(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】短絡軽減デバイス
(51)【国際特許分類】
C25C 7/06 20060101AFI20250310BHJP
C25C 7/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
C25C7/06 303
C25C7/00 301
(21)【出願番号】P 2021563089
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 AU2020050398
(87)【国際公開番号】W WO2020215127
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】モレナール、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラジャシンガム、ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】マルクソン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブロードリー、クレイグ
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0183838(US,A1)
【文献】特表2017-511428(JP,A)
【文献】特開2016-165177(JP,A)
【文献】特表2013-533390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/06
C25C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接点および電極を有する電解精製および/または電解採取作業のための電解槽において使用するための短絡軽減デバイスであって、
減衰負荷と並列に接続され、前記電気接点と前記電極との間に配置されたスイッチと、ここで、前記スイッチは、前記電気接点と前記電極との間に電気伝導経路を選択的に提供するように構成され、前記スイッチは、並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備える、
前記スイッチの周りに電気経路を提供し、前記電解槽の継続的な動作を可能にするために前記MOSFETと並列に接続された導電性のフェイルセーフ経路と、
前記スイッチを通る電流を監視するように、および、前記電流が第1のしきい値を超えるとき、前記スイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成するように、前記スイッチに動作可能に関連付けられたコントローラと
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記フェイルセーフ経路は、閉導電状態にある前記複数のMOSFETの電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有する導体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コントローラは、少なくとも第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作するようにさらに構成され、前記第1の動作モードは第1のしきい値を有し、前記第2の動作モードは第2のしきい値を有する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラは、前記スイッチを通る前記電流が所定の期間にわたって前記第1または第2のしきい値を超えるとき、前記トグル信号を生成するように構成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電流を示すデータを送信するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記コントローラは、前記スイッチの状態を示す状態データを送信するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記コントローラは、受信された構成信号に応答して前記第1の動作モード、または前記第2の動作モードを採用するように構成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
前記構成信号は、前記コントローラとは異なる第2のコントローラから受信された状態データである、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記構成信号は、前記コントローラとは異なる槽コントローラから受信される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記槽コントローラは、複数のコントローラと双方向通信し、前記複数のコントローラの各々からそれぞれ受信された状態データに応答して前記構成信号を生成する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記コントローラは、低電力状態において前記コントローラが前記スイッチを通る前記電流を監視しないように、所定の時間に前記低電力状態を採用するように構成される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コントローラは、前記スイッチを前記非導電性の開状態から前記導電性の閉状態に切り替えるリセット信号を生成するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記コントローラは、前記スイッチを通る時間平均電流を制御するように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記コントローラは、前記時間平均電流が相対的な開放期間および閉鎖期間によって決定されるように、開放期間のための前記非導電性の開状態と閉鎖期間のための前記導電性の閉状態との間で前記スイッチを切り替えるためのさらなる信号を周期的に生成することによって、前記スイッチを通る前記時間平均電流を制御するように構成される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記電極を支持するための上部接点と、
前記電気接点上に載置され、電気絶縁層によって前記上部接点から分離された下部接点と
を備え、
ここにおいて、前記スイッチの第1の端部は、前記上部接点と電気的に接触し、前記スイッチの第2の端部は、前記下部接点と電気的に接触し、前記スイッチは、前記上部接点および前記下部接点を動作可能に接続または切断するように構成される、
請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記電解槽は、電解採取槽または電解精製
槽である、請求項1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1のしきい値は、通常の動作電流の所定の第1の倍数である、請求項1から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記所定の第1の倍数は1.5~3である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
