(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】電力系統監視装置、電力系統監視装置用コンピュータプログラムおよび電力系統監視方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20250310BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301K
(21)【出願番号】P 2022012949
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚志
(72)【発明者】
【氏名】下尾 高廣
(72)【発明者】
【氏名】平戸 康太
(72)【発明者】
【氏名】中村 正
(72)【発明者】
【氏名】舘小路 公士
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-010544(JP,A)
【文献】特開2018-182822(JP,A)
【文献】特開2018-033282(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備により発電された電力を供給する電力系統の、予め定められた範囲内に配置された1つ以上の送配電設備にかかる全ての前記送配電設備が上限温度以下となる潮流値であり、少なくとも1つの前記送配電設備の、予め定められた定格値以上となる前記潮流値を最大潮流値として算出する潮流値計算部と、
前記潮流値計算部により算出された前記最大潮流値にかかる電力が供給された場合における前記上限温度に対する余裕度を、前記送配電設備ごとに算出する余裕度計算部と、
前記余裕度計算部により算出された前記送配電設備ごとの前記余裕度を出力する出力部と、
を有する電力系統監視装置。
【請求項2】
前記余裕度計算部は、前記余裕度を余裕度の大きさに応じ色分けする、
請求項1に記載の電力系統監視装置。
【請求項3】
潮流値計算部は、予め定められた一定の時間後に、前記送配電設備の前記上限温度に達する前記潮流値を最大潮流値として算出する、
請求項1または2に記載の電力系統監視装置。
【請求項4】
前記送配電設備の少なくとも1つが、前記上限温度に達すると予測される場合、潮流計算の結果に基づいて上限温度に達しない前記発電設備の出力を算出し、発電計画データを作成する発電計画作成部を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力系統監視装置。
【請求項5】
前記発電計画作成部により算出された前記発電設備の出力が供給された場合、前記送配電設備の少なくとも1つが、前記上限温度以上になる予測される場合、
アラームを出力する、
請求項4に記載の電力系統監視装置。
【請求項6】
前記発電計画作成部は、前記余裕度が予め定められた余裕度以下である前記送配電設備をボトルネックとして示す、
請求項4または5に記載の電力系統監視装置。
【請求項7】
前記発電計画作成部は、送配電ロスの最小化、発電設備の発電コストの最小化、再生エネルギー発電装置の出力の最大化のうち、少なくとも1つを目的関数として、潮流計算の結果に基づいて上限温度に達しない前記発電設備の出力を算出し発電計画データを作成する、
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の電力系統監視装置。
【請求項8】
前記発電計画作成部は、過渡安定度、電圧安定度、周波数安定性のうち、少なくとも1つの限界値に基づき、潮流計算の結果に基づいて上限温度に達しない前記発電設備の出力を算出し発電計画データを作成する、
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の電力系統監視装置。
【請求項9】
前記電力系統の予め定められた全ての前記範囲内において、少なくとも1つの前記送配電設備の前記余裕度がゼロ未満になると判断した場合、前記発電計画作成部により作成された発電計画データを修正し、潮流計算により前記発電設備の出力電力を制限させる計画修正データを作成する計画修正部を有する、
請求項4乃至8のいずれか1項に記載の電力系統監視装置。
【請求項10】
前記計画修正部は、前記電力系統の故障による運用回線の減少による潮流増加に起因して、少なくとも1つの前記送配電設備の前記余裕度がゼロ未満になると判断した場合に、発電計画データを修正し、前記発電設備の出力電力を制限させる計画修正データを作成する、
請求項9に記載の電力系統監視装置。
【請求項11】
前記潮流値計算部は、受信した気象情報および需給計画に基づき、
前記需給計画の時間帯に対応した時間帯ごとに、予め定められた前記電力系統の範囲ごとの前記送配電設備について前記最大潮流値を算出する、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電力系統監視装置。
【請求項12】
前記潮流値計算部は、受信した前記気象情報に基づき、気象予測値が予め定められた信頼度以上となる時間帯を判別し、前記時間帯にかかる前記最大潮流値を示す、
請求項11に記載の電力系統監視装置。
【請求項13】
コンピュータに、
発電設備により発電された電力を供給する電力系統の、予め定められた範囲内に配置された1つ以上の送配電設備にかかる全ての前記送配電設備が上限温度以下となる潮流値であり、少なくとも1つの前記送配電設備の、予め定められた定格値以上となる前記潮流値を最大潮流値として算出させる潮流値計算ステップと、
前記潮流値計算ステップにより算出された前記最大潮流値にかかる電力が供給された場合における前記上限温度に対する余裕度を、前記送配電設備ごとに算出させる余裕度計算ステップと、を有し、
前記余裕度計算ステップにより算出された前記送配電設備ごとの前記余裕度を出力させる、
電力系統監視装置用コンピュータプログラム。
【請求項14】
前記潮流値計算ステップは、受信した気象情報および需給計画に基づき、
前記需給計画の時間帯に対応した時間帯ごとに、予め定められた前記電力系統の範囲ごとの前記送配電設備について前記最大潮流値を算出する、
請求項13に記載の電力系統監視装置用コンピュータプログラム。
【請求項15】
発電設備により発電された電力を供給する電力系統の、予め定められた範囲内に配置された1つ以上の送配電設備にかかる全ての前記送配電設備が上限温度以下となる潮流値であり、少なくとも1つの前記送配電設備の、予め定められた定格値以上となる前記潮流値を最大潮流値として算出する潮流値計算手順と、
前記潮流値計算手順により算出された前記最大潮流値にかかる電力が供給された場合における前記上限温度に対する余裕度を、前記送配電設備ごとに算出する余裕度計算手順と、を有し
前記余裕度計算手順により算出された前記送配電設備ごとの前記余裕度を出力させる、
電力系統監視方法。
【請求項16】
前記潮流値計算手順は、受信した気象情報および需給計画に基づき、
前記需給計画の時間帯に対応した時間帯ごとに、予め定められた前記電力系統の範囲ごとの前記送配電設備について前記最大潮流値を算出する、
請求項15に記載の電力系統監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統における電力の送配電を行う複数の電力機器を監視する電力系統監視装置、電力系統監視装置用コンピュータプログラムおよび電力系統監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統において、電力の発電を行う電源装置は、電力の送配電を行う複数の送配電設備に接続される。複数の電源装置から出力された電力は、送配電設備を介し負荷に供給される。電力系統にかかる電力は、複数の送配電設備が適切に監視されることにより、電源装置が適切に制御され効率よく供給されることが望ましい。電力系統に設けられた複数の送配電設備の監視を行う電力系統監視装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のとおり、複数の電源装置から出力された電力は、電力の送配電を行う複数の送配電設備を介し負荷に供給される。電源装置は、水力、火力、原子力または風力や太陽光などの再生可能エネルギー等により発電を行う。送配電設備は、変圧器、送電線等により構成される。電力系統にかかる電力は、複数の電源装置が適切に制御されることにより調整される。電源装置は、負荷にて消費される電力の大きさに応じ、変圧器、送電線等の送配電設備の有する定格値以下にて発電を行うように制御されていた。定格値は、一定の温度において送配電設備が送配電することができる値に、更にマージンを与えた値として定義される。
【0005】
