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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/40 20190101AFI20250310BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20250310BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20250310BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20250310BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20250310BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20250310BHJP
   H01M 8/04291 20160101ALI20250310BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20250310BHJP
【FI】
B60L58/40
H01M8/04858
H01M8/04746
H01M8/04537
H01M8/04 J
B60L50/75
H01M8/04291
H01M8/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021199593
(22)【出願日】2021-12-08
(65)【公開番号】P2023085096
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輝
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-032136(JP,A)
【文献】特開2009-183120(JP,A)
【文献】特開2016-136466(JP,A)
【文献】特開2006-286407(JP,A)
【文献】特開2005-276628(JP,A)
【文献】特開2011-090886(JP,A)
【文献】特開2018-063803(JP,A)
【文献】特開2004-265862(JP,A)
【文献】特開2004-152532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0111422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池から電力が供給されることで充電し、負荷に電力を供給することで放電する蓄電装置と、
前記燃料電池に酸化剤ガスを供給するエアコンプレッサと、
前記蓄電装置の充電量に応じて目標発電電力を変化させ、前記燃料電池の発電電力が前記目標発電電力に追従するように、前記エアコンプレッサの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
通常条件下において、前記蓄電装置の充電量が第1充電量以下になると、前記目標発電電力をゼロからゼロより大きい第1目標発電電力に変化させ
前記通常条件と異なる所定条件下において、前記蓄電装置の充電量が前記第1充電量より小さい第2充電量以下になると、前記目標発電電力をゼロから前記第1目標発電電力または前記第1目標発電電力より大きい第2目標発電電力に変化させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記通常条件下または前記所定条件下において、前記蓄電装置の充電量に応じて前記目標発電電力を段階的に変化させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
記制御部は、
前記通常条件下において、前記第1充電量から前記第1充電量より小さい充電量までの範囲内で前記蓄電装置の充電量が低下するほど前記燃料電池の目標発電電力増加させるとともに前記蓄電装置の充電量が上昇するほど前記燃料電池の目標発電電力減少させ
前記所定条件下において、前記蓄電装置の充電量が前記第充電量に低下するまで前記燃料電池の目標発電電力ゼロに維持、その後、前記蓄電装置の充電量が前記第2充電量より大きい第4充電量に上昇するまで前記燃料電池の目標発電電力を前記第2目標発電電力に維持する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記所定条件下において、前記蓄電装置の充電量が前記第2充電量以下になると、前記燃料電池の目標発電電力をゼロから前記第2目標発電電力より小さい第3目標発電電力に変化させた後、前記第2目標発電電力より小さく前記第3目標発電電力より大きい第4目標発電電力に変化させ、その後、前記第2目標発電電力に変化させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
燃料電池と、
前記燃料電池から電力が供給されることで充電し、負荷に電力を供給することで放電する蓄電装置と、
前記燃料電池に酸化剤ガスを供給するエアコンプレッサと、
前記蓄電装置の充電量に応じて目標発電電力を変化させ、前記燃料電池の発電電力が前記目標発電電力に追従するように、前記エアコンプレッサの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
通常条件下において、前記蓄電装置の充電量が第1充電量以下になると、前記目標発電電力をゼロからゼロより大きい第1目標発電電力に変化させ、前記蓄電装置の充電量が前記第1充電量より小さい第2充電量以下になると、前記目標発電電力を前記第1目標発電電力から前記第1目標発電電力より大きい第2目標発電電力に変化させ、前記蓄電装置の充電量が前記第2充電量より小さい第3充電量以下になると、前記目標発電電力を前記第2目標発電電力から前記第2目標発電電力より大きい第3目標発電電力に変化させ、
前記通常条件と異なる所定条件下において、前記蓄電装置の充電量が前記第3充電量以下になると、前記目標発電電力をゼロから前記第3目標発電電力に変化させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、燃料電池に供給される酸化剤ガスの流量(酸化剤ガスの単位時間あたりの体積)により燃料電池内に滞留する水の量を算出し、その水の量が閾値以上になると、酸化剤ガスを用いてエアブローを実行することで燃料電池内に滞留する水を燃料電池の外に排出させるものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、酸化剤ガスによるエアブローを実行するにあたり、酸化剤ガスの流速が所望な流速に満たない場合について、改善が必要だった。酸化剤ガスの流速が所望な流速に満たなくなると、燃料電池内に滞留する水の排出処理を正常に機能させることが困難になるおそれがある。特に、燃料電池を構成する燃料電池セルが比較的少ない場合、酸化剤ガスの流速が所望な流速に満たなくなりやすい。
【0004】
一方で、酸化剤ガスの流速が所望な流速を満たすように供給量をただ増大させるだけでは、燃料電池の電圧が上昇し、燃料電池が劣化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-145320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池システムにおいて、燃料電池内の水の滞留を抑制しつつ、燃料電池の電位変動による劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、燃料電池と、前記燃料電池に酸化剤ガスを供給するエアコンプレッサと、前記エアコンプレッサの動作を制御する制御部とを備える。
