(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20250310BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20250310BHJP
【FI】
C02F1/44 J
C02F1/44 H
C02F1/00 S
(21)【出願番号】P 2023166244
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯山 真充
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-016897(JP,A)
【文献】特開2011-183273(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0088599(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/00、1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、
前記前処理水中の全有機炭素成分
又はイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、
前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、
下水処理水を含む第2原水を、前記1次処理よりも上流側における前記原水又は前記前処理水に合流させ
、
前記原水又は前記前処理水に合流させる前記第2原水の量は、前記原水又は前記前処理水における尿素濃度と前記第2原水の尿素濃度の加重平均が、前記超純水に要求される尿素濃度より逆算される許容値以下となるように設定される超純水製造方法。
【請求項2】
前記第2原水の尿素濃度が前記超純水に
要求される尿素濃度より
逆算される許容値を超える場合に、前記第2原水を尿素分解装置に通すことを特徴とする、
請求項1に記載の超純水製造方法。
【請求項3】
上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理部と、
前記前処理水中の全有機炭素成分
又はイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理部と、
前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理部と、
下水処理場水を含む第2原水の尿素濃度を測定する尿素計と、を有し、
前記第2原水を、前記1次処理部よりも上流側における前記原水又は前記前処理水に合流させ
、
前記原水又は前記前処理水に合流させる前記第2原水の量は、前記原水又は前記前処理水における尿素濃度と前記第2原水の尿素濃度の加重平均が、前記超純水に要求される尿素濃度より逆算される許容値以下となるように設定される超純水製造装置。
【請求項4】
前記第2原水中の尿素を分解する尿素分解装置を備え、尿素濃度が前記超純水に
要求される尿素濃度より
逆算される許容値を超える場合に前記第2原水を前記尿素分解装置に通し尿素濃度を下げる尿素分解部をさらに有する、請求項
3に記載の超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等製造設備に対して超純水を供給する超純水製造装置において、原水として上水と、半導体等製造で使用した超純水の排水(回収水という場合もある。)とを利用する技術が開示されている(特許文献1-7参照)。
一般的に回収水は、元は超純水であり、これに、半導体製造の際に利用される物質、例えば、酸、アルカリ、IPA(イソプロピルアルコール)、界面活性剤、CMP研磨剤などが混合したものである。したがって、比較的成分が明らかであり、これを処理して、原水と混合して利用することは比較的容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-233997号公報
【文献】特開平7-313994号公報
【文献】特開平10-272465号公報
【文献】特開平11-226569号公報
【文献】特開2000-189760号公報
【文献】特開2006-61779号公報
【文献】特開2013-202587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体等製造には多くの超純水が使用されるため、超純水の製造に使用される上水の量も多くなっている。上水の供給量には限りがあるため、他の用途で上水が不足しないよう、超純水製造において上水の使用量を少なくするための対策が求められている。また、上記回収水の利用も限界があるため、原水の利用を減らす効果はあるものの、現在の半導体等製造工場の大型化へ十分に対応できるわけではない。
また、現在の環境問題や気候変動問題が生じてきたことにより、上水の供給も不安定な傾向となりつつあり、新たな原水を確保する必要が生じてきた。
【0005】
一般的に、下水、もしくは下水処理水は上水に比べると水質が悪く、特に、尿素等の難分解性の物質を含み、それ以外の物質も多量にかつ多種類含んでいる。尿素に代表される難分解性物質は、除去装置が大掛かりなものになりがちで実用化が困難であり、かつ、少量であっても、純水装置の末端まで到達してしまう恐れがある。また、水質の変動幅も大きく、水量も安定でない。したがって、下水、もしくは下水処理水を半導体等製造用の超純水の原水として利用することは、一般的ではなかった。
