IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】支持構造部及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/12 20060101AFI20250310BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20250310BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
H05K7/12 F
H05K7/14 C
G06F1/16 312E
G06F1/16 312Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023206279
(22)【出願日】2023-12-06
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 文武
(72)【発明者】
【氏名】柴山 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】潮田 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 修
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057737(JP,A)
【文献】実開平03-130734(JP,U)
【文献】特開2011-247295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
H05K 7/14
G06F 1/16 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装されたコネクタに一端が接続された電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持構造部であって、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を備え
前記電子モジュールは、前記他端の一面に第1のグランド部を有し、
前記ねじ保持部は、前記第1のグランド部に接触する
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項2】
請求項に記載の支持構造部であって、
前記電子モジュールは、前記他端の一面とは反対側の他面に第2のグランド部を有し、
さらに、前記スタッド連結部と前記電子モジュールとの間に配置され、前記第2のグランド部に接触する導電性部材を備える
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項3】
請求項に記載の支持構造部であって、
前記導電性部材は、前記筒体に通されるリング状のガスケットである
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項4】
請求項に記載の支持構造部であって、
前記導電性部材は、前記キャプチャー部材に固定された金属製の板ばね部材である
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の支持構造部であって、
前記スタッド連結部は、前記筒体に対して該筒体の軸方向に沿って相対移動可能である
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項6】
回路基板に実装されたコネクタに一端が接続された電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持構造部であって、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を備え、
前記スタッド連結部は、前記筒体に通される孔部と、該孔部の内周から突出する突起とを有し、
前記筒体の外周面には、前記突起を係止することで該筒体に対する前記キャプチャー部材の相対回転を規制するストッパ部が設けられている
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項7】
回路基板に実装されたコネクタに一端が接続された電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持構造部であって、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を備え、
前記スタッド連結部は、前記筒体に通される孔部を有し、
前記筒体は、
前記フランジから起立する根本側に設けられ、前記孔部に対して相対回転可能に挿入される第1部分と、
前記フランジからの起立方向で前記第1部分の先端側に連続して設けられ、前記孔部を挿通可能であると共に前記第1部分で所定角度回転された前記スタッド連結部を該筒体から抜け止めする第2部分と、
を有し、
前記キャプチャー部材は、さらに、前記スタッド連結部が前記第1部分で前記所定角度回転されて前記第2部分によって前記筒体から抜け止めされた場合に前記スタッド部材に係止され、前記スタッド連結部の前記所定角度を超えた回転を規制するストッパ部を備える
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項8】
回路基板に実装されたコネクタに一端が接続された電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持構造部であって、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を備え、
前記キャプチャー部材は、さらに、前記ねじ保持部と一体的に設けられ、前記電子モジュールの他端に接続されるケーブルを保持するケーブルガイドを備える
ことを特徴とする支持構造部。
【請求項9】
電子機器であって、
コネクタが実装された回路基板と、
前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、
前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持した支持構造部と、
を備え、
