(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20250310BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20250310BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20250310BHJP
【FI】
G09B9/00 A
G05B23/02 H
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2021143110
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】小泉 敦彦
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-118007(JP,A)
【文献】特開平11-194814(JP,A)
【文献】特開昭56-140416(JP,A)
【文献】特開昭60-031176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G09B17/00 -19/26
G05B23/00 -23/02
G06Q50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント機器の運転状態を模擬的に発生させるシミュレータと、ネットワークを介して端末装置に前記シミュレータを遠隔操作させるネットワーク接続部とを備えたシミュレーション装置であって、
前記シミュレータは、
前記プラント機器の運転状態を示す運転情報を受け付ける入力受付部と、
前記運転情報に基づいて前記プラント機器の運転状態を設定する事象設定部と、
前記プラント機器を前記設定した運転状態とした場合に得られる前記プラント機器に関するデータを模擬的に生成する模擬動作生成部と、
前記データを画面表示の態様で表した画面表示情報を生成する画面表示生成部と、
を備え、
前記ネットワーク接続部は、
前記画面表示情報に基づいて、前記端末装置において表示可能な態様で表した映像情報を生成する映像情報生成部と、
前記端末装置への入力情報を受信して該入力情報を前記運転情報として前記入力受付部に送る操作部と、
前記映像情報を前記端末装置に送信するとともに前記入力情報を前記端末装置から受信するネットワークインタフェースと
、
を備え
た
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記シミュレータは、前記模擬動作生成部が生成した前記プラント機器に関するデータが異常値を示す場合に警告音信号を生成する音声情報生成部をさらに備え、
前記ネットワーク接続部は、前記警告音信号を前記端末装置において出力可能な態様で表したオーディオ情報を生成するオーディオ情報生成部をさらに備え、
前記ネットワークインタフェースは、さらに前記オーディオ情報を前記端末装置に送信することを特徴とする請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
複数の前記シミュレータおよび複数の前記ネットワーク接続部を備え、前記複数のネットワーク接続部それぞれが前記端末装置に前記複数のシミュレータそれぞれを遠隔操作可能に構成された請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記ネットワーク
接続部は、前記端末装置からのアクセスの可否を管理する
アクセス制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記シミュレータは、前記入力受付部が受け付ける運転情報および前記画面表示生成部が生成した前記画面表示情報の少なくとも一方を表示可能な監視端末をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のシミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や火力発電所のようなプラント設備においては、運転員にその運転操作の習熟訓練を行うため訓練シミュレータが設置されている。通常、その習熟訓練を受ける訓練生は、訓練シミュレータが設置された訓練所において訓練を受けている。しかし、訓練シミュレータの設置場所は限られているため、訓練シミュレータの設置場所から遠隔の場所においても訓練生が訓練を受けられることが求められている。
【0003】
