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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】蓄熱発電システムおよび発電制御システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20250310BHJP
   F22B 1/02 20060101ALI20250310BHJP
   F28F 27/02 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F22B1/02 Z
F28F27/02 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021101958
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000892
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 宏規
(72)【発明者】
【氏名】清水 佳子
(72)【発明者】
【氏名】中川 直人
(72)【発明者】
【氏名】白川 昌和
(72)【発明者】
【氏名】松崎 篤
(72)【発明者】
【氏名】三木 浩睦
(72)【発明者】
【氏名】明比 豊博
(72)【発明者】
【氏名】タワブ タウフィク ヒラル
(72)【発明者】
【氏名】森 高裕
(72)【発明者】
【氏名】深町 有佑
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智香子
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 峻史
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0066736(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277471(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251310(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167648(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106123086(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0289793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F22B 1/02
F28F 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1伝熱流体を加熱する加熱部と、
前記第1伝熱流体により加熱される蓄熱材料を含み、前記蓄熱材料内に蓄えられた熱により第2伝熱流体を加熱する蓄熱部と、
前記第2伝熱流体を用いて発電を行う発電部と、
前記加熱部と前記蓄熱部との間で前記第1伝熱流体を流通させる第1流路に設けられた1つ以上の第1流路切替部と、
前記蓄熱部と前記発電部との間で前記第2伝熱流体を流通させる第2流路に設けられた1つ以上の第2流路切替部と、
前記加熱部と前記発電部との間で前記第1および第2伝熱流体の少なくともいずれかを流通させる第3流路に設けられた1つ以上の第3流路切替部と、
前記第1、第2、および第3流路切替部を制御する流路切替制御部と、
を備え
前記流路切替制御部は、前記発電部が前記第1および第2伝熱流体により暖機される暖機モードにおいて、前記第1流路切替部を閉鎖し、前記第2流路切替部を閉鎖し、前記第3流路切替部を開放する、蓄熱発電システム。
【請求項2】
前記第3流路は、前記第1流路の一部と、前記第2流路の一部とを含む、請求項1に記載の蓄熱発電システム。
【請求項3】
前記第1流路切替部は、前記第1流路に含まれ、かつ前記第3流路に含まれない位置に設けられている、請求項2に記載の蓄熱発電システム。
【請求項4】
前記第2流路切替部は、前記第2流路に含まれ、かつ前記第3流路に含まれない位置に設けられている、請求項2または3に記載の蓄熱発電システム。
【請求項5】
前記第3流路切替部は、前記第3流路に含まれ、かつ前記第1および第2流路に含まれない位置に設けられている、請求項2から4のいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項6】
前記第3流路は、前記第1流路内の前記第1伝熱流体を前記第2流路内に供給する第1部分と、前記第2流路内の前記第2伝熱流体を前記第1流路内に供給する第2部分とを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項7】
前記第3流路切替部は、前記第1および第2部分の少なくともいずれかに設けられている、請求項6に記載の蓄熱発電システム。
【請求項8】
前記流路切替制御部は、前記蓄熱材料が前記第1伝熱流体により加熱される蓄熱モードにおいて、前記第1流路切替部を開放し、前記第3流路切替部を閉鎖する、請求項1から7のいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項9】
前記流路切替制御部は、前記蓄熱材料が前記第1伝熱流体へと放熱する放熱モードにおいて、前記第2流路切替部を開放し、前記第3流路切替部を閉鎖する、請求項1から8のいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項10】
前記流路切替制御部は、前記蓄熱材料が前記第1および第2伝熱流体により加熱され、かつ前記発電部が前記第1および第2伝熱流体により暖機される蓄熱かつ暖機モードにおいて、前記第1流路切替部を開放し、前記第2流路切替部を閉鎖し、前記第3流路切替部を開放する、請求項1からのいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項11】
前記加熱部により行われる前記第1伝熱流体の加熱を制御する加熱制御部と、
前記発電部により行われる前記発電を制御する発電制御部と、
をさらに備える請求項1から10のいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項12】
前記内部温度または前記第1伝熱流体の温度を計測する1つ以上の温度計測器をさらに備え、
前記加熱制御部は、前記温度計測器により計測された前記内部温度または前記第1伝熱流体の温度に基づいて、前記第1伝熱流体の加熱を制御する、請求項11に記載の蓄熱発電システム。
【請求項13】
前記加熱部と前記蓄熱部との間で前記第1伝熱流体を流通させる第1送風部と、
前記蓄熱部と前記発電部との間で前記第2伝熱流体を流通させる第2送風部と、
前記第1および第2送風部の動作を制御する送風制御部と、
