(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】高周波ヘテロダインミキサー
(51)【国際特許分類】
H03D 7/02 20060101AFI20250310BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H03D7/02 Z
H01P3/08 201
(21)【出願番号】P 2022523158
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 IB2020059777
(87)【国際公開番号】W WO2021074890
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-10-06
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522155095
【氏名又は名称】スルービジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マン,クリストファー マーク
(72)【発明者】
【氏名】マーシュ,シュテファン ポール
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-75109(JP,A)
【文献】特表2009-534975(JP,A)
【文献】特開2000-151228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03D 7/00-9/06
H01P 1/20-1/219
H01P 3/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロダインミキサー装置(100)であって、
第1の入力部(102)と、
第2の入力部(104)と、
出力部(106)と、
不必要な伝送および共振モードを抑制するための複数の抑制スロットおよび複数のフィルタ素子を含むサスペンデッド信号伝送素子(108)と、
前記サスペンデッド信号伝送素子の
第1の端部側に装着され、前記サスペンデッド信号伝送素子に電気的に結合されたダイオード回路(110)と、
を含
み、
前記第1の入力部は、局部発振器(LO)入力部であり、
前記第2の入力部は、無線周波数(RF)入力部であり、
前記出力部は、中間周波数(IF)信号出力部であり、
前記サスペンデッド信号伝送素子は、導波路素子であり、
前記無線周波数(RF)入力部は、前記第1の端部側に位置し、
前記中間周波数(IF)信号出力部は、前記サスペンデッド信号伝送素子の第2の端部側に位置し、
前記局部発振器(LO)入力部は、前記無線周波数(RF)入力部と、前記中間周波数(IF)信号出力部との間に位置する、
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記サスペンデッド信号伝送素子は、
第1および第2の表面を有する基板と、
前記第1の表面上の伝送線(202)と、を含み、
前記伝送線は、前記複数の抑制スロットおよび前記複数のフィルタ素子の1つ以上を含む、パターン形成された金属マイクロストリップ伝送線である、
装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の装置であって、
前記基板は石英基板である、
装置。
【請求項4】
請求項
2~
3のいずれかに記載の装置であって、
前記第1の入力部は、前記第2の入力部と前記出力部との間に位置し、
前記導波路素子は、前記ダイオード回路において生成された信号を、前記導波路素子の長手軸に沿って前記ダイオード回路から前記出力部に伝送するように、構成される、
装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の装置であって、
前記ダイオード回路において生成された前記信号は、IF信号である、
装置。
【請求項6】
請求項
2~
5のいずれかに記載の装置であって、
第1の装着シェルフ(120a)と、第2の装着シェルフ(120b)と、キャビティと、を有するハウジング(132)を、さらに含み、
前記サスペンデッド
信号伝送素子は、前記キャビティ内の前記第1および第2の装着シェルフ上に装着されて、前記サスペンデッド
信号伝送素子の少なくとも2つの側部において前記サスペンデッド
信号伝送素子と前記ハウジング間に空隙が形成される、装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の装置であって、
前記ハウジングは機械加工された金属でできており、前記空隙は前記サスペンデッド
信号伝送素子の4つの側部において形成される、
装置。
【請求項8】
請求項
6または
7に記載の装置であって、
前記サスペンデッド
信号伝送素子は、前記
ヘテロダインミキサー装置の長手方向に沿って前記第1および第2の装着シェルフの間に延びる、
装置。
【請求項9】
請求項
6~
8のいずれかに記載の装置であって、
前記ハウジングは、
前記第1の入力部に結合された第1のチャネルと、
前記第2の入力部に結合された第2のチャネルと、
前記出力部に結合された第3のチャネルと、をさらに含み、
前記第2のチャネルは、放射線検出器の1つ以上のフィードホーンを含み、
前記第1および第2のチャネルは、前記ハウジングの同じ平面に沿って設けられ、前記第3のチャネルは、前記平面に対して垂直の方向に沿って設けられる、
装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の装置であって、
前記放射線検出器はテラヘルツカメラである、
装置。
【請求項11】
請求項
6~
10のいずれかに記載の装置であって、
前記ダイオード回路は、逆平行構成の2つのショットキーダイオードを含む、
装置。
【請求項12】
請求項6~
11のいずれかに記載の装置であって、
前記サスペンデッド
信号伝送素子は、LO信号に対する第1のフィルタ素子と、RF信号に対する第2のフィルタ素子と、RF受信アンテナと、を含み、
前記第1のフィルタ素子、前記第2のフィルタ素子、および前記RF受信アンテナの各々は、前記複数の抑制スロットの1つ以上を含む、
装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の装置であって、
前記第1のフィルタ素子および前記第2のフィルタ素子の各々は、1つ以上のハンマーヘッドまたは半ハンマーヘッドフィルタコンポーネントを含み、
前記RF受信アンテナの前記複数の抑制スロットは、第1の幅の少なくとも1つのスロットと、第2の異なる幅の第2のスロットと、を含む、
装置。
【請求項14】
請求項
6~
13のいずれかに記載の装置であって、
前記パターン形成された金属マイクロストリップ伝送線は、前記ダイオード回路から1つ以上のフィルタ素子を通って前記出力部まで延びる中心線を含み、
前記第2の入力部において受信される信号の波長をλとしたとき、
前記中心線の幅は0.1λ以上であり、前記サスペンデッド
信号伝送素子の幅は約0.3λであり、前記基板の厚さは0.1λ以下である、
装置。
【請求項15】
請求項
14に記載の装置であって、
前記第2の入力部において受信される前記信号は、検出されたRF信号である、
装置。
【請求項16】
請求項
6~
15のいずれかに記載の装置であって、
前記ハウジング
の前記キャビティは、
前記第2の入力部において受信される信号の波長をλとしたとき、0.3~0.4λの横方向の幅を有し、
前記パターン形成されたマイクロストリップ伝送線は、前記キャビティ内に配置されて、偶伝送モードを前記ハウジング
の前記キャビティの側壁に結合する、
装置。
【請求項17】
請求項
6~
16のいずれかに記載の装置であって、
前記第2の入力部において受信される信号は、125GHz信号、250GHz信号、375GHz信号、および500GHz信号のうちの1つである、
装置。
【請求項18】
請求項
6~
17のいずれかに記載の装置であって、
前記出力部に接続された第1のワイヤと、
誘導的に調整済の容量性パッドおよび前記ハウジングの表面に接続された第2のワイヤと、
をさらに含む、装置。
【請求項19】
請求項
18に記載の装置であって、
前記ダイオード回路は、前記第2の入力部および前記誘導的に調整済の容量性パッドに装着される、
装置。
【請求項20】
請求項
6~
19のいずれかに記載の装置であって、
前記キャビティは、前記第1の入力部において局部発振器導波路経路によって2分割される、
装置。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれかに記載の装置であって、
前記第2の入力部は、広帯域RFアンテナを含む広帯域入力部である、
装置。
【請求項22】
請求項1~
21のいずれかに記載の装置であって、
前記複数の抑制スロットは、前記サスペンデッド
信号伝送素子の表面上に複数の間隙を含み、
前記複数の間隙の各々は、前記サスペンデッド
信号伝送素子の長手方向に沿って延在する、
装置。
【請求項23】
検出器(500、900)であって、
請求項1~
22のいずれかに記載の1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置と、
前記1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置(504)のうち少なくとも1つの
ヘテロダインミキサー
装置の
前記第2の入力部に結合された1つ以上のフィードホーン(502),と、
前記1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置のうち少なくとも1つの
ヘテロダインミキサー
装置の
前記第1の入力部に結合された局部発振器(508)と、
前記1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置のうち少なくとも1つの
ヘテロダインミキサー
装置の
前記出力部に結合された出力チャネルと、