しかしながら、昨今の電力自由化により風力発電装置や太陽光発電装置などの再生可能エネルギー発電装置等により発電された電力が、既設の送配電設備を介し送配電される場合も多くなった。このため、水力、火力、原子力等により発電を行う発電機にかかる電源装置から出力される電力、または再生可能エネルギー発電装置等の電源装置から出力される電力が、変圧器、送電線等の送配電設備の有する定格値により制限されてしまう場合があるとの問題点があった。
【0006】
昨今、既存の電力会社とは異なる、一般の企業により電力の発電が行われる場合も多くなってきている。このため、定義された定格値に制限されることなく、既設の送配電設備を用いて安全に、より多くの電力を送配電することが望まれる場合もある。一方、定義された定格値に制限されることなく、送配電設備を用いてより多くの電力を送配電した場合、安全性が損なわれる恐れがある。
【0007】
本実施形態は、送配電設備の定義された定格値より大きい電力を、既設の送配電設備により安全に送配電するように電力系統を監視する電力系統監視装置、電力系統監視装置用コンピュータプログラムおよび電力系統監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の電力系統監視装置は、次のような特徴を有する。
(1)発電設備により発電された電力を供給する電力系統の、予め定められた範囲内に配置された1つ以上の送配電設備にかかる全ての前記送配電設備が上限温度以下となる潮流値であり、少なくとも1つの前記送配電設備の、予め定められた定格値以上となる前記潮流値を最大潮流値として算出する潮流値計算部を有する。
(2)前記潮流値計算部により算出された前記最大潮流値にかかる電力が供給された場合における前記上限温度に対する余裕度を、前記送配電設備ごとに算出する余裕度計算部を有する。
(3)前記余裕度計算部により算出された前記送配電設備ごとの前記余裕度を出力する出力部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかる電力系統監視装置を用いたシステムの全体構成を示す図
【
図2】第1実施形態にかかる電力系統監視装置の構成を示す図
【
図3】第1実施形態にかかる電力系統監視装置のリアルタイムによる電力系統監視にかかる動作のプログラムを示すフロー図
【
図4】第1実施形態にかかる電力系統監視装置により作成される余裕度データを示す図
【
図5】第1実施形態にかかる色分けされて余裕度が示された系統の例を示す図
【
図6】第1実施形態にかかるボトルネックが示された系統の例を示す図
【
図7】第1実施形態にかかる電力系統監視装置の需給予測による電力系統監視にかかる動作のプログラムを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1~2を参照して本実施形態の一例として、電力系統監視装置1について説明する。なお、本実施形態において、同一構成の装置や部材が複数ある場合にはそれらについて同一の番号を付して説明を行い、また、同一構成の個々の装置や部材についてそれぞれを説明する場合に、共通する番号にアルファベットの添え字を付けることで区別する。
【0011】
図1に、本実施形態にかかる電力系統監視装置を用いたシステムの全体構成を示す。本システムは、電力系統監視装置1、電力制御装置8、電力系統3を有する。後述する発電機4a、4b、再生可能エネルギー発電装置5を総称して発電設備と呼ぶ場合がある。また、後述する送信部12と表示部15を総称して出力部と呼ぶ場合がある。
【0012】
(電力系統3)
電力系統3は、電力を供給する電力供給網である。電力系統3は、発電機4、再生可能エネルギー発電装置5、変圧器6、送電線7を有する。電力系統3は、一例として電力系統3a、3b、3c、3d、3eにより構成される。電力系統3は、遮断器、断路器、調相器等を有していてもよい。
【0013】
電力系統3aは、発電機4a、変圧器6a、送電線7aにより構成される。発電機4aは、水力、火力、原子力等により発電を行う設備である。発電機4aは、出力電力を電力制御装置8により制御される。変圧器6aは、発電機4aから出力された電力の変圧を行う。変圧器6aは、電圧切替用のタップを有する。送電線7aは、変圧器6aにより変圧された電力を送電する。
【0014】
同様に電力系統3bは、発電機4b、変圧器6b、送電線7bにより構成される。発電機4bにより発電された電力は、変圧器6bにより変圧され送電線7bにより送電される。
【0015】
電力系統3cは、再生可能エネルギー発電装置5、変圧器6c、送電線7cにより構成される。再生可能エネルギー発電装置5は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより発電を行う装置である。再生可能エネルギー発電装置5は、出力電力を電力制御装置8により制御される。
【0016】
電力系統3dは、変圧器6d、送電線7dにより構成される。変圧器6dは、電力系統3a、電力系統3b、電力系統3cから供給された電力を変圧する。送電線7dは、変圧器6aにより変圧された電力を送電する。
【0017】
同様に電力系統3eは、変圧器6e、送電線7eにより構成される。電力系統3a、電力系統3b、電力系統3cから供給された電力は、変圧器6eにより変圧され送電線7eにより送電される。
【0018】
電力系統3a~3eの各変圧器6a~6eには、それぞれ測定装置61a~61eが設けられる。測定装置61は、変圧器6における現在の温度、電力、電圧、電流、周波数を測定する。測定装置61は、温度、電力、電圧、電流、周波数の測定回路および送受信回路により構成される。測定された温度、電力、電圧、電流、周波数にかかるデータは、測定データD11として通信線91を介し電力系統監視装置1に送信される。
【0019】
電力系統3a~3eの各送電線7a~7eには、それぞれ測定装置71a~71eが設けられる。測定装置71は、送電線7における現在の温度、電力、電圧、電流、周波数を測定する。測定装置71は、温度、電力、電圧、電流、周波数の測定回路および送受信回路により構成される。測定された温度、電力、電圧、電流、周波数にかかるデータは、通信線91を介し電力系統監視装置1に送信される。
【0020】
(電力系統監視装置1)
図2に、本実施形態にかかる電力系統監視装置1の構成を示す。電力系統監視装置1は、定義された定格値に制限されることなく、既設の送配電設備の上昇温度が予め定められた限界値以下となる発電機4または再生可能エネルギー発電装置5より発電される発電量を算出する装置である。
【0021】
電力系統監視装置1は、通信線91を介して電力系統3に、通信線93を介して電力制御装置8に接続される。電力系統監視装置1は、コンピュータ等により構成される。電力系統監視装置1は、電力系統3の監視または制御を行う事業者の事務所等に設置される。
【0022】
電力系統監視装置1は、受信部11、送信部12、演算部13、記憶部14、表示部15を有する。
【0023】
受信部11は、通信回路により構成される。受信部11は、通信線91を介し電力系統3の測定装置61、測定装置71に接続される。通信線91は、有線または無線により通信を行う専用線、インターネット回線、電話回線等であってよい。受信部11は、測定装置61、測定装置71から測定データD11を受信する。測定データD11は、測定装置61により測定された変圧器6の温度、電力、電圧、電流、周波数にかかるデータ、および測定装置71により測定された送電線7の温度、電力、電圧、電流、周波数にかかるデータである。
【0024】
また受信部11は、気象予報サービスにかかるサイト(図中不指示)から気象情報D12を受信する。気象情報D12は、現在および未来に予測される気象にかかる温度、風速、日射量等にかかる情報である。気象情報D12は、気象等のサイトからインターネット回線を介し送信されるものであってよい。
【0025】
さらに受信部11は、外部装置(図中不指示)から需給計画データD13を受信する。需給計画データD13は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5にかかる、例えば30分毎または5分ごとの発電計画にかかるデータである。需給計画データD13は、電力制御装置8から送信されるものであってもよい。
【0026】
受信部11は、演算部13に接続される。受信部11は、演算部13により通信動作を制御される。受信部11は、測定データD11、気象情報D12、需給計画データD13を演算部13に送信する。
【0027】