第2のしきい値は、通常の動作電流の所定の第2の倍数である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第2の倍数は2~3.5である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
電解槽における短絡を軽減するための、請求項1から20のいずれか一項に記載のデバイスを2つ以上備えるシステム。
【請求項22】
並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備え、電解精製および/または電解採取作業のための電解槽において電気接点と電極との間に配置されたスイッチを有する短絡軽減デバイスによって実行される方法であって、前記スイッチは、前記スイッチの周りに電気経路を提供し、前記電解槽の継続的な動作を可能にするための導電性のフェイルセーフ経路と並列に接続され、前記方法は、
前記スイッチを通る電流を示す電流信号を受信することと、
前記電流が第1のしきい値または前記第1のしきい値とは異なる第2のしきい値を超えることを前記電流信号が示すとき、前記スイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2019年4月24日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2019901395号からの優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本開示は、短絡軽減のための方法およびデバイスに関し、特に、電解槽における短絡軽減のための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]最先端の電解採取(EW)および電解精製(ER)プロセスは、最大96%の電流効率で実行され得るが、依然として電流非効率性がいくらか残っている。電荷が代替反応によって消費されること、アノードとカソードとの間の短絡によりすべての反応を無視すること、および電解質の漏れおよび塩橋による迷走電流により、非効率性が生じることが知られている。圧倒的に多い原因が短絡である。短絡は、曲がった電極、電極の不適切な間隔、正しく整列されていない電極、および結節状/樹枝状の銅の成長に起因する。オーストラリアでの銅電解精製作業における最近の調査では、1日当たり2200個の短絡が特定および修正されることが示された。他のERおよびEWタンクハウスにおいても同様の数字がよく見られる。この問題は、特定および修正しないと生産性に著しい影響を及ぼす可能性があり、槽の電流非効率性の残りの4%のうちの最大3%を占める。
【0004】
[0004]短絡を特定するために熱またはガウスメータを使用することは工場での通常の手段である。特定されると、短絡は除去される。これは、正しく整列されていないかまたは不適切な間隔の電極を再配置すること、ノジュールを物理的に除去すること、またはプレートが屈曲している場合にはプレートを除去して交換することによって達成される。全自動クレーンを採用している一部の最新のタンクハウスでは、作業者は、短絡を検出して修正する機会が非常に少なく、これが問題をさらに悪化させている。このプロセスは反応的かつ改善的であり、かなりの時間および資源を消費する。
【0005】
[0005]短絡の特定を改善する試みは、Hatch社およびOutotec社の両方によって行われている。どちらのシステムも、バスバーを通過する電流の変化を検出するためにホール効果の原理で動作する。読取り値は、問題の槽またはプレートをリアルタイムで作業者に警告するために、制御室に戻される。検出と修正との間の時間が短縮されて、全体的な電流効率を高めることができることが重要な利点である。しかしながら、システムは、依然として反応的であり、問題を修正するためには作業者の介入に依存している。また、引き続き、短絡を修正するためには作業者が槽の上部にいる必要があるため、ハーベストプロセスを完全に自動化する機会も減少する。
【0006】
[0006]本開示に対する背景についての議論は、本開示の理解を容易にすることを意図するものである。しかしながら、この議論は、参照された資料のいずれかが、本出願の優先日の時点で公開されたか、公知であったか、または共通の一般知識の一部であったことを認識するものでも認めるものでもないことは理解されるべきである。
【発明の概要】
【0007】
[0007]第1の態様によれば、電気接点および電極を有する電解槽において使用するための短絡軽減デバイスであって、以下を備えるデバイスが提供される:
減衰負荷と並列に接続され、接点と電極との間に配置されたスイッチ、ここで、スイッチは、接点と電極との間に電気伝導経路を選択的に提供するように構成され、スイッチは、並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備える、
スイッチの周りに電気経路を提供するためにMOSFETと並列に接続された導電性のフェイルセーフ経路、および
スイッチを通る電流を監視するように、および、電流が第1のしきい値を超えるとき、スイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成するように、スイッチに動作可能に関連付けられたスイッチコントローラ。
【0008】
[0008]この態様の利点は、電気伝導経路を提供するために、接点と電極との間にスイッチを直列に配置することができることである。これにより、スイッチは、電極への電流を直接制御することができて、個々の電極への自動電流制御が可能になり、問題となる短絡の発生を軽減することができる。並列に接続された複数のMOSFETでは、単一MOSFETデバイスよりも電流容量を増加させることができるだけでなく、電気抵抗を減少させることができる。
【0009】
【0010】
[0009]フェイルセーフ経路は、閉導電状態にある複数のMOSFETの電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有する導体を含み得る。
【0011】
[0010]スイッチコントローラは、MOSFETの両端の電圧降下を測定することによって、スイッチを通る電流を監視し得る。
【0012】
[0011]この構成では電力を消費するシャント抵抗器が必要なくなるため、MOSFETの両端の電圧降下を測定することによってスイッチを通る電流を監視することは有利である。
【0013】
[0012]スイッチコントローラは、MOSFETの両端の電圧降下をMOSFETの所定のモデルと比較することによって、スイッチを通る電流を監視し得、モデルは、MOSFETの電気抵抗をMOSFETの温度に関連付ける。
【0014】
[0013]コントローラは、少なくとも第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作するようにさらに構成され得、第1の動作モードは第1のしきい値を有し、第2の動作モードは第2のしきい値を有する。
【0015】
