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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20250310BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20250310BHJP
   B29C 49/78 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
B29C49/78
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022563826
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2021042437
(87)【国際公開番号】W WO2022107851
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020191583
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】荻原 学
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/078358(WO,A1)
【文献】特開2008-073936(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158917(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158918(WO,A1)
【文献】特開平05-185493(JP,A)
【文献】特開昭57-103821(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189723(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0074687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/64
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形工程で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程では、樹脂材料の充填および保圧の完了後に、射出金型の型開きと前記樹脂材料の計量開始を同時に行って前記充填および保圧の完了後に前記プリフォームを前記射出金型内で冷却せずに搬出し、前記射出金型の型開きから前記射出金型の型締めまでのドライサイクルの完了時または前記樹脂材料の計量完了時のいずれか遅いタイミングで前記射出金型に次回の射出成形を開始し、
前記温度調整工程では、前記プリフォーム内に冷媒を導入して前記プリフォームを冷却し、
前記射出成形工程における前記射出金型内での前記プリフォームの冷却時間をゼロに固定しつつ、前記樹脂材料の充填での圧力または流量速度に関する第1設定値と、前記樹脂材料の保圧での圧力または流量速度に関する第2設定値との少なくとも一方を変更するパラメータ変更工程と、をさらに有する
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記温度調整工程では、前記プリフォームの底部が他の部位よりも強く冷却される
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記温度調整工程では、前記プリフォームがキャビティ型に収容されるとともに、前記冷媒の圧力で前記プリフォームを前記キャビティ型に密着させて前記プリフォームが冷却される
請求項1または請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部で製造された前記プリフォームの温度調整を行う温度調整部と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え、
前記射出成形部は、樹脂材料の充填および保圧の完了後に、射出金型の型開きと前記樹脂材料の計量開始を同時に行って前記充填および保圧の完了後に前記プリフォームを前記射出金型内で冷却せずに搬出し、前記射出金型の型開きから前記射出金型の型締めまでのドライサイクルの完了時または前記樹脂材料の計量完了時のいずれか遅いタイミングで前記射出金型に次回の射出成形を開始し、
前記温度調整部は、前記プリフォーム内に冷媒を導入して前記プリフォームを冷却し、
前記射出成形部における前記射出金型内での前記プリフォームの冷却時間をゼロに固定しつつ、前記樹脂材料の充填での圧力または流量速度に関する第1設定値と、前記樹脂材料の保圧での圧力または流量速度に関する第2設定値との少なくとも一方を変更する入力を受け付ける制御装置をさらに備える
樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造方法の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形方法が知られている。ホットパリソン式のブロー成形方法は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する方法であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
ホットパリソン式のブロー成形方法に関しては、成形サイクルの短縮を目的として種々の提案がなされている。成形サイクルの短縮化には、例えば特許文献1、2のように、律速段階であるプリフォームの射出成形時間(プリフォームの冷却時間)を短縮することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017-098673号公報