送信部12は、通信回路により構成される。送信部12は、通信線93を介し、電力制御装置8に接続される。通信線93は、有線または無線により通信を行う専用線、インターネット回線、電話回線等であってよい。また、送信部12は、演算部13に接続される。送信部12は、演算部13により通信動作を制御される。
【0028】
送信部12は、演算部13により作成された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を電力制御装置8に送信する。
【0029】
表示部15は、液晶表示器、プラズマ表示器等により構成される。表示部15は、演算部13により作成された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を表示する。送信部12と表示部15を総称して出力部と呼ぶ場合がある。
【0030】
演算部13は、コンピュータにより構成される。演算部13は、電力系統監視装置1の内部において受信部11、送信部12、記憶部14、表示部15に接続される。演算部13は、潮流値計算部21、余裕度計算部22、発電計画作成部23、計画修正部24、制御指令作成部25を有する。潮流値計算部21、余裕度計算部22、発電計画作成部23、計画修正部24、制御指令作成部25は、コンピュータ内の演算部または、ソフトウェアモジュールにより構成される。
【0031】
潮流値計算部21、余裕度計算部22、発電計画作成部23、計画修正部24、制御指令作成部25が、コンピュータプログラムによるソフトウェアモジュールにて構成される場合、潮流値計算部21を調整値計算ステップと、余裕度計算部22を余裕度計算ステップと、発電計画作成部23を発電計画作成ステップと、計画修正部24を計画修正ステップと、制御指令作成部25を制御指令作成ステップと呼ぶ場合がある。
【0032】
潮流値計算部21は、測定データD11および後述する定格データF1に基づき潮流値データD21を作成する。測定データD11は、変圧器6、送電線7における現在の温度、電力、電圧、電流、周波数にかかるデータである。定格データF1は、変圧器6、送電線7の定格電力および上限温度に関するデータである。定格データF1は、記憶部14に予め設定され記憶される。
【0033】
潮流値データD21は、変圧器6、送電線7の定格電力に制限されることなく、変圧器6、送電線7の温度が予め定められた上限温度以下となる電力が算出されることにより作成される。作成された潮流値データD21は、記憶部14に記憶される。
【0034】
余裕度計算部22は、潮流値計算部21により算出された潮流値データD21に基づき、電力系統3a~3eの各変圧器6a~6e、および各送電線7a~7eごとの余裕度を算出し、余裕度データD22を作成する。余裕度データD22は、潮流値データD21にかかる電力を電力系統3a~3eにて送電した場合の、各変圧器6a~6e、および各送電線7a~7eごとの余裕度を示す。作成された余裕度データD22は、記憶部14に記憶される。
【0035】
発電計画作成部23は、需給計画データD13、潮流値計算部21により作成された潮流値データD21、余裕度計算部22により作成された余裕度データD22に基づき、発電計画データD23を作成する。需給計画データD13は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5にかかる、現在または未来における例えば30分毎または5分ごとの発電計画にかかるデータである。
【0036】
潮流値データD21、余裕度データD22に基づき、変圧器6、送電線7の温度が上限温度以下となる電力が算出され、需給計画データD13が修正されることにより発電計画データD23が作成される。作成された発電計画データD23は、記憶部14に記憶される。
【0037】
計画修正部24は、気象情報D12、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23に基づき、計画修正データD24を作成する。
【0038】
電力系統3における事故の発生、再生可能エネルギー発電装置5の出力増加などによる電流の上昇、天候の急変等により変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以上になると予測される場合、計画修正部24は、気象情報D12に基づき変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以下となる電力を再度算出する。再度算出された電力に基づき、発電計画データD23が修正され計画修正データD24が作成される。作成された計画修正データD24は、記憶部14に記憶される。
【0039】
制御指令作成部25は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23または計画修正部24により作成された計画修正データD24に基づき、制御指令データD25を作成する。
【0040】
制御指令データD25は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23または計画修正部24により作成された計画修正データD24にかかる電力が、電力系統3a~3eにおいて供給されるための制御を示すデータである。制御指令データD25は、例えば発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の発電量の制御を指示する。また、電力系統3a~3eにおける電流の遮断を判断する保護リレー(図中不示)の遮断電流値の変更を指示するものであってもよい。作成された制御指令データD25は、記憶部14に記憶される。
【0041】
記憶部14は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体にて構成される。記憶部14は、演算部13に接続される。記憶部14は、演算部13によりデータの書き込み、読出しが制御される。記憶部14は、予め設定され定格データF1を記憶する。定格データF1は、変圧器6、送電線7の定格電力および上限温度に関するデータである。
【0042】
また、記憶部14は、潮流値計算部21により作成された潮流値データD21、余裕度計算部22により作成された余裕度データD22、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23、計画修正部24により作成された計画修正データD24、制御指令作成部25により作成された制御指令データD25を記憶する。
【0043】
(電力制御装置8)
電力制御装置8は、電力系統3の実際の制御を行う装置である。電力制御装置8は、通信線92を介して電力系統3に、通信線93を介して電力系統監視装置1に接続される。電力制御装置8は、コンピュータ等により構成される。電力制御装置8は、電力系統3の監視または制御を行う一般送配電事業者の変電所などに設置される。電力制御装置8は、中央制御装置と呼ばれる場合がある。
【0044】
電力制御装置8は、需給計画データD13に基づき例えば発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の発電量の制御を指示する。
【0045】
また、電力制御装置8は、電力系統監視装置1から潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を受信する。電力制御装置8は、潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を参照して電力系統3の制御を行う。
【0046】
以上が、電力系統監視装置1の構成である。
【0047】
[1-2.作用]
次に、
図1~4に基づき本実施形態の電力系統監視装置1の動作の概要を説明する。以下では、一例として電力系統監視装置1は、
図1に示す電力系統3を監視するものとするが、電力系統監視装置1により監視される電力系統はこれに限られず任意の構成であってよい。
【0048】
電力系統監視装置1の各部において以下のデータが受信、送信される。
測定データD11
気象情報D12
需給計画データD13
潮流値データD21
余裕度データD22
発電計画データD23
計画修正データD24
制御指令データD25
定格データF1
【0049】
電力系統監視装置1は、予め定められた電力系統3の範囲内に配置された1つ以上の送配電設備にかかる潮流値であって、範囲内に配置された全ての送配電設備が上限温度以下となる潮流値であり、少なくとも1つの送配電設備の、予め定められた電気量の上限値を示す定格値以上となる潮流値を算出し、潮流値にかかる電力が供給された場合における上限温度に対する余裕度を、送配電設備ごとに算出し出力する。電力系統監視装置1は、いわゆるダイナミックレーティングにかかる技術を応用して、送配電設備にかかる潮流値を計算する。