前記支持構造部は、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を有し、
前記電子モジュールは、前記他端の一面に第1のグランド部を有し、
前記ねじ保持部は、前記第1のグランド部に接触している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項に記載の電子機器であって、
前記電子モジュールは、前記他端の一面とは反対側の他面に第2のグランド部を有し、
さらに、前記スタッド連結部と前記電子モジュールとの間に配置され、前記第2のグランド部に接触した導電性部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電子機器であって、
前記電子モジュールは、記憶装置である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項12】
電子機器であって、
コネクタが実装された回路基板と、
前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、
前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持した支持構造部と、
を備え、
前記支持構造部は、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を有し、
前記電子モジュールは、通信モジュールであり、
さらに、前記通信モジュールの他端に設けられた接続部に対してケーブルで接続されるアンテナエレメントを備え、
前記キャプチャー部材は、さらに、前記ねじ保持部と一体的に設けられ、前記ケーブルを保持するケーブルガイドを備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
電子機器であって、
コネクタが実装された回路基板と、
前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、
前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持した支持構造部と、
を備え、
前記支持構造部は、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を有し、
前記スタッド連結部は、前記筒体に通される孔部と、該孔部の内周から突出する突起とを有し、
前記筒体の外周面には、前記突起を係止することで該筒体に対する前記キャプチャー部材の相対回転を規制するストッパ部が設けられている
ことを特徴とする電子機器
【請求項14】
電子機器であって、
コネクタが実装された回路基板と、
前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、
前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持した支持構造部と、
を備え、
前記支持構造部は、
前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、
前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、
前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、
を有し、
前記スタッド連結部は、前記筒体に通される孔部を有し、
前記筒体は、
前記フランジから起立する根本側に設けられ、前記孔部に対して相対回転可能に挿入される第1部分と、
前記フランジからの起立方向で前記第1部分の先端側に連続して設けられ、前記孔部を挿通可能であると共に前記第1部分で所定角度回転された前記スタッド連結部を該筒体から抜け止めする第2部分と、
を有し、
前記キャプチャー部材は、さらに、前記スタッド連結部が前記第1部分で前記所定角度回転されて前記第2部分によって前記筒体から抜け止めされた場合に前記スタッド部材に係止され、前記スタッド連結部の前記所定角度を超えた回転を規制するストッパ部を備える
ことを特徴とする電子機器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に電子モジュールを支持する支持構造部及び該支持構造部を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUを実装した回路基板(マザーボード)のコネクタに対してSSD等の電子モジュールを接続して用いている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-057737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、通常、電子モジュールは回路基板に実装されたコネクタに一端が接続され、他端が回路基板に対してねじで支持される。ところで、電子モジュールは作業者が工場等で取り付ける場合の他、ユーザ自身が交換等を行う場合もある。この際、ねじが筐体内に落下して回収に手間がかかったり、紛失したりする可能性があり、電子モジュールの着脱作業の作業性を低下させている。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、電子モジュールの着脱作業の作業性を向上することができる支持構造部及び該支持構造部を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る支持構造部は、回路基板に実装されたコネクタに一端が接続された電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持構造部であって、前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、コネクタが実装された回路基板と、前記コネクタに一端が接続された電子モジュールと、前記電子モジュールの他端を前記回路基板に支持した支持構造部と、を備え、前記支持構造部は、前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、電子モジュールの着脱作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした図である。
