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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20250310BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20250310BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20250310BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20250310BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20250310BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20250310BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20250310BHJP
【FI】
B60W20/10
B60K6/485 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60K6/46
E02F9/20 Z
B60L50/61
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021199373
(22)【出願日】2021-12-08
(65)【公開番号】P2023084960
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丹波 大樹
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226284(JP,A)
【文献】特開2015-101301(JP,A)
【文献】特開2005-083457(JP,A)
【文献】特開2005-083242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20-6/547
B60W 10/00-20/50
B60L 1/00-58/40
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に設けられ、動力を出力するエンジンと、
動力を出力するモータとして作動して、前記エンジンの駆動をアシストするアシスト動作と、前記エンジンが出力した動力によりジェネレータとして作動して発電する発電動作と、を行うモータ・ジェネレータと、
前記エンジンが出力した動力及び/又は前記モータ・ジェネレータが出力した動力によって駆動される油圧駆動装置と、
前記エンジンの目標回転数を定義する回転数操作具と、
前記エンジンの実回転数を検出する回転検出装置と、
前記回転検出装置によって検出された前記実回転数が、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数未満である場合に、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作を行うモードに切り換え可能な制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記実回転数が前記目標回転数未満であり、且つ前記実回転数が所定の第1範囲にある場合に、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作を行う第1モードと、
前記実回転数が前記目標回転数未満であり、且つ前記実回転数が前記第1範囲に比べて低回転数の領域である第2範囲にある場合に、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作を行う第2モードと、のいずれかに切り換え可能であり、
前記第1範囲は、前記実回転数が所定の第1下限値以上であり所定の第1上限値未満である範囲であり、
前記第1上限値は、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数であり、
前記第1範囲は、前記第1下限値以上であり当該第1下限値よりも高い回転数である第1閾値未満である第1領域を含み、
前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第1領域内にある場合に前記実回転数が低くなるにつれて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を小さくする作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1モードにおいて前記実回転数に応じて、前記アシスト動作の
大きさであるアシスト量を変更する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1範囲は、前記第1閾値よりも高い回転数である第2閾値以上であり前記第1上限値未満である第2領域を含み、
前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第2領域内にある場合に前記実回転数が低くなるにつれて、前記アシスト量を大きくする請求項に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1範囲は、前記第1閾値以上であり前記第2閾値未満である第3領域を含み、
前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第3領域内にある場合に前記アシスト量を最大にする請求項に記載の作業機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第1範囲よりも高い場合、前記モータ・ジェネレータを制御して前記発電動作を行う請求項1~のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第1範囲よりも低い場合、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作及び前記発電動作を行わない請求項1~のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項7】
前記第2範囲は、前記実回転数が所定の第2下限値以上であり所定の第2上限値未満である範囲であり、
前記第2上限値は、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数よりも小さい請求項1~のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項8】
前記第2範囲は、前記第2上限値よりも低い回転数である第3閾値以上であり前記第2上限値未満である第4領域を含み、
前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記実回転数が前記第4領域内にある場合に前記実回転数が低くなるにつれて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を大きくする請求項に記載の作業機。
【請求項9】
前記第2範囲は、前記第2下限値以上であり前記第3閾値未満である第5領域を含み、
前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記実回転数が前記第5領域内にある場合に前記アシスト量を最大にする請求項に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記実回転数が前記第2範囲よりも高い場合、前記モータ・ジェネレータを制御して前記発電動作を行う請求項1~のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項11】
前記制御装置は、前記実回転数が高くなるにつれて、前記発電動作における発電量を大きくする請求項1~10のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項12】
前記第1範囲及び前記第2範囲は、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数に対応して定義されており、
前記第1範囲及び前記第2範囲は、前記目標回転数が高くなるにつれて当該範囲が高回転数域で定義され、前記目標回転数が低くなるにつれて当該範囲が低回転数域で定義される請求項1~11のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項13】
前記制御装置に接続され、当該制御装置の前記第1モード及び前記第2モードへの切り換え操作が可能な切換具を備えている請求項1~12のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項14】
操作量を変更可能であって、前記操作量を前記制御装置に出力する操作部材を備え、
前記制御装置は、前記操作部材の前記操作量に応じて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を定義する操作モードに切り換え可能である請求項1~13のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項15】
前記操作部材は、オペレータが足で操作するフットペダルである請求項14に記載の作業機。
【請求項16】
前記オペレータが手で操作するハンドアクセルを備え、
前記制御装置が前記操作モード以外のモードである場合、当該制御装置は、前記フットペダル及び/又は前記ハンドアクセルの操作に応じて、前記目標回転数を定義し、
前記制御装置が前記操作モードである場合、当該制御装置は、前記ハンドアクセルの操作に応じて、前記目標回転数を定義し、前記フットペダルの操作に応じて、前記アシスト量を定義する請求項15に記載の作業機。
【請求項17】
前記制御装置は、前記ハンドアクセルによって定義された前記目標回転数が前記エンジンの最大回転数である場合、前記操作モードに切り換わる請求項16に記載の作業機。
【請求項18】
前記制御装置は、
前記フットペダルの操作量が予め定められた第4閾値未満である場合、前記アシスト量を零に定義し、
当該操作量が前記第4閾値以上である場合、前記アシスト量を所定の固定値に定義する請求項1517のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項19】
前記固定値は、前記モータ・ジェネレータによる前記アシスト量の最大値と同値である請求項18に記載の作業機。
【請求項20】
前記制御装置に接続された第1操作具を備え、
前記制御装置は、前記第1操作具の操作に基づいて、前記第1モード及び/又は前記第2モードを含む、前記アシスト動作を行うモードにおける前記アシスト動作の大きさであるアシスト量の上限値を変更する請求項1~19のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項21】
前記モータ・ジェネレータの前記発電動作によって発電された電力を蓄電するバッテリと、
前記モータ・ジェネレータと前記バッテリを電気的に接続する経路に設けられ、前記バッテリから前記モータ・ジェネレータへ供給する電力を制御するインバータと、
を備え、
前記制御装置は、前記第1操作具の操作に基づいて、前記インバータを制御して、前記バッテリから前記モータ・ジェネレータに供給される電力の上限値を変更する請求項20に記載の作業機。
【請求項22】
前記モータ・ジェネレータの前記発電動作によって発電された電力で駆動する電気モータと、
前記制御装置に接続された第2操作具と、
を備え、
前記制御装置は、前記第2操作具の操作に基づいて、前記電気モータへ供給される電力の上限値を変更する請求項1~19のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項23】
前記モータ・ジェネレータの前記発電動作によって発電され、且つ前記電気モータへ供
給される電力を制御するインバータを備え、
前記制御装置は、前記第2操作具の操作に基づいて、前記インバータを制御して、前記電気モータへ供給される電力の上限値を変更する請求項22に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトトラックローダ等の作業機の分野において、エンジンとモータ・ジェネレータとを有するハイブリッド型の作業機として、特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1に開示の作業機では、油圧ポンプの出力が高くなることが予想される掘削作業を行うときは、作業モードを第1の作業モードとし、油圧ポンプの出力が掘削状態に比べて若干低くなる非掘削作業のときは、作業モードを第2の作業モードとし、第1の作業モードと第2の作業モードのそれぞれに応じてモータ・ジェネレータでのアシスト動作の内容を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2014/136834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の作業機では、作業機の作業内容に応じてアシスト動作を決定している。ところが、特許文献1に開示の作業機は、作業中におけるエンジンの回転数や負荷などを考慮するものではないので、エンジンに余力があるのにも関わらずアシスト動作を行うことがある。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、エンジンがアシストを必要とする場合に、適切かつ効果的にエンジンをアシストすることができる作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の技術的手段を講じた。
本発明の一側面において、作業機は、機体と、前記機体に設けられ、動力を出力するエンジンと、動力を出力するモータとして作動して、前記エンジンの駆動をアシストするアシスト動作と、前記エンジンが出力した動力によりジェネレータとして作動して発電する発電動作と、を行うモータ・ジェネレータと、前記エンジンが出力した動力及び/又は前記モータ・ジェネレータが出力した動力によって駆動される油圧駆動装置と、前記エンジンの目標回転数を定義する回転数操作具と、前記エンジンの実回転数を検出する回転検出装置と、前記回転検出装置によって検出された前記実回転数が、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数未満である場合に、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作を行うモードに切り換え可能な制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記実回転数が前記目標回転数未満であり、且つ前記実回転数が所定の第1範囲にある場合に、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作を行う第1モードと、前記実回転数が前記目標回転数未満であり、且つ前記実回転数が前記第1範囲に比べて低回転数の領域である第2範囲にある場合に、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作を行う第2モードと、のいずれかに切り換え可能であり、前記第1範囲は、前記実回転数が所定の第1下限値以上であり所定の第1上限値未満である範囲であり、前記第1上限値は、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数であり、前記第1範囲は、前記第1下限値以上であり当該第1下限値よりも高い回転数である第1閾値未満である第1領域を含み、前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第1領域内にある場合に前記実回転数が低くなるにつれて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を小さくする。
【0006】
また、前記制御装置は、前記第1モードにおいて前記実回転数に応じて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を変更する
【0007】
また、前記第1範囲は、前記第1閾値よりも高い回転数である第2閾値以上であり前記
第1上限値未満である第2領域を含み、前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第2領域内にある場合に前記実回転数が低くなるにつれて、前記アシスト量を大きくする。
また、前記第1範囲は、前記第1閾値以上であり前記第2閾値未満である第3領域を含み、前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第3領域内にある場合に前記アシスト量を最大にする。
また、前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第1範囲よりも高い場合、前記モータ・ジェネレータを制御して前記発電動作を行う。
【0008】
また、前記制御装置は、前記第1モードにおいて、前記実回転数が前記第1範囲よりも低い場合、前記モータ・ジェネレータを制御して前記アシスト動作及び前記発電動作を行わない。
また、前記第2範囲は、前記実回転数が所定の第2下限値以上であり所定の第2上限値未満である範囲であり、前記第2上限値は、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数よりも小さい。
【0009】
また、前記第2範囲は、前記第2上限値よりも低い回転数である第3閾値以上であり前記第2上限値未満である第4領域を含み、前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記実回転数が前記第4領域内にある場合に前記実回転数が低くなるにつれて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を大きくする。