【0006】
本発明は、超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る超純水製造方法は、上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、前記前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、下水処理水を含む第2原水を、前記1次処理よりも上流側における前記原水又は前記前処理水に合流させる。
【0008】
この超純水製造方法では、上水を用いた原水に加えて、下水処理場からの排水を含む第2原水を用いて超純水を製造するので、超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくすることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る超純水製造方法において、前記原水又は前記前処理水に合流させる前記第2原水の量は、前記原水又は前記前処理水における尿素濃度と前記第2原水の尿素濃度の加重平均が、前記超純水に求められる尿素濃度より求められる尿素濃度以下となるように設定される。
【0010】
この超純水製造方法では、原水に合流させる第2原水の量を、超純水に求められる尿素濃度より求められる尿素濃度に応じて設定するので、超純水における尿素濃度を基準以下に抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る超純水製造方法において、前記第2原水の尿素濃度が前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、前記第2原水を尿素分解装置に通し尿素濃度を許容値以下にする。
【0012】
この超純水製造方法では、第2原水の尿素濃度が前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、第2原水を尿素分解装置に通し尿素濃度を許容値以下にしてから、上水を用いた原水に合流させる。したがって、下水をより有効に利用することができる。
【0013】
第4の態様に係る超純水製造装置は、上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理部と、前記前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理部と、前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理部と、下水処理場水を含む第2原水の尿素濃度を測定する尿素計と、を有し、尿素濃度が許容値以下の前記第2原水を、前記1次処理部よりも上流側における前記原水又は前記前処理水に合流させる。
【0014】
この超純水製造装置では、上水を用いた原水に加えて、下水処理場からの排水を含み尿素濃度が許容値以下の第2原水を用いて超純水を製造するので、超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくすることができる。
【0015】
第5の態様は、第4の態様に係る超純水製造装置において、前記第2原水中の尿素を分解する尿素分解装置を備え、尿素濃度が前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に前記第2原水を前記尿素分解装置に通し尿素濃度を下げる尿素分解部をさらに有する。
【0016】
この超純水製造装置では、第2原水の尿素濃度が前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、第2原水を尿素分解装置に通し尿素濃度を許容値以下にしてから、上水を用いた原水に合流させる。したがって、下水をより有効に利用することができる。
【0017】
第6の態様は、第4の態様に係る超純水製造装置において、前記原水又は前記前処理水に合流させる前記第2原水の量は、前記原水又は前記前処理水における尿素濃度と前記第2原水の尿素濃度の加重平均が、前記超純水に求められる尿素濃度に求められる尿素濃度より求められる許容値以下となるように設定される。
【0018】
この超純水製造装置では、原水に合流させる第2原水の量を、超純水に求められる尿素濃度より求められる尿素濃度に応じて設定するので、超純水における尿素濃度を基準以下に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る超純水製造装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の変形例に係る超純水製造装置の概要を示すブロック図である。
【
図3】尿素計の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】時間経過による第2原水の尿素濃度の変化と、第2原水の受け入れ条件の例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1において、本実施形態に係る超純水製造装置100は、自然水由来の原水すなわち、市水、工業用水等の他、下水由来の第2原水を受け入れて超純水を製造することができる。この超純水製造装置100は、前処理部10と、1次処理部11と、2次処理部12と、尿素計30とを有している。超純水製造装置100は、さらに尿素分解部13を備えていてもよい。
