(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】スターリングエンジン、フルイダインポンプ、熱機関、及び、揚水発電システム
(51)【国際特許分類】
F02G 1/043 20060101AFI20250310BHJP
F03B 17/06 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
F02G1/043 D
F03B17/06
(21)【出願番号】P 2022581142
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2021005455
(87)【国際公開番号】W WO2022172434
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-04-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523157977
【氏名又は名称】森嶋 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊介
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-042499(JP,A)
【文献】特開平09-126051(JP,A)
【文献】特開昭59-096487(JP,A)
【文献】特開昭53-131426(JP,A)
【文献】特開昭60-062351(JP,A)
【文献】特開2015-034544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0250788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 17/06
F02G 1/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から水が供給され、当該水を溜めることができる中部タンクと、
鉛直方向において前記中部タンクよりも下方に位置し、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる下部タンクと、
鉛直方向において前記中部タンクよりも下方に位置し、前記中部タンクから流入する水により発電し、発電に用いた水を前記下部タンクに排出する発電機と、
前記下部タンクの水を前記中部タンクに揚水する1つ以上の第1フルイダインポンプと、を備える
ことを特徴とする揚水発電システム。
【請求項2】
鉛直方向において前記中部タンク及び前記下部タンクよりも上方に位置し、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる上部タンクと、
前記中部タンクの水を前記上部タンクに揚水する1つ以上の第2フルイダインポンプと、を備え、
前記発電機は、前記上部タンクから流入する水、及び、前記中部タンクから流入する水により発電する
ことを特徴とする請求項1に記載の揚水発電システム。
【請求項3】
各前記タンクよりも上方に設けられ、雨水を溜めることができる雨水タンクと、
鉛直方向において前記雨水タンクの下方に設けられ、前記雨水タンクから流入する雨水により動力を得て駆動するポンプであり、前記下部タンクの水を前記上部タンクに揚水する雨水駆動揚水ポンプとを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の揚水発電システム。
【請求項4】
前記フルイダインポンプの高熱部に熱負荷を与えることができる吸熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプに熱を入力する加熱部と、
前記吸熱用ループヒートパイプから熱を放出することができる放熱部とを備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の揚水発電システム。
【請求項5】
圧縮ポンプを有し、前記フルイダインポンプの高熱部に熱負荷を与えることができる環状パイプと、
熱交換用ヒートシンクを介して前記環状パイプに熱が伝達される吸熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプに熱を入力する加熱部と、
前記吸熱用ループヒートパイプから熱を放出することができる放熱部とを備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の揚水発電システム。
【請求項6】
前記放熱部は、
熱を放出する第2放熱用ヒートシンクを有する放熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプの熱を前記放熱用ループヒートパイプに伝達可能なシリンダ及びピストンとを備える
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の揚水発電システム。
【請求項7】
流路に連通するフルイダインポンプと、
雨水タンクの鉛直方向下方に設けられ、当該雨水タンクから流入する雨水により動力を得て駆動するポンプであり、前記流路に設けられる雨水駆動循環ポンプとを備え、
前記雨水駆動循環ポンプは、前記フルイダインポンプをバイパスして、前記フルイダインポンプにより揚水される循環水を揚水可能である、
ことを特徴とする揚水発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリングエンジン、フルイダインポンプ、熱機関、及び、揚水発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に示すように、従来の揚水発電システムは、水を貯蔵するタンク(池)が2つ設けられており、下部のタンクの水を上部のタンクに送り、上部のタンクから発電機の水車に水を送ることで発電する。このような揚水発電では、揚水を行うために系外から電力を主としたエネルギーを供給する方法が一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、下記特許文献1のような従来の揚水発電システムは、余剰電力を一時的に水の位置エネルギーに変換する電池のようなものであり、発電するために充電が必要となる。