前記出力チャネルに接続されて、前記1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置のうち少なくとも1つの
ヘテロダインミキサー
装置からの出力IF信号を処理する(506)ように構成された、低ノイズ増幅器、電力検出器、およびアナログ・デジタル変換器のうちの1つ以上と、
を含む、検出器。
【請求項24】
請求項
23に記載の検出器であって、
前記検出器はテラヘルツカメラであり、
前記出力チャネルは同軸線(118)を含む、
検出器。
【請求項25】
請求項
23または
24に記載の検出器であって、
前記1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置は、
250GHzにおいて最適化された複数の
ヘテロダインミキサー
装置と、
375GHzにおいて最適化された複数の
ヘテロダインミキサー
装置と、
を含む、検出器。
【請求項26】
請求項
23~
25のいずれかに記載の検出器であって、
前記1つ以上の
ヘテロダインミキサー
装置は、125GHzまたは250GHzにおいて最適化された複数の
ヘテロダインミキサー
装置を含む、
検出器。
【請求項27】
テラヘルツカメラ(500、900)であって、
IF出力部、LO入力部、およびRF入力部を含む1つ以上のミキサー(100、504、914)と、
前記1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのRF入力部に結合された1つ以上のフィードホーン(502、902、904、906)と、
前記1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのLO入力部に結合された局部発振器(508、926)と、
IF出力部(918)に接続されて、前記1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーからの出力IF信号を処理するように構成された、低ノイズ増幅器(920)、電力検出器(921)、およびアナログ・デジタル変換器(922)のうちの1つ以上と、
を含み、
前記1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーは、
不必要な伝送および共振モードを抑制するための複数の抑制スロットおよび複数のフィルタ素子を含むサスペンデッド信号伝送素子(108)と、
前記サスペンデッド信号伝送素子の
第1の端部に装着され、前記サスペンデッド信号伝送素子に電気的に結合されて、1つ以上の前記フィードホーンにおいて受信された放射線および前記局部発振器からの電力信号に基づいて、前記出力
IF信号を生成するように、構成されたダイオード回路(110)と、
をさらに含
み、
前記サスペンデッド信号伝送素子は、導波路素子であり、
前記RF入力部は、前記第1の端部側に位置し、
前記IF出力部は、前記サスペンデッド信号伝送素子の第2の端部側に位置し、
前記LO入力部は、前記RF入力部と、前記IF出力部との間に位置する、
カメラ。
【請求項28】
請求項
27に記載のカメラであって、
前記サスペンデッド信号伝送素子は、前記ダイオード回路において生成された前記
出力IF信号を、
前記サスペンデッド信号伝送素子の長手軸に沿って前記ダイオード回路から前記IF出力部に伝送するように、配置される、
カメラ。
【請求項29】
請求項
27または
28に記載のカメラであって、
前記IF出力部は同軸線を含む、
カメラ。
【請求項30】
請求項
27~
29のいずれかに記載のカメラであって、
前記受信された放射線は、約125GHz、250GHz、または375GHzを中心とする周波数帯域内に位置する放射線を含む、
カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は高周波エレクトロニクスおよび検出システムに関し、特にヘテロダインミキサーおよびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサーは、受信した信号の周波数とは異なる周波数を有する出力信号を生成するために用いることのできる電子デバイスである。例えば、ミキサーに2つの入力信号が適用される場合、ミキサーは、入力信号の和および差、またはその高調波の周波数を有する出力信号を生成してもよい。このように、ミキサーは、例えば後続処理を単純化するために、検出信号をより低い周波数にダウンコンバートするために用いることができる。
【0003】
特許文献1において示されるミキサーは、入力される無線周波数(RF:radio frequency)信号を受信し、局部発振器(LO:local oscillator)信号を受信し、ダイオードチップから中間周波数(IF:intermediate frequency)信号を生成する。この設計は、別個のRF、LO、およびIF回路経路と、変換効率の最適化かつ電力マッチングを行うためのワイヤベースのスタブチューナと、を使用する。
【0004】
しかし、広範囲の周波数にわたって(例えば、非常に高い周波数で)有効であり、かつ、例えば所与のシステムに対する信号波長の低減に伴って回路素子をスケーリングするときに必要とされるような小さいコンポーネントに対して用いられる製造およびアセンブリ技術に適合する、ミキサー設計が、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によると、ヘテロダインミキサーなどのミキサー装置が開示される。ミキサーは、局部発振器(LO)入力部などの第1の入力部と、無線周波数(RF)入力部などの第2の入力部と、例えば中間周波数(IF)信号出力部などの出力部と、複数の抑制スロットおよび複数のフィルタ素子を含むサスペンデッド信号伝送素子と、サスペンデッド信号伝送素子の上に装着されたダイオード回路とを含んでもよい。サスペンデッド信号伝送素子は、例えば導波路などであってもよい。特定の態様において、サスペンデッド信号伝送素子は、第1および第2の表面を有する基板と、第1の表面上の伝送線と、を含む導波路であり、基板は石英基板であり、伝送線はパターン形成された金属マイクロストリップ(ストリップラインとも呼ばれる)伝送線である。さらに、第1の入力部(例えば、LO)は第2の入力部(RF)と出力部(例えば、IF)との間に位置することができ、伝送素子は、ダイオード回路において生成されたIF信号を、伝送素子の長手軸に沿ってダイオード回路から出力部に伝送するように構成され得る。
【0007】
実施形態によると、ヘテロダインミキサー装置は導波路コンポーネントを有し、導波路コンポーネントは、フィルタリング手段と、伝送手段と、抑制手段と、を含む。導波路コンポーネントの表面上に1つ以上の半導体デバイスが装着され得る。
【0008】
実施形態によると、1つ以上のスロット付きフィルタ素子を有するミキサーが提供される。特定の態様において、フィルタのスロットは、自由空間波長と比べて比較的小さい。例えば、スロットはλ/10未満であってもよい。
【0009】
実施形態によると、第1の端部におけるRF信号入力部と、第2の端部におけるIF信号出力部と、2つの端部の間(例えば、中間)のLO信号入力部と、を有するミキサーが提供される。特定の態様において、第1の端部から第2の端部に導波路伝送素子が延びている。伝送素子は吊るされてもよく、複数の抑制スロットおよび複数のフィルタ素子を有してもよい。さらに、ミキサーの第1の端部においてRF信号入力部に近接してダイオード回路が装着されてもよい。いくつかの実施形態において、ダイオード回路において生成されたIF信号は、伝送素子に沿ってミキサーの他方の端部のIF信号出力部まで伝播する。ミキサーは、第1の軸に沿ったRFおよびLO入力チャネルと、第1の軸に対して垂直の第2の軸に沿ったIF出力部と、を伴って、検出器ブロック内に配置されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態によると、テラヘルツカメラなどの検出器が提供される。検出器は、例えば、1つ以上の本明細書に記載されるミキサーと、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーの(例えば、RF信号を提供する)入力部に結合された1つ以上のフィードホーンと、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーの別の入力部に結合された局部発振器と、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーの出力部(例えば、IF)に結合された同軸線(またはその他の伝送素子)と、同軸線に接続されて出力IF信号を処理するように構成された、低ノイズ増幅器(LNA:low noise amplifier)、電力検出器、およびアナログ・デジタル変換器(ADC:analog-to-digital converter)回路素子のうちの1つ以上と、を含んでもよい。検出器は、例えば、受信された入力放射線を発したオブジェクトまたはシーンの画像を生成するための、追加のフィルタリングおよび画像処理をさらに含んでもよい。特定の態様において、1つ以上のミキサーは、250GHzにおいて最適化された複数のミキサーと、375GHzにおいて最適化された複数のミキサーと、を含む。このミキサーのセットは、125GHzにおいて最適化された複数のミキサーをさらに含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態によると、ミキサーを動作させる方法が提供される。この方法は例えば、サスペンデッド伝送線素子と、複数の抑制素子と、ダイオード回路と、を有するミキサー装置の第1の入力部においてRF信号を受信するステップと、ミキサーに局部発振器信号を提供するステップと、ダイオード回路によって生成されたIF信号を出力するステップと、を含んでもよく、当該IF信号を出力するステップは、信号をミキサーの長手方向に沿って複数のフィルタを通して伝播させることを含む。
【0012】
