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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】健康管理処理システムおよび健康管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20250310BHJP
   G16H 10/20 20180101ALI20250310BHJP
【FI】
G06Q10/06
G16H10/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021196154
(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公開番号】P2023082405
(43)【公開日】2023-06-14
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 喜実
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】國信 脩平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】三之宮 光太郎
【審査官】山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102046(JP,A)
【文献】特開2020-149150(JP,A)
【文献】特開2002-125972(JP,A)
【文献】特開2008-158623(JP,A)
【文献】特開2020-027364(JP,A)
【文献】特開2005-011329(JP,A)
【文献】特開2003-242202(JP,A)
【文献】リスクアセスメント情報活用システムの開発,電力中央研究所報告 S03005 ,財団法人 電力中央研究所ヒューマンファクター研究センター 財団法人 電力中央研究所,2004年03月01日,p.1-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員の健康を管理する健康管理システムであって、
質問文ごとに、カテゴリ、確認周期、重みおよび回答方法が付与される質問リストにおいて、前記作業員から取得した生体情報および前記作業員の当日の作業スケジュールに関連する質問文に付与された重みを更新し、
前記質問リストから前記重みが高い順に規定数の質問文を選択し、
選択された前記質問文に対する回答の履歴において前記作業員が適切な回答が行っているかを判定し、適切な回答でない場合、選択された前記質問文を修正して、前記作業員の体調に関する当日の問診を作成する問診作成部と、
前記生体情報および前記問診の回答結果から前記作業員の体調を推定する体調推定部と、
入力と作業における危険ポテンシャルの関連性を重みづけして保持するデータベースを有し、
前記生体情報および前記当日の作業スケジュールに応じて、前記データベースの重みを更新し、
前記データベースから、前記問診の回答結果から推定される前記作業における危険ポテンシャルを抽出する危険ポテンシャル推定部と、
推定した前記作業員の体調、および前記データベースの重み順に、抽出された前記危険ポテンシャルを提示する出力部、を備えることを特徴とする健康管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の健康管理システムであって、
前記作業員が保有する携帯情報端末に、前記危険ポテンシャルを提示することを特徴とする健康管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の健康管理システムであって、
前記作業員が保有する携帯情報端末に、当日の問診を提示することを特徴とする健康管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の健康管理システムであって、
前記体調推定部は、前記生体情報と、前記問診の回答結果の乖離度から前記作業員の体調を推定することを特徴とする健康管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の健康管理システムであって、
前記データベースの前記入力は前記生体情報および前記作業員の当日の作業スケジュールで定まる業務内容、過去の履歴、あるいは外的要因であることを特徴とする健康管理システム。
【請求項6】
請求項に記載の健康管理システムであって、
前記体調推定部は、予め設定されたカテゴリごとの寄与率および推定された前記体調から算出された重みの積和を体調スコアとして算出することを特徴とする健康管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の健康管理システムであって、
前記作業員が保有する携帯情報端末に、前記危険ポテンシャルおよび当該危険ポテンシャルの対策案、および、規定の安全宣言を発声させ、これを録音もしくは録画することを特徴とする健康管理システム。
【請求項8】
