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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/467 20060101AFI20250310BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20250310BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20250310BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20250310BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H01L23/46 C
G06F1/16 312E
G06F1/20 B
G06F1/20 C
H01L23/46 B
H05K7/20 H
H05K7/20 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023190138
(22)【出願日】2023-11-07
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡伸
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0084490(US,A1)
【文献】特開2022-184649(JP,A)
【文献】特開2010-061289(JP,A)
【文献】特開2009-163589(JP,A)
【文献】特開2021-111779(JP,A)
【文献】特開2013-077223(JP,A)
【文献】特開2012-022700(JP,A)
【文献】国際公開第2021/193880(WO,A1)
【文献】特許第7371170(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/467
G06F 1/16
G06F 1/20
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1排気口及び第2排気口を有する筐体と、
発熱体を実装した基板と、
前記第1排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第1ヒートシンク部と、
前記発熱体の熱を前記第1ヒートシンク部に輸送する熱輸送デバイスと、
前記第1ヒートシンク部に向かって空気を吐出可能な第1吐出口と、前記基板の表面に向かって空気を吐出可能な第2吐出口とを有するファンと、
前記基板に接続されると共に、前記第2吐出口から前記第2排気口へと流れる空気の流通経路上で前記第2排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第2ヒートシンク部と、
を備え
前記第2ヒートシンク部での隣接する前記フィン同士の間隔は、前記第2排気口の開口幅よりも小さく、
前記第2ヒートシンク部の一部が前記第2排気口の内周空間に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項に記載の電子機器であって、
前記基板の一部が前記第2排気口の内周空間に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記第1ヒートシンク部と前記第2ヒートシンク部とは、それぞれ別体の部品である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
電子機器であって、
第1排気口及び第2排気口を有する筐体と、
発熱体を実装した基板と、
前記第1排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第1ヒートシンク部と、
前記発熱体の熱を前記第1ヒートシンク部に輸送する熱輸送デバイスと、
前記第1ヒートシンク部に向かって空気を吐出可能な第1吐出口と、前記基板の表面に向かって空気を吐出可能な第2吐出口とを有するファンと、
前記基板に接続されると共に、前記第2吐出口から前記第2排気口へと流れる空気の流通経路上で前記第2排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第2ヒートシンク部と、
を備え、
前記第1ヒートシンク部と前記第2ヒートシンク部とは、それぞれ別体の部品であり、
前記第2ヒートシンク部は、
前記基板の第1面に接続された第1フィン並列体と、
前記基板の第1面とは反対側の第2面に接続された第2フィン並列体と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
電子機器であって、
第1排気口及び第2排気口を有する筐体と、
発熱体を実装した基板と、
前記第1排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第1ヒートシンク部と、
前記発熱体の熱を前記第1ヒートシンク部に輸送する熱輸送デバイスと、
前記第1ヒートシンク部に向かって空気を吐出可能な第1吐出口と、前記基板の表面に向かって空気を吐出可能な第2吐出口とを有するファンと、