いくつかの実施形態によると、本明細書に記載される1つ以上のミキサーなどのミキサー装置を製造する方法が提供される。この方法は機械加工するステップから始めてもよく、機械加工するステップは(1)第1の無線周波数チャネル部分と、第1の局部発振器部分と、第1の中間周波数チャネル部分と、第1のキャビティ部分と、第1の装着シェルフ部分と、第2の装着シェルフ部分と、を含む第1のハウジングコンポーネントを、機械加工するステップと、(2)第2の無線周波数チャネル部分と、第2の局部発振器部分と、第2の中間周波数チャネル部分と、第2のキャビティ部分と、第3の装着シェルフ部分と、第4の装着シェルフ部分と、を含む第2のハウジングコンポーネントを、機械加工するステップと、を含む。第1および第2の装着シェルフ部分、ならびに第3および第4の装着シェルフ部分の少なくとも一方上に導波路素子を装着することによって、第1および第2のキャビティ部分の少なくとも一方内に信号伝送素子(例えば、導波路)を吊るすことができる。加えて、第1のハウジングコンポーネントを第2のハウジングコンポーネントに取り付けて、ブロックを形成することができる。このブロックは、テラヘルツカメラなどの検出器の受信アレイブロックであってもよい。
【0013】
実施形態によると、ハウジングと、ハウジング内に装着された1つ以上のミキサーと、を含む検出器ブロックが提供される。ハウジングは、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのRF入力部に結合された1つ以上のフィードホーンと、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのLO入力部に結合された1つ以上の局部発振器チャネルと、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのIF出力部に結合された1つ以上の出力チャネルとを含んでもよい。1つ以上のミキサーは、ハウジングの第1および第2の装着構造部に装着されたサスペンデッド信号伝送素子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のフィードホーンおよび1つ以上の局部発振器チャネルはハウジングの第1の軸に沿って延び、1つ以上の出力チャネルはハウジングの第2の軸に沿って延び、第1の軸と第2の軸とは垂直である。加えて、サスペンデッド信号伝送素子は、第1および第2の表面を有する基板と、第1の表面上の伝送線と、を含んでもよく、伝送線は、1つ以上の抑制スロットおよびフィルタ素子を含むパターン形成された金属マイクロストリップ伝送線である。
【0014】
実施形態によると、テラヘルツカメラが提供され、このテラヘルツカメラは、IF出力部と、LO入力部と、RF入力部と、を含む1つ以上のミキサーと;1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのRF入力部に結合された1つ以上のフィードホーンと;1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーのLO入力部に結合された局部発振器と;IF出力部に接続されて1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーからの出力IF信号を処理するように構成された、低ノイズ増幅器、電力検出器、およびアナログ・デジタル変換器のうちの1つ以上と、を含む。加えて、1つ以上のミキサーのうち少なくとも1つのミキサーは、複数の抑制スロットおよびフィルタ素子を含むサスペンデッド信号伝送素子と、サスペンデッド信号伝送素子上に装着されて、1つ以上のフィードホーンにおいて受信された放射線および局部発振器からの電力信号に基づいてIF出力信号を生成するように構成されたダイオード回路と、をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、受信される放射線は、約125GHz、250GHz、または375GHzを中心とする帯域内にある。
【0015】
本明細書に組み込まれて本明細書の一部を形成する添付の図面は、さまざまな実施形態を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】いくつかの実施形態に係るミキサー装置を示す図である。
【
図3】
図3Aと
図3Bは、いくつかの実施形態に係るミキサー装置の詳細を示す図である。
【
図4】いくつかの実施形態に係るプロセスを示す流れ図である。
【
図5】いくつかの実施形態に係る検出システムを示す概略図である。
【
図7】いくつかの実施形態に係るプロセスを示す流れ図である。
【
図8】
図8Aと
図8Bは、いくつかの実施形態に係るマイクロストリップの場および電流を示す図である。
【
図9】実施形態に係る例えばテラヘルツカメラなどの検出システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
オブジェクトまたはシーンからのマイクロ波、ミリ波、およびサブミリ波信号の少なくとも1つを検知することは、極度に高感度の検出器を必要とし得る。例えば、受信信号の電力レベルはフェムトワットの範囲であり得る。
【0018】
例えば特定のマイクロ波周波数などのいくつかの場合には、低ノイズ増幅器を用いて信号の電力レベルを数桁(例えば、100~1000倍)増加させることができ、そして、その信号を処理して直流電圧を生成できる。次いで、この直流電圧をデジタル値に変換され得るように十分に強力になるまでさらに増幅させることができ、そして、そのデジタル値を用いて画像データを作成できる。例えばボロメータなどのその他の検出スキームも使用できる。ボロメータはシーンの電力レベルと正比例する電圧を生成する効果的な高感度の温度計である。電力レベルがかなり低いときは、(ボロメータに用いられる材料中の原子/分子の熱振動による電子のランダム運動によって引き起こされる)ボロメータ自体の固有ノイズに対して、弱い受信信号が強化されるように、ボロメータを通常20ケルビン未満の非常に低い温度に冷却する必要があることがある。この冷却要件は複雑な極低温技術を必要とする場合があり、コストと、体積と、質量とが大きく増加するだけでなく、大きな電力レベルも必要とする場合がある。よって、ボロメータに基づくイメージングに対する適用は制限されることがある。例えば、多くのセキュリティおよび材料検査の適用は、システムから高度の可搬性を必要とされ、そのためには低い質量と、体積と、電力とが必要とされる。
【0019】
例えばミリ波およびサブミリ波長などの、より高い周波数においては、リアルタイムでパッシブイメージングを得るのに十分高い性能で、高利得低ノイズ増幅器を室温にて動作させることは困難であり得る。加えて、周波数が増加するにつれて、増幅器ゲートの経路の長さも増加し、より小さいデバイスが必要とされる。これにより、抵抗が高くなり、信号の損失やノイズが増加され、利得が低減する。動作周波数が2倍に増加するとき、回路の面積は通常4倍減少し、その体積は8倍減少する。したがって、周波数がたとえわずかでも増加すると、製造およびアセンブリの課題が発生する可能性があり、それにより再現性および歩留まりが低下するためにコストが増加し得る。こうした周波数の増加によって、従来のアセンブリ器具の、高周波コンポーネントの機械加工にとっての実用性も低減し得る。
【0020】
例として、RF信号、LO信号、およびIF信号を分離するために用いられる石英フィルタは、250GHzを超える周波数において極度に小さくなり、取り扱いが困難となり得る。加えて、ヘテロダインミキサーの上述の3つの信号を「調整」するためにボンドワイヤが必要である場合、3つの信号すべてを最適化するためにボンドワイヤを正確に寸法決めする必要がある定型化した方法で、それらのワイヤおよび接続を実現することは困難になる。加えて、例えばIFフィルタなどのフィルタが、IF出力ピン上で実現される高および低4分の1波長インピーダンスセクションによって形成される場合、それはアセンブリを複雑にし、コストおよびアセンブリ時間を増加させ得る。
【0021】
実施形態によると、検出信号を、より低い(例えば、より低いマイクロ波)周波数にダウンコンバートして増幅および処理できるように、ミキサーを使用することによって、既存のシステムに伴う特定の問題が解決される。実施形態によると、ミキサーは最低限の量のLO信号電力を使用しながら、RF信号からIF信号への高いダウンコンバージョン効率を達成できる。特定の態様において、開示される設計は、IF出力部において反射される信号の量を最小化できる(すなわち、IFマッチングが良好である)。特定の態様において、良好なIFマッチングとは、LOポンプ条件下(すなわち、動作中)のミキサー回路が約50オームであることを意味し得る。場合によっては、これは1つ以上のIF増幅器と同じインピーダンスであってもよい。
【0022】
実施形態によると、回路の最適化のための範囲増加を提供しながら回路素子の互いに対する影響を分離することによって性能の改善を同時に提供する回路によって、より高い周波数における設計を定型化して製造およびアセンブルできる。フィルタ基板上の利用可能なサイズを増加させることによって、フィルタメタライゼーションのオーム抵抗が低減し得る。これにより、ひいてはより小さい回路において失われるであろう信号の量を低減できる。
【0023】
いくつかの実施形態において、簡略化した回路レイアウトおよびトポロジを提供するために、LOおよびRFマイクロストリップ接合部の両方において広帯域横導波路が用いられる。1つ以上のフィルタ回路の低インピーダンスセクションを有する空気サスペンデッドマイクロストリップフィルタトポロジとともに、奇モードおよび横モードの抑制スロットが使用され得る。特定の態様において、これは広いフィルタチャネルの使用を可能にし、マッチング許容度を緩和し、製造歩留まりを改善し、アセンブリの複雑さを低減する。
【0024】