従来、遠隔地において訓練シミュレータを利用する方法として、持ち運び可能な小型シミュレータ装置を用意する方法、訓練シミュレータに遠隔地から通信回線を通じてアクセスする方法などが知られている。このうち、通信回線を通じて訓練シミュレータにアクセスする方法は、訓練生が利用するリモート端末と訓練施設に設置された訓練シミュレータの間をネットワークで接続し、プラント設備の制御データやプラント動特性計算の結果などをやり取りすることで、訓練施設における訓練と同等の訓練を実現している。
【0004】
しかし、一般にプラント設備の訓練シミュレータが生成するデータや演算量は膨大であり、ネットワークを通じて伝送する場合ネットワークの通信量も大きくなる。そのため、ネットワーク負荷が高くなることによる伝送遅れが大きくなり、時間経過を変化させる倍速機能やプラント設備のシミュレーションの実行周期に影響を与えることがあった。すなわち、訓練施設における訓練シミュレータによる訓練と同等の訓練を訓練施設外の遠隔地において受けることが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-077896公報
【文献】特開2004-102948公報
【文献】特公平5-87836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のシミュレーション装置では、遠隔地からネットワークを介して利用した場合に、訓練施設において直接利用する場合と同等の訓練を実現することが難しいという問題がある。本発明の実施形態は、かかる課題を解決するためになされたもので、訓練シミュレータを遠隔利用した場合においても、直接利用する場合と同等の訓練を実現することのできるシミュレーション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のシミュレーション装置は、プラント機器の運転状態を模擬的に発生させるシミュレータと、ネットワークを介して端末装置にシミュレータを遠隔操作させるネットワーク接続部とを備える。シミュレータは、プラント機器の運転状態を示す運転情報を受け付ける入力受付部と、運転情報に基づいてプラント機器の運転状態を設定する事象設定部と、プラント機器を設定した運転状態とした場合に得られるプラント機器に関するデータを模擬的に生成する模擬動作生成部と、データを画面表示の態様で表した画面表示情報を生成する画面表示生成部とを備える。ネットワーク接続部は、画面表示情報に基づいて、端末装置において表示可能な態様で表した映像情報を生成する映像情報生成部と、端末装置への入力情報を受信して該入力情報を運転情報として入力受付部に送る操作部と、映像情報を端末装置に送信するとともに入力情報を端末装置から受信するネットワークインタフェースとを備えたネットワーク接続部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るシミュレーション装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るシミュレーション装置を起動する動作を示すフローチャートである。
【
図4】第1の実施形態に係るシミュレーション装置の訓練動作を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係るシミュレーション装置の訓練動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係るシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、第1の実施形態のシミュレーション装置を詳細に説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係るシミュレーション装置1は、ネットワーク接続部200と、シミュレータ300とを有している。ネットワーク接続部200は、シミュレータ300とネットワークNWとを接続するコンピュータである。シミュレータ300は、所定のプラント機器の所定の動作状態を模擬的に再現することができるコンピュータである。シミュレータ300は、模擬するプラント機器ごとに異なるシミュレータ301をさらに備えてもよい。ネットワーク接続部200は、ネットワークNWを介して端末装置101~103と接続可能に構成されている。
【0010】
シミュレータ300は、プラント機器の出力、回転数、圧力、温度など当該プラント機器を運転した際に得られる各種データを模擬的に生成する機能を有する。シミュレータ300のユーザ(運転員)は、生成された各種データを参照することで、当該プラント機器の模擬的な運転状態を把握することができる。模擬的な運転状態に基づいて、ユーザがプラント機器の出力や回転数などを制御する指示(制御指示)を与えると、シミュレータ300は、制御指示に応じて変化した運転状態に対応する各種データを随時生成する。すなわち、模擬的な運転状態に対してユーザが制御指示を与える繰り返しにより、ユーザは当該プラント機器の運転に係る訓練を受けることができる。