図2図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
図3A図3Aは、支持構造部の分解斜視図である。
図3B図3Bは、支持構造部の斜視図である。
図3C図3Cは、支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す斜視図である。
図4A図4Aは、支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す模式的な側面断面図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す状態からねじを緩めた側面断面図である。
図4C図4Cは、図4Bに示す状態からねじを取り外した側面断面図である。
図5図5は、第1変形例に係る支持構造部の分解斜視図である。
図6A図6Aは、図5に示す支持構造部で電子モジュールを支持する直前の状態を示す斜視図である。
図6B図6Bは、図5に示す支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す斜視図である。
図7図7は、図5に示す支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す模式的な側面断面図である。
図8図8は、第2変形例に係る支持構造部の分解斜視図である。
図9A図9Aは、図8に示す支持構造部で電子モジュールを支持する直前の状態を示す斜視図である。
図9B図9Bは、図8に示す支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す斜視図である。
図10図10は、図8に示す支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す模式的な側面断面図である。
図11A図11Aは、第3変形例に係る支持構造部の分解斜視図である。
図11B図11Bは、図11Aに示すキャプチャー部材を筒体に通した状態での斜視図である。
図11C図11Cは、図11Bに示すキャプチャー部材を回転させた状態での斜視図である。
図12A図12Aは、図11Aに示すキャプチャー部材を筒体に通した状態での平面図である。
図12B図12Bは、図12Aに示すキャプチャー部材を回転させた状態での平面図である。
図13A図13Aは、第4変形例に係る支持構造部で電子モジュールを支持する直前の状態を示す斜視図である。
図13B図13Bは、図13Aに示す支持構造部で電子モジュールを支持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び支持構造部について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした図である。図1に示すように、本実施形態の電子機器10はクラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12とをヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体を有する。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0013】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面(表面12a)にはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、筐体12の幅方向(左右)をそれぞれX1,X2方向、筐体12の奥行方向(前後)をそれぞれY1,Y2方向、筐体12の厚み方向(上下)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0014】
筐体12は、第1カバー材20と第2カバー材21とを厚み方向に重ね合わせて互いに着脱可能に連結したものである。第1カバー材20は、例えば筐体12の上面及び四周側面を形成するものであり、略バスタブ形状を有する。第2カバー材21は、例えば筐体12の下面を形成するものであり、略平板形状を有する。ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12bに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。
【0015】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。図2は、第2カバー材21を取り外して第1カバー材20の内部を下面側から見た図である。
【0016】
図2に示すように、筐体12の内部には、回路基板24と、冷却モジュール25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
回路基板24は、電子機器10のマザーボードとなるプリント基板である。回路基板24は、筐体12のY2側寄りに配置され、X方向に延在している。回路基板24は、CPU(Central Processing Unit)28と、一対のコネクタ30,30を実装している。CPU28は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。コネクタ30は所定の接続規格、本実施形態ではM.2(エムドットツー)規格に準拠している。各コネクタ30にはそれぞれ電子モジュール32,33が接続される。回路基板24、電子モジュール32,33及びこれらの周辺部の具体的な構成は後述する。回路基板24には、さらに、GPU(Graphics Processing Unit)及びメモリ等の各種電子部品を実装できる。回路基板24は、例えばZ1側表面(第1表面24a)が第1カバー材20に対する取付面となり、Z2側表面(第2表面24b)がCPU28やコネクタ30の実装面となる。回路基板24の形状、配置、及び実装する電子部品等は上記に限られないことは言うまでもない。
【0018】
冷却モジュール25は、CPU28が発生する熱を吸熱し、筐体12外へと排出することができる。冷却モジュール25は、ヒートパイプ34と、一対のヒートシンク35,35と、一対のファン36,36とを備える。冷却モジュール25は、CPU28の熱をヒートパイプ34で各ヒートシンク35に輸送し、各ファン36からの送風で各ヒートシンク35の放熱を促進することができる。