マイクロストリップ回路構成を用いて、石英フィルタ回路を実現できる。実施形態によると、信号は基本次数の横電磁モード(Transverse Electromagnetic Mode)(TEM-00)で長手方向に伝播し、ここではすべての電力の伝達が長手方向であるにもかかわらず、長手方向には電磁場の成分が存在しない。TEM-00モードを伝播するために、いくつかの実施形態においては、マイクロストリップ構成はより高次のモードの伝播を防ぐために十分に小さい2つの導体からなる。これらの導体は、フィルタチャネルの外壁と、内部フィルタメタライゼーションとを含み得る。このジオメトリにおいて、各断面に対する有限要素解析と、それらの組み合わせとを用いて、場を算出できる。外部導体のサイズが信号波長に対して増加するとき、それは本明細書において強調される理由から望ましい場合もあるが、それによって例えば奇モード(例えば、TEM-01およびTEM-10)などのより高次のTEM-nnモードが生成され得る。信号がフィルタチャネルを伝播する際に、こうしたより高次の奇モードは、広帯域性能を低下させるフィルタ断面間のブロッキング共振を生じ得る。横方向の波伝播は、ミキサー回路素子間の電力伝達の損失ももたらし得る。さらに、可能な限り広い断面を用いることで、奇数次モードおよび横波伝播の可能性を増加させ得る。しかし、奇数次TEMモードおよび横波伝播を起こすためには、ジオメトリ(例えば、フィルタ導体ジオメトリ)を横切る側方表面電流が必要である。よって、例えば第1のフィルタ素子に長手方向のスロットを取り入れることによって、不必要なモードおよび伝播を抑制できる。
【0025】
いくつかの実施形態によると、広い長手方向フィルタの共通の中心線送りを用いることによって、3つの信号(LO、RF、IF)すべての抵抗損を最小化できる。加えて、物理的直流接地とともに用いられる容量性の誘導的に調整済の短絡パッドを使用することによって、3つの信号経路すべてを最短の長さで接地にロックすることができ、それによって回路全体の固有帯域幅が増加する。これにより、例えば各周波数に対する個別の調整ボンド/ワイヤの必要性がなくなり、抵抗損がさらに最小化される。
【0026】
ここで
図1を参照すると、いくつかの実施形態に係るミキサー100の断面図が提供される。ミキサー100は、例えば、スーパーヘテロダイン、高調波、およびサブハーモニックミキサーの少なくとも1つを含むヘテロダインミキサーであってもよい。いくつかの実施形態において、バランスドミキサー設計が用いられてもよい。
【0027】
ミキサー100は、例えばLO入力部などの第1の入力部102と、例えばRF入力部などの第2の入力部104と、例えばIF信号に対する出力部などの信号出力部106とを含んでもよい。実施形態によると、第1の入力部102は、ミキサー100にLO信号を送るLO導波路114を介した局部発振器からの信号を結合するように構成されたミキサー100の部分であってもよい。いくつかの実施形態において、導波路の高さ低減およびマッチング素子を用いて、ミキサーに対するLO信号のインピーダンスマッチングを行い得る。加えて、第2の入力部104は、RF導波路116を介した無線周波数ソースからの信号を結合するように構成されたミキサー100の部分であってもよい。特定の態様において、RF導波路116は、例えば高周波カメラの1つ以上のフィードホーンなどを介した検出システムの一部としてRF信号を送る。特定の態様において、入力部102、104はアンテナであってもよい。ミキサーの入力部および出力部に結合された機械加工された信号経路の例が
図6Aに提供される。導波路入力部およびアンテナによって示されているが、LO信号およびRF信号のうちの1つ以上は、例えば同軸線または同一平面線などのその他の伝送素子を用いてミキサー100に送られてもよい。
図1の例に示されるように、ミキサーの一方の端部にRF入力部が設けられ、反対の端部にIF出力部が設けられ、その間(例えば、ミキサーの中央部分)にLO入力部が設けられる。
【0028】
信号出力部106は、例えばダイオード回路110などのミキサー回路からの出力信号を提供する。いくつかの実施形態において、ダイオード回路110は、逆平行構成の2つのショットキー(Schottky)ダイオードを含む。しかし、他の回路が用いられてもよい。いくつかの実施形態において、ダイオード回路110からのIF信号は、例えば出力チャネル内の接続素子118などの同軸接続を介してミキサー100から出力される。代替的に、周波数に応じて導波路またはその他の有線接続の1つ以上を用いて、IF信号が出力され得る。方向矢印134によって示されるように、IF信号は、サスペンデッド伝送線素子108の長さに沿ってダイオード回路110から出力部106へと伝送され得る。この配置において、LO入力部102は、RF入力部104とIF信号出力部106との間に置かれる。実施形態によると、RF入力部104は、ミキサー100および導波路素子108の第1の末端部に置かれ、IF出力部106は、ミキサー100および導波路素子108の第2の末端部に置かれ、LO入力部102は、ミキサー100および導波路素子102の中央領域に置かれる。
【0029】
実施形態によると、ミキサー100は導波路であるサスペンデッド素子108を含み、これは基板マウント120aおよび120bを介してミキサーハウジング132のキャビティ内に装着される。このように、サスペンデッド導波路素子108の少なくとも2つの側部(例えば、上方および下方)に空隙130が設けられる。別の例として、
図2Aに示されるように、サスペンデッド導波路素子108は4つの側部のすべてに空隙130を有してもよい。1つ以上の基板マウントは、マウント120aと同様に平坦であってもよいし、マウント120bと同様に段があってもよい。導波路素子108は、基板部分と、パターン形成された金属表面部分とを含んでもよい。例えば、基板は、マイクロストリップ伝送線を形成するパターン形成された金層を有する石英(または、窒化アルミニウムなどの別の好適な誘電体)であってもよい。他の好適な伝送線材料は、その他の金属材料または別様の伝導性材料を含み得る。ダイオード回路110は、例えば少なくとも部分的にRF入力部104内にある導波路素子108のパターン形成された金属表面上に設けられてもよい。いくつかの実施形態において、サスペンデッド導波路素子108は、不必要な伝送および共振モードを抑制するように構成された抑制スロットを含む。いくつかの実施形態において、ハウジング132は、例えば検出アレイブロックなどのブロックまたはブロックの一部分を含んでもよい。例えば、ブロック514、600、620、および650は、
図1~3に示されるハウジングを含んでもよい。
【0030】
実施形態によると、信号は、1つ以上のフィルタを通って伝送線に沿ってサスペンデッド導波路素子108の表面上を伝播してもよい。例えば、サスペンデッド導波路素子108はLOフィルタリング/抑制部分124と、RFフィルタリング/抑制部分126と、RF入力部104の一部であってもよいRF受信素子(例えば、アンテナ)128と、を含んでもよい。LOフィルタリング/抑制部分124は、LO信号がIF出力部106に到達しないようにフィルタリングしてもよい。いくつかの実施形態において、これにより、別々に機械加工されたLOおよびIF同軸フィルタピンの少なくとも一方の必要を除去することができる。RFフィルタリング/抑制部分126は、RF信号がIF出力部106に到達しないようにフィルタリングすること、およびスプリアス信号がダイオード回路110に到達しないようにフィルタリングすることの少なくとも一方を行ってもよい。加えて、RF受信素子128は複数のスロット(例えば、抑制スロット)とともに構成されてもよい。いくつかの実施形態において、サスペンデッド導波路素子108の表面に沿って用いられる抑制スロットは、長手方向に延び、奇モード伝播を抑制する。例えば、ストリップライン内のスロットフィーチャは、電流がサスペンデッド導波路素子108の幅を横切って流れることを妨げることによって、不必要な奇モードがストリップラインに沿ってIF出力部106に向かって伝播することを防止することができる。実施形態によると、IF信号の望ましい偶モード伝播は、抑制スロットによる影響を受けない。
【0031】
いくつかの実施形態において、スロットはλ/10未満の幅と、少なくとも1/4λの長さとを有する。
【0032】
実施形態によると、マイクロストリップ回路内のスロットフィーチャは、電流がマイクロストリップ金属の幅を横切って流れることを妨げ、不必要な奇モードがマイクロストリップ回路に沿って伝播することを防止する。しかし、望ましい偶モード伝播はスロットによる影響を受けないままにできる。
【0033】
図1に示されるように、ミキサー100は、サスペンデッド導波路素子108に対する1つ以上の装着構造部120a、120bを含む。したがって、実施形態によると、ミキサーのフィルタは、ストリップラインの側部ではなく端部に吊るされる。よって、キャビティ内の誘電体基板を少なくできるため、より高いモードがミキサーの動作周波数より上に移動する。また、いくつかの実施形態においては、チャネルキャビティの側部が平坦であり、フィルタの特徴を乱す可能性が低い。
【0034】
実施形態によると、ミキサー100の1つ以上のフィルタは、ミキサーが装着されているハウジングキャビティの頂部および底部の少なくとも一方に結合する。例えば、フィルタセクションがキャビティの側部ではなくキャビティの頂部または底部に主に結合するように、サスペンデッドストリップラインフィルタを設計できる。これにより、ミキサーの製造可能性を改善する。なぜなら、フィルタの特徴は、機械加工されたチャネル(またはチャネル内のアセンブル位置)のサイズよりもフィルタフィーチャのサイズに、より大きく依存するためである。フィルタフィーチャは、例えばフォトリソグラフィによって定められるので、正確な制御をより容易にできる。いくつかの実施形態において、サスペンデッド導波路の幅は、ハウジング132のキャビティの幅の90%以上を含む。特定の態様において、メタライゼーションの端縁の下に誘電体が存在することによって、フィルタセクションが主にキャビティの側部に結合するようにすることができる。実施形態によると、基板を吊るすことによって、キャビティの壁はフィルタリング素子からさらに遠くに離される。しかし、誘電体はメタライゼーションの端縁において力線を側壁に引き付ける。したがって、関連する電流密度はスロットが存在しない端縁においてより高く、そうでなければ引き起こされ得る抵抗損が最小化される。例えば、