また、前記第2範囲は、前記第2下限値以上であり前記第3閾値未満である第5領域を含み、前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記実回転数が前記第5領域内にある場合に前記アシスト量を最大にする。
【0010】
また、前記制御装置は、前記第2モードにおいて、前記実回転数が前記第2範囲よりも高い場合、前記モータ・ジェネレータを制御して前記発電動作を行う。
また、前記制御装置は、前記実回転数が高くなるにつれて、前記発電動作における発電量を大きくする。
また、前記第1範囲及び前記第2範囲は、前記回転数操作具が定義した前記目標回転数に対応して定義されており、前記第1範囲及び前記第2範囲は、前記目標回転数が高くなるにつれて当該範囲が高回転数域で定義され、前記目標回転数が低くなるにつれて当該範囲が低回転数域で定義される。
【0011】
また、作業機は、前記制御装置に接続され、当該制御装置の前記第1モード及び前記第2モードへの切り換え操作が可能な切換具を備えている。
また、作業機は、操作量を変更可能であって、前記操作量を前記制御装置に出力する操作部材を備え、前記制御装置は、前記操作部材の前記操作量に応じて、前記アシスト動作の大きさであるアシスト量を定義する操作モードに切り換え可能である。
また、前記操作部材は、オペレータが足で操作するフットペダルである。
【0012】
また、作業機は、前記オペレータが手で操作するハンドアクセルを備え、前記制御装置が前記操作モード以外のモードである場合、当該制御装置は、前記フットペダル及び/又は前記ハンドアクセルの操作に応じて、前記目標回転数を定義し、前記制御装置が前記操作モードである場合、当該制御装置は、前記ハンドアクセルの操作に応じて、前記目標回転数を定義し、前記フットペダルの操作に応じて、アシスト量を定義する。
また、前記制御装置は、前記ハンドアクセルによって定義された前記目標回転数が前記エンジンの最大回転数である場合、前記操作モードに切り換わる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記フットペダルの操作量が予め定められた第4閾値未満である場合、前記アシスト量を零に定義し、当該操作量が前記第4閾値以上である場合、前記アシスト量を所定の固定値に定義する。
また、前記固定値は、前記モータ・ジェネレータによるアシスト量の最大値と同値である。
また、作業機は、前記制御装置に接続された第1操作具を備え、前記制御装置は、前記第1操作具の操作に基づいて、前記第1モード及び/又は前記第2モードを含む、前記アシスト動作を行うモードにおける前記アシスト動作の大きさであるアシスト量の上限値を
変更する。
【0014】
また、作業機は、前記モータ・ジェネレータの前記発電動作によって発電された電力を蓄電するバッテリと、前記モータ・ジェネレータと前記バッテリを電気的に接続する経路に設けられ、前記バッテリから前記モータ・ジェネレータへ供給する電力を制御するインバータと、を備え、前記制御装置は、前記第1操作具の操作に基づいて、前記インバータを制御して、前記バッテリから前記モータ・ジェネレータに供給される電力の上限値を変更する。
【0015】
また、作業機は、前記モータ・ジェネレータの前記発電動作によって発電された電力で駆動する電気モータと、前記制御装置に接続された第2操作具と、を備え、前記制御装置は、前記第2操作具の操作に基づいて、前記電気モータへ供給される電力の上限値を変更する。
また、作業機は、前記モータ・ジェネレータの前記発電動作によって発電され、且つ前記電気モータへ供給される電力を制御するインバータを備え、前記制御装置は、前記第2操作具の操作に基づいて、前記インバータを制御して、前記電気モータへ供給される電力の上限値を変更する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンジンがアシストを必要とする場合に、適切かつ効果的にエンジンをアシストすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による作業機の全体側面図である。
図2】本発明の第1実施形態による作業機の制御ブロックを示す図である。
図3】走行系の油圧システムを示す図である。
図4】作業系の油圧システムを示す図である。
図5】回転電機(モータ・ジェネレータ)の内部の断面図である。
図6】第1実施形態による通常モードの制御マップ(通常マップ)の一例を示す図である。
図7】第1実施形態による別の制御マップ(第1マップ及び第2マップ)の一例を示す図である。
図8】第1実施形態によるスピードモードの制御マップ(第1マップ)を示す図である。
図9】第1実施形態によるパワーモードの制御マップ(第2マップ)を示す図である。
図10】第1実施形態による制御マップであって、目標回転数が低い場合の制御マップ(第1マップ及び第2マップ)の一例を示す図である。
図11】第1実施形態によるアシスト動作及び発電動作の制御について説明するフロー図である。
図12A】第2実施形態による制御マップのうち、操作モードの制御マップ(第3マップ)を示す図である。
図12B】第2実施形態の第1の変形例の操作モードの制御マップ(第4マップ)を示す図である。
図12C】第2実施形態の第2の変形例の操作モードの制御マップ(第4マップ)を示す図である。
図12D】第2実施形態の第3の変形例の補正モードの補正マップを示す図である。
図13】第2実施形態によるアシストモードの設定方法について説明するフロー図である。
図14A】第2実施形態の第1の変形例おいて、フットペダルの操作量を変更した場合の例を示す第1図である。
図14B】第2実施形態の第2の変形例おいて、フットペダルの操作量を変更した場合の例を示す第2図である。
図15】本発明の第3実施形態による作業機の制御ブロックを示す図である。
図16】第3実施形態による制御マップ(第1マップ及び第2マップ)と、アシスト量の上限値及び発電量の上限値との関係の一例を示す図である。
図17】第3実施形態によるアシスト量の上限値を用いたアシスト動作の制御について説明するフロー図である。
図18】第3実施形態の第2の変形例によるシリーズハイブリッドシステムの制御ブロックを示す図である。
図19】第3実施形態の第2の変形例による上限値を用いた発電動作の制御について説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る作業機について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る作業機1の側面図である。図1は、作業機1の一例として、コンパクトトラックローダを示している。加えて、図2は、作業機1の制御ブロックを示す図である。但し、本実施形態に係る作業機1は、コンパクトトラックローダに限定されるものではなく、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、作業機1は、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。尚、本実施形態の記載において、作業機1の運転席7に着座した運転者が向く方向(図1の左側)を前方といい、その反対方向(図1の右側)を後方という。また、運転者の左側(図1の手前側)を左方といい、運転者の右側(図1の奥側)を右方という。なお、機体2の前後方向に直交する方向を機体幅方向(幅方向)ということがある。
【0019】
作業機1は、機体2、作業装置3、及び一対の走行装置4L、4Rを備えている。
機体2の上部かつ前部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の後部は、機体2のブラケットに支持軸回りに揺動自在に支持されている。キャビン5の前部は、機体2の前部に載置可能である。キャビン5内には運転席7が設けられている。
一対の走行装置4L、4Rの各々は、クローラ式走行装置により構成されている。走行装置4Lは、機体2の一方の側部(左側)に設けられ、走行装置4Rは、機体2の他方の側部(右側)に設けられている。
【0020】
図1に示すように、作業機1の左部に設けられた作業装置3Lは、ブーム10L、ブームシリンダ14L、作業具シリンダ15L、及び作業具11を有する。ブーム10Lは、リフトリンク12L及び制御リンク13Lに支持されている。ブーム10Lの基部と機体2の後下部との間には、複動式の油圧シリンダからなるブームシリンダ14Lが設けられている。ブームシリンダ14Lを伸縮させることによりブーム10Lが上下に揺動する。ブーム10Lの先端部には、装着ブラケット18Lが横軸回りに回動自在に枢支され、装着ブラケット18Lには、作業具11の背面部が取り付けられている。即ち、ブーム10Lの先端部には、作業具11が装着されている。
【0021】
作業機1の左部に設けられた作業装置3Lと同様の構成の作業装置3Rが、作業機1の右部に設けられている。作業装置3Rは、ブーム10Lと同様の構成の10R、ブームシリンダ14Lと同様の構成のブームシリンダ14R、作業具シリンダ15Lと同様の構成の作業具シリンダ15R、及び作業具11を有する。作業具11は、作業装置3Lの作業具11と同一のものである。
【0022】
また、装着ブラケット18Lとブーム10Lの先端側中途部との間には、複動式の油圧シリンダからなる作業具シリンダ15Lが介装されている。さらに、装着ブラケット18Rとブーム10Rの先端側中途部との間には、複動式の油圧シリンダからなる作業具シリンダ15Rが介装されている。作業具シリンダ15L、15Rの伸縮によって作業具11が揺動(スクイ動作、ダンプ動作)する。
作業具11は、装着ブラケット18L、18Rに対して着脱自在である。作業具11は、例えば、バケット、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、作業機1は、原動機(エンジン)60を備えている。エンジン60は、機体2に設けられ、動力を出力する装置である。本実施形態においては、エンジン60は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関である。本実施形態において、エンジン60は、コモンレール式の電子制御燃料供給装置(図示せず)を備えており、この電子制御燃料供給装置によってエンジン60に燃料が供給される。電子制御燃料供給装置は、燃料を蓄える筒状の管からなるコモンレールと、燃料タンク内の燃料を高圧にしてコモンレールに送るサプライポンプと、コモンレールに蓄えた高圧の燃料をエンジン60の気筒に噴射するインジェクタと、を有している。
【0024】
図2に示すように、作業機1は、制御装置70を備えている。制御装置70は、CPU及び電気電子回路等から構成されており、作業機1に関する様々な制御を行う。例えば、制御装置70は、油圧(作動油)に関する制御(油圧制御)を行う。制御装置70は、後述する油圧制御では、第1電磁弁56a及び第2電磁弁56bのソレノイドの励磁及び消磁を行う。また、制御装置70は、エンジン60を制御するECU69等の作業機1の機器を制御する制御部を含んでいる。
【0025】
図3及び図4は、作業機1の油圧回路(油圧システム)を示す。図3は、作業機1の走行系の油圧システムを示し、図4は、作業機1の作業系の油圧システムを示す。
走行系の油圧システムは、走行装置4L、4Rを作動させるためのシステムである。図3に示すように、走行系の油圧システムは、作動油を吐出する油圧ポンプであるサブポンプP1、第1走行モータ機構31L、第2走行モータ機構31R、及び走行駆動機構34を備えている。
【0026】
サブポンプP1は、定容量型のギヤポンプで構成されている。サブポンプP1は、タンク(作動油タンク)に貯留された作動油を吐出可能である。サブポンプP1の吐出側には、作動油を流す吐出油路40が設けられている。本実施形態において、サブポンプP1から吐出された作動油のうち、制御用として用いられる作動油をパイロット油といい、パイロット油の圧力をパイロット圧ということがある。
【0027】
走行駆動機構34は、第1走行モータ機構31L及び第2走行モータ機構31Rを駆動する機構であって、第1走行モータ機構31Lを駆動するための駆動装置(左用駆動装置)34L、及び第2走行モータ機構31Rを駆動するための駆動装置(右用駆動装置)34Rを有する。
駆動装置34Lは、走行ポンプ52L及び変速用油路57hを含んでいる。駆動装置34Rは、走行ポンプ52R及び変速用油路57iを含んでいる。変速用油路57hは、走行ポンプ52Lと走行モータ36Lとを接続する油路である。変速用油路57iは、走行ポンプ52Rと走行モータ36Rとを接続する油路である。
【0028】
走行ポンプ52L、52Rのそれぞれは、エンジン60の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。走行ポンプ52L、52Rのそれぞれは、パイロット圧が作用する受圧部52aと受圧部52bとを有している。走行ポンプ52L、52Rのそれぞれの斜板の角度は、受圧部52a、52bに作用するパイロット圧によって変更される。これにより、走行ポンプ52L、52Rのそれぞれは、斜板の角度が変更されることによって、出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。これにより、走行ポンプ52L、52Rは、斜板の角度が変更されることによって、走行装置4L、4Rへ出力する動力(走行装置4L、4Rの駆動力)を変更できる。
【0029】
第1走行モータ機構31Lは、機体2の左側に設けられた走行装置4Lの駆動軸に動力を伝達する機構である。第2走行モータ機構31Rは、機体2の右側に設けられた走行装置4Rの駆動軸に動力を伝達する機構である。第1走行モータ機構31Lは、走行モータ36Lを有し、第2走行モータ機構31Rは、走行モータ36Rを有している。
走行モータ36L、36Rのそれぞれは、例えば、斜板形可変容量アキシャルモータである。走行モータ36Lは、走行装置4Lに走行の動力を伝達する。走行モータ36Rは、走行装置4Rに走行の動力を伝達する。走行モータ36L、36Rのそれぞれは、車速(回転)を第1速(第1速度段)若しくは第2速(第2速度段)に変更することができるモータである。言い換えれば、走行モータ36Lは、作業機1、即ち、走行装置4Lの推進力を変更することができるモータである。走行モータ36Rは、作業機1、即ち、走行装置4Rの推進力を変更することができるモータである。
【0030】
図3に示すように、作業機1は、操作装置53を備えている。操作装置53は、走行装置4L、4R、即ち、第1走行モータ機構31L、第2走行モータ機構31R及び走行駆動機構34(34L,34R)を操作する装置である。操作装置53は、走行操作部材54、及び複数の操作弁55(55a、55b、55c、55d)を有している。複数の操作弁55(55a、55b、55c、55d)は、走行操作弁である。
【0031】
走行操作部材54は、複数の操作弁55に支持され、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動可能な部材である。また、複数の操作弁55は、1本の走行操作部材54によって操作される。複数の操作弁55は、走行操作部材54の揺動に応じて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40を介して、サブポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55a、操作弁55b、操作弁55c及び操作弁55dである。
【0032】
複数の操作弁55と、走行系の走行駆動機構34(走行ポンプ52L,52R)とは、走行油路45によって接続されている。このため、走行操作部材54を前方(図3では矢印Y1の方向)、後方(図3では矢印Y2の方向)、右方(図3では矢印Y3の方向)、走行操作部材54を左方(図3では矢印Y4の方向)等へ揺動させると、当該揺動によって、複数の操作弁55(55a、55b、55c、55d)は、パイロット圧を定義する。続いて、走行油路45を介して、走行ポンプ52L、52Rの受圧部52a及び受圧部52bへ当該定義されたパイロット圧が作用する。これによって、走行ポンプ52L、52Rは、出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができ、走行装置4L、4Rへ出力する動力(走行装置4L、4Rの駆動力)を変更できる。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、走行操作部材54を操作して、複数の操作弁55が定義するパイロット圧を変更し、走行ポンプ52L、52Rの斜板の角度を変更する場合を例に説明した。しかし、走行ポンプ52L、52R(走行モータ36L,36R)の操作方法は、走行操作部材54の操作信号に基づいて電気的に走行ポンプ52L、52Rの斜板の角度を変更するような構成であってもよく、上述した構成に限定されない。
【0034】
図4に示すように、作業系の油圧システムは、図1に示す作業装置3等を作動させるシステムである。作業系の油圧システムは、複数の制御弁51と、作動油を吐出する油圧ポンプであるメインポンプP2を備えている。
メインポンプP2は、サブポンプP1とは異なる位置に配置されたポンプであって、例えば、低容量型のギヤポンプによって構成されている。メインポンプP2は、作動油タンクに貯留された作動油を吐出可能である。メインポンプP2は、主に油圧アクチュエータを作動させる作動油を吐出する。
【0035】
メインポンプP2の吐出側には、油路51fが設けられている。この油路51fには、複数の制御弁51が接続されている。複数の制御弁51は、ブーム制御弁51aと、バケット制御弁51bと、予備制御弁51cとを含んでいる。ブーム制御弁51aは、ブームシリンダ14を制御する弁であって、バケット制御弁51bは、作業具シリンダ15を制御する弁であって、予備制御弁51cは、予備アタッチメントの油圧アクチュエータを制御する弁である。
【0036】