【0008】
前記制御部は、通常条件下において、負荷から要求される電力が当該燃料電池システムから前記負荷に供給されるように、前記エアコンプレッサの動作を制御し、前記通常条件と異なる所定条件下において、前記負荷から要求される電力が当該燃料電池システムから前記負荷に供給されるように、かつ、前記燃料電池に供給される酸化剤ガスの流量が所定流量以上になるように、前記エアコンプレッサの動作を制御する。
【0009】
これにより、例えば、燃料電池内に水が滞留し易い場合を所定条件に設定するとともに、燃料電池内に滞留する水を燃料電池の外に排出することが可能な酸化剤ガスの流量を所定流量に設定することで、燃料電池内に水が滞留し易い場合において、酸化剤ガスにより燃料電池内に滞留する水を燃料電池の外に排出することができるため、燃料電池内に滞留する水の量を低減することができる。また、負荷から要求される電力が当該燃料電池システムから負荷に供給されるようになっていることで、燃料電池による発電電力の消費先が確保される。これにより、燃料電池の電位上昇が抑えられ、燃料電池の劣化が抑制できる。
【0010】
また、前記制御部は、前記通常条件下または前記所定条件下において、前記燃料電池で発電される電力が段階的に変化するように、前記エアコンプレッサの動作を制御するように構成してもよい。
【0011】
これにより、エアコンプレッサから出力される酸化剤ガスの流量を段階的に変化させることができるため、エアコンプレッサで発生する騒音が急峻に変化することを抑制し騒音に関するユーザの違和感を緩和させることができる。また、燃料電池の発電電力が変化する頻度を低減することができるため、燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0012】
また、上記燃料電池システムは、前記燃料電池から電力が供給されることで充電し、前記負荷に電力を供給することで放電する蓄電装置を備え、前記制御部は、前記通常条件下において、第1充電量から前記第1充電量より大きい第2充電量までの範囲内で前記蓄電装置の充電量が低下するほど前記燃料電池の目標発電電力が増加するとともに前記蓄電装置の充電量が上昇するほど前記目標発電電力が減少するように、前記エアコンプレッサの動作を制御し、前記所定条件下において、前記蓄電装置の充電量が前記第1充電量に低下するまで前記燃料電池の目標発電電力がゼロに維持され、その後、前記蓄電装置の充電量が前記第2充電量に上昇するまで前記燃料電池の目標発電電力が増加されるように、前記エアコンプレッサの動作を制御するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池システムにおいて、燃料電池内の水の滞留を抑制しつつ、燃料電池の電位変動による劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
図2】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】制御部の動作の他の例を示すフローチャートである。
図4】通常条件下における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図5】低負荷運転条件下における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図6】通常発電制御時に燃料電池システムの電力供給先を車載負荷とする場合における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図7】通常発電制御時に燃料電池システムの電力供給先を外部負荷とする場合における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図8】低負荷運転対応発電制御時に燃料電池システムの電力供給先を外部負荷とする場合における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図9】変形例1における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図10】変形例2における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
図11】変形例3における燃料電池の発電制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0016】
図1は、実施形態の燃料電池システムFCSの一例を示す図である。
【0017】
図1に示す燃料電池システムFCSは、車両Veに搭載され、車両Veに搭載される車載負荷Linや車両Veの外部に設けられる外部負荷Loutなどに電力を供給する。なお、車両Veは、フォークリフトなどの産業車両や自動車などとする。また、車載負荷Linは、走行用モータを駆動するインバータや荷役モータを駆動するインバータなどとし、車両Veが上り坂を走行しているときや比較的重い荷物に対して荷役作業しているときなど燃料電池システムFCSから車載負荷Linに比較的大きい電力が供給されるものとする。また、外部負荷Loutは、テレビや扇風機などの家電機器とし、燃料電池システムFCSから外部負荷Loutに比較的小さい電力が供給されるものとする。
【0018】
また、燃料電池システムFCSは、燃料電池FCと、水素タンクHTと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、電流センサSifと、電圧センサSvfと、電流センサSibと、電圧センサSvbと、切替スイッチSW1、SW2と、インバータINVと、制御部CNTとを備える。
【0019】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0020】
水素タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。水素タンクHTに貯蔵された燃料ガスはインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0021】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの流量を調整することで燃料電池FC内の燃料ガスの圧力を所定圧力に保つ。
【0022】
エアコンプレッサACPは、燃料電池システムFCSの周囲に存在する酸化剤ガスを圧縮して燃料電池FCに供給する。
【0023】
エア調圧弁ARVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を調整することで燃料電池FC内の酸化剤ガスの圧力を所定圧力に保つ。
【0024】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCの後段に接続され、燃料電池FCから出力される電圧Vfを所定の電圧に変換する。DCDCコンバータCNVから出力される電力は、車載負荷Lin及び外部負荷Loutなどの負荷、インジェクタINJ、エアコンプレッサACP、及びエア調圧弁ARVなどの補機、並びに蓄電装置Bに供給される。例えば、DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCの電圧を48[V]に変換する。DCDCコンバータCNVから出力される電力の一部は、48[V]系の補機であるエアコンプレッサACPなどに供給される。また、DCDCコンバータCNVにより48[V]に変換された電圧は、他のDCDCコンバータ(不図示)により12[V]の電圧に変換される。他のDCDCコンバータから出力される電力は、12[V]系の補機であるインジェクタINJやエア調圧弁ARVに供給される。