【0011】
シミュレータ300は、プラント機器の模擬的な運転状態を示す各種データの生成と、それに応じて与えられた制御指示とに基づく当該各種データの再生成とを続ける。従って、シミュレータ300は常に大量のデータを演算する必要がある。実施形態のシミュレーション装置1では、複数のシミュレータを具備している。例えばシミュレータ300とシミュレータ30は、それぞれ異なるプラント機器の運転状態を模擬的に発生させ、それぞれの運転状態に対応する各種データをそれぞれ生成する。シミュレータ300および301は、プラント機器における既知のシミュレータ装置により実現することができる。シミュレータ300および301は、その設置場所に備えられた訓練端末を利用することで、直接ユーザに訓練を提供することが可能である。
【0012】
ネットワーク接続部200は、シミュレータ300および301が生成した運転状態に対応する各種データを変換し、端末装置101~103を通じて訓練環境を提供する機能を有する。すなわち、シミュレータ300および301の設置場所における訓練端末を、端末装置101~103上に再現する機能を有する。ネットワーク接続部200は、シミュレータ300および301の設置場所における訓練端末が本来受け付ける制御指示を、ネットワークNWを介して端末装置101~103から受け付け、対応するシミュレータ300~301に与える機能を有する。すなわち、ネットワーク接続部200は、シミュレータ300~301を遠隔地にある端末装置101~103に遠隔制御させる機能(いわゆるリモートデスクトップ機能)を提供するホストサーバである。
【0013】
ネットワークNWは、例えばインターネットに代表される通信回線である。端末装置101~103は、いわゆるクライアントコンピュータである。端末装置101~103は、パーソナルコンピュータなどにより実現され得る。
【0014】
(シミュレータ)
続いて、
図2を参照してこの実施形態の構成を詳細に説明する。
図2に示すように、第1の実施形態に係るシミュレータ300は、シミュレータインタフェース310、事象設定部320、音声情報生成部330、画面表示生成部340、模擬動作生成部350、入力受付部360、入出力インタフェース(I/F)370およびデータベース380を備えている。
【0015】
シミュレータインタフェース310は、シミュレータ300とネットワーク接続部200と接続するインタフェースである。シミュレータインタフェース310は、シミュレータ300が生成した各種データや演算結果などをネットワーク接続部200に送信する機能を有する。また、シミュレータインタフェース310は、ネットワーク接続部200を介して送られる制御指示を受信する機能を有する。
【0016】
事象設定部320は、シミュレータ300が模擬的に生じさせるプラント機器の運転状態を設定する演算ブロックである。プラント機器の運転状態は、例えば正常運転、故障発生、事故発生などの様々な事象が含まれる。事象設定部320は、プラント機器の運転状態を実現するために必要なプラント機器の動作パラメータを決定する。決定した動作パラメータは、図示しないメモリやデータベース380などに記憶される。
【0017】
音声情報生成部330は、シミュレータ300が模擬的に発生させるプラント機器の運転状態において、当該プラント機器が発する警告音などの音声情報を疑似的に発生させる演算ブロックである。音声情報生成部330は、あらかじめ当該プラント機器が発生する警告音などを音声情報としてデータベース380などに記憶しており、プラント機器の模擬的な運転状態に応じた音声情報を出力することができる。
【0018】
画面表示生成部340は、シミュレータ300がシミュレーション動作する際に生成した運転状態に対応する各種データを、ユーザが視認できる形の画像情報に変換する演算ブロックである。画面表示生成部340が生成する画像情報は、例えば、生成した各種データを計器盤に模した画像に表示させる等の態様が例示される。
【0019】
模擬動作生成部350は、シミュレータ300においてプラント機器の模擬的な運転状態を発生させる演算ブロックである。模擬動作生成部350は、事象設定部320において設定した事象や決定した動作パラメータに基づいてプラント機器を運転させた場合に、当該プラント機器に配設されたセンサなどが検出可能な各種データを模擬的に生成する。すなわち、実際のプラント機器が運転されている状態を仮想的に再現することができる。
【0020】
