向に移動させる。支持軸39は、支持アーム8を昇降させる昇降軸でもある。アーム直交移動機構36は、たとえば、回転モータ等の駆動源を有する。アーム直交移動機構36は、駆動源の回転を直線運動に変換して支持軸39に伝達する動力伝達機構を有していてもよい。動力伝達機構は、たとえば、ボールねじ機構であるがこれに限られない。動力伝達機構は、ボールねじ機構、リニアモータ機構、ラックアンドピニオン機構またはこれらの機構の組み合わせであってもよい。また、アーム直交移動機構36は、駆動源として、リニアモータ機構を有していてもよい。
【0131】
図14Bに示すように、基板処理装置1の第2変形例では、リンス液塗布部材7の移動軌跡ML2が、エッチング液塗布部材6の移動軌跡ML1と重なるように、リンス液塗布部材7とエッチング液塗布部材6とが、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の移動方向に沿って並んでいる。移動軌跡ML2および移動軌跡ML1は、いずれも直線状の軌跡である。
【0132】
図15は、基板処理装置1の第3変形例について説明するための模式図である。支持アーム8が直動式のアームである場合において、リンス液塗布部材7およびエッチング液塗布部材6が、移動方向に交差する方向にずれていてもよい。
<第2実施形態に係る基板処理装置の構成>
図16は、第2実施形態に係る基板処理装置1Aに備えられる処理ユニット2の構成を説明するための模式図である。
図16において、前述の
図1~
図15に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図17A~
図20についても同様である。
【0133】
第2実施形態に係る基板処理装置1Aが第1実施形態に係る基板処理装置1(
図2を参照)と主に異なる点は、第2実施形態に係るエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が、別々のアーム(第1アーム70および第2アーム80)によって支持されている点である。
第2実施形態においてエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を支持する支持アーム8は、エッチング液塗布部材6を支持する第1アーム70と、リンス液塗布部材7を支持する第2アーム80とを有する。
【0134】
第2実施形態においても、塗布部材移動ユニット9は、たとえば、シリンダ機構、ボールねじ機構、リニアモータ機構、および、ラックアンドピニオン機構の少なくとも1つを含んでいてもよい。
第2実施形態に係る塗布部材移動ユニット9は、基板Wの上面に対して平行に(この実施形態では、水平方向に)第1アーム70を移動させる第1アーム平行移動機構71(第1アーム水平移動機構)と、基板Wの上面に対する直交方向(この実施形態では、鉛直方向)に第1アーム70を移動させる第1アーム直交移動機構72(第1アーム鉛直移動機構)とを含む。
【0135】
第2実施形態に係る塗布部材移動ユニット9は、基板Wの上面に対して平行に(この実施形態では、水平方向に)第2アーム80を移動させる第2アーム平行移動機構81(第2アーム水平移動機構)と、基板Wの上面に対する直交方向(この実施形態では、鉛直方向)に第2アーム80を移動させる第2アーム直交移動機構82(第2アーム鉛直移動機構)とをさらに含む。
【0136】
第1アーム平行移動機構71および第2アーム平行移動機構81は、第1実施形態に係るアーム平行移動機構35(
図2を参照)と同様の構成を有している。第1アーム直交移動機構72および第2アーム直交移動機構82は、第1実施形態に係るアーム直交移動機構36(
図2を参照)と同様の構成を有している。
第1アーム70は、エッチング液塗布部材6を保持するホルダ30と、ホルダ30を支持し塗布部材移動ユニット9(第1アーム平行移動機構71および第1アーム直交移動機構72)から出力される駆動力が伝達されるアーム部31とを含む。第2アーム80は、リンス液塗布部材7を保持するホルダ30と、ホルダ30を支持し塗布部材移動ユニット9(第2アーム平行移動機構81および第2アーム直交移動機構82)から出力される駆動力が伝達されるアーム部31とを含む。
【0137】
第1アーム70および第2アーム80が、それぞれ、回動軸線A3および回動軸線A4のまわりに回動する回動式のアームである。そのため、塗布部材移動ユニット9は、第1アーム70のアーム部31に連結された第1回動軸73と、第2アーム80のアーム部31に連結された第2回動軸83とをさらに有する。
第1アーム平行移動機構71は、第1回動軸73を回動させることで第1アーム70を回動軸線A3まわりに回動させる。回動軸線A3は、第1回動軸73の中心軸線である。第1回動軸73は、第1アーム70のアーム部31の他端(基端)に連結されている。第1アーム平行移動機構71は、たとえば、第1回動軸73を回動させるモータ等の駆動源を有する。