前記基板に接続されると共に、前記第2吐出口から前記第2排気口へと流れる空気の流通経路上で前記第2排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第2ヒートシンク部と、
を備え、
前記第1ヒートシンク部と前記第2ヒートシンク部とは、それぞれ別体の部品であり、
前記第2ヒートシンク部には、前記発熱体と接続される熱輸送デバイスが接続されていない
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク部を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUやGPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、筐体内にファンやヒートシンクを搭載し、発熱体が発生する熱を吸熱して外部に放熱する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-059833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器の筐体内には、CPUやGPUの他、これらの電源となる電源コンポーネント等の多数の発熱体が収容されている。CPUやGPUは大きな発熱を伴うため、ヒートパイプを用いてヒートシンクまで熱を輸送する構成が一般的である。一方、他の電源コンポーネントは、ファンによって筐体内の空気が吸気される際、この空気に放熱することによる冷却が主となっている。このため、従来の構成では、電源コンポーネントを十分に冷却できない場合があり、機器全体の冷却能力が不足する場合もある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却能力を向上することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1排気口及び第2排気口を有する筐体と、発熱体を実装した基板と、前記第1排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第1ヒートシンク部と、前記発熱体の熱を前記第1ヒートシンク部に輸送する熱輸送デバイスと、前記第1ヒートシンク部に向かって空気を吐出可能な第1吐出口と、前記基板の表面に向かって空気を吐出可能な第2吐出口とを有するファンと、前記基板に接続されると共に、前記第2吐出口から前記第2排気口へと流れる空気の流通経路上で前記第2排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第2ヒートシンク部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、冷却能力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
図3図3は、ファン及びその周辺部の構成を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、筐体の排気口及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図5図5は、第2ヒートシンク部及びその周辺部の模式的な側面断面図である。
図6図6は、第1変形例に係る第2ヒートシンク部を備える電子機器の一部を拡大した模式的な側面断面図である。
図7図7は、第2変形例に係る第2ヒートシンク部を備える電子機器の一部を拡大した模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12をヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0011】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体である。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0012】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面(表面12a)にはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、筐体12の幅方向(左右)をそれぞれX1,X2方向、筐体12の奥行方向(前後)をそれぞれY1,Y2方向、筐体12の厚み方向(上下)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0013】
筐体12は、上面及び四周側面を形成する筐体部材20と、下面を形成するカバー材21とで構成されている。筐体部材20は、筐体12の表面12aを形成するカバープレート20Aの四周縁部に立壁20Bを形成したものである。このため筐体部材20は下面が開口した略バスタブ形状を有する。カバー材21は略平板形状を有し、筐体部材20の下面開口を閉じる蓋となる。筐体部材20及びカバー材21は厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。立壁20Bはカバー材21に形成してもよい。この場合、筐体部材20はカバープレート20Aのみで構成されるとよい。
【0014】
ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12bに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。ヒンジ14は、例えば回転軸となるヒンジシャフト14aをヒンジ筐体14bの長手方向の両端部にそれぞれ支持した構造である(図5参照)。本実施形態のヒンジ14は、ヒンジ筐体14bがヒンジ配置溝12bの長手方向に沿って延在した、いわゆるワンバー形状に構成されている。ヒンジ14は、ヒンジ筐体14bが蓋体11と一体となって回転しつつ斜め後方へと下降する(図5参照)。ヒンジ14は、このようにして蓋体11の回動角度を稼ぐ構造、いわゆるドロップダウン構造である。ヒンジ14の構造は上記以外でもよい。
【0015】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。図2は、カバー材21を取り外して筐体部材20の内部を下面側から見た図である。
【0016】
図2に示すように、筐体12の内部には、冷却モジュール24と、マザーボード25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード(基板)25は、電子機器10のメインボードとなる回路基板である。マザーボード25は、筐体12のY2側寄りに配置され、X方向に延在している。バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード25のY1側寄りに配置され、X方向に延在している。
【0018】
本実施形態のマザーボード25は、CPU(Central Processing Unit)25a、GPU(Graphics Processing Unit)25b、電源コンポーネント25c,25d及びメモリ25eを実装している。CPU25aは、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。GPU25bは、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う処理装置である。電源コンポーネント25cは、例えばCPU25aの後側に並列された複数のチップで構成され、CPU25aの電源となる。電源コンポーネント25dは、例えばGPU25bの後側に並列された複数のチップで構成され、GPU25bの電源となる。メモリ25eは、例えばGPU25bの前側に並列された複数のチップで構成され、GPU25bの記憶装置となる。マザーボード25には、さらにメモリモジュール25f、記憶装置25g、通信モジュール等の各種電子部品が実装される。メモリモジュール25fは、例えばCAMM(Compression Attached Memory Modul)やDIMM(Dual Inline Memory Module)である。記憶装置25gは、例えばSSD(Solid State Drive)である。
【0019】
マザーボード25は、例えば上面(第1面25A)が筐体部材20に対する取付面となり、下面(第2面25B)がCPU25a等の実装面となる。
【0020】
CPU25a及びGPU25bは、筐体12内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。冷却モジュール24は、CPU25a及びGPU25bが発生する熱を吸熱及び拡散し、筐体12外へと排出することができる。電源コンポーネント25c,25d、メモリ25e及びメモリモジュール25fは、CPU25a及びGPU25bに次ぐ発熱量の発熱体である。本実施形態の冷却モジュール24は、これら電源コンポーネント25c等も冷却することができる。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の冷却モジュール24は、2本1組のヒートパイプ27と、一対の第1ヒートシンク部28,28と、第2ヒートシンク部29と、一対のファン30,30とを備える。
【0022】
ヒートパイプ27はパイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ27は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内側の密閉空間に作動流体を封入した構成である。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。ヒートパイプ27は例えば2本1組で用いることができる。ヒートパイプ27は、一部がCPU25a及びGPU25bとZ方向にオーバーラップし、これらCPU25a及びGPU25bと接続されている。ヒートパイプ27の両端部は第1ヒートシンク部28とそれぞれ接続されている。これによりヒートパイプ27はCPU25a及びGPU25bが発する熱を左右の第1ヒートシンク部28へと高効率に輸送する。
【0023】
本実施形態のヒートパイプ27は、ベーパーチャンバ31を挟んでCPU25a及びGPU25bと接続されている(図5も参照)。ベーパーチャンバ31はプレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ31は、2枚の薄い金属プレートの間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。作動流体はヒートパイプ27のものと同一又は同様なものを用いることができる。電子機器10はヒートパイプ27を省略し、ベーパーチャンバ31でCPU25a及びGPU25bと第1ヒートシンク部28とを接続してもよい。