をさらに備える請求項1から12のいずれか1項に記載の蓄熱発電システム。
【請求項14】
第1伝熱流体を加熱する加熱部と、
前記第1伝熱流体により加熱される蓄熱材料を含み、前記蓄熱材料内に蓄えられた熱により第2伝熱流体を加熱する蓄熱部と、
前記第2伝熱流体を用いて発電を行う発電部と、
を備える蓄熱発電システムを制御する発電制御システムであって、
前記加熱部と前記蓄熱部との間で前記第1伝熱流体を流通させる第1流路に設けられた1つ以上の第1流路切替部と、
前記蓄熱部と前記発電部との間で前記第2伝熱流体を流通させる第2流路に設けられた1つ以上の第2流路切替部と、
前記加熱部と前記発電部との間で前記第1および第2伝熱流体の少なくともいずれかを流通させる第3流路に設けられた1つ以上の第3流路切替部と、
前記第1、第2、および第3流路切替部を制御する流路切替制御部と、
を備え
前記流路切替制御部は、前記発電部が前記第1および第2伝熱流体により暖機される暖機モードにおいて、前記第1流路切替部を閉鎖し、前記第2流路切替部を閉鎖し、前記第3流路切替部を開放する、発電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄熱発電システムおよび発電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに様々な蓄熱発電システムが提案されている。蓄熱発電システムは、蓄熱材料を含む蓄熱部と、蓄熱材料内に蓄えられた熱を用いて発電を行う発電部とを備えている。
【0003】
例えば、蓄熱部から発電部に送られる伝熱流体の温度を管理する技術や、蓄熱部の内部温度の分布の傾きを所望の傾きとする技術が提案されている。また、蓄熱部を蓄熱モードで運転する際に、蓄熱部の入口の上流や出口の下流で伝熱流体の温度を計測することで、蓄熱材料を加熱するエネルギー量を一定値に管理する技術が提案されている。また、蓄熱部を放熱モードで運転する際に、発電部が蒸気タービンサイクルを用いて発電を行う技術が提案されている。
【0004】
蓄熱モードでは、蓄熱部内の蓄熱材料が、何らかの手段、例えば、高温の伝熱流体により加熱される。そして、蓄熱材料の温度が上昇することにより、蓄熱部内にエネルギーが蓄えられる。高温の伝熱流体は例えば、自然エネルギーを用いて発電された電力により製造される。この電力は例えば、電力系統が必要とする電力を超える余剰電力である。
【0005】
放熱モードでは、蓄熱部内の蓄熱材料が、何らかの手段、例えば、低温の伝熱流体へと放熱する。低温の伝熱流体は、蓄熱材料から熱エネルギーを受け取ることにより加熱される。これにより、蓄熱材料内の熱エネルギーは減少する。蓄熱部内で加熱された伝熱流体は、発電部へと送られ、発電部内で蒸気タービンサイクルに熱エネルギーを供給する。発電部は、この熱エネルギーを用いて発電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第3327399号公報
【文献】欧州特許第3245467号公報
【文献】欧州特許第3322955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような蓄熱発電システムでは、例えば蓄熱モードでの運転と放熱モードでの運転とが交互に行われる。しかしながら、蓄熱モードで用いられる電力が、自然エネルギーによる余剰電力である場合には、余剰電力が毎日潤沢にあるとは限らない。余剰電力が潤沢にはない場合には、前回の放熱モード運転の終了から数日経過してから蓄熱モード運転が行われ、その後に今回の放熱モード運転が行われる場合がある。
【0008】
この場合、蓄熱モード運転の終了から今回の放熱モード運転の開始までに、発電部の内部構成要素の温度が大幅に低下する。内部構成要素の温度が低い状態から発電を開始する場合には、内部構成要素の温度を十分に高くするための暖機運転が必要となる。暖機運転は例えば、蓄熱部内に蓄えられた熱エネルギーを用いて行われる。この場合、蓄熱部内の熱エネルギーを暖機のために使用する分だけ、発電部の発電量が減少することになるが、これは望ましくない。また、発電部の発電出力は暖機運転中はゼロであるため、発電部の暖機に長い時間がかかることも望ましくない。
【0009】
一方、蓄熱モード運転では、すべての余剰電力を消費しきれない場合がある。余剰電力は、エネルギーの有効利用の観点から、できるだけ多く消費することが望ましい。
【0010】
そこで、本発明の実施形態は、加熱部、蓄熱部、および発電部内でエネルギーを効率的に利用することが可能な蓄熱発電システムおよび発電制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一の実施形態によれば、蓄熱発電システムは、第1伝熱流体を加熱する加熱部と、前記第1伝熱流体により加熱される蓄熱材料を含み、前記蓄熱材料内に蓄えられた熱により第2伝熱流体を加熱する蓄熱部とを備える。前記システムはさらに、前記第2伝熱流体を用いて発電を行う発電部と、前記加熱部と前記蓄熱部との間で前記第1伝熱流体を流通させる第1流路に設けられた1つ以上の第1流路切替部とを備える。前記システムはさらに、前記蓄熱部と前記発電部との間で前記第2伝熱流体を流通させる第2流路に設けられた1つ以上の第2流路切替部と、前記加熱部と前記発電部との間で前記第1および第2伝熱流体の少なくともいずれかを流通させる第3流路に設けられた1つ以上の第3流路切替部とを備える。前記システムはさらに、前記第1、第2、および第3流路切替部を制御する流路切替制御部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の蓄熱発電システムの構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態の蓄熱発電システムの動作を説明するための模式図である。
図3】第1実施形態の加熱制御部の構成を示す模式図である。
図4】第1実施形態の蓄熱モード演算器の構成を示す模式図である。
図5】第1実施形態の暖機モード演算器の構成を示す模式図である。
図6】第2実施形態の蓄熱発電システムの動作を説明するための模式図である。
図7】第2実施形態の加熱制御部の構成を示す模式図である。
図8】第2実施形態の蓄熱・暖機モード演算器の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1図8において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1実施形態)
[A]全体構成
図1は、第1実施形態の蓄熱発電システムの構成を示す模式図である。
【0015】
本実施形態の蓄熱発電システムは、加熱部1と、蓄熱部2と、発電部3と、第1送風部4aと、第2送風部4bと、発電出力計測器5と、温度計測器6、6a、6bと、加熱制御部7と、発電制御部8と、送風制御部9と、流路切替制御部10と、流路切替部21、22、23、24、25、26とを備えている。流路切替部21、22は第1流路切替部の例であり、流路切替部23、24は第2流路切替部の例であり、流路切替部25、26は第3流路切替部の例である。発電出力計測器5、温度計測器6、6a、6b、加熱制御部7、発電制御部8、送風制御部9、流路切替制御部10、および流路切替部21~26は、本実施形態の蓄熱発電システムを制御する発電制御システムを構成している。