入力受付部360は、訓練を受けるユーザや教官が与えるプラント機器の出力や回転数などの制御指示を受け付け、模擬動作生成部350に送る演算ブロックである。模擬動作生成部350は、入力受付部360が受け付けた制御指示に基づいて、プラント機器の模擬的な動作状態を修正することができる。例えば、入力受付部360がプラント機器の出力変更の制御指示を受け付けた場合、事象設定部320は、受け付けられた制御指示に基づきプラント機器の動作パラメータを修正する。その結果、模擬動作生成部350は、シミュレーション動作を修正し、修正された動作状態に対応する各種データを生成する。
【0021】
入出力インタフェース(I/F)370は、ユーザや教官が制御指示を入力可能なインタフェースである。また、入出力インタフェース370は、音声情報生成部330が生成した音声情報や画面表示生成部340が生成した画像情報をユーザや教官に提供可能なインタフェースである。すなわち、入出力インタフェース370は、シミュレータ300の出力データを出力し入力データを受け付けるコンソール端末として機能する。ユーザは、入出力インタフェース370を通じて直接シミュレータ300を利用し訓練を受けることができる。
【0022】
入出力インタフェース370は、端末装置がネットワーク接続部200を介してシミュレータ300を遠隔操作している場合に、端末装置における入力内容や端末装置への出力内容を監視し、出力する機能を有してもよい。この機能は、端末装置によりシミュレータが遠隔操作されている場合に、その内容をシミュレータが設置されたサイトにおいて監視することを可能にする。
【0023】
データベース380は、シミュレータ300が模擬的に発生させるプラント機器の動作を決定づけるパラメータなどを記憶する。データベース380に記憶させる各種パラメータは、模擬動作生成部350が生成したプラント機器の運転状態を示す各種データに基づいて演算した演算結果を記憶してもよいし、実際に稼働しているプラント機器において検出された各種データを記憶してもよい。模擬動作生成部350は、データベース380に記憶された各種パラメータと設定された動作パラメータに基づいてプラント機器の運転状態に対応する各種データを生成する。
【0024】
なお、実施形態のシミュレーション装置1では、シミュレータ300に加えてシミュレータ301をさらに備えている。シミュレータ301は、シミュレータ300とは異なるプラント機器などに対応する。すなわち、実施形態のシミュレーション装置1は、複数のプラント機器のシミュレーション動作を実現することができる。
図2に示すように、シミュレータ301は、シミュレータインタフェース311、事象設定部321、音声情報生成部331、画面表示生成部341、模擬動作生成部351、入力受付部361、入出力インタフェース(I/F)371およびデータベース381を備えている。ここで、シミュレータ301をなすシミュレータインタフェース311、事象設定部321、音声情報生成部331、画面表示生成部341、模擬動作生成部351、入力受付部361、入出力インタフェース(I/F)371およびデータベース381は、それぞれシミュレータ300をなすシミュレータインタフェース310、事象設定部320、音声情報生成部330、画面表示生成部340、模擬動作生成部350、入力受付部360、入出力インタフェース(I/F)370およびデータベース380それぞれに対応し、共通する機能を有する。
【0025】
(ネットワーク接続部)
図2に示すように、第1の実施形態に係るネットワーク接続部200は、ネットワークインタフェース(NWインタフェース)205、シミュレータインタフェース210、アクセス制御部215、制御部220、映像情報生成部225、監視部230、オーディオ情報生成部235、訓練設定部240、出力制御部245および操作部250を備えている。この実施形態のネットワーク制御部200は、二つのシミュレータ300および301が接続されている。
【0026】
ネットワークインタフェース205は、ネットワーク接続部200をインターネットなどのネットワークNWに接続するインタフェースである。ネットワークインタフェース205は、ネットワークNWを介して端末装置101~103と接続する。
【0027】
シミュレータインタフェース210は、ネットワーク接続部200をシミュレータ300および301に接続するインタフェースである。
【0028】
アクセス制御部215は、ネットワークNWを介してネットワークインタフェース205にアクセスする端末装置101~103を管理する演算ブロックである。アクセス制御部215は、シミュレーション装置1へのアクセスを許可する端末装置を管理するとともに、ログインするユーザや権限を管理し、情報漏洩を防止する機能を有する。アクセス制御部215による管理機能は、例えば、端末装置のIPアドレスの管理と接続制限、ユーザIDとパスワードの管理と接続制限、接続ログの記録などが例示される。この実施形態のシミュレーション装置では、ネットワーク接続部200にシミュレータ300および301が接続されているから、アクセス制御部215は、ネットワークNWとの接続点において複数のシミュレータに対するセキュリティ対策を提供することができる。