【0025】
蓄電装置Bは、キャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと切替スイッチSW1、SW2との間に接続されている。DCDCコンバータCNVから出力される電力と、48[V]系の補機及び12[V]系の補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、車載負荷Linまたは外部負荷Loutから要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうち、要求電力分の電力が車載負荷Linまたは外部負荷Loutに供給されるとともに、残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電量が増加する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、48[V]系の補機及び12[V]系の補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、車載負荷Linまたは外部負荷Loutから要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が車載負荷Linまたは外部負荷Loutに供給されるとともに、不足分の電力が蓄電装置Bから車載負荷Linまたは外部負荷Loutに供給される。蓄電装置Bから車載負荷Linまたは外部負荷Loutに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電量が減少する。なお、充電量とは、蓄電装置Bの充電率[%](蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合)、または、蓄電装置Bに電流が流れていないときの蓄電装置Bの開回路電圧[V]、または、蓄電装置Bに電流が流れているときの蓄電装置Bの閉回路電圧[V]、または、蓄電装置Bに流れる電流の積算値[Ah]などとする。
【0026】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池FCからDCDCコンバータCNVに流れる電流Ifを検出し、その検出した電流Ifを制御部CNTに送る。
【0027】
電圧センサSvfは、分圧抵抗などにより構成され、燃料電池FCから出力される電圧Vfを検出し、その検出した電圧Vfを制御部CNTに送る。制御部CNTでは、電流Ifと電圧Vfとの乗算結果を燃料電池FCの発電電力(出力電力)として求める。
【0028】
電流センサSibは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに流れる電流Ibまたは蓄電装置Bから車載負荷Linあるいは外部負荷Loutに流れる電流Ibを検出し、その検出した電流Ibを制御部CNTに送る。
【0029】
電圧センサSvbは、分圧抵抗などにより構成され、蓄電装置Bの電圧Vbを検出し、その検出した電圧Vbを制御部CNTに送る。
【0030】
切替スイッチSW1、SW2は、電磁式リレーなどにより構成され、制御部CNTによる動作制御により、燃料電池システムFCSの出力先として車載負荷Lin及び外部負荷Loutのどちらか一方に切り替える。なお、本実施形態以外の構成として、制御部CNTによる動作制御により、燃料電池システムFCSの出力先として車載負荷Lin及び外部負荷Loutの両方か、車載負荷Linのみかを切り替えるようにしてもよい。
【0031】
インバータINVは、DCDCコンバータCNVまたは蓄電装置Bから出力される直流の電力を交流の電力に変換して外部負荷Loutに供給する。
【0032】
制御部CNTは、マイクロコンピュータなどにより構成され、エアコンプレッサACP、エア調圧弁ARV、及びインジェクタINJなどの補機の動作を制御することで燃料電池FCの発電電力を制御する。
【0033】
また、制御部CNTは、通常発電制御時または低負荷運転対応発電制御時、蓄電装置Bの充電量に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させる。
【0034】
また、制御部CNTは、通常発電制御時または低負荷運転対応発電制御時、燃料電池FCの発電電力が目標発電電力Ptに追従するように、48[V]系の補機や12[V]系の補機の動作を制御することで、燃料電池FCの発電電力を制御する。例えば、制御部CNTは、PI(Proportional-Integral)制御により、燃料電池FCの発電電力と目標発電電力Ptとの差がゼロになるように、48[V]系の補機や12[V]系の補機の動作を制御する。
【0035】
図2は、制御部CNTの動作の一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、ステップS1において、制御部CNTは、燃料電池システムFCS側または車両Ve側に設けられる不図示の外部給電ボタンがユーザにより押下されたか否かを判断する。
【0037】
次に、制御部CNTは、外部給電ボタンがユーザにより押下されていないと判断すると(ステップS1:No)、通常条件下であると判断する(ステップS2)。通常条件とは、燃料電池システムFCSを後述する通常発電制御で稼働させる条件で、燃料電池システムFCSから車載負荷Linに比較的大きい電力が供給される。なお、通常条件下では、車載負荷Linから要求される電力が燃料電池FCの目標発電電力より大きくなることで蓄電装置Bの出力電力が比較的大きくなり蓄電装置Bの充電量が十分に低下する場合がある。また、通常条件下では、後述する通常発電制御により、蓄電装置Bの充電量の低下に伴って燃料電池FCの目標発電電力Ptや燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量が大きくなるため、酸化剤ガスの流量を意図的に増加させる必要がないものとする。
【0038】
次に、制御部CNTは、通常条件下であると判断すると、燃料電池システムFCSの電力供給先が車載負荷Linになるように切替スイッチSW1、SW2の動作を制御し(ステップS3)、通常発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する(ステップS4)。
【0039】
一方、制御部CNTは、外部給電ボタンがユーザにより押下されたと判断すると(ステップS1:Yes)、低負荷運転条件(所定条件)下であると判断する(ステップS5)。低負荷運転条件とは、燃料電池システムFCSを後述する低負荷運転対応発電制御で稼働させる条件であり、通常発電制御と比べて、燃料電池システムFCSから外部負荷Loutに比較的小さい電力が供給される。なお、低負荷運転条件下では、外部負荷Loutから要求される電力が比較的小さいため、蓄電装置Bの出力電力が比較的小さく蓄電装置Bの充電量が低下し難い。そのため、低負荷運転条件下において、後述する通常発電制御を行うと、燃料電池FCの出力電力が上昇し難くなり、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量が増加し難くなるため、燃料電池FC内に水が滞留し易い。そこで、低負荷運転条件下では、燃料電池FC内に滞留する水を酸化剤ガスにより燃料電池FCの外に排出させるために、後述する低負荷運転対応発電制御により、燃料電池FCの目標発電電力Ptを強制的に増加させて燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を意図的に増加させる。また、低負荷運転条件下では、蓄電装置Bが過充電状態になることを抑制するために、燃料電池FCの目標発電電力Ptを増加させる前に蓄電装置Bの充電量を低下させておく。