【0016】
以下、図1を参照して、本実施形態の蓄熱発電システムの構成について説明する。この説明の中で、図2も適宜参照する。図2は、本実施形態の蓄熱発電システムの動作を説明するための模式図である。
【0017】
[A-1]加熱部1
図1は、加熱部1へのエネルギー入力11を示している。本実施形態の加熱部1は、エネルギー入力11として電力を受け取り、電気ヒータなどの発熱源により電力を熱に変換する。本実施形態の加熱部1はさらに、この熱を用いて低温の伝熱流体12cを加熱して高温の伝熱流体12aを生成する。なお、加熱部1は、電力以外のエネルギーを熱に変換してもよい。符号12a、12c等で示す伝熱流体は、第1伝熱流体の例である。
【0018】
[A-2]蓄熱部2
蓄熱部2は、その内部に蓄熱材料(図示せず)を含んでおり、蓄熱材料内に熱を蓄えることができる。蓄熱材料は、例えば砕石である。本実施形態の蓄熱部2は、例えば蓄熱モードまたは放熱モードで運転される。
【0019】
蓄熱モードでは、高温の伝熱流体12aが蓄熱部2へ入る。蓄熱部2内の蓄熱材料は、伝熱流体12aにより加熱される。これにより、蓄熱材料の温度が上昇する。一方、伝熱流体12aは、その温度が低下して低温の伝熱流体12bとなり、蓄熱部2の外部へ排出される。このように、蓄熱モードでは、蓄熱部2内の蓄熱材料の温度が上昇することにより、熱エネルギーが蓄熱部2内に蓄えられる。
【0020】
以下、伝熱流体12a、12b、12cをまとめて「伝熱流体12」とも表記することにする。図2に示す符号M1は、伝熱流体12が、蓄熱モードにおいて、加熱部1と蓄熱部2との間を循環する様子を示している。符号M1で示す伝熱流体12の流路は、第1流路の例である。以下、この流路を「蓄熱流路M1」とも表記する。
【0021】
放熱モードでは、低温の伝熱流体13aが蓄熱部2へ入る。蓄熱部2内の蓄熱材料の熱は、伝熱流体13aにより奪われる、すなわち、蓄熱材料が伝熱流体13aに放熱する。これにより、蓄熱材料の温度が低下する。一方、伝熱流体13aは、その温度が上昇して高温の伝熱流体13bとなり、蓄熱部2の外部へ排出される。このように、放熱モードでは、蓄熱部2内の蓄熱材料が熱エネルギーを放出することにより、蓄熱材料の温度が低下する。符号13a、13b等で示す伝熱流体は、第2伝熱流体の例である。
【0022】
なお、伝熱流体12aは、蓄熱部2内において下から上に流れるように図1に描かれているが、実際には下から上に流れるとは限らず、例えば上から下、右から左、または左から右に流れてもよい。同様に、伝熱流体13aは、蓄熱部2内において上から下に流れるように図1に描かれているが、実際には上から下に流れるとは限らず、例えば下から上、左から右、または右から左に流れてもよい。図1は、伝熱流体12a、伝熱流体13a等の流れる方向を模式的に示している。
【0023】
[A-3]発電部3
発電部3は、高温の伝熱流体13bの熱を利用して発電を行う。本実施形態の発電部3は、蒸気タービンサイクルを形成する蒸気タービン、発電機、熱交換器、復水器等を含んでいる。この場合、発電部3は、伝熱流体13bの熱により水から蒸気を生成し、蒸気により蒸気タービンを駆動し、蒸気タービンにより発電機を駆動し、発電機により発電を行う。図1は、発電部3からの発電出力14を示している。一方、伝熱流体13bは、その温度が低下して低温の伝熱流体13cとなり、発電部3の外部へ排出される。なお、発電部3は、蒸気タービンサイクル以外の態様で伝熱流体13bの熱を利用して発電を行ってもよい。本実施形態の発電部3は、例えば放熱モードまたは暖機モードで運転される。
【0024】
放熱モードでは、高温の伝熱流体13bが発電部3へ入る。発電部3は、前述したように、伝熱流体13bの熱を利用して発電を行う。その結果、伝熱流体13bは、その温度が低下して低温の伝熱流体13cとなり、発電部3の外部へ排出される。
【0025】
以下、伝熱流体13a、13b、13cをまとめて「伝熱流体13」とも表記することにする。図2に示す符号M2は、伝熱流体13が、放熱モードにおいて、蓄熱部2と発電部3との間を循環する様子を示している。符号M2で示す伝熱流体13の流路は、第2流路の例である。以下、この流路を「放熱流路M2」とも表記する。
【0026】
暖機モードでは、伝熱流体12、13が、加熱部1と発電部3との間を循環する。図2に示す符号M3は、伝熱流体12、13が、暖機モードにおいて、加熱部1と発電部3との間を循環する様子を示している。本実施形態の暖機モードでは、伝熱流体12、13が蓄熱部2を通過しない。符号M3で示す伝熱流体12、13の流路は、第3流路の例である。以下、この流路を「暖機流路M3」とも表記する。
【0027】
暖機流路M3は、蓄熱流路M1の一部と、放熱流路M2の一部と、接続流路L1と、接続流路L2とを含んでいる。接続流路L1は、蓄熱流路M1内の伝熱流体12aを放熱流路M2内に供給することができる。接続流路L2は、放熱流路M2内の伝熱流体13cを蓄熱流路M1内に供給することができる。そのため、暖機モードでは伝熱流体12と伝熱流体13とが混合され、混合された伝熱流体12、13が加熱部1と発電部3との間を循環する。接続流路L1は第1部分の例であり、接続流路L2は第2部分の例である。
【0028】
暖機モードでは、低温の伝熱流体12、13が加熱部1へ入る。加熱部1は、上述の熱を用いて当該低温の伝熱流体12、13を加熱して、高温の伝熱流体12、13を生成する。暖機モードでは、当該高温の伝熱流体12、13が発電部3へ入る。発電部3は、当該高温の伝熱流体12、13により暖機される。その結果、当該高温の伝熱流体12、13は、その温度が低下して低温の伝熱流体12、13となり、発電部3から加熱部1へと排出される。このように、暖機モードでは、発電部3が加熱部1からの伝熱流体12、13により直接暖機される。
【0029】
なお、伝熱流体12、13は、発電部3内において下から上に流れるように図1図2に描かれているが、実際には下から上に流れるとは限らず、例えば上から下、右から左、または左から右に流れてもよい。同様に、伝熱流体12、13は、加熱部1内において上から下に流れるように図1図2に描かれているが、実際には上から下に流れるとは限らず、例えば下から上、左から右、または右から左に流れてもよい。図1図2は、伝熱流体12、13の流れる方向を模式的に示している。
【0030】
本実施形態の暖機モードでは、混合された伝熱流体12、13が加熱部1と発電部3との間を循環しているが、伝熱流体12のみが加熱部1と発電部3との間を循環してもよいし、伝熱流体13のみが加熱部1と発電部3との間を循環してもよい。また、本実施形態の暖機モードでは、伝熱流体12と伝熱流体13が、互いに混合されていない状態で加熱部1と発電部3との間を循環してもよい。