【0019】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、回路基板24のY1側寄りに配置され、X方向に延在している。
【0020】
次に、回路基板24及び電子モジュール32,33の具体的な構成例を説明する。
【0021】
先ず、回路基板24は、絶縁性を有する板材の第2表面24bに所定の導電パターンを形成したプリント基板である。回路基板24は両表面24a,24bに導電パターンを形成した構成でもよい。
【0022】
図2に示すように、回路基板24は、一対のコネクタ30,30と、一対の支持構造部40,40とを備え、各コネクタ30と各支持構造部40とで電子モジュール32,33を支持している。回路基板24の第2表面24bには、各支持構造部40の固定に使用する一対のグランドパッド41,41が設けられている(図2及び図4A参照)。グランドパッド41は、例えば円の一部とカットした略D形状の金属パターンで形成されている。金属パターンは、例えばシルクスクリーンで印刷された銅箔である。回路基板24は、例えばスルーホール24cを有し、その第2表面24b側の周縁部にグランドパッド41が形成されている。
【0023】
コネクタ30は第2表面24bに実装されている。コネクタ30の実装タイプは限られないが、例えば落とし込み実装タイプ(Pcie Gen3:PCI Express 3.0)又はオンボード実装タイプ(Pcie Gen4:PCI Express 4.0)等を用いることができる。
【0024】
図3Aは、支持構造部40の分解斜視図である。図3Bは、支持構造部40の斜視図である。図3Cは、支持構造部40で電子モジュール32を支持した状態を示す斜視図である。図4Aは、支持構造部40で電子モジュール32を支持した状態を示す模式的な側面断面図である。図4Bは、図4Aに示す状態からねじ43を緩めた側面断面図である。図4Cは、図4Bに示す状態からねじ43を取り外した側面断面図である。ここでは、一方の電子モジュール32を支持構造部40で支持した構成を代表的に説明するが、他方の電子モジュール33を支持構造部40で支持する構成もこれと同一又は同様な構成とすることができる。
【0025】
図3A図4Cに示すように、支持構造部40は、スタッド部材42と、ねじ43と、キャプチャー部材44とを備える。支持構造部40は、回路基板24に固定されたスタッド部材42に対してねじ43を締め付け、電子モジュール32(33)を回路基板24に対して支持するものである。
【0026】
スタッド部材42は、フランジ42aと、筒体42bとを有する金属部品である。
【0027】
フランジ42aは円の一部を切断面42a1でカットした形状の金属円板である。これによりフランジ42aは、平面視で略D形状を成している。筒体42bはフランジ42aと一体的に形成され、フランジ42aの中心からZ方向に起立する円筒である。筒体42bは内周面に雌ねじが形成されたねじ穴42b1が設けられている。筒体42bの外周面には、その直径方向で切断面42a1側とは反対側にストッパ部42b2が設けられている。ストッパ部42b2は筒体42bの軸方向(Z方向)に沿って延びたリブである。筒体42bの先端縁部には、他の外周面よりも拡径したフランジ状の拡径部42b3が設けられている。
【0028】
フランジ42aのZ1側表面は、例えばリフロー半田付けでグランドパッド41に固定される。これによりスタッド部材42が回路基板24に実装される。スタッド部材42の固定は、例えばコネクタ30や他の実装部品を回路基板24に対してリフロー半田付けで実装する工程と同時に行うことができる。
【0029】
なお、グランドパッド41の外形は、フランジ42aの外形と略相似であることが好ましく、つまり平面視で略D形状とされることが好ましい。これによりフランジ42a及びグランドパッド41はそれぞれ平面視で回転非対称な形状となる。このため回路基板24は、フランジ42aをリフロー半田付けでグランドパッド41に固定する際、加熱溶融した半田の表面張力を受けたフランジ42aがグランドパッド41上で常に一定の回転方向に位置決めされる。具体的には、フランジ42aは常に切断面42a1がグランドパッド41の直線部分に一致する回転方向で半田付けされる。その結果、支持構造部40は、後述するキャプチャー部材44のアーム部48を常にコネクタ30側とは反対側に配置することが可能となり、製造効率や電子モジュール32,33の組付効率が向上する。
【0030】
ねじ43は、フランジ42aの外形と略同一の外形を有する頭部43aと、ねじ穴42b1に螺合可能なねじ部43bとを有する金属ねじである。頭部43aの中心には操作穴43a1が形成されている。操作穴43a1は、例えばプラスドライバー等の工具を嵌合して回転操作する十字穴である。ねじ43は、ねじ山が形成されない軸部43cを頭部43aに対するねじ部43bの根本部分に設けてもよい。軸部43cは、例えばねじ部43bの外径(呼び径)よりも多少小径に形成されることが好ましい。
【0031】
キャプチャー部材44は、スタッド連結部46と、ねじ保持部47と、アーム部48とを有する金属部品である。キャプチャー部材44は、ねじ43をねじ穴42b1に締付可能な状態でスタッド部材42に繋いでおくための保持部材である。キャプチャー部材44は、例えばステンレス製の板金部品である。キャプチャー部材44は、全体として側面視で略L字(図3A参照)と略U字(図3C参照)との間で弾性変形可能である。
【0032】
スタッド連結部46は、スタッド部材42に連結される部分である。スタッド連結部46は、孔部46aと、複数の突起46bとを有し、薄いリング形状を成している。孔部46aは、筒体42bの外径よりも大きな内径を有し、筒体42bを挿通可能である。突起46bは、孔部46aの内周から中心方向に向かって突出した板片である。突起46bの先端にはZ2側に向かって湾曲した爪形状部を設けてもよい。各突起46bは、孔部46aの周方向に所定間隔で並んでいる。孔部46aの直径方向でアーム部48側とは反対側にある2つの突起46b,46b間には、他の突起46b,46b間の隙間よりも多少幅広な隙間Gが形成されている。隙間Gは、筒体42bのストッパ部42b2が配置される。
【0033】