【0050】
上記において、予め定められた電力系統3の範囲とは電力系統3a~3eに相当する。送配電設備は変圧器6、送電線7に、発電設備は発電機4、再生可能エネルギー発電装置5に相当する。気象情報D12は、現在および未来に予測される気象にかかる温度、風速、日射量等にかかる情報である。
【0051】
電力系統監視装置1は、予め定められた電気量の上限値を示す定格値に制限されることなく、気象状況に対応し既設の送配電設備の上昇温度が予め定められた上限温度以下となる発電機4または再生可能エネルギー発電装置5より発電される発電量を算出する。定格値は、一定の温度において送配電設備が送配電することができる値に、更にマージンを与えた値として定義される。
【0052】
電力系統監視装置1の動作を、リアルタイムによる電力系統監視にかかる動作、需給予測による電力系統監視にかかる動作に分けて以下に説明する。リアルタイムによる電力系統監視にかかる動作、需給予測による電力系統監視にかかる動作は、電力系統監視装置1の表示部15の画面上において、作業者により選択される。
【0053】
[リアルタイムによる電力系統監視にかかる動作]
電力系統監視装置1の運転が開始されることにより、受信部11は、測定データD11、気象情報D12、需給計画データD13を逐次受信する。受信部11は、受信した測定データD11、気象情報D12、需給計画データD13を演算部13に送信する。
【0054】
演算部13のプログラムのフローを
図3に示す。演算部13は、例えば1分、5分、30分等の周期にて測定データD11、需給計画データD13を受信部11から受信する。演算部13は、気象情報D12を受信してもよい。また、演算部13は、定格データF1を記憶部14から受信する(ステップS301)。定格データF1は、変圧器6、送電線7の定格電力および上限温度に関するデータである。
【0055】
演算部13の潮流値計算部21は、電力系統3a~3eのそれぞれにおいて許容することができる最大潮流値を算出する(ステップS302)。最大潮流値は、変化する気象に対応するため、例えば1分、5分、30分等の周期にて算出される。また最大潮流値は、予め定められた電力系統3の範囲である電力系統3a~3eごとに算出される。最大潮流値は、電力系統3a~3eが許容することができる最大電力または、最大電流である。算出された最大潮流値は、潮流値データD21として記憶部14に記憶される。
【0056】
電力系統3a~3eに配置された送配電設備である変圧器6、送電線7は、定格データF1により定格電力が定義される。定格データF1にかかる定格電力は、一定の温度において送配電設備が送配電することができる値に、更にマージンを与えた値として定義される。したがって変圧器6、送電線7は、周囲の温度等の条件により、定格電力以上の電力を許容することができる。許容される定格電力以上の電力を最大潮流値と呼ぶこととする。
【0057】
例えば電力系統3aに配置された変圧器6a、送電線7aは、変圧器6a、送電線7aの温度が定格データF1にかかる上限温度以下である最大潮流値にかかる電力を許容することができる。変圧器6a、送電線7aの上限温度は、それぞれを構成する部材のうち、最小の上限温度を有する部材により決定される。例えば変圧器6a、送電線7aの上限温度は、構成部品である絶縁材料の上限温度に基づき決定される。
【0058】
電力系統3aの最大潮流値は、変圧器6a、送電線7aの現在の温度と上限温度との差分に応じ算出される。また、変圧器6a、送電線7aの温度は、変圧器6a、送電線7aを取り囲む周囲の温度(気象にかかる温度)、風速、日射量等に基づき変動する。例えば送電線7の上限温度と最大潮流の関係は(式1)に示すとおりとなる。(式1)に基づき、上限温度を入力すると、想定する気象条件に見合った最大潮流値が算出される。(式1)は熱流入項と熱流出項が均衡した平衡点における式(定常状態の式)であるが、平衡点に達する手前で熱流入項と熱流出項が釣り合わない状態で用いられる微分方程式(過渡状態の式)を用いてもよい。
【数1】
・・・・・(式1)
【0059】
潮流値計算部21は、気象情報D12にかかる現在の温度、風速、日射量等に関する情報、定格データF1にかかる変圧器6a、送電線7aの上限温度、測定データD11にかかる変圧器6a、送電線7aの現在の温度に基づき、変圧器6a、送電線7aの両者が上限温度以下となる潮流値であり、変圧器6a、送電線7aの少なくとも一方が定格値以上となる潮流値を最大潮流値として算出する。
【0060】
最大潮流値は、定格データF1にかかる定格電力に制限されることなく算出される。演算部13の潮流値計算部21は、時々刻々変化する気象に対応し、例えば1分、5分、30分等の周期にて、電力系統3a~3eごとの最大潮流値の算出を行う。
【0061】
また、最大潮流値は、予め定められた一定の時間後に、変圧器6aまたは送電線7aの上限温度に達する潮流値として算出されるようにしてもよい。潮流値計算部21は、例えば、発電計画の時間帯に対応する時間である1分、5分または30分後に、変圧器6aまたは送電線7aの上限温度に達する潮流値を最大潮流値として算出するようにしてもよい。
【0062】
変圧器6aまたは送電線7aは、定格電力を超える潮流値にかかる電力が供給された場合であっても、上限温度に達するまでに時間を要する。したがって予め定められた時間に対応し、定格電力を超える潮流値を最大潮流値とすることができる。最大潮流値をこのように算出することにより、より大きい電力を電力系統3a~3eに供給することができる。
【0063】
演算部13の余裕度計算部22は、算出された最大潮流値にかかる電力が供給された場合における上限温度に対する余裕度を、送配電設備ごとに算出する(ステップS303)。余裕度は、例えば電力系統3a~3eの変圧器6、送電線7ごとに算出される。算出された余裕度は、余裕度データD22として記憶部14に記憶される。
【0064】
余裕度は、算出された最大潮流値にかかる電力が供給された場合における送配電設備の温度と上限温度との差分に基づき、送配電設備が上限温度に達するまで、更に許容することができる電力または電流の量として算出される。例えば、電力系統3aにおける最大潮流値にかかる電力が供給された場合、
図4に示すように変圧器6aの温度が上限温度95℃に達する場合、変圧器6aの余裕度はゼロとなる。一方、最大潮流値にかかる電力が供給された場合、
図4に示すように送電線7aの予測温度が80℃である場合、上限温度である90℃に対し余裕があるため、送電線7aの余裕度は例えば100MWとなる。
【0065】
余裕度計算部22は、電力系統3a~3eの変圧器6、送電線7ごと余裕度を、色分けして余裕度データD22を作成する。例えば、最大潮流値にかかる電力が供給された場合、定格データF1にかかる定格電力以下である場合は青色にて、定格電力以上であるが上限温度未満となる場合は橙色にて、上限温度以上となる場合は赤色にて送配電設備の余裕度が示される。余裕度データD22の一例を
図4に示す。また
図5に示すように、電力系統3上に余裕度が色分けして示されるようにしてもよい。
【0066】
演算部13の発電計画作成部23は、需給計画データD13、潮流値計算部21により作成された潮流値データD21、余裕度計算部22により作成された余裕度データD22に基づき発電計画データD23を作成する(ステップS304)。作成された発電計画データD23は、記憶部14に記憶される。
【0067】
発電計画データD23は、発電設備により発電される、例えば5分後までの電力の発電量を計画するデータである。需給計画データD13は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5にかかる、現在または未来における例えば5分ごとの発電計画にかかるデータである。
【0068】
潮流値データD21、余裕度データD22に基づき、変圧器6、送電線7の温度が上限温度以下となる電力が算出され、需給計画データD13が修正されることにより発電計画データD23が作成される。
【0069】
発電計画データD23は、需給計画データD13にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5による発電量が調整され作成される。変圧器6、送電線7が上限温度に達すると予測される場合、つまり変圧器6または送電線7の余裕度がゼロ未満である場合、潮流計算により発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の最適出力を算出し、発電計画データD23が作成される。
【0070】