【0138】
第2アーム平行移動機構81は、第2回動軸83を回動させることで第2アーム80を回動軸線A4まわりに回動させる。回動軸線A4は、第2回動軸83の中心軸線である。第2回動軸83は、第2アーム80のアーム部31の他端(基端)に連結されている。第2アーム平行移動機構81は、たとえば、第2回動軸83を回動させるモータ等の駆動源を有する。
【0139】
第1アーム直交移動機構72は、第1回動軸73を昇降させることで第1アーム70を直交方向に移動させる。第1アーム直交移動機構72は、たとえば、回転モータ等の駆動源を有する。第1アーム直交移動機構72は、駆動源の回転を直線運動に変換して第1回動軸73に伝達する動力伝達機構を有していてもよい。
第2アーム直交移動機構82は、第2回動軸83を昇降させることで第2アーム80を直交方向に移動させる。第2アーム直交移動機構82は、たとえば、回転モータ等の駆動源を有する。第2アーム直交移動機構82は、駆動源の回転を直線運動に変換して第2回動軸83に伝達する動力伝達機構を有していてもよい。
【0140】
動力伝達機構は、たとえば、ボールねじ機構であるがこれに限られない。動力伝達機構は、ボールねじ機構、リニアモータ機構、ラックアンドピニオン機構またはこれらの機構の組み合わせであってもよい。また、第1アーム直交移動機構72は、駆動源として、リニアモータ機構を有していてもよい。
図17Aは、エッチング液塗布部材6およびその周辺の部材の断面図である。
図17Bは、リンス液塗布部材7およびその周辺の部材の断面図である。
【0141】
第1アーム70のホルダ30は、第1収容凹部50を有する。第1収容凹部50には、エッチング液塗布部材6が収容されている。第1収容凹部50の構成は、上述した通りである。すなわち、第1収容凹部50は、第1開口部51および第1底部52を有する。エッチング液塗布部材6は、第1アーム70に対して着脱可能であってもよいし、第1アーム70に対して取り外しできないように第1アーム70のホルダ30に接着されていてもよい。
【0142】
第1貫通孔53は、第1アーム70に形成されている。
図17Aに示す例では、第1貫通孔53が、ホルダ30およびアーム部31の両方に亘って形成されているが、第1貫通孔53は、ホルダ30のみに形成されていてもよい。
図17Aに示す例とは異なり、エッチング液内部配管44が設けられておらず、エッチング液内部流路40は、第1貫通孔53によって形成されていてもよい。エッチング液内部流路40は、エッチング液供給口40aおよびエッチング液取込口40bを有する。エッチング液取込口40bは、第1アーム70の表面(たとえば、アーム部31の上面)で開口している。
【0143】
第2アーム80のホルダ30は、第2収容凹部60を有する。第2収容凹部60には、リンス液塗布部材7が収容されている。第2収容凹部60の構成は、上述した通りである。すなわち、第2収容凹部60は、第2開口部61および第2底部62を有する。リンス液塗布部材7は、第2アーム80に対して着脱可能であってもよいし、第2アーム80に対して取り外しできないように第2アーム80のホルダ30に接着されていてもよい。
【0144】
第2貫通孔63は、第2アーム80に形成されている。
図17Bに示す例では、第2貫通孔63が、ホルダ30およびアーム部31の両方に亘って形成されているが、第2貫通孔63は、ホルダ30のみに形成されていてもよい。
図17Bに示す例とは異なり、リンス液内部配管が設けられておらず、リンス液内部流路45は、第2貫通孔63によって形成されていてもよい。リンス液内部流路45は、リンス液供給口45aおよびリンス液取込口45bを有する。リンス液取込口45bは、第2アーム80の表面(たとえば、アーム部31の上面)で開口している。
【0145】
次に、第2実施形態における塗布部材移動ユニット9の動作および基板Wの上面の様子について説明する。
図18は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が基板Wの上面にエッチング液およびリンス液をそれぞれ塗布しているときの基板Wの上面の様子について説明するための斜視図である。
【0146】
塗布部材移動ユニット9は、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の動作を実行することができる。