【0024】
前処理部10は、上水を含む原水(第1原水)の懸濁物質を除去して前処理水を得る装置である。一例として、ろ過砂等のメディアを充てんした砂濾過等やMMF(マルチメディアフィルター塔)などの充填槽濾過塔、MF(マイクロフィルター)やUF(限外ろ過膜)などのフィルターを用いた膜ろ過装置、および/もしくは、粒状活性炭塔等によって、原水中の残留塩素や大きなゴミなどの不純物をろ過する。上水を含む原水は、河川水、湖水及び井水等である自然水14を上水処理場16において凝集沈殿工程17、ろ過工程18を経て得られる、所謂水道水である。原水は、例えば原水槽20に貯められて超純水製造に使用される。
【0025】
1次処理部11は、前処理水中の全有機炭素(TOC)成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する装置である。一例として、半透膜を用いて前処理水を逆浸透させる逆浸透膜装置、イオン交換樹脂を充てんしたイオン交換樹脂装置や電気脱イオン装置(EDI)、有機物を分解する紫外線照射装置、溶存ガスを脱気する脱気膜装置などを組み合わせて1次純水を精製する。1次処理部11は、必要に応じ、例えば、高圧逆浸透膜装置、次亜臭素酸等の添加で尿素分解する酸化反応槽などの尿素分解装置を設置してもよい。製造された1次純水は純水タンク22に供給される。
【0026】
2次処理部12は、1次純水中の不純物をさらに除去して超純水を製造する装置であり、例えば、1次純水中に微量に含まれる無機イオンを、例えば、非再生型イオン交換塔(ポリッシャー)によって除去する。さらに、紫外線照射装置、過酸化水素分解装置、脱気装置等が組み合わせられている。2次処理部12の末端には限外ろ過膜が設置され、微粒子が除去される。製造された超純水は、POU(使用場所)19に供給され、半導体製造等に利用され、一部は、循環ライン28によって、純水タンク22に循環される。
【0027】
第2原水は、下水24を下水処理場26において例えば、生物処理工程27を経て得られる下水処理水を含む水である。尿素濃度が超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値以下の第2原水は、1次処理部11よりも上流側における原水又は前処理水に合流する。
図1に示される例では、第2原水は、原水と合流して原水槽20に貯められる。
図2に示される変形例では、第2原水は、前処理部10と1次処理部11の間で前処理水と合流する。前処理部10は尿素の除去を目的とした装置ではなく、また前処理部10で行われる懸濁物質の除去は、下水処理場で既に行われているため、変形例2の位置で原水と第2原水を合流させてもよい。
【0028】
尿素計30は、下水処理水を含む第2原水の尿素濃度を測定する、例えば
図3に例示されるものが使用可能である。ここでは、尿素計30は前処理装置36とTOC計54で構成される。前処理装置36は、例えば、紫外線照射装置や逆浸透膜装置、イオン交換装置のいずれかで構成され、例えば第2原水中には、尿素と尿素以外のTOC成分が含まれているので、尿素以外のTOC成分を除去する。TOC計54は、脱炭酸装置56、紫外線酸化装置58、CO
2検出装置60、及びCO
2検出装置62を有している。TOC計54は、尿素以外のTOC成分が除去された第2原水中の尿素の濃度をTOCとして測定する装置である。また、測定対象液は、下水処理水である第2原水に限定されず、尿素分解装置32で処理された第2原水、2次処理部12で得られた超純水、その他超純水製造装置100の各途中工程で得られる液を測定対象液とすることが可能である。
【0029】
TOC計54の脱炭酸装置56では、例えば中空糸(真空脱気)モジュール等を用いることで、測定対象液から炭酸を除去する。具体的には、測定対象液にリン酸を添加した後、片側を真空にした状態のガス透過膜に透過させる。なお、TOC計54に送り込まれる測定対象液において、炭酸の濃度が低く、CO2の検出に与える影響が小さい場合には、脱炭酸装置56による炭酸の除去を省略してもよい。
【0030】
また、TOC計54として、脱炭酸装置56を有さない構成のものを用いてもよい。この場合において、測定対象液から炭酸を除去する必要がある場合は、例えばTOC計54の前(上流側)に、脱炭酸装置56を設ければよい。そうした脱炭酸装置56の例としては脱気装置が挙げられ、真空脱気膜、脱気塔、真空脱気塔などが考えられるが、真空脱気膜が好ましい。
【0031】
測定対象液を脱炭酸装置56に供給する前に、必要に応じてpH調整を行ってもよい。脱炭酸装置56に脱気装置を適用する場合は、測定対象液を酸性(例えば、pHが5以下)にすると、炭酸除去率が増大するので好ましい。pH調整は、例えば公知の酸を添加することで行うことができる。また、先述の濾過装置50に例えば逆浸透膜(RO)やイオン交換装置を用いた場合は、測定対象液に水酸化物イオンがあった場合それを除去することもできるので、pH調整の少なくとも一部を担わせることもできる。
【0032】