【0005】
本発明では、このような課題に鑑み、揚水発電を例えば太陽光発電装置又は排熱回収発電装置として応用でき、また、雨水による流水エネルギーを発電エネルギーとして利用でき、系外からの電力の入力が無くとも電力を出力できるようにし、発電効率の向上を図ることができる、スターリングエンジン、フルイダインポンプ、熱機関、及び、揚水発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点における揚水発電システムは、
外部から水が供給され、当該水を溜めることができる中部タンクと、
鉛直方向において前記中部タンクよりも下方に位置し、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる下部タンクと、
鉛直方向において前記中部タンクよりも下方に位置し、前記中部タンクから流入する水により発電し、発電に用いた水を前記下部タンクに排出する発電機と、
前記下部タンクの水を前記中部タンクに揚水する第1フルイダインポンプとを備える
ことを特徴とする。
【0007】
より好適には、
鉛直方向において前記中部タンク及び前記下部タンクよりも上方に位置し、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる上部タンクと、
前記中部タンクの水を前記上部タンクに揚水する第2フルイダインポンプとを備え、
前記発電機は、前記上部タンクから流入する水、及び、前記中部タンクから流入する水により発電する
ことを特徴とする。
【0008】
より好適には、
各前記タンクよりも上方に設けられ、雨水を溜めることができる雨水タンクと、
鉛直方向において前記雨水タンクの下方に設けられ、前記雨水タンクから流入する雨水により動力を得て駆動するポンプであり、前記下部タンクの水を前記上部タンクに揚水する雨水駆動揚水ポンプとを備える
ことを特徴とする。
【0009】
より好適には、
前記フルイダインポンプの高熱部に熱負荷を与えることができる吸熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプに熱を入力する加熱部と、
前記吸熱用ループヒートパイプから熱を放出することができる放熱部とを備える
ことを特徴とする。
【0010】
より好適には、
圧縮ポンプを有し、前記フルイダインポンプの高熱部に熱負荷を与えることができる環状パイプと、
熱交換用ヒートシンクを介して前記環状パイプに熱が伝達される吸熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプに熱を入力する加熱部と、
前記吸熱用ループヒートパイプから熱を放出することができる放熱部とを備える
ことを特徴とする。
【0011】
より好適には、
前記放熱部は、
熱を放出する第2放熱用ヒートシンクを有する放熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプの熱を前記放熱用ループヒートパイプに伝達可能なシリンダ及びピストンとを備える
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点における外燃機関は、
スターリングエンジン又はフルイダインポンプと、
前記スターリングエンジン又は前記フルイダインポンプの高熱部に熱負荷を与えることができる吸熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプに熱を入力する加熱部とを備える
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点における外燃機関は、
スターリングエンジン又はフルイダインポンプと、
圧縮ポンプを有し、前記スターリングエンジン又は前記フルイダインポンプの高熱部に熱負荷を与えることができる環状パイプと、
熱交換用ヒートシンクを介して前記環状パイプに熱が伝達される吸熱用ループヒートパイプと、
前記吸熱用ループヒートパイプに熱を入力する加熱部とを備える
ことを特徴とする。
【0014】
より好適には、
前記吸熱用ループヒートパイプから熱を放出することができる放熱部を備える
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の観点における外燃機関は、
流路に連通するフルイダインポンプと、
前記流路のうち前記フルイダインポンプとの接続箇所よりも下流側に設けられる流量調整弁とを備える
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の観点における揚水発電システムは、
流路に連通するフルイダインポンプと、
雨水タンクの鉛直方向下方に設けられ、当該雨水タンクから流入する雨水により動力を得て駆動するポンプであり、前記流路に設けられる雨水駆動循環ポンプとを備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る揚水発電システムによれば、太陽光エネルギーなどの熱エネルギー、さらに、雨水などの流水エネルギーを電力に変換することができ、排熱回収発電への応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る揚水発電システムの構成を説明する計装図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る揚水発電システムによる処理について説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例2における送熱機構の構成を説明する計装図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る揚水発電システムによる処理(通常運転)について説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例2に係る揚水発電システムによる処理(放熱運転)について説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例3における送熱機構の構成を説明する計装図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る揚水発電システムについて、実施例にて図面を用いて説明する。