塗布部材移動ユニット9は、第1アーム70を駆動して、エッチング液塗布部材6を対向位置に配置することができ、第2アーム80を駆動して、リンス液塗布部材7を対向位置に配置することができる。塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が対向位置に位置する状態で第1アーム70を駆動して、基板Wの上面に向けてエッチング液塗布部材6を移動させて、エッチング液塗布部材6を接触位置に配置することができる。塗布部材移動ユニット9は、リンス液塗布部材7が対向位置に位置する状態で第2アーム80を駆動して、基板Wの上面に向けてリンス液塗布部材7を移動させることで、リンス液塗布部材7を接触位置に配置することができる。
【0147】
塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が退避位置に位置する状態で、基板Wの上面の高さ位置にエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させた後に、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を水平移動させることも可能である。そのようにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることで、基板Wの上面にエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を接触させること(接触位置に配置する)も可能である。
【0148】
塗布部材移動ユニット9は、基板Wの上面においてエッチング液塗布部材6によってエッチング液が塗布された領域にリンス液塗布部材7が接触するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を基板Wの上面に沿って水平に移動させることができる。そうすることによって、エッチング液塗布部材6によって塗布されたエッチング液が、リンス液塗布部材7によって基板Wの上面から除去される。
【0149】
具体的には、塗布部材移動ユニット9は、
図18に示すように、エッチング液塗布部材6がリンス液塗布部材7よりも回転軸線A1の近くに位置するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させる。そのため、エッチング液塗布部材6によって塗布されたエッチング液が、リンス液塗布部材7によって基板Wの上面から除去される。
【0150】
さらに、第2実施形態の基板処理装置1Aを用いて第1実施形態の基板処理装置1と同様のエッチング処理の第1例および第2例を実行することが可能である。
図19および
図20は、第2実施形態に係る基板処理装置によるエッチング処理について説明するため平面図である。
図19および
図20では、支持アーム8および塗布部材移動ユニット9を二点鎖線で図示しており、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7の符号を、それぞれ、エッチング液塗布部材6と基板Wの上面との接触領域(第1接触領域CA1)、および、リンス液塗布部材7と基板Wの上面との接触領域(第2接触領域CA2)と併記している。
【0151】
エッチング処理の第1例および第2例を実行する際、塗布部材移動ユニット9は、
図19に示すように、リンス液塗布部材7が回転軸線A1に対してエッチング液塗布部材6とは反対側に位置するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることができる。言い換えると、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を回転方向における位相が互いに異なる(
図19の例では約180°異なる)位置に位置させながら、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることができる。
【0152】
また、
図20に示すように、塗布部材移動ユニット9は、リンス液塗布部材7がエッチング液塗布部材6に対して回転軸線A1とは反対側に位置するように、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることもできる。言い換えると、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を回転方向においてほぼ同位相に配置させながら、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることができる。すなわち、リンス液塗布部材7がエッチング液塗布部材6に追従するようにエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7を移動させることができる。
【0153】