計算機を用いて作業員の健康を管理する健康管理方法であって、
前記計算機の問診作成部が、
質問文ごとに、カテゴリ、確認周期、重みおよび回答方法が付与される質問リストにおいて、前記作業員から取得した生体情報および前記作業員の当日の作業スケジュールに関連する質問文に付与された重みを更新し、
前記質問リストから前記重みが高い順に規定数の質問文を選択し、
選択された前記質問文に対する回答の履歴において前記作業員が適切な回答が行っているかを判定し、適切な回答でない場合、選択された前記質問文を修正して、前記作業員の体調に関する当日の問診を作成し、
前記計算機の体調推定部が、前記生体情報および前記問診の回答結果から前記作業員の体調を推定し、
前記計算機の危険ポテンシャル推定部が、
入力と作業における危険ポテンシャルの関連性を重みづけして保持するデータベースを有し、
前記生体情報および前記当日の作業スケジュールに応じて、前記データベースの重みを更新し、
前記データベースから、前記問診の回答結果から推定される前記作業における危険ポテンシャルを抽出し、
前記計算機の出力部が、推定した前記作業員の体調、および前記データベースの重み順に、抽出された前記危険ポテンシャルを提示することを特徴とする健康管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業員の健康および安全を図るための健康管理システムおよび健康管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
業務上災害の多くが不安全な行動に起因している。こうした、うっかり、あるいは不安全行動の要因の一つとして、ストレスや睡眠不足などの健康状態があげられる。安全な業務遂行のためには、作業員の健康状態を適切に管理することが重要である。
【0003】
この点に関して、例えば特許文献1には、作業員の健康状態に応じて産業機械の起動を制御する方法が開示されている。具体的には、「産業機械の起動を制御する産業機械起動制御システムであって、作業員のバイタルデータを測定するバイタルデータ測定装置と、前記バイタルデータ測定装置によって測定される前記作業員のバイタルデータを取得し、前記取得したバイタルデータに基づいて、前記作業員の健康状態を判断する健康状態解析装置と、前記健康状態解析装置による判断結果に基づいて、前記産業機械の起動の許可/不可を制御する起動制御装置と、を備えることを特徴とする産業機械起動制御システム。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-102046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、作業員の健康管理のために作業員のバイタルデータを作業前、あるいは作業中に監視して産業機械の起動/不可に反映している。
【0006】
然るに、作業員の健康および安全の管理上では、バイタルデータに現れない要素などもあり、可能な範囲で作業員の状態を正確に把握し、健康管理に役立てる必要がある。かつこの把握は、作業員に負担を与えるものではないことが望ましく、さらには作業機械を操作する以外の一般的な作業においても適用が可能とされることが望ましい。
【0007】
このように、上記の特許文献1の技術では、作業直前の安全確認は考慮されているが、作業員が1日作業を開始する前に実施すべき安全確認について考慮されておらず、1日作業する前には安全性を確保しつつも作業員の回答負担を減らす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明においては「作業員の健康を管理する健康管理システムであって、質問文ごとに、カテゴリ、確認周期、重みおよび回答方法が付与される質問リストにおいて、前記作業員から取得した生体情報および前記作業員の当日の作業スケジュールに関連する質問文に付与された重みを更新し、前記質問リストから前記重みが高い順に規定数の質問文を選択し、選択された前記質問文に対する回答の履歴において前記作業員が適切な回答が行っているかを判定し、適切な回答でない場合、選択された前記質問文を修正して、前記作業員の体調に関する当日の問診を作成する問診作成部と、生体情報および前記問診の回答結果から前記作業員の体調を推定する体調推定部と、入力と作業における危険ポテンシャルの関連性を重みづけして保持するデータベースを有し、前記生体情報および前記当日の作業スケジュールに応じて、前記データベースの重みを更新し、前記データベースから、前記問診の回答結果から推定される前記作業における危険ポテンシャルを抽出する危険ポテンシャル推定部と、推定した作業員の前記体調、および前記データベースの重み順に、抽出された前記危険ポテンシャルを提示する出力部、を備えることを特徴とする健康管理システム」としたものである。
【0009】