なお、下記実施例において用いている第1,2フルイダインポンプは、内部に流体を有し、これを用いて作動するが、本発明は、この流体の代わりにピストンを用いた第1,2スターリングエンジンを用いるようにしてもよい。また、第1フルダインポンプ(スターリングエンジン)及び第2フルダインポンプ(スターリングエンジン)は、それぞれ1つずつに限定されるものではなく、1つ以上であればいくつであってもよい。
【0020】
[実施例1]
図1に示すように、本実施例に係る揚水発電システム1は、主たる構成として、上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13、純水器14、主発電機15、補発電機16、第1フルイダインポンプ17(Fluidyne Pump)、第2フルイダインポンプ18、雨水タンク19、及び、雨水駆動揚水ポンプ20を備えている。
【0021】
上部タンク11、中部タンク12、及び、下部タンク13には、流路Aにより外部からの水が給水される。流路Aには、水から純水を精製する純水器14が設けられており、純水器14の下流側には流量計FT1が設けられている。また、流路Aは、流量計FT1の下流側において流路A1、流路A2、流路A3の3つに分岐している。
【0022】
流路A1、流路A2、流路A3は、それぞれ上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13に接続している。また、流路A1、流路A2、流路A3には、それぞれ流量調節器FC1,FC2,FC3が設けられている。
【0023】
上部タンク11は、鉛直方向において中部タンク12及び下部タンク13よりも上方に位置し、流路A,A1を介して純水器14の下流側に設けられ、純水器14を通過した純水(以下、単に「水」と記載)を溜めることができる。また、上部タンク11には、上部タンク用ヒータ21が設けられている。さらに、上部タンク11の天井には、第1通気管VE1の一端、第2通気管VE2の一端、及び、第3通気管VE3の一端が接続している。
【0024】
また、上部タンク11の底部には流路Bが接続している。この流路Bには仕切弁VA1が設けられている。
【0025】
中部タンク12は、鉛直方向において上部タンク11よりも下方に位置するとともに下部タンク13よりも上方に位置し、流路A,A2を介して純水器14の下流側に設けられ、純水器14を通過した水を溜めることができる。また、中部タンク12には、中部タンク用ヒータ22が設けられている。さらに、中部タンク12の天井には、第2通気管VE2の他端、及び、第4通気管VE4の一端が接続している。
【0026】
また、中部タンク12の底部には流路Cが接続しており、流路Cは流路Bの仕切弁VA1よりも下流側の地点に合流している。そして、この流路Cには閉仕切弁C1が設けられている。また、流路Bは、流路Cとの合流地点よりも下流側において、流路B1,B2に分岐している。
【0027】
下部タンク13は、鉛直方向において上部タンク11及び中部タンク12よりも下方に位置し、流路A,A3を介して純水器14の下流側に設けられ、純水器14を通過した水を溜めることができる。また、下部タンク13には、下部タンク用ヒータ23が設けられている。さらに、下部タンク13の天井には、第3通気管VE3の他端、及び、第4通気管VE4の他端が接続している。さらに、下部タンク13には流路Dが接続している。
【0028】
主発電機15は、鉛直方向において上部タンク11及び中部タンク12よりも下方に位置するとともに、下部タンク13よりも上方に位置し、流路B,B1を介して上部タンク11の下流側に設けられるとともに、流路B(の一部)、流路B1、流路Cを介して中部タンク12の下流側に設けられている。また、主発電機15には流路Dが接続している。
【0029】
主発電機15は、自身よりも鉛直方向上方に位置する上部タンク11から流入する水により水車が回転することで発電し、発電に用いた水は流路Dに排出される。ただし、閉仕切弁C1を開状態とすることで、自身よりも鉛直方向上方に位置する中部タンク12から流入する水も用いることも可能である(主発電機15が上部タンク11から流入する水を用いて発電するか、中部タンク12から流入する水を用いて発電するかを、弁VA1,C1により切り替えられる)。
【0030】
補発電機16は、鉛直方向において上部タンク11及び中部タンク12よりも下方に位置するとともに、下部タンク13よりも上方に位置し、流路B,B2を介して上部タンク11の下流側に、かつ、流路B(の一部)、流路C、流路B2を介して中部タンク12の下流側に設けられている。また、補発電機16には流路Eが接続している。
【0031】
また、流路B1における主発電機15の上流側には遮断弁FC4が、さらにその上流側には流量計FT7が、流路B2における補発電機16の上流側には遮断弁FC5が、さらにその上流側には流量計FT8が、それぞれ設けられている。
【0032】
補発電機16は、自身よりも鉛直方向上方に位置する上部タンク11から流入する水により水車が回転することで発電し、発電に用いた水は流路Eに排出される。ただし、主発電機15同様、閉仕切弁C1を開状態とすることで、自身よりも鉛直方向上方に位置する中部タンク12から流入する水も用いることも可能である(補発電機16が上部タンク11から流入する水を用いて発電するか、中部タンク12から流入する水を用いて発電するかを、弁VA1,C1により切り替えられる)。なお、流路Eは流路Dに合流している。
【0033】
下部タンク13は、流路D,Eを介して主発電機15及び補発電機16に連通しているため、(純水器14から流入する水とともに)主発電機15及び補発電機16から流入する水を溜めることができる。また、下部タンク13には流路Fが接続している。