第2実施形態に係るエッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が、別々の第1アーム70および第2アーム80にそれぞれに支持されており、第1アーム70および第2アーム80が互いに異なる移動機構によって移動される。そのため、エッチング液塗布部材6とリンス液塗布部材7との距離を適宜変更でき、かつ、エッチング液塗布部材6の移動速度V1およびリンス液塗布部材の移動速度V2を適宜変更することができる。
【0154】
その一方で、第1アーム70および第2アーム80を同じ速度で水平移動させれば、エッチング液塗布部材6とリンス液塗布部材7との距離を一定に保ちながら、エッチング液塗布部材6とリンス液塗布部材7とを同じ速度で水平移動させることができる。
第2実施形態に係る基板処理装置1Aにおいて、塗布部材移動ユニット9は、エッチング液塗布部材6が中心位置に達した時点でエッチング液塗布部材6を基板Wの上面から離間させてなくてもよい。すなわち、エッチング液塗布部材6が、第1周縁位置から中心位置へ向けて移動し、その後、移動方向を維持したまま、中心位置を挟んで第1周縁位置とは反対側の第2周縁位置に向けて移動してもよい。また、
図19および
図20に示すエッチング処理とは異なり、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が、中心位置から周縁位置へ向けて移動してもよい。
【0155】
第2実施形態に係る基板処理装置1Aでは、
図16に示す例とは異なり、第1アーム70および第2アーム80が回動式のアームではなく、第1アーム70および第2アーム80は、直動式のアームであってもよい。
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0156】
上述の各実施形態では、薬液としてエッチング液を用いて、基板Wの上面に対してエッチング処理が行われる。しかしながら、本発明はエッチング処理以外の処理にも適用することができる。エッチング処理以外の処理としては、たとえば、レジスト等のポリマー薄膜の塗布処理、および、ポリマー薄膜の剥離処理等が挙げられる。
また、上述の実施形態では、基板Wの上面に対してエッチング処理が実行される。しかしながら、基板Wの下面に対してエッチング処理が実行されてもよい。また、基板Wはスピンチャック5によって必ずしも水平姿勢で保持される必要はなく、鉛直姿勢で保持されていてもよいし、基板Wの主面が水平方向に対して傾斜する姿勢で保持されていてもよい。
【0157】
また、上述の各実施形態では、スピンチャック5は、真空吸着式のバキュームチャックであるが、スピンチャック5は、バキュームチャックに限られない。たとえば、スピンチャック5は、把持式のスピンチャックであってもよい。把持式のスピンチャックでは、スピンベースに等間隔で設けられた複数のチャックピンによって基板Wの周縁部を把持することで、基板Wを処理姿勢に保持できる。
【0158】
第1例および第2例のエッチング処理では、エッチング液塗布部材6の移動速度V1とリンス液塗布部材7の移動速度V2とが同速度である。しかしながら、エッチング液塗布部材6の移動速度V1とリンス液塗布部材7の移動速度V2とが異なるエッチング処理を実行することも可能である。さらに、移動速度V1および移動速度V2のいずれか一方を一定に維持し、移動速度V1および移動速度V2の他方を、対応する塗布部材の位置に応じて変化させてもよい。
【0159】
また、上述の各実施形態において、平面視におけるリンス液塗布部材7の直径が平面視におけるエッチング液塗布部材の直径よりも大きくてもよい。
上述の実施形態では、エッチング液塗布部材6およびリンス液塗布部材7が1つずつ設けられる。しかしながら、エッチング液塗布部材6は、複数設けられていてもよい。たとえば、エッチング液塗布部材6が2個設けられている場合、エッチング液塗布部材6として、基板Wの上面にフッ酸を塗布するフッ酸塗布部材と基板Wの上面にAPM液を塗布するAPM液塗布部材とが設けられていてもよい。この場合、各薬液を除去するためにリンス液塗布部材7が2個設けられていてもよい。
【0160】
また、エッチング液塗布部材6が1つの場合であってもリンス液塗布部材7が複数設けられていてもよい。その場合、基板Wの上面から効率良くエッチング液を除去できる。
リンス液塗布部材7の代わりに、連続流のリンス液を供給するリンス液ノズルを設ける実施形態も想定し得る。その場合であっても、エッチング液塗布部材6を用いて基板Wの上面上の所望の領域にのみエッチング液を供給することができる。そのため、基板Wの上面にエッチング液およびリンス液の両方を連続流で基板Wの上面に供給する構成と比較して、エッチング液が接触する時間を制御し易い。
【0161】
なお、上述の実施形態では、「沿う」、「水平」、「鉛直」、「平行」といった表現を用いたが、厳密に「沿う」、「水平」、「鉛直」、「平行」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