発電計画データD23は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を上げること、下げることを含めて作成される。発電計画データD23にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の発電量は、例えば、電力系統3における全体の電力損失が最小となるように潮流計算により算出される。発電計画データD23にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の発電量は、電力系統3における電力コストが最小となるように算出されるようにしてもよい。発電計画データD23にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の発電量は、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度に優先して判断され作成される。または、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が、変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度と比較し、それらの中で最小となる余裕度から判断して作成してもよい。
【0071】
発電計画データD23にかかる電力が発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5から供給された場合、電力系統3a~3eにおいて余裕度が低い変圧器6、送電線7により電力の供給が制限される。発電計画作成部23は、
図6に示すように発電計画データD23において、余裕度が低いことに起因して電力の供給が制限される変圧器6、送電線7をボトルネックとして示すようにしてもよい。発電計画作成部23は、余裕度が予め定められた余裕度以下である変圧器6、送電線7をボトルネックとして示す。
【0072】
計画修正部24は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23を修正し、計画修正データD24を作成する(ステップS305)。計画修正部24は、気象情報D12に基づき発電計画データD23を修正し、計画修正データD24を作成するようにしてもよい。作成された計画修正データD24は、記憶部14に記憶される。
【0073】
事故の発生、天候の急変等により変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以上になると予測される場合、計画修正部24は、測定データD11、気象情報D12に基づき変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以下となる電力を再度算出する。
【0074】
再度算出された電力に基づき、発電計画データD23が修正され計画修正データD24が作成される。また、変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以上になると予測される場合、表示部15および送信部12からアラームが出力される。表示部15が、警報ランプ等の表示による警報装置や音声による警報装置を備えるように構成し、これらの警報装置によりアラームが出力されるようにしてもよい。
【0075】
事故の発生、天候の急変等により電力系統3全体の電力供給量が制限される場合がある。例えば電力系統3において電力系統3bが事故により給電することができなくなった場合、電力系統3全体の電力供給量を維持するため、電力系統3a、3cの電力供給量を増加させる場合がある。この場合、計画修正データD24は、発電機4aおよび再生可能エネルギー発電装置5による発電量が調整され作成される。
【0076】
計画修正部24は、電力系統3a、3cの電力供給量を増加させた場合、電力系統3a、3cの変圧器6または送電線7の余裕度がゼロ未満になるかの判断を行う。変圧器6または送電線7の余裕度が電力系統3a、3cの両方においてゼロ未満になる場合、計画修正部24は、潮流計算により発電機4a、再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を算出し、発電機4a、再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を制限させる計画修正データD24を作成する。電力系統3a、3cの変圧器6または送電線7が余裕度ゼロに相当する電力を供給するように、計画修正データD24は作成される。
【0077】
計画修正データD24は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を上げること、下げることを含めて作成される。計画修正データD24は、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度に優先して判断され作成される。または、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が、変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度と比較し、それらの中で最小となる余裕度から判断して作成してもよい。
【0078】
制御指令作成部25は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23または計画修正部24により作成された計画修正データD24に基づき、制御指令データD25を作成する(ステップS306)。作成された制御指令データD25は、記憶部14に記憶される。
【0079】
制御指令データD25は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23または計画修正部24により作成された計画修正データD24にかかる電力が、電力系統3a~3eにおいて供給されるための制御を示すデータである。制御指令データD25は、例えば発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の発電量の制御を指示する。また、電力系統3a~3eにおける電流の遮断を判断する保護リレー(図中不示)の遮断電流値の変更を指示するものであってもよい。
【0080】
送信部12は、演算部13により作成された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を電力制御装置8に送信する。
【0081】
表示部15は、演算部13により作成された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を表示する。
【0082】
電力制御装置8は、電力系統監視装置1の送信部12から送信された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を受信する。電力制御装置8は、潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を参照して電力系統3の制御を行う。
【0083】
電力制御装置8は、制御指令データD25に基づき、例えば発電機4a、4b、再生可能エネルギー発電装置5の発電量の制御を指示する。
【0084】
以上がリアルタイムによる電力系統監視にかかる動作の概要である。
【0085】
[需給予測による電力系統監視にかかる動作]
電力系統監視装置1の運転が開始されることにより、受信部11は、測定データD11、気象情報D12、需給計画データD13を逐次受信する。受信部11は、受信した測定データD11、気象情報D12、需給計画データD13を演算部13に送信する。
【0086】
需給計画データD13は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5にかかる、需給予測により計画された未来における例えば30分や1時間ごと、または1日、1週間、1か月ごとの発電計画にかかるデータである。以下では一例として発電計画は、30分ごとに作成されているものとする。需給計画データD13は、電力制御装置8から送信されるものであってもよい。
【0087】
演算部13のプログラムのフローを
図7に示す。演算部13は、例えば1分、5分、30分等の周期にて測定データD11、気象情報D12、需給計画データD13を受信部11から受信する。また、演算部13は、定格データF1を記憶部14から受信する(ステップS701)。定格データF1は、変圧器6、送電線7の定格電力および上限温度に関するデータである。
【0088】