【0029】
制御部220は、シミュレータ300および301を制御する演算ブロックである。制御部220は、シミュレータ300および301の起動や停止などを実行する。
【0030】
映像情報生成部225は、シミュレータ300および301の画面表示生成部340および341が生成した画像情報に基づいて、端末装置101~103に提供する映像情報を生成する演算ブロックである。映像情報は、端末装置101~103が自己の表示部に表示可能な形態の情報である。映像情報生成部225は、生成した映像情報に含まれる各種情報(例えばウィンドウ表示される映像情報)の表示サイズや表示位置を変更する機能を有してもよい。また、映像情報生成部225は、ウィンドウ表示された各種情報を選択的に表示する機能を有してもよい。
【0031】
監視部230は、シミュレータ300および301それぞれの状態を監視する演算ブロックである。監視部230は、シミュレータ300および301において発生したエラーや不具合を監視し、必要に応じてアラームを発するとともに図示しないメモリにログ出力する機能を有する。
【0032】
オーディオ情報生成部235は、シミュレータ300および301の音声情報生成部330および331が生成した音声情報に基づいて、端末装置101~103に提供するオーディオ情報を生成する演算ブロックである。オーディオ情報は、端末装置101~103が自己のオーディオ出力部に出力可能な形態の情報である。オーディオ情報生成部235は、音声情報生成部330および331が生成した音声情報それぞれをミキシングする機能を有してもよい。
【0033】
訓練設定部240は、シミュレータ300および301の使用形態を設定する演算ブロックである。シミュレータ300および301の使用形態とは、例えば遠隔地からのリモート訓練、サイトにおける通常訓練、リモート訓練と通常訓練とを組み合わせたミックス訓練などが例示される。また、訓練設定部240は、シミュレータ300および301が模擬的に発生させるプラント機器の事象を設定してもよい。プラント機器の事象とは、例えば正常運転、故障発生、事故発生などのプラント機器の状態が例示される。
【0034】
出力制御部245は、端末装置101~103に対して提供する映像情報やオーディオ情報などの出力情報を制御する演算ブロックである。出力制御部245は、映像情報生成部225が生成した映像情報やオーディオ情報生成部235が生成したオーディオ情報を供給する端末装置を特定してネットワークインタフェース205を介して出力する機能を有する。
【0035】
操作部250は、端末装置101~103から受けた操作指示に基づいてシミュレータ300および301の入力受付部360に操作指示や制御指示を送る演算ブロックである。すなわち、操作部250は、ネットワークインタフェース205を介して受け取った操作指示や制御指示に基づいてシミュレータ300および301を操作する。
【0036】
続いて、
図2ないし
図5を参照して、実施形態のシミュレーション装置1の動作を説明する。この実施形態のシミュレーション装置1では、シミュレータ300および301の入出力インタフェース370および371それぞれを通じて、直接サイトにて訓練を提供することができる。一方、シミュレータ300および301が設置されたサイトから遠隔地にある端末装置101~103に対しても訓練を提供することができる。以下の説明では、ユーザが端末装置101を利用してシミュレータ300および301による訓練を受ける例について説明する。
【0037】
(端末装置のアクセス)
ユーザが端末装置101に対してシミュレーション装置1の起動操作を行うと、端末装置101は、ネットワークNWを介してネットワーク接続部200に接続要求を送信する(S400)。
【0038】
ネットワークインタフェース205は、端末装置101からの接続要求を受信し、アクセス制御部215は、端末装置101からの接続要求についてアクセス認証を実行する(S401)。アクセス制御部215は、端末装置やそのユーザ、権限などを管理しており、端末装置から送られた接続要求について、要求を発した端末装置の適否、端末装置のユーザの権限の適否を検証する。検証の結果、端末装置やユーザの接続要求を認証できない場合(S402のNo)、アクセス制御部215は接続要求を拒否して終了する。
【0039】
