(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】大口径経中隔アクセス及びその後の心房再アクセスを可能にするデバイスとその方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20250310BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20250310BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B17/04
A61B17/00 500
(21)【出願番号】P 2023517646
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 US2020041853
(87)【国際公開番号】W WO2021011502
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-13
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522178625
【氏名又は名称】エーエムエックス テクノロジーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AMX TECHNOLOGIES,LLC
【住所又は居所原語表記】2485 Xenium Lane N,Plymouth,Minnesota 55441 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(72)【発明者】
【氏名】サラビア,ジェイム,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ファレル,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】コイル,ダニエル,ピー.
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-518862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0149987(US,A1)
【文献】特表2016-512103(JP,A)
【文献】特表2016-507337(JP,A)
【文献】国際公開第2019/014643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 17/04
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経中隔穿刺を行うための血管デバイスであって、
本体と、
前記本体の遠位端から前記本体内に配置された
前進シャフトを介して延びるアンカーと、
前記アンカー内の少なくとも1本の針に連結され
前記アンカー内に配置された少なくとも1本の縫合糸と、
前記少なくとも1本の縫合糸を配置するための、前記少なくとも1本の針を前記本体内に引き込むために前記本体から延びる少なくとも1つのキャッチと、
前記
前進シャフトと整列された作動シャフトに連結された、前記本体と前記アンカーとの間の切開器具と、を備える、血管デバイス。
【請求項2】
前記本体及び前記アンカー内に配置されたガイドワイヤを備える、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項3】
前記本体と前記アンカーの面に角度が付けられている、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項4】
前記本体は、前記アンカーの
前記前進シャフトのための矩形状の内腔を含む、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項5】
前記本体は、前記少なくとも1つのキャッチのための少なくとも1つの内腔を含む、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1本の縫合糸は、前記アンカーのリセスチャネルに収納されている、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1本の縫合糸は、前記本体に向かって延びる2本の針に連結された2つの端部を備える、請求項6に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項8】
前記リセスチャネルは、前記少なくとも1つのキャッチによって引っ張られた後に前記少なくとも1本の縫合糸を解放する、請求項6に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項9】
2本の縫合糸であって、各縫合糸が2本の針に連結された縫合糸を含む、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つのキャッチは、前記本体の近位端から引っ張られる、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項11】
前記切開器具の前記作動シャフトは、前記アンカーの
前記前進シャフトの上を伸縮する、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項12】
前記切開器具は、前記作動シャフトを介して前記本体から半径方向に拡張されている、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項13】