【文献】特開平5-185493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、プリフォームの射出成形工程における1回分のサイクルには、計量、充填、保圧、冷却のステップが含まれる。上記の射出成形工程の冷却時間では、射出金型内でプリフォームが保圧のない状態で冷却されるので、冷却中にプリフォームの収縮が促進されてプリフォームにヒケが生じやすくなる。上記の対策としては、充填および保圧の時間を長くすることでプリフォームのヒケを改善させることができるが、射出成形時間の短縮にはつながらない場合がある。また、ホットパリソン式のブロー成形方法では通常、射出成形工程の時間が律速段階となり、ブロー成形機の成形サイクルの時間を規定する。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、プリフォームのヒケの発生を抑制しつつ、樹脂製容器を高速な成形サイクルで製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である樹脂製容器の製造方法は、樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形工程で製造されたプリフォームの温度調整を行う温度調整工程と、温度調整されたプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を有する。射出成形工程では、樹脂材料の充填および保圧の完了後に、射出金型の型開きと樹脂材料の計量開始を同時に行って充填および保圧の完了後にプリフォームを射出金型内で冷却せずに搬出し、射出金型の型開きから射出金型の型締めまでのドライサイクルの完了時または樹脂材料の計量完了時のいずれか遅いタイミングで射出金型に次回の射出成形を開始する。また、温度調整工程では、プリフォーム内に冷媒を導入してプリフォームを冷却する。また、射出成形工程における射出金型内でのプリフォームの冷却時間をゼロに固定しつつ、樹脂材料の充填での圧力または流量速度に関する第1設定値と、樹脂材料の保圧での圧力または流量速度に関する第2設定値との少なくとも一方を変更するパラメータ変更工程と、をさらに有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、プリフォームのヒケの発生を抑制しつつ、樹脂製容器を高速な成形サイクルで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
図2】射出成形部の構成例を示す図である。
図3】温度調整部の構成例を示す図である。
図4】設定値の入力画面の一例を示す図である。
図5】容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図6】本実施形態および比較例における射出成形工程の動作例を示すチャートである。
図7】本実施形態および比較例のブロー成形方法におけるプリフォームの温度変化例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
<ブロー成形装置の説明>
まず、図1を参照して容器を製造するためのブロー成形装置20について説明する。図1は、ブロー成形装置20の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0012】
ブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26と、制御装置28とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0013】
(搬送機構26)
搬送機構26は、図1の紙面垂直方向の軸を中心として回転するように移動する移送板(不図示)を備える。移送板には、プリフォーム10または樹脂製容器(以下、単に容器と称する)の首部を保持するネック型27(図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は、移送板を90度分ずつ移動させることで、ネック型27で首部が保持されたプリフォーム10(または容器)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は、昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型27の型開き機構をさらに備え、移送板を昇降させる動作や、射出成形部21等における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0014】
(射出成形部21)
射出成形部21は、図2に示すように、射出キャビティ型31、射出コア型32およびホットランナー型33を備え、射出成形によりプリフォーム10を製造する。射出キャビティ型31とホットランナー型33は、一体化した状態でブロー成形装置20の機台に固定されている。一方、射出コア型32は、不図示のコア型昇降機構に固定されている。また、射出成形部21には、プリフォームの原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0015】
射出キャビティ型31は、プリフォーム10の外周の形状を規定する金型である。ホットランナー型33は、射出装置25から樹脂材料を金型内に導入する樹脂供給部33aを有する。また、射出コア型32は、プリフォーム10の内周側の形状を規定する金型であって、ネック型27および射出キャビティ型31の内周側に上側から挿入される。
【0016】