図2Aの例に示されるように、フィルタセクション124は、サスペンデッド伝送線108の各端縁から離間されたスロットを有する広い中央ストリップ204を有する。
【0035】
実施形態によると、マイクロストリップ石英回路と導波路(例えば、ダイオードが間隙を横切って位置するところ)との間の移行部の近くで1つ以上のスロットフィーチャを用いることによって、マイクロストリップ回路を長手方向に伝播し得る、より高次の横電磁(TEM)モードが抑制される。実施形態によると、これは間隙を導入することにより、中央導体を横切る横表面電流経路を遮断することによって達成される。しかし、基本モードに対する横電流は存在しないため、望ましい基本モードの長手方向の伝播は影響されない。
図8Aおよび
図8Bに、このフィーチャの態様が示されている。これらのフィーチャを伴わないいくつかの実施においては、より高次のモードはフィルタの通過帯域の低インピーダンスセクションに共振を導入し、それは帯域幅を制限してフィルタの動作帯域幅を制限することによって、ミキサー全体の帯域幅を制限し得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、ミキサー100は接地接続112aおよび112bをさらに含む。これは、例えば有線接続によるものであってもよい。ミキサー100は、調整済短絡パッド122をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、接地接続112bはパッド122からハウジング132に行われる。加えて、ダイオード回路110の1つの側部がパッド122に装着されてもよい。
【0037】
調整済短絡パッド122に関して、いくつかの実施形態によると、ストリップライン回路の1つの端部は、自身が載せられている金属シェルフに対して、ストリップライン基板を通じて、金属の矩形パッドを介して接地に容量結合される。これは、容量結合を介して、検出信号(RF)およびLOミリ波周波数における有効な短絡として、回路を接地に接続する。この容量結合は、LO信号およびRF信号に対する接地点におけるボンドワイヤアセンブリ変動の影響を低減できる。このパッドから金属ステップへのボンドワイヤは、より低い周波数(低マイクロ波)および直流にて回路を接地に接続する。このことは線の長さをかなり短くすることを可能にするため、最小限のボンド長さおよび数によって達成され得るより広い帯域幅が提供される。
【0038】
実施形態によると、別々に機械加工されたLOおよびIF同軸フィルタピンの少なくとも一方は必要ない。
【0039】
特定の態様において、可能な限り広い帯域幅を達成するために、ダイオード回路110の接地側に近い最小の長さを伴う接地接続がすべての信号に提供される。従来こうした接続は、LOおよび信号周波数における1/4λの倍数のボンドワイヤを用いたチューニングスタブを含む「仮想」反応を用いて達成された。しかし、実施形態によると、IF信号も、広帯域マッチングを達成するために短い接地長さを有しており、これは従来の技術と互換性がないかもしれない。十分に高いLOおよび信号周波数を含むすべての周波数で理想的な接地を達成するために、いくつかの実施形態においては、ボンドワイヤパッドの容量と、短いボンドワイヤのインダクタンスとの組み合わせを用いて、両方の周波数における仮想広帯域短絡が達成される。この実施形態において、IF信号の周波数は、ボンドパッドの容量またはボンドワイヤのインダクタンスの影響を受けるには低すぎ、かつ物理的長さがIF波長と比較して非常に短い(例えば、λ/10未満)ため、広帯域の物理的短絡が達成される。
【0040】
図2Aおよび
図2Bは、ミキサー100のハウジング132内のサスペンデッド導波路108の上側表面を示す。例えば、これらの図面は、ミキサー内の信号に対する導波路経路を形成するための基板上のパターン形成された金属層を示している。
図2Bにおいては、パッド構造を示すためにダイオード回路110を省略している。
【0041】
図2Aに示されるように、サスペンデッド導波路108の上側表面は、広い中央ストリップ204を含むマイクロストリップ伝送線202を含み得る。この例において、サスペンデッド導波路108の周囲の4つの側部にハウジング132内の空隙130が設けられて、キャビティを形成する。キャビティの側部は、例えばキャビティ側壁206a~dとして示される。
図2Bに示されるミキサー100の上面図画像において、導波路114および116の結合と、同軸接続118とがさらに示される。例として同軸接続が示されているが、その他の出力チャネルが用いられてもよい。実施形態によると、例えば
図6Aに示されるように、入力チャネルは第1の方向に沿って延在することができ、一方で出力部は垂直方向に延在する。導波路114および116は第1の平面にあってもよく、一方で(例えば、同軸接続118を有する)出力チャネルは第2の直交面にある。この例において、LO入力導波路114はミキサーを2分割する。
図2Aおよび
図2Bに示されるスロットフィーチャは、いくつかの実施形態において、LOフィルタリング/抑制部分124、RFフィルタリング/抑制部分126、およびRF受信素子(例えば、アンテナ)128に対応し得る。
【0042】
図3Aおよび
図3Bは、実施形態に係る導波路素子108の表面のさらなる詳細を示す。
【0043】
図3Aは、いくつかの実施形態に係る、LO導波路入力部114のいずれかの側におけるLOフィルタリング部分124およびRFフィルタリング部分126の例を示す。
図3Aの例に示されるように、サスペンデッド導波路108の表面上のパターン形成された伝送線は複数のスロットを含み、それは不必要なモード抑制、フィルタリング、およびマッチングのうちの1つ以上を与え得る。例えば、抑制スロットは抑制およびフィルタリングを同時に与え得る。いくつかの実施形態において、LO信号がIF出力部106に到達しないようフィルタリングするために、ハンマーヘッドフィルタ302が用いられて長手方向に延在され得る。同様に、半ハンマーヘッド構造部304は、スプリアスRFのフィルタリングを提供する。特定の態様において、ハンマーヘッド(または半ハンマーヘッド)構造部は、信号の通過を遮断することによってフィルタリングを提供する、λ/2の間隔を置かれた有効な仮想短絡として作用する誘導容量の組み合わせであり得る。
【0044】
実施形態によると、スロット付き抑制フィーチャを含むことによって、伝送線を通る広い中央経路が可能になり、ひいてはIF信号がダイオード回路110からIF信号出力部106まで通過する際のサスペンデッド導波路素子の長さに沿った抵抗損を低減させる。実施形態によると、メタライゼーション層の厚さは、表皮の深さの少なくとも3倍である。
【0045】
図3Bは、いくつかの実施形態に係る、RF入力部104の一部であり得るRF受信素子(例えば、アンテナ)128の拡大図を示す。この例において、受信素子128は、スロットの第1のセットおよび第2のセットを含み、第1のセット306はスプリアスRFのフィルタリングのために提供され、第2のセット308はより高次の信号に対する電流遮断を提供することによって不必要な伝送モードを抑制することを助ける。実施形態によると、第1のスロット306は第2のスロット308よりも広い。さらに、いくつかの実施形態において、第1および第2のセット306、308はどちらも、受信素子128がRF入力導波路116に対する広帯域結合を提供できるように十分に狭い。
図3Bの図面において、ダイオード回路110は示されていないことにより、例えばパッド122などのさまざまなメタライゼーション層(例えば、パッド)が見えるようになっている。
【0046】
実施形態によると、ミキサー100は特定の周波数範囲に対して最適化され得る。例えば、導波路素子108の表面上のパターン形成された金属フィーチャの幅(例えば、フィルタ幅)は約0.3~0.4λに設定されてもよく、ここでλは自由空間波長である。例えば、375GHzにおける動作に対するフィルタチャネル幅は、約0.3mmであってもよい。いくつかの実施形態において、ミキサーは125GHz、250GHz、および375GHzのうちの1つにおいて最適化される。この例においては特定の周波数/波長が提供されているが、開示されるミキサーの設計および製造は広帯域の周波数/波長にわたって最適化されてもよい。例えば、ミキサー100は、マイクロ波、ミリ波、およびサブミリ波の範囲におけるミキサーとして適用可能であってもよい。
【0047】
実施形態によると、LOおよびRFフィルタ配置の中央部は、抵抗損を最小化するために、できる限り広くなるように設計される。いくつかの実施形態において、中心線の幅は、ミキサーが装着されているキャビティの幅の30%~50%である。いくつかの実施形態において、中心線の幅は、導波路基板の幅の50%以上である。いくつかの実施形態において、線の幅は動作周波数における0.1~0.2λである。例えば、375GHzにおける最適化に対して、信号端部からIF出力端部まで延びる中心線の幅は、約100ミクロンの広さであってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、パターン形成された金属マイクロストリップ伝送線は、ダイオード回路から1つ以上のフィルタ素子を通って出力部まで延びる中心線を含み、中心線の幅は0.1λ以上0.2λ以下であり、サスペンデッド導波路素子の幅は約0.2λであり、基板の厚さは0.04λである。ハウジングキャビティの幅(例えば、横方向)は約0.35λ(例えば、0.3~0.4λ)であってもよく、パターン形成されたマイクロストリップ伝送線は偶伝送モードをハウジング132キャビティの側壁に結合するためにキャビティ内に配置される。
【0049】
実施形態によると、ミキサー100は、別個のチューニングスタブ(例えば、ワイヤ)または機械加工されたLOフィルタピンなしで実現され得る。これは例えば、追加のワイヤの形態の1つ以上のスタブチューナと、LO信号フィルタリングを取り扱うためのIF出力部における直交同軸フィルタとを必要とする特許文献1の設計などと対比され得る。