ねじ保持部47は、ねじ43を相対回転可能な状態で保持しておく部分である。ねじ保持部47は、孔部47aを有し、薄いリング形状を成している。ねじ保持部47の外形はねじ43の頭部43aの外形と同一でもよいし、頭部43aの外形より多少大きくても小さくてもよい。ねじ43は、軸部43cが孔部47aに相対回転可能に係合され、抜け止めされる。従って、孔部47aはねじ部43bを挿通可能であり、且つ挿通されたねじ部43bが容易には抜けない必要がある。このため孔部47aの内径はねじ部43bの外径よりも僅かに小さいことが好ましい。ねじ43が軸部43cを持たない場合、ねじ保持部47は孔部47aをねじ部43bの根本まで挿通させ、ここでねじ43を相対回転可能に保持すればよい。
【0034】
アーム部48は、スタッド連結部46とねじ保持部47とを繋ぐ湾曲部分であり、弾性変形可能な板ばね状部材である。本実施形態のキャプチャー部材44は、プレス等で金属板を打ち抜いた板金部品である。このため、アーム部48は、一端がスタッド連結部46と一体に形成され、他端がねじ保持部47と一体に形成されている。アーム部48の長さや弾性変形可能な開閉角度は限定されない。但し、アーム部48は少なくともねじ保持部47で保持したねじ43を、ねじ穴42b1に締付可能な位置(図3C及び図4A参照)と、電子モジュール32(33)の着脱作業に邪魔にならない位置(図3B及び図4C参照)との間で円滑に移動させることができる必要がある。
【0035】
キャプチャー部材44の組付作業の一手順としては、先ず、スタッド連結部46の孔部46aに筒体42bを挿通させる(図3A及び図3B参照)。この際、スタッド連結部46は、突起46bを拡径部42b3で押し広げつつ、孔部46aに筒体42bに通す。その際、ストッパ部42b2は隙間Gに配置しておく。これによりスタッド連結部46は、拡径部42b3とフランジ42aとの間で筒体42bの軸方向(ZZ方向)に相対移動可能な状態で筒体42bに取り付けられる。一方、ねじ43は、スタッド部材42にスタッド連結部46を連結する作業と前後して孔部47aに通し、ねじ保持部47で保持しておく。
【0036】
以上より、ねじ43を保持したキャプチャー部材44がスタッド部材42に対して上下動可能に連結される(図3B図4B参照)。この際、スタッド連結部46は、隙間Gを形成する両側の突起46bがストッパ部42b2に係止される。これによりスタッド連結部46は筒体42bに対する相対回転が規制される。ストッパ部42b2はスタッド連結部46の上下動をガイドする機能もある。
【0037】
次に、電子モジュール32,33は、上記したようにM.2規格に準拠したコネクタ30に接続可能なカード型のモジュール部品である。
【0038】
電子モジュール32は、例えば記憶装置である。本実施形態の電子モジュール32はSSD(Solid State Drive)である。図2に示すように、電子モジュール32は、モジュール基板32aと、モジュール基板32aの一端32a1に形成された端子32bと、モジュール基板32aに実装された半導体チップ32cとを有する。電子モジュール32は、端子32bがコネクタ30に接続された状態で、モジュール基板32aの他端32a2が支持構造部40によってZ方向に押さえられる。これにより電子モジュール32が回路基板24に取り付けられる。他端32a2の長手方向の中心には、スタッド部材42の筒体42bを配置可能な半円状の切欠き32dが形成されている(図4参照)。
【0039】
モジュール基板32aの一面32a3及び他面32a4には、それぞれグランド部32e,32fが設けられている(図4A参照)。グランド部32e,32fは、切欠き32dの周縁部に設けられた金属パターンであり、例えばシルクスクリーンで印刷された銅箔である。
【0040】
電子モジュール33は、例えば通信モジュールである。本実施形態の電子モジュール33はWWAN(Wireless Wide Area Network)に対応している。電子モジュール33が対応する通信規格は、例えばWLAN(Wireless Local Area Network)等でもよい。図2に示すように、電子モジュール33は、モジュール基板33aと、モジュール基板33aの一端33a1に形成された端子33bと、モジュール基板33aに実装された半導体チップ33cとを有する。電子モジュール33は、端子33bがコネクタ30に接続された状態で、モジュール基板33aの他端33a2が支持構造部40によってZ方向に押さえられる。これにより電子モジュール33が回路基板24に取り付けられる。他端33a2の長手方向の中心には、スタッド部材42の筒体42bを配置可能な半円状の切欠き33dが形成されている。
【0041】
モジュール基板33aの一面33a3及び他面33a4にも、それぞれグランド部32e,32fと同様なグランド部33e,33fが設けられる(図4A中にかっこ書きで示す参照符号を参照)。グランド部33e,33fも切欠き33dの周縁部に設けられた金属パターンであり、例えばシルクスクリーンで印刷された銅箔である。
【0042】
電子モジュール33の他端33a2には、複数の接続部33gが設けられている。接続部33gは、筐体12や蓋体11の各所に設置されたアンテナエレメント50からのケーブル51が適宜接続される。図2に示す構成例では合計6本のケーブル51が電子モジュール33に接続される。このため接続部33gは切欠き33dを跨ぐように合計6個が並列されている。
【0043】
次に、回路基板24に対する電子モジュール32,33の着脱動作を説明する。ここでも、一方の電子モジュール32の着脱動作を代表的に説明するが、他方の電子モジュール33の着脱動作もこれと同一又は同様な構成とすることができる。
【0044】
先ず、回路基板24に電子モジュール32を取り付ける際は、ねじ43をねじ穴42b1から取り外し、アーム部48を開いてねじ43をスタッド部材42から退避させておく(図3B参照)。電子モジュール32は、端子32bをコネクタ30に接続した後、他端32a2を筒体42bのすぐ横に載置する。この際、筒体42bの周囲にはスタッド連結部46が配置されている。このため、電子モジュール32は、切欠き32dに筒体42bが配置されると、他面32a4がスタッド連結部46のZ2側表面上に載置される。
【0045】