射出成形部21においては、射出キャビティ型31、射出コア型32と、搬送機構26のネック型27とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内にホットランナー型33を介して射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォーム10が製造される。
【0017】
一方、射出装置25は、バレルのシリンダ内にスクリューを回転可能かつ進退可能に設けた装置であって、樹脂材料を加熱溶融させて金型内に射出する機能を担う。射出装置25は、スクリューの働きによって射出、保圧、計量を順に行なう。
【0018】
射出装置25は、スクリューを配置したシリンダにホッパーから樹脂材料を供給し、スクリューの回転と後退で樹脂材料の可塑化混練と計量を行う(計量ステップ)。そして、射出装置25は、スクリューを高速で前進させることによって溶融樹脂を金型内に射出充填する(充填ステップ)。次いで、射出装置25は、スクリューを所定圧で低速で前進させて金型内の溶融樹脂の収縮量を補うように金型内に溶融樹脂を追加で射出充填し、その状態で保圧が行われる(保圧ステップ)。射出装置25は、樹脂材料を金型内に高速で充填しているときはスクリューの移動速度(射出速度)を制御し、金型内に樹脂材料が高速で充填された後は圧力(保圧力)で制御する。速度制御から圧力制御の切り替えは、スクリュー位置または射出圧力を閾値として行われる。なお、上述のスクリューはプランジャであってもよい。
【0019】
また、本実施形態のプリフォーム10の全体形状は、図2に示すように、長手方向に延びる有底筒状である。プリフォーム10の上側には、上側に開口する筒状の首部11が形成され、プリフォーム10の下側には底部12が臨む。また、首部11と底部12の間は胴部13によって接続されている。特に限定するものではないが、プリフォーム10の胴部13の厚さは、例えば2.5mm~7.0mm(好ましくは3.0mm~5.5mm)に設定される。
なお、プリフォーム10の上記形状はあくまで一例であって、例えばプリフォーム10は、下向きに凸となる有底椀状などであってもよい。
【0020】
また、容器およびプリフォーム10の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0021】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型27は開放されずにそのままプリフォーム10を保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。
【0022】
(温度調整部22)
温度調整部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム10の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度をブロー成形に適した温度(例えば約90℃~105℃)かつ賦形される容器形状に適した温度分布を備えるように調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能も担う。
【0023】
図3は、温度調整部22の構成例を示す図である。温度調整部22は、温度調整用の金型ユニットとして、プリフォームを収容可能なキャビティ型(温調ポット)41と、エア導入部材42を有している。
【0024】
キャビティ型41は、射出成形部21で製造されたプリフォーム10と略同じ形状の温調空間を有する金型である。キャビティ型41の内部には、温度調整媒体(冷媒)の流れる流路(不図示)が形成されている。そのため、キャビティ型41の温度は、温度調整媒体により所定の温度に保たれる。
なお、キャビティ型41の温度調整媒体の温度は特に限定されるものではないが、例えば、5℃~80℃、好ましくは30℃から60℃の間の範囲内で適宜選択することが可能である。
【0025】
エア導入部材42は、エア供給部(不図示)と接続されたエア導入ロッド43と、嵌合コア44とを有し、ネック型27およびプリフォーム10の内側に挿入される。エア導入部材42は、ネック型27に挿入された状態においてプリフォーム10の首部11に気密可能に当接される。エア導入ロッド43および嵌合コア44はいずれも中空の筒状体であり、エア導入ロッド43は嵌合コア44の内側に同心状に配置されている。
【0026】
エア導入ロッド43の内部はエア供給部からの圧縮空気(エア、気体状の冷媒)を導く流路を構成し、エア導入ロッド43の先端はプリフォーム10の底面近傍まで挿入される。また、プリフォーム10の底部に臨むエア導入ロッド43の先端には、プリフォーム10内に圧縮空気を給気または排気するための開口43aが形成されている。
【0027】
嵌合コア44は、エア導入ロッド43がネック型27の内部に挿入されたときに首部11の内周または上端面と密着し、プリフォーム10とエア導入部材42との気密を保つ。
嵌合コア44の先端は、プリフォーム10の首部11の位置まで挿入または当接される。また、嵌合コア44の先端には、プリフォーム10内からエアを排気または給気するための開口45が形成されている。また、エア導入ロッド43と嵌合コア44の間の空間は、エア排気部/給気部(不図示)と接続された排気用/給気用の流路を構成する。
【0028】
(ブロー成形部23)
ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォーム10に対して延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
ブロー成形部23は、容器の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部23は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器を製造することができる。