【0024】
図3は、ファン30及びその周辺部の構成を模式的に示す斜視図である。図4は、筐体12の排気口32及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【0025】
図2図4に示すように、第1ヒートシンク部28は筐体12のX1,X2側縁部に寄った位置にそれぞれ設けられている。各第1ヒートシンク部28は、薄い金属プレートで形成された複数枚のフィン28aをX方向に等間隔に並べた構造である。各フィン28aはZ方向に起立し、Y方向に延在している。各フィン28aの上下端面(Z方向端面)は薄い金属プレートで形成されたベースプレート28bで一体的に支持されている。隣接するフィン28a,28a間には、ファン30から送られた空気が通過する隙間が形成されている。フィン28a及びベースプレート28bはアルミニウム又は銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。各フィン28aの上下端部を90度屈曲させた幅狭なプレート片を形成し、各フィン28aのプレート片同士を連接してベースプレート28bを形成してもよい。第1ヒートシンク部28は、ファン30のY2側側面(第1吐出口30a)に対向配置される。これによりファン30の第1吐出口30aから送られる空気は第1ヒートシンク部28を通過し、排気口32から筐体12の外部に排出される。
【0026】
第2ヒートシンク部29は、マザーボード25のY2側縁部(一縁部25C)に接続・支持されてX方向に延在している。第2ヒートシンク部29の詳細な構成は後述する。
【0027】
図2及び図3に示すように、ファン30は左右の第1ヒートシンク部28のY1側に近接する位置にそれぞれ設けられている。ファン30は第1吐出口30a及び第2吐出口30bを有する。ファン30は上下面(Z方向両面)又は上下面の一方に吸気口30cが形成されている。ファン30は吸気口30cから吸い込んだ空気を吐出口30a,30bから吐出する。吸気口30cは、筐体12の底面(カバー材21)に開口する底面開口部33からも筐体12外の空気を吸気できる(図5参照)。
【0028】
第1吐出口30aはY2方向に空気を吐出する。第1吐出口30aから送られる空気は第1ヒートシンク部28を通過して排気口32(第1排気口32A)から筐体12の外部に排出される。
【0029】
第2吐出口30bはX1又はX2方向に空気を吐出する。図2中でX1側に配置されたファン30は、そのX2側側面に第2吐出口30bが開口している。図2中でX2側に配置されたファン30は、そのX1側側面に第2吐出口30bが開口している。これにより左右のファン30の第2吐出口30bは、マザーボード25を間に挟んで互いに向かい合っている。第2吐出口30bのZ方向での位置は、マザーボード25の側端面に対面していることが好ましい(図5参照)。これにより各ファン30の第2吐出口30bはマザーボード25の上下の表面(面25A,25B)に向かって空気を吐出することができる。第2吐出口30bから送られる空気は、面25A,25Bに沿って流れつつ、CPU25a、GPU25b、電源コンポーネント25c,25d、メモリ25e及びメモリモジュール25f等の各発熱体を冷却する。この空気は、第2ヒートシンク部29を通過して排気口32(第2排気口32B)から筐体12の外部に排出される。
【0030】
図2及び図4に示すように、排気口32は、筐体部材20のY2側縁部の立壁20Bのうち、ヒンジ配置溝12bに対応する位置に設けられている。排気口32は、例えば立壁20Bの長手方向で略全長に亘って並んだ複数の窓状の開口部32aによって構成されている。排気口32は、立壁20BのX方向両端側に寄った位置にある複数の開口部32aがそれぞれ第1ヒートシンク部28,28に近接し、対面する。排気口32は、立壁20BのX方向中央付近にある複数の開口部32aが第2ヒートシンク部29に近接し、対面する。
【0031】
以下、排気口32について、X方向に並列された開口部32aのうちで第1ヒートシンク部28に対面する範囲にあるもので構成される部分を「第1排気口32A」と呼ぶこともある。さらに排気口32について、第2ヒートシンク部29に対面する範囲にあるもので構成される部分を「第2排気口32B」と呼ぶこともある。
【0032】
次に、第2ヒートシンク部29及びその周辺部の具体的な構成例を説明する。
【0033】
図5は、第2ヒートシンク部29及びその周辺部の模式的な側面断面図である。図5は、蓋体11を筐体12から開いて電子機器10を使用態様とした状態での第2ヒートシンク部29及びその周辺部の構成を示している。
【0034】
図2図5に示すように、第2ヒートシンク部29はマザーボード25の一縁部25Cに取り付けられている。第2ヒートシンク部29は筐体12内のY2側縁部に面した位置でX方向の中央付近に設けられている。図3及び図5に示すように、本実施形態の第2ヒートシンク部29は、上下(Z方向)に分割されたフィン並列体29A,29Bを有する。
【0035】