【0040】
次に、制御部CNTは、低負荷運転条件下であると判断すると、燃料電池システムFCSの電力供給先が外部負荷Loutになるように切替スイッチSW1、SW2の動作を制御し(ステップS6)、低負荷運転対応発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御した後(ステップS7)、再度、外部給電ボタンがユーザにより押下されたか否かを判断する(ステップS8)。
【0041】
そして、制御部CNTは、外部給電ボタンがユーザにより押下されていないと判断すると(ステップS8:No)、ステップS7における低負荷運転対応発電制御を継続し、外部給電ボタンがユーザにより押下されたと判断すると(ステップS8:Yes)、低負荷運転条件から通常条件に切り替わったと判断し(ステップS2)、ステップS3以降の処理を実行する。
【0042】
すなわち、外部給電ボタンがユーザにより押下されていない間、通常条件下になり、外部給電ボタンがユーザにより押下されてから再度押下されるまでの間、低負荷運転条件下になる。そして、制御部CNTは、通常条件下において、通常発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御し、低負荷運転条件下において、低負荷運転対応発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する。このように、外部給電ボタンが押下されたか否かを判断することで、通常発電制御と低負荷運転対応発電制御の切り替えを容易に行うことができる。
【0043】
図3は、制御部CNTの動作の他の例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートにおいて、図2に示すステップと同じステップには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図3に示すフローチャートにおいて、図2に示すフローチャートと異なる点は、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力より大きい場合(ステップS1´:No)、ステップS2において通常条件下であると判断し、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力以下である状態が一定時間以上継続している場合(ステップS1´:Yes)、ステップS5において低負荷運転条件下であると判断する点である。なお、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力以下である状態が継続しているとき(ステップS8´:No)、低負荷運転対応発電制御を継続し、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力より大きくなると(ステップS8´:Yes)、低負荷運転条件から通常条件に切り替わったと判断し(ステップS2)、ステップS3以降の処理を実行する。
【0045】
すなわち、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力より大きい場合または燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力以下である状態が一定時間以上継続しない場合、通常条件下になり、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力以下である状態が一定時間以上継続してから燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力より大きくなるまでの間、低負荷運転条件下になる。そして、制御部CNTは、通常条件下において、通常発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御し、低負荷運転条件下において、低負荷運転対応発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する。このように、燃料電池システムFCSの出力電力が所定電力以下である状態が一定時間以上継続しているか否かを判断することで、通常発電制御と低負荷運転対応発電制御の切り替えを容易に行うことができる。
【0046】
また、燃料電池FCの発電制御として図3に示すフローチャートを採用する場合、燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linのみにしてもよい。このように構成する場合、切替スイッチSW1、SW2を省略し、DCDCコンバータCNVに車載負荷Linを直接接続してもよい。
【0047】
図4は、通常発電制御を説明するための図である。なお、蓄電装置Bの充電量は、充電量V1(第1充電量)から充電量V1より大きい充電量V2(第2充電量)までの範囲において変化するものとする。また、閾値Vth11(充電量V1)<閾値Vth12<閾値Vth13<閾値Vth14<閾値Vth15<閾値Vth16(充電量V2)とする。また、目標発電電力Pt0をゼロとし、目標発電電力Pt0<目標発電電力Pt1<目標発電電力Pt2<目標発電電力Pt3とする。また、燃料電池FCの出力電力が目標発電電力Pt3に追従しているとき、燃料電池FC内に滞留している水が所定流量の酸化剤ガスにより燃料電池FCの外に排出されるものとする。また、目標発電電力Pt3と目標発電電力Pt2との差、目標発電電力Pt2と目標発電電力Pt1との差、目標発電電力Pt1と目標発電電力Pt0との差は、それぞれ、一定値でもよいし、異なる値でもよい。また、目標発電電力Ptが大きくなるほど、燃料電池FCから出力される電力が大きくなり、目標発電電力Ptが小さくなるほど、燃料電池FCから出力される電力が小さくなるものとする。また、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0になると、燃料電池FCの発電が停止して燃料電池FCから出力される電力がゼロになるものとする。
【0048】
制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth15以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0049】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth13以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0050】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth11以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に変化させる。