検証の結果、端末装置やユーザの接続要求を認証できた場合(S402のYes)、制御部220は、シミュレータ300のシステムを起動する(S403)。このとき、制御部220は、シミュレータ300に加えてシミュレータ301を併せて起動してもよい。以下の説明では、シミュレータ300を起動する例で説明する。シミュレータ300は、制御部220によるシステム起動動作に応じて起動する(S404)。
【0040】
シミュレータ300の起動シーケンスが完了すると、画面表示生成部340は、シミュレータ300の起動画面を表す画像情報を生成する(S405)。画面表示生成部340が生成した起動画面は、入出力インタフェース370を通じて出力することができる。すなわち、ユーザは入出力インタフェース370を通じて起動画面を見ることが可能である。
【0041】
画面表示生成部340が起動画面を表す画像情報を生成すると、映像情報生成部225は、画像情報を、端末装置101が表示可能な形式の映像情報に変換する(S406)。ネットワークインタフェース205は、映像情報を端末装置101に送信する。端末装置101は、受信した映像情報をディスプレイに表示する(S407)。
【0042】
実施形態のシミュレーション装置1によれば、シミュレータ300が生成した画面表示を表す画像情報をネットワークNWにより転送可能かつ端末装置101が自己の表示部に表示可能な形式の映像情報に変換し、ネットワークNWを通じて端末装置101に転送する。映像情報を受信した端末装置101は、自己のディスプレイ等に画面表示を表示させるので、ネットワーク上には表示画面のデータのみが伝送される。これにより、ネットワークNWの負荷をかけずに端末装置101によりシミュレータ300の画面表示を表示させることができる。
【0043】
(訓練の動作)
端末装置101のアクセス認証に成功してシミュレータ300が起動すると、シミュレータ300は、シミュレーション対象のプラント機器の動作パラメータを受付可能となる。ユーザが端末装置101に訓練内容を入力すると、訓練設定部240は、ネットワークNWを介して端末装置101での入力内容を受け付ける(S410)。訓練設定部240は、受け付けた入力内容に対応するプラント機器の動作パラメータや運転状態を設定する(S411)。
【0044】
このとき、端末装置101から訓練設定部204に送られる情報は、端末装置101におけるユーザの入力内容そのもの(入力文字そのもの)であり、例えばキーボード入力した文字情報のみが直接訓練設定部240に送られる。すなわち、ネットワークNW上には訓練設定部240が設定したプラント機器の動作パラメータや運転状態に関する実質的な情報は直接伝送されない。
【0045】
操作部250は、設定された動作パラメータや運転状態をシミュレータ300の入力受付部360に与える。なお、シミュレータ300が設置されたサイトにおいて教官が入出力インタフェース370を通じてプラント機器の動作パラメータや運転状態を入力受付部360に直接設定してもよい。
【0046】
入力受付部360が設定された動作パラメータや運転状態を受け取ると、事象設定部320は、シミュレータ300が模擬的に生じさせるプラント機器の状態を発生させる。具体的には、与えられた動作パラメータや運転状態に基づいて、例えば正常運転、故障発生、事故発生などの様々な事象を設定し、プラント機器の動作パラメータを決定する(S412)。
【0047】
プラント機器の動作パラメータが決定されると、模擬動作生成部350は、決定内容に基づいてプラント機器の運転状態に対応する各種データを生成する。生成されるデータは、プラント機器の出力、回転数、圧力、温度などが例示される(S413)。
【0048】
模擬動作生成部350がプラント機器の運転状態に対応する各種データを生成すると、画面表示生成部340は、プラント機器のコンソール画像の計器上に当該データを表示させた画像情報を生成する(S414)。画像情報は、入出力インタフェース370を通じてユーザに提供可能な状態となる。
【0049】
映像情報生成部225は、画面表示生成部340が画像情報を生成すると、画像情報を、端末装置101が表示可能な形式の映像情報に変換する(S415)。ネットワークインタフェース205は、映像情報を端末装置101に送信する。端末装置101は、受信した映像情報をディスプレイに表示する(S416)。映像情報は、端末装置101に直接表示が可能な状態の情報である。従って、ネットワークNWには模擬動作生成部350が生成した各種データそのものは伝送されず、端末装置101に表示可能なデータが伝送される。
【0050】