ブーム10及び作業具11の操作は、操作装置43が有する作業操作部材37によって行うことができる。作業操作部材37は、複数の操作弁59(59a、59b、59c、59d)に支持され、機体2の左右方向(機体幅方向)又は機体2の前後方向に揺動する部材である。作業操作部材37を傾動操作することにより、作業操作部材37の下部に設けられた複数の操作弁59を操作することができる。
【0037】
複数の操作弁59と複数の制御弁51とは、複数の作業油路47(47a、47b、47c、47d)によって互いに接続されている。具体的には、操作弁59aは、作業油路47aを介してブーム制御弁51aに接続されている。操作弁59bは、作業油路47bを介してブーム制御弁51aに接続されている。操作弁59cは、作業油路47cを介してバケット制御弁51bに接続されている。操作弁59dは、作業油路47dを介してバケット制御弁51bに接続されている。複数の操作弁59a~59dは、それぞれ作業操作部材37の操作に応じて出力する作動油の圧力を定義可能である。
【0038】
予備アタッチメントの操作は、運転席7の周囲に設けられ、且つ制御装置70に接続されたスイッチ56(図2参照)によって行うことができる。スイッチ56は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、若しくは、押圧自在なプッシュ型スイッチ等、操作量を変更可能なスイッチで構成されている。スイッチ56の操作量は、制御装置70に入力される。制御装置70は、スイッチ56の操作に基づいて、第1電磁弁56aと、第2電磁弁56bと、を制御する。第1電磁弁56aは、予備制御弁51cの一方側の受圧部に作用するパイロット油を変更する電磁弁であり、第2電磁弁56bは、予備制御弁51cの他方側の受圧部に作用するパイロット油を変更する電磁弁である。
【0039】
これにより、スイッチ56は、制御装置70が当該スイッチ56の操作量に基づいて第1電磁弁56a及び第2電磁弁56bを制御することで、予備アクチュエータを操作することができる。
なお、上述した実施形態においては、作業操作部材37を操作して、複数の操作弁59a~59dが定義するパイロット圧を変更し、ブーム制御弁51a及びバケット制御弁51bを操作し、スイッチ56を操作して、予備制御弁51cを操作する場合を例に説明した。しかし、複数の制御弁51の操作方法は、作業操作部材37の操作信号に基づいて電気的にブーム制御弁51a及びバケット制御弁51bを制御するような構成であってもよく、上述した構成に限定されない。
【0040】
図2に示すように、作業機1は、バッテリ66と、モータ・ジェネレータ63と、を有している。バッテリ66は、当該バッテリ66の外部で発電された電力を蓄電したり、蓄電した電力を外部の機器に供給したりといった充放電を行う。
モータ・ジェネレータ63は、回転電機で構成され、モータとして作動してエンジン60の駆動をアシストするアシスト動作と、エンジン60の動力によりジェネレータとして作動して発電する発電動作とを行う装置である。モータ・ジェネレータ63には、永久磁石埋込式の三相交流同期モータが採用されている。アシスト動作とは、バッテリ66からモータ・ジェネレータ63に供給される電力によって、モータ・ジェネレータ63をモータとして作動させる動作である。
【0041】
つまり、モータ・ジェネレータ63が発電動作を行う場合、バッテリ66は、モータ・ジェネレータ63が発電した電力を蓄電する。また、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行う場合、バッテリ66は、蓄電した電力をモータ・ジェネレータ63に供給して、当該モータ・ジェネレータ63をモータとして作動させる。
次に、エンジン60の回転数の制御について説明する。図1図2に示すように、作業機1は、回転数操作具153,154と、回転検出装置690と、ECU69と、を備えている。回転数操作具153,154は、エンジン60の目標回転数E2を定義する操作具である。回転数操作具153,154は、エンジン60のECU69(図2参照)等に操作信号を出力する。本実施形態においては、回転数操作具153,154は、フットペダル153、ハンドアクセル154、及びアクセルセンサ601を有している。
【0042】
フットペダル(アクセルペダル)153は、図1に示すように、機体2の前部に設けられており、運転者の足で操作(フット操作)される。
また、ハンドアクセル154は、運転席7の側方に設けられており、運転者の手で操作(ハンド操作)される。ハンドアクセル154は、例えば、無段階の切換位置を有するダイヤル式の操作具である。
アクセルセンサ601は、フットペダル153及びハンドアクセル154の操作量を操作信号として、ECU69に出力するセンサである。アクセルセンサ601は、第1アクセルセンサ601a及び第2アクセルセンサ601bを含んでおり、フットペダル153とハンドアクセル154の操作信号は、それぞれ独立してECU69に出力される。
【0043】
具体的には、フットペダル153には、第1アクセルセンサ601aが設けられている
。第1アクセルセンサ601aは、フットペダル153の操作量を操作信号として、ECU69に出力するセンサである。第1アクセルセンサ601aは、フットペダル153の下方側に設けられており、当該フットペダル153の踏込み量(アクセル操作量)を検出する。
【0044】
また、ハンドアクセル154には、第2アクセルセンサ601bが設けられている。第2アクセルセンサ601bは、ハンドアクセル154の操作量を操作信号として、ECU69に出力するセンサである。第2アクセルセンサ601bは、ハンドアクセル154に設けられており、当該ハンドアクセル154の回転操作量(アクセル操作量)を検出する。
ECU69は、第1アクセルセンサ601a及び第2アクセルセンサ601bから出力された操作信号に基づいて、エンジン60の目標回転数E2を定義し、エンジン60の回転数を上げたり下げたりする。
【0045】
上述の説明では、ハンドアクセル154とフットペダル153の操作信号は、それぞれ独立してECU69に出力されるものであるとして説明したが、ハンドアクセル154とフットペダル153との操作は、一つのアクセルセンサ601によって検出され、共通のアクセルセンサ601がECU69に操作信号を出力してもよい。斯かる場合、ハンドアクセル154は、揺動操作可能なレバー式の操作具であって、ケーブル等を介してフットペダル153に連結されている。このため、ハンドアクセル154を揺動操作すると当該揺動操作に連動して、フットペダル153は踏み込み操作され、フットペダル153を踏み込み操作すると当該踏み込み操作に連動して、ハンドアクセル154は揺動操作される。
【0046】
また、回転数操作具153,154は、ダイヤル式やレバー式のハンドアクセル154、及びフットペダル153に限定されず、例えばスライドスイッチであってもよいし、その構成は上述した構成に限定されない。
回転検出装置690は、エンジン60の実際の回転数(エンジンの実回転数E1)を検出する装置である。本実施形態においては、回転検出装置690は、エンジン60の出力軸等の回転数を検出する回転センサである。具体的には、回転センサ690は、エンジンの実回転数E1として、エンジン60のクランクシャフトの回転数等を検出する。
【0047】
ECU69は、回転数操作具153,154から出力された操作信号に基づいて、エンジン60の目標回転数E2を定義し、エンジン60の回転数を上げたり下げたりする。ECU69は、制御装置70の一部を構成している。ECU69は、CPU及び電気電子回路等から構成されており、インジェクタの燃料噴射量を制御することでエンジン60の回転数を上げたり下げたりする。
【0048】
このような構成において、ECU69は、アクセルセンサ601及び回転センサ690の検出信号に基づいて、エンジン60の実回転数E1が、フットペダル153又はハンドアクセル154の操作量に応じた回転数、即ち回転数操作具153,154によって定義される回転数(目標回転数E2)となるように、インジェクタの燃料噴射量を制御する。ここで、目標回転数E2は、回転数操作具153,154によって定義(指令)される回転数であるが、アクセル指令値ともいう。
【0049】
エンジン60は、回転数操作具153,154であるフットペダル153又はハンドアクセル154の操作に基づいてECU69に制御されることで、回転数操作具153,154の操作量が零であるときのアイドリング回転数(例えば、1150rpm)から、回転数操作具153,154を最大に操作した最大回転数(例えば、2480rpm)へと回転数を増加させることが可能である。エンジン60の回転数を増加させることにより、走行ポンプ等の回転数が増加して、当該走行ポンプの吐出量が増加し、作業機1の走行速度等が増加する。
【0050】
図2に示すように作業機1は、油圧駆動装置64を備えている。油圧駆動装置64は、エンジン60が出力した動力及び/又はモータ・ジェネレータ63の動力により駆動する装置である。また、本実施形態においては、油圧駆動装置64は、主に作業機1が作業及び走行を行うための動力を出力する装置である。油圧駆動装置64は、モータ・ジェネレ
ータ63の前方に設けられている。油圧駆動装置64は、複数の油圧ポンプを含んでいる。例えば、図3図4に示すように、複数の油圧ポンプは、走行ポンプ52L、走行ポンプ52R、サブポンプP1、及びメインポンプP2を含んでいる。
【0051】
つまり、本実施形態においては、油圧駆動装置64は、作業機1が作業及び走行を行うための出力を発生する装置であって、エンジン60が出力した動力によって駆動し、モータ・ジェネレータ63がエンジン60の駆動をアシストするアシスト動作を行うことができるため、作業機1で発生された出力を油圧駆動装置64に伝達する経路は、パラレルハイブリッド方式であるといえる。
【0052】
このため、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行った場合、エンジン60及びモータ・ジェネレータ63の動力が油圧駆動装置64に伝達される。また、モータ・ジェネレータ63が発電動作を行った場合、エンジン60の出力が油圧駆動装置64に伝達され、モータ・ジェネレータ63で発電した電力はバッテリ66に充電される。
このため、作業機1は、エンジン60の動力で油圧駆動装置64を駆動したり、エンジン60及びモータ・ジェネレータ63の両方の動力で油圧駆動装置64を駆動したり、エンジン60の動力でモータ・ジェネレータ63を作動させて発電したりといった動作が可能である。
【0053】
以下、図5を参照して、エンジン60及びモータ・ジェネレータ63の動力伝達構造について詳しく説明する。図5は、モータ・ジェネレータ63の内部の断面図である。
エンジン60の前部には、略円板状のフライホイール及びモータ・ジェネレータ63を収容するハウジング65が設けられている。図5に示すように、モータ・ジェネレータ63は、フライホイールに連結する連結部63a、連結部63aに固定されたロータ63b、ロータ63bに設けられた固定子63c、及び固定子63cの外側に設けられたウォータジャケット63dを有している。
【0054】
連結部63aは、筒状に形成されていて後端がフライホイールに取り付けられている。連結部63aの内部には、中間軸68aが設けられている。中間軸68aの後端には、カップリング68bが設けられ、カップリング68bの外側は、フライホイールに接続されている。また、中間軸68aの前端には、油圧駆動装置64の駆動軸が接続されている。
従って、エンジン60を駆動した場合、エンジン60のクランク軸(出力軸)60aの回転動力は、フライホイールに伝達されて、当該フライホイールを回転させる。図5の矢印F1に示すように、フライホイールの回転動力は、カップリング68bから中間軸68aに伝達された後、中間軸68aから油圧駆動装置64の駆動軸に伝達されて、当該油圧駆動装置64を駆動することができる。
【0055】
また、図5の矢印F2に示すように、フライホイールの回転動力は、連結部63aを介してロータ63bに伝達される。従って、エンジン60の回転動力をロータ63b(連結部63a)に伝達することによって、モータ・ジェネレータ63を発電機として作動させることができる。
一方、バッテリ66に蓄電した電力を、固定子63cに供給することによって、ロータ63bを回転させることができる。図5の矢印F3に示すように、ロータ63bの回転動力は、連結部63aを介してフライホイールに伝達することができる。従って、モータ・ジェネレータ63を電動機(モータ)として作動させて発生させた回転動力(回転トルク)によって、エンジン60が発生する回転動力(回転トルク)を補助(アシスト)をすることができる。
【0056】
図2に示すように、作業機1は、電力制御部67を備えている。電力制御部67は、CPU及び電気電子回路等から構成されており、モータ・ジェネレータ63及びバッテリ66の制御を行うことができる。具体的には、電力制御部67は、インバータ67Aと、インバータ制御部67Bとを含んでいる。
インバータ67Aは、例えば、複数のスイッチング素子を有し、スイッチング素子の切換等によって、直流を交流に変換する等の動作を行う。インバータ67Aは、モータ・ジェネレータ63及びバッテリ66に接続されている。具体的には、インバータ67Aは、モータ・ジェネレータ63とバッテリ66を電気的に接続する経路に設けられ、バッテリ66からモータ・ジェネレータ63へ供給する電力を制御するものである。
【0057】
インバータ制御部67Bは、CPU及び電気電子回路等から構成され、インバータ制御部67Bに所定の信号を出力することで、モータ・ジェネレータ63をモータとして作動させたり、ジェネレータとして作動させたりする。バッテリ66の蓄電量(残量)は、制御装置70に接続された充電検出センサ97によって検出可能である。
図2に示すように、電力制御部67は、制御装置70に接続されている。制御装置70は、電力制御部67を制御するコントローラとしても動作可能である。言い換えると、制御装置70は、電力制御部67を介して、モータ・ジェネレータ63の制御を行うことができる。例えば、制御装置70は、モータ・ジェネレータ63のアシスト動作と、発電動作と、の制御を行うことができる。制御装置70は、インバータ制御部67Bに、信号を送信して、インバータ制御部67Bが当該信号に基づいて、モータ・ジェネレータ63をモータとして作動させたり、ジェネレータとして作動させたりする。
【0058】
具体的には、制御装置70は、モータ・ジェネレータ63にアシスト動作をさせる信号であるアシスト指令と、モータ・ジェネレータ63に発電動作をさせる信号である発電指令と、をインバータ制御部67Bに出力する。アシスト指令には、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作する際の力行トルクの定義情報が含まれている。また、発電指令には、モータ・ジェネレータ63が発電動作をする際の回生トルクの定義情報が含まれている。なお、モータ・ジェネレータ63は、アシスト動作と発電動作を同時に行わないため、制御装置70がアシスト指令及び発電指令を同時にインバータ制御部67Bへ出力することはない。
【0059】
具体的には、制御装置70は、モータ・ジェネレータ63がモータとして作動するときに発揮する力行トルクの大きさ(アシスト量)が零よりも大きく、モータ・ジェネレータ63がジェネレータとして作動するときにエンジン60から受け入れる回生トルクの大きさ(発電量)が零である場合、アシスト指令をインバータ制御部67Bに出力する。一方、制御装置70は、アシスト量が零であり、発電量が零よりも大きい場合、発電指令をインバータ制御部67Bに出力する。
【0060】
なお、本実施形態では、モータ・ジェネレータ63がモータとして作動するときに発揮する力行トルクの大きさをアシスト量といい、モータ・ジェネレータ63がジェネレータとして作動するときにエンジン60から受け入れる回生トルクの大きさを発電量ということがある。
アシスト指令を受信したインバータ制御部67Bは、力行トルクの定義情報に基づいてモータ・ジェネレータ63をモータとして作動させる。一方、発電指令を受信したインバータ制御部67Bは、回生トルクの定義情報に基づいてモータ・ジェネレータ63をジェネレータとして作動させる。
【0061】
なお、上述の記載では、制御装置70と、電力制御部67とを別体に構成しているが一体に構成されていてもよい。制御装置70と電力制御部67の構成は、上述の構成に限定されない。
図2に示すように、制御装置70は、記憶部70aと、力行トルク定義部70bと、回生トルク定義部70cと、動作制御部70dとを有している。記憶部70aは、不揮発性メモリ等で構成されている。力行トルク定義部70b、回生トルク定義部70c、及び動作制御部70dは、制御装置70に設けられた電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。なお、本実施形態においては、記憶部70a、力行トルク定義部70b、回生トルク定義部70c、及び動作制御部70dは、制御装置70に設けられているが、これに限定されず、電力制御部67に設けられていてもよい。
【0062】
記憶部70aは、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作及び充電動作のいずれかを行う場合の制御情報、例えば、図6に示すような制御マップ(通常マップMN)を記憶している。通常マップMNは、作業機1で行われる通常のアシスト動作を行うための制御マップである。制御マップは、エンジン60の実回転数E1と、アシスト動作及び充電動作の切換(動作切換)との関係、実回転数E1とアシスト動作する場合の力行トルクとの関係、実回転数E1と充電動作する場合の回生トルクとの関係を示している。
【0063】
なお、以下、説明の都合上、制御装置70が通常マップMNに基づいて、モータ・ジェネレータ63のアシスト動作及び発電動作の制御を行うモードを通常モードということがある。
また、上述の記載では、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作及び充電動作のいずれかを行う場合の制御情報は、制御マップであるが、これに限定されず、実回転数E1と動作切換との関係、実回転数E1とアシスト動作する場合の力行トルクとの関係、実回転数E1と充電動作する場合の回生トルクとの関係、制御テーブル、パラメータ、関数等で示してもよい。