また本発明は、「計算機を用いて作業員の健康を管理する健康管理方法であって、前記計算機の問診作成部が、質問文ごとに、カテゴリ、確認周期、重みおよび回答方法が付与される質問リストにおいて、前記作業員から取得した生体情報および前記作業員の当日の作業スケジュールに関連する質問文に付与された重みを更新し、前記質問リストから前記重みが高い順に規定数の質問文を選択し、選択された前記質問文に対する回答の履歴において前記作業員が適切な回答が行っているかを判定し、適切な回答でない場合、選択された前記質問文を修正して、前記作業員の体調に関する当日の問診を作成し、前記計算機の体調推定部が、前記生体情報および前記問診の回答結果から前記作業員の体調を推定し、前記計算機の危険ポテンシャル推定部が、入力と作業における危険ポテンシャルの関連性を重みづけして保持するデータベースを有し、前記生体情報および前記当日の作業スケジュールに応じて、前記データベースの重みを更新し、前記データベースから、前記問診の回答結果から推定される前記作業における危険ポテンシャルを抽出し、前記計算機の出力部が、推定した前記作業員の体調、および前記データベースの重み順に、抽出された前記危険ポテンシャルを提示することを特徴とする健康管理方法」としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業員の安全性を確保しつつ、作業員の回答負荷を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る健康管理システムの全体構成例を示す図。
図2】管理システムを作業員が使用するときの流れを示す図。
図3】問診作成部の処理の一例を示すフローチャート。
図4】問診における質問のリスト例を示す図。
図5a】業務内容入力のための表示入力画面の例を示す図。
図5b】問診の質問を表示し、回答を入力させるための表示入力画面の例を示す図。
図6】体調推定部5の処理の一例を示すフローチャート。
図7】KP推定部6の処理の一例を示すフローチャート。
図8】作業員の馴れによる関心の低下を阻止し、真剣に対応することを促す画面構成例を示す図。
図9】管理者向けの表示画面の例を示す図。
図10】管理者向けの表示画面の例を示す図。
図11】カテゴリごとの重みを設定した質問リストを示す図。
図12】発声を情報携帯端末80に録音もしくは録画することを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る健康管理システムの全体構成例を示す図である。健康管理システムは、作業員の生体データを計測する計測部1と、作業員からの入力を受け付ける入力部2と、計測または入力された情報を処理する情報処理部10と、処理結果を表示する出力部3と、処理結果を記憶する記憶部DBと、記憶結果を用いて管理者が管理業務を行う管理装置9から構成される。
【0014】
計測部1は、例えばウェアラブルデバイスなどの生体データを計測する装置であり、心拍/心電計、血圧計、温湿度計、加速度計、ジャイロ、カメラ(赤外線)などを含む(生体データを計測、観測可能な装置であればどのようなものでもよい)計測を行えるものであることが望ましい。この計測は出勤前に各家庭で行ってもよいが、作業員がその作業現場において、作業前あるいは作業中にも行えるように設備されるのがよい。
【0015】
入力部2は、タッチパネル、キーボード、マウス、マイク、カメラなどを用いることができ、出力部3は、ディスプレイ、スピーカーなどを用いることができる。なお、入力部2と出力部3は、管理者用に構成される場合と、各作業員用に構成される場合とがある。
【0016】
各作業員用に構成される場合、入力部2と出力部3は、例えば個人所有の携帯情報端末の入出力機能を利用して構成されるものであってもよい。このとき出力部3には、後述する問診作成部4で作成した問診の質問内容を提示し、設問に対する回答、判断結果を入力部2から回答することに用いられる。また出力部3には、体調を推定した結果として得られた各種情報が表示される。管理者用に構成される場合には、管理装置9の一部として構成され、作業員の個人管理や全体把握の目的で、入出力機能が適宜利用されることになる。
【0017】
記憶部DBは、HDD、SSDのほか、ネットワーク上の記憶装置などでもよい。また情報処理部10は、CPU等の情報処理装置上で実行され、例えばPC、スマートフォン、タブレット等の装置のほか、ネットワーク上の計算装置を用いてもよい。
【0018】
情報処理部10は、問診作成部4、体調推定部5、KP(危険ポテンシャル)推定部6、KY(危険予知)処理部7から構成される。
【0019】
図2は、管理システムを作業員が使用するときの流れを示すものである。まず処理ステップS1において計測部1により作業員の当日の生体データを計測する。次に処理ステップS2において入力部2を用いて当日の業務内容を入力する。なお当日の業務内容が事前にデータベース等に記憶されている場合は、当該データを確認することとしてもよい。
【0020】
なお図2に図示していないが、これらの入力をもとに図1の問診作成部4は問診の質問内容を作成して、出力部3を介して作業員に提示しており、処理ステップS3において作業員は設問に回答する作業を行う。
【0021】