【0029】
(取り出し部24)
取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器の首部をネック型27から開放し、容器をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0030】
(制御装置28)
制御装置28は、例えば、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などのコンピュータで構成され、ブロー成形装置20の各部の動作を統括的に制御する。制御装置28は、例えば、搬送機構26の移送板の移動や各部の型開閉などを制御することで、射出成形部21での射出成形動作、温度調整部22での温度調整動作およびブロー成形部23でのブロー成形動作などをそれぞれ制御する。
【0031】
また、制御装置28は、ユーザインターフェースとしての表示装置および入力装置(いずれも不図示)を備える。制御装置28は、入力装置を介してユーザから各種の設定値の入力を受け付け、入力された設定値に基づき各部の動作を制御する。設定値の入力の際には、制御装置28の制御により、表示装置に設定値の入力画面が表示される。
【0032】
図4は、設定値の入力画面の一例を示す図である。
図4に示す入力画面50は、射出成形部21の射出に関する条件の入力を受け付ける画面である。入力画面50は、射出時間の表示領域51と、冷却時間の表示領域52と、スクリュー位置の表示領域53とを少なくとも表示項目として含む。
【0033】
射出時間の表示領域51には、射出成形部21での射出時間(充填+保圧)の設定値51bが入力され、当該射出時間の実測値51aと設定値51bがそれぞれ表示される。冷却時間の表示領域52には、充填および保圧の完了後における金型内での冷却時間の設定値52bが入力され、当該冷却時間の実測値52aと設定値52bがそれぞれ表示される。スクリュー位置の表示領域53には、現在のスクリュー位置の実測値が表示される。なお、本実施形態において、冷却時間の設定値52bはゼロに設定されるものとする。また、冷却時間の実測値52aも設定値52bと同様に通常ゼロを示す。
【0034】
入力画面50は、射出装置25のスクリューの位置を示すインジケータ54と、充填、保圧の各工程でのスクリューの位置を設定するための設定表示領域55をさらに含む。設定表示領域55は、充填工程時において射出装置25のスクリューの移動速度を変える位置条件が設定される設定表示領域55aと、保圧工程時において射出装置25のスクリューを一定圧かつ低速で前進させる時間が設定される設定表示領域55bと、スクリューの動作制御を速度制御から圧力制御に切り替える位置が設定される設定表示領域55c、を備える。
ここで、設定表示領域55aでは、スクリューの動作が速度ベースで制御される充填工程で、その速度が変更される位置が設定される。設定表示領域55bでは、スクリューの動作が圧力ベースで制御される保圧工程でその経過時間が設定される。
【0035】
また、入力画面50は、射出装置25のスクリューを稼働させる駆動機構(油圧ポンプ等)の充填工程時の動作条件を設定するための第1表示領域56と、射出装置25のスクリューを稼働させる駆動機構(油圧ポンプ等)の保圧工程時の動作条件を設定するための第2表示領域57をさらに含む。
【0036】
第1表示領域56および第2表示領域57の上段側は、射出装置25のスクリューの圧力に対応する駆動機構(油圧ポンプ等)側の圧力の設定値58をそれぞれ示す。上記の圧力の設定値58は、例えば、油圧ポンプから流れる作動油の吐出圧や、電動モータ駆動式ではロードセル等が検出する圧力等である。また、第1表示領域56および第2表示領域57の下段側は、射出装置25のスクリューの速度に対応する駆動機構(油圧ポンプ等)側のパラメータの設定値59をそれぞれ示す。上記のパラメータの設定値59は、例えば、油圧ポンプから流れる作動油の流量や、電動モータ式ではエンコーダー等で検出される距離等である。
【0037】
図4の入力画面50において、第1表示領域56には、充填工程に相当する第1段から第3段までの圧力の設定値58および流量速度(またはスクリューの速度)の設定値59が入力されて表示される。また、第2表示領域57には、保圧工程に相当する第4段、第5段の圧力の設定値58および速度の設定値59が入力されて表示される。また、設定表示領域55には、充填工程に相当する第1段と第2段および第2段と第3段の流量速度(またはスクリューの速度)を変更する位置の設定値が入力されて表示される。
【0038】
すなわち、入力画面50の右から順に、第1段では、圧力12.0Mpaで定格(油圧ポンプによる作動油の吐出量が最大の時)の40.0%の流量速度(定格時の作動油の流速に対する割合)で射出装置25を運転する充填工程の設定が示されている。また、第2段では、圧力12.0Mpaで定格の99.0%の流量速度で射出装置25を運転する充填工程の設定が示されている。また、第3段では、圧力12.0Mpaで定格の99.0%の流量速度で射出装置25を運転する充填工程の設定が示されている。また、第4段では、圧力2.5Mpaで定格の25.0%の流量速度で射出装置25を運転する保圧工程の設定が示されている。また、第5段では、圧力2.0Mpaで定格の25.0%の流量速度で射出装置25を運転する保圧工程の設定が示されている。
【0039】
<ブロー成形方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法について説明する。
図5は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【0040】