【0064】
力行トルク定義部70bは、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行うときの力行トルクを定義する。図6に示すように、力行トルク定義部70bは、記憶部70aに記憶された制御マップ等の制御情報と、回転検出装置690が検出したエンジン60の実回転数E1と、を参照し、例えば、標準ラインKを用いて、エンジン60の実回転数E1における力行トルクを定義する。
【0065】
回生トルク定義部70cは、発電動作を行うときの回生トルクを定義する。図6に示すように、回生トルク定義部70cは、力行トルク定義部70bと同様に制御情報とエンジン60の実回転数E1を参照し、例えば、標準ラインKを用いて、エンジン60の実回転数E1における回生トルクを定義する。
なお、標準ラインKは、実回転数E1に応じてトルクが変化する傾斜ラインKaと、実回転数E1に関わらずトルクが一定である一定ラインKbとを含んでいる。
【0066】
動作制御部70dは、力行トルク定義部70bで決定された力行トルク(アシスト量)、又は回生トルク定義部70cで決定された回生トルク(発電量)を示す信号(言い換えると、アシスト指令又は発電指令)を電力制御部67へ出力する。具体的には、エンジンの実回転数E1が第1回転数N1以下である場合、動作制御部70dは、力行トルク定義部70bで定義された力行トルクを示す信号を電力制御部67に出力する。この力行トルクの信号を受信した電力制御部67は、モータ・ジェネレータ63を制御してモータとして作動させ、アシスト動作を実行する。
【0067】
また、エンジンの実回転数E1が第1回転数N1より大きい第2回転数N2以上である場合に、動作制御部70dは、回生トルク定義部70cで定義された回生トルクを示す信号を電力制御部67に出力する。この回生トルクの信号を受信した電力制御部67は、インバータ制御部67Bによってインバータ67Aを制御することで、モータ・ジェネレータ63をジェネレータとして作動させ、発電動作を実行する。
【0068】
動作制御部70dは、力行トルク定義部70bで定義された力行トルクを示す信号又は回生トルク定義部70cで定義された回生トルクを示す信号を電力制御部67に出力すると、電力制御部67のインバータ制御部67Bは、出力された力行トルク又は回生トルクの信号を取得する。インバータ制御部67Bは、取得した力行トルク又は回生トルクの信号に従って、モータ・ジェネレータ63が当該力行トルク又は回生トルクを発揮するように、インバータ67Aを制御する。この構成によって、制御装置70は、作業機1(エンジン60)におけるアシスト動作と発電動作を行う。
【0069】
ここで、制御装置70は、回転検出装置690によって検出された実回転数E1が、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2未満である場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行うモードに切り換えることができる。具体的には、制御装置70が通常マップMNとは別の制御マップに基づいて、モータ・ジェネレータ63のアシスト動作及び発電動作の制御を行うことができる。言い換えると、制御装置70は、通常モードとは別のモードに切り換えることが可能である。
【0070】
制御装置70は、実回転数が目標回転数E2未満である場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行うモードとして、第1モードと、第2モードと、のいずれかに切り換えることができる。なお、本実施形態においては、制御装置70は、通常モード、第1モード、及び第2モードに切り換えることができるが、少なくとも第1モード及び第2モードに切り換えることができればよく、通常モードに切り換えられなくてもよいし、通常モード、第1モード、及び第2モードとは別の第3モード等に切り換えられる構成であってもよい。
【0071】
図7は、本実施形態によるアシスト動作及び発電動作における、第1モードと第2モードの制御マップをグラフで示す図である。記憶部70aは、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作及び充電動作のいずれかを行う場合の制御情報、即ち制御マップとして、通常マップMNと異なる第1マップM1及び第2マップM2を記憶している。第1マップM1は、制御装置70が第1モードである場合に、力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cが参照する制御マップである。一方、第2マップM2は、制御装置70が第2モードである場合に、力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cが参照する制御マップである。
【0072】
以下、説明の都合上、第1モードのことをスピードモードとして説明し、第2モードのことをパワーモードとして説明する。
制御装置70の力行トルク定義部70bは、当該制御装置70のモードに応じて、記憶部70aに記憶された第1マップM1又は第2マップM2を参照する。その上で、力行トルク定義部70bは、エンジン60の実回転数E1に基づいて、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作する際の力行トルクを定義(決定)する。
【0073】
制御装置70の回生トルク定義部70cは、当該制御装置70のモードに応じて、記憶部70aに記憶された第1マップM1又は第2マップM2を参照する。その上で、回生トルク定義部70cは、エンジン60の実回転数E1に基づいて、モータ・ジェネレータ63が発電動作する際の回生トルクを定義(決定)する。
図2に示すように、作業機1は、切換具(モードスイッチ)171を備えている。切換具171は、制御装置70のモードを通常モード、スピードモード、及びパワーモードのいずれかに切り換えるためのスイッチである。切換具171が操作されると、制御装置70は、切換具171の切換に応じて、モードを切り換える。これにより、制御装置70の力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、切換具171の切り換えに応じて、つまり、制御装置70のモードに応じて、通常マップMN、第1マップM1、又は第2マップM2を参照する。
【0074】
切換具171は、例えば運転席7の周囲に設けられており(図示せず)、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、若しくは複数の押圧自在なプッシュ型スイッチ等、3つの位置に切り換え可能なスイッチ、又は操作量を変更可能なスイッチで構成されている。なお、切換具171は、少なくとも第1モードと第2モードとの切換が可能であればよく、単一のプッシュ型スイッチであってもよい。また、制御装置70が通常モード、第1モード、及び第2モードに切り換え可能な場合であっても、切換具171は、操作方法を変更、例えばスイッチの押し操作時間によって、それぞれのモードを区別したり、スイッチを操作するごとに、所定の順番に制御装置70のモードを切り換えたりするような構成であってもよい。さらに、切換具171は、コンピュータプログラム等によって作成され、制御装置70等が運転席7の周囲に設けられた表示装置(図示せず)等に表示するソフトウェアスイッチ等であってもよい。
【0075】
このため、運転者が必要に応じて切換具171を切り換えることで、運転者は、スピードモード又はパワーモードを任意に選択することができ、選択したアシスト動作のモードを作業機1に実行させることができる。
以下、図7図11を参照し、スピードモードとパワーモードについて説明する。
図7の上段に示すグラフは、エンジン60の実回転数E1(r/min)に対するエンジン60の定格出力(HP)を示している。つまり、図7の上段に示すグラフは、各実回転数E1において、エンジン60の負荷率が100%であるときのエンジン出力を示している。本実施形態に示す例においては、エンジン出力は、約2400回転(r/min)まで緩やかに上昇し、約2400回転(r/min)以降低下する。エンジン60のエンジン出力は、さらに約2450回転(r/min)を超えると、エンジン60の最大回転数に近いため急激に低下する。なお、図7に示すエンジン60の実回転数E1(r/min)とエンジン60の定格出力(HP)との関係は、例示に過ぎず、これに限定されない。
【0076】
図7では、作業機1による走行や作業で用いられる実回転数E1として約1700回転(r/min)から約2480回転(r/min)まで例示しているが、エンジン60は、実際には約1150回転(r/min)のアイドリング回転数以下からエンジン出力を発揮している。
図7の下段に示すグラフは、スピードモードのグラフ及びパワーモードのグラフとして、エンジン60の実回転数E1(r/min)に対するモータ・ジェネレータ63の回転トルクであるモータトルク(N・m)を表す第1マップM1及び第2マップM2を示している。また、図7の下段に示すグラフでは、スピードモードのグラフを破線で表示し、パワーモードのグラフを実線で表示している。ここで、図7の下段に示す制御マップ、つまり、破線で示すスピードモードのグラフ、及び実線で示すパワーモードのグラフは、それぞれアクセル指令値(目標回転数E2)が約2450回転であるときの第1マップM1及び第2マップM2を表している。第1マップM1及び第2マップM2は、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2(アクセル指令値)に応じて定義されており、記憶部70aは、目標回転数E2に応じた複数の制御マップを記憶している。本実施形態では、図7に示すような、アクセル指令値(目標回転数E2)が2450回転であるときの制御マップを例にあげて説明する。
【0077】
なお、図7の下段に示すグラフでは、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行う場合の当該モータ・ジェネレータ63の最大トルク(アシスト最大トルク)と、モータ・ジェネレータ63が発電動作を行う場合において、エンジン60から受け入れる最大トルク(発電最大トルク)と、を明確に区別して表示する都合上、モータとして発揮するトルクを正の値で示し、ジェネレータとして受け入れるトルクを負の値で示す。また、図7に示すように、制御装置70(電力制御部67)は、上記発電最大トルクからアシスト最大トルクの範囲でモータ・ジェネレータ63を制御する。
【0078】
ここで、スピードモード及びパワーモードの概要について説明する。
スピードモードとは、作業機1が走行等を行う場合、即ち実回転数E1が比較的高回転数域であり、且つトルクが必要とされる場合に用いられるモードである。つまり、スピードモードとは、エンジン負荷率が100%であり、実回転数E1が比較的高回転数域(第1範囲)である場合に、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行い、エンジン60をアシストすることで、作業機1の走行の機敏性を向上させるモードである。具体的には、制御装置70は、スピードモードにおいて、実回転数が目標回転数E2未満であり、且つ実回転数E1が比較的高回転数域である第1範囲A1にある場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行う。また、第1モード(スピードモード)において、実回転数が目標回転数E2未満であり、且つ実回転数E1が比較的高回転数域である第1範囲A1にある場合に、制御装置70(電力制御部67)は、実回転数E1に応じて、アシスト動作の大きさであるアシスト量を変更する。
【0079】
なお、制御装置70は、スピードモードにおいて、実回転数E1が目標回転数E2以上である場合に、モータ・ジェネレータ63を制御して発電動作を行う。
一方、パワーモードとは、作業機1が作業具11を用いて土砂を運搬する等の作業を行う場合、即ち実回転数E1が比較的中回転数域であり、且つトルクが必要とされる場合に用いられるモードである。つまり、パワーモードとは、エンジン負荷率が100%であり、実回転数E1が比較的中回転数域である第2範囲A2にある場合に、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行い、エンジン60をアシストすることで、作業機1の力強さを向上させるモードである。具体的には、制御装置70は、パワーモードにおいて、実回転数E1が目標回転数E2未満であり、且つ比較的中回転数域(言い換えると、スピードモードにおける第1範囲A1に比べて低回転数の領域)である第2範囲A2にある場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行う。なお、制御装置70は、パワーモードにおいて、実回転数E1が第2範囲A2よりも高い場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行う。言い換えると、パワーモードは、実回転数E1が比較的高回転数域である場合に、モータ・ジェネレータ63が発電動作を行い、蓄電を行うモードである。
【0080】
ここで、上述した中回転数域(第2範囲A2)とは、上述した高回転数域(第1範囲A1)よりも低い、中程度の回転数域である。つまり、図7に示すように、スピードモードと比較したときのパワーモードの特徴は、スピードモードにおいてアシスト動作を行う第1範囲A1の少なくとも一部で、発電動作を行うことにある。通常、作業機1が土砂を運搬する等の負荷の高い作業では、エンジン60の回転数は、回転数操作具153,154で定義されたエンジン60の目標回転数E2よりも大きく低下する。そこで、制御装置70をパワーモードに切り換えると、エンジン60の実回転数E1が第1範囲A1(高回転数域)の一部にある場合、制御装置70は、作業の負荷が比較的小さいものとみなして、モータ・ジェネレータ63をジェネレータとして制御して発電動作を行わせることができる。
【0081】
なお、上述した第1範囲A1(高回転数域)と第2範囲A2(中回転数域)とは、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2に対応して定義されており、第1範囲A1及び第2範囲A2は、目標回転数E2が高くなるにつれて当該範囲が高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて当該範囲が低回転数域で定義される。また、第1範囲A1(高回転数域)と第2範囲A2(中回転数域)とは、互いの回転数域が若干重複していてもよいし、全く重複していなくてもよい。第1範囲A1と第2範囲A2は、作業機1の構成や用途に応じて決定されるとよい。その決定の方法はいかなる方法にも限定されない。
【0082】
以下、図8を参照しながら、第1マップM1について詳しく説明する。図8は、本実施形態によるアシスト動作における、第1マップM1の情報を、エンジン60の実回転数E1と、モータ・ジェネレータ63のモータトルクとの関係を表すグラフで示す図である。
まず、第1範囲A1について説明する。図8に示す第1範囲A1は、実回転数E1が所定の下限値(第1下限値L1)以上であり所定の上限値(第1上限値U1)未満である範囲で定義されている。第1下限値L1及び第1上限値U1は、目標回転数E2が高くなるにつれて高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて低回転数域で定義される。
【0083】
具体的には、図8に示す例においては、第1範囲A1は、約1900回転として例示された第1下限値L1と、2450回転として例示された第1上限値U1によって定義されている。また、第1上限値U1は、回転数操作具153,154が定義したエンジン60の目標回転数E2である。
なお、これら第1下限値L1と第1上限値U1は、1900回転や2450回転といった具体的な数値に限定されることはなく、作業機1やエンジン60の特性に従って、作業機1による走行等で用いられる実回転数E1に基づいて決定される。
【0084】
図8に示すように、第1範囲A1は、第1領域R1と、第2領域R2と、第3領域R3と、の領域を有している。
第1領域R1は、実回転数E1が低くなるにつれて、制御装置70がアシスト量を小さくするようモータ・ジェネレータ63を制御する領域である。第1領域R1は、第1範囲A1において、実回転数E1が第1下限値L1以上であり当該第1下限値L1よりも高い回転数である第1閾値T1未満である領域である。第1閾値T1は、目標回転数E2が高くなるにつれて高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて低回転数域で定義される。
【0085】
ここで、第1閾値T1は、第1上限値U1よりも低く第1下限値L1よりも高い実回転数E1を示す値であり、例えば、第1範囲A1の略中間の回転数を示す値である。従って、第1領域R1は、第1範囲A1の低回転側の約半分を占める。
第1領域R1において、アシスト量であるモータトルクは、実回転数E1が第1閾値T1から第1下限値L1へ向かって低くなるにつれて、最大値(100N・m)から零N・mへ向かって徐々に小さくなる。
【0086】
なお、図8において、第1領域R1におけるアシスト量の減少について、直線を用いて減少率が一定である(比例している)ことを示しているが、少なくとも、実回転数E1が低くなるにつれて、制御装置70がアシスト量を小さくするようモータ・ジェネレータ6
3を制御できればよく、第1領域R1において、実回転数E1の低下に対するアシスト量の減少率を、実回転数E1に応じて二次関数的に変化させてもよいし、他の方法で様々に変化させてもよい。
【0087】
次に、第2領域R2は、実回転数E1が低くなるにつれて、制御装置70がアシスト量を大きくするようモータ・ジェネレータ63を制御する領域である。第2領域R2は、第1範囲A1において、実回転数E1が第1閾値T1よりも高い回転数である第2閾値T2以上であり第1上限値U1未満である領域である。第2閾値T2は、目標回転数E2が高くなるにつれて高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて低回転数域で定義される。