【0034】
中部タンク12は、流路F及び後述の流路Jを介して下部タンク13の下流側に設けられている。また、中部タンク12には流路Gが接続しており、上部タンク11は、流路G、後述の流路L、及び、後述の流路I(の一部)を介して中部タンク12の下流側に、かつ、後述の流路Iを介して下部タンク13の下流側に設けられている。
【0035】
第1フルイダインポンプ17は流路Fに設けられており、下部タンク13の水を中部タンク12に揚水する。第2フルイダインポンプ18は流路Gに設けられており、中部タンク12の水を上部タンク11に揚水する。
【0036】
ここで、フルイダインポンプについて簡単に説明する。なお、以下では第1フルイダインポンプ17を例に挙げて説明しているが、第2フルイダインポンプ18も同様の構成である。
【0037】
第1フルイダインポンプ17は、鉛直方向下方において流路Fに連通するU字状の第1管片17A、管片17Aの両上端部を、勾配を付けて連通する直線状の第2管片17B、第1管片17Aの両上端部にそれぞれ設けられる高熱部17C及び冷却部17Dを備えている。また、第2管片17B内は気相部となり、熱再生機(圧力損失が少なく、熱容量をもったもの)17BA、及び、熱再生機17BAよりも冷却部17D側に設けられた遮断弁17BBが備えられている。遮断弁17BBは、第2管片17B内における高熱部17C側の気相部温度が所定の温度に達したときに開状態となるものとする。なお、第1管片17A内には流路F内の水が入り込んでいる。
【0038】
高熱部17C(熱を気相部に伝える部分)に高熱量を供給できれば仮に遮断弁17BBが無くても自然とフルイダインの振動現象が発生する。しかし、例えば太陽光を熱源とする場合、入熱量は朝日からはじまり、徐々に増加する。そのような状況では、第2管片17B内の気相部全体が均一に温まるだけで振動現象は生じにくい。遮断弁17BBを設け、これを閉状態とすることで、第2管片17Bのうち遮断弁17BBより高熱部17C側だけが体積が増加し、結果として第1管片17A内の水面に差が生じる。水面に差が生じた段階で遮断弁17BBを開状態とすることで振動現象のきっかけを与えることができる。
【0039】
このようにして構成された第1フルイダインポンプ17は、まず、第1管片17A内において、高熱部17C側端部の水位が押し下げられ、冷却部17D側端部の水位が押し上げられているとする。次に、冷却部17D側端部の水位は重力によって下がり始め、同時に高熱部17C側端部の水位は上がり始める。さらに、第2管片17B内の気相部では高熱部17C側の気体が冷却部17D側へ流れ始める。
【0040】
このとき、高熱部17C側にて保有していた熱は熱再生機17BAにて奪われ、冷たくなった気体が冷却部17D側へ流れる。冷却部17D側ではクーラ(図示略)によってさらに気体温度が下がる。
【0041】
これにより、気相側全体の体積が低下する。それに伴って気相部の圧力低下が発生し、その力によって第1管片17A内の液相部が配管F(後述するフルイダインポンプ用逆止弁17Fの上流側)の水を吸引する。
【0042】
高熱部17C側の水位が冷却部17D側の水位よりも上がることで、再び高熱部17C側の水位が下がり始める。同時に、冷却部17D側の水位は上がり始める。
【0043】
気相部では冷却部17D側から高熱部17C側へ気体が移動する。熱再生機17BAを通過することで、先ほど奪われた熱を回収して高熱部17C側へ流れる。高熱部17C側では高熱部17Cによってさらに気体の温度が上昇する。これによって、気相部全体の圧力が上昇し、第1管片17Aは流路Fから吸引した配管F(後述するフルイダインポンプ用逆止弁17Eの下流側)に水を押し出そうとする。
【0044】
上述の繰り返しによって第1管片17Aが水の吸引と吐出を繰り返す力がポンプとして作用し、流路Fにおける、第1フルイダインポンプ17との接続箇所の前後に、同方向の2つのフルイダインポンプ用逆止弁17E,17Fを設けることで、ダイヤフラムポンプのようにして流体を流すことができる。
以上がフルイダインポンプについての簡単な説明である。
【0045】
また、流路Fは、第1フルイダインポンプ17との接続箇所よりも下流側に流量調整弁FO1が、流量調整弁FO1の下流側に流量計FT2が、流量計FT2の下流側に三方弁T1が設けられており、流路Gは、第2フルイダインポンプ18との接続箇所よりも下流側に流量調整弁FO2が、流量調整弁FO2の下流側に流量計FT3が、流量計FT3の下流側に三方弁T2が設けられている。
【0046】
ちなみに、フルイダインポンプ17,18は、熱を与えることで内部エネルギーの増加と仕事を行うものである。すなわち、入熱=内部エネルギー上昇+仕事+排熱+損失となる。そして、第1管片17A内の水の振動の振幅が大きいほど内部エネルギーが大きい状態となる。内部エネルギーが大きい状態の方が高熱部17C付近の流動状態が向上(ヌッセルト数が向上)し、フルイダインへの入熱量が向上する。
【0047】
したがって、内部エネルギーをある程度高めてから仕事をさせる方が効率的であり、そのために内部エネルギーが十分高まるまで流量調整弁FO1の開度を小さくしておくことが望ましい。一方、内部エネルギーが高くなりすぎるとフルイダイン内部の圧力損失が高くなりすぎ、逆に非効率となるので、流量調整弁FO1の開度を大きく開けて内部エネルギーを低下させる。このようにフルイダインの内部エネルギーを適切な状態に保ちながら、流量調整弁FO1の開度を適時調整することで効率的に揚水の仕事をさせることができる。
【0048】
そして、流路Fは、三方弁T1により流路Jの一端、及び、流路Kの一端と接続している。流路Jの他端は中部タンク12に接続しており、流路Kの他端は後述の排水管DRと合流している。さらに、流路Gは、三方弁T1により流路Lの一端、及び、流路Mの一端と接続している。流路Lの他端は後述の流路Iに合流しており、流路Mの他端は流路Kと合流している。なお、流路K、流路Mには、それぞれ逆止弁CH1,CH2が設けられている。
【0049】