また、各構成を模式的にブロックで示している場合があるが、各ブロックの形状、大きさおよび位置関係は、各構成の形状、大きさおよび位置関係を示すものではない。
【0162】
この明細書および添付図面からは、特許請求の範囲に記載した特徴以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。これらの特徴は、課題を解決するための手段の項に記載した特徴と任意に組み合わせ可能である。
(付記1-1)
基板を処理姿勢に保持しながら、前記基板の主面の中心部を通る中心軸線まわりに前記基板を回転させる回転保持ユニットと、
薬液を内部に保持し、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面に接触することによって、内部に保持している前記薬液を前記基板の主面に塗布する薬液塗布部材と、
前記薬液塗布部材を支持する支持アームと、
前記支持アーム内に形成され薬液塗布部材に薬液を供給する薬液内部流路とを含み、
前記支持アームが、開口部および底部を有する収容凹部であって、前記薬液塗布部材の一部が前記開口部よりも前記底部から離れる方向に突出するように前記薬液塗布部材を収容する収容凹部を有し、
前記薬液内部流路が、前記収容凹部の前記底部で開口し、前記薬液塗布部材に薬液を供給する薬液供給口を有する、基板処理装置。
【0163】
付記1-1によれば、基板の主面と接触することによって外力を受けて、薬液塗布部材の内部に保持されている(溜められている)薬液を放出する。これにより、基板の主面に薬液を塗布することができる。薬液塗布部材を用いて基板の主面に薬液を塗布すれば、連続流の薬液を基板の主面に供給する場合と比較して、少量の薬液を基板の主面に供給できる。そのため、薬液の流体運動を抑制できるので、基板の主面上において薬液が塗布された領域(薬液塗布領域)から薬液が広がることを抑制できる。薬液塗布部材を用いて基板の主面上の所望の領域にのみ薬液を供給することができるため、基板の主面において薬液が接触する時間を良好に制御できる。
【0164】
収容凹部の底部で開口する薬液供給口から薬液塗布部材に薬液が供給される。そのため、底部から開口部に向かって、薬液塗布部材内で薬液が拡散する。そのため、薬液塗布部材の全体に薬液を充分に保持させ易い。したがって、基板の主面に充分な量の薬液を供給できる。
(付記1-2)
リンス液を内部に保持し、前記回転保持ユニットによって回転されている基板の主面に接触することによって、内部に保持している前記リンス液を前記基板の主面に塗布するリンス液塗布部材であって、前記基板の主面において当該リンス液塗布部材が接触する領域を洗い流すリンス液塗布部材をさらに含む、付記1-1に記載の基板処理装置。
【0165】
付記1-2によれば、リンス液塗布部材によって基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域を洗い流すことができる。そのため、基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域から薬液を除去することができる。
また、リンス液塗布部材は、基板の主面との接触によって基板の主面にリンス液を塗布する。そのため、連続流のリンス液を基板の主面に供給する場合と比較して、少量のリンス液を基板の主面に供給できる。そのため、リンス液の流体運動を抑制できるので、基板の主面上においてリンス液が広がることを抑制できる。
【0166】
したがって、基板の主面上においてリンス液塗布部材が接触していない領域からの薬液の意図しない除去を抑制できる。その結果、基板の主面においてリンス液塗布部材が接触する領域からの薬液を除去しつつ、基板の主面上においてリンス液塗布部材が接触していない領域から薬液を除去することを抑制できる。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0167】
1 :基板処理装置
1A :基板処理装置
5 :スピンチャック
6 :エッチング液塗布部材
7 :リンス液塗布部材
8 :支持アーム
9 :塗布部材移動ユニット
10 :エッチング液流路
11 :リンス液流路
35 :アーム平行移動機構
40 :エッチング液内部流路
40a :エッチング液供給口
41 :エッチング液供給流路
41A :下流エッチング液配管
41B :上流エッチング液配管
42 :エッチング液バルブ
43 :エッチング液供給源
45 :リンス液内部流路
46 :リンス液供給流路
50 :第1凹部
51 :第1開口部
52 :第1底部
70 :第1アーム
71 :第1アーム平行移動機構
80 :第2アーム
81 :第2アーム平行移動機構
A1 :回転軸線
RD :半径方向
V1 :移動速度
V2 :移動速度
W :基板