【0088】
ここで、第2閾値T2は、第1上限値U1と第1閾値T1との間で、第1上限値U1に比較的近い値である。図8では、第2閾値T2は、約2450回転である第1上限値U1よりも数十回転低い約2420回転程度を示す値であり、第1閾値T1に比べて第1上限値U1に近い値である。
第2領域R2において、アシスト量であるモータトルクは、実回転数E1が第1上限値U1から第2閾値T2へ向かって低くなるにつれて、数十回転低下する間に、零N・mから最大値(100N・m)へ向かって急速に大きくなる。このように、僅かな実回転数E1の低下の間に、急速にアシスト量を増加させることによって、エンジン60が高回転数域にあるときのアシスト動作を適切なタイミングで実行することができる。
【0089】
図8において、第2領域R2におけるアシスト量の増加について、直線を用いて増加率が一定である(比例している)ことを示している。しかし、少なくとも、第2領域R2では、実回転数E1が低くなるにつれて、制御装置70がアシスト量を大きくするようモータ・ジェネレータ63を制御できればよく、実回転数E1の低下に対するアシスト量の増加率を、実回転数E1に応じて二次関数的に変化させてもよいし、他の方法で様々に変化させてもよい。
【0090】
次に、第3領域R3は、実回転数E1によらず、制御装置70がアシスト量を最大(一定)にするようモータ・ジェネレータ63を制御する領域である。第3領域R3は、第1範囲A1において、実回転数E1が第1閾値T1以上であり第2閾値T2未満である領域である。ここで、第2閾値T2と第1閾値T1の回転数差は、図8では、約2420回転程度である第2閾値T2と約2220回転程度である第1閾値T1の回転数差である約200回転である。従って、第3領域R3は、第1範囲A1の高回転側の約半分を占める。
【0091】
具体的には、第3領域R3において、アシスト量であるモータトルクは、第2閾値T2から第1閾値T1に亘って最大値(100N・m)に維持される。このように、エンジン60が高回転数域にあるときに、第2領域R2において急速に最大値(100N・m)まで増加させたアシスト量を維持することで、エンジン60が高回転数域にあるときのアシスト動作を確実に実行することができる。
【0092】
図8に示すように、上述したスピードモードにおいて、制御装置70(電力制御部67)は、実回転数E1が第1範囲A1(第1上限値U1)よりも高い場合、モータ・ジェネレータ63をジェネレータとして制御して、発電動作を行う。具体的には、制御装置70(電力制御部67)は、実回転数E1が第1上限値U1よりも高いときに、実回転数E1が高くなるにつれて発電動作における発電量を大きくする。言い換えると、第1上限値U1は、目標回転数E2と同値であるため、スピードモードにおいて、制御装置70は、実回転数E1が目標回転数E2よりも高い場合、モータ・ジェネレータ63をジェネレータとして制御して、発電動作を行う。
【0093】
つまり、スピードモードにおいて、制御装置70は、実回転数E1が第1上限値U1であるアクセル指令値(目標回転数E2)よりも高くなる場合、例えば、作業機1による走行において下り坂を走行している場合等、エンジン60の負荷が低くなると、アシスト動作を行わず、発電動作を行う。これによって、実回転数E1が高回転数域であるときアシスト動作を行うスピードモードにおいても、エンジン60の負荷が低くなったときに、バッテリ66を適宜充電することができる。
【0094】
さらに、図8に示すように、上述したスピードモードにおいて、制御装置である制御装
置70及び電力制御部67は、実回転数E1が第1範囲A1(第1下限値L1)よりも低い場合、モータ・ジェネレータ63を制御してモータとしてもジェネレータとしても作動させず、アシスト動作も発電動作を行わない。図8では、実回転数E1が、約1900回転として示された第1下限値L1よりも低い場合、破線で示すスピードモードのモータトルクは零N・mを示しており、モータ・ジェネレータ63はモータとしてもジェネレータとしても作動していない。これによって、実回転数E1が高回転数域であるときに行うスピードモードによるアシスト動作において、実回転数E1が低くなったときに、不要なアシスト動作を停止することができ、また、エンジン60の出力を発電に消費することを防ぐことができる。
【0095】
次に、図9を参照しながら、第2マップM2について詳しく説明する。図9は、本実施形態によるアシスト動作における、第2マップM2の情報を、エンジン60の実回転数E1と、モータ・ジェネレータ63のモータトルクとの関係を表すグラフで示す図である。
まず、第2範囲A2について説明する。図9に示す第2範囲A2は、実回転数E1が所定の下限値(第2下限値L2)以上であり所定の上限値(第2上限値U2)未満である範囲で定義されている。第2下限値L2及び第2上限値U2は、目標回転数E2が高くなるにつれて高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて低回転数域で定義される。
【0096】
具体的には、図9に示す例においては、第2範囲A2は、エンジン60のアイドリング回転数(約1150回転)として例示された第2下限値L2と、約2280回転として例示された上限値(第2上限値U2)によって定義されている。また、第2上限値U2は、回転数操作具153,154が定義したエンジン60の目標回転数E2よりも小さい回転数である。
なお、これら第2下限値L2と第2上限値U2は、2280回転等といった具体的な数値に限定されることはなく、作業機1やエンジン60の特性に従って、作業機1による作業等で用いられる実回転数E1に基づいて決定されるとよい。
【0097】
図9に示すように、第2範囲A2は、第4領域R4と、第5領域R5と、の領域を有している。
第4領域R4は、実回転数E1が低くなるにつれて、制御装置70がアシスト量を大きくするようモータ・ジェネレータ63を制御する領域である。第4領域R4は、第2範囲A2において、実回転数E1が第2上限値U2よりも低い回転数である第3閾値T3以上であり第2上限値U2未満である領域である。第3閾値T3は、目標回転数E2が高くなるにつれて高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて低回転数域で定義される。
【0098】
ここで、第3閾値T3は、第2下限値L2よりも高く、且つ第2下限値L2よりも第2上限値U2に近い実回転数E1を示す値であり、図9に示す例においては、約2280回転である第2上限値U2よりも数十回転低い約2250回転程度を示す値である。
第4領域R4において、アシスト量であるモータトルクは、実回転数E1が第2上限値U2から第3閾値T3へ向かって低くなるにつれて、数十回転低下する間に、零N・mから最大値(100N・m)へ向かって急速に増加する。このように、僅かな実回転数E1の低下の間に急速にアシスト量を増加させることによって、作業機1による作業等においてアシスト動作が必要となったときに、アシスト動作を遅れることなく直ちに実行することができる。
【0099】
なお、図9において、第4領域R4におけるアシスト量の増加について、直線を用いて増加率が一定である(比例している)ことを示している。しかし、第4領域R4では、少なくとも、実回転数E1が低くなるにつれて、制御装置70がアシスト量を大きくするようモータ・ジェネレータ63を制御できればよく、第4領域R4において、実回転数E1の低下に対するアシスト量の増加率は一定でなくともよい。例えば、第4領域R4において、実回転数E1の低下に対するアシスト量の増加率を、実回転数E1に応じて二次関数的に変化させてもよいし、他の方法で様々に変化させてもよい。
【0100】
第5領域R5は、実回転数E1によらず、制御装置70がアシスト量を最大(一定)に
するようモータ・ジェネレータ63を制御する領域である。第5領域R5は、第2範囲A2において、実回転数E1が第2下限値L2以上であり第3閾値T3未満である領域である。つまり、第5領域R5は、実回転数E1にして数十回転分である第4領域R4を含む第2範囲A2の大部分を占めている。従って、第5領域R5は、エンジン60の実回転数E1のうち、スピードモードの比較的高回転数の領域(第2領域R2及び第3領域R3)を除いた領域の大部分を占めることになる。
【0101】
第5領域R5において、アシスト量であるモータトルクは、第3閾値T3から第2下限値L2に亘って最大値(100N・m)に維持される。このように、エンジン60が高回転数域よりも低い回転域にあるときに、第4領域R4において急速に最大値(100N・m)まで増加させたアシスト量を維持することで、エンジン60が高回転数域よりも低い回転域にあるときのアシスト動作を確実に実行することができる。
【0102】
図9に示すように、上述したパワーモードにおいて、制御装置70(電力制御部67)は、実回転数E1が第2範囲A2(第2上限値U2)よりも高い場合、モータ・ジェネレータ63をジェネレータとして制御して、発電動作を行う。具体的には、制御装置70(電力制御部67)は、実回転数E1が、第2上限値U2より高いときに、実回転数E1が高くなるにつれて発電動作における発電量を大きくする。言い換えると、第2上限値U2は、目標回転数E2よりも低いため、パワーモードにおいて、制御装置70は、実回転数E1が目標回転数E2よりも低い回転数域である場合、モータ・ジェネレータ63をジェネレータとして制御して、発電動作を行う。
【0103】
つまり、パワーモードにおいて、制御装置70は、実回転数E1が、比較的高回転数域である場合、例えば、作業機1による作業に要求される負荷が比較的小さい等、エンジン60の負荷が低くなると、アシスト動作を行わず、発電動作を行う。これによって、実回転数E1が高回転数域よりも低い回転域であるときにアシスト動作を行うパワーモードにおいても、エンジン60の負荷が低くなったときに、バッテリ66を適宜充電することができる。
【0104】
なお、制御装置70(電力制御部67)は、実回転数E1がエンジン60の目標回転数E2となったときに発電量が最大値となるよう、モータ・ジェネレータ63を制御してもよい。また、この発電量の増加の速度は、本実施形態の例に限定されるものではなく、作業機1、モータ・ジェネレータ63、及びバッテリ66の特性や性能に応じて任意に定義することができる。
【0105】
なお、図10は、第1範囲A1及び第2範囲A2が目標回転数E2に対応して定義されていることを説明するため、図7図9に示した制御マップの例に比べ、目標回転数E2が低い場合の制御マップを示す例である。具体的には、図10は、目標回転数E2が2200回転であるときの制御マップの内容を示すグラフである。図10の上段は、図7の上段と同様に、エンジン60の実回転数E1(r/min)に対するエンジン60の定格出力(HP)を表すグラフを示している。
【0106】
図10の下段は、図7の下段と同様に、スピードモードとパワーモードの制御マップ(第1マップM1及び第2マップM2)を表すグラフを示している。図10に示す例では、エンジン60の目標回転数E2が2200回転である場合の制御マップを示している。即ち、第1上限値U1は、目標回転数E2の2200回転である。つまり、図10に示すグラフ(制御マップ)は、図7に示すグラフ(制御マップ)を、第1上限値U1が2450回転から2200回転となるように、低回転方向へ圧縮したものである。言い換えると、図7に示すグラフ(制御マップ)は、図10に示すグラフ(制御マップ)を、第1上限値U1が2200回転から2450回転となるように、高回転方向へ拡大したものである。
【0107】
図10に示すような、エンジン60の最大回転数に限らず比較的低い目標回転数E2に対応する制御マップを複数備えることで、様々な条件下で行われる作業機1による走行や作業において、適切にアシスト動作を実行することができる。
以下、図11を参照し、作業機1におけるアシスト動作及び発電動作の制御について説明する。まず、運転者が切換具171を操作する(ステップS10)。切換具171が操作されると(ステップS10)、制御装置70は、当該切換具171の操作に応じて、モ
ードを切り換える(ステップS20)。
制御装置70がモードを切り換えると(ステップS20)、制御装置70の力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、制御装置70の現在のモードがスピードモードであるか否かを確認する(ステップS30)。
【0108】
力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、制御装置70の現在のモードがスピードモードであると確認すると(ステップS30,Yes)、記憶部70aに記憶されたスピードモードに対応する制御マップ(第1マップM1)を参照する(ステップS40)。具体的には、制御装置70の力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、記憶部70aに記憶された制御マップから、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2に対応する第1マップM1を参照する。
また、力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、制御装置70の現在のモードがスピードモードではないと確認すると(ステップS30,No)、制御装置70の現在のモードがパワーモードであるか否かを確認する(ステップS50)。
【0109】
力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、制御装置70の現在のモードがパワーモードであると確認すると(ステップS50,Yes)、記憶部70aに記憶されたパワーモードに対応する制御マップ(第2マップM2)を参照する(ステップS60)。具体的には、制御装置70の力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、記憶部70aに記憶された制御マップから、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2に対応する第2マップM2を参照する。
そして、力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、制御装置70の現在のモードがパワーモードではないと確認すると、即ち制御装置70が通常モードであると確認すると(ステップS50,No)、記憶部70aに記憶された通常モードに対応する制御マップ(通常マップMN)を参照する(ステップS70)。
【0110】
力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、制御装置70の現在のモードに対応する制御マップを参照すると(ステップS40、ステップS60、ステップS70)、実回転数E1及び参照した制御マップに基づいて、エンジン60の実回転数E1に対応するアシスト量及び発電量を定義(決定)する(ステップS80)。具体的には、力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、回転検出装置690が検出した実回転数E1を参照する。また、力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cは、当該実回転数E1と、参照した制御マップと、に基づいて、エンジン60の実回転数E1に対応するアシスト量及び発電量を定義(決定)する。図7等に記載されているとおり、アシスト量と発電量が同時に発生することはないので、アシスト量及び発電量の一方が発生したときは、他方は零となる。
【0111】
力行トルク定義部70b及び回生トルク定義部70cが、アシスト量及び発電量を定義(決定)すると(ステップS80)、動作制御部70dは、アシスト量及び発電量を示す信号を電力制御部67に出力する(ステップS90)。具体的には、まず、動作制御部70dは、当該アシスト量及び発電量を取得する。動作制御部70dは、アシスト量及び発電量を取得すると、当該アシスト量及び発電量を示す信号として、アシスト指令又は発電指令を電力制御部67に出力する。
【0112】
動作制御部70dが、アシスト量及び発電量を示す信号を電力制御部67に出力すると(ステップS90)、電力制御部67のインバータ制御部67Bは、ステップS90で動作制御部70dから出力されたアシスト量及び発電量に基づいて、モータ・ジェネレータ63が、当該力行トルク又は回生トルクを発揮するように、インバータ67Aを制御する(ステップS100)。
【0113】
本実施形態による作業機1は、機体2と、機体2に設けられ、動力を出力するエンジン60と、動力を出力するモータとして作動して、エンジン60の駆動をアシストするアシスト動作と、エンジン60が出力した動力によりジェネレータとして作動して発電する発電動作と、を行うモータ・ジェネレータ63と、エンジン60が出力した動力及び/又はモータ・ジェネレータ63が出力した動力によって駆動される油圧駆動装置64と、エンジン60の目標回転数E2を定義する回転数操作具153,154と、エンジン60の実
回転数E1を検出する回転検出装置690と、回転検出装置690によって検出された実回転数E1が、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2未満である場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行うモードに切り換え可能な制御装置70と、を備える。制御装置70は、実回転数E1が目標回転数E2未満であり、且つ実回転数E1が所定の第1範囲A1にある場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行う第1モードと、実回転数E1が目標回転数E2未満であり、且つ実回転数E1が第1範囲A1に比べて低回転数の領域である第2範囲A2にある場合に、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作を行う第2モードと、のいずれかに切り換え可能である。
【0114】