【0031】
本実施形態の暖機モードでは、混合された伝熱流体12、13が加熱部1と発電部3との間を循環している。そのため、本実施形態の蓄熱発電システムのモードが、暖機モードから蓄熱モードまたは放熱モードに復帰した場合、復帰時に蓄熱流路M1内に存在する伝熱流体12、13が、蓄熱モード用の伝熱流体12となり、復帰時に放熱流路M2内に存在する伝熱流体12、13が、放熱モード用の伝熱流体13となる。よって、本実施形態の伝熱流体12と伝熱流体13は、同じ種類の伝熱流体とすることが望ましい。
【0032】
[A-4]第1送風部4aおよび第2送風部4b
第1送風部4aは、蓄熱モードにおいて、蓄熱部2から排出された伝熱流体12bを加熱部1へ流すために用いられる。図1は、第1送風部4aに向かって流れる伝熱流体を符号12bで示し、第1送風部4aを通過した伝熱流体を符号12cで示している。伝熱流体12cは、加熱部1に入り、加熱部1内で加熱されて高温の伝熱流体12aとなり、加熱部1の外部へ排出される。このように、第1送風部4aは、加熱部1と蓄熱部2との間で伝熱流体12a、12b、12cを流通(循環)させる。
【0033】
第2送風部4bは、放熱モードにおいて、発電部3から排出された伝熱流体13cを蓄熱部2へ流すために用いられる。図1は、第2送風部4bに向かって流れる伝熱流体を符号13cで示し、第2送風部4bを通過した伝熱流体を符号13aで示している。伝熱流体13aは、蓄熱部2に入り、蓄熱部2内で加熱されて高温の伝熱流体13bとなり、蓄熱部2の外部へ排出される。このように、第2送風部4bは、蓄熱部2と発電部3との間で伝熱流体13a、13b、13cを流通(循環)させる。
【0034】
第1送風部4aは、その運転目的に応じて、一定流量の伝熱流体12cを加熱部1へ流す場合と、変動する流量設定値に一致するように伝熱流体12cの流量制御を行う場合とがある。同様に、第2送風部4bは、その運転目的に応じて、一定流量の伝熱流体13aを蓄熱部2へ流す場合と、変動する流量設定値に一致するように伝熱流体13aの流量制御を行う場合とがある。いずれの場合においても、第1送風部4aおよび第2送風部4bの動作は、送風制御部9により制御される。
【0035】
なお、本実施形態の蓄熱発電システムは、伝熱流体12cを加熱部1へ流す第1送風部4aと、伝熱流体13aを蓄熱部2へ流す第2送風部4bとを備える代わりに、伝熱流体12cを加熱部1へ流し、伝熱流体13aを蓄熱部2へ流す単一の送風部を備えていてもよい。この場合、この送風部は、伝熱流体12c用の送風路と伝熱流体13a用の送風路とを切り替える切替装置を備えていてもよい。
【0036】
本実施形態の暖機モードでは、第1および第2送風部4a、4bは、加熱部1と発電部3との間で伝熱流体12a、12b、12cを流通(循環)させるために用いられる。本実施形態の蓄熱発電システムは、暖機モードにおいて、第1および第2送風部4a、4bのいずれか一方のみを動作させてもよい。
【0037】
[A-5]発電出力計測器5
発電出力計測器5は、発電部3からの発電出力14を計測し、発電出力14の計測結果を示す発電出力計測信号15を出力する。発電出力14の計測結果は例えば、発電部3から出力される電力のMW値である。本実施形態の発電出力計測信号15は、発電制御部8に入力される。
【0038】
[A-6]温度計測器6、6a、6b
温度計測器6は、蓄熱部2の内部温度を計測し、内部温度の計測結果を示す温度計測信号16を出力する。蓄熱部2の内部温度は、蓄熱部2の内部における温度である。本実施形態の温度計測器6は例えば、蓄熱部2の蓄熱材料内に挿入された温度検出部を備えており、蓄熱部2の内部温度として、蓄熱材料そのものの温度、または蓄熱材料内に含まれる空気や伝熱流体の温度を計測する。本実施形態の温度計測器6は、蓄熱部2内に伝熱流体12aが流入する蓄熱部2の入口付近で内部温度を計測する。内部温度の計測結果は例えば、蓄熱部2により計測された内部温度の値である。本実施形態の温度計測信号16は、加熱制御部7に入力される。
【0039】
温度計測器6aは、蓄熱部2の入口の上流で伝熱流体12aの温度を計測し、伝熱流体12aの温度の計測結果を示す温度計測信号16aを出力する。本実施形態の温度計測信号16aは、加熱制御部7に入力される。
【0040】
温度計測器6bは、蓄熱部2の出口の下流で伝熱流体12bの温度を計測し、伝熱流体12bの温度の計測結果を示す温度計測信号16bを出力する。本実施形態の温度計測信号16bは、送風制御部9に入力される。
【0041】
温度計測器6、6a、6bは、本実施形態では熱電対により温度を計測するが、その他の方法(例えば赤外線計測方法)で温度を計測してもよい。また、蓄熱部2の内部温度や伝熱流体12a、12bの温度を直接計測することが困難な場合には、温度計測器6、6a、6bは、オブザーバ理論やシミュレータなどを用いたソフトセンサとしてもよい。
【0042】
[A-7]加熱制御部7
加熱制御部7は、温度計測信号16、16aと、加熱指令信号17aとを受信し、受信したこれらの信号に基づいて加熱制御信号17を出力する。このようにして、加熱制御部7は、加熱部1により行われる伝熱流体12c(または伝熱流体12、13。以下同様)の加熱を制御する。加熱制御部7は例えば、加熱部1のエネルギー消費量または伝熱流体12aの温度が所望の値となるように、加熱部1の動作を制御する。
【0043】
なお、本実施形態の加熱制御部7の構成および機能のさらなる詳細は、後述する[B]項にて説明する。
【0044】
[A-8]発電制御部8
発電制御部8は、発電出力計測信号15と、発電指令信号18aとを受信し、受信したこれらの信号に基づいて発電制御信号18を出力する。具体的には、発電制御部8は、発電指令信号18aが示す発電出力14の設定値と、発電出力計測信号15が示す発電出力14の計測値とを一致させるように、発電部3に対して発電制御信号18を出力する。例えば、計測値が設定値よりも高い場合には、発電出力14を減少させるような発電制御信号18が出力される。一方、計測値が設定値よりも低い場合には、発電出力14を増加させるような発電制御信号18が出力される。このようにして、発電制御部8は、発電部3により行われる発電を制御する。
【0045】
発電制御部8は例えば、発電部3をこのように制御するために、発電部3の内部情報である様々なプロセス量を計測し、これらのプロセス量に基づいて、発電部3内の様々な操作端を操作する。プロセス量の例は、伝熱流体、蒸気、水などの圧力、温度、流量などである。操作端の例は、弁やポンプなどである。発電制御部8は、発電出力14の設定値と計測値とを一致させる制御を、例えばPID(Proportional-Integral-Derivative)制御により行う。
【0046】
[A-9]送風制御部9
