(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】内燃機関のためのピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/00 20060101AFI20250310BHJP
F16J 1/04 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
F02F3/00 L
F16J1/04
(21)【出願番号】P 2021576670
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067834
(87)【国際公開番号】W WO2020260466
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】102019209248.9
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510330840
【氏名又は名称】フェデラル-モグル ニュルンベルク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ジルカー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シェーラー
(72)【発明者】
【氏名】オルガ・セラー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・ウンガーマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・メスケ
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525655(JP,A)
【文献】特開2010-164012(JP,A)
【文献】中国実用新案第204327307(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0216790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00
F16J 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのピストン(10)であって、シリンダまたはシリンダライナ内において支持するためのシャフト壁セクション(18)と、周方向に前記シャフト壁セクションに接続された少なくとも1つのベースサポート(20)であって、らせん
状に形成された少なくとも1つの輪郭を備えたベースサポート(20)と、を備え、
前記らせんは、1:10から1:1の
範囲の傾斜(k)を有し、
(r)を前記ベースサポートの円筒外側面の半径、(h)
をピッチとしたとき、前記傾斜(k)は、
【数1】
で表される、
ピストン(10)。
【請求項2】
前記ベースサポート(20)は、前記ピストン(10)の少なくとも圧力側に設けられている、請求項1に記載のピストン(10)。
【請求項3】
前記ベースサポート(20)は、少なくとも1つの前記シャフト壁セクション(18)の両側に設けられている、請求項1または2に記載のピストン(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記ベースサポートは、ピンボス端(28)の領域まで広がっている、請求項1から3のいずれか一項に記載のピストン(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ベースサポート(20)の径方向に測定された深さ(T)は、最下環状溝(16)の径方向に測定された深さと少なくとも同じである、および/または最大でも2倍の大きさである、請求項1から4のいずれか一項に記載のピストン(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの前記ベースサポート(20)は、前記シャフト壁セクション(18)を接続した接続壁(24)から離間されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のピストン(10)。
【請求項7】
前記シャフト壁セクション(18)と少なくとも1つの前記ベースサポート(20)との間の遷移部には、丸められたセクション(22)が設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載のピストン(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のためのピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のためのピストンは、100kW/lのオーダーになり得る特に顕著に高出力のガソリンエンジンの場合、極めて高荷重に曝される。これは、一方では120barの領域になり得る高い点火圧力に起因しており、他方では燃焼機関内に行き渡った極めて高い温度に起因している。特に、高荷重は、ピストンの圧力側、特にここではピストンの最下環状溝内のクランクドライブの運動学のために発生する。特に、「最大側方力」と記載され得る場合の荷重において、ピストンスカートは、環状領域を備えたピストンクラウンよりもより高弾性の態様で側方力に反応するので、高い引張応力が圧力側のピストンの最下環状溝内に生じる。さらに、慣性力によるピストンボスおよび他のエンジン部品の負荷を低く抑えるために、可能な限り軽量化する必要がある。このことは例えば、ピストンピンの径方向外側において、その軸方向に所謂ポケットを形成することにより達成されている。換言すると、支持シャフト壁セクションを接続した接続壁は、径方向内向きに後退している。
【0003】
従来技術からの多数のピストンは、このように設計されている。シャフトの壁セクションとポケットとの間には、丸みを帯びたセクションが頻繁に形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この背景に対抗して、本発明の目的は、ピストンの顕著な重量増加なしにピストンの特に最下溝における疲労強度を、特にここに生じる最大応力を減少させることにより保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このことは、請求項1に従ったピストンにより達成される。
【0006】