【0051】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt3である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth12以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0052】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth14以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0053】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth16以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化させる。
【0054】
すなわち、制御部CNTは、通常発電制御として、蓄電装置Bの充電量が小さくなるほど燃料電池FCから出力される電力が段階的に大きくなるように、または、蓄電装置Bの充電量が大きくなるほど燃料電池FCから出力される電力が段階的に小さくなるように、燃料電池FCの発電電力を制御する。
【0055】
これにより、通常条件下において、車載負荷Linからの要求電力が比較的大きくなり、蓄電装置Bの充電量が比較的小さくなると、燃料電池FCの出力電力を上昇させるために燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量が増加するため、燃料電池FC内に滞留する水の量を低減することができる。
【0056】
図5は、低負荷運転対応発電制御を説明するための図である。なお、蓄電装置Bの充電量は、充電量V1(第1充電量)から充電量V1より大きい充電量V2(第2充電量)までの範囲において変化するものとする。また、閾値Vth21(充電量V1)<閾値Vth22<閾値Vth23<閾値Vth24<閾値Vth25<閾値Vth26(充電量V2)とする。また、閾値Vth21は閾値Vt11と同じ値でも異なる値でもよい。また、閾値Vth22は閾値Vt12と同じ値でも異なる値でもよい。また、閾値Vth23は閾値Vt13と同じ値でも異なる値でもよい。また、閾値Vth24は閾値Vt14と同じ値でも異なる値でもよい。また、閾値Vth25は閾値Vt15と同じ値でも異なる値でもよい。また、閾値Vth26は閾値Vt16と同じ値でも異なる値でもよい。
【0057】
制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth21以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0058】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth22以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0059】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth23以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に変化させる。
【0060】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt3である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth24以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に変化させる。
【0061】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth25以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に変化させる。
【0062】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth26以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化させる。
【0063】
また、制御部CNTは、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化すると、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth21以下になるまで、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0に維持する。
【0064】
すなわち、制御部CNTは、低負荷運転対応発電制御として、車載負荷Linや外部負荷Loutからの要求電力の大小によらず、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth21以下になるまで目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0に維持した後、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt3に強制的に変化させるとともに目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt0に強制的に変化させることを繰り返す。
【0065】
これにより、低負荷運転条件下など、燃料電池システムFCSから外部負荷Loutに比較的小さい電力が継続して供給されている状態であっても、低負荷運転対応発電制御により、燃料電池FCから出力される電力を目標発電電力Pt3まで強制的に上昇させることができるため、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を増加させることができ燃料電池FC内に滞留している水の量を低減することができる。
【0066】
また、通常発電制御または低負荷運転対応発電制御において、エアコンプレッサACPから出力される酸化剤ガスの流量を段階的に変化させることができるため、エアコンプレッサACPで発生する騒音が急峻に変化することを抑制し騒音に関するユーザの違和感を緩和させることができる。
【0067】
また、通常発電制御または低負荷運転対応発電制御において、蓄電装置Bの充電量に応じて燃料電池FCから出力される電力を段階的に変化させることができるため、燃料電池FCの発電電力が変化する頻度を低減することができ、燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0068】
また、車載負荷Linや外部負荷Loutから要求される電力が燃料電池システムFCSから車載負荷Linや外部負荷Loutに供給される構成であるため、燃料電池FCによる発電電力の消費先が確保される。これにより、燃料電池FCの電位上昇が抑えられ、燃料電池FCの劣化が抑制できる。
【0069】
なお、燃料電池FCの発電制御として図3に示すフローチャートを採用する場合で、かつ、燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linのみにする場合、車載負荷Linから燃料電池システムFCSに回生電力が供給されることを考慮して、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth21以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化させるように構成してもよい。
【0070】
ここで、通常発電制御の具体例について説明する。