演算部13の潮流値計算部21は、時々刻々変化する気象の状況に応じ、電力系統3a~3eのそれぞれにおいて許容することができる最大潮流値を算出する(ステップS702)。最大潮流値は、変化する気象に対応するため、需給計画データD13にかかる発電計画の時間帯に対応し、例えば未来における30分の時間帯ごとに算出される。また最大潮流値は、予め定められた電力系統3の範囲である電力系統3a~3eごとに算出される。最大潮流値は、電力系統3a~3eが許容することができる最大電力または、最大電流である。算出された最大潮流値は、潮流値データD21として記憶部14に記憶される。
【0089】
電力系統3a~3eに配置された送配電設備である変圧器6、送電線7は、定格データF1により定格電力が定義される。定格データF1にかかる定格電力は、一定の温度において送配電設備が送配電することができる値に、更にマージンを与えた値として定義される。したがって変圧器6、送電線7は、周囲の温度等の条件により、定格電力以上の電力を許容することができる。許容される定格電力以上の電力を最大潮流値と呼ぶこととする。
【0090】
例えば電力系統3aに配置された変圧器6a、送電線7aは、変圧器6a、送電線7aの温度が定格データF1にかかる上限温度以下である最大潮流値にかかる電力を許容することができる。変圧器6a、送電線7aの上限温度は、それぞれを構成する部材のうち、最小の上限温度を有する部材により決定される。例えば変圧器6a、送電線7aの上限温度は、構成部品である絶縁材料の上限温度に基づき決定される。
【0091】
電力系統3aの最大潮流値は、変圧器6a、送電線7aの現在の温度と上限温度との差分に応じ算出される。また、変圧器6a、送電線7aの温度は、変圧器6a、送電線7aを取り囲む周囲の温度(気象にかかる温度)、 風速、日射量等に基づき変動する。例えば送電線7の上限温度と最大潮流の関係は(式2)に示すとおりとなる。(式2)に基づき、上限温度を入力すると、想定する気象条件に見合った最大潮流値が算出される。(式2)は熱流入項と熱流出項が均衡した平衡点における式(定常状態の式)であるが、平衡点に達する手前で熱流入項と熱流出項が釣り合わない状態で用いられる微分方程式(過渡状態の式)を用いてもよい。
【数2】
・・・・・(式2)
【0092】
潮流値計算部21は、気象情報D12により発電計画の時間帯に対応した未来における30分の時間帯ごとの温度、風速、日射量等の気象予測に関する情報を受信する。潮流値計算部21は、気象情報D12に基づき、発電計画の時間帯に対応した未来における30分の時間帯ごとの変圧器6a、送電線7aの温度を予測する。
【0093】
潮流値計算部21は、予測された変圧器6a、送電線7aの温度、定格データF1にかかる変圧器6a、送電線7aの上限温度に基づき、最大潮流値を算出する。変圧器6a、送電線7aの両者が上限温度以下となる潮流値であり、変圧器6a、送電線7aの少なくとも一方が定格値以上となる潮流値が最大潮流値として算出される。最大潮流値は、発電計画の時間帯に対応した未来における30分の時間帯ごとに算出される。
【0094】
最大潮流値は、定格データF1にかかる定格電力に制限されることなく算出される。演算部13の潮流値計算部21は、時々刻々変化する気象に対応し、例えば30分の時間帯ごとの、電力系統3a~3eごとの最大潮流値の算出を行う。
【0095】
潮流値計算部21は、気象情報D12に基づき、予め定められた信頼度以上である気象予測値を有する時間帯を潮流値データD21に示す。潮流値計算部21は、気象予測にかかる信頼度が高い時間帯がある場合、潮流値データD21に気象予測が高信頼である旨を示す。気象予測の誤差の統計により気象予測値の信頼度を求めることにより、気象予測にかかる信頼性が高いことが判断される。予め定められた信頼度以上である気象予測値を有する時間帯の気象予測値をより積極的に使用する。気象予測が高信頼である時間帯の潮流値データD21は、色分け等により示される。
【0096】
潮流値計算部21は、受信した気象情報D12に基づき、気象予測値が予め定められた信頼度以上となる時間帯を判別し、当該時間帯に対して最大潮流値を示す。
【0097】
また、最大潮流値は、予め定められた一定の時間後に、変圧器6aまたは送電線7aの上限温度に達する潮流値として算出されるようにしてもよい。潮流値計算部21は、例えば、発電計画の時間帯に対応する時間である30分後に、変圧器6aまたは送電線7aの上限温度に達する潮流値を最大潮流値として算出するようにしてもよい。
【0098】
変圧器6aまたは送電線7aは、定格電力を超える潮流値にかかる電力が供給された場合であっても、上限温度に達するまでに時間を要する。したがって予め定められた時間に対応し、定格電力を超える潮流値を最大潮流値とすることができる。最大潮流値をこのように算出することにより、より大きい電力を電力系統3a~3eに供給することができる。
【0099】
演算部13の余裕度計算部22は、算出された最大潮流値にかかる電力が供給された場合における上限温度に対する余裕度を、送配電設備ごとに算出する(ステップS703)。余裕度は、例えば電力系統3a~3eの変圧器6、送電線7ごとに算出される。余裕度は、発電計画の時間帯に対応した未来における30分の時間帯ごとに算出される。算出された余裕度は、余裕度データD22として記憶部14に記憶される。
【0100】
余裕度は、算出された最大潮流値にかかる電力が供給された場合における送配電設備の温度と上限温度との差分に基づき、送配電設備が上限温度に達するまで、更に許容することができる電力または電流の量として算出される。例えば、電力系統3aにおける最大潮流値にかかる電力が供給された場合、
図4に示すように変圧器6aの温度が上限温度95℃に達する場合、変圧器6aの余裕度はゼロとなる。一方、最大潮流値にかかる電力が供給された場合、
図4に示すように送電線7aの予測温度が80℃である場合、上限温度である90℃に対し余裕があるため、送電線7aの余裕度は例えば100MWとなる。
【0101】
余裕度計算部22は、電力系統3a~3eの変圧器6、送電線7ごと余裕度を、色分けして余裕度データD22を作成する。例えば、最大潮流値にかかる電力が供給された場合、定格データF1にかかる定格電力以下である場合は青色にて、定格電力以上であるが上限温度未満となる場合は橙色にて、上限温度以上となる場合は赤色にて送配電設備の余裕度が示される。発電計画の時間帯に対応した30分ごとの余裕度データD22、余裕度が色分けして示された電力系統図が、作成される。余裕度データD22は、
図4に示すものと同様であり、余裕度が色分けして示された電力系統図は、
図5に示すものと同様である。
【0102】
演算部13の発電計画作成部23は、需給計画データD13、潮流値計算部21により作成された潮流値データD21、余裕度計算部22により作成された余裕度データD22に基づき発電計画データD23を作成する(ステップS704)。発電計画データD23は、需給計画データD13に対応した時間帯ごとに作成される。作成された発電計画データD23は、記憶部14に記憶される。
【0103】
発電計画データD23は、発電設備により発電される、例えば未来における30分ごとの電力の発電量を計画するデータである。需給計画データD13は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5にかかる、未来における例えば30分ごとの発電計画にかかるデータである。
【0104】
潮流値データD21、余裕度データD22に基づき、変圧器6、送電線7の温度が上限温度以下となる電力が算出され、需給計画データD13が修正されることにより発電計画データD23が作成される。
【0105】
発電計画データD23は、需給計画データD13にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5による発電量が調整され作成される。変圧器6、送電線7が上限温度に達すると予測される場合、つまり変圧器6または送電線7の余裕度がゼロ未満である場合、潮流計算により発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の最適出力を算出し、発電計画データD23が作成される。
【0106】