上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13の各側面には、それぞれ水位計LS1,LS2,LS3が設けられている。揚水運転が働いている間、第1フルイダインポンプ17及び第2フルイダインポンプ18はそれらへの入熱に従って常に揚水を続ける。その際、各タンク11,12への揚水と各タンク11,12からの排水がバランスするように、適切に主発電機15又は補発電機16を切り替える必要がある。
【0050】
下部タンク13の水位が減少すると、主発電機15及び補発電機16の双方が発電を開始する。第1フルイダインポンプ17及び第2フルイダインポンプ18による揚水量が低下する又は揚水しなくなると、主発電機15への流路B1上に設けられた遮断弁FC4を閉じるか、又は、補発電機16への流路B2上に設けられた遮断弁FC5を閉じる。
【0051】
その際、揚水量は流量計FT2,FT3で、落水量は流量計FT7,FT8で、それぞれ監視される。主発電機15及び補発電機16を設ける理由としては、それぞれの発電機には発電効率の特性があり、落水量が小量の場合は大型の主発電機15に僅かに水を流すよりも、小流量用の補発電機16にて発電させた方が、効率が良いためである。
【0052】
また、上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13の各天井には、それぞれ空気圧計PT1,PT2,PT3が設けられている。
【0053】
さらに、上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13の各側面には、それぞれ水温計TT1,TT2,TT3が設けられている。上部タンク用ヒータ21は、水温計TT1の計測に基づき、上部タンク11の水温が第1所定温度を下回ると起動し、第2所定温度を上回ると停止する。また、中部タンク用ヒータ22は、水温計TT2の計測に基づき、中部タンク12の水温が第1所定温度を下回ると起動し、第2所定温度を上回ると停止する。そして、下部タンク用ヒータ23は、水温計TT3の計測に基づき、下部タンク13の水温が第1所定温度を下回ると起動し、第2所定温度を上回ると停止する。
【0054】
雨水タンク19は、鉛直方向において上部タンク11、中部タンク12,及び、下部タンク13よりも上方に設けられ、雨水を溜めることができるものである。雨水タンク19の底部には流路Hが接続している。
【0055】
雨水駆動揚水ポンプ20は、鉛直方向において雨水タンク19の下方に設けられ、雨水タンク19から流路Hを通じて流入する雨水により動力を得て駆動するポンプである。
【0056】
また、雨水駆動揚水ポンプ20は流路Iに設けられている。流路Iは、流路Fの第1フルイダインポンプ17よりも上流側から分岐したものであり、上部タンク11に接続している。したがって、雨水駆動揚水ポンプ20は、流路Iを通じて下部タンク13の水を上部タンク11に揚水することができる。これにより、上部タンク11は、流路F,Iを介して下部タンク13の下流側に設けられることとなり、下部タンク13の水が流入されることとなる。なお、流路Iにおける雨水駆動揚水ポンプ20よりも下流側には、流量計FT4が設けられている。
【0057】
下部タンク13には、タンク内の水を外部に排出する排水管DRが設けられている。排水管DRには閉仕切弁C2、その下流側には逆止弁CH3が設けられており、さらにその下流側には、既に説明したように流路Kが合流している。
【0058】
流路K、流路M、及び、排水管DRにより、中部タンク12、及び、下部タンク13内の水を排出可能である。これらはメンテナンス時に排水するためのものである。
【0059】
第1フルイダインポンプ17、第2フルイダインポンプ18には、それぞれ、水位計LS4,LS5、空気圧計PT4,PT5、温度計TT4,TT5、及び、流量計FT5,FT6が設けられている。これらの構成は、第1フルイダインポンプ17、第2フルイダインポンプ18の内部エネルギーの状態を監視するためのものである。既に説明したように、これらの構成により把握した内部エネルギーが低ければ、流量調整弁FO1の開度を小さくし、高すぎる場合は流量調整弁FO1の開度を大きくする。
【0060】
上部タンク11は、第1通気管VE1により外部と連通しているため、空気圧が大気圧と等しくなっており、中部タンク12及び下部タンク13は、各通気管VE2,VE3,VE4により上部タンク11と繋がっているため、やはり空気圧が大気圧と等しくなっている。
【0061】
なお、本実施例においては、上部タンク11が設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上部タンク11がなくとも成立する。すなわち、上部タンク11、及び、それに付随する諸機構(第2フルダインポンプ18、各計測器、各流路、各通気管、雨水タンク19、雨水駆動揚水ポンプ20等)を省略することもできる。
【0062】
また、本実施例においては、補発電機16が設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、補発電機16がなくとも成立する。すなわち、補発電機16、及び、流路B2,Eを省略することもできる。
【0063】
また、本実施例においては、雨水タンク19、及び、雨水駆動揚水ポンプ20が設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、雨水タンク19、及び、雨水駆動揚水ポンプ20がなくとも成立する。すなわち、雨水タンク19、雨水駆動揚水ポンプ20、及び、流路Iを省略し、流路Lが流路Iに合流するのではなく、上部タンク11に接続するものとすることもできる(ただし、既に説明したように、中部タンク12等を省略する場合は、流路Lではなく流路Jが上部タンク11に接続するようにする)。
【0064】
以上が、本実施例に係る揚水発電システム1の構成についての説明である。以下では、本実施例に係る揚水発電システム1による処理の概要について、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