[0014]この実施形態の利点は、スイッチが異なるモードで動作することができることであり、これにより、スイッチはその動作を適合させることができる。これは、電解槽を横切る電流分布が電解槽の動作段階に応じて変化するため、有益である。
【0016】
[0015]コントローラは、スイッチを通る電流が所定の期間にわたって第1または第2のしきい値を超えるとき、トグル信号を生成するように構成され得る。
【0017】
[0016]コントローラは、電流を示すデータを送信するように構成され得る。
【0018】
[0017]コントローラは、スイッチの状態を示す状態データを送信するように構成され得る。
【0019】
[0018]コントローラは、受信された構成信号に応答して動作モードを採用するように構成され得る。
【0020】
[0019]構成信号は、第2のデバイスの第2のコントローラから受信された状態データであり得る。
【0021】
[0020]構成信号は、槽コントローラから受信され得る。
【0022】
[0021]槽コントローラは、複数のコントローラと双方向通信し得、複数のコントローラの各々からそれぞれ受信された状態データに応答して構成信号を生成する。
【0023】
[0022]コントローラは、低電力状態においてコントローラがスイッチを通る電流を監視しないように、所定の時間に低電力状態を採用するように構成され得る。
【0024】
[0023]コントローラは、スイッチを非導電性の開状態から導電性の閉状態に切り替えるリセット信号を生成するように構成され得る。
【0025】
[0024]コントローラは、スイッチを通る時間平均電流を制御するように構成され得る。
【0026】
[0025]コントローラは、時間平均電流が相対的な開放期間および閉鎖期間によって決定されるように、開放期間のための非導電性の開状態と閉鎖期間のための導電性の閉状態との間でスイッチを切り替えるためのさらなる信号を周期的に生成することによって、スイッチを通る時間平均電流を制御するように構成され得る。
【0027】
[0026]スイッチは、1つまたは複数のソリッドステートスイッチングデバイスを備え得る。
【0028】
[0027]1つまたは複数のソリッドステートスイッチングデバイスは、MOSFET、トランジスタ、トライアック、サイリスタ、ダーリントンペア、およびソリッドステートリレーから選択され得る。
【0029】
[0028]デバイスは、以下を備え得る:
電極を支持するための上部接点、および
電気接点上に載置され、電気絶縁層によって上部接点から分離された下部接点、
ここにおいて、スイッチの第1の端部は、上部接点と電気的に接触し、スイッチの第2の端部は、下部接点と電気的に接触し、スイッチは、上部接点および下部接点から変位している。
【0030】
[0029]電解槽は、電解採取槽または電解精製槽または電着槽であり得る。
【0031】
[0030]第1のしきい値電流は、通常の動作電流の所定の第1の倍数であり得る。
【0032】
[0031]第1の倍数は1.5~3であり得る。
【0033】
[0032]第2のしきい値電流は、通常の動作電流の所定の第2の倍数であり得る。
【0034】
[0033]第2の倍数は2~3.5であり得る。
【0035】
[0034]第2の態様によれば、上で説明したような2つ以上のデバイスを備えるシステムが提供される。
【0036】
[0035]第3の態様によれば、スイッチの周りに電気経路を提供するための導電性のフェイルセーフ経路と並列に接続されたスイッチを有する短絡軽減デバイスによって実行される方法であって、スイッチは、並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備え、電解槽において電気接点と電極との間に配置されている、方法が提供され、方法は、以下を含む:
スイッチを通る電流を示す電流信号を受信すること、および
電流が第1または第2のしきい値を超えることを電流信号が示すとき、スイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成すること。
【0037】
[0036]「発明の概要」に記載されるプロセスの範囲内に含まれ得る任意の他の形態にもかかわらず、ここから、特定の実施形態は、以下の添付の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
[0037]図1は、例示的な電解槽の等角図である。
【
図2】
[0038]図2は、例示的な電解槽の上面図である。
【
図3】
[0039]図3は、短絡軽減デバイスの概略図である。
【
図4】
[0040]図4は、
図3のスイッチの実施形態を例示する。
【
図6】
[0044]図6は、短絡軽減デバイスの概略図である。
【
図7】
[0045]図7は、2つの短絡軽減デバイスを有するシステムの概略図である。
【
図8】
[0046]図8は、複数の短絡軽減デバイスを有するシステムの概略図である。
【
図9】
[0047]図9は、複数の短絡軽減デバイスを有するシステムの概略図である。
【
図11】
[0049]図11は、スイッチコントローラによって実行される方法を例示する。
【
図12】
[0050]図12は、槽コントローラによって実行される例示的な方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[0051]本開示は、電解槽における短絡を軽減するためのデバイス、方法、およびシステムに関する。特に、本開示は、電解槽における短絡を検出し、電極を自動的に電気的に絶縁するか、または電極への電流を制御するためのデバイスに関する。
【0040】
[0052]文脈によって明示的に述べられるかまたは必要とされない限り、電気接点、接点、バスバー、およびバスという用語は、交換して使用され、同等の範囲を有することが意図される。
【0041】
電解槽で使用するための短絡軽減デバイス
[0053]図1は、電解精製、電解採取、または電着で使用するための典型的な電解槽100を例示する。槽100は、カソードバスバー102と、アノードバスバー104と、導電性カソードプレート106と、導電性アノードプレート108とを備える。プレート106および108は、バスバー102および104がそれぞれプレート106および108の電気接点として機能するように、それぞれカソードバスバー102およびアノードバスバー104に電気的に接触している。槽100は、電解液110をさらに備える。
【0042】
[0054]カソードプレート106は、プレート106の下部116が溶液110に浸漬されるように、支持翼112および114によってカソードバスバー102およびアノードバスバー104から吊り下げられている。プレート106は、カソードバスバー102だけに電気的に接続されており、支持翼114とアノードバスバー104との間の絶縁インサート(図示せず)によってアノードバスバー104からは電気的に絶縁されている。したがって、プレート106および具体的には部分116は、槽100におけるカソード電極として機能する。
【0043】
[0055]同様に、アノードプレート108は、プレート108の下部122が溶液110に浸漬されるように、支持翼118および120によってバスバー102および104から吊り下げられている。プレート108は、アノードバスバー104だけに電気的に接続されており、支持翼118とカソードバスバー102との間の絶縁インサート(図示せず)によってカソードバスバー102からは電気的に絶縁されている。したがって、プレート108および具体的には部分122は、槽100におけるアノード電極として機能する。