送風制御部9は、温度計測信号16bと、送風指令信号19cとを受信し、受信したこれらの信号に基づいて送風制御信号19a、19bを出力する。具体的には、送風制御部9は、第1送風部4aの動作を第1送風制御信号19aにより制御し、第2送風部4bの動作を第2送風制御信号19bにより制御する。送風制御部9は、第1送風制御信号19aにより、加熱部1と蓄熱部2との間での伝熱流体12a~12cの流通を制御することができ、第2送風制御信号19bにより、蓄熱部2と発電部3との間での伝熱流体13a~13cの流通を制御することができる。また、送風制御部9は、第1および第2送風制御信号19a、19bにより、加熱部1と発電部3との間での伝熱流体12、13の流通を制御することができる。
【0047】
[A-10]流路切替制御部10および流路切替部21~26
流路切替部21~26の各々は、例えばバルブまたはダンパである。流路切替制御部10は、流路切替部21~26に開閉信号20を出力することで、流路切替部21~26の開閉を制御することができる。これにより、本実施形態の蓄熱発電システムにおける伝熱流体12、13の流通を制御することができる。
【0048】
流路切替部21、22は、蓄熱流路M1に設けられている。具体的には、流路切替部21、22は、蓄熱流路M1には含まれるが、暖機流路M3には含まれない位置に設けられている。本実施形態では、流路切替部21が、伝熱流体12に関する蓄熱部2の入口付近に配置され、流路切替部22が、伝熱流体12に関する蓄熱部2の出口付近に配置されている。
【0049】
流路切替部23、24は、放熱流路M2に設けられている。具体的には、流路切替部23、24は、放熱流路M2には含まれるが、暖機流路M3には含まれない位置に設けられている。本実施形態では、流路切替部23が、伝熱流体13に関する蓄熱部2の入口付近に配置され、流路切替部24が、伝熱流体13に関する蓄熱部2の出口付近に配置されている。
【0050】
流路切替部25、26は、暖機流路M3に設けられている。具体的には、流路切替部21、22は、暖機流路M3には含まれるが、蓄熱流路M1および放熱流路M2には含まれない位置に設けられている。本実施形態では、流路切替部25が、接続流路L1に配置され、流路切替部26が、接続流路L2に配置されている。
【0051】
本実施形態の流路切替制御部10は、蓄熱発電システムの運転モードに応じて、流路切替部21~26の開閉を次のように制御する。
【0052】
蓄熱モードでは、流路切替部21、22が開放され、流路切替部23、24、25、26が閉鎖される。これにより、加熱部1と蓄熱部2との間で伝熱流体12を流通させることが可能となる。
【0053】
放熱モードでは、流路切替部23、24が開放され、流路切替部21、22、25、26が閉鎖される。これにより、蓄熱部2と発電部3との間で伝熱流体13を流通させることが可能となる。
【0054】
暖機モードでは、流路切替部25、26が開放され、流路切替部21、22、23、24が閉鎖される。これにより、加熱部1と発電部3との間で伝熱流体12、13を流通させることが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態の蓄熱発電システムは、6つの流路切替部(21~26)を備えているが、本実施形態の蓄熱発電システムの流路切替部の個数は、6つ以外でもよい。
【0056】
[B]加熱制御部7の詳細
図3は、第1実施形態の加熱制御部7の構成を示す模式図である。
【0057】
本実施形態の加熱制御部7は、蓄熱モード演算器31と、暖機モード演算器32と、信号発生器33と、信号切替器34と、信号切替器35とを備えている。図3はさらに、蓄熱モード演算器31から出力される制御信号31aと、暖機モード演算器32から出力される制御信号32aと、信号発生器33から出力される制御信号33aと、信号切替器34から出力される制御信号34aと、信号切替器35から出力される加熱制御信号17とを示している。図3はさらに、加熱制御部7に入力される温度計測信号16a、蓄熱・暖機モード切替信号41、および放熱モード切替信号42を示している。
【0058】
本実施形態の蓄熱発電システムが蓄熱モードで運転される際には、蓄熱部2に入る伝熱流体12aの温度を、加熱部1で所望の値に制御することが必要となる。一方、本実施形態の蓄熱発電システムが暖機モードで運転される際には、発電部3に入る伝熱流体12、13の温度を、加熱部1で所望の値に制御することが必要となる。そのため、本実施形態の加熱制御部7は、蓄熱モード制御状態および暖機モード制御状態という2つのモードを有している。
【0059】
以下、図3を参照して、本実施形態の加熱制御部7の構成について説明する。この説明の中で、図4および図5も適宜参照する。図4は、本実施形態の蓄熱モード演算器31の構成を示す模式図である。図5は、本実施形態の暖機モード演算器32の構成を示す模式図である。
【0060】
[B-1]蓄熱モード演算器31
図4に示すように、蓄熱モード演算器31は、温度計測信号16aと加熱制御信号17とを受信し、制御信号31aを出力する。蓄熱モード演算器31は、信号発生器51と、PI(Proportional-Integral)補償器52とを備えている。
【0061】
信号発生器51は、予め設定されている値を出力する。本実施形態では、蓄熱モードの蓄熱部2に入る伝熱流体12aの温度の所望の値(例えば600℃)が、信号発生器51内に予め設定されており、この一定値を持つ出力信号が、信号発生器51からPI補償器52に出力される。これにより、蓄熱モードの蓄熱部2に好適な温度の伝熱流体12aを供給することが可能となる。
【0062】
PI補償器52は、減算器52aと、ゲイン設定器52bと、ゲイン設定器52cと、加算器52dと、積分器52eと、加算器52fと、減算器52gと、ゲイン設定器52hとを備えている。
【0063】
減算器52aは、信号発生器51から上記出力信号(設定値)を受信し、温度計測器6aから温度計測信号16a(プロセス値)を受信する。PI補償器52は、ゲイン設定器52b、52c、52hに適切な数値を設定しておくことにより、これらの設定値とプロセス値との差が0となるように補償動作を行う。具体的には、PI補償器52は、これらの設定値とプロセス値との差を0に近付けるような制御信号31aを出力する。減算器52a、積分器52e、および加算器52fはそれぞれ、PI補償のための減算、積分、および加算を行う。
【0064】
減算器52gは、制御信号31aと加熱制御信号17とを受信し、制御信号31aと加熱制御信号17との減算結果をゲイン設定器52hに出力する。本実施形態のPI補償器52は、減算器52gおよびゲイン設定器52hを用いて作った信号を加算器52dに入力し、ゲイン設定器52cからの信号そのものではなく、ゲイン設定器52cからの信号とゲイン設定器52hからの信号との加算結果を積分器52eに入力する。これにより、リセット・ワインドアップ動作を防止すること、すなわち、制御信号31aが加熱制御信号17に自動的にトラッキングするようにすることができる。
【0065】
[B-2]暖機モード演算器32
図5に示すように、暖機モード演算器32は、温度計測信号16aと加熱制御信号17とを受信し、制御信号32aを出力する。暖機モード演算器32は、信号発生器61と、PI補償器62とを備えている。