発電計画データD23は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を上げること、下げることを含めて作成される。発電計画データD23にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の発電量は、電力系統3における全体の電力損失が最小となるように潮流計算により算出される。発電計画データD23にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の発電量は、電力系統3における電力コストが最小となるように算出されるようにしてもよい。発電計画データD23にかかる発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の発電量は、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度に優先して判断され作成される。または、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が、変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度と比較し、それらの中で最小となる余裕度から判断して作成してもよい。
【0107】
発電計画データD23にかかる電力が発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5から供給された場合、電力系統3a~3eにおいて余裕度が低い変圧器6、送電線7により電力の供給が制限される。発電計画作成部23は、
図6に示すように発電計画データD23において、余裕度が低いことに起因して電力の供給が制限される変圧器6、送電線7をボトルネックとして示すようにしてもよい。発電計画作成部23は、余裕度が予め定められた余裕度以下である変圧器6、送電線7をボトルネックとして示す。
【0108】
計画修正部24は、気象情報D12に基づき、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23を修正し、計画修正データD24を作成する(ステップS705)。計画修正データD24は、需給計画データD13に対応した時間帯ごとに作成される。作成された計画修正データD24は、記憶部14に記憶される。
【0109】
電力系統3の工事やメンテナンス、気象予測の変更等により変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以上になると予測される場合、計画修正部24は、測定データD11、気象情報D12に基づき変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以下となる電力を再度算出する。
【0110】
再度算出された電力に基づき、発電計画データD23が修正され計画修正データD24が作成される。また、発電計画作成部23により算出された発電機4a、4b、再生可能エネルギー発電装置5の出力が供給された場合、変圧器6、送電線7の温度が定格データF1にかかる上限温度以上になると予測されるとき、表示部15および送信部12からアラームが出力される。表示部15が、警報ランプ等の表示による警報装置や音声による警報装置を備えるように構成し、これらの警報装置によりアラームが出力されるようにしてもよい。
【0111】
電力系統3の工事やメンテナンス、気象予測の変更等により電力系統3全体の電力供給量が制限される場合がある。例えば電力系統3において電力系統3bが工事やメンテナンスにより給電することができなくなった場合、電力系統3全体の電力供給量を維持するため、電力系統3a、3cの電力供給量を増加させる場合がある。この場合、計画修正データD24は、発電機4aおよび再生可能エネルギー発電装置5による発電量が調整され作成される。
【0112】
計画修正部24は、電力系統3a、3cの電力供給量を増加させた場合、電力系統3a、3cの変圧器6または送電線7の余裕度がゼロ未満になるかの判断を行う。変圧器6または送電線7の余裕度が電力系統3a、3cの両方においてゼロ未満になる場合、計画修正部24は、潮流計算により発電機4a、再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を算出し、発電機4a、再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を制限させる計画修正データD24を作成する。電力系統3a、3cの変圧器6または送電線7が余裕度ゼロに相当する電力を供給するように、計画修正データD24は作成される。
【0113】
計画修正データD24は、発電機4a、4bおよび再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を上げること、下げることを含めて作成される。計画修正データD24は、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度に優先して判断され作成される。または、電力系統3a~3eの過渡安定度、電圧安定度、周波数安定度が、変圧器6、送電線7の余裕度データD22にかかる余裕度と比較し、それらの中で最小となる余裕度から判断して作成してもよい。
【0114】
制御指令作成部25は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23または計画修正部24により作成された計画修正データD24に基づき、制御指令データD25を作成する(ステップS706)。制御指令データD25は、需給計画データD13に対応した時間帯ごとに作成される。作成された制御指令データD25は、記憶部14に記憶される。
【0115】
制御指令データD25は、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23または計画修正部24により作成された計画修正データD24にかかる電力が、電力系統3a~3eにおいて供給されるための制御を示すデータである。制御指令データD25は、例えば発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の発電量の制御を指示する。また、電力系統3a~3eにおける電流の遮断を判断する保護リレー(図中不示)の遮断電流値の変更を指示するものであってもよい。
【0116】
送信部12は、演算部13により作成された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を電力制御装置8に送信する。
【0117】
表示部15は、演算部13により作成された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を表示する。
【0118】
電力制御装置8は、電力系統監視装置1の送信部12から送信された潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を受信する。電力制御装置8は、潮流値データD21、余裕度データD22、発電計画データD23、計画修正データD24、制御指令データD25を参照して電力系統3の制御を行う。
【0119】
電力制御装置8は、制御指令データD25に基づき、例えば発電機4a、4b、再生可能エネルギー発電装置5の発電量の制御を指示する。
【0120】
以上が需給予測による電力系統監視にかかる動作の概要である。
【0121】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、電力系統監視装置1は、発電設備により発電された電力を供給する電力系統3の、予め定められた範囲内に配置された1つ以上の送配電設備である変圧器6、送電線7にかかる全ての送配電設備である変圧器6、送電線7が上限温度以下となる潮流値であり、少なくとも1つの送配電設備である変圧器6、送電線7の、予め定められた定格値以上となる潮流値を最大潮流値として算出する潮流値計算部21と、潮流値計算部21により算出された最大潮流値にかかる電力が供給された場合における上限温度に対する余裕度を、送配電設備である変圧器6、送電線7ごとに算出する余裕度計算部22と、余裕度計算部22により算出された送配電設備である変圧器6、送電線7ごとの余裕度を出力する出力部と、を有するので、送配電設備の定義された定格値より大きい電力を、既設の送配電設備により安全に送配電するように電力系統を監視する電力系統監視装置1を提供することができる。
【0122】
定義された定格値に制限されることなく、送配電設備を用いてより多くの電力を送配電した場合、安全性が損なわれる恐れがあるが、電力系統監視装置1は、送配電設備である変圧器6、送電線7が上限温度以下となる潮流値を最大潮流値として算出するので、安全に電力の送配電を行うことができる。
【0123】
電力系統監視装置1は、送配電設備である変圧器6、送電線7の、予め定められた定格値以上となる潮流値を最大潮流値として算出するので、送配電設備を用いてより多くの電力を送配電することができる。
【0124】