実施形態のシミュレーション装置1によれば、シミュレータ300の模擬動作生成部350がプラント機器の運転状態に対応する各種データを生成し、当該データをコンソール画像の計器上に表示させた画像情報を生成する。そして、この画像情報に基づいて映像情報をネットワークNWを介して端末装置101に表示させている。従って、ネットワーク上には表示画面のデータのみが伝送される。これにより、ネットワークNWの負荷をかけずに端末装置101によりシミュレータ300の画面表示を表示させることができる。また、プラント機器の運転状態に対応する各種データの演算をシミュレータ300において実行し、端末装置では演算処理を行わないので、端末装置の負担を軽くするとともに、ネットワーク上のトラヒックを抑えることができる。さらに、ネットワークNW上にプラント機器の運転状態に対応する各種データそのものは伝送されないので、セキュリティ上も有利である。
【0051】
(事象発生)
事象設定部320が発生させたプラント機器の状態には、事故や故障の発生などが含まれている。すなわち、事象設定部320が決定するプラント機器の動作パラメータには、事故や故障発生に対応する動作パラメータが含まれている(S420)。模擬動作生成部350は、事象設定部320が生成した事故や故障発生に対応する動作パラメータを用いて、プラント機器の事故や故障発生に対応する運転状態の各種データを生成する(S421)。
【0052】
模擬動作生成部350がプラント機器の事故や故障発生に対応する各種データを生成すると、画面表示生成部340は、プラント機器のコンソール画像の計器上に当該データを表示させた画像情報を生成する(S422)。画像情報は、入出力インタフェース370を通じてユーザに提供可能な状態となる。
【0053】
また、模擬動作生成部350がプラント機器の事故や故障発生に対応する運転状態の各種データを生成すると、音声情報生成部330は、プラント機器の事故や故障発生に対応する警報音の音声情報を生成する(S423)。警報音の音声情報は、ベルやブザーなどの音響情報でもよいし、事故や故障の態様に対応した音声情報でもよい。
【0054】
画面表示生成部340が画像情報を生成すると、映像情報生成部225は、画像情報を端末装置101が表示可能な形式の映像情報に変換する(S424)。また、音声情報生成部330が音声情報を生成すると、オーディオ情報生成部235は、音声情報を端末装置101が出力可能な形式のオーディオ情報に変換する(S425)。オーディオ情報は、端末装置が直接再生可能な音声情報である。
【0055】
ネットワークインタフェース205は、映像情報およびオーディオ情報を端末装置101に送信する。端末装置101は、受信した映像情報をディスプレイに表示するとともに(S426)、オーディオ情報を出力する(S427)。これらの動作により、端末装置101のユーザは、プラント機器の模擬運転中に事故や故障が発生したことを知ることができる。
【0056】
端末装置101は、プラント機器の模擬運転中の事故や故障に対応したユーザの運転操作を受け付け(S428)、訓練設定部240は、ネットワークNWを介して端末装置101における入力内容を受け付ける。訓練設定部240は、受け付けた入力内容に対応するプラント機器の動作パラメータや運転状態を設定する(S429)。
【0057】
このとき、端末装置101から訓練設定部204に送られる情報は、端末装置101におけるユーザの入力内容そのものであり、例えばキーボード入力した文字情報のみが直接訓練設定部240に送られる。すなわち、ネットワークNW上には訓練設定部240が設定したプラント機器の動作パラメータや運転状態に関する実体的な情報そのものは直接伝送されない。
【0058】
操作部250は、シミュレータ300の入力受付部360に対して設定された動作パラメータや運転状態を与える(S430)。なお、シミュレータ300が設置されたサイトにおいて教官が入出力インタフェース370を通じてプラント機器の動作パラメータや運転状態を入力受付部360に直接設定してもよい。設定された動作パラメータや運転状態を入力受付部360が受け取ると、事象設定部320は、シミュレータ300が模擬的に生じさせるプラント機器の運転状態を発生させる。このときに発生される状態は、ユーザが模擬運転中の事故や故障に対応して再設定された内容となる。
【0059】
プラント機器の動作パラメータが決定されると、模擬動作生成部350は、決定内容に基づいてプラント機器の運転状態に対応する各種データを生成する。生成されるデータは、プラント機器の出力、回転数、圧力、温度などが例示される(S431)。
【0060】
模擬動作生成部350がプラント機器の運転状態に対応する各種データを生成すると、画面表示生成部340は、プラント機器のコンソール画像の計器上に当該データを表示させた画像情報を生成する(S432)。画像情報は、入出力インタフェース370を通じてユーザに提供可能な状態となる。
【0061】