フィン並列体29A,29Bは、それぞれ薄い金属プレートで形成された複数枚のフィン29aをX方向に等間隔に並べた構造である。各フィン29aはZ方向に起立し、Y方向に延在している。各フィン29aの上下端面(Z方向端面)は薄い金属プレートで形成されたベースプレート29bで一体的に支持されている。隣接するフィン29a,29a間には、ファン30から送られた空気が通過する隙間が形成されている。フィン29a及びベースプレート29bはアルミニウム又は銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。各フィン29aの上下端部を90度屈曲させた幅狭なプレート片を形成し、各フィン29aのプレート片同士を連接してベースプレート29bを形成してもよい。
【0036】
第1フィン並列体29Aはマザーボード25の第1面25Aに接続されている。第2フィン並列体29Bはマザーボード25の第2面25Bに接続されている。フィン並列体29A,29Bは、例えばマザーボード25の面25A,25Bにそれぞれ形成したグランドプレーン(グランドパターン)25Dに対して固定される。グランドプレーン25Dはマザーボード25を板厚方向に貫通する貫通孔でもよい。第2ヒートシンク部29とグランドプレーン25Dとは、例えばリフロー半田付けで固定される。
【0037】
フィン並列体29A,29Bは、Z方向高さをY2側端部よりもY1側端部で低く構成した突出部29cをそれぞれ有する。突出部29cは、マザーボード25の一縁部25Cの端面と面一に配置される。突出部29c及び一縁部25Cは、X方向を基準として各開口部32aに対応する位置のみに設けられている。つまり第2ヒートシンク部29及びマザーボード25は、そのY2側端部である突出部29c及び一縁部25CがY方向に凹凸した凹凸形状を有する。各突出部29c及びこれに挟まれた一縁部25Cは、各開口部32aの内周空間に挿入されている(図4及び図5参照)。
【0038】
このように第2ヒートシンク部29は、マザーボード25の一縁部25Cに接続されると共に第2排気口32Bに対向配置され、各突出部29cが各開口部32aに挿入されている。これによりファン30の第2吐出口30bから送られる空気はマザーボード25の面25A,25Bに沿ってCPU25a等の周囲を流れた後、第2ヒートシンク部29を通過し、第2排気口32Bから筐体12の外部に排出される。つまり筐体12内では、第2吐出口30bから第2排気口32Bへと向かう空気の流通経路34が形成され、第2ヒートシンク部29はこの流通経路34上に配置される。図2図3及び図5中に1点鎖線で示す矢印は空気の流れを模式的に示したものである。
【0039】
図2に示すように、筐体12の内部には、流通経路34での空気の流れをより円滑なものとするための空間(ダクト構造部35)を形成してもよい。ダクト構造部35の範囲は、Z方向ではマザーボード25の第1面25Aとカバープレート20Aとの間と、第2面25Bとカバー材21との間に形成される。ダクト構造部35の範囲は、X方向では左右のファン30,30間と、第1ヒートシンク部28,28間とに形成される。ダクト構造部35のY2側には第2排気口32Bが設けられる。
【0040】
ダクト構造部35のY1側には筐体12内に開放されることを防止する気密壁35aを設けることが好ましい。気密壁35aは例えばスポンジやゴムを帯板状に形成した部材である。気密壁35aは、空気の通過を完全に遮断できる必要はないが、ある程度の通気抵抗を有して空気の流れる方向を規制できる必要がある。気密壁35aは、第1面25Aとカバープレート20Aとの間と、第2面25Bとカバー材21との間とでそれぞれ起立する。気密壁35aは、例えば左右のファン30のY1側端部間を接続するようにX方向に延在し、一部にメモリモジュール25fを避けるためにクランク形状を有する。
【0041】
ダクト構造部35の周縁部には、気密壁35aと同様な部材で形成された気密壁35bを設けてもよい。気密壁35bは、ファン30の周縁部を囲むように設けられる。気密壁35bは、特に第2吐出口30bの上下縁部とカバープレート20A及びカバー材21との間で起立する部分がダクト構造部35のX方向端部を形成する。気密壁35bは、さらに第1ヒートシンク部28の周縁部にも設けられることが好ましい。
【0042】
次に、電子機器10での冷却モジュール24の動作及び作用効果を説明する。
【0043】
図2図5に示すように、電子機器10は、立壁(外壁)20Bに第1排気口32A及び第2排気口32Bを有する筐体12を備える。筐体12は、CPU25a及びGPU25bのような発熱体を実装した基板(マザーボード25)を搭載している。電子機器10は、第1排気口32Aに面して配置され、複数のフィン28aを所定間隔をあけて並列した第1ヒートシンク部28と、CPU25a等の熱を第1ヒートシンク部28に輸送する熱輸送デバイス(ヒートパイプ27)と、ファン30とを備える。ファン30は、第1ヒートシンク部28に向かって空気を吐出する第1吐出口30aと、マザーボード25の表面に向かって空気を吐出する第2吐出口30bとを有する。電子機器10は、マザーボード25に接続されると共に、空気の流通経路34上で第2排気口32Bに面して配置され、複数のフィン29aを所定間隔をあけて並列した第2ヒートシンク部29を備える。
【0044】
このような電子機器10では、CPU25a等の発熱体が発生する熱がヒートパイプ27を介して第1ヒートシンク部28へと効率よく輸送される。第1ヒートシンク部28に輸送された熱は、ファン30の第1吐出口30bから第1排気口32Aへと流れる空気によって円滑に筐体12外に排出される。
【0045】