続いて、アーム部48を弾性変形させてねじ43を電子モジュール32の上からねじ穴42b1に締め付ける。そうすると、頭部43aがねじ保持部47を介して電子モジュール32の他端32a2をZ1方向に押し下げる。この際、支持構造部40は、スタッド連結部46も筒体42bの軸方向に沿ってZ1側に移動する。このため、アーム部48が過剰な閉じ方向の負荷を受けて破損し或いは塑性変形することが防止される。またねじ43がねじ保持部47から脱落することも抑制できる。ねじ43の締め付けが完了すると、電子モジュール32の他端32a2がねじ43及びねじ保持部47で支持される。これにより回路基板24に対する電子モジュール32の取付動作が完了する(図3C及び図4A参照)。
【0046】
次に、回路基板24から電子モジュール32を取り外す際は、ねじ43を緩める(図4B参照)。そうすると、電子モジュール32はねじ43による押圧力が次第に開放されるため、コネクタ30と端子32bとの接続部での付勢力を受けて一端32a1を回動支点として他端32a2がZ2側に浮上する。つまり他端32a2がねじ43に伴ってZ2側に移動する。この際、支持構造部40は、スタッド連結部46も筒体42bの軸方向に沿ってZ2側に移動する。このため、アーム部48が過剰な開き方向の負荷を受けて破損し或いは塑性変形することが防止される。またねじ43がねじ保持部47から脱落することも抑制できる。ねじ43の取り外しが完了すると、アーム部48の弾性力でねじ43が他端32a2から退避する(図3B及び図4C参照)。これにより回路基板24から電子モジュール32を容易に取り外すことができる。
【0047】
以上のように、本実施形態の支持構造部40は、スタッド部材42と、ねじ43と、金属製のキャプチャー部材44を備える。キャプチャー部材44は、スタッド部材42に連結されるスタッド連結部46と、ねじ43を相対回転可能な状態で保持するねじ保持部47と、スタッド連結部46とねじ保持部47とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部48とを有する。
【0048】
従って、支持構造部40のねじ43は、常にキャプチャー部材44を介して回路基板24に固定されたスタッド部材42に捕捉されている。このため、支持構造部40は、電子モジュール32,33の着脱作業時にねじ43が筐体12内に落下したり、紛失したりすることを防止でき、作業性が向上する。またキャプチャー部材44は回路基板24に固定されたスタッド部材42に対して後付けで設置できるため、汎用性も高い。しかもキャプチャー部材44は金属製であるため、ねじ43及びスタッド部材42と電子モジュール32,33との間に介在しても電子モジュール32,33のグランドに影響を与えることがない。また、このような支持構造部40によって電子モジュール32,33を支持する回路基板24を備える電子機器10は、工場等での作業時のみならず、ユーザ自身が電子モジュール32,33の交換等を行う場合にもねじ43の脱落や紛失のリスクを低減でき、メンテナンス性や拡張性が向上する。
【0049】
本実施形態の電子モジュール32,33は、他端32a2,33a2の一面32a3,33a3にグランド部(第1のグランド部)32e,33eを有する。ねじ保持部47はこのグランド部32e,33eに接触する。具体的には支持構造部40は、グランドパッド41に固定されるスタッド部材42とこれに締結されるねじ43との間に介在するねじ保持部47がグランド部32e,33eに接触する。例えば電子モジュール32が記憶装置である場合は、通常、一面32a3のみにグランド部32eが設けられている。支持構造部40は、このような電子モジュール32であっても、グランド部32eをグランドパッド41に対して確実に電気接続することができる。
【0050】
支持構造部40において、筒体42bの外周面には、スタッド連結部46の突起46bを係止することで筒体42bに対するキャプチャー部材44の相対回転を規制するストッパ部46b2を備えることが好ましい。そうすると、キャプチャー部材44(アーム部48)はスタッド部材42に取り付けた際の回転姿勢を一定方向にコントロールできる。具体的にはキャプチャー部材44は、常にアーム部48を電子モジュール32,33の他端32a2,33a2側とは逆側に配置できる。これにより支持構造部40は、アーム部48が電子モジュール32,33と干渉することが回避され、アーム部48の円滑な開閉と、電子モジュール32,33の円滑な着脱とが可能となる。
【0051】
上記では、2つの電子モジュール32,33を搭載し、これらを支持構造部40で支持する構成を例示した。しかしながら電子機器10(回路基板24)は、電子モジュール32,33の一方のみを搭載してもよいし、他の種類の電子モジュールを搭載してもよい。また支持構造部40は、搭載される電子モジュールの一部のみに適用し、他の電子モジュールは他の構造で支持してもよい。
【0052】
図5図7は、第1変形例に係る支持構造部40Aの説明図である。図5図7において、図1図4Cに示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略し、以降の図8図13Bについても同様とする。
【0053】
上記したように、キャプチャー部材44は回路基板24に取り付けられた電子モジュール32,33の一面32a3,33a3のグランド部32e,33eにねじ保持部47が接触する(図4A参照)。ここで、本実施形態の電子モジュール32,33は、他端32a2,33a2の他面32a4,33a4にもグランド部(第2のグランド部)32f,33fを有してもよい(図4A参照)。特に、例えばWWAN規格に準拠する通信モジュールである電子モジュール33は両面グランドが必要である。この場合、支持構造部40は、電子モジュール32,33の他面32a4,33a4のグランド部32f,33fに対してスタッド連結部46を安定して接触させることは難しい。ねじ43で電子モジュール32,33を強く締結し、ねじ43(ねじ保持部47)とスタッド連結部46との間で電子モジュール32,33を強く挟持する構造とすると、電子モジュール32,33の破損や不具合の発生が懸念されるためである。
【0054】