映像情報生成部225は、画面表示生成部340が画像情報を生成すると、画像情報を、端末装置101が表示可能な形式の映像情報に変換する(S433)。ネットワークインタフェース205は、映像情報を端末装置101に送信する。端末装置101は、受信した映像情報をディスプレイに表示する(S434)。
【0062】
実施形態のシミュレーション装置1によれば、模擬的に事故や故障発生の運転状態を発生させた場合、ユーザは端末装置101を通じてその事象を発見することができ、かつその事象に対応する運転操作を端末装置101から行うことができる。このとき、端末装置101とシミュレーション装置1の間は、シミュレーション装置1の画面表示に対応する映像情報と、シミュレーション装置1が発する警告音当に対応するオーディオ情報が流れるのみであり、シミュレータ300が取扱い各種データや模擬動作生成部350が生成した演算データは伝送されない。従って、ネットワークNWに負荷をかけることがなくなる。また、各種データや演算データを直接伝送しないので、セキュリティ対策上有利なシステムとすることができる。
【0063】
(第2の実施形態)
続いて、
図6を参照して第2の実施形態について説明する。
図6に示すように、第2の実施形態に係るシミュレーション装置2は、第1の実施形態のシミュレーション装置1におけるネットワーク接続部200およびシミュレータ300に加えて、ネットワーク接続部202およびシミュレータ302を備えたものである。以下の説明において、第1の実施形態と共通する要素については共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0064】
図2に示す第1の実施形態のシミュレーション装置1では、ネットワーク接続部200が複数のシミュレータ300および301を収容し、端末装置がシミュレータ300および301の遠隔操作を可能にしている。
図6に示す第2の実施形態のシミュレーション装置2では、複数のネットワーク接続部200および202が、シミュレータ300および302それぞれを収容し、端末装置がシミュレータ300および302の遠隔操作を可能にしている。
【0065】
図6に示すように、ネットワーク接続部202は、ネットワークインタフェース(NWインタフェース)207、シミュレータインタフェース212、アクセス制御部217、制御部222、映像情報生成部227、監視部232、オーディオ情報生成部237、訓練設定部242、出力制御部247および操作部252を備えている。これらの各要素は、第1の実施形態に係るネットワーク接続部200におけるネットワークインタフェース(NWインタフェース)205、シミュレータインタフェース210、アクセス制御部215、制御部220、映像情報生成部225、監視部230、オーディオ情報生成部235、訓練設定部240、出力制御部245および操作部250それぞれに対応し、共通する機能を有する。
【0066】
シミュレータ302は、シミュレータ300と異なるプラント機器の運転状態を模擬的に発生させ、各種データを生成する。シミュレータ302は、シミュレータインタフェース312、事象設定部322、音声情報生成部332、画面表示生成部342、模擬動作生成部352、入力受付部362、入出力インタフェース(I/F)372およびデータベース382を備えている。これらの各要素は、シミュレータ300におけるシミュレータインタフェース310、事象設定部320、音声情報生成部330、画面表示生成部340、模擬動作生成部350、入力受付部360、入出力インタフェース(I/F)370およびデータベース380それぞれに対応し、共通する機能を有する。
【0067】
第1の実施形態のシミュレーション装置1では、端末装置は単一のネットワーク接続部を介して複数のシミュレータを操作可能としていたが、第2の実施形態のシミュレーション装置2では、複数のネットワーク接続部を備え、それぞれのネットワーク接続部配下のシミュレータを操作可能としている。第2の実施形態に係るシミュレーション装置2は、シミュレータごとに個別のネットワーク接続部を備えるので、ネットワーク接続部の負荷を抑えることができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…シミュレーション装置、101~103…端末装置、NW…ネットワーク、200…ネットワーク接続部、205…ネットワークインタフェース、210…シミュレータインタフェース、215…アクセス制御部、220…制御部、225…映像情報生成部、230…監視部、235…オーディオ情報生成部、240…訓練設定部、245…出力制御部、250…操作部、300~302…シミュレータ、310…シミュレータインタフェース、320…事象設定部、330…音声情報生成部、340…画面表示生成部、350…模擬動作生成部、360…入力受付部、370…入出力インタフェース、380…データベース。