【0044】
[0056]図2は、電解槽101の上面図を例示する。槽101は、槽100と設計が類似しているが、アノード108と互いに入り込んだ複数のカソード106を含む。上面図は、カソード106とカソードバスバー102との間の電気接点と、間隙202によるアノードバスバー104との電気接点の欠如とを示す。実際には、間隙202は、カソードプレート106およびアノードバスバー104の両方に接続する固体絶縁材料から構成され得る。同様に、アノード電極108は、アノードバスバー104と電気的に接触しており、実際には。アノードプレート108およびカソードバスバー102の両方に接続する固体絶縁材料から構成され得る間隙204によってカソードバスバー102から絶縁されている。
【0045】
[0057]動作中、槽100および101は、電解液110を介してカソード電極106と隣接するアノード電極108との間で電荷を伝導する。短絡は、電極106および/または108の屈曲、電極106および/または108の整列不良、ならびに/あるいはカソード電極(複数可)106上に堆積された金属の樹枝状の成長の結果として頻繁に生じる。
【0046】
[0058]前述したように、短絡を検出するための既存の方法は、熱撮像デバイスまたはガウスメータを含む。短絡の間、異常に大きな電流が、短絡に関与している電極を通って流れ、これらの電極の温度を上昇させる。熱撮像デバイスは、温度が上昇した電極を特定するのを助けることによって短絡を検出し、ガウスメータ/ホール効果センサは、関連する磁場の増加を介して、電流の増加を検出する。
【0047】
[0059]短絡が検出されると、作業者は、短絡の原因を調査するために、関与している電極を手動で除去しなければならない場合がある。作業者は、樹枝状金属堆積物を除去するかまたは電極を再配置することによって短絡を軽減することができる。これに失敗すると、関連する電極(複数可)を取り外して交換しなければならなくなる。電解槽の上部に作業者が存在することにより、カソード電極をハーベストするための自動デバイスの使用が制限される。さらに、作業者の活動がプレートを乱し、新たな短絡を形成してしまう可能性がある。
【0048】
[0060]図3は、槽100または101などの電解槽で使用するための短絡軽減デバイス300の概略図である。デバイス300は、槽間バスバー102の電気接点304と、支持翼112を有するカソードプレート106のカソード電極116との間に配置されたインラインスイッチ302を備える。デバイス300は、スイッチ302に動作可能に関連付けられたスイッチコントローラ306をさらに備える。コントローラ306は、スイッチ302を通る電流308を監視し、電流308が第1のしきい値を超えるとき、トグル信号309を生成する。トグル信号309は、矢印310で示すように、スイッチ302を導電性の閉状態から図示の非導電性の開状態に切り替える。
【0049】
[0061]第1のしきい値は、電解槽100または101における短絡に近い状態を示す電流の大きさであり、用途特有である。いくつかの実施形態では、第1のしきい値は、通常の動作電流の所定の第1の倍数である。例えば、通常の動作電流の2倍の第1のしきい値が使用され得る。この場合、スイッチ302を流れる電流が、通常の動作状態の値の2倍に達するかまたはそれを超える場合、コントローラ306は、スイッチ302を導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替える。非導電性の開状態では、感知できるほどの電流はスイッチ302を通って流れておらず、その結果、電極116は、カソードバスバー102の電気接点304から電気的に分離されるか、絶縁されるか、または切断される。例えば、通常の動作電流が620アンペアである場合、第1のしきい値電流は、約1240アンペアとなる。したがって、電流308が1240アンペアに達するかまたはそれを超えると、コントローラ306は、矢印310によって示されるように、スイッチ302を導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替える。スイッチ302のいくつかの実施形態では、非導電性の開状態にあるとき、わずかな残留電流がスイッチ302を通って流れ得ることが理解されるであろう。
【0050】
[0062]いくつかの実施形態では、コントローラ306は、スイッチ302の両端の電圧降下を測定することによって、スイッチ302を通る電流308を監視する。電圧降下は、電流308の正確な指示を導出するために、スイッチ302の既知の電気特性を使用してコントローラ306によって電流値に変換され得る。電気的特性は、温度の関数としてスイッチ302の電気抵抗を含む。例えば、いくつかの実施形態では、スイッチ302は、並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含む(以下で詳細に説明する)。この場合、コントローラ306は、MOSFETの両端の電圧降下を測定し、それを使用して、MOSFETの既知の電気的特性を使用することによって、MOSFETを通る電流を決定することができる。決定プロセスは、電流を決定する前に、MOSFETの電気的特性に温度補正を適用することを含み得る。
【0051】
[0063]スイッチ302の両端の電圧降下を使用して、スイッチ302を通る電流を決定することで、シャント抵抗器は必要とされない。したがって、シャント抵抗器で電力が消費されないため、スイッチ302の電力効率が高まる。
【0052】
[0064]いくつかの実施形態では、コントローラ306は、スイッチ302を通る電流308の変化率が第1のしきい値を超えると、トグル信号309を生成する。電流の変化率を利用することによって、コントローラ306は、「ソフトショート」とも呼ばれる、短絡が生じる状態が存在するかどうかを決定することができる。これらの状態が存在する場合、トグル信号309の生成により、スイッチ302が非導電性の開状態に切り替わり、電流308が効果的に停止される。この動作は、短絡を未然に防ぎ、短絡が形成されるのを防止する。
【0053】
[0065]デバイス300は、短絡の発生および/または存在を検出し、デバイス300を通る電流を制御することによってこれらの短絡の影響を軽減するものと考えられ得る。
【0054】
例示的なスイッチ
[0066]スイッチ302は、任意の好適なスイッチングデバイスを備え得る。例えば、スイッチ302は、MOSFET、トランジスタ、トライアック、サイリスタ、ダーリントンペア、およびソリッドステートリレーから選択される1つまたは複数のソリッドステートスイッチングデバイスを含み得る。スイッチ302の実施形態は、
図4を参照して以下でより詳細に説明される。
【0055】
[0067]前述したように、スイッチ302は、1つまたは複数のソリッドステートスイッチングデバイスを備え得る。
図4は、スイッチ302が、並列に接続された複数のMOSFETデバイス402を備える、1つのそのような例示的な実施形態を示す。スイッチ302は、ドレイン404側とソース406側とを有する。実際には、ドレイン側404は、電極116に接続しており、ソース側406は、nチャネルMOSFETのカソードバスバー102の電気接点304に接続している。