そこで、図5図7に示す支持構造部40Aは、導電性部材であるガスケット60を備える。ガスケット60は、例えば導電性を有するクッション材である。ガスケット60は、例えば所定の厚みを有するリング状に形成される。ガスケット60は、中心の孔部60aに筒体42bが通された状態で、スタッド連結部46のZ2側に配置される。図6A図7に示すように、ガスケット60は、電子モジュール32(33)とスタッド連結部46との間に挟み込まれ、両者に接触する。つまりガスケット60はグランド部32f(33f)及びスタッド連結部46に接触する。これにより支持構造部40Aは、グランド部32f(33f)とスタッド部材42との間も電気接続することができる。
【0055】
図8図10は、第2変形例に係る支持構造部40Bの説明図である。
【0056】
図8図10に示す支持構造部40Bは、図5図7に示す支持構造部40Aと比べて、導電性部材として、ガスケット60に代えて金属製の板ばね部材62を備える点が異なる。板ばね部材62は、例えばステンレス製の板金部品である。板ばね部材62はキャプチャー部材44に一体的に取り付けられている。板ばね部材62は、リング部62aと、固定部62bとを有する。図8では、支持構造部40Bを構成するスタッド部材42の図示を省略し、キャプチャー部材44のみを図示している。
【0057】
リング部62aは中心に孔部62a1を有する。孔部62a1は筒体42bが通される。リング部62aの固定部62b側とは反対側(X1側)の外周端面は切断面62a2でカットされている。これによりリング部62aは平面視で略D形状を有する。
【0058】
固定部62bはキャプチャー部材44に固定される部分である。固定部62bはプレート状部材であり、リング部62aの切断面62a2側とは反対側の外周端面に一体的に形成されている。固定部62bは、アーム部48のスタッド連結部46に対する根本部分のZ2側表面に例えばスポット溶接で固定される。固定部62bは、複数の位置決め孔62b1と、複数の位置決め片62b2とを有する。位置決め孔62b1はキャプチャー部材44に対する固定部62bの固定位置を合わせるために用いることができる。位置決め片62b2は例えば固定部62bの周縁部をZ1側に折り曲げた板片である。位置決め片62b2はアーム部48の両側縁部、アーム部48に形成された係合穴48a(図9A参照)、及び孔部46aの内周壁部にそれぞれ引っ掛かるように配置される。これにより位置決め片62b2はキャプチャー部材44に対する固定部62bの位置ずれを防止することができる。
【0059】
リング部62aは、アーム部48に固定された基端側(固定部62b)から先端側(切断面62a2側)に向かって、次第にZ2側に傾いた傾斜姿勢となる。そこで、固定部62bとリング部62aとの間は多少折り曲げられている。リング部62aは、孔部62a1に筒体42bが通された状態で、スタッド連結部46のZ2側に配置される。ねじ43がスタッド部材42に締め付けられると、板ばね部材62は、リング部62aが電子モジュール32(33)とスタッド連結部46との間に挟み込まれ、グランド部32f(33f)に接触する(図9B及び図10参照)。板ばね部材62は、リング部62aがグランド部32f(33f)に押圧されて弾性変位するため、一層確実にグランド部32f(33f)に押し付けられる。
【0060】
このため、支持構造部40Bにおいてもグランド部32f(33f)とスタッド部材42との間も電気接続することができる。しかもリング部62aの先端には切断面62a2が設けられている。このためリング部62aは、点ではなく線でグランド部32f(33f)に接触でき、電気的な接続状態が一層安定する。
【0061】
図11A図12Bは、第3変形例に係る支持構造部40Cの説明図である。
【0062】
図11A図12Bに示す支持構造部40Cは、上記した支持構造部40,40A,40Bのスタッド部材42及びキャプチャー部材44とは構成の異なるスタッド部材42A及びキャプチャー部材44Aを備える。すなわち、上記したキャプチャー部材44は、筒体42bのストッパ部42b2にスタッド連結部46の突起46bが係止される。これによりキャプチャー部材44はスタッド部材42に対する相対回転が規制され、スタッド部材42に取り付けた際のアーム部48の回転姿勢を一定方向にコントロールしていた。一方、支持構造部40Cは、ストッパ部42b2及び突起46bに代わる構成を有する。
【0063】
スタッド部材42Aは、上記した筒体42bとは構成の異なる筒体64を備える。筒体64は、フランジ42aから起立する根本側に設けられた第1部分64aと、起立方向での先端側に設けられた第2部分64bとを有する。筒体64は根本側(第1部分64a)が先端側(第2部分64b)よりも小径の段付き棒状を有する。
【0064】
第1部分64aは円筒又は円柱である。第1部分64aのZ方向高さは、第2部分64bよりも大幅に小さく、キャプチャー部材44Aのスタッド連結部66の板厚より僅かに大きい程度である。
【0065】
第2部分64bは第1部分64aのZ2側に連続して設けられている。第2部分64bは第1部分64aよりも大径の円筒を有し、その外周面に一対の平面部64b1,64b1が形成されている。各平面部64b1は互いに平行し、筒体64の軸方向(Z方向)に延在している。これにより第2部分64bは、平面視で短径側が直線(平面部64b1)で形成された略楕円形状を有する。つまり第2部分64bの外周面は、2つの平面部64b1と2つの曲面部64b2で形成されている。一対の平面部64b1,64b1間の直線距離は、第1部分64aの外径と同一か又は僅かに小さい。
【0066】
キャプチャー部材44Aは、上記したスタッド連結部46とは構成の異なるスタッド連結部66を備える。さらに、キャプチャー部材44Aはスタッド連結部66に対するアーム部48の根本部分に一対のストッパ部67,67を備える。
【0067】
スタッド連結部66は孔部66aを有し、薄いリング形状を成している。孔部66aは筒体64の第2部分64bの外形と相似であって、第2部分64bよりも僅かに大きい外形を有する。つまり孔部66aは平面視で短径側が一対の直線部66a1,66a1で形成された略楕円形状を有する。つまり孔部66aの内周面は、2つの直線部66a1と2つの円弧部66a2で形成されている。これにより孔部66aは第2部分64bをがたつきなく挿通することができる。一方で、孔部66aは第1部分64aに対してはその軸周りに相対回転可能である。
【0068】
ストッパ部67は、スタッド連結部66に対するアーム部48の根本部分の両側部に形成されている。各ストッパ部67は、アーム部48の幅方向での縁部から離れる方向(外側)に突出しつつZ1側に一旦屈曲した後、再び外側に屈曲されたクランク状の板片である。