(ステップS101:射出成形工程)
図2に示すように、射出成形部21において、射出キャビティ型31、射出コア型32および搬送機構26のネック型27で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォーム10が製造される。
【0041】
ここで、図6を参照して、本実施形態における射出成形部21の動作例を説明する。図6(A)は、本実施形態の射出成形部21の動作を示し、図6(B)は、後述する比較例(従来方法)での射出成形部の動作を示している。なお、図6の横軸は時間である。
【0042】
図6(A)に示すように、本実施形態の射出成形部21では、時点t0から時点t1の期間において、型締めされた金型内に樹脂材料の射出(充填および保圧)が行われる。時点t1において樹脂材料の射出(充填および保圧)が完了すると、射出成形部21の金型内でのプリフォーム10の冷却ステップを行わずに、射出成形部21の金型が型開きされる。
【0043】
射出成形部21の金型が型開きされると、高温状態のプリフォーム10が射出キャビティ型31、射出コア型32から離型される。次に、搬送機構26の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持された高温状態のプリフォーム10は温度調整部22に搬送される。その後、次回の射出成形のために、射出成形部21の金型が型閉じした後に型締めされる。上記の動作が、図6(A)の時点t1から時点t2の期間に行われる。
【0044】
一方、射出装置25は、時点t1で樹脂材料の射出が終了すると、次回の射出成形のために樹脂材料の可塑化混練と計量を行う。図6(A)の例では、射出装置25の計量は時点t3に終了するものとする。
【0045】
図6(A)の例では、射出成形部21の金型の型締めが終了した時点t2では射出装置25の計量が終了していないため、次回の射出成形を開始することはできない。その後の時点t3では、金型の型締めと射出装置25の計量がいずれも終了しているため、次回の射出成形を開始することができる。そのため、射出成形部21では、次回分の射出成形のサイクルが時点t3から開始される。
【0046】
また、射出装置25の計量の所要時間(t1~t3)が、上記の型開き、回転および型締めからなるドライサイクルの所要時間(t1~t2)よりも短い場合、型締めよりも計量が先に終了する。そのため、上記の場合には、型締めの完了時点t2から次回分の射出成形のサイクルが開始されることになる。
このように、本実施形態では、樹脂材料の射出(充填および保圧)が完了してから、ドライサイクルの終了または射出装置25の計量の終了のいずれか遅い方のタイミングに合わせて次回分の射出成形が開始される。
【0047】
また、図7を参照して、本実施形態のブロー成形方法におけるプリフォーム10の温度変化を説明する。図7の縦軸はプリフォーム10の温度を示し、図7の横軸は時間を示す。図7において、本実施形態のプリフォーム10の温度変化例は図7中(A)で示す。また、後述する比較例のプリフォームの温度変化例は図7中(B)で示す。なお、各工程間の空白は、プリフォーム10または容器の移送等に要する時間であり、いずれも同じ長さである。
【0048】
本実施形態においては、樹脂材料の融点以上の温度で樹脂材料が射出成形されると、射出成形部21では充填および保圧の完了直後に型開きされ、充填および保圧の完了後は金型内でのプリフォーム10の冷却を行わずに温度調整部22にプリフォーム10が搬送される。なお、プリフォーム10の射出成形条件を設定する画面では、冷却時間がゼロに設定されている。そして、温度調整部22でプリフォーム10の冷却および温度調整を行う。
【0049】
本実施形態では、射出成形部21の金型内において保圧のない状態でプリフォーム10が冷却されないので、射出成形部21でプリフォーム10のヒケが生じない。
また、本実施形態では、プリフォーム10の冷却時間が設定されないため、プリフォームのスキン層(固化状態にある表面層)は従来よりも薄く、コア層(軟化状態または溶融状態にある内部層)は従来よりも厚く形成される。つまり、比較例と比べて、スキン層とコア層との間の熱勾配が大きく、高温で保有熱が高いプリフォーム10が成形される。
【0050】
本実施形態のプリフォーム10は、比較例よりも高い離型温度で射出成形部21から離型され、温度調整部22へと搬送される。温度調整部22への移動に伴って、プリフォーム10はスキン層とコア層間の熱交換(熱伝導)による均温化が進む。また、外気との接触により、プリフォーム10は外表面から若干冷却される。しかし、本実施形態のプリフォーム10の温度は、温度調整部22への搬入時まで比較例と比べて非常に高い状態(例えば、材料がPETの場合は表面温度で130℃以上)のまま維持される。
【0051】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度(ブロー温度)に近づけるための冷却および温度調整が行われる。ブロー温度は、例えばPET樹脂では90℃~105℃に設定される。なお、ブロー温度は低温の方がプリフォーム10の延伸配向性が良好になり容器の強度(物性)を高めることができる場合もある。そのため、ブロー温度は、例えばPET樹脂では90℃~95℃に設定してもよい。
【0052】
図7に示すように、温度調整部22では、プリフォーム10の温度がブロー温度まで低下され、その後、ブロー成形が行われるまでプリフォーム10の温度はブロー温度に維持される。温度調整部22では高温状態のプリフォームを急冷するため、徐冷した場合に生じうる球晶生成結晶化による白化(白濁化)も抑制される。
【0053】