【0071】
図6は、通常発電制御時に燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linとする場合における燃料電池FCの発電制御を説明するための図である。なお、図6(a)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池システムFCSの出力電力[kW]を示し、図6(a)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う燃料電池システムFCSの出力電力の変化例を示している。また、図6(b)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は蓄電装置Bの充電量を示し、図6(b)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う蓄電装置Bの充電量の変化例を示している。また、図6(c)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCの出力電力[kW]を示し、図6(c)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う燃料電池FCの出力電力の変化例を示している。また、図6(d)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量[NL/min]を示し、図6(d)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う酸化剤ガスの流量の変化例を示している。また、図6(a)~図6(d)の横軸(時間軸)は互いに同じものとする。また、時刻t11から時刻t13までの間において、燃料電池システムFCSの出力電力(車載負荷Linから要求される電力)が目標発電電力Pt1~Pt3より大きく、不足分の電力が蓄電装置Bから車載負荷Linに供給されることで蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電量が減少していくものとする。また、電力P1<電力P2<電力P3とする。また、流量F1<流量F2<流量F3とする。また、流量F3(所定流量)は、燃料電池FC内に滞留する水が燃料電池FCの外に排出されているときに燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量とする。
【0072】
まず、蓄電装置Bから車載負荷Linに電力が供給されることで蓄電装置Bの充電量が徐々に低下しているとき、時刻t11において蓄電装置Bの充電量が閾値Vth15以下になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力をゼロから目標発電電力Pt1に相当する電力P1に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量がゼロから流量F1に増加する。
【0073】
次に、蓄電装置Bから車載負荷Linに電力が供給されることで蓄電装置Bの充電量が継続して低下しているとき、時刻t12において蓄電装置Bの充電量が閾値Vth13以下になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt1に相当する電力P1から目標発電電力Pt2に相当する電力P2に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量が流量F1から流量F2に増加する。
【0074】
そして、蓄電装置Bから車載負荷Linに電力が供給されることで蓄電装置Bの充電量が継続して低下しているとき、時刻t13において蓄電装置Bの充電量が閾値Vth11以下になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt2に相当する電力P2から目標発電電力Pt3に相当する電力P3に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量が流量F2から流量F3に増加する。
【0075】
このように、通常発電制御では、車載負荷Linからの電力要求によって、燃料電池FCの出力電力が目標発電電力Pt3に対応する電圧V3まで上昇する場合があり、酸化剤ガスの流量を流量F3まで増加させることができるため、燃料電池FC内に滞留する水を低減することができる。
【0076】
次に、燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linから外部負荷Loutに切り替えた後も通常発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する場合について説明する。
【0077】
図7は、通常発電制御時に燃料電池システムFCSの電力供給先を外部負荷Loutとする場合における燃料電池FCの発電制御を説明するための図である。なお、図7(a)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池システムFCSの出力電力[kW]を示し、図7(a)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う燃料電池システムFCSの出力電力の変化例を示している。また、図7(b)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は蓄電装置Bの充電量を示し、図7(b)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う蓄電装置Bの充電量の変化例を示している。また、図7(c)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCの出力電力[kW]を示し、図7(c)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う燃料電池FCの出力電力の変化例を示している。また、図7(d)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量[NL/min]を示し、図7(d)の実線は図4に示す通常発電制御を行った場合の時間経過に伴う酸化剤ガスの流量の変化例を示している。また、図7(a)~図7(d)の横軸(時間軸)は互いに同じものとする。また、時刻t21から時刻t23までの間において、燃料電池システムFCSの出力電力(外部負荷Loutから要求される電力)は目標発電電力Pt1より小さく、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1に変化すると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電量が増加するものとする。また、電力P1<電力P2<電力P3とする。また、流量F1<流量F2<流量F3とする。また、流量F1は、燃料電池FC内に水が滞留し易い状態であるときに燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量とする。なお図6(b)において、蓄電装置Bの充電量は、供給電力と要求電力との差し引きによって変動するため、厳密には複雑な波形となるが、説明のため直線的に変化するよう単純化している。以降の図7(b)、図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)についても同様である。
【0078】