【0050】
実施形態によると、また、RFおよびLO入力部回路における最高帯域幅を達成するために、開回路導波路プローブが用いられる。短絡した導波路は本質的に狭帯域であり、しばしば望ましい帯域にわたる電力結合が不十分になるため、開回路導波路プローブが用いられることにより、開回路導波路プローブの改善がもたらされる可能性がある。
【0051】
ここで
図4を参照すると、いくつかの実施形態に係るミキサーを動作させる方法400が提供される。ミキサーは例えば、ミキサー100または
図1、
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、および
図6Aに関して示された特徴を有する任意のその他のミキサーなどであってもよい。
【0052】
方法400はステップs410から始まってもよく、ステップs410は、サスペンデッド導波路素子と、複数の抑制素子と、ダイオード回路とを有するミキサー装置の第1の入力部においてRF信号を受信することを含む。ステップs420において、ミキサーに局部発振器信号が提供される。ステップs430において、ダイオード回路によって生成された中間周波数(IF)信号が出力される。実施形態によると、IF信号を出力することは、ミキサー(例えば、ミキサー100)の長手方向に沿って、複数のフィルタを通って信号を伝播させることを含む。フィルタは例えば、複数の抑制素子の一部などであってもよい。いくつかの実施形態によると、RF信号およびLO信号はミキサーに関する第1の軸に沿って受信および提供されるのに対し、IFは異なる垂直軸に沿って出力される。
【0053】
ここで
図5を参照すると、いくつかの実施形態に係る検出システム500が提供される。この例において、フィードホーン502のアレイは、上述のミキサー(単数または複数)100などの1つ以上のミキサー504にRF信号を提供する。RF信号は、1つ以上のガン(Gunn)発振器ソースなどのソース508からのLO信号512とミキシングされ得る。そして、結果として得られるIFは、増幅、フィルタリング、アナログ・デジタル変換、および画像生成のうちの1つ以上を含む後続処理のために、処理回路506に供給され得る。いくつかの実施形態において、出力IFは、同軸線を介してミキサーから1つ以上の処理回路506に提供される。いくつかの実施形態において、フィードホーン502、ミキサー504、および信号経路(例えば、512)は、ブロック514内に収容され得る。本明細書に記載される1つ以上のミキサーとともに用いるためのブロックは、例えば
図6A~
図6Cに関して示されている。
【0054】
実施形態によると、ミキサー504のセットは少なくとも3タイプのミキサーを含み、第1のミキサーは第1の周波数にて最適化され、第2のミキサーは第2の周波数にて最適化され、第3のミキサーは第3の周波数にて最適化される。この例において、すべてのタイプのミキサーは、
図1~
図3に示されるミキサー100の設計および構成に従う。いくつかの実施形態において、それらの周波数は125GHz、250GHz、および375GHzである。いくつかの実施形態において、ミキサー100の設計および構成を用いた第4のタイプのミキサーが含まれ、第4のタイプのミキサーは500GHzにおいて最適化される。
【0055】
ここで
図6Aを参照すると、いくつかの実施形態に従って検出器ブロック600の2つの機械加工された半体が示されている。この例において、第1の機械加工された部分602を第2の機械加工された部分604と組み合わせて、検出器ブロックを形成することができる。ブロックは、例えばミキサー100のハウジング132およびブロック514を含んでもよい。
図6Aに示されるように、半体の各々は1つ以上のフィードホーン部分606を含むことができ、フィードホーン部分606はRF信号をミキサー100に送るためのチャネルの働きをし得る。加えて、半体の各々は入力信号(例えば、LO)伝達部分608と、詳細部610に示されるミキサーキャビティとを含んでもよい。加えて、いくつかの実施形態において、ミキサーは自身の出力部を信号出力部612(例えば、同軸線またはその他の伝送線を含む)に結合することができ、信号出力部612は、同軸ケーブルがミキサーハウジング132を通って延在し得るようにそれぞれのブロック半体内に形成することができる。出力部612は、例えばミキサーが生成したIF信号を搬送してもよい。実施形態によると、フィードホーン606およびLO入力部608は同じ軸(例えば、x軸)に沿って、または同じ平面(例えば、x軸およびz軸によって形成される平面)内で機械加工され得る。加えて、いくつかの実施形態において、ミキサー出力部612は垂直/直交様式で(例えば、y軸に沿って)機械加工され得る。これに関して、ミキサーからの出力信号は、入力信号が受信される方向とは異なる方向に送られ得る。例えば、信号が受信される平面に対して垂直の方向に信号が出力されてもよい。
【0056】
ここで
図6Bおよび
図6Cを参照すると、いくつかの実施形態に従って1つ以上の検出器アレイブロックが示されている。これらは、例えばアレイ502およびブロック514に対応してもよい。フィードホーン502のアレイを有するブロック514などの検出器素子は、(例えば、
図6Aおよび
図6Bに示されるように)単一のブロックとして形成され得る。また、検出器素子は複数のブロックから(例えば、
図6Cに示される2つのサブブロックによって)形成されて、複数の行および列のフィードホーンを有する複合検出ブロックを形成し得る。加えて、実施形態によると、各サブブロックは
図6Aに関して示されるように2つの部分から形成されてもよく、
図6Aは半体ブロック部分602を別の半体ブロック部分604に取り付けてブロック600を形成することを示している。
【0057】
ここで
図6Bを参照すると、いくつかの実施形態に係るブロック620が提供される。いくつかの場合に、1つ以上の検出器アレイ502およびブロック514は、ブロック620を含んでもよい。ブロック620は1つ以上の信号入力部622と、1つ以上の二次入力部624と、1つ以上の出力部626とを含む。例えば、信号入力部622は、
図2、
図5、
図6A、および
図9に示される複数の検出器フィードホーンに対応してもよい。同様に、二次入力部(単数または複数)624は、例えば
図2、
図5、
図6A、および
図9に関して記載されるようなLO信号入力部であってもよい。出力部(単数または複数)626は、例えば
図9に関して記載されるような、ミキサー100からの1つ以上のIF信号などの検出信号出力部であってもよい。実施形態によると、入力部は同じ平面に設けられるのに対し、出力部は横平面に設けられる。
図6Bの例において、入力部622、624はx軸に沿って設けられるのに対し、出力部626はy軸に沿って設けられる。実施形態によると、出力部626に処理回路が接続されてもよい。例えば、複数の処理回路ユニットがz軸方向に積み重ねられて、ブロック620から出力された信号を処理してもよい。同様に、検出器を拡張するために追加のブロックがz軸方向に積み重ねられてもよい。
図6Cには、素子660a~nを有する類似の配置が示されている。こうした回路は、例えば、
図9に関して示されるような、1つ以上のLNA、広帯域電力検出器、およびADCのうちの少なくとも1つなどを含み得る。いくつかの実施形態において、熱的手段(例えば、ボロメーター)によって、または振幅変調(AM:amplitude modulation)検出器を用いることによって、広帯域マイクロ波電力をベースバンド信号に変換するために、電力検出器が用いられる。加えて処理回路は、例えばLNAまたはADCのいずれかの側などに、1つ以上のフィルタを含み得る。実施形態によると、921a、921b、921cなどの電力検出器は、帯域全体にわたる電力を検出し、その電力に関連する電圧を出力する。
【0058】
ここで
図6Cを参照して、実施形態によると、第1のブロック(例えば、ブロック620)が第2のブロック(例えば、650)と組み合わされて、例えばアレイ502を有するブロック514などの単一の検出アレイブロックを形成することができる。この例において、ブロック650の入力部652および654はx軸に沿った単一の平面に設けられ、出力部656はy軸に沿って延びる垂直方向に設けられる。入力部および出力部をこの配置としたとき、処理回路660a~nは、入力部652によるソースからの信号捕捉を妨げることも、入力部654へのLOの伝達を遮断することもなく、ブロック620、650の外表面においてz軸方向に積み重ねられ得る。回路660a~nはアレイのブロック620側に示されているが、このスタック(積み重ね)はアレイの他方の側(例えば、ブロック650側)にも設けられてもよい。これに関して、処理回路の第1のスタック660a~nはアレイの1つの側部に設けられてもよく、処理回路の第2のスタック660a~nはアレイの第2の側部に設けられてもよく、入力信号(例えば、RF入力部)はアレイの第3の側部に提供されてもよく、いくつかの実施形態においては別の入力信号(例えば、LO)がアレイの第4の側部に提供され得る。回路660a~nは例えば、1つ以上のLNA、AM(エンベロープ)電力検出器、およびADCのうちの少なくとも1つ、ならびに場合によってはフィルタなどを含んでもよい。
【0059】