TOC計54の内部では、脱炭酸装置56の下流において、測定対象液の流路が分岐されており、一方の流路に、酸化装置58及びCO2検出装置60が設けられると共に、他方の流路にCO2検出装置62が設けられている。
【0033】
TOC計54の酸化装置58は、例えば測定対象液に対し紫外線を照射することで、測定対象液に含まれる有機物を、尿素も含めて酸化させる。実質的には、測定対象液に含まれる有機物のうち、尿素以外の成分の殆どは除去されているので、酸化装置58で酸化される有機物は尿素である。すなわち、酸化装置58では、測定対象液中の尿素が酸化分解され、この段階であらためて二酸化炭素が発生する。
【0034】
TOC計54のCO2検出装置60、62は、処理対象液中の二酸化炭素の量を測定する。この二酸化炭素の量は、酸化分解された測定対象液中の有機物中に含まれる炭素の量に比例している。
【0035】
ここで、CO2検出装置60の上流側では測定対象液中の有機物が酸化装置58によって酸化されており、CO2検出装置60は測定対象液の全炭素濃度を検出する。これに対し、CO2検出装置62の上流側では測定対象液中の有機物が酸化装置58によって酸化されておらず、CO2検出装置62は測定対象液の無機炭素濃度を検出する。TOC計54では、次の式(1)に示すように、CO2検出装置60で検出した全炭素濃度から、CO2検出装置62で検出した無機炭素濃度を引くことで、測定対象液の全有機炭素濃度を得る。
全有機炭素濃度=全炭素濃度-無機炭素濃度 (1)
【0036】
なお、脱炭酸装置56の炭酸除去率が大きい場合、尿素の一部がTOC計54の酸化装置58に達するまでに除去されていることがある。そうした場合は、これらの尿素除去率をあらかじめ調べておき、それによってTOC計54による尿素濃度測定結果に補正をかければ、尿素濃度をさらに精度よく求めることができる。
【0037】
また、TOC計54の具体的構成は、上記したものに限定されず、各種のTOC計を本実施形態において用いることが可能である。
【0038】
TOC計54において全有機炭素濃度を測定した後の処理対象液は、排液として廃棄しても良いし、例えば第2原水のラインに戻してもよい。
【0039】
TOC計54における尿素濃度測定処理は、測定対象液を連続的に流しながら行う連続式であってもよいが、測定対象液を一時的に貯留して行うバッチ式であってもよい。
【0040】
TOC計54における尿素濃度測定処理をバッチ式とした場合も、TOC計54での測定より高頻度、あるいは連続的に測定対象液が供給されてもよい。また、TOC計54における尿素濃度測定処理で必要とするより大流量の測定対象液を供給してもよい。その場合、TOC計54に供給されない測定対象液は、例えばTOC計54の直前に排液管を設けて、この排液管から排出すればよい。
【0041】
配管に大流量、又は/かつ高頻度あるいは連続的に測定対象液が供給されることで、配管側壁における菌の発生や有機物の付着を抑制できる。発生した菌や付着した有機物は、予期しないタイミングで側壁から脱離して測定対象液中に流出し、尿素濃度測定精度を低下させることがある。
尿素計30としては、上記のものに限らず、市販の装置を用いてもよい。
【0042】
尿素分解部13は、第2原水中の尿素を分解する尿素分解装置32を備えている。第2原水の尿素濃度が超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、該第2原水を尿素分解装置32に通し尿素濃度を下げる。尿素分解部13は、尿素分解装置32を経た第2原水の尿素濃度を測定するため、尿素分解装置32の下流側に、上記した尿素計30と同様の尿素計31を有していてもよい。
【0043】
尿素分解装置32において尿素を分解する手段としては、例えば次のような方法を用いることができ、純水装置の規模、第2原水の水質から、適宜選択して用いることができる。
【0044】
1)生物処理
2)生物活性炭処理
3)酸化剤(臭素酸、次亜臭素酸等)による酸化分解処理
4)還元剤(亜硫酸)による尿素分解処理
5)高圧逆浸透(RO)処理
6)紫外線照射処理および、紫外線照射と酸化剤を併用した処理
【0045】
1,2の方法は、生物を利用するため安定した処理が課題となるが、本法と組み合わせると、生物処理の性能が低下した場合にも、超純水製造を継続することができる。また、生物処理槽の前にピットを設けて、第2原水の尿素を生物処理槽で少しずつ分解すれば、安定した処理が期待できる。
【0046】
3の方法では、一般には酸化剤の添加量が多く、反応後の酸化剤が多量に残留するので、これを除去する必要があり、装置が大掛かりになるが、本実施形態では尿素分解装置32が第2原水の分岐ラインに設けられているので、装置の小型化が可能である。さらに、酸化分解装置の前段にピットを設けて、第2原水を少しずつ分解することでも、小型化が可能である。
【0047】
4,5、6の方法は、装置が大掛かりになったり、5の方法は除去率が課題となったりするが、本実施形態では尿素分解装置32が第2原水の分岐ラインに設けられているので、装置の小型化が可能である。
【0048】
4の方法は、紫外線照射装置を用いて例えば次のようにして行われる。還元剤を添加された被処理水(第2原水)に対し、紫外線を照射することにより酸化分解を促進する。紫外線の波長は、被処理水を酸化することが可能であればよい。たとえば、一般的に紫外線酸化用として用いられる波長185nm程度の紫外線であってもよく、また、殺菌用として用いられる波長254nm程度の波長の紫外線であってもよい。