計測された生体データおよび業務内容から作成された問診に対して回答したのち、処理ステップS4では、体調に異常がなければ当日の業務内容における危険ポテンシャルをいくつかの候補から選択する。最後に処理ステップS5では、選択された危険ポテンシャルおよび実際の事故事例、対策などを確認し、業務を開始する。
【0022】
図3は、問診作成部の処理の一例を示すフローチャートである。問診作成部4では、最終的に作業員に提示する問診の質問を作成するが、この時に図4の質問リストQLを参照する。
【0023】
図4に例示する問診における質問のリストQLは、例えば質問文D41ごとに、カテゴリD42、確認周期D43、重みD44、および回答方法D45が付与されている。例えば体調を問う質問文にたいするカテゴリは「全般」、確認周期D43は「毎日」、重みD44は「W1」、および回答方法D45は「選択式」、「VAS、NRS」、「比較(前日)」といった具合である。また睡眠を問う質問文にたいするカテゴリは「睡眠」、確認周期D43は「毎日」、重みD44は「W2」、および回答方法D45は「選択式」、「VAS、NRS」といった具合である。
【0024】
ここで、この組み合わせは、想定可能な状態に対して可能な範囲で多くのものを準備することで作業員の健康状態をより正確に把握可能となるが、その反面作業開始前の短時間で効率よく把握するには、質問は状況に応じて最適化される必要がある。このため、問診作成部4は、基本的に重みWの大きな順に質問を選択することとし、ここでは、重みWは0~1までの実数として、状況に応じて可変とする。これにより、図4に示すような質問のリストから重みを用いて質問を複数選択する。
【0025】
係る図4の質問リストQLを参照しながら、問診作成部4では、まず処理ステップS41において、計測部1により計測された生体データに異常値がないか判定する。或は、この場合の判定としては、計測された生体データ、例えば心拍情報から心拍間隔(R-R Interval(RRI))を算出し周波数解析することで自律神経機能やストレス、疲労状態を算出するようにしてもよい。
【0026】
処理ステップS41の判定で生体データおよび算出された指標が異常であれば、処理ステップS42において、関連する質問が問診に含まれるように、異常項目に関する質問の重みWを増加するように変更する。たとえば、心拍や体温に異常があれば、再度確認を促す質問をするなどである。なお、その後に正常復帰したと判断される場合には、適宜のタイミングで当該の重みは元の値に復旧させることになる。
【0027】
処理ステップS41の判定で生体データおよび算出された指標が正常であるとき、または処理ステップS42での処理後には、処理ステップS43の処理に移行する。処理ステップS43の処理では、入力された業務情報(当日のスケジュール)から、関連する項目について重みを更新する。例えば自動車や自転車の運転を行う場合には、アルコールチェックの実施有無を確認する項目について重みを増すなどが考えられる。
【0028】
図4のリストにおいて重みの更新方法としては、例えば、確認周期を用いる方法がある。毎日の確認が必要な質問については重みを1としておく。一方、確認周期が1週間であれば、1/7を毎日重みに加算し、質問を行った段階で0とするような更新方法が考えられる。
【0029】
かくして、処理ステップS44において、生体データの観点から重み見直しをされた質問、並びに業務情報観点から重み見直しをされた質問について、重みが高い順に従って規定数の質問が選択される。
【0030】
質問が選択されたのち、処理ステップS45では、作業員の過去における当該質問に対する回答の履歴を用いて適切な回答が行われているかを判定する。例えば、事前に一般的な作業員を想定した実験を行い、実験により計測された回答誤差等を用いて判定する(今回の回答が誤差内に収まっていれば正常)ことや、これまでの回答結果を解析(例えば、分散を算出する、同一の回答の回数を数える、など)し、同程度もしくは同一の回答が一定期間(回数)繰り返されていることを検出するなどが考えられる。
【0031】
処理ステップS45の判断で異常が検出された場合は、処理ステップS46において当該質問の回答方式D45を変更する。回答方式D45としては、例えば、はい/いいえ、大きい/小さい、ほとんどない/時々ある/ある、など、複数の選択肢による選択式や、Visual Analogue Scale(VAS)と呼ばれる線分上の点の位置を用いて回答する方法や、0~10までの11段階で数値を回答させる、Numerical Rating Scale(NRS)と呼ばれる手法などがある。今までの回答方式がはい/いいえで行われており、この場合には適切な回答が得られていなかったといった場合に、例えば複数の選択肢による選択式に変更するなどである。
【0032】
また、前日や前回との比較について回答を得ることや、文章や数値などを入力してもらう方法も考えられる。基本的にどのようなものでもよい。また回答方法に合わせて一部質問文を修正することもある。
【0033】
処理ステップS47では、上記のようにして作成した問診内容を出力部3に表示させるとともに、処理ステップS48において最終的に採用された質問の重みを更新、記憶しておく。