【0056】
[0068]複数のMOSFET402を並列に接続することによって、スイッチ302の電流容量を、単一のMOSFETの容量よりも大幅に増加させることができる。さらに、サイリスタまたは単一のMOSFET(より高い電流容量を有する)などの単一のソリッドステートスイッチングデバイスと比較して、スイッチ302の電気抵抗を大幅に低減することができる。例えば、500アンペアの電流容量を有する単一のMOSFETは、典型的に、1~20ミリオームの抵抗を有する。比較すると、各MOSFETが40アンペアの電流容量を有する、並列に接続された15個のMOSFETは、13マイクロオームの抵抗で500アンペアを伝導することができる。したがって、MOSFETを並列に接続することによって、抵抗を約2~3桁低減することができる。
【0057】
[0069]図5Aに示されるようないくつかの実施形態では、電気的減衰負荷502が、スイッチ302と並列に追加される。減衰負荷502は、電流が流れることができる代替回路を提供することによって、スイッチ302が非導電性の開状態に切り替えられるときに生じ得るあらゆる電圧スパイクを減衰させるために追加される。実際には、減衰負荷502は、槽101内の他方の電極内に具現化され得る。この場合、減衰負荷502は、槽101のどの特定のスイッチ302にも局所化されない。
【0058】
[0070]図5Bは、スイッチ302と並列に導電するフェイルセーフ経路503を有するスイッチ302を備えるスイッチ302’を例示する。フェイルセーフ経路503は、電力損失によりスイッチ302が非導電性の開状態に移動した場合に、スイッチ302の周りに電気経路を提供する。
【0059】
[0071]例えば、スイッチ302’の特定の実施形態が
図5Cに示されており、ここでは、スイッチ302は、複数の並列のMOSFET402を含む。槽101で使用する際、槽101の各カソード106は、
図3における単一のカソードに関して示されるように、スイッチ302’によって槽間バスバー102に接続される。槽101への電力は利用可能であるが、MOSFET402のゲート電極への電力が失われている状況では、各スイッチ302は、非導電になる。しかしながら、MOSFET402のゲート電極に電力が供給されなくても、スイッチ302’は、依然として、フェイルセーフ経路503を通して電流を導電させる。フェイルセーフ経路503を通る継続的な導通は、槽101内で過剰な電圧スパイクが発生することを防止し、それによって、火災、爆発、機器の損傷、または近くの人々の感電死のリスクを低減する。この実施形態のさらなる利点は、スイッチ302’への電力が失われたとしても、槽101の生産性を維持することができることである。
【0060】
[0072]フェイルセーフ経路503は、スイッチ302よりも高い抵抗経路である。そのため、スイッチ302が導電性の閉状態にある通常状態下では、スイッチ302’を通って流れる電流の大部分はスイッチ302を通って流れ、比較的少ない電流がフェイルセーフ経路503を通って流れる。しかしながら、MOSFET402のゲート電極への電力が失われた場合には、スイッチ302が非導電状態となり、スイッチ302’を通るすべての電流がフェイルセーフ経路503を流れる。フェイルセーフ経路503が減衰負荷502としても機能し得ることは理解されるであろう。
【0061】
[0073]フェイルセーフ経路503は、その閉導電状態におけるスイッチ302の電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有する導体であり得るため、それが閉導電状態にあるときに、電流の大部分がスイッチ302を通って流れることを確実にする。さらに、フェイルセーフ経路503の電気抵抗は、少なくとも、スイッチ302がその開非導電状態にある所定の期間の間、熱暴走を防止するのに十分な低さでなければならない。例えば、所定の期間は、槽101への電力をシャットダウンするのに十分な長さであり得る。
【0062】
[0074]別の実施形態では、フェイルセーフ経路503は、適切に配向されたダイオードまたは整流器であり得る。この実施形態では、スイッチ302’の両端の電圧降下は、スイッチ302が閉導電状態にあるとき、ダイオード/整流器の順方向電圧を下回る。したがって、電流はフェイルセーフ経路503を通って流れない。しかしながら、スイッチ302が、ゲート電極への電力の損失のためにその非導電性の開状態にあるとき、スイッチ302’の両端の電圧降下、したがってフェイルセーフ経路503の両端の電圧降下は、フェイルセーフ経路503のダイオード/整流器の順方向電圧を超えることとなる。したがって、スイッチ302’を通って流れるすべての電流は、フェイルセーフ経路503を通って流れ、それによって、槽101の継続的な動作を可能にする。
【0063】
[0075]個々のMOSFETデバイス間のスイッチング時間のばらつきに起因して、MOSFETは並列に接続されるべきではないことが典型的に教示される。閉導電状態から開非導電状態に切り替えるのにより長い時間がかかるデバイスは、過剰な電流および電圧がそれらを通って迂回されるため、オーバーヒートする(burn out)。しかしながら、本願では、減衰負荷502および/またはフェイルセーフ経路503は、これが生じるのを防止する。
【0064】
[0076]前と同様に、短絡の発生および/または存在時、トグル信号309がスイッチ302’に送られる。トグル信号309により、スイッチ302’のスイッチ302が非導電性の開状態に切り替わる。次いで、以下に説明するように短絡の影響を軽減することができる。
【0065】
[0077]いくつかの実施形態では、スイッチ302は、カソードバスバー102および/またはアノードバスバー104内に一体的に形成される。
【0066】
マルチモード動作
[0078]いくつかの実施形態では、コントローラ306は、第2の動作モードで動作するようにさらに構成され、第2の動作モードは、第2のしきい値を有する。第2の動作モードで動作するとき、コントローラ306は、スイッチ302を通る電流308を監視し、電流308が第2のしきい値を超えるとき、トグル信号309を生成する。トグル信号309は、矢印310で示すように、スイッチ302を導電性の閉状態から図示の非導電性の開状態に切り替える。
【0067】
[0079]特定の実施形態では、コントローラ306は、電流308が所定の時間にわたって第1または第2のしきい値を超えるとき、トグル信号を生成するように構成される。所定の時間は、短絡の誤ったインジケータとなり得る過渡電流の期間よりも長く設定される。正確な値は用途特有であるが、典型的には100ミリ秒であることが理解されるであろう。
【0068】
[0080]コントローラ306が第1のモードで動作するか第2のモードで動作するかは、以下でより詳細に説明するように、いくつかの要因に依存する。
【0069】