図6Cのアレイは2つの接続されたブロックによって示されているが、実施形態はそれに限定されない。例えば、実施形態によると、検出器アレイは直接接続されていないブロックで形成されてもよく、2つより多くのブロックでも形成され得る。例えば、処理回路660a~nは、アレイの2つのサブブロックの間(例えば、ブロック620および650の間)に置かれ得る。場合によっては3つのサブブロックが、第1および第2のブロックの間、ならびに第2および第3のブロックの間に置かれた回路とともに用いられ得る。こうした配置において、第1および第2のブロックの間の回路は、第1または第2のブロックの一方または両方からの信号を処理できるのに対し、第2および第3のブロックの間の回路は、第2および第3のブロックの一方または両方からの信号を処理できる。加えて、例えば第1または第3のブロックからの信号を処理するために、アレイの外側部の1つ以上に別の回路スタックが提供され得る。3つのブロックを用いて説明したが、実施形態によると、この配置を繰り返して、アレイの幅を3ブロックより大きく拡張することができる。例えば追加のブロック620、650を積み重ねることによって、検出アレイをz方向に拡張することもできる。実施形態によると、アレイブロック620、650の上側および下側の表面には入力部も出力部も存在しないため、妨害なしに別のブロックを積み重ねることができる。いくつかの実施形態は、ブロック620、650を含み、ブロック620、650は、6つの主要側部を有し、頂部または底部(例えば、z方向)には露出せずに外側に露出している入力部および出力部の少なくとも一方(例えば、ブロックを通るx方向およびy方向の入力部および出力部の少なくとも一方)を有する。
【0060】
実施形態によると、最大4つの検出周波数帯域に対して検出システムを最適化してもよい。実施形態によると、帯域幅はミキサー、IF増幅器、およびエンベロープ検出器のうち少なくとも1つの組み合わせによって設定されてもよい。いくつかの実施形態において、帯域は導波路に対する中央周波数の+/-20%である。
【0061】
ここで
図7を参照すると、いくつかの実施形態に従って、ミキサー装置を製造する方法700が提供される。この方法は、例えば
図1~
図3に関して示されるようなミキサー100を製造するため、および
図6Aに示される機械加工された部分602、604を形成するために、用いられてもよい。
【0062】
方法700はステップs710から始まってもよく、このステップは、第1の無線周波数チャネル部分と、第1の局部発振器部分と、第1の中間周波数チャネル部分と、第1のキャビティ部分と、第1の装着シェルフ部分と、第2の装着シェルフ部分とを含む第1のハウジングコンポーネント(例えば、602)を機械加工することを含む。ステップs720において、第2のハウジングコンポーネント(例えば、604)が機械加工され、第2のハウジングコンポーネントは第2の無線周波数チャネル部分と、第2の局部発振器部分と、第2の中間周波数チャネル部分と、第2のキャビティ部分と、第3の装着シェルフ部分と、第4の装着シェルフ部分とを含む。この方法はさらに、第1および第2の装着シェルフ部分、ならびに第3および第4の装着シェルフ部分の少なくとも一方の上に導波路素子を装着することによって、第1および第2のキャビティ部分の少なくとも一方内に導波路素子を吊るすステップ(s730)を含んでもよい。これは、例えば導波路素子108であり得る。方法700はさらに、ブロックを形成するために第1のハウジングコンポーネントを第2のハウジングコンポーネントに取り付けるステップ(s740)を含んでもよい。例えば、この方法は、
図6Bおよび
図6Cに示されるようなブロック(または複数のブロック)を形成するために使用されてもよい。
【0063】
実施形態によると、ブルノーズカッターおよび5軸加工機を用いて、ブロックの各半体に完全なフィードホーンの2つの半体が機械加工される。これによって、楕円形断面のホーンなど、ホーン形状に柔軟性を持たせることが可能になる。これにより、フィードホーンのビームパターンを調節して、最適な光学的結合を実現することが可能になる。例えば、円形のホーンは楕円形のビームを提供し、そのビームは光学系で補正する必要があり、さもなければ画像は不適切な無非点収差を有し得る。しかし、楕円形のフィードホーンは、補正を必要としない円形のビームを実現できる。よっていくつかの実施形態によると、(例えば、受信したRFをミキサー100に送るための)フィードホーンは、楕円形状を有してもよい。
【0064】
ここで
図8Aおよび
図8Bを参照すると、電場および磁場が示されている。例えば、
図8Aは横電磁モード802を示す。マイクロストリップ外部チャネルが案内波長の2分の1未満であるとき、通常は基本の横電磁モード(TEM-00)のみが存在できる。この場合、802によってそれぞれ示されるように、電場線および磁場線は横方向であり、内部導体から金属チャネルの外側に同方向に伝播するか、またはフィルタメタライゼーションの周りで同方向に輪になる(この例においては空中の導体)。例えば伝送通過帯域を示す804において示されるように、基本TEM-00モードにおける動作は非常に平滑なインピーダンス対周波数応答をもたらし得る。この配置は808により、石英基板812上の回路線(例えば、金)810と共にさらに示されている。
【0065】
有効マイクロストリップフィルタメタライゼーション幅および外部チャネル幅の寸法は、周波数の関数として逆スケーリングされるため、より高い周波数において、フィルタメタライゼーションパターンおよびそれが位置するチャネルの幅は非常に小さくなり、その両方が製造を困難にするため、チャネルの外幅が案内波長の2分の1未満であり続ける寸法条件はコストを増加させる。この条件を満たすことができない(例えば、いずれかが案内波長の2分の1より大きい)とき、より高次の横および長手方向モードが(例えば、チャネルまたはフィルタの不連続性によって)励起されて伝播し得る。この状況が814に示されている。電場線および磁場線はもはや均一ではなく、共振状態が生じてもよく、結果として周波数の関数としての不均一な挙動がもたらされ、通過帯域に共振が出現する806に示されるような反射電力が、もたらされる。これらの共振は、ミキサーの平滑な広帯域動作を低減させ得る。
【0066】
マイクロストリップフィルタはしばしば、4分の1波長の低インピーダンスセクションおよび高インピーダンスセクションをカスケードするだろう。高インピーダンスセクションと低インピーダンスセクションの比率が最大であるときにフィルタの精巧さが最も優れており、これは最も幅の狭いラインおよび最も広いラインを用いて実現される。これは
図8Bにおいて、それぞれ822および824によって示される。したがって、より高次のモードが励起されてフィルタ周波数応答に共振反射が導入される前に有限の幅があるため、より高次のモードの生成が考慮される場合、こうしたフィルタの性能は基本的に制限される。本開示の態様は、より高次のモードの伝播の悪影響を伴わずに、より広いラインの利点(例えば、より低いインピーダンスおよび改善されたフィルタリング)を提供することができる。これは例えば、
図8Bの830に示されるようなフィルタセクションの長さに沿った電流遮断またはスロットの包含によって達成され得る。これは、828に示されるような、電流が中断されずに流れて理想的でない通過帯域性能が生じる826と、対照的である。より高次のモードが生成されるとき、電流はもはや基本モードの場合のように長手方向のみに沿って流れるのではなく、フィルタメタライゼーションの横方向にも流れる。電流遮断を導入することによって、これらの横電流は遮断され、たとえ、そうでなければ、フィルタセクションおよびチャネルの両方の幅により可能になるとしても、より高次のモードの励起は抑制される。832に示されるように、平滑なフィルタ周波数挙動とともに、かなり低くなったインピーダンスフィルタセクションが実現される。
【0067】
ここで
図9を参照すると、いくつかの実施形態に係る検出システム900の概略図が提供される。いくつかの実施形態において、システム500は
図9の配置を用いて実現され得る。
【0068】
放射線は、入力部902、904、および906において受信することができ、これらはそれぞれ、ブロック908、910、および912のフィードホーンであってもよい。いくつかの実施形態において、ブロック908、910、および912の各々は、検出器アレイ502、514、600、620、および650の少なくとも1つの一部を形成してもよい。入力部902、904、906において受信された放射線信号の各々は、素子914a、914b、および914cとして示されるミキサー素子に送られる。このミキサー素子は、例えばミキサー100であり得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の受信信号は、例えば任意の偏光回転素子916などによって、ミキサーによる処理の前に回転されてもよい。1つ以上の中間周波数(IF)信号などのミキサーからの処理済信号は、各ブロックの出力部(918a、918b、918c)に送られて、低ノイズ増幅器(LNA)(920a、920b、920c)、電力検出器(921a、921b、921c)、およびアナログ・デジタル変換器(ADC)(922a、922b、922c)による後続処理を受ける。追加処理にはフィルタリングが含まれる場合がある。次いでデジタル信号は画像生成器924に送られて、例えば902、904、および906において受信された放射線を用いたオブジェクトまたはシーンの合成画像などの、検出された放射線に基づく画像が形成される。画像処理924は、コンピュータまたはモニタなどの表示システム936に結合されるか、またはその一部であってもよい。いくつかの実施形態において、IF信号は各ブロック内の同軸ケーブルを用いて出力される。
【0069】
このシステムは3つのミキサー素子または入力部を伴って示されているが、このシステムはより多いかまたはより少ない素子によって実現され得る。例えば、システム900を拡張して、対応するミキサーおよび処理回路のセットを各々が有する入力フィードホーンの第4のセットを含ませ得る。加えて、ブロック908、910、および912の各々が入力部のアレイと、複数のミキサー100とを含んでもよい。情報は、
図6Cに示されるように回路のスタックによって処理されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、局部発振器(LO)信号は、ミキサーよりも少数のLOソースを用いてシステム900のミキサーに提供される。例えば、