余裕度計算部22により算出された、送配電設備である変圧器6、送電線7ごとの余裕度が出力されるので、作業者は、余裕度を参照して電力制御装置8により、安全に電力系統3の制御を行うことができる。
【0125】
(2)本実施形態によれば、電力系統監視装置1の余裕度計算部22は、余裕度を余裕度の大きさに応じ色分けするので、作業者は、送配電設備である変圧器6、送電線7ごとの余裕度を容易に認識することができる。これにより、余裕度の誤認が軽減され、送配電設備の定義された定格値より大きい電力を、安全に送配電することができる。
【0126】
(3)本実施形態によれば、電力系統監視装置1の潮流値計算部21は、予め定められた一定の時間後に、送配電設備である変圧器6、送電線7の上限温度に達する潮流値を最大潮流値として算出するので、送配電設備である変圧器6、送電線7を用いてより大きい電力を送配電することができる。
【0127】
(4)本実施形態によれば、電力系統監視装置1は、送配電設備である変圧器6、送電線7の少なくとも1つが、上限温度に達すると予測される場合、潮流計算の結果に基づいて上限温度に達しない発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力を算出し、発電計画データD23を作成する発電計画作成部23を有するので、送配電設備である変圧器6、送電線7の上限温度を超えない適切な発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の発電量を算出することができる。これにより、送配電設備である変圧器6、送電線7の上限温度を超えない電力を、電力系統3に安全に送配電することができる。
【0128】
(5)本実施形態によれば、電力系統監視装置1は、発電計画作成部23により算出された発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力が供給された場合、送配電設備である変圧器6、送電線7の少なくとも1つが、上限温度以上になる予測される場合、アラームを出力するので、気象予測の変更等により送配電設備である変圧器6、送電線7が上限温度以上になることを容易に認識することができ、作業者は、電力制御装置8により、安全に電力系統3の制御を行うことができる。
【0129】
(6)本実施形態によれば、電力系統監視装置1の発電計画作成部23は、余裕度が予め定められた余裕度以下である送配電設備である変圧器6、送電線7をボトルネックとして示すので、作業者は、示されたボトルネックを参照して電力制御装置8により、安全に電力系統3の制御を行うことができる。
【0130】
(7)本実施形態によれば、電力系統監視装置1の計画修正部24は、電力系統3の予め定められた全ての範囲内である電力系統3a~3eにおいて、少なくとも1つの送配電設備である変圧器6、送電線7の余裕度がゼロ未満になると判断した場合、発電計画作成部23により作成された発電計画データD23を修正し、潮流計算により発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を制限させる計画修正データD24を作成する計画修正部24を有するので、作業者は、計画修正データD24を参照して電力制御装置8により、安全に電力系統3の制御を行うことができる。
【0131】
(8)本実施形態によれば、電力系統監視装置1の潮流値計算部21は、受信した気象情報D12および需給計画D13に基づき、需給計画D13の時間帯に対応した時間帯ごとに、予め定められた電力系統3の範囲である電力系統3a~3eごとの送配電設備である変圧器6、送電線7について最大潮流値を算出するので、未来における需給計画D13の時間帯の
最大潮流値が算出される。
【0132】
これにより、未来における需給計画D13の時間帯において、送配電設備の定義された定格値より大きい電力を、既設の送配電設備により安全に送配電するように電力系統を監視する電力系統監視装置1を提供することができる。
【0133】
定義された定格値に制限されることなく、送配電設備を用いてより多くの電力を送配電した場合、安全性が損なわれる恐れがあるが、電力系統監視装置1は、未来における需給計画D13の時間帯における送配電設備である変圧器6、送電線7が上限温度以下となる潮流値を最大潮流値として算出するので、安全に電力の送配電を行うことができる。
【0134】
電力系統監視装置1は、送配電設備である変圧器6、送電線7の、予め定められた定格値以上となる潮流値を、未来における需給計画D13の時間帯ごとに最大潮流値として算出するので、送配電設備を用いてより多くの電力を送配電することができる。
【0135】
(9)本実施形態によれば、電力系統監視装置1の潮流値計算部21は、受信した気象情報D12に基づき、気象予測値が予め定められた信頼度以上となる時間帯を判別し、当該時間帯にかかる最大潮流値を示すので、気象の信頼度に応じ、作業者は、電力制御装置8により、安全に電力系統3の制御を行うことができる。
【0136】
[2.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0137】
(1)上記実施形態では、電力系統3は、送配電設備として変圧器6、送電線7を備えるものとしたが、電力系統3が備える送配電設備は、変圧器6、送電線7に限られない。電力系統3は、送配電設備として任意の機器を備えるものであってよい。
【0138】
(2)上記実施形態では、電力系統3は、発電設備として発電機4、再生可能エネルギー発電装置5を備えるものとしたが、電力系統3が備える発電設備は、発電機4、再生可能エネルギー発電装置5に限られない。電力系統3は、発電設備として任意の機器を備えるものであってよい。
【0139】
(3)上記実施形態では、電力系統3は、予め定められた範囲として電力系統3a~3eを有するものとしたが、電力系統3における予め定められた範囲は、電力系統3a~3eに限られない。電力系統3における予め定められた範囲は、任意の数、任意の機器を備えた電力系統であってよい。
【0140】
発電計画作成部23は、送配電ロスの最小化、発電設備の発電コストの最小化、再生エネルギー発電装置の出力の最大化のうち、少なくとも1つを目的関数として、潮流計算の結果に基づいて上限温度に達しない発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力を算出し、発電計画データD23を作成するようにしてもよい。このように構成することで、送配電ロスの最小化、発電設備の発電コストの最小化、再生エネルギー発電装置の出力の最大化を含め、発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力が算出されるので、より安定した電力系統3の制御を行うことができる。
【0141】
発電計画作成部23は、過渡安定度、電圧安定度、周波数安定性のうち、少なくとも1つの限界値に基づき、潮流計算の結果に基づいて上限温度に達しない発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力を算出し、発電計画データD23を作成するようにしてもよい。このように構成することで、過渡安定度、電圧安定度、周波数安定性が確保された、発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力が算出されるので、より安定した電力系統3の制御を行うことができる。
【0142】
計画修正部24は、電力系統3の故障による運用回線の減少による潮流増加に起因して、少なくとも1つの送配電設備である変圧器6、送電線7の余裕度がゼロ未満になると判断した場合に、発電計画データを修正し、発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の出力電力を制限させる計画修正データを作成するようにしてもよい。このように構成することで、電力系統3の故障による運用回線の減少により潮流増加があった場合であっても、発電設備である発電機4、再生可能エネルギー発電装置5の適切な出力電力を算出することができ、安定した電力系統3の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0143】
1・・・電力系統監視装置
11・・・受信部
12・・・送信部
13・・・演算部
14・・・記憶部
15・・・表示部
21・・・調整値計算部
22・・・余裕度計算部
23・・・発電計画作成部
24・・・計画修正部
25・・・制御指令作成部
3・・・電力系統
4・・・発電機
5・・・再生可能エネルギー発電装置
6・・・変圧器
7・・・送電線
8・・・電力制御装置
61,71・・・測定装置
91,92,93・・・通信線