【0049】
なお、被処理水に添加された還元剤は、紫外線の作用によって、過硫酸ラジカル又はそれに近い形態の活性種に変化させられていると考えられる。そして、生じた活性種により尿素が分解される。
【0050】
また、上記1)~6)以外の方法として、尿素分解酵素もしくは、尿素分解酵素を担持した触媒等を用いることも可能である。
【0051】
原水又は前処理水に合流させる第2原水、つまり超純水製造に受け入れる第2原水の量は、原水又は前処理水における尿素濃度と第2原水の尿素濃度の加重平均(つまり、混合後の尿素濃度)が、超純水に求められる尿素濃度(尿素スペック)より求められる許容値以下となるように設定される。原水槽20に受け入れる第2原水の量は、合流点から2次処理部12までの尿素の除去率を加味し逆算して定めてもよい。つまり、上記尿素濃度の加重平均を、超純水に求められる尿素濃度から原水と第2原水の合流点での尿素濃度に逆算し、原水槽20に受け入れる第2原水の量を設定してもよい。なお、第2原水の尿素濃度が許容値以下の場合、原水と混合せずに超純水製造に受け入れることができる。つまり、第2原水が100%であっても、超純水製造を行うことができる。
【0052】
また、第2原水ピット38に尿素濃度が許容値を超える第2原水を貯留し、尿素分解装置32の処理水を第2原水ピット38への返送ライン(図示していない)を経て、第2原水ピット38に戻し、循環することにより、第2原水ピット38中の第2原水の尿素濃度が低下し、尿素計30の値が十分低下したら、原水槽20もしくは、1次処理部11へ供給することも可能である。なお、この循環運転中に第2原水中の尿素濃度が低下した場合には、第2原水ピット38のバイパスライン(図示していない)を経て、原水槽20もしくは、1次処理部11へ供給すればよい。
【0053】
第2原水の尿素濃度が著しく高く、尿素分解装置32を用いても尿素を分解できない場合には、クーリングタワー供給ライン40を経てクーリングタワー等34へ供給し、クーリングタワー用水等として利用すればよい。なお、クーリングタワー供給ライン40は第2原水ピット38の前段から分岐するように設置してもよい。
【0054】
さらに、上水を含む原水も、例えば、台風の直後等には、水質が一時的に著しく変動することもあり得る。その場合の対応が可能にすることもできる。
この場合、例えば、第2原水の使用量を増やして対応が可能であるが、それ以外にも、上水を含む原水の尿素分解装置32への供給ライン42を利用し、上水を含む原水の尿素を分解して、原水として利用する。この場合、上水を含む原水の一時的な水質悪化に対応するための設備を特に設けずに対応可能である。
【0055】
図4には、時間経過による下水(第2原水)の尿素濃度の変化と、第2原水の受け入れ条件の例を示す。超純水製造装置100における尿素除去率が90%、原水の尿素濃度が0.1ppb、超純水に求められる尿素濃度(尿素スペック)が0.5ppbであるとすると、第2原水の尿素濃度が5ppb以下であれば、第2原水を超純水製造にすべて受け入れることができる。
図4の「全量受入可能」は、この範囲を示している。また、原水と第2原水の混合割合を9:1とし、これを超える第2原水は受け入れないとすると、第2原水の尿素濃度は49ppbまで許容される。
図4の「混合受入可能」は、この範囲を示している。この場合、超純水の製造に必要な原料水のうち、43%を第2原水にすることができる。
【0056】
[超純水製造方法]
本実施形態に係る超純水製造方法は、上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、前処理水中の全有機炭素(TOC)成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、下水処理水を含み尿素濃度が超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値以下の第2原水を、1次処理部よりも上流側における原水又は前処理水に合流させる。
【0057】
ここで、第2原水の尿素濃度が超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、第2原水を尿素分解装置に通し尿素濃度を許容値以下にしてもよい。
【0058】
また、原水又は前処理水に合流させる第2原水の量は、原水又は前処理水における尿素濃度と第2原水の尿素濃度の加重平均が、超純水に求められる尿素濃度以下となるように設定されてもよい。
【0059】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態に係る超純水製造装置100では、上水を用いた原水に加えて、下水処理水を含む第2原水を用いて超純水を製造するので、超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくすることができる。
【0060】
また、尿素分解部13を用いることで、第2原水の尿素濃度が超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、第2原水を尿素分解装置32に通し尿素濃度を許容値以下にしてから、上水を用いた原水に合流させる。したがって、下水をより有効に利用することができる。
【0061】