この構成によれば、作業機1が走行や作業を行う場合のように、異なる回転数域において、適切にアシスト動作を行うことができる。
制御装置70は、第1モードにおいて実回転数E1に応じて、アシスト動作の大きさであるアシスト量を変更する。
この構成によれば、エンジン60への負荷に応じて、適切にアシスト量を変更することができる。
第1範囲A1は、実回転数E1が所定の第1下限値L1以上であり所定の第1上限値U1未満である範囲であり、第1上限値U1は、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2である。
この構成によれば、作業機1は、目標回転数E2直下からアシスト量が立ち上がるので、作業機1の機敏性を向上させることができる。
【0115】
第1範囲A1は、第1下限値L1以上であり当該第1下限値L1よりも高い回転数である第1閾値T1未満である第1領域R1を含み、制御装置70は、第1モードにおいて、実回転数E1が第1領域R1内にある場合に実回転数E1が低くなるにつれて、アシスト動作の大きさであるアシスト量を小さくする。
この構成によれば、実回転数E1が、第1モードがアシスト動作の対象としている高回転数域にないときに、アシスト量を小さくしてモータ・ジェネレータ63の消費電力を減少させることができる。
【0116】
第1範囲A1は、第1閾値T1よりも高い回転数である第2閾値T2以上であり第1上限値U1未満である第2領域R2を含み、制御装置70は、第1モードにおいて、実回転数E1が第2領域R2内にある場合に実回転数E1が低くなるにつれて、アシスト量を大きくする。
この構成によれば、目標回転数E2直下からアシスト量を徐々に大きくすることができるので、実回転数E1の大きさ、即ちエンジン60への負荷に応じて、作業機1の機敏性を向上させることができる。
【0117】
第1範囲A1は、第1閾値T1以上であり第2閾値T2未満である第3領域R3を含み、制御装置70は、第1モードにおいて、実回転数E1が第3領域R3内にある場合にアシスト量を最大にする。
この構成によれば、作業機1が走行している場合等の実回転数E1が比較的高回転数の領域において、十分なアシスト量を発揮することができる。これによって、作業機1の機敏性を確実に向上させることができる。
【0118】
制御装置70は、第1モードにおいて、実回転数E1が第1範囲A1よりも高い場合、モータ・ジェネレータ63を制御して発電動作を行う。
この構成によれば、第1モードでアシスト動作を用いた走行中であっても、一時的にエンジン60の負荷が低下したときに発電動作を行うことができ、エネルギーを無駄なく活用することができる。
【0119】
制御装置(制御装置70及び電力制御部67)は、第1モードにおいて、実回転数E1が第1範囲A1よりも低い場合、モータ・ジェネレータ63を制御してアシスト動作及び発電動作を行わない。
この構成によれば、実回転数E1が大きく低下した場合に、スピードモードが目的としない不要なアシスト動作を停止することができ、エンジン60が出力する動力を発電に消
費することを抑止できる。
【0120】
第2範囲A2は、実回転数E1が所定の第2下限値L2以上であり所定の第2上限値U2未満である範囲であり、第2上限値U2は、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2よりも小さい。
この構成によれば、作業機1による作業等で、エンジン60の回転数が特に高回転数域にない場合であっても、作業機1に大きな負荷が加わるときに、必要なタイミングで適切にアシスト動作を行うことができる。
【0121】
第2範囲A2は、第2上限値U2よりも低い回転数である第3閾値T3以上であり第2上限値U2未満である第4領域R4を含み、制御装置70は、第2モードにおいて、実回転数E1が第4領域R4内にある場合に実回転数E1が低くなるにつれて、アシスト動作の大きさであるアシスト量を大きくする。
この構成によれば、第2上限値U2直下からアシスト量を大きくすることができるので、必要なタイミングで適切に作業機1の力強さを向上させることができる。
【0122】
第2範囲A2は、第2下限値L2以上であり第3閾値T3未満である第5領域R5を含み、制御装置70は、第2モードにおいて、実回転数E1が第5領域R5内にある場合にアシスト量を最大にする。
この構成によれば、作業機1による作業等で、実回転数E1が比較的高回転数の領域にない場合であっても、エンジン60に大きな負荷が加わるときに、幅広い実回転数E1域において必要なタイミングで適切にアシスト動作を行うことができる。
【0123】
制御装置70は、第2モードにおいて、実回転数E1が第2範囲A2よりも高い場合、モータ・ジェネレータ63を制御して発電動作を行う。
この構成によれば、第2モードでアシスト動作を用いた作業中であっても、一時的にエンジン60の負荷が低下したときに発電動作を行うことができ、エネルギーを無駄なく活用することができる。
【0124】
制御装置70は、実回転数E1が高くなるにつれて、発電動作における発電量を大きくする。
この構成によれば、アシスト動作を用いた作業中であっても、一時的にエンジン60の負荷が低下したときに発電動作を行うことができ、エンジン60が出力するエネルギーの大きさに応じて、エネルギーを無駄なく適切に活用することができる。
【0125】
第1範囲A1及び第2範囲A2は、回転数操作具153,154が定義した目標回転数E2に対応して定義されており、第1範囲A1及び第2範囲A2は、目標回転数E2が高くなるにつれて当該範囲が高回転数域で定義され、目標回転数E2が低くなるにつれて当該範囲が低回転数域で定義される。
この構成によれば、回転数操作具153,154によって定義された目標回転数E2に応じて、スピードモード及びパワーモードによるアシスト動作を適切に実行することができる。
【0126】
作業機1は、制御装置70に接続され、当該制御装置の第1モード及び第2モードへの切り換え操作が可能な切換具171を備えている。
この構成によれば、運転者が、スピードモード又はパワーモードを任意に選択することができ、選択したアシスト動作のモードを作業機1に実行させることができる。
【0127】
[第2実施形態]
図2図12A図14Bを参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態においても作業機1のアシスト動作及び発電動作について説明する。本実施形態による作業機1において、第1実施形態による作業機1と同様の構成については、同じ参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態による作業機1では、第1実施形態で説明したモードに加え、操作部材の操作量に応じてアシスト量を定義する操作モードに切り換え可能である点で異なる。
【0128】
本実施形態における操作部材は、運転者が足で操作するフットペダル153である。さらに、操作部材は、フットペダル153に加え、運転者が手で操作するハンドアクセル154を含んでいる。言い換えると、本実施形態における操作部材は、エンジン60の目標回転数E2を定義する回転数操作具153,154である。
なお、本実施形態においては、操作部材がフットペダル153とハンドアクセル154であって、エンジン60の目標回転数E2を定義する回転数操作具153,154である場合を例に説明したが、制御装置70は、操作部材の操作量に応じてアシスト量を補正可能であればよく、操作部材は、フットペダル153とハンドアクセル154との組み合わせに限定されない。さらには、操作部材は、回転数操作具に限定されず、回転数操作具とは異なるアクセル量を補正するための専用のスイッチであってもよい。
【0129】
図2に示すように、制御装置70の操作モードへの切換は、制御装置70に接続された切換スイッチ172によって操作可能である。切換スイッチ172は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、及び押圧自在なプッシュ型スイッチ等の操作量を変更可能なスイッチで構成されている。本実施形態において、切換スイッチ172は、2位置に切換可能なプッシュ型スイッチである。制御装置70は、切換スイッチ172から出力された信号、言い換えると操作(切換位置)に応じて、操作モード以外のモードと、操作モードと、に切り換える。具体的には、切換スイッチ172が押圧操作されていない切換位置(第1位置)である場合、制御装置70は、操作モード以外のモード、即ち切換具171の操作に応じたモードに切り換わる。一方、切換スイッチ172が押圧されている切換位置(第2位置)である場合、制御装置70は、操作モードに切り換わる。言い換えると、切換スイッチ172が第2位置の場合、制御装置70は、切換具171の操作によらず、操作モードに切り換わる。
【0130】
なお、切換スイッチ172は、運転席7の周囲で運転者が操作しやすい場所に設けられていればよく、その位置は限定されない。また、制御装置70の操作モードへの切換は、上述した方法に限定されず、例えば、制御装置70の操作モードへの切換は、ハンドアクセル154の操作量に応じて行ってもよい。具体的には、制御装置70は、ハンドアクセル154によって定義された目標回転数E2がエンジン60の最大回転数であると、操作モードに切り換わる。本実施形態においては、ハンドアクセル154は、最大限回転操作された場合に、目標回転数E2を最大回転数に定義する。即ち、ハンドアクセル154が最大限回転操作されると、制御装置70は、第2アクセルセンサ601bから操作信号を取得し、ハンドアクセル154の操作量が最大であると検出する。これにより、制御装置70は、切換具171の操作によらず、操作モードに切り換わる。
【0131】
これにより、制御装置70は、切換具171の操作によらず、操作モードに切り換わることができる。言い換えると、制御装置70は、操作モードに切り換わることで、操作モード以外のモードで定義されたアシスト量を補正するといえる。
以下、制御装置70が操作モード以外のモードである場合、及び制御装置70が操作モードである場合における、エンジン60の制御及びアシスト量の定義について詳しく説明する。
【0132】
制御装置70が操作モード以外のモードである場合、当該制御装置70は、フットペダル153及び/又はハンドアクセル154の操作に応じて、目標回転数E2を定義する。詳しくは、制御装置70(ECU69)は、フットペダル153及びハンドアクセル154のうち、いずれか一方が操作されると、当該操作された方のアクセルセンサ(第1アクセルセンサ601a又は第2アクセルセンサ601b)が検出した操作量(目標回転数E2)を採用する。なお、ECU69によるエンジン60の制御はこれに限定されず、公知技術を適用することができる。
【0133】
制御装置70が操作モードである場合、当該制御装置70は、ハンドアクセル154の操作に応じて、目標回転数E2を定義し、フットペダル153の操作に応じて、アシスト量を定義する。具体的には、制御装置70は、フットペダル153の操作量に応じて、アシスト量を定義する。制御装置70は、第1アクセルセンサ601aが検出した操作信号に基づいて、フットペダル153の操作量を0%から100%の範囲で取得する。また、制御装置70は、フットペダル153の操作量と、記憶部610に記憶された制御マップ(第3マップM3)に基づいてアシスト量を定義する。
【0134】
図12Aは、操作モードにおけるフットペダル153の操作量とアシスト量との関係(
第3マップM3)を示す図である。第3マップM3は、フットペダル153の操作量に対応する第1区間m1、第2区間m2、及び第3区間m3を含んでいる。
第1区間m1は、フットペダル153の操作量が比較的低い区間である。本実施形態において、第1区間m1は、フットペダル153の操作量が0%以上、12.5%未満の区間である。言い換えると、第1区間m1は、フットペダル153の踏み込み初期の区間に相当する。また、図12Aに示すように、第1区間m1は、アシスト量が零N・mに定義されている区間である。これによって、フットペダル153の踏み込み初期の区間において、制御装置70は、アシスト量を零N・mに維持することで、フットペダル153の操作に対するモータ・ジェネレータ63の動作が過敏になるのを防ぐことができる。
【0135】
第2区間m2は、フットペダル153の操作量が比較的中程度の区間である。即ち、第2区間m2は、第1区間m1よりもフットペダル153の操作量が大きい区間である。本実施形態において、第2区間m2は、フットペダル153の操作量が12.5%以上、80%未満の区間である。また、図12Aに示すように、第2区間m2は、フットペダル153の操作量が12.5%から80%へ向かうにつれて、零N・mから最大値(100N・m)へ向かって、アシスト量が徐々に大きくなるよう定義されている区間である。これによって、運転者は、アシスト量の素早い立ち上がりを感じることができるので、作業機1の操作性の向上につながる。
【0136】
第3区間m3は、フットペダル153の操作量が比較的大きい区間である。即ち、第3区間m3は、第1区間m1及び第2区間m2よりもフットペダル153の操作量が大きい区間である。本実施形態において、第3区間m3は、フットペダル153の操作量が80%以上の区間である。また、図12Aに示すように、第3区間m3は、アシスト量が最大値(100N・m)に定義されている区間である。
【0137】
以下、図13を参照しながら、本実施形態による制御装置70の操作モードへの切換について説明する。
まず、制御装置70は、切換スイッチ172が操作されたか否かを確認する(ステップS110)。具体的には、運転者が切換スイッチ172を操作すると、制御装置70は、切換スイッチ172から出力された信号に基づいて、切換スイッチ172が操作されたか否かを確認する。
【0138】
制御装置70は、ステップS110で切換スイッチ172が操作されたと判断した場合(ステップS110、Yes)、操作モードへ切り換わる(ステップS120)。制御装置70は、操作モードに切り換わると(ステップS120)、ハンドアクセル154の操作に応じて、目標回転数E2を定義し、フットペダル153の操作に応じて、アシスト量を定義する(ステップS130)。
【0139】
また、制御装置70は、ステップS110で切換スイッチ172が操作されていないと判断した場合(ステップS110、No)、制御装置70は、ハンドアクセル154の操作量が最大であるか否かを判断する(ステップS140)。具体的には、制御装置70は、第2アクセルセンサ601bから操作信号を取得し、当該操作信号に基づいてハンドアクセル154の操作量が最大であるか否かを判断する。
【0140】
制御装置70は、ハンドアクセル154の操作量が最大であると判断した場合(ステップS140、Yes)、ステップS120に進み、操作モードへ切り換わる。一方、制御装置70は、ハンドアクセル154の操作量が最大でないと判断した場合(ステップS140、No)、切換具171の切り換えに応じたモードに維持する(ステップS150)。
【0141】
(変形例1)
なお、制御装置70は、第3マップM3と異なる制御マップに基づいて、アシスト量を定義してもよい。斯かる場合において、制御装置70は、記憶部610に記憶された制御マップ(第4マップM4)に基づいて、フットペダル153の操作量が予め定められた第4閾値T4未満である場合、アシスト量を零N・mに定義し、当該操作量が第4閾値T4以上である場合、アシスト量を所定の固定値に定義する。固定値は、モータ・ジェネレータ63によるアシスト量の最大値(100N・m)と同値である。
【0142】
図12Bは、操作モードにおけるフットペダル153の操作量とアシスト量との関係(第4マップ)を示す図である。第4マップは、フットペダル153の操作量に対応する第4区間m4及び第5区間m5を含んでいる。
具体的には、第4区間m4は、フットペダル153の操作量が第4閾値T4未満の区間である。本変形例において、第4閾値T4は、フットペダル153の操作量が50%の値である。つまり、第4区間m4は、フットペダル153の操作量が0%以上、50%未満の区間である。また、図12Bに示すように、第4区間m4は、アシスト量が零N・mに定義されている区間である。
【0143】
第5区間m5は、フットペダル153の操作量が第4閾値T4以上の区間である。つまり、第5区間m5は、フットペダル153の操作量が50%以上の区間である。また、図12Bに示すように、第5区間m5は、アシスト量が最大値(100N・m)に定義されている区間である。
従って、図14Aに示すように、フットペダル153の操作量が第4閾値T4未満になった場合、制御装置70は、第4区間m4に基づいて、アシスト量を零N・mに定義する。また、フットペダル153の操作量が第4閾値T4以上になった場合、制御装置70は、第5区間m5に基づいて、アシスト量を固定値に定義する(言い換えると、アシスト量を零N・mから固定値に定義する)。
【0144】
(変形例2)
なお、図12Cに示すように、アシスト量を固定値に定義する場合(言い換えると、アシスト量を零N・mから固定値に定義する場合)と、アシスト量を零N・mに定義する場合(言い換えると、アシスト量を固定値から零N・mに定義する場合)との間に差(ヒステリシス)を設けてもよい。図12Cは、図12Bの第4マップにヒステリシスを設けた変形例の制御マップである。
【0145】
具体的には、第4区間m4は、フットペダル153の操作量が第4閾値T4未満の区間である。本変形例において、第4閾値T4は、フットペダル153の操作量が60%の値である。第4区間m4は、フットペダル153の操作量が0%以上、60%未満の区間である。また、図12Cに示すように、第4区間m4は、アシスト量が零N・mに定義されている区間である。
【0146】
第5区間m5は、フットペダル153の操作量が第5閾値T5以上の区間である。第5閾値T5は、第4閾値T4よりも小さい操作量である。本実施形態において、第4閾値T4は、フットペダル153の操作量が40%の値である。図12Cに示すように、第5区間m5は、フットペダル153の操作量が40%以上の区間である。
従って、図12Cに示すように、フットペダル153の操作量が40%に向かって減少した場合、制御装置70は、第4区間m4に基づいて、アシスト量を零N・mに定義する(言い換えると、アシスト量を固定値から零N・mに定義する)。また、フットペダル153の操作量が60%に向かって増加した場合、制御装置70は、第5区間m5に基づいて、アシスト量を固定値に定義する(言い換えると、アシスト量を零N・mから固定値に定義する)。