【0034】
図5a、図5bは、図1の入力部2と出力部3を例えば携帯情報端末を用いて構成した時の表示入力画面の例であり、図5aは業務内容入力のための表示入力画面80、図5bは問診の質問を表示し、回答を入力させるための表示入力画面80の例を示している。小画面81.82.83、91、92、93に確認したい事項を表示し、かつボタンの選択、数値入力、度合い入力などにより業務内容入力や問診の質問に対する回答を得るように構成している。
【0035】
図6は体調推定部5の処理フローである。図6のフローでは、例えば図5bのような内容の問診の質問(体調、睡眠時間、疲労感倦怠感の確認)と回答例を表示入力画面80に表示し、ボタン操作などによりこれに対する回答が全て入手できたことをもって、処理ステップS51の体調推定処理の開始とする。
【0036】
処理ステップS52では、まず問診回答が正常であることを確認する。正常である場合、体調推定部5は、処理ステップS53において計測された生体データと問診への回答を比較し、処理ステップS54において乖離度を算出する。乖離度としては、たとえば計測データからは強い疲労が予測されるときに、疲労がないと回答している場合(逆も含む)などである。
【0037】
処理ステップS54の判断において乖離度が閾値以下である場合には、計測された生体データと問診への回答が同じ傾向を示すことから処理ステップS58において作業員の体調は正常と判断し、処理を完了する。また、処理ステップS54の判断において乖離度が閾値以上である場合には、計測された生体データと問診への回答が異なる傾向を示すことから処理ステップS59において作業員の体調は異常と判断し、処理を完了する。
【0038】
また処理ステップS52の判断で、問診回答が異常であるとされたときは、処理ステップS55において追加の質問の有無を確認し、追加の質問がある場合には処理ステップS56において問診内容を追加してその回答を得、追加質問に対する回答に問題がないことを処理ステップS57で判断する。この判断で問題なしとされたときは処理ステップS58において作業員の体調は正常と判断する。
【0039】
処理ステップS55において追加の質問が存在しない時や、処理ステップS57において回答に問題があるとされたときには、処理ステップS59において作業員の体調は異常と判断する。
【0040】
図7はKP推定部6の処理フローである。図7のフローでは、KP推定部6が保持するデータベースを利用する。データベースには、入力した生体データや業務内容、或はその他の入力と、これら入力とKP(危険ポテンシャル)の関連性を重みづけして保持している。そのほかの入力としては、過去の履歴のほか、外的要因として、気温などを用いてもよい。
【0041】
入力とKP(危険ポテンシャル)の関連性を重みづけして保持するデータベースの記録事項の一例は以下のようである。まず入力が気温である場合、気温が高い場合は熱中症などの恐れがあることから、KPとしては熱中症を関連付けしておいて、気温が高い場合に熱中症の重みを増加させる形でのデータベースを形成しておく。逆に気温が低い場合には、KPとしてはぎっくり腰、転倒、スリップなどを関連付けしておいて、気温が低い場合にぎっくり腰、転倒、スリップなどの重みを増加させる形でのデータベースを形成しておく。
【0042】
また、生体データから精神的疲労が懸念される場合は、不注意に起因するKPの重みを増加させ、肉体的疲労が懸念される(気温や作業の身体的負荷が高い場合など)は、腰痛やふらつき、めまいといったKPの重みを増加するなど、入力に合わせた更新を行うことが望ましい。
【0043】
図7のフローにおける処理ステップS62では、入力した生体データや業務内容、或はその他の入力から、重みを更新する。重みの更新は、上記した精神的疲労が懸念される場合は、不注意に起因するKPの重みを増加させなどの処理である。
【0044】
処理ステップS63では、入力として外的要因も考慮する。この時の外的要因とは例えば前記した気温の高低であり、処理ステップS64では、外的要因による重みの変更を行う。
【0045】
係る重みづけの更新により、処理ステップS65では、KP推定部6が保持するデータベース内のKPの項目の中から今日の問診結果から推定されたKPが抽出される。今日の健康状態や作業状態において、最も留意すべきKP事項のみが取り出される。
【0046】
抽出された重要KP事項は、出力部3を介して作業員に提示されるわけであるが、この場合にさらに以下の対応を行うのがよい。これらの対応は、作業員の馴れによる注意力の低下に対する対応である。例えば、図5bの表示入力画面80から設問に対する回答を行う場面において、表示入力画面80が長期間同じ内容であると、いつも同じ内容を選択してしまい、当日の状態が正しく反映されないということが起こりえる。
【0047】
これと同様に、いつも同じ内容のKPが同じ表示形式で提示されていると、表示結果を徴用しない傾向があることについて、KPについても同一のKPをおざなりに選択する作業員に対し、過去の選択履歴から似通ったKPばかりを選択していると判断される場合にはそれらをリストから外す、もしくは表示リストの後方に表示する、先頭を後述する関連度の低い項目にするなどの調整を行う。