さらに、原水に合流させる第2原水の量を、超純水に求められる尿素濃度に応じて設定するので、超純水における尿素濃度を基準以下に抑制できる。
【0062】
また、原水と第2原水を混合する前に尿素分解装置32を設置する場合には、原水と第2原水を混合した後に尿素分解装置32を設置する場合と比べ、小型化することが可能である。特に、尿素分解装置32を原水と第2原水の合流部より1次処理部11や前処理部10側に設置した場合、尿素濃度の最大値になっても、超純水の尿素濃度がスペックインするように設計する必要があり、尿素分解装置が32非常に大きくなってしまい、設置面積が大きくなると同時に、ランニングコストも高くなる。一方、
図1に示される実施形態の場合には、第2原水の利用率を考慮したうえで、最小限の装置とすることで対応が可能である。この割合は、下水の水質および水質変動、目標とする下水の利用率にもよるが、概ね1/2~1/10程度にすることが可能である。
【0063】
また、万が一、第2原水の尿素濃度が設計よりも高くなったとしても、第2原水はクーリングタワー等34で使用し、超純水製造装置100は、第1原水のみで運転を行えばよいので、超純水の製造を止めなくて済むという利点もある。
【0064】
また、原水と第2原水を混合することで第2原水を利用するので、新たに設置する設備を最小限とすることが可能である。
【0065】
このように、本実施形態によれば、超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくすることができる。またこれによって、半導体製造で使用される上水の量を抑制できる。
【0066】
なお、難分解性物質としては、尿素のほかに、尿素誘導体やパーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)またはパーフルオロオクタン酸(PFOA)等の有機フッ素化合物も考えられるが、これらが含まれる場合にも、本発明を好適に適用できる。
【0067】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0068】
[付記]
以下、本発明が取り得る態様を付記する。
【0069】
[付記1]
上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、
前記前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、
前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、
下水処理水を含む第2原水を、前記1次処理部よりも上流側における前記原水又は前記前処理水に合流させる超純水製造方法。
【0070】
[付記2]
前記原水又は前記前処理水に合流させる前記第2原水の量は、前記原水又は前記前処理水における尿素濃度と前記第2原水の尿素濃度の加重平均が、前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値以下となるように設定される、付記1に記載の超純水製造方法。
【0071】
[付記3]
前記第2原水の尿素濃度が前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に、前記第2原水を尿素分解装置に通し尿素濃度を許容値以下にする、付記1又は付記2に記載の超純水製造方法。
【0072】
[付記4]
上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理部と、
前記前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理部と、
前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理部と、を有し、
下水処理場水を含み尿素濃度が許容値以下の第2原水を、前記1次処理部よりも上流側における前記原水又は前記前処理水に合流させる超純水製造装置。
【0073】
[付記5]
前記第2原水の尿素濃度を測定する尿素計、及び前記第2原水中の尿素を分解する尿素分解装置を備え、尿素濃度が前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値を超える場合に前記第2原水を前記尿素分解装置に通し尿素濃度を下げる尿素分解部をさらに有する、付記4に記載の超純水製造装置。
【0074】
[付記6]
前記原水又は前記前処理水に合流させる前記第2原水の量は、前記原水又は前記前処理水における尿素濃度と前記第2原水の尿素濃度の加重平均が、前記超純水に求められる尿素濃度より求められる許容値以下となるように設定される、付記4又は5に記載の超純水製造装置。
【符号の説明】
【0075】
10 前処理部
11 1次処理部
12 2次処理部
13 尿素分解部
19 POU(使用場所)
20 原水槽
30 尿素計
32 尿素分解装置
100 超純水製造装置
【要約】
【課題】超純水製造に使用される原水における上水の割合を少なくする。
【解決手段】超純水製造方法は、上水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、下水処理水を含む第2原水を、1次処理よりも上流側における原水又は前処理水に合流させる。
【選択図】
図1