まず、蓄電装置Bから外部負荷Loutに電力が供給されることで蓄電装置Bの充電量が低下しているとき、時刻t21において蓄電装置Bの充電量が閾値Vth15以下になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力をゼロから目標発電電力Pt1に相当する電力P1に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量がゼロから流量F1に増加する。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量が増加する。
【0079】
次に、時刻t22において蓄電装置Bの充電量が閾値Vth16以上になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力が目標発電電力Pt1に相当する電力P1からゼロに減少するため、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量が流量F1からゼロに減少する。また、燃料電池FCの出力電力がゼロになると、蓄電装置Bから外部負荷Loutに電力が供給されるようになり、蓄電装置Bの充電量が再び低下する。
【0080】
次に、時刻t23において蓄電装置Bの充電量が閾値Vth15以下になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力をゼロから目標発電電力Pt1に相当する電力P1に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量がゼロから流量F1に増加する。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量が再び増加する。
【0081】
以降、酸化剤ガスの流量がゼロと流量F1との間で増減を繰り返す。
【0082】
このように、燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linから外部負荷Loutに切り替えた後も通常発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する場合では、蓄電装置Bの充電量を閾値Vth16と閾値Vth15と間でしか変化させることができないため、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt1に相当する電力P1までしか上昇させることができない。そのため、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量も流量F1までしか増加させることができず、燃料電池FC内に水が滞留し易い。
【0083】
そこで、実施形態の燃料電池システムFCSでは、燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linから外部負荷Loutに切り替えた後に低負荷運転対応発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する。
【0084】
図8は、低負荷運転対応発電制御時に燃料電池システムFCSの電力供給先を外部負荷Loutとする場合における燃料電池FCの発電制御を説明するための図である。なお、図8(a)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池システムFCSの出力電力[kW]を示し、図8(a)の実線は図5に示す低負荷運転対応発電制御を行った場合の時間経過に伴う燃料電池システムFCSの出力電力の変化例を示している。また、図8(b)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は蓄電装置Bの充電量を示し、図8(b)の実線は図5に示す低負荷運転対応発電制御を行った場合の時間経過に伴う蓄電装置Bの充電量の変化例を示している。また、図8(c)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCの出力電力[kW]を示し、図8(c)の実線は図5に示す低負荷運転対応発電制御を行った場合の時間経過に伴う燃料電池FCの出力電力の変化例を示している。また、図8(d)の二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量[NL/min]を示し、図8(d)の実線は図5に示す低負荷運転対応発電制御を行った場合の時間経過に伴う酸化剤ガスの流量の変化例を示している。また、図8(a)~図8(d)の横軸(時間軸)は互いに同じものとする。また、時刻t30から時刻t36までの間において、燃料電池システムFCSの出力電力は目標発電電力Pt1より小さく、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1~Pt3の何れかに変化すると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電量が増加していくものとする。また、電力P1<電力P2<電力P3とする。また、流量F1<流量F2<流量F3とする。また、流量F3は、燃料電池FC内に滞留する水が燃料電池FCの外に排出されているときに燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量とする。
【0085】
まず、時刻t30から時刻t31までの間において、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0に維持されているとき、蓄電装置Bの充電量が徐々に低下していく。
【0086】
次に、時刻t31において蓄電装置Bの充電量が閾値V21以下になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt1に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力をゼロから目標発電電力Pt1に相当する電力P1に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量をゼロから流量F1に増加させる。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量が増加する。
【0087】
次に、時刻t32において蓄電装置Bの充電量が閾値V22以上になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt2に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt1に相当する電力P1から目標発電電力Pt2に相当する電力P2に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F1から流量F2に増加させる。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量がさらに増加する。
【0088】
次に、時刻t33において蓄電装置Bの充電量が閾値V23以上になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt3に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt2に相当する電力P2から目標発電電力Pt3に相当する電力P3に上昇させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F2から流量F3に増加させる。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量がさらに増加する。