図9に示される例において、単一のLOソース926がミキサー914a~cの各々にLO信号を提供する。実施形態によると、これは、1つ以上の電力分配器928a、928bと、場合によってはダブラまたはトリプラなどの1つ以上の周波数乗算器930a~cとを用いて実現される。例えば、ソース926からの元のLO信号は分配器928aに提供されてもよく、その後、分配器928aは分配器928bおよび任意の乗算器990aに信号を提供する。乗算器930は、ソース926が提供したものよりも高い周波数のLO信号をミキサー914aに提供するために用いられてもよい。同様に、分配器928bは、ミキサー914bおよび914cに対する任意の乗算器930bおよび930cに信号を提供してもよい。これに関して、ブロック908、910、および912の各々は、異なる周波数/波長における動作に対して構成され得る。こうした構成は、例えば、ミキサー設計ならびに入力フィードホーンの形状および寸法などを含み得る。したがって、複数の波長のデータを用いて合成画像を形成するために、処理回路924は、異なる波長の放射線信号の検出、処理、および使用を行ってもよい。ソース、分配器、乗算器、およびミキサーの少なくとも1つの間で信号を増強するために、増幅器992などの1つ以上の増幅器が用いられてもよい。
図9の例には、他の増幅器は示されていない。
【0071】
フィードホーンのサイズは、選択された光学系に対する最適な結合を提供するように選択されるべきであり、間隔は用途に応じた最適な範囲を提供するように選択されるべきである。
【0072】
特定の態様において、コンポーネントは、できる限り広範囲の回路動作条件にわたってRF結合回路から反射されるLO電力の量を最小化するように最適化される。これは反射されたLO信号が伝播して1つ以上のLO電力スプリッタに戻ることを制限し、よってチャネル間の干渉を制限する。反射の問題をさらに低減させるために、マジックT(Magic-T)または3dBハイブリッド分岐ガイドカプラなどの90度3dBハイブリッド電力スプリッタが実現され得る。単一のLO926で示されているが、実施形態によって複数のLOが用いられてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態によると、分配器928aおよび928bの1つ以上は不均等分配器である。いくつかの実施形態によると、乗算器930aおよび930bはダブラであるのに対し、乗算器930cはトリプラである。いくつかの実施形態において、1つ以上の乗算器は必要でない。例えば、いくつかの実施形態において、乗算器930aが省略されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態によると、共通の局部発振器ソース926が提供され、異なる次数の周波数乗算器(例えば、ダブラおよびトリプラ)を用いて周波数が乗算されて、サブハーモニックミキサーが実現される。例えば、ミキサー914a~cは、それぞれ周波数125GHz、250GHz、および375GHzを中心とする帯域で動作してもよく、それらは62.5GHz、125GHz、および187.5GHzの局部発振器周波数を使用できる。この例において、ベース局部発振器ソース926は、62.5GHzにて動作する約100mWを提供するガン発振器であってもよい。これは、例えば分配器928aなどのスプリッタを用いて2つの等しい信号に分割される。このスプリッタは、標準的なマジックティーなどの均等電力スプリッタか、または不均等スプリッタであってもよい。スプリッタ出力の一方の半分は125GHzアレイ(この例におけるブロック908)をポンピングし、第2の半分は電力増幅器(例えば、この例における増幅器992)に入力されて約400mWの信号を与え、そして、この信号を用いて周波数乗算器930bおよび930cがポンピングされる。この周波数例においてサブハーモニックミキサーが使用されるとき、この場合には乗算器930aは必要ない。いくつかの実施形態において、構成可能な不均等電力分配器を用いて、125GHzアレイおよび電力増幅器に最適電力を提供することによって、システムが最適化される。各周波数ミキサーアレイは類似の局部発振器電力を必要とし、それは、この例においては30~40mWである。しかし、ダブラの典型的な効率は40%であるのに対し、トリプラは15%である。このことは、マジックティーなどの均等電力スプリッタの使用によって、250GHzアレイ(例えば、この例におけるブロック910)に対する過剰な電力(80mW)が生成され、375GHzアレイ(例えば、この例におけるブロック912)に対する限界電力が生成される結果となり得ることを意味する。マジックティーなどの従来の電力スプリッタは、入力電力が均等に半分に分割されることに依拠するが、もしこうしたアプローチがこの実施形態に使用されれば、結果として過剰な電力が125GHzダブラ(例えば、乗算器930b)に供給され、不十分な電力が187.5GHzトリプラ(例えば、乗算器930c)に供給されるかもしれない。したがって、通常はダブラよりも効率が低いトリプラに十分な電力を供給するために、電力増幅器を過剰仕様にする必要があり、かつダブラに対する電力は不必要に弱められるだろう(そうでなければダブラが損傷される可能性がある)。したがって、また、実施形態によると、局部発振器ポンプ電力を任意に2つ以上の経路に分割できる構成可能な電力分配器が用いられることによって、各局部発振器アームの乗算器に対する電力がそれぞれの電力要件に従って分配される。実施形態によると、分配器928aおよび928bの少なくとも一方は構成可能である。よって、送られる電力が各それぞれの乗算器に対するピーク効率入力電力要件に適合するように、電力分割を各周波数アームとマッチングすることによって、全体的なシステムLO電力要件(および、それによりコスト)を最小化するシステムを提供できる。
【0075】
いくつかの実施形態によると、第4の周波数の放射線を受信および処理するように構成された1つ以上のブロックが提供されてもよい。例えば、1つ以上のブロックは500GHzにて構成されてもよい。こうしたブロックに対するミキサーは、同じLOソースを用いて、例えば
図9に示されるLO経路の1つ以上における追加の分配器およびダブラの少なくとも一方などと共に、同様に動作できる。いくつかの実施形態において、このブロックは、サブブロックか、またはアレイ514、620、および650の少なくとも1つであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態によると、LOソース926は1つ以上の周波数における複数の出力を有してもよく、最初の分配器928aおよび乗算器930aの少なくとも一方は必要ではない場合がある。いくつかの実施形態において、分配器928aおよび乗算器930aのうちの1つ以上は局部発振器ソース926に統合されることによって、ソース926は構成可能な電力の複数の周波数信号を提供する。例として2つの出力が用いられているが、この実施は、追加の不均等電力スプリッタおよび乗算器の少なくとも一方を使用することによって、拡張され得る。
【0077】
地球の大気は、観察された大気中周波数透過率によって独自の照度特性を提供し、それはシーンの上に存在する水蒸気の量および検出に使用される波長によって定められる。2つの現象がこの効果を支配する。第1に、水分子はミリメートルからテラヘルツドメインにおける回転共振を有するため、それは特定の周波数において光子を吸収する。これらの線から離れた周波数において、水分子は光子を通し、これは水ウィンドウとして理解されてもよい。加えて、波長が短くなると大気を通る有効経路の長さが長くなり、減衰が増加する。透過率が最高である周波数においては、地球の大気は透明であるため、ミリ波検出の際に、空間の冷たいバックグラウンドが非常に高いコントラストを提供する。すなわち、観察中の屋外シーンは「冷たい」空の照度に支配される。地球の大気の透過率が低い周波数において、シーンは、シーンの上の空気柱からの「暖かい」照度に支配される。実施形態によると、異なるコントラストタイプが実現されるカラーシーンを提供するために、高透過率、中程度透過率、および低透過率の波長の混合物が使用され得る。実験調査によって、これらの波長は約125GHz、250GHz、および375GHzを中心とする約35GHzまでの幅の帯域であることが定められた。
【0078】
実施形態は例として125GHz、250GHz、375GHz、および500GHzを使用するが、他の周波数セットが用いられてもよい。例えば、60、120、240、360、および480GHzが用いられてもよい。この周波数セットは、大気中の酸素の吸収特性に関する。
【0079】
本明細書において本開示のさまざまな実施形態を説明しているが、それらは単なる例として提供されたものであり、限定ではないことが理解されるべきである。よって本開示の幅および範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。一般的に、本明細書で用いられるすべての用語は、異なる意味が明確に与えられるとき、およびその用語が用いられる文脈から示されるときの少なくとも一方の場合を除いて、関連技術分野における通常の意味によって解釈されるべきである。a/an/the素子、装置、コンポーネント、手段、ステップなどに対するすべての参照は、別様に明確に述べられていない限り、その素子、装置、コンポーネント、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を示すものとしてオープンに解釈されるべきである。上述の素子のすべての可能な変形の任意の組み合わせは、本明細書において別様に示されるか、または別様に文脈によって明確に否定されない限り、本開示に包含される。
【0080】
加えて、上述されて図面に示されたプロセスは一連のステップとして示されているが、これは単に例示のために行われたものである。したがって、いくつかのステップが追加されてもよく、いくつかのステップが省略されてもよく、ステップの順序が再配置されてもよく、いくつかのステップが並行して行われてもよいことが予期される。すなわち、あるステップが別のステップに後続または先行することが明確に記載される場合、およびあるステップが別のステップに後続または先行しなければならないことが暗黙的に記載される場合の少なくとも一方を除いて、本明細書に開示される任意の方法のステップは、開示された順序通りに行われる必要はない。