【0147】
なお、上述した第4閾値T4及び第5閾値T5の値、言い換えると、アシスト量を固定値に定義する場合と、アシスト量を零N・mに定義する場合との間の差(ヒステリシス)の大きさは、例示に過ぎず、作業機1の特性や性能に合わせて任意に定義することができる。
これにより、図14Bに示すように、作業機1を操縦する運転者は、体が揺すぶられ、フットペダル153を意図した踏み込み量で保持することが困難になった場合であっても、フットペダル153の操作量に基づいて、適切にアシスト量を定義することができる。また、運転者が、フットペダル153の操作量(踏み込み量)を閾値(第4閾値T4)付近で保持した場合であっても、操作量の微小な変化により、アシスト量が零になったり、固定値になったりして、モータ・ジェネレータ63の出力トルクが急激かつ断続的に変化することを抑制することができる。
【0148】
(変形例3)
なお、上述した第2実施形態においては、制御装置70が通常モード、スピードモード、及びパワーモードに加えて、操作モードに切り換えることができる場合を例に説明したが、制御装置70は、操作部材の操作量に応じてアシスト量を定義することができればよく、通常モード、スピードモード、及びパワーモードを有さず、操作モードを有していればよい。例えば、制御装置70は、操作モードだけを有していてもよいし、操作モードとは別のモードとして、アシスト動作及び発電動作を行わないモードと、操作モードとに切り換え可能であってもよい。
【0149】
また、制御装置70は、操作部材の操作量に応じてアシスト量を定義することができればよく、操作モード以外のモードにおいて定義したアシスト量を操作部材の操作量に応じて補正するような構成であってもよい。斯かる場合において、制御装置70は、操作部材の操作量に応じて、アシスト量を補正する補正モードと、補正を行わない禁止モードと、に切り換えることができる。操作モード及び禁止モードは、通常モード、スピードモード、及びパワーモードとは異なるモードであって、制御装置70は、補正モード及び禁止モードに切り換え可能であり、これら2つのモードに切り換えたうえで、通常モード、スピードモード、及びパワーモードのいずれかのモードに切り換え可能である。
【0150】
以下、制御装置70が通常モード、スピードモード、及びパワーモードのいずれかのモードであって、且つ補正モードである場合について説明する。当該制御装置70は、ハンドアクセル154の操作に応じて、目標回転数E2を定義し、実回転数E1と制御マップ(通常マップ、第1マップM1、及び第2マップM2のいずれか)とに基づいて定義したアシスト量を、フットペダル153の操作に応じて補正する。具体的には、制御装置70は、フットペダル153の操作量に応じて、アシスト量を補正する。制御装置70は、フットペダル153の操作量と、記憶部610に記憶された補正マップMHに基づいて補正値を取得し、アシスト量を補正する。
【0151】
図12Dは、操作モードにおけるフットペダル153の操作量とアシスト量に対する補正値との関係(補正マップMH)を示す図である。補正マップMHは、フットペダル153の操作量に対応する第6区間m6、第7区間m7、及び第8区間m8を含んでいる。
第6区間m6は、フットペダル153の操作量が比較的低い区間である。本実施形態において、第6区間m6は、フットペダル153の操作量が0%以上、12.5%未満の区間である。言い換えると、第6区間m6は、フットペダル153の踏み込み初期の区間に相当する。また、図12Dに示すように、第6区間m6は、補正値が0%に定義されている区間である。つまり、フットペダル153の踏み込み初期の区間において、制御装置70は、アシスト量を零N・mに補正する。
【0152】
第7区間m7は、フットペダル153の操作量が比較的中程度の区間である。即ち、第7区間m7は、第6区間m6よりもフットペダル153の操作量が大きい区間である。本実施形態において、第7区間m7は、フットペダル153の操作量が12.5%以上、80%未満の区間である。また、図12Dに示すように、第2区間m2は、フットペダル153の操作量が12.5%から80%へ向かうにつれて、0%から100%へ向かって、補正値が徐々に大きくなるよう定義されている区間である。
【0153】
第8区間m8は、フットペダル153の操作量が比較的大きい区間である。即ち、第8区間m8は、第6区間m6及び第7区間m7よりもフットペダル153の操作量が大きい区間である。本実施形態において、第8区間m8は、フットペダル153の操作量が80%以上の区間である。また、図12Dに示すように、第8区間m8は、補正値が100%に定義されている区間である。
なお、上述した変形例においては、フットペダル153の操作量が大きくなると、補正値が大きくなる場合を例に説明したが、逆にフットペダル153の操作量が大きくなると、補正値を小さくするような補正マップMHであってもよい。
【0154】
(変形例4)
また、上述した実施形態においては、操作部材の操作量に応じてアシスト量を定義する操作モードや、操作部材の操作量に応じてアシスト量を補正する補正モード等について説明したが、制御装置70は、上述した制御マップ(第3マップM3及び第4マップM4)
を用いて、発電量を定義したり、補正マップMHを用いて、発電量を補正したりしてもよい。例えば、制御装置70が、図12Aに示す第3マップM3を用いて発電量を定義する際について説明すると、フットペダル153の操作量が第1区間m1である場合、制御装置70は、発電量を零N・mに維持する。これにより、フットペダル153の操作に対するモータ・ジェネレータ63の動作が過敏になるのを防ぐことができる。
【0155】
また、フットペダル153の操作量が第2区間m2である場合、制御装置70は、フットペダル153の操作量が12.5%から80%へ向かうにつれて、零N・mから最大値(100N・m)へ向かって、アシスト量が徐々に大きくなるように定義する。これによって、運転者は、フットペダル153を踏み込んで操作量を増加させることで、発電量を素早く立ち上がらせることができ、作業機1のバッテリ66の消耗を適宜抑制することができる。
【0156】
上述した作業機1は、操作量を変更可能であって、操作量を制御装置に出力する操作部材を備え、制御装置70は、操作部材の操作量に応じて、アシスト動作の大きさであるアシスト量を定義する操作モードに切り換え可能である。
この構成によれば、運転者は、操作部材を操作することで、簡単にアシスト量を操作することができる。このため、作業機1の状況に応じて、柔軟にアシスト量を変更することができる。
【0157】
また、操作部材は、運転者が足で操作するフットペダル153である。
この構成によれば、運転者にとって操作し慣れているとともに、従来の作業機1に設けられているフットペダル153を用いて、簡単にアシスト量を操作することができる。このため、アシスト量を定義するための操作部材を新たに設けることなく、任意にアシスト量を定義できる作業機1を実現することができる。
【0158】
また、作業機1は、運転者が手で操作するハンドアクセル154を備え、制御装置70が操作モード以外のモードである場合、当該制御装置70は、フットペダル153及び/又はハンドアクセル154の操作に応じて、目標回転数E2を定義し、制御装置70が操作モードである場合、当該制御装置70は、ハンドアクセル154の操作に応じて、目標回転数E2を定義し、フットペダル153の操作に応じて、アシスト量を定義する。
【0159】
この構成によれば、制御装置70が操作モード以外のモードである場合には、従来の作業機1と同様に、フットペダル153及びハンドアクセル154を用いてエンジン60の目標回転数E2を定義することができる。また、制御装置70が操作モードである場合には、従来の作業機1に設けられているフットペダル153を用いて、簡単にアシスト量を操作することができる。このため、作業機1の操作性を低下させることなく、任意にアシスト量を定義できる作業機1を実現することができる。
【0160】
また、制御装置70は、ハンドアクセル154によって定義された目標回転数E2がエンジン60の最大回転数である場合、操作モードに切り換わる。
この構成によれば、ハンドアクセル154によって定義された目標回転数E2がエンジン60の最大回転数となって、大きな出力が必要となったときに、複雑な操作を経ることなく、アシスト動作を開始することができる。
【0161】
また、制御装置70は、フットペダル153の操作量が予め定められた第4閾値T4未満である場合、アシスト量を零に定義し、当該操作量が第4閾値T4以上である場合、アシスト量を所定の固定値に定義する。
この構成によれば、フットペダル153の操作によって、制御装置70は、アシスト量を零又は固定値のいずれかに定義することができるので、運転者にとってアシスト動作の実行が簡便になる。このため、作業機1が悪路を走行している場合等の機体2の振動している際に、当該振動がフットペダル153の操作に及ぼす悪影響を抑制できる。
また、固定値は、モータ・ジェネレータ63によるアシスト量の最大値と同値である。
この構成によれば、運転者は、フットペダル153を踏み込むことで、簡単に且つ確実にアシスト量を最大にすることができる。
【0162】
[第3実施形態]
図15図19を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態にお
いても作業機1のアシスト動作及び発電動作について説明する。本実施形態による作業機1において、第1実施形態による作業機1及び第2実施形態による作業機1と同様の構成については、同じ参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0163】
本実施形態による作業機1は、制御装置70が、第1実施形態及び第2実施形態で説明したスピードモード及び/又はパワーモードを含む、アシスト動作を行うモードである場合に、アシスト動作の大きさであるアシスト量の上限値を変更することができるところに特徴を有する。
【0164】
図15に示すように、本実施形態による作業機1は、第1操作具173を備えている。第1操作具173は、制御装置70に接続されており、操作信号を制御装置70に出力することができる。第1操作具173は、スピードモード及び/又はパワーモードを含む、アシスト動作を行うモードである場合に、アシスト動作の大きさであるアシスト量の上限値を変更(補正)する操作を行う操作具である。言い換えると、第1操作具173は、アシスト量の上限値を指定することができ、制御装置70が当該指定された上限値でアシスト量の上限値を定義する。以下、説明の都合上、第1操作具173を第1上限スイッチ173として説明する。
【0165】
第1上限スイッチ173は、プッシュスイッチ、スライドスイッチ、ロータリスイッチ等、操作量を変更可能であって、複数の有段の切換位置、又は無段階の切換位置を有する構造のスイッチで構成されている。第1上限スイッチ173は、運転席7の周囲で運転者が操作しやすい場所に設けられていればよく、その位置は、どこでもよい。
なお、第1上限スイッチ173は、コンピュータプログラム等によって作成され、制御装置70等が運転席7の周囲に設けられた表示装置(図示せず)等に表示するソフトウェアスイッチ等であってもよい。
【0166】
第1上限スイッチ173の複数の切換位置、言い換えると第1上限スイッチ173が制御装置70に出力する操作信号には、アシスト量の上限値が対応付けられている。具体的には、記憶部70aは、第1上限スイッチ173の操作信号と、アシスト量の上限値と、を関連付けたマップを記憶しており、制御装置70は、記憶部70aから当該マップを参照して、第1上限スイッチ173の操作信号と、当該マップに基づいて上限値を抽出する。
なお、制御装置70は、抽出した上限値、言い換えると第1上限スイッチ173によって指定されたアシスト量の上限値を、運転席7の周囲に設けられた表示装置(図示せず)等に表示してもよい。
【0167】
制御装置70は、記憶部70aから当該マップを参照すると、第1上限スイッチ173の操作信号と、マップに基づいて抽出した上限値を力行トルク定義部70bに設定する。力行トルク定義部70bは、アシスト量の上限値を設定されると、スピードモード及び/又はパワーモードを含む、アシスト動作を行うモードである場合に、制御マップ(通常マップMN、第1マップM1、第2マップM2、及び第3マップM3等)に基づいてアシスト量を定義しつつ、第1上限スイッチ173によって指定されたアシスト量の上限値を超えないように力行トルクを定義する。つまり、力行トルク定義部70bは、アシスト動作を行うモードにおいて、当該モードにおける制御マップが示すアシスト量と、指定されたアシスト量の上限値とを比較して、両者のうち低い方に対応する力行トルクを定義する。このため、力行トルク定義部70bは、第1マップM1において、アシスト量が上限値以上である範囲では、第1マップM1のアシスト量を適用せず、上限値をアシスト量として適用することで、アシスト量を定義する。
【0168】
図16を参照して、第1上限スイッチ173によって指定されたアシスト量の上限値と、力行トルク定義部70bが参照した制御マップとの関係について説明する。図16では、制御マップとして、第1マップM1及び第2マップM2を例に第1上限スイッチ173によって指定されたアシスト量の上限値と、力行トルク定義部70bが参照した制御マップとの関係を示している。また、図16で示す例においては、第1上限スイッチ173の操作によって、制御装置70は、アシスト量の上限値を70[N・m]に定義している。言い換えると、力行トルク定義部70bは、第1マップM1において、アシスト量が70[N・m]以上の範囲でアシスト量の上限値である70[N・m]になるよう、アシスト量を定義する。
【0169】
ここで、図16の第1マップM1に示すように、第1マップM1では、エンジン60の実回転数E1(r/min)が約2420回転から約2120回転となる範囲において、アシスト量が70[N・m]以上である。
このため、力行トルク定義部70bは、エンジン60の実回転数E1(r/min)が約2420回転から約2120回転となる範囲において、第1上限スイッチ173が指定したアシスト量の上限値を適用し、アシスト量を70[N・m]に定義する。なお、力行トルク定義部70bは、上記約2420回転から約2120回転となる範囲以外の実回転数E1(r/min)に対しては、当該参照した第1マップM1に基づいてアシスト量を定義する。
【0170】
一方、図16の第2マップM2に示すように、第2マップM2では、エンジン60の実回転数E1(r/min)が約2220回転以下となる範囲において、アシスト量が70[N・m]以上である。
このため、力行トルク定義部70bは、エンジン60の実回転数E1(r/min)が約2220回転以下となる範囲において、アシスト量の上限値を適用し、アシスト量を70[N・m]に定義する。なお、力行トルク定義部70bは、上記約2220回転以下となる範囲以外の実回転数E1(r/min)に対しては、当該参照した第2マップM2に基づいてアシスト量を定義する。
【0171】
このように、力行トルク定義部70bがアシスト量を定義すると、動作制御部70dは、当該定義されたアシスト量を取得する。続いて、動作制御部70dは、取得したアシスト量を示す信号、即ちアシスト指令を電力制御部67へ出力する。電力制御部67のインバータ制御部67Bは、動作制御部70dから出力された信号を取得すると、モータ・ジェネレータ63が、当該取得した信号によって示されるアシスト量を発生するようにインバータ67Aを制御する。
【0172】
以下、図17を参照し、アシスト量の上限値の定義についてのフローを説明する。
まず、制御装置70は、第1上限スイッチ173が操作されたか否かを確認する(ステップS210)。具体的には、運転者が第1上限スイッチ173を操作すると、第1上限スイッチ173から制御装置70に操作信号が出力される。このため、制御装置70は、第1上限スイッチ173から出力された操作信号に基づいて、第1上限スイッチ173が操作されたか否かを確認する。
【0173】
制御装置70は、第1上限スイッチ173が操作されたことを確認すると(ステップS210、Yes)、第1上限スイッチ173の操作に対応するアシスト量の上限値を抽出する(ステップS220)。具体的には、制御装置70は、記憶部70aからマップを参照し、第1上限スイッチ173の操作信号と、当該マップに基づいて、第1上限スイッチ173の操作に対応するアシスト量の上限値を抽出する。これによって、第1上限スイッチ173によってアシスト量の上限値が指定される。
【0174】
制御装置70は、アシスト量の上限値を抽出すると(ステップS220)、当該抽出した上限値を力行トルク定義部70bに設定する(ステップS230)。つまり、制御装置70がアシスト量の上限値を力行トルク定義部70bへ出力して、力行トルク定義部70bは、当該出力されたアシスト量の上限値を取得する。
次に、力行トルク定義部70bは、制御装置70のモードに応じて、制御マップを参照して、参照した制御マップが示すアシスト量を抽出する(ステップS240)。力行トルク定義部70bは、参照した制御マップが示すアシスト量、即ち制御装置70のモードに応じたアシスト量を抽出すると(ステップS240)、当該アシスト量がアシスト量の上限値以上であるか否かを判断する(ステップS250)。
【0175】
力行トルク定義部70bは、参照した制御マップが示すアシスト量がアシスト量の上限値以上であると判断した場合(ステップS250,Yes)、アシスト量の上限値をアシスト量として定義する(ステップS260)。一方、力行トルク定義部70bは、参照した制御マップが示すアシスト量がアシスト量の上限値以上でないと判断した場合(ステッ
プS250,No)、即ち参照した制御マップが示すアシスト量が上限値未満であると判断した場合、参照した制御マップが示すアシスト量をアシスト量として定義する(ステップS270)。つまり、力行トルク定義部70bは、ステップS240で制御マップから抽出したアシスト量(参照した制御マップが示すアシスト量)と、アシスト量の上限値と、を比較し、両者のうち低い方に対応するアシスト量を定義する。