温度調整工程では、図3に示すように、まず、プリフォーム10がキャビティ型41に収容される。続いて、キャビティ型41に収容されたプリフォーム10の首部にエア導入部材42が挿入される。このとき、プリフォーム10の首部11と嵌合コア44が密着して両者の気密が保たれた状態となる。
【0054】
その後、プリフォーム10の冷却ブロー(クーリングブロー)が行われる。本実施形態のプリフォーム10の冷却ブローでは、例えば、エア導入ロッド43からプリフォーム10の底部側に圧縮空気を導入し、プリフォーム10の首部側から圧縮空気を排気する。
【0055】
冷却ブローでは、エア導入ロッド43の開口43aから圧縮空気が噴出するため、エア導入ロッド43の開口43aに臨むプリフォーム10の底部12には低温の圧縮空気が接触する。プリフォーム10は、内部を流れる圧縮空気により内側から冷却されるが、圧縮空気の温度はプリフォーム10との熱交換で胴部13や首部11に向かうにつれて次第に温度が上昇してゆく。そのため、冷却ブローでは、プリフォーム10の首部11や胴部13に比べてプリフォーム10の底部12が局所的に強く冷却される。なお、冷却ブローは、嵌合コア44の先端の開口45から圧縮空気を噴出させ、エア導入ロッド43の開口43aから排気させる方法でもよい。
【0056】
また、温度調整部22でのプリフォーム10は、内側から圧縮空気の圧力を受けて所定の温度に保たれたキャビティ型41と接触し続ける。そのため、温度調整工程では、プリフォーム10は外側からブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。なお、温度調整工程では、プリフォーム10の形状はキャビティ型41で維持されて大きく変化することはない。
【0057】
温度調整工程の後、搬送機構26の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持された温度調整後のプリフォーム10がブロー成形部23に搬送される。
【0058】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッド(縦軸延伸部材)を降下させてプリフォーム10の底部を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器にブロー成形される。なお、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム10の底部と接触しない下方の位置で待機し、型閉前または型閉後に成形位置まで素早く上昇する。
【0059】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型および底型が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の移送板が所定角度回転するように移動し、容器が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器の首部がネック型27から開放され、容器がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0060】
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。その後、搬送機構26の移送板を所定角度回転するように移動させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。ブロー成形装置20の運転時には、1工程ずつの時間差を有する4組分の容器の製造が並列に実行される。
【0061】
なお、ブロー成形装置20の構造上、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24で移送板が停止している時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各部間における移送板の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0062】
次に、図6(B)、図7を参照して、比較例(従来方法)における射出成形工程の動作と、プリフォームの温度変化例について説明する。
【0063】
図6(B)に示すように、比較例の射出成形部では、時点t0から時点t11の期間において、型締めされた金型内に樹脂材料の射出(充填および保圧)が行われる。その後、時点t11から時点t12の期間において、保圧のない状態で金型内でのプリフォームの冷却が行われる。図7に示すように、比較例では、射出成形部の金型内でプリフォームがブロー温度よりも低いか略同程度の温度まで冷却される。
【0064】
時点t12においてプリフォームの冷却が終了すると、射出成形部の金型が型開きされて金型内で冷却されたプリフォームが射出キャビティ型、射出コア型から離型される。次に、搬送機構の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型に保持されたプリフォームは温度調整部に搬送される。その後、次回の射出成形のために、射出成形部の金型が型閉じした後に型締めされる。上記の動作が、図6(B)の時点t12から時点t14の期間に行われる。
【0065】
一方、射出装置は、時点t11で樹脂材料の射出が終了すると、次回の射出成形のために樹脂材料の可塑化混練と計量を行う。図6(B)では、射出装置の計量は、ドライサイクルの期間中(t12~t14)である時点t13に終了する。そのため、図6(B)に示す比較例では、次回分の射出成形のサイクルが時点t14から開始される。
【0066】
比較例では、射出成形部の金型内でプリフォームを冷却する。そのため、比較例では冷却時間(t11~t12)を含む分、射出成形工程の1サイクルが本実施形態よりも長くなる。
【0067】