ステップS1では、外部からの水が給水器を通過し、上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13にそれぞれ溜められる。なお、上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13に溜められた水の温度が所定値を下回ると、それぞれ中部タンク用ヒータ22、下部タンク用ヒータ23が起動し、当該温度を上昇させる。
【0066】
ステップS2では、水位計LS1,LS2,LS3の計測に基づき、第1フルイダインポンプ17により、下部タンク13に溜められた水を中部タンク12に揚水するとともに、第2フルイダインポンプ18により、中部タンク12に溜められた水を上部タンク11に揚水することで、上部タンク11、中部タンク12、下部タンク13の水位を調整する。
【0067】
ステップS2と並行して行われるステップS3では、雨水タンク19に溜められた雨水が流入することで、雨水駆動揚水ポンプ20が駆動し、下部タンク13に溜められた水を上部タンク11に揚水することができる。
【0068】
ステップS4では、上部タンク11に溜められた水が、主発電機15及び補発電機16に流入することで、主発電機15及び補発電機16により発電する。ただし、状況に応じて、閉仕切弁C1を開状態として、上部タンク11の水と中部タンク12からの水を併せて用いるようにしてもよく、あるいは、中部タンク12の水のみを用いるようにしてもよい。さらには、遮断弁FC4,FC5の開閉により、主発電機15、補発電機16のうち、一方を用いるようにしてもよい。ステップS4ではこのようにして水位調整を行う。なお、発電に用いられた水は下部タンク13に溜められる。
以上が、本実施例に係る揚水発電システム1による処理の概要についての説明である。これにより本実施例に係る揚水発電システム1では、連続的な発電が可能となる。
【0069】
本実施例に係る揚水発電システム1では、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる中部タンク12と、鉛直方向において中部タンク12よりも下方に位置し、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる下部タンク13と、鉛直方向において中部タンク12よりも下方に位置し、中部タンク12から流入する水により発電し、発電に用いた水を下部タンク13に排出する発電機(主発電機15のみ、あるいは、主発電機15補及び発電機16)と、下部タンク13の水を中部タンク12に揚水する第1フルイダインポンプ17とを備えているので、フルイダインポンプによって高効率で(カルノーサイクルの効率に近づけて)熱エネルギーを水の位置エネルギーへと変換することができる。また、水の位置エネルギーはタンクの位置関係に基づいて適切に設計された発電機によって高い発電効率で発電を行うことができる。
【0070】
本実施例に係る揚水発電システム1では、さらに、鉛直方向において中部タンク12及び下部タンク13よりも上方に位置し、外部から水が供給され、当該水を溜めることができる上部タンク11と、中部タンク12の水を上部タンク11に揚水する第2フルイダインポンプ18とを備え、発電機(主発電機15のみ、あるいは、主発電機15補及び発電機16)は、上部タンク11から流入する水、及び、中部タンク12から流入する水により発電するので、さらに高い発電効率で発電を行うことができる。
【0071】
本実施例に係る揚水発電システム1では、さらに、各タンク11,12,13よりも上方に設けられ、雨水を溜めることができる雨水タンク19と、鉛直方向において雨水タンク19の下方に設けられ、雨水タンク19から流入する雨水により動力を得て駆動するポンプであり、下部タンク13の水を上部タンク11に揚水する雨水駆動揚水ポンプ20とを備えているので、自然状態において高い位置エネルギーを持つ雨水タンク19の雨水を動力に利用することで、さらに高い発電効率で発電を行うことができる。
【0072】
本実施例に係る揚水発電システム1では、各タンク11,12,13に、水温計TT1,TT2,TT3、及び、タンク用ヒータ21,22,23が設けられているので、寒冷地などでタンク11,12,13内の水が凍ることを防ぐことができる。
【0073】
[実施例2]
本実施例に係る揚水発電システム2は、実施例1に係る揚水発電システム1の構成に加え、第1フルイダインポンプ17の高熱部17C(及び、第2フルイダインポンプ18の高熱部)に熱を与える送熱機構が備えられている。以下では、この送熱機構に着目して説明する。ただし、以下では第1フルイダインポンプ17の高熱部17C用の送熱機構について説明するが、第2フルイダインポンプ18の高熱部側にも同様の送熱機構が設けられるものとする。
【0074】
図3に示すように、本実施例における送熱機構2Aは、主たる構成として、吸熱用ループヒートパイプ31、加熱部32、及び、放熱部33を備えている。このうち、加熱部32及び放熱部33は、吸熱用ループヒートパイプ31に設けられている(ただし、本実施例及び後述する実施例3においては、これをループヒートパイプではなくヒートパイプとしてもよい)。
【0075】
加熱部32は、吸熱用ループヒートパイプ31中に熱を入力するものである。加熱部32は、例えば太陽光の熱を吸熱する真空管ヒートパイプから成るものとしてもよい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、内燃機関などの排熱を加熱部32の入熱に充てても良い。
【0076】
また、第1フルイダインポンプ17の高熱部17Cは、吸熱用ループヒートパイプ31上に設けられている。これにより吸熱用ループヒートパイプ31から高熱部17Cに熱負荷を与えることができる。
【0077】
放熱部33は、主たる構成として、第1放熱用ヒートシンク41、シリンダ42、ピストン43、放熱用ループヒートパイプ44、第2放熱用ヒートシンク45、第3放熱用ヒートシンク46、自動弁47、及び、電磁弁48を備え、吸熱用ループヒートパイプ31中の熱を放出することができる。
【0078】
第1放熱用ヒートシンク41は、吸熱用ループヒートパイプ31上に設けられている(