一方で、CPU25a等が発生する熱の一部、及び、ヒートパイプ27と直接接続されていない電源コンポーネント25c等の他の発熱体が発生する熱の一部は流通経路34に放熱される。この熱は、第2吐出口30bから第2排気口32Bへと流れる空気によって筐体12外に円滑に排出される。またCPU25a、GPU25b、電源コンポーネント25c,25d、メモリ25e及びメモリモジュール25fが発生する熱の一部は実装用のピンを通してマザーボード25自体にも伝達され、マザーボード25を伝って第2ヒートシンク部29に伝達される。その結果、この熱は第2ヒートシンク部29から筐体12外へと効率よく排出される。
【0046】
ここで筐体12内は、ファン30の吸気口30c及びその周辺部での空気圧はファン30の吸引によって負圧となる。一方、ファン30の第2吐出口30bから空気が吐出される流通経路34(ダクト構造部35)での空気圧は加圧によって正圧となる。このため、第2吐出口30bから流通経路34に吐出された空気は、開放口である第2排気口32Bへと一層円滑に流通し、途中で第2ヒートシンク部29の放熱を促進しつつ筐体12外に排出される。
【0047】
このように電子機器10は第2ヒートシンク部29を備えることで、CPU25aやGPU25bのような主たる発熱体に加えて、電源コンポーネント25c等の他の発熱体も効率よく冷却することができ、冷却能力が向上する。
【0048】
この際、第2ヒートシンク部29は、第2排気口32Bの開口部32aに面して設置される。このため第2ヒートシンク部29の各フィン29aは、各開口部32aを内側から塞ぐ格子としても機能する。その結果、第2ヒートシンク部29は、ごみ、虫及び部品等の異物が第2排気口32Bを通して筐体12内へと侵入することを防止する異物混入防止部材としても機能する。
【0049】
なお、第2ヒートシンク部29の各フィン29aは極めて薄い金属プレートで形成され、その板厚は、例えば0.1mm程度とすることができる。また各フィン29aの並び間隔(ピッチ)は、例えば1mm程度とすることができる。一方、第2排気口32Bを構成する各開口部32aのX方向の幅(開口幅)は、例えば5mm~10mm程度とされる。このため第2ヒートシンク部29は開口部32aからの異物混入防止作用を十分に発揮できる。
【0050】
しかも第2ヒートシンク部29の各フィン29aは、例えば板厚0.1mm程度と、極めて薄い金属プレートで形成できる。第2ヒートシンク部29は、第2吐出口30bから第2排気口32Bに排出される空気の通風抵抗とならず、ファン30の風量増大に貢献する。
【0051】
例えば開口部32aのうち、第1排気口32A及び第2排気口32Bを構成しない位置にある開口部32aには異物混入防止用の格子40が設置される(図4参照)。格子40は筐体部材20の構成材料、例えば金属や樹脂によって筐体部材20と一体的に成形される。格子40はこのような成形における小型化・薄型化の制限から、X方向の厚みが一定以上、例えば1mm以上必要であり、隣接する格子40間の隙間は第2ヒートシンク部29と同様に1mm程度に設定される。つまり仮に第2排気口32Bでの異物混入防止部材として第2ヒートシンク部29に代えて格子40を用いた場合は、格子40が大きな通風抵抗となって第2吐出口30bから第2排気口32Bへの空気の流れを妨げることが想定される。
【0052】
ここで、第2排気口32Bでの異物混入防止部材として、第2ヒートシンク部29を用いた実施例の電子機器10と、格子40を用いた比較例の電子機器との冷却性能を比較した実験結果を説明する。
【0053】
表1は、第2ヒートシンク部29を第2排気口32Bに面して配置した実施例の電子機器10と、第2排気口32Bを構成する各開口部32aに格子40を設置した比較例の電子機器との各部温度及びファン30の流量を比較したシミュレーション実験の結果を示している。
【0054】
表1において、「ファン回転数(rpm)」はファン30の駆動回転数を示す。「CPU温度(℃)」はCPU25aの表面温度、「GPU温度(℃)」はGPU25bの表面温度を示す。「筐体上面温度・中央(℃)」は筐体12の表面12aのY2側縁部での中央付近、つまりキーボード装置18の後部中央での表面温度を示す。「筐体上面温度・側部(℃)」は筐体12の表面12aのY2側縁部でのX1側又はX2側の端部付近での表面温度を示す。「筐体底面温度(℃)」は筐体12の底面、つまりカバー材21の表面温度を示す。「ファン流量(cfm)」はファン30の合計流量を示す。表1において、「差」は、実施例の測定結果から比較例の測定結果を引いた差を示す。
【0055】
表1に示すように、本実験はファン30の回転数を一定として実施した。その結果、実施例は、比較例と比べて、全ての測定位置での温度が低下しており、最大で1.6(℃)低下することが分かった。しかも実施例は、比較例よりもファン30の流量が増大することも分かった。この結果は、第2ヒートシンク部29での放熱効果と通風抵抗の低減効果とによるものと考えられる。以上より、本実施形態の電子機器10は、第2排気口32Bに面して第2ヒートシンク部29を設置したことで、単に開口部32aに格子40を設置した比較例の構成と比べて冷却性能が向上することが確認された。
【0056】
【表1】
【0057】