【0048】
またこの時の表示変更では、表示順序も重要であり、推定された重み順(重要度順)に表示してもよいし、ランダムに表示してもよい。また、重みの低い(関連度の低い)項目を一定の割合で混ぜるようにし、これらを選んだ場合には選択理由を入力させる、管理者にアラートを出すなどしてもよい。
【0049】
このことから処理ステップS66では、過去の回答は正常であるかを確認し、異常(いつも同じ内容であるなど)である場合には、処理ステップS67において表示方法を変更する。最終的に修正後のKPリストが作成される。
【0050】
図7はKP(危険ポテンシャル)推定部6の処理について示したが、これはKY(危険予知)処理部7によりKY出力とすることもできる。
【0051】
上記した、作業員の馴れによる関心の低下を阻止し、真剣に対応することを促す画面構成例として図8の3つの表示画面構成が例示される。図8の左の画面80では、KPやKYの内容(落下、転倒、重量物、など)が、タイル形式で表示され、かつこのうち本日の健康状態や作業内容から特に注意喚起すべき事項を入り別などの強調表示により提示している。図8の中央の画面80では、今日留意すべきKPやKYの過去事例がイラストや写真とともに、説明文として提示される。図8の右の画面80では、作業者個人についてのKYや、システムや機材を扱う上でのKYが写真、文章とともに提示されて注意換気する。
【0052】
なお、上記処理結果は管理者向けに提示することができる。管理者向けの表示画面90の例では、図9に示すように、氏名および計測した生体データや自律神経の評価結果、問診回答、KY情報などを一覧で表示するのがよい。また図10に示すように、体調の判定結果(スコア化結果)をアイコンのように表示してもよい。分類方法としては、例えば色で分ける方法(緑~黄~赤)、表情のイラストによるもの、記号(〇、△、×)によるものおよびこれらの組合せが考えられる。
【実施例2】
【0053】
実施例2では、体調推定部5における体調の推定において、正常もしくは異常の判定をするのではなく、体調スコアとして算出し、当日の業務情報を用いることで業務に対する健康状態を算出する。
【0054】
この場合の効果としては、より業務に合わせた体調の判定が可能となることと、当該作業員が不適となった場合に他の作業員との入れ替えなどの最適化を行うことが可能なことがあげられる。
【0055】
実施例2の一例としては、図11のようなリスト形式でのスコア化が採用できる。図2の質問リストの内容にさらにカテゴリごとの重みを設定(重み1~重みn)したものである。
【0056】
例えば、各業務内容に対し、下記のようなカテゴリごとの寄与率を設定しておき、当日の体調から算出された重みとの積和としてスコア化することなどが考えられる。これらのカテゴリは、肉体的疲労として重労働や、窮屈な体制、精神的疲労として細かな作業、危険な作業、故障などの突発対応、時間帯として早朝、深夜などでは高く設定(質問では睡眠カテゴリが該当、熟練度として当該作業に慣れているかどうか、同一の作業の実施回数などがある。また、質問についても上記のようなカテゴリごとの重みを設定しておく(重み1~重みn)のがよく、また当該作業員が体調異常(不適)となった場合に、他の作業員との業務交換などを支援するレコメンド機能を持たせてもよい。業務の割り当てに関しては動的計画法などを用いて最適化した結果を表示することなどが考えられる。
【実施例3】
【0057】
実施例3では、実施例1または2に追加して、選択したKPおよび対策案や、規定の安全宣言などを発声させ、これを録音もしくは録画する機能を備える構成とする。
【0058】
実施例3の効果としては、発生により安全に対する意識づけを強化可能なことおよび、音声データや表情、肌の色等により追加の解析を行うことにより、健康状態を判定する機能を持たせることにより、精度の向上が可能となる。
【0059】
図12は、選択したKPおよび対策案や、規定の安全宣言などを発声させ、これを携帯情報端末80に録音もしくは録画することを示しており、図12の左の例では本日のKYの項目を復唱させて記憶し、中央及び右の例では安全唱和を行わせるものである。この時には、図12のように、選択したKP(KY)および録音ボタンもしくは録画ボタンを表示させ、音声もしくは動画の記録を行うのがよい。
【0060】
上記データの解析には音声の大きさや明瞭度、表情や顔色の分析、機械学習による推定法などが利用できる。またこれらのデータは管理者が管理画面から簡便に確認できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1:計測部1
2:入力部
10:情報処理部
3:出力部
DB:記憶部
9:管理装置
4:問診作成部
5:体調推定部
6:KP(危険ポテンシャル)推定部
7:KY(危険予知)処理部
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12