図3では高熱部17Cと離れて設けられているものとして記載しているが、実際にはほぼ同位置に設けられている。この点は後述する実施例3(
図6)の第1放熱用ヒートシンク41と熱交換用ヒートシンク51との位置関係においても同様である)。また、シリンダ42及びピストン43は、吸熱用ループヒートパイプ31の熱を放熱用ループヒートパイプ44に伝達可能なものである。
【0079】
なお、吸熱用ループヒートパイプ31は、加熱部32から高熱部17Cを通り第1放熱用ヒートシンク41までの区間が気相部となり、それ以外が液相部となる。
【0080】
シリンダ42は、一端側と他端側との間(延伸方向中央付近)に、開口部42Aを有した筒状部材であり、開口部42Aより一端側の側壁42Bの一部が第1放熱用ヒートシンク41に接するようにして設けられている。また、側壁42Bにおける、第1放熱用ヒートシンク41との接触部分は、熱伝導材料により形成されているものとする。
【0081】
ピストン43は、シリンダ42の内部に設けられており、ピストン用ヒートパイプ43A、第1ピストン用ヒートシンク43B、第2ピストン用ヒートシンク43C、仕切部材43D、及び、バネ43Eを備えている。
【0082】
ピストン用ヒートパイプ43Aは、ピストン43の軸心と同軸上に延伸する直線形状のヒートパイプである。
【0083】
第1ピストン用ヒートシンク43Bは、ピストン用ヒートパイプ43Aにおけるシリンダ42の一端側端部に設けられたヒートシンクである。
【0084】
第2ピストン用ヒートシンク43Cは、ピストン用ヒートパイプ43Aにおけるシリンダ42の他端側端部に設けられたヒートシンクである。
【0085】
仕切部材43Dは、第1ピストン用ヒートシンク43Bにおけるシリンダ42の一端側端部に設けられ、シリンダ42の内周面に対し摺動するものである。この仕切部材43Dの表面側と裏面側とで、空気が遮蔽されている。
【0086】
バネ43Eは、第2ピストン用ヒートシンク43Cにおけるシリンダ42の他端側端部に設けられ、シリンダ42の他端面の内側との間に架設されている。
【0087】
また、シリンダ42の一端(端面)には貫通孔42Cが設けられ、仕切部材43Dによって遮蔽されたシリンダ42の一端側の室Oは、貫通孔42Cにより第1放熱部用通気管VE5と連通している。
【0088】
第1放熱部用通気管VE5は、一端が貫通孔42Cに接続し、他端が自動弁47を介して気体供給装置(図示略)に接続している。
【0089】
自動弁47は、電磁弁48の開閉動作により制御される。すなわち、電磁弁48が開状態になると、計装空気が供給され、これにより、自動弁47が開状態となる。一方、気体供給装置はサービスエアを供給するものである。すなわち、自動弁47が開状態となると、気体供給装置から室Oへサービスエアが供給される。
【0090】
第3放熱用ヒートシンク46は、放熱用ループヒートパイプ44上に設けられている(ただし、本実施例及び後述する実施例3においては、これをループヒートパイプではなくヒートパイプとしてもよい)。シリンダ42は、開口部42Aより他端側の側壁42Dの一部が第3放熱用ヒートシンク46に接するようにして設けられている。また、側壁42Dにおける、第3放熱用ヒートシンク46との接触部分は、熱伝導材料により形成されているものとする。
第2放熱用ヒートシンク45は、放熱用ループヒートパイプ44上に設けられている。
【0091】
なお、シリンダ42は、一端側と他端側との間に開口部42Aを有するものとしたが、開口部42Aを有するのではなく、一端側と他端側が完全に離隔した2つの筒状部材からなるようにしてもよい。また、第1ピストン用ヒートシンク43Bに仕切部材43Dの機能を持たせるようにし、仕切部材43Dを省いてもよい。
【0092】
すなわち、放熱部33は、送熱機構2Aに蓄積された熱を系外に放出可能とするものである。本実施例に係る揚水発電システム2を起動していない間においては、放熱部33により放熱しておく。これにより安全に運用することができる。また、放熱部33は、後述する温度センサTT6によって高熱部17Cの温度が異常に高くなった場合にも自動的に接続され、これにより安全な運転を行うことができる。
【0093】
以上が、送熱機構2Aの構成についての説明である。ただし、放熱部33は、上述した機構の代わりに、第1放熱用ヒートシンク41と第3放熱用ヒートシンク46とを、例えば取っ手を取り付ける等により手動操作可能な熱伝導体にて接合状態と分離状態とに切り替えることで、放熱状態及び非放熱状態を実現するようにしてもよい。
【0094】
以下では、
図4,5を用いて送熱機構2Aによる大まかな動作について説明する。なお、
図4のステップS11~S15は、通常運転時のフローチャートであり、
図5のステップS21~S24は、放熱運転時のフローチャートである。
【0095】
ステップS11では、電磁弁48が励磁され開状態となることで、計装空気が自動弁47に導かれ、自動弁47が開状態となる。
【0096】
ステップS12では、第1放熱部用通気管VE5を通じてサービスエアが室O内に供給され、第1ピストン用ヒートシンク43Bがシリンダ42の他端側に押圧されることで、第1ピストン用ヒートシンク43Bと第1放熱用ヒートシンク41とが、シリンダ42の軸心方向において離隔状態となる。
【0097】
ステップS13では、加熱部32により入力された熱量が、吸熱用ループヒートパイプ31に伝達される。
【0098】
ステップS14では、吸熱用ループヒートパイプ31により第1フルイダインポンプ17の高熱部17Cに熱負荷を与える。
【0099】
ステップS15では、第1フルイダインポンプ17が駆動し、実施例1にて説明した
図2のステップS2のとおり発電する。
【0100】
一方、ステップS21では、電磁弁48(3方弁)が非励磁となり二次側の計装空気配管は大気圧となる。そして単作動の自動弁47が閉状態となる。
【0101】
ステップS22では、第1放熱部用通気管VE5を通じてサービスエアが室Oから排出され、ばね43Eの力によってピストン43が動き、第1ピストン用ヒートシンク43Bがシリンダ42の他端側に押圧されることで、第1ピストン用ヒートシンク43Bと第1放熱用ヒートシンク41とが、シリンダ42の軸心方向において重複状態となる。