【0066】
信号発生器61は、予め設定されている値を出力する。本実施形態では、暖機モードの発電部3に入る伝熱流体12、13の温度の所望の値(例えば500℃)が、信号発生器61内に予め設定されており、この一定値を持つ出力信号が、信号発生器61からPI補償器62に出力される。これにより、暖機モードの発電部3に好適な温度の伝熱流体12、13を供給することが可能となる。本実施形態では、信号発生器61内の値(温度)が、信号発生器51内の値(温度)よりも低く設定されている。
【0067】
PI補償器62は、減算器62aと、ゲイン設定器62bと、ゲイン設定器62cと、加算器62dと、積分器62eと、加算器62fと、減算器62gと、ゲイン設定器62hで構成される。
【0068】
減算器62aは、信号発生器61から上記出力信号(設定値)を受信し、温度計測器6aから温度計測信号16a(プロセス値)を受信する。PI補償器62は、ゲイン設定器62b、62c、62hに適切な数値を設定しておくことにより、これらの設定値とプロセス値との差が0となるように補償動作を行う。具体的には、PI補償器62は、これらの設定値とプロセス値との差を0に近付けるような制御信号32aを出力する。減算器62a、積分器62e、および加算器62fはそれぞれ、PI補償のための減算、積分、および加算を行う。
【0069】
減算器62gは、制御信号32aと加熱制御信号17とを受信し、制御信号32aと加熱制御信号17との減算結果をゲイン設定器62hに出力する。本実施形態のPI補償器62は、減算器62gおよびゲイン設定器62hを用いて作った信号を加算器62dに入力し、ゲイン設定器62cからの信号そのものではなく、ゲイン設定器62cからの信号とゲイン設定器62hからの信号との加算結果を積分器62eに入力する。これにより、リセット・ワインドアップ動作を防止すること、すなわち、制御信号32aが加熱制御信号17に自動的にトラッキングするようにすることができる。
【0070】
[B-3]信号発生器33
信号発生器33(図3)は、予め設定されている値を出力する。本実施形態では、放熱モードにおける所望の加熱制御信号17の値である0が、信号発生器33内に予め設定されており、この一定値0を持つ制御信号33aが、信号発生器33から信号切替器35に出力される。
【0071】
[B-4]信号切替器34
信号切替器34は、蓄熱モード演算器31からの制御信号31aが入力される入力端子aと、暖機モード演算器32からの制御信号32aが入力される入力端子bと、蓄熱・暖機モード切替信号41が入力される制御端子cとを備えている。
【0072】
信号切替器34は、蓄熱・暖機モード切替信号41がTrueの値を持つ場合には「a」側の値を出力し、蓄熱・暖機モード切替信号41がFalseの値を持つ場合には「b」側の値を出力する。よって、蓄熱・暖機モード切替信号41がTrueの値を持つ場合には、制御信号31aが制御信号34aとして出力される。一方、蓄熱・暖機モード切替信号41がFalseの値を持つ場合には、制御信号32aが制御信号34aとして出力される。なお、蓄熱・暖機モード切替信号41は、蓄熱モードで運転されるときにTrueの値を持ち、暖機モードで運転されるときにFalseの値を持つ。
【0073】
[B-5]信号切替器35
信号切替器35は、信号発生器33からの制御信号33aが入力される入力端子aと、信号切替器34からの制御信号34aが入力される入力端子bと、放熱モード切替信号42が入力される制御端子cとを備えている。
【0074】
信号切替器35は、放熱モード切替信号42がTrueの値を持つ場合には「a」側の値を出力し、放熱モード切替信号42がFalseの値を持つ場合には「b」側の値を出力する。よって、放熱モード切替信号42がTrueの値を持つ場合には、制御信号33aが加熱制御信号17として出力される。一方、放熱モード切替信号42がFalseの値を持つ場合には、制御信号34aが加熱制御信号17として出力される。
【0075】
本実施形態の加熱制御部7は、以上のような構成および機能により、蓄熱モード制御状態および暖機モード制御状態という2つのモードに対応して、伝熱流体12、13の温度を所望の値に制御することができる。本実施形態の蓄熱発電システムは、流路切替部21~26の開閉を流路切替制御部10によりモードに応じて制御することができ、伝熱流体12、13の温度を加熱制御部7によりモードに応じて制御することができる。
【0076】
以上のように、本実施形態の蓄熱発電システムは、蓄熱モードや放熱モードで運転することができるだけでなく、暖機モードで運転することができる。本実施形態の蓄熱発電システムは、暖機モードにおいて流路切替部21~26により伝熱流体12、13の流路を切り替えることで、蓄熱モード用の伝熱流体12や放熱モード用の伝熱流体13を用いて発電部3を暖機することができる。
【0077】
よって、本実施形態によれば、加熱部1、蓄熱部2、および発電部3内でエネルギーを効率的に利用することが可能となる。例えば、エネルギー入力11が、蓄熱部2内に蓄えることができるエネルギー量を超過する場合には、蓄熱発電システムのモードを蓄熱モードから暖機モードに切り替え、余剰エネルギー(余剰電力)を用いて発電部3を予め暖機しておくことができる。また、本実施形態によれば、暖機モード運転を行うことにより、余剰電力を有効活用することや、発電開始までの待ち時間を短縮することが可能となる。
【0078】
(第2実施形態)
[A]全体構成
図6は、第2実施形態の蓄熱発電システムの動作を説明するための模式図である。
【0079】
本実施形態の蓄熱発電システムは、第1実施形態の蓄熱発電システムと同様に、図1に示す構成を有している。ただし、本実施形態の蓄熱発電システムは、上述の蓄熱モード、放熱モード、および暖機モードで運転することができるだけでなく、蓄熱と暖機とを同時に行う蓄熱かつ暖機モードで運転することができる。以下、図6を参照して、本実施形態の蓄熱かつ暖機モードについて説明する。
【0080】
[A-1]加熱部1、蓄熱部2、および発電部3
蓄熱かつ暖機モードでは、伝熱流体12、13が、加熱部1と蓄熱部2との間を循環し、かつ加熱部1と発電部3との間を循環する。図6に示す符号M4は、伝熱流体12、13が、蓄熱かつ暖機モードにおいて、加熱部1と蓄熱部2との間を循環し、かつ加熱部1と発電部3との間を循環する様子を示している。以下、符号M4で示す伝熱流体12、13の流路を「蓄熱かつ暖機流路M4」とも表記する。
【0081】
蓄熱かつ暖機モードでは、高温の伝熱流体12、13が接続流路L1の入口で分流され、分流後の一方の伝熱流体12、13が蓄熱部2へ入り、分流後の他方の伝熱流体12、13が発電部3へ入る。蓄熱部2内の蓄熱材料は、前者の伝熱流体12、13により加熱され、発電部3は、後者の伝熱流体12、13により暖機される。その結果、両者の伝熱流体12、13は、その温度が低下して低温の伝熱流体12、13となり、接続流路L2の出口で合流する。合流後の伝熱流体12、13は加熱部1へ入り、加熱部1により加熱される。その結果、合流後の伝熱流体12、13は、その温度が上昇して高温の伝熱流体12、13となり、接続流路L1の入口で再び分流される。このように、蓄熱かつ暖機モードでは、蓄熱と暖機とが同時に行われる。