それによれば、ピストンは、シリンダまたはシリンダライナ内において支持するために使用されるシャフト壁セクションを備え、所謂ベースサポートは、周方向においてピストンクラウンに向かってシャフト壁セクションに対して接続され、ベースサポートは、らせんのセクションを形成した少なくとも1つの輪郭を備えている。換言すると、底端縁、換言するとピストンクランとは反対側を向いたベースサポートの端部と、最下環状溝と、の間の距離は、円筒の周囲に丸められた斜面に追従している。この底端縁は、ベースサポートの径方向の深さ全体にわたってほぼ同じであり得る。換言すると、ベースサポートを径方向に見ると、これは線として表示される。しかしながら、記載された輪郭は、ベースサポートの外側または内側に径方向にのみ存在し、ベースサポートの周囲の底部は、この端縁から下降または上昇し得る。デカルト座標では、らせんは以下のように表すことが可能である。
【0007】
【0008】
ここで、rは円筒の半径であり、hはねじピッチであり、tは曲線変数である。斜面kは、以下のように表される。
【0009】
【0010】
初期シミュレーションが示したように、これは最下ピストンリング溝内の応力を顕著に減少させることが可能である。これまで使用していたデザインと比較して、最大主応力は約30MPa減少されることが可能である。このことは、疲労強度を約25%改善する結果となる。さらに、一般的なピストンの場合において、重量増加はたったの約2gであることが示された。したがって、比較的軽量且つ同時に強固なピストンを構成する目的は、本発明により有利な方法において達成されることが可能である。したがって、ベースサポートは、ピストンクラウンのための有利なサポートを確実にしている。
【0011】
有利に、本発明によるピストンの開発は、他の請求項に記載されている。
【0012】
記載されたデザインはピストンの両側に設けられ得るが、前述の負荷状況のために、本発明による輪郭は、少なくともピストンの圧力側に提供されることが好適である。
【0013】
本発明による輪郭は、シャフト壁セクションの両側に設けられて、これにより本発明の利点が総合的に利用され得ることも好適である。
【0014】
このことは好適な測定にも応用されて、これにより少なくとも1つのベースサポートが、シャフト壁セクションからピンボス端の領域まで展開されている。
【0015】
初期シミュレーションは、本発明によるらせんの傾斜が少なくとも1:10、最大でも1:1とするべきであることを示した。今のところ、約1:2の数値が好適である。
【0016】
本発明により設計されたベースサポートは、径方向において測定された深さを有し、この深さは多かれ少なかれ、ピストンの最下環状溝の同じ方向において測定された深さと好適に同じである。このことは、ピストンの環状溝により弱められた領域の低応力サポートを特に確実に達成することが可能である。記載された深さは、ピストンリング溝の深さの2倍までとされることが可能であり、通常のガソリンエンジンピストンの場合、記載された深さは約6mmとされ得る。
【0017】
径方向内側に配置された、記載されたベースサポートは、シャフト壁セクションを接続した接続壁であり、軽量化の観点において、ここに空間が設けられるか、または換言すると、少なくとも1つのベースサポートが、接続壁から径方向に離間されることが好適である。したがって、ここに残ったものは「ポケット」であり、これは軽量化のために有利である。
【0018】
ノッチ効果を回避するために、丸められたセクションが、シャフト壁セクションと少なくとも1つのベースカバーとの間の遷移部に好適に設けられている。
【0019】
以下において、本発明の好適な実施形態の例が、図を参照してより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明によるピストンの側面を示した図である。
【
図2】本発明によるピストンの底面を示した図である。
【
図3】記載されたらせんを伴った、本発明によるピストンの底面を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に見られているように、本発明によるピストンは、
図1によると自身の上側のピストンクラウン12、最下環状溝16を備えた環状領域14、および
図1全体において1つのみが見えている、複数のシャフト壁セクション18を備えている。シャフト壁セクション18は、周方向に測定した場合、多かれ少なかれ一定の幅である。例示的に示された実施形態においては、その幅は、底側、すなわちピストンクラウン12から離れた側に向かってわずかに広がったピストンストローク(
図1の垂直軸)に沿って、多かれ少なかれ一定である。
【0022】
本発明によれば、所謂ベースサポート20は、周方向において図示された圧力側シャフト壁セクション18の両側を接続しており、このベースサポートは、図示されたように鏡面対称となるように形成されている。
図1は、ベースサポート20の底側の輪郭を傾斜面として示しているが、
図3は、この輪郭がらせんに従うことを示している。詳細な記載は、
図3に関連して以下に提供されている。
図1を参照すると、シャフト壁セクション18からベースサポート20への遷移部は、丸められたセクション22の形状に構成されていることが再度留意されるべきである。
【0023】
これに加えて、
図2は、ベースサポート20の径方向において測定された深さTを示している。接続壁24はピストンピン軸の方向において幾分広がっているが、各ベースサポート20が、シャフト壁セクションを接続した接続壁24から離間されていることも示されている。結果的に、軽量化に有利なポケット26は、それらの間に残存している。
【0024】
ここで、
図3はベースサポート20の輪郭を詳細に示している。これは他側のベースサポートにも当てはまり、反対のらせん構造があることが留意されるべきである。
図3に示されたらせん構造は、正として記載され得る。換言すると、x軸がy軸上に仮想的に入れ替えられた場合、らせんはz軸の方向に移動する。
【0025】
図3にも見られているように、ベースサポートは、丸められたセクション22の領域内を起点としてシャフト壁セクション18に向かって(矢印B)、多かれ少なかれピンボス端28の領域内(矢印A)で終端となっている。図示された事例において、傾斜は約1:2であり、深さT(
図2参照)は約6mmであり、最下環状溝16の深さのおおよそ2倍の深さである。
【0026】
少なくとも1つのベースサポートの径方向外側は、シャフト壁セクションと同じ円筒外側面上にあり得ることも、言及されるべきである。しかしながら、ベースサポートは、シリンダ(ライナ)壁の径方向支持を必要としないので、ベースサポートは、シャフト壁セクションに対して径方向に後退され得る。
【符号の説明】
【0027】
10 ・・・ピストン
12 ・・・ピストンクラウン
14 ・・・環状領域
16 ・・・最下環状溝
18 ・・・シャフト壁セクション
20 ・・・ベースサポート
22 ・・・丸められたセクション
24 ・・・接続壁
26 ・・・ポケット
28 ・・・ピンボス端