[0081]電極上に堆積した金属をハーベストするためには、電極を電解槽から除去する必要がある。典型的には、この目的のためにカソード電極の3分の1が一度に除去される。これらの電極がハーベスト目的で除去されると、短絡が存在しない場合であっても、残りの電極への電流が増加する。第2のしきい値は、このハーベスト時間の間の電解槽100または101における短絡を示す電流の大きさである。第2のしきい値電流の正確な値は、用途特有であり、ハーベストするために一度に除去される電極の数にも依存する。いくつかの実施形態では、第2のしきい値は、通常の動作電流の所定の第2の倍数である。電極の3分の1がハーベストのために除去される典型的な場合では、所定の第2の倍数は、通常の動作電流の2.5倍である。例えば、通常の動作電流が620アンペアである場合、第2のしきい値電流は、約1550アンペアとなる。
【0070】
[0082]いくつかの実施形態では、コントローラ306は、自己較正し、適切な通常の動作電流を決定し、それによって第1および/または第2のしきい値を決定するように構成される。自己較正プロセスについては後述する。
【0071】
[0083]同様に、電極が上述のように短絡により絶縁または切断されると、他の短絡が存在しない場合であっても、残りの電極への電流が増加する。
【0072】
[0084]いくつかの実施形態では、コントローラ306は、受信された構成信号に応答して動作モードを採用するように構成される。例えば、受信された構成信号は、作業者によって手動でおよび/または動作タイマに基づいて自動的に開始され得る。この実施形態では、コントローラ306は、予定された通常の動作中は第1のモードで動作し、予定されたハーベスト中は第2のモードで動作する。
【0073】
[0085]図6に例示される実施形態では、デバイス300’のコントローラ307は、コントローラ306と同様であるが、送信ポート602を含み、データ604を送信するように構成される。データ604は、電流308の大きさを示すデータ、温度、および/またはスイッチ302の状態を示す状態データを含む。状態データは、スイッチ302が現在導電性の閉状態であるか非導電性の開状態であるかを示す。
【0074】
[0086]データポート602はハードワイヤード接続として例示されているが、本開示は、これによって限定されることを意図していない。実際には、データポート602は、ワイヤレス送信機、LEDなどの1つまたは複数の光学インジケータ、またはデータ604を伝達する任意の他の好適な手段であり得る。
【0075】
[0087]例えば、スイッチ302は、単独であるかスイッチ302’の一部であるかにかかわらず、非導電性の開状態に切り替えられる状況では、状態変化を示す信号が中央制御ステーションに送信され得る。この信号に応答して、短絡の影響を軽減するために作業者が派遣され得る。
【0076】
[0088]いくつかの実施形態では、データ604は、電気接点304ならびに/または支持翼112および/もしくは114上の汚染および/またはスケール沈積の結果として生じる低電流状態または無電流状態を特定するために使用される。例えば、低電流状態を検出すると、LEDが通電されて、スケールが、関連する電気接点および/または支持翼上に沈積したことを示すことができる。LED信号に応答して、スケールを軽減するために作業者が派遣され得る。典型的には、低電流状態は、通常の動作電流の70%以下であると考えられる。
【0077】
[0089]図7に示されるようないくつかの実施形態では、構成信号は、第2のコントローラから受信される状態データである。状態データは、槽監視システム702を介して送られる。この例では、スイッチ302または302’を通る電流がしきい値を超えていたため、コントローラ307は、スイッチ302を導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成している。スイッチ302の開状態を示す、コントローラ307から送信された状態データ604は、単独であるかスイッチ302’の一部であるかにかかわらず、スイッチ302’に関連付けられたコントローラ307’によって受信される。状態データ604の受信に応答して、コントローラ307’は、第2の動作モードを採用する。いくつかの実施形態では、コントローラ307は、槽監視システム702を使用せずに、コントローラ307’と直接通信する。
【0078】
[0090]図8の実施形態では、システム800は、コントローラ307および307’によって表される複数のデバイス300を備える。システム800は、コントローラ307および307’の各々と双方向通信する槽コントローラ802をさらに備える。槽コントローラ802は、複数のコントローラを監視し、それらに適切な構成信号を提供する。例えば、コントローラ307は、関連するスイッチ(図示せず)を非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成している。次いで、コントローラ307は、状態データ604を槽コントローラ802に送信することによって、関連するスイッチの状態の変化を示す。次いで、槽コントローラ802は、コントローラ307’が第2の動作モードを採用するように、構成信号810を他のコントローラ307’に送信する。
【0079】
[0091]実際には、槽コントローラ802は、非導電性の開状態を示す状態データがしきい値数のコントローラ307から受信されたときまたはハーベストイベント中にのみ、構成信号810を送信する。しきい値数は、電解槽101内の電極の数に依存する。
【0080】
[0092]いくつかの実施形態では、槽コントローラ802は、コントローラ307および307’の各々から電流308を示すデータを受信および監視するように構成される。コントローラ802は、電流を示すデータを使用して通常の動作電流を確立し、それによって第1および第2のしきい値を決定する。
【0081】
[0093]いくつかの実施形態では、槽コントローラ802は、ハーベストイベントを自動的に検出する。所定数のコントローラ307から受信されたデータ604が、関連するスイッチ内に感知できるほどの電流308がないことを示すときに、ハーベストイベントが検出され得る。例えば、ハーベストイベント中に、コントローラ307の1/3は、関連するスイッチを通る感知できるほどの電流308がないことを示すデータ604を提供する。他の実施形態では、ハーベストイベントを検出するために他の比が使用される。
【0082】
[0094]図9の実施形態では、システム900は、プラントコントローラ902と、複数の槽コントローラ802とを備える。各槽コントローラ802は、
図8に示すように、複数のスイッチコントローラと通信する。プラントコントローラ902は、槽コントローラ802の各々から、電流情報、温度、電圧電位/分布および/または状態データを含む動作データ906を受信する。動作データ906は、プラントコントローラ902が各槽の動作を監視することを可能にすることが理解されるであろう。
【0083】
[0095]いくつかの実施形態では、プラントコントローラ902は、しきい値および動作モードを制御または調整するために槽コントローラ802に槽構成データ904を提供するようにさらに構成される。
【0084】
[0096]前述したように、しきい値は、通常の動作電流の固定倍数として確立される。プラントコントローラ902は、槽コントローラ802の各々から受信された動作データ906を利用して、通常の動作電流の値を確立する。通常の動作電流が確立されると、コントローラ902は、槽構成データ904において各槽コントローラ802にしきい値を送信する。システム900は、1つの槽コントローラだけが動作データ906を提供するように例示されているが、実際には、すべての槽コントローラ802が動作データを提供するであろうことに留意されたい。同様に、構成データがすべての槽コントローラ802に提供されるであろう。