【0102】
ステップS23(吸熱用ループヒートパイプ31からシリンダ42及びピストン43へ伝熱)では、吸熱用ループヒートパイプ31中の熱が、第1放熱用ヒートシンク41から、側壁42Bの熱伝導材料部分を介して第1ピストン用ヒートシンク43Bに伝達される。第1ピストン用ヒートシンク43Bに伝達された熱は、ピストン用ヒートパイプ43A、第2ピストン用ヒートシンク43Cへと伝わる。
【0103】
ステップS24(シリンダ42及びピストン43から放熱用ループヒートパイプ44へ伝熱)では、第2ピストン用ヒートシンク43Cの熱が、側壁42Dの熱伝導材料分を介して第3放熱用ヒートシンク46、そして放熱用ループヒートパイプ44に伝達され、その後、放熱用ループヒートパイプ44上の第2放熱用ヒートシンク45から外部へ放熱される。
以上が、本実施例に係る揚水発電システム2による大まかな動作の説明である。
【0104】
本実施例に係る揚水発電システム2では、第1フルイダインポンプ17の高熱部17C(及び、第2フルイダインポンプ18の高熱部)に熱負荷を与えることができる吸熱用ループヒートパイプ31と、吸熱用ループヒートパイプ31に熱を入力する加熱部32と、吸熱用ループヒートパイプ31から熱を放出することができる放熱部33とを備えているので、実施例1で説明した第1フルイダインポンプ17(第2フルイダインポンプ18)を簡便に駆動することができるとともに、吸熱用ループヒートパイプ31中の不要な熱を外部に放出することができる。
【0105】
本実施例に係る揚水発電システム2では、放熱部33は、熱を放出する第2放熱用ヒートシンク45を有する放熱用ループヒートパイプ44と、吸熱用ループヒートパイプ31の熱を放熱用ループヒートパイプ44に伝達可能なシリンダ42及びピストン43とを備えているので、簡便に放熱することができる。
【0106】
[実施例3]
本実施例に係る揚水発電システム3は、実施例2における送熱機構の一部を変更したものである。以下、実施例2と重複する部分は極力省略し、相違する部分を中心に説明する。ただし、以下では第1フルイダインポンプ17の高熱部17C用の送熱機構について説明するが、第2フルイダインポンプ18の高熱部側にも同様の送熱機構が設けられるものとする。
【0107】
実施例2では、第1フルイダインポンプ17(第2フルイダインポンプ18)の高熱部17Cが吸熱用ループヒートパイプ31上に設けられているものとしたが、
図6に示すように、本実施例における送熱機構3Aでは、その代わりに熱交換用ヒートシンク51が設けられている。
【0108】
熱交換用ヒートシンク51は、吸熱用ループヒートパイプ31と環状パイプ52とを架設するようにして設置されている。
【0109】
環状パイプ52には、さらに圧縮ポンプ53、減圧弁54、及び、高熱部17Cが設けられ、高熱部17Cに熱負荷を与えることができる。なお、熱交換用ヒートシンク51、及び、環状パイプ52の各部材間には、それぞれ温度センサTT6~TT9が設けられている。
【0110】
熱交換用ヒートシンク51は、吸熱用ループヒートパイプ31の熱を環状パイプ52に伝達するものである。また、環状パイプ52内は圧縮ポンプ53により熱媒体が循環している。吸熱用ループヒートパイプ31から熱交換用ヒートシンク51に伝達された熱は、この熱媒体に与えられる。
【0111】
また、圧縮ポンプ53により、環状パイプ52内の熱媒体はさらに加熱され、その下流側にある第1フルイダインポンプ17(第2フルイダインポンプ18)の高熱部17Cに熱負荷を与えることができる。
【0112】
減圧弁54は、第1フルイダインポンプ17の高熱部17Cよりも下流側に設けられている。背圧弁54の圧縮ポンプ53で加圧された熱媒体が減圧弁54の一次側まで高圧状態を保ち、減圧弁54の二次側にて膨張させることで熱媒体の温度が低下し、吸熱用ループヒートパイプ31から熱媒体に効率よく熱を移動させる。
以上が、本実施例における送熱機構3Aの構成の一部についての説明である。
【0113】
このようにして本実施例に係る揚水発電システム3では、圧縮ポンプ53を有し、第1フルイダインポンプ17の高熱部17C(及び、第2フルイダインポンプ18の高熱部)に熱負荷を与えることができる環状パイプ52と、熱交換用ヒートシンク51を介して環状パイプ52に熱が伝達される吸熱用ループヒートパイプ31と、吸熱用ループヒートパイプ31に熱を入力する加熱部32と、吸熱用ループヒートパイプ31から熱を放出することができる放熱部33とを備えているので、実施例2の作用効果に加え、装置を自動化させるにあたって、安定して装置を動かし続けることが可能となる。また、圧縮ポンプ53を設けることで加熱部32からフルイダインポンプ17,18へ与えられる熱量を増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、揚水発電システムとして好適である。
【符号の説明】
【0115】
1~3 揚水発電システム
2A,3A 送熱機構
11 上部タンク
12 中部タンク
13 下部タンク
14 純水器
15 主発電機
16 補発電機
17 第1フルイダインポンプ
17A 第1管片
17B 第2管片
17BA 熱再生機
17BB 遮断弁
17C 高熱部
17D 冷却部
17E,17F フルイダインポンプ用逆止弁
18 第2フルイダインポンプ
19 雨水タンク
20 雨水駆動揚水ポンプ
21 上部タンク用ヒータ
22 中部タンク用ヒータ
23 下部タンク用ヒータ
31 吸熱用ループヒートパイプ
32 加熱部
33 放熱部
41 第1放熱用ヒートシンク
42 シリンダ
42A 開口部
42B (一端側の)側壁
42C 貫通孔
42D (他端側の)側壁
43 ピストン
43A ピストン用ヒートパイプ
43B 第1ピストン用ヒートシンク
43C 第2ピストン用ヒートシンク
43D 仕切部材
43E バネ
44 放熱用ループヒートパイプ
45 第2放熱用ヒートシンク
46 第3放熱用ヒートシンク
47 自動弁
48 電磁弁
51 熱交換用ヒートシンク
52 環状パイプ
53 圧縮ポンプ
54 減圧弁