【0176】
制御装置70がステップS260、又はステップS270でアシスト量を定義すると、動作制御部70dは、当該定義されたアシスト量を取得して、当該取得したアシスト量を示す信号(アシスト指令)を電力制御部67へ出力する(ステップS280)。
動作制御部70dが電力制御部67にアシスト量を示す信号を出力すると、当該電力制御部67のインバータ制御部67Bは、出力された信号に従ってインバータ67Aを制御する(ステップS290)。
上述した第3実施形態のように、アシスト量に対して上限値を定義すれば、モータ・ジェネレータ63によって消費される電力量を抑えることができるので、バッテリ66の蓄電残量の消費を抑制することができる。
【0177】
本実施形態による作業機1は、制御装置70に接続された第1操作具(第1上限定義スイッチ)173を備え、制御装置70は、第1操作具173の操作に基づいて、第1モード及び/又は第2モードを含む、前記アシスト動作を行うモードにおけるアシスト動作の大きさであるアシスト量の上限値を変更する。
この構成によれば、作業機1の運転者が、第1操作具173を用いて、任意にアシスト量の上限値を変更することができる。これによって、作業機1が行う走行及び作業の内容に応じて、アシスト量を制限することができ、モータ・ジェネレータ63による消費電力を低減することができる。
【0178】
上述の作業機1は、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電された電力を蓄電するバッテリ66と、モータ・ジェネレータ63とバッテリ66を電気的に接続する経路に設けられ、バッテリ66からモータ・ジェネレータ63へ供給する電力を制御するインバータ67Aと、を備え、制御装置70は、第1上限スイッチ173の操作に基づいて、インバータ67Aを制御して、バッテリ66からモータ・ジェネレータ63に供給される電力の上限値を変更する。
この構成によっても、作業機1の運転者が、第1上限スイッチ173を用いて、任意にアシスト量の上限値を変更することができる。これによって、作業機1が行う走行及び作業の内容に応じて、アシスト量の上限を定義することができ、またバッテリ66の消耗を抑制することもできる。
【0179】
(変形例1)
なお、上述した第3実施形態では、第1上限スイッチ173によってアシスト量の上限値を定義する例について記載したが、第1上限スイッチ173によって発電量の上限値を定義するような構成であってもよい。上記の説明において、「力行トルク定義部70b」を「回生トルク定義部70c」に読み替え、「アシスト量の上限値」を「発電量の上限値」に読み替えれば、同様の構成で第1上限スイッチ173を用いて「発電量の上限値」を定義することができる。
【0180】
(変形例2)
また、上述した第3実施形態では、油圧駆動装置64は、作業機1が作業及び走行を行うための動力を出力する装置であって、モータ・ジェネレータ63がエンジン60の駆動をアシストするアシスト動作を行うことができるため、作業機1において発生されたエネルギーを油圧駆動装置64に伝達する経路は、パラレルハイブリッド方式であった。しかし、上述した第3実施形態の構成を、作業機1において発生されたエネルギーを油圧駆動装置64に伝達する経路が所謂シリーズハイブリッド方式である場合に適用してもよい。
【0181】
図18は、本変形例によるシリーズハイブリッド方式の動力伝達システムである駆動制御装置200を示すブロック図である。図18に示すように、本変形例による駆動制御装置200は、エンジン60、モータ・ジェネレータ63、バッテリ66、走行モータ210L、走行モータ210R、制御装置240、インバータ220A、インバータ220L、インバータ220R、コンバータ230、並びにサブポンプP1及びメインポンプP2を含む図4に示す作業系の油圧システムを有している。
【0182】
ここで、作業機1(駆動制御装置200)は、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電された電力で駆動する電気モータを備えている。本変形例において、電気モータは、走行モータ210L及び走行モータ210Rであり、作業機1の走行装置4L及び走行装置4Rを作動させる。走行モータ210L及び走行モータ210Rは、図3に示す走行系の油圧システムの第1走行モータ機構31L、第2走行モータ機構31R、及び走行駆動機構34の代わりに用いられるものである。走行モータ210L及び走行モータ210Rは、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電された電力で駆動される。つまり、本変形例において、作業機1において発生されたエネルギーを油圧駆動装置64に伝達する経路のうち、走行モータ210L及び走行モータ210Rにエネルギーを供給する経路がシリーズハイブリッド方式である。言い換えると、作業機1が走行する場合のエネルギーは、シリーズハイブリッド方式の経路によって供給される。
【0183】
第3実施形態では、作業機1において発生されたエネルギーを油圧駆動装置64に伝達する経路のうち、サブポンプP1及びメインポンプP2にエネルギーを供給する経路がパラレルハイブリッド方式である。即ちサブポンプP1及びメインポンプP2は、エンジン60の動力で駆動されたり、モータ・ジェネレータ63がアシスト動作を行う場合は、エンジン60及びモータ・ジェネレータ63の両方の動力で油圧駆動装置64が駆動されたりする。言い換えると、作業機1が作業を行う場合のエネルギーは、パラレルハイブリッド方式の経路によって供給される。
【0184】
つまり、作業機1において発生されたエネルギーについて、エンジン60が発生させた動力に着目すると、エンジン60が発生させた動力は、シリーズハイブリッド方式の経路を通り、走行装置4L,4Rを駆動させるためのエネルギーと、パイロットハイブリッド方式の経路を通り、作業装置3を駆動させるためのエネルギーと、に分けられる。
なお、上述した変形例において、作業機1が走行する場合のエネルギーは、シリーズハイブリッド方式の経路によって供給され、作業機1が作業を行う場合のエネルギーは、パラレルハイブリッド方式の経路によって供給される。しかし、作業機1において発生されたエネルギーは、少なくともシリーズハイブリッド方式の経路によって、油圧駆動装置64に伝達できればよく、その組み合わせは上述した組み合わせに限定されない。
【0185】
インバータ220Aは、モータ・ジェネレータ63とバッテリ66を電気的に接続する経路に設けられ、モータ・ジェネレータ63の動作を制御するものである。つまり、モータ・ジェネレータ63は、インバータ220Aの制御によって、モータとして動作したり、ジェネレータとして動作したりする。
インバータ220Rは、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電され、且つ電気モータ(走行モータ210R)へ供給される電力を制御する。具体的には、インバータ220Rは、走行モータ210Rとモータ・ジェネレータ63を電気的に接続する経路に設けられ、モータ・ジェネレータ63から走行モータ210Rに供給される電力を制御するものである。
【0186】
インバータ220Lは、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電され、且つ電気モータ(走行モータ210L)へ供給される電力を制御する。具体的には、インバータ220Lは、走行モータ210Lとモータ・ジェネレータ63を電気的に接続する経路に設けられ、モータ・ジェネレータ63から走行モータ210Lに供給される電力を制御するものである。
【0187】
コンバータ230は、バッテリ66とインバータ220A,220L,220Rとを電気的に接続する経路に設けられ、モータ・ジェネレータ63により生成された電気エネルギーをバッテリ66に充電可能な形に変換するものである。これらインバータ220A,220L,220Rとコンバータ230とは、互いに電気的に接続されている。
制御装置240は、インバータ220A,220L,220R、及びコンバータ230と電気的に接続されており、これらインバータ及びコンバータを制御するコントローラである。制御装置240は、CPU、ROM、RAMを備えるマイクロコンピュータで構成
されている。
【0188】
制御装置240がインバータ220Aを制御して、モータ・ジェネレータ63を発電動作によってジェネレータとして動作させると、モータ・ジェネレータ63は電力を発生する。発生した電力は、インバータ220L,220Rを通じて走行モータ210L,210Rに供給される。また、具体的には、制御装置240は、予め記憶しているマップと、走行操作部材54から出力された操作信号と、に基づいて、インバータ220L,220Rを制御して、走行モータ210L,210Rを駆動する。
【0189】
本実施形態において、制御装置240は、第2操作具250の操作に基づいて、電気モータ(走行モータ210L及び走行モータ210R)へ供給される電力の上限値を変更することができる。制御装置240は、第2操作具250の操作に基づいて、インバータ220R.220Lを制御して、電気モータ(走行モータ210L及び走行モータ210R)へ供給される電力の上限値を変更する。なお、以下説明の都合上、電気モータ(走行モータ210L及び走行モータ210R)へ供給される電力の上限値のことを電力上限値ということがある。
【0190】
図18に示すように、本実施形態による作業機1は、第2操作具250を備えている。第2操作具250は、制御装置240に接続されており、操作信号を制御装置240に出力することができる。第2操作具250は、電気モータ(走行モータ210L及び走行モータ210R)へ供給される電力の上限値を変更する操作を行う操作具である。言い換えると、第2操作具250は、走行モータ210L及び走行モータ210Rに供給する電力の上限値を指定することができ、制御装置240が当該指定された電力上限値で電力の上限値を定義する。以下、説明の都合上、第2操作具250を第2上限スイッチ250として説明する。
【0191】
第2上限スイッチ250は、プッシュスイッチ、スライドスイッチ、ロータリスイッチ等、操作量を変更可能であって、複数の有段の切換位置、又は無段階の切換位置を有する構造のスイッチで構成されている。第2上限スイッチ250は、運転席7の周囲で運転者が操作しやすい場所に設けられていればよく、その位置は、どこでもよい。
なお、第2上限スイッチ250は、コンピュータプログラム等によって作成され、制御装置240等が運転席7の周囲に設けられた表示装置(図示せず)等に表示するソフトウェアスイッチ等であってもよい。
【0192】
第2上限スイッチ250の複数の切換位置、言い換えると第2上限スイッチ250が制御装置240に出力する操作信号には、電力上限値が対応付けられている。具体的には、制御装置240は、第2上限スイッチ250の操作信号と、電力上限値と、を関連付けたマップを記憶しており、当該マップを参照して、第2上限スイッチ250の操作信号と、当該マップに基づいて上限値を抽出する。
【0193】
つまり、制御装置240は、例えば、走行操作部材54から出力された操作信号に対応する電力と、指定された電力上限値とを比較して、両者のうち低い方に対応する電力を走行モータ210L及び走行モータ210Rに供給するように、インバータ220L,220Rを制御する。このため、制御装置240は、走行操作部材54の操作量が所定未満であって、当該操作信号に対応する電力の大きさが電力上限値未満である範囲では、走行操作部材54の操作に対応する電力を適用する。一方、走行操作部材54の操作量が所定以上であって、当該操作信号に対応する電力の大きさが電力上限値以上である範囲では、走行操作部材54の操作に対応する電力を適用せず、電力上限値に対応する電力を適用する。
【0194】
なお、制御装置240は、抽出した電力上限値、言い換えると第2上限スイッチ250によって指定された電力上限値を、運転席7の周囲に設けられた表示装置(図示せず)等に表示してもよい。
以下、図19を参照し、第3実施形態の第2の変形例による電力上限値の定義についてのフローを説明する。
まず、制御装置240は、第2上限スイッチ250が操作されたか否かを確認する(ステップS310)。具体的には、運転者が第2上限スイッチ250を操作すると、第2上
限スイッチ250から制御装置240に操作信号が出力される。このため、制御装置240は、第2上限スイッチ250から出力された操作信号に基づいて、第2上限スイッチ250が操作されたか否かを確認する。
【0195】
制御装置240は、第2上限スイッチ250が操作されたことを確認すると(ステップS310、Yes)、第2上限スイッチ250の操作に対応する電力上限値を抽出する(ステップS320)。具体的には、制御装置240は、マップを参照し、第2上限スイッチ250の操作信号と、当該マップに基づいて、第2上限スイッチ250の操作に対応する電力上限値を抽出する。これによって、第2上限スイッチ250によって電力上限値が指定される。
【0196】
制御装置240は、電力上限値を抽出すると(ステップS320)、走行操作部材54から出力された操作信号を取得し、予め記憶しているマップと、走行操作部材54から出力された操作信号と、に基づいて、当該操作信号に対応する電力を取得する(ステップS330)。
制御装置240は、操作信号に対応する電力を取得すると(ステップS330)、走行操作部材54から出力された操作信号に対応する電力の大きさが電力上限値以上であるかを判断する(S340)。
【0197】
制御装置240は、操作信号に対応する電力の大きさが電力上限値以上であると判断した場合(ステップS340,Yes)、走行操作部材54の操作に対応する電力を適用せず、電力上限値に対応する電力を適用する(ステップS350)。一方、制御装置240は、操作信号に対応する電力の大きさが電力上限値以上でない場合(ステップS340,No)、即ち操作信号に対応する電力の大きさが電力上限値未満であると判断した場合、走行操作部材54の操作に対応する電力を適用する(ステップS360)。
【0198】
制御装置240がステップS350、又はステップS360で走行モータ210L及び走行モータ210Rに供給する電力を定義すると、当該制御装置240は、定義した電力の大きさに応じて、インバータ220L,220Rを制御する(ステップS370)。これにより、モータ・ジェネレータ63が発生させた電力は、インバータ220L,220Rを通じて走行モータ210L,210Rに供給される。
【0199】
以上の構成によれば、エンジン60が発生させた動力に着目した場合、制御装置240が当該指定された電力上限値で、走行モータ210L及び走行モータ210Rに供給電力の上限値を定義することで(言い換えると、シリーズハイブリッド方式の経路を通り、走行装置4L,4Rを駆動させるためのエネルギーの上限値を定義することで)、エンジン60が発生させた動力のうち、走行装置4L,4Rを駆動させるためのエネルギーと、作業装置3を駆動させるためのエネルギーと、の比率を変更することができる。このため、エンジン60が発生させた動力(エネルギー)のうち、モータ・ジェネレータ63の発電に消費される出力を抑えることができるので、より多くのエネルギーを、作業系油圧システムのポンプの駆動に用いることができる。
【0200】
また、本変形例による作業機1は、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電された電力で駆動する電気モータ(走行モータ210L,210R)と、制御装置240に接続された第2操作具(第2上限定義スイッチ)250と、を備え、制御装置240は、第2上限スイッチ250の操作に基づいて、走行モータ210L,210Rへ供給される電力の上限値を変更する。
【0201】
この構成によれば、作業機1の運転者が第2上限スイッチ250を操作することで、モータ・ジェネレータ63の発電量の上限値を任意に変更することができる。これによって、エンジン60が発生させた動力のうち、走行モータ210L,210Rを駆動させるためのエネルギーの割合を変更することができる。このため、エンジン60が発生させた動力をモータ・ジェネレータ63以外の装置に供給する場合であっても、当該装置が消費するエネルギーを確保することができる。
【0202】
また、作業機1は、モータ・ジェネレータ63の発電動作によって発電され、且つ電気モータ(走行モータ210L,210R)へ供給される電力を制御するインバータ220A,220L,220Rを備え、制御装置240は、第2上限スイッチ250の操作に基
づいて、インバータ220A,220L,220Rを制御して、走行モータ210L,210Rへ供給される電力の上限値を変更する。
【0203】
この構成によれば、制御装置240は、インバータ220A,220L,220Rを制御することで、簡単に走行モータ210L,210Rを駆動させるためのエネルギーの割合を変更することができる。
以上本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0204】
1 作業機
2 機体
60 エンジン
63 モータ・ジェネレータ
64 油圧駆動装置
66 バッテリ
67 電力制御部(制御装置)
67A インバータ
70 制御装置
153 フットペダル(回転数操作具)
154 ハンドアクセル(回転数操作具)
171 切換具(モードスイッチ)
173 第1操作具(第1上限設定スイッチ)
210L,220R 走行モータ(電気モータ)
220A インバータ
220L,230R インバータ
240 制御装置
250 第2操作具(第2上限設定スイッチ)
690 回転検出装置(回転センサ)
A1 第1範囲
A2 第2範囲
E1 実回転数
E2 目標回転数
L1 第1下限値
L2 第2下限値
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
R4 第4領域
R5 第5領域
T1 第1閾値
T2 第2閾値
T3 第3閾値
T4 第4閾値
U1 第1上限値
U2 第2上限値
図1
図2
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