【0082】
[A-2]流路切替制御部10および流路切替部21~26
本実施形態の流路切替制御部10は、蓄熱発電システムの蓄熱かつ暖機モードにおいて、蓄熱かつ暖機流路M4を実現するように流路切替部21~26の開閉を制御する。具体的には、流路切替制御部10は、蓄熱かつ暖機モードにおいて、流路切替部21、22、25、26を開放し、流路切替部23、24を閉鎖する。これにより、加熱部1と蓄熱部2との間と、加熱部1と発電部3との間において、伝熱流体12、13を流通させることが可能となる。
【0083】
[B]加熱制御部7の詳細
図7は、第2実施形態の加熱制御部7の構成を示す模式図である。
【0084】
本実施形態の加熱制御部7は、蓄熱・暖機モード演算器36と、信号発生器33と、信号切替器35とを備えている。図7はさらに、蓄熱・暖機モード演算器36から出力される制御信号36aと、信号発生器33から出力される制御信号33aと、信号切替器35から出力される加熱制御信号17とを示している。図7はさらに、加熱制御部7に入力される温度計測信号16a、蓄熱かつ暖機モード切替信号41a、および放熱モード切替信号42を示している。
【0085】
本実施形態の蓄熱発電システムが蓄熱モードで運転される際には、蓄熱部2に入る伝熱流体12aの温度を、加熱部1で所望の値に制御することが必要となる。一方、本実施形態の蓄熱発電システムが蓄熱かつ暖機モードで運転される際には、蓄電部2および発電部3に入る伝熱流体12、13の温度を、加熱部1で所望の値に制御することが必要となる。そのため、本実施形態の加熱制御部7は、蓄熱モード制御状態および蓄熱かつ暖機モード制御状態という2つのモードを有している。
【0086】
なお、本実施形態の加熱制御部7はさらに、第1実施形態の加熱制御部7と同様に、暖機モード制御状態を有していてもよい。暖機モード制御状態では、発電部3に入る伝熱流体12、13の温度が、加熱部1で所望の値に制御される。ただし、本実施形態の加熱制御部7は、暖機モードと蓄熱かつ暖機モードとで伝熱流体12、13の温度を同じ値に制御するため、加熱制御部7の暖機モード制御状態と、加熱制御部7の蓄熱かつ暖機モード制御状態は、同じ状態となる。
【0087】
以下、図7を参照して、本実施形態の加熱制御部7の構成について説明する。この説明の中で、図8も適宜参照する。図8は、本実施形態の蓄熱・暖機モード演算器36の構成を示す模式図である。
【0088】
[B-1]蓄熱・暖機モード演算器36
図8に示すように、蓄熱・暖機モード演算器36は、温度計測信号16aと、加熱制御信号17と、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aとを受信し、制御信号36aを出力する。蓄熱・暖機モード演算器36は、信号発生器71と、信号発生器72と、信号切替器73と、PI補償器74とを備えている。
【0089】
信号発生器71は、予め設定されている値を出力する。本実施形態では、蓄熱モードの蓄熱部2に入る伝熱流体12aの温度の所望の値(例えば600℃)が、信号発生器71内に予め設定されており、この一定値を持つ出力信号が、信号発生器71から信号切替器73に出力される。これにより、蓄熱モードの蓄熱部2に好適な温度の伝熱流体12aを供給することが可能となる。
【0090】
信号発生器72は、予め設定されている値を出力する。本実施形態では、蓄熱かつ暖機モードの蓄熱部2および発電部3に入る伝熱流体12、13の温度の所望の値(例えば500℃)が、信号発生器72内に予め設定されており、この一定値を持つ出力信号が、信号発生器72から信号切替器73に出力される。これにより、蓄熱かつ暖機モードの蓄熱部2および発電部3に好適な温度の伝熱流体12、13を供給することが可能となる。
【0091】
信号切替器73は、信号発生器71からの出力信号が入力される入力端子aと、信号発生器72からの出力信号が入力される入力端子bと、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aが入力される制御端子cとを備えている。
【0092】
信号切替器73は、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aがTrueの値を持つ場合には「a」側の値を出力し、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aがFalseの値を持つ場合には「b」側の値を出力する。よって、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aがTrueの値を持つ場合には、信号発生器71の出力信号(例えば500℃)が、信号切替器73からPI補償器74へと出力される。一方、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aがFalseの値を持つ場合には、信号発生器72の出力信号(例えば600℃)が、信号切替器73からPI補償器74へと出力される。なお、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aは、蓄熱かつ暖機モードで運転されるときにTrueの値を持ち、蓄熱モードで運転されるときにFalseの値を持つ。
【0093】
PI補償器74は、減算器74aと、ゲイン設定器74bと、ゲイン設定器74cと、加算器74dと、積分器74eと、加算器74fと、減算器74gと、ゲイン設定器74hとを備えている。
【0094】
減算器74aは、信号切替器73から上記出力信号(設定値)を受信し、温度計測器6aから温度計測信号16a(プロセス値)を受信する。PI補償器74は、ゲイン設定器74b、74c、74hに適切な数値を設定しておくことにより、これらの設定値とプロセス値との差が0となるように補償動作を行う。具体的には、PI補償器74は、これらの設定値とプロセス値との差を0に近付けるような制御信号36aを出力する。減算器74a、積分器74e、および加算器74fはそれぞれ、PI補償のための減算、積分、および加算を行う。
【0095】
減算器74gは、制御信号36aと加熱制御信号17とを受信し、制御信号36aと加熱制御信号17との減算結果をゲイン設定器74hに出力する。本実施形態のPI補償器74は、減算器74gおよびゲイン設定器74hを用いて作った信号を加算器74dに入力し、ゲイン設定器74cからの信号そのものではなく、ゲイン設定器74cからの信号とゲイン設定器74hからの信号との加算結果を積分器74eに入力する。これにより、リセット・ワインドアップ動作を防止すること、すなわち、制御信号36aが加熱制御信号17に自動的にトラッキングするようにすることができる。
【0096】
[B-2]信号発生器33