【0085】
[0097]いくつかの実施形態では、プラントコントローラ902はまた、ハーベストイベントを示すハーベスト情報を槽コントローラ802に提供するように構成される。ハーベスト情報は、槽コントローラ802が適切な動作モードで動作することを可能にする。ハーベスト情報は、所定のスケジュールに基づいて、作業者によって手動でトリガされるか、またはコントローラ902から受信されたデータに基づいてコントローラ802によって自動的に検出され得る。所与の槽内の所定数のコントローラ307が、感知できるほどの電流308を測定していないことを動作データ906が示すときに、ハーベストイベントが自動的に検出される。例えば、ハーベストイベント中、コントローラ307の1/3は、感知できるほどの電流308が関連するスイッチを通って流れていないことを示す状態データを槽コントローラ802に提供する。他の実施形態では、ハーベストイベントを検出するために他の比が使用される。
【0086】
[0098]いくつかの実施形態では、コントローラ306または307は、スイッチ302を通る時間平均電流を制御することによって電流を「チョーク」するように構成される。第1の方法は、電流のパルス幅変調を伴い、ここでは、コントローラ306または307は、開放期間のための開状態と閉鎖期間のための閉状態との間でスイッチを切り替える信号を生成する。次いで、時間平均電流が、相対的な開放期間および閉鎖期間によって決定される。
【0087】
[0099]電流をチョークするためのさらなる方法は、スイッチの導電率を制御することを伴う。例えば、スイッチ302が、単独であるかスイッチ302’の一部であるかにかかわらず、1つまたは複数のMOSFETデバイスを含む場合、コントローラ306または307は、導電率がMOSFETのゲート電圧にほぼ線形に依存する線形領域でMOSFET(複数可)を動作させることができる。この領域では、スイッチ302の導電率は、ゲート電圧を増加させることによって増加させることができ、スイッチ302の導電率は、ゲート電圧を減少させることによって減少させることができる。スイッチ302の導電率を制御することによって、電流308も制御され得ることは理解されるであろう。
【0088】
[0100]さらなる実施形態では、コントローラ306または307は、所定の時間に低電力状態を採用するように構成される。低電力状態では、コントローラ306または307は、スイッチ302を通る電流308を監視しない。したがって、コントローラ306または307は、本質的に、上述の通常動作が行われる電力供給状態と、電流監視が行われない低電力状態との間を循環する。この循環により、デバイス300または300’によって消費される電力が低減される。
【0089】
[0101]一実施形態では、コントローラ306または307は、スイッチを非導電性の開状態から導電性の閉状態に切り替えるリセット信号を生成するように構成される。リセット信号は、槽コントローラ802からの再構成信号810において受信された命令に応答して生成される。槽コントローラ802は、プラントコントローラ902から槽構成データ904において命令を受信することに応答して、作業者によって手動でトリガされた信号から、または前のトグル信号がスイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えてからの経過時間に基づいて、これらの命令を生成し得る。
【0090】
[0102]さらなる実施形態が、
図10にデバイス1000として概略的に示されている。デバイス1000は、本明細書は上述のスイッチ302によって表される短絡軽減デバイス300または300’と、支持翼112を通してプレート106の電極116を支持するための上部接点1002とを含む。下部接点1004は、カソードバスバー102の電気接点304上に載置され、電気絶縁層1006によって上部接点1002から分離される。スイッチ302は、電流308が、電極116から、上部接点1002を通り、デバイス300または300’のスイッチ302を通り、下部接点1004を通って、カソードバスバー102に流れるように、導電性の閉状態にあるときに上部層1002を下部層1004に電気的に接続している。
【0091】
[0103]デバイス1000は、デバイス300または300’が支持翼112およびカソードバスバー102から水平方向に変位することを可能にする。水平方向の変位は、デバイス300または300’を既存の電解槽に後付けすることを容易にし、スイッチ302からの熱放散を促進し、電極116が槽101内に配置されるときのスイッチ302への潜在的な衝撃損傷を防止するというさらなる利点を有する。
【0092】
[0104]いくつかの実施形態では、電気絶縁層1006は間隙であり、他の実施形態では、層1006は、ポリマー/耐火材料などの固体絶縁材料である。
【0093】
[0105]図11は、デバイス300または300’のコントローラ306または307によって実行される方法1100を例示する。ステップ1102において、コントローラ306または307は、電流308を示す電流信号を受信する。次いで、ステップ1104において、電流308が所定のしきい値と比較される。電流308がしきい値を超える場合、コントローラ306または307は、スイッチ302を導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号309を生成するステップ1106を実行する。電流308がしきい値を超えない場合、コントローラ306または307は、ステップ1102から方法1100を繰り返し、電流信号の受信を継続する。
【0094】
[0106]図12は、槽コントローラ802によって実行される方法1200を例示する。槽コントローラ802は、ステップ1202でデータを受信する。このデータは、コントローラ307がその関連するスイッチを非導電性の開状態に切り替えたことを示すトグルデータ604であり得るか、または槽構成データ904であり得る。
【0095】
[0107]次いで、ステップ1204において、受信されたデータを分析して、ハーベストイベントが発生していることをそれが示すかどうかを決定する。ハーベストイベントが発生している場合、構成信号810がコントローラ307に送信されるステップ1206が開始される。
【0096】
[0108]データがハーベストイベントを示さない場合、ステップ1208でデータが分析されて、スイッチが切り替えられているかどうかを決定し、切り替えられている場合、しきい値数のスイッチが非導電性の開状態に切り替えられているかどうかを決定する。しきい値数のスイッチが非導電性の開状態に切り替えられている場合、構成信号810がコントローラ307に送信されるステップ1206が開始される。しきい値数が非導電性の開状態に切り替えられていない場合、槽コントローラ802は、ステップ1202に戻り、データの受信を継続する。
【0097】
コントローラの自己較正