【0089】
次に、時刻t34において蓄電装置Bの充電量が閾値V24以上になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt2に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt3に相当する電力P3から目標発電電力Pt2に相当する電力P2に低下させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F3から流量F2に減少させる。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量がさらに増加する。
【0090】
次に、時刻t35において蓄電装置Bの充電量が閾値V25以上になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt2から目標発電電力Pt1に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt2に相当する電力P2から目標発電電力Pt1に相当する電力P1に低下させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F2から流量F1に減少させる。また、燃料電池FCから出力される電力の一部により蓄電装置Bが充電され、蓄電装置Bの充電量がさらに増加する。
【0091】
そして、時刻t36において蓄電装置Bの充電量が閾値V26以上になると、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt1から目標発電電力Pt0に変化する。すると、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt1に相当する電力P1からゼロに低下させるために、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F1からゼロに減少させる。また、燃料電池FCから出力される電力がゼロになるため、蓄電装置Bの充電量が再び徐々に低下していく。
【0092】
以降、酸化剤ガスの流量がゼロと流量F3との間で増減を繰り返す。
【0093】
このように、燃料電池システムFCSの電力供給先を車載負荷Linから外部負荷Loutに切り替えた後、低負荷運転対応発電制御により燃料電池FCの発電電力を制御する場合では、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt3に対応する電圧V3まで強制的に上昇させることができるため、酸化剤ガスの流量を流量F3まで増加させることができ、燃料電池FC内に滞留する水を低減することができる。
【0094】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0095】
<変形例1>
制御部CNTは、図5に示す低負荷運転対応発電制御時、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt3である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth24以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt0に変化させるように構成してもよい。このように構成しても、例えば、図9に示すように、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt3に相当する電力P3まで上昇させることができるため、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F3まで増加させることができる。なお、このように構成する場合、閾値Vth25及び閾値Vth26を予め求めておく必要がない。
【0096】
<変形例2>
制御部CNTは、図5に示す低負荷運転対応発電制御時、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth21以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt3に変化させるように構成してもよい。このように構成しても、例えば、図10に示すように、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt3に相当する電力P3まで上昇させることができるため、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F3まで増加させることができる。なお、このように構成する場合、閾値Vth22及び閾値Vth23を予め求めておく必要がない。
【0097】
<変形例3>
制御部CNTは、図5に示す低負荷運転対応発電制御時、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt0である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth21以下になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt0から目標発電電力Pt3に変化させ、目標発電電力Ptが目標発電電力Pt3である状態において、蓄電装置Bの充電量が閾値Vth24以上になると、目標発電電力Ptを目標発電電力Pt3から目標発電電力Pt0に変化させるように構成してもよい。このように構成しても、例えば、図11に示すように、燃料電池FCの出力電力を目標発電電力Pt3に相当する電力P3まで上昇させることができるため、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの流量を流量F3まで増加させることができる。なお、このように構成する場合、閾値Vth22、閾値Vth23、閾値Vth25、及び閾値Vth26を予め求めておく必要がない。
【0098】
<変形例4>
上記実施形態の燃料電池システムFCSでは、蓄電装置Bの充電量に応じて燃料電池FCの目標発電電力Ptを段階的に変化(増減)させる構成であるが、蓄電装置Bの充電量に応じて燃料電池FCの目標発電電力Ptを線形的(リニア)に変化(増減)させてもよい。
【0099】
<変形例5>
上記実施形態の燃料電池システムFCSでは、車載負荷Linまたは外部負荷Loutに電力を供給する発電機として構成しているが、燃料電池システムFCSを、商用電源と協働して外部の負荷に電力を供給する定置発電機または非常用電源として構成してもよい。この場合、制御部CNTが外部の負荷の要求電力を監視し、要求電力が所定電力以下になり、その状態が所定時間以上継続した場合に、外部の負荷が低負荷運転対応発電制御の対象であると判断することが好ましい。
【符号の説明】
【0100】
FCS 燃料電池システム
CNT 制御部
Ve 車両
Lin 車載負荷
Kout 外部負荷
FC 燃料電池
HT 水素タンク
INJ インジェクタ
ACP エアコンプレッサ
CNV DCDCコンバータ
ARV エア調圧弁
INV インバータ
B 蓄電装置
SW1、SW2 切替スイッチ
Svf、Svb 電圧センサ
Sif、Sib 電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11