ところで、本実施形態の電子機器10において、第1ヒートシンク部28と第2ヒートシンク部29とは一部品で構成されてもよい。例えば各ヒートシンク部28,29は、ベースプレート28b,29bを同一部品として兼用してもよい。但し、本実施形態の電子機器10では、第1ヒートシンク部28と第2ヒートシンク部29とはそれぞれ別体の部品としている。これにより電子機器10は、各ヒートシンク部28,29の設置自由度が向上する。またヒートシンク部28,29が別体であることで、ヒートパイプ27によって第1ヒートシンク部28に輸送された高温の熱が第2ヒートシンク部29に伝達され、マザーボード25を通してCPU25a等に戻ってしまうことも抑制でき、冷却効率が一層向上する。
【0058】
換言すれば、第2ヒートシンク部29は、CPU25a、GPU25b、電源コンポーネント25c,25d等のような発熱体と接続されるヒートパイプ27やベーパーチャンバ31のような熱輸送デバイスが接続されていないことが好ましい(図2及び図5参照)。これにより第2ヒートシンク部29は、このような熱輸送デバイスで輸送される高温の熱をマザーボード25に逆に伝達し、マザーボード25を通してCPU25a等に戻してしまうことを抑制でき、冷却効率の低下を防止できる。
【0059】
第2ヒートシンク部29は、第1面25Aに接続された第1フィン並列体29Aと、第2面25Bに接続された第2フィン並列体29Bとを有する構成としてよい。これにより第2ヒートシンク部29はその放熱面積を可能な限り拡大しつつ、一般的に筐体12のZ方向で中途な高さ位置に設置されるマザーボード25への接続が一層容易となっている。
【0060】
第2ヒートシンク部29は、第2排気口32Bを構成する開口部32aの内周空間に配置される突出部29cを有する構成としてもよい。そうすると、第2ヒートシンク部29は、放熱面積を一層拡大でき、異物混入防止効果も一層向上する。マザーボード25の一縁部25Cも同様に開口部32aの内周空間に配置される構成とすることで、開口部32aへの突出部29cの一層円滑な設置が可能となる。この際、電子機器10のヒンジ14は、上記したワンバー形状のヒンジ筐体14bを有する。このため、電子機器10の使用時、図5から明らかなように開口部32a内に突出した突出部29c及び一縁部25Cがヒンジ筐体14bによって隠されるため、これが外観上で目立つことがない。
【0061】
第2ヒートシンク部29及びマザーボード25は、開口部32aに挿入されない構成としてもよい。図6は、第1変形例に係る第2ヒートシンク部50を備える電子機器10の一部を拡大した模式的な側面断面図である。
【0062】
図6に示す第2ヒートシンク部50は、図5に示す第2ヒートシンク部29と比べて突出部29cを有していない点が異なる。第2ヒートシンク部50は、図4に示す第1ヒートシンク部28と同様に開口部32aに面して配置される。このため、第2ヒートシンク部50は十分な異物混入防止性能を有しつつ、その形状が簡素化される。その結果、第2ヒートシンク部50は、部品コストを一層低減でき、筐体12への設置作業も一層容易となる。なお、この場合は第2ヒートシンク部50が接続されるマザーボード25の一縁部25Cの凹凸形状も不要となり、コスト低減効果等が一層向上する。
【0063】
図7は、第2変形例に係る第2ヒートシンク部51を備える電子機器10の一部を拡大した模式的な側面断面図である。
【0064】
図7に示す第2ヒートシンク部51は、図5に示す第2ヒートシンク部29と比べて、上下のフィン並列体29A,29Bの突出部29cを一体的に形成した突出部29dを備える点が異なる。図7に示す構成例では、マザーボード25の一縁部25Cは凹凸形状をなくしてX方向にフラットな形状である。一方、第2ヒートシンク部51はマザーボード25の一縁部25Cを挟み込むように設置され、突出部29dは開口部32aに挿入される。このため、第2ヒートシンク部51は高い異物混入防止性能を確保しつつ、マザーボード25の形状を簡素化できるという利点がある。
【0065】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10 電子機器
11 蓋体
12 筐体
20 筐体部材
24 冷却モジュール
25 マザーボード
25a CPU
25b GPU
27 ヒートパイプ
28 第1ヒートシンク部
28a,29a フィン
29,50,51 第2ヒートシンク部
29c,29d 突出部
30 ファン
30a 第1吐出口
30b 第2吐出口
32 排気口
32A 第1排気口
32a 開口部
32B 第2排気口
34 流通経路
35 ダクト構造部
【要約】      (修正有)
【課題】冷却能力を向上させる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、第1排気口32A及び第2排気口32Bを有する筐体12と、発熱体25a,25bを実装した基板(マザーボード25)と、第1排気口に面して配置され、複数のフィン28aを所定間隔をあけて並列した第1ヒートシンク部28と、発熱体の熱を第1ヒートシンク部に輸送する熱輸送デバイス27と、第1ヒートシンク部に向かって空気を吐出可能な第1吐出口30aと、基板の表面に向かって空気を吐出可能な第2吐出口30bとを有するファン30と、基板に接続されると共に、第2吐出口から第2排気口へと流れる空気の流通経路上で第2排気口に面して配置され、複数のフィンを所定間隔をあけて並列した第2ヒートシンク部29と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7