[0109]いくつかの実施形態では、コントローラ306および307、槽コントローラ802、ならびにプラントコントローラ902は、通常の動作電流を決定することによって自己較正するように構成され得る。
【0098】
[0110]自己較正プロセスは、非ハーベスト期間から過去の電流データを記録および/またはそれにアクセスすることを含む。過去の電流データの統計的分散が所定のしきい値を下回る場合、通常の動作電流は、過去の電流データの統計的平均であると決定される。過去の電流データの統計的分散が所定のしきい値を上回る場合、コントローラは、この分散がしきい値を下回るまで電流データを記録し続ける。分散が較正期間内にしきい値より下に減少しなかった場合、それは不安定な動作を示す。この場合、不安定な電流源を調査するために、人間のオペレータにエラーを知らせる。
【0099】
[0111]当業者であれば、本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多数の変形および/または修正を行うことができることを理解されるであろう。したがって、本実施形態は、すべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと見なされるべきである。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[書類名]特許請求の範囲
[C1]
電気接点および電極を有する電解槽において使用するための短絡軽減デバイスであって、
減衰負荷と並列に接続され、前記接点と前記電極との間に配置されたスイッチと、ここで、前記スイッチは、前記接点と前記電極との間に電気伝導経路を選択的に提供するように構成され、前記スイッチは、並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備える、
前記スイッチを通る電流を監視するように、および、前記電流が第1のしきい値を超えるとき、前記スイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成するように、前記スイッチに動作可能に関連付けられたスイッチコントローラと
を備えるデバイス。
[C2]
前記MOSFETと並列に接続されたフェイルセーフ経路をさらに備える、C1に記載のデバイス。
[C3]
前記フェイルセーフ経路は、閉導電状態にある前記複数のMOSFETの電気抵抗よりも大きい電気抵抗を有する導体を含む、C2に記載のデバイス。
[C4]
前記コントローラは、少なくとも第1の動作モードおよび第2の動作モードで動作するようにさらに構成され、前記第1の動作モードは第1のしきい値を有し、前記第2の動作モードは第2のしきい値を有する、C1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
[C5]
前記コントローラは、前記スイッチを通る前記電流が所定の期間にわたって前記第1または第2のしきい値を超えるとき、前記トグル信号を生成するように構成される、C1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
[C6]
前記コントローラは、前記電流を示すデータを送信するように構成される、C1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
[C7]
前記コントローラは、前記スイッチの状態を示す状態データを送信するように構成される、C1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
[C8]
前記コントローラは、受信された構成信号に応答して動作モードを採用するように構成される、C1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
[C9]
前記構成信号は、C6に記載の第2のデバイスの第2のコントローラから受信された状態データである、C8に記載のデバイス。
[C10]
前記構成信号は、槽コントローラから受信される、C8に記載のデバイス。
[C11]
前記槽コントローラは、複数のコントローラと双方向通信し、前記複数のコントローラの各々からそれぞれ受信された状態データに応答して前記構成信号を生成する、C10に記載のデバイス。
[C12]
前記コントローラは、低電力状態において前記コントローラが前記スイッチを通る前記電流を監視しないように、所定の時間に前記低電力状態を採用するように構成される、C1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
[C13]
前記コントローラは、前記スイッチを前記非導電性の開状態から前記導電性の閉状態に切り替えるリセット信号を生成するように構成される、C1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
[C14]
前記コントローラは、前記スイッチを通る前記時間平均電流を制御するように構成される、C1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
[C15]
前記コントローラは、前記時間平均電流が相対的な開放期間および閉鎖期間によって決定されるように、開放期間のための前記非導電性の開状態と閉鎖期間のための前記導電性の閉状態との間で前記スイッチを切り替えるためのさらなる信号を周期的に生成することによって、前記スイッチを通る前記時間平均電流を制御するように構成される、C14に記載のデバイス。
[C16]
前記電極を支持するための上部接点と、
前記電気接点上に載置され、電気絶縁層によって前記上部接点から分離された下部接点と
を備え、
ここにおいて、前記スイッチの第1の端部は、前記上部接点と電気的に接触し、前記スイッチの第2の端部は、前記下部接点と電気的に接触し、前記スイッチは、前記上部接点および前記下部接点から変位している、
C1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
[C17]
前記電解槽は、電解採取槽または電解精製槽または電着槽である、C1から16のいずれか一項に記載のデバイス。
[C18]
前記第1のしきい値電流は、通常の動作電流の所定の第1の倍数である、C1から17のいずれか一項に記載のデバイス。
[C19]
前記所定の第1の倍数は1.5~3である、C18に記載のデバイス。
[C20]
第2のしきい値電流は、通常の動作電流の所定の第2の倍数である、C4から19のいずれか一項に記載のデバイス。
[C21]
前記第2の倍数は2~3.5である、C20に記載のデバイス。
[C22]
電解槽における短絡を軽減するための、C1から21のいずれか一項に記載のデバイスを2つ以上備えるシステム。
[C23]
減衰負荷と並列に接続されたスイッチを有する短絡軽減デバイスによって実行される方法であって、前記スイッチは、並列に接続された複数の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を備え、電解槽において電気接点と電極との間に配置されており、前記方法は、
前記スイッチを通る電流を示す電流信号を受信することと、
前記電流が第1または第2のしきい値を超えることを前記電流信号が示すとき、前記スイッチを導電性の閉状態から非導電性の開状態に切り替えるためのトグル信号を生成することと
を含む方法。