信号発生器33(図7)は、予め設定されている値を出力する。本実施形態では、放熱モードにおける所望の加熱制御信号17の値である0が、信号発生器33内に予め設定されており、この一定値0を持つ制御信号33aが、信号発生器33から信号切替器35に出力される。
【0097】
[B-3]信号切替器35
信号切替器35は、信号発生器33からの制御信号33aが入力される入力端子aと、蓄熱・暖機モード演算器36からの制御信号36aが入力される入力端子bと、放熱モード切替信号42が入力される制御端子cとを備えている。
【0098】
信号切替器35は、放熱モード切替信号42がTrueの値を持つ場合には「a」側の値を出力し、放熱モード切替信号42がFalseの値を持つ場合には「b」側の値を出力する。よって、放熱モード切替信号42がTrueの値を持つ場合には、制御信号33aが加熱制御信号17として出力される。一方、放熱モード切替信号42がFalseの値を持つ場合には、制御信号36aが加熱制御信号17として出力される。
【0099】
本実施形態の加熱制御部7は、以上のような構成および機能により、蓄熱モード制御状態および蓄熱かつ暖機モード制御状態という2つのモードに対応して、伝熱流体12、13の温度を所望の値に制御することができる。本実施形態の蓄熱発電システムは、流路切替部21~26の開閉を流路切替制御部10によりモードに応じて制御することができ、伝熱流体12、13の温度を加熱制御部7によりモードに応じて制御することができる。
【0100】
以上のように、本実施形態の蓄熱発電システムは、蓄熱モードや放熱モードで運転することができるだけでなく、蓄熱かつ暖機モードで運転することができる。本実施形態の蓄熱発電システムは、蓄熱かつ暖機モードにおいて流路切替部21~26により伝熱流体12、13の流路を切り替えることで、蓄熱モード用の伝熱流体12や放熱モード用の伝熱流体13を用いて蓄熱および暖機を行うことができる。
【0101】
よって、本実施形態によれば、加熱部1、蓄熱部2、および発電部3内でエネルギーを効率的に利用することが可能となる。例えば、蓄熱部2内の蓄熱エネルギー量が上限値に到達しそうな場合には、蓄熱発電システムのモードを蓄熱モードから蓄熱かつ暖機モードに切り替え、余剰エネルギー(余剰電力)を用いて発電部3を予め暖機しておくことができる。また、本実施形態によれば、蓄熱かつ暖機モード運転を行うことにより、余剰電力を有効活用することや、発電開始までの待ち時間を短縮することが可能となる。本実施形態によれば、蓄熱かつ暖機モードにより、様々な余剰電力状況に合わせた蓄熱発電システムの運転が可能となる。
【0102】
(その他の実施形態)
第1実施形態の加熱制御部7と、第2実施形態の加熱制御部7は、互いに異なる構成を有しているが、第1実施形態の暖機運転において第2実施形態の加熱制御部7を用いることは可能である。具体的には、第1実施形態の暖機運転において、図3図4、および図5に示す構成の代わりに、図7および図8に示す構成を用いることは可能である。この場合、第1実施形態の暖機運転では、蓄熱かつ暖機モード切替信号41aの代わりに蓄熱・暖機モード切替信号41を用いる。また、第2実施形態の暖機運転において第1実施形態の加熱制御部7を用いることも可能である。具体的には、第2実施形態の暖機運転において、図7おおび図8に示す構成の代わりに、図3図4、および図5に示す構成を用いることは可能である。この場合、第2実施形態の暖機運転では、蓄熱・暖機モード切替信号41の代わりに蓄熱かつ暖機モード切替信号41aを用いる。
【0103】
第1実施形態の蓄熱モード演算器31および暖機モード演算器32は、温度計測信号16aを用いたシンプルなフィードバック制御構成を有しているが、より複雑なフィードバック制御構成を有していてもよい。例えば、蓄熱モード演算器31および暖機モード演算器32のフィードバック制御構成は、温度計測信号16aに加えて、温度計測信号16および温度計測信号16aの一方または両方を用いていてもよい。
【0104】
また、第1実施形態の蓄熱モード演算器31および暖機モード演算器32は、それぞれPI補償器52、62を用いたフィードバック制御構成を有しているが、その他の補償器を用いたフィードバック制御構成を有していてもよい。このような補償器の例は、P補償器、I補償器、PID補償器などである。また、第1実施形態の蓄熱モード演算器31および暖機モード演算器32は、PI補償器52、62の代わりに、最適レギュレータ、モデル予測制御、H∞制御などを用いたフィードバック制御構成を有していてもよい。
【0105】
また、第1実施形態の蓄熱モード演算器31および暖機モード演算器32は、位置型演算のPI補償器52、62を備えているが、代わりに速度型構成のPI補償器を備えていてもよい。
【0106】
以上の説明は、第2実施形態の蓄熱・暖機モード演算器36にも適用可能である。
【0107】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0108】
1:加熱部、2:蓄熱部、3:発電部、4a:第1送風部、4b:第2送風部、
5:発電出力計測器、6、6a、6b:温度計測器、7:加熱制御部、
8:発電制御部、9:送風制御部、10:流路切替制御部、
11:エネルギー入力、12、12a、12b、12c:伝熱流体、
13、13a、13b、13c:伝熱流体、14:発電出力、
15:発電出力計測信号、16、16a、16b:温度計測信号、
17:加熱制御信号、17a:加熱指令信号、18:発電制御信号、
18a:発電指令信号、19a:第1送風制御信号、19b:第2送風制御信号、
19c:送風指令信号、20:開閉信号、
21、22、23、24、25、26:流路切替部、
31:蓄熱モード演算器、31a:制御信号、32:暖機モード演算器、
32a:制御信号、33:信号発生器、33a:制御信号、34:信号切替器、
34a:制御信号、35:信号切替器、36:蓄熱・暖機モード演算器、
36a:制御信号、41:蓄熱・暖機モード切替信号、
41a:蓄熱かつ暖機モード切替信号、42:放熱モード切替信号、
51:信号発生器、52:PI補償器、52a:減算器、
52b:ゲイン設定器、52c:ゲイン設定器、52d:加算器、
52e:積分器、52f:加算器、52g:減算器、52h:ゲイン設定器、
61:信号発生器、62:PI補償器、62a:減算器、
62b:ゲイン設定器、62c:ゲイン設定器、62d:加算器、
62e:積分器、62f:加算器、62g:減算器、62h:ゲイン設定器、
71:信号発生器、72:信号発生器、73:信号切替器、74:PI補償器、
74a:減算器、74b:ゲイン設定器、74c:ゲイン設定器、74d:加算器、
74e:積分器、74f:加算器、74g:減算器、74h:ゲイン設定器
図1
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図6
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図8