【0069】
キャプチャー部材44Aの組付作業の一手順としては、先ず、スタッド連結部66の孔部66aに筒体64の第2部分64bを挿通させる(図11A図11B及び図12A参照)。この際、孔部66aは第2部分64bを通過させて第1部分64aに係合する位置までに押し下げる。そうすると各ストッパ部67がフランジ42aのZ2側表面に当接し、押圧された状態となる。
【0070】
続いて、キャプチャー部材44A(スタッド連結部66)を第1部分64aの軸周りに所定角度回転させる。この回転方向はストッパ部67をフランジ42aの切断面42a1へと最短で到達できる方向であれば90度であり、その逆方向の場合は270度となる。そうすると、図11C及び図12Bに示すように、孔部66aの各直線部66a1が第2部分64bの各曲面部64b2の真下に配置される。これによりスタッド連結部66は、第2部分64bがストッパとなって筒体64からZ方向に抜け止めされる。同時に、各ストッパ部67はフランジ42aのZ2側表面から脱落し、Z1側に落下して切断面42a1に当接する。
【0071】
以上より、スタッド連結部66は、各ストッパ部67がフランジ42a(切断面42a1)に係止され、筒体64の軸周りでのそれ以上の相対回転が規制される。その結果、キャプチャー部材44Aは、スタッド部材42Aに対してアーム部48が所定の回転方向、つまりコネクタ30側とは反対側を向いた回転姿勢で取り付けられる。
【0072】
従って、支持構造部40Cのキャプチャー部材44Aも、常にアーム部48を電子モジュール32,33の他端32a2,33a2側とは逆側に配置できる。これにより支持構造部40Cもアーム部48が電子モジュール32,33と干渉することが回避され、アーム部48の円滑な開閉と、電子モジュール32,33の円滑な着脱とが可能となる。しかもスタッド部材42Aは、上記したスタッド部材42と比べてストッパ部42b2が不要となるため、形状を簡素に構成できる。同様にスタッド連結部46Aは、上記したスタッド連結部46と比べて突起46bが不要となるため、形状を簡素に構成できる。その結果、支持構造部40Cは、上記した支持構造部40等よりも製造コストを抑制できる。
【0073】
なお、キャプチャー部材44Aは筒体64に対してその軸方向に上下動しない。このためキャプチャー部材44Aはキャプチャー部材44の場合よりもアーム部48の変形量を増大させておくことが好ましい。そうするとキャプチャー部材44Aにおいてもアーム部48の破損やねじ43のねじ保持部47からの脱落等を抑制しつつ、ねじ43の円滑な操作が可能となる。
【0074】
図13A及び図13Bは、第4変形例に係る支持構造部40Dの説明図である。
【0075】
図13A及び図13Bに示す支持構造部40Dは、図11A図12Bに示す支持構造部40Cと比べて、ねじ保持部47にケーブルガイド68を設けた構成のキャプチャー部材44Bを備える点が異なる。ケーブルガイド68は、電子モジュール33の接続部33gに接続されるケーブル51の端部を保持するガイド部材である。図13A及び図13B中の参照符号70は電子モジュール33の半導体チップ33cを覆う放熱板である。
【0076】
ケーブルガイド68は、ねじ保持部47の両側部にそれぞれガイドプレート68aを一体的に形成したものである。各ガイドプレート68aはねじ保持部47から他端33a2の長手方向に沿って突出する羽根状に設けられている。各ガイドプレート68aには、例えば複数のクリップ部68bが形成されている。本実施形態の電子機器10は、合計6本のケーブル51が電子モジュール33に接続される。このため、ケーブルガイド68は各ガイドプレート68aに3個ずつ、合計で6個のクリップ部68bを有する。
【0077】
従って、支持構造部40Dは、電子モジュール33の着脱作業を行う際、ねじ43をねじ穴42b1から外してアーム部48を開くと、ケーブルガイド68もねじ保持部47と一体的に開閉するように移動する。このため、各ケーブル51は各接続部33gから取り外した際、各ケーブル51と各接続部33gとの対応関係が混在することが防止される。また各ケーブル51を各接続部33gに接続する際も、所定のケーブル51と接続部33gとを確実に且つ容易に接続することができる。その結果、支持構造部40Dはアンテナエレメント50と電子モジュール33との着脱作業の効率も向上する。またキャプチャー部材44Bも回路基板24に固定されたスタッド部材42Aに対して後付けで設置できるため、汎用性も高い。
【0078】
図13A及び図13Bに示す支持構造部40Dは、図11A~12Bに示す支持構造部40Cのキャプチャー部材44Aにケーブルガイド68を設けた構成を例示している。しかしながら、ケーブルガイド68は、他の支持構造部40,40A,40Bに適用してもよい。
【0079】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 電子機器
12 筐体
24 回路基板
30 コネクタ
32,33 電子モジュール
32e,32f,33e,33f グランド部
40,40A~40D 支持構造部
42,42A スタッド部材
42a フランジ
42b,64 筒体
43 ねじ
44,44A,44B キャプチャー部材
46,66 スタッド連結部
47 ねじ保持部
48 アーム部
50 アンテナエレメント
51 ケーブル
60 ガスケット
62 板ばね部材
68 ケーブルガイド
【要約】
【課題】電子モジュールの着脱作業の作業性を向上する。
【解決手段】支持構造部は、回路基板に実装されたコネクタに一端が接続された電子モジュールの他端を前記回路基板に支持する支持構造部であって、前記回路基板の表面に固定されるフランジと、ねじ穴が形成され、前記フランジから起立する筒体とを有するスタッド部材と、前記ねじ穴に螺合されることで、前記電子モジュールの他端を支持可能なねじと、前記スタッド部材に連結されるスタッド連結部と、前記ねじを相対回転可能な状態で保持するねじ保持部と、前記スタッド連結部と前記ねじ保持部とを繋ぐ弾性変形可能なアーム部とを有する金属製のキャプチャー部材と、を備える。
【選択図】図3C
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B