また、比較例では、射出成形部の金型内で保圧のない状態でプリフォームを冷却するので、冷却中にプリフォームの収縮が促進されてプリフォームにヒケが生じやすい。比較例においてプリフォームのヒケを抑制する場合には、本実施形態と比べて射出(充填および保圧)の時間を長く確保しなければならず、射出成形工程の1サイクルが本実施形態よりもさらに長くなってしまう。図6(B)では、射出の時間のうちヒケ抑制の延長分の時間を符号αで示している。
【0068】
一例として、本実施形態および比較例における射出成形工程の1サイクルの所要時間をそれぞれ示す。ここでは、プリフォームの胴部厚を4.0mm、射出(充填および保圧)の時間を8秒、冷却の時間を6.5秒、計量の時間を8秒、ドライサイクルの時間を4秒とする。
【0069】
上記の条件において、本実施形態での射出成形工程の1サイクルは16秒(8+8)となる。本実施形態での機械動作は計量時間中に行われるため、本実施形態でのドライサイクルの時間はゼロと仮定できる。一方、比較例での射出成形工程の1サイクルは18.5秒(8+6.5+4)となる。ただし、上記の比較例の場合、金型内での冷却によるヒケが生じる。そのため、ヒケを抑制するために射出時間を延ばすと比較例の射出成形工程の所要時間はさらに延び、実際には18.5秒よりも長くなる(例えば、20秒以上)。
【0070】
なお、ホットパリソン式のブロー成形の各工程は律速段階である射出成形工程に合わせて所要時間が設定され、ホットパリソン式のブロー成形の連続したサイクルでは比較例との時間差が工程数分積算される。そのため、本実施形態によれば、比較例と比べてブロー成形の1サイクルを大幅に短縮できることが分かる。
【0071】
また、本実施形態によれば、射出時間と計量時間がほぼ等しく、射出時間や計量時間がドライサイクルの時間よりも短い場合(射出時間≒計量時間<ドライサイクル)には、比較例(従来法)と比べて成形サイクルの時間を非常に短縮することができる。例えば、射出時間と計量時間が3.5秒でドライサイクルが4秒の場合は、成形サイクル(ブロー成形を含む1サイクル)は7.5秒となる。また、計量時間がドライサイクルの時間以下の場合(計量時間<ドライサイクル)にも、比較例(従来法)と比べて成形サイクルの時間を短縮することができる。例えば、射出時間が5秒、計量時間が4秒、ドライサイクルが4秒の場合は、成形サイクルは9秒となる。さらに、保圧工程を行わないため消費材料が低減でき、プリフォーム10や容器の軽量化も実現できる。一例として、本実施形態では、保圧を行った場合の同サイズのプリフォームと比べ、2~5パーセント程度の軽量化が実現できる。
【0072】
以下、本実施形態の作用効果を述べる。
本実施形態の射出成形工程(S101)では、樹脂材料の充填および保圧の完了後に射出キャビティ型31、射出コア型32を型開きして、充填および保圧の完了後はプリフォーム10を金型内で冷却せずに搬出する。
【0073】
本実施形態では、射出成形部21の金型内において保圧のない状態でプリフォーム10が冷却されることがないので、射出成形部21でプリフォーム10が収縮してヒケが生じる事象を抑制できる。
また、本実施形態では、射出成形工程で保圧のない状態でプリフォーム10を金型内で冷却する冷却時間がなく、律速段階である射出成形時間を短縮できるので、容器を高速な成形サイクルで製造できる。
【0074】
また、本実施形態では、温度調整工程(S102)では、プリフォーム10内に圧縮空気を導入してプリフォーム10を冷却する冷却ブローを行う。プリフォーム10の冷却は温度調整部22の冷却ブローで賄うことができるので、プリフォーム10が冷却不足となることはない。
金型内で冷却されずに温度調整部22に搬入されたプリフォーム10は非常に高温であり、徐冷すると結晶化による白化やプリフォーム10の形状変化(ドローダウン)などが生じうる。しかし、本実施形態では圧縮空気を用いた冷却ブローにより温度調整部22でプリフォーム10が急冷されるので、白化のないプリフォーム10でのブロー成形が可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、比較例のように温度調整部22でブロー温度以下のプリフォームを再加熱する必要はない。そのため、プリフォームの温度調整が効率的となってブロー成形のプロセスをより簡易にすることができる。
【0076】
なお、例えば、椀状のプリフォームを適用する場合、従来は胴部に対する底部の肉厚比を0.5として底部をかなり薄く成形していた。本実施形態では、温度調整部22の冷却ブローの効果により、胴部に対する底部の肉厚比を0.85まで引き上げることが可能である。これにより、底部のゲート付近での樹脂の流動抵抗が低下してせん断発熱が少なくなるので、底部のゲート付近におけるプリフォームの白化を抑制することが容易となる。
【0077】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0078】
上記実施形態ではブロー成形装置の一例として、ホットパリソン式の4ステーション型の装置構成を説明した。しかし、本発明のブロー成形装置は上記実施形態に限定されず、射出成形部、温度調整部、ブロー成形部を備えるものであれば、4ステーション型以外の他のブロー成形装置に適用してもよい。
【0079】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10…プリフォーム、20…ブロー成形装置、21…第1射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、25…射出装置、26…搬送機構、31…射出キャビティ型、32…射出コア型、41…キャビティ型、42…エア導入部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7