前記作動シャフトは、前記切開器具を前記本体の直径よりも大きな長さで湾曲させる、請求項12に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項14】
前記作動シャフトは、リンケージシステムに前記切開器具を拡張させる、請求項12に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項15】
前記切開器具は、機械的エネルギー又は電気的エネルギーを用いる、請求項1に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項16】
前記機械的エネルギー又は前記電気的エネルギーが、ブレード、セラミック、電気メス技術、高周波、プラズマジェット気化、超音波、高電圧気化、制御拡張、熱及び冷気のうちの少なくとも1つに由来する、請求項15に記載の経中隔穿刺を行うための血管デバイス。
【請求項17】
再アクセスを可能にする中隔開口部閉鎖装置であって、
心臓の中隔における中隔開口部の第1の側にある本体と、
前記本体の遠位端から前記本体内に配置された
前進シャフトを通って延びる、中隔開口部の第2の側にあるアンカーと、
前記アンカー内に配置された少なくとも1本の針に連結された少なくとも1本の縫合糸と、
前記少なくとも1本の縫合糸を配置するための、前記少なくとも1本の針を前記本体内に引き込むために前記本体から延びる少なくとも1つのキャッチと、
前記
前進シャフトと整列された作動シャフトに連結された、前記本体と前記アンカーとの間の切開器具と、を備える、中隔開口部閉鎖装置。
【請求項18】
前記切開器具が機械的エネルギー又は電気的エネルギーを使用する、請求項17に記載の中隔開口部閉鎖装置。
【請求項19】
本体内に配置されたガイドワイヤを含む、請求項17に記載の中隔開口部閉鎖装置。
【請求項20】
前記切開器具は、第1の穿刺のための第1の回路と、より大きな切開のための第2の回路とを備える、請求項17に記載の中隔開口部閉鎖装置。
【請求項21】
前記切開器具が、前記切開器具を開閉するためのプルリング又はバネを備える請求項17記載の中隔開口部閉鎖装置。
【請求項22】
血管閉鎖装置であって、
血管壁の穿刺部を通過するように配置され、本体に引き込まれた位置と本体から拡張した位置との間で操作可能なアンカーと、
前記アンカー内に配置された少なくとも1本の縫合糸と、
前記少なくとも1本の縫合糸に連結され
、前記穿刺部に隣接して前記血管壁を通って延びる少なくとも1本の針と、
前記少なくとも1本の縫合糸を配置するための、前記少なくとも1本の針を前記本体内に引き込むために前記本体から延びる少なくとも1つのキャッチと、
作動シャフトに連結された、前記本体と前記アンカーとの間の切開器具と、を備える、血管閉鎖装置。
【請求項23】
前記アンカーは、前記少なくとも1本の縫合糸を格納するためのリセスチャネルを備える、請求項22に記載の血管閉鎖装置。
【請求項24】
リセスは、前記少なくとも1つのキャッチを通して引っ張られると、前記少なくとも1本の縫合糸の繰り出しを可能にする形状である、請求項23に記載の血管閉鎖装置。
【請求項25】
前記アンカーは、前記アンカーと前記本体との間に前記血管壁を捕捉するために、前記引き込まれた位置と前記拡張した位置との間で操作可能である、請求項22に記載の血管閉鎖装置。
【請求項26】
前記少なくとも1本の針は、前記アンカーから前記本体に向かって
後方に延びる、請求項22に記載の血管閉鎖装置。
【請求項27】
前記本体は、前記少なくとも1つのキャッチのための内腔を含む、請求項22に記載の血管閉鎖装置。
【請求項28】
前記本体が、2本の縫合糸の4本の針に引っ掛かる4つのキャッチ用の4つ内腔を備える、請求項22に記載の血管閉鎖装置。
【請求項29】
前記切開器具は、
径方向において外側に拡張されている、請求項22に記載の血管閉鎖装置。
【請求項30】
前記切開器具が、前記少なくとも1本の縫合糸と平行である、請求項29に記載の血管閉鎖装置。
【発明の詳細な説明】
【関連の開示】
【0001】
本開示は、大口径中隔閉鎖(Large Bore Septal Closure)と題する2020年6月8日出願の米国仮出願第63/036,435号及び大口径心房プレクローズ(Large Bore Atrial Preclose)と題する2019年7月12日出願の米国仮出願第62/873,383号に対する優先権を主張し、その両文献は参照によりその全体を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、医療デバイスに関し、より詳細には、心房(例えば、左心房)へのアクセス及びその後の心房再アクセスを可能にする大口径器具のための経カテーテル送達心房中隔交差及び閉鎖術に関連する。
【背景技術】
【0003】
左心カテーテル処置では、機械式又は高周波(RF)式の針を用いて心房中隔を穿刺・交差させる方法が一般的になってきているようである。小口径(典型的には24フレンチ未満)カテーテルでは、一般的にこの手順が簡単である。しかしながら、より大きなカテーテルやボアを心房中隔に送る場合は、カテーテルを中隔に通すために穿刺部位を拡張することが典型的である。中隔穿刺部位を最初に拡張するための現在の方法論では、アクセス部位を開くためにダイレータを使用したり、バルーンを膨らませたりすることがある。この場合、医師は何度も道具を交換することが必要となる場合もあり、また、拡張技術が本質的に制御できないものであるため、組織に好ましくない影響を与えるおそれがある。
【0004】
さらに、低侵襲でカテーテルを用いた治療法が開発されており、この治療法では、必要ではあるが侵襲性の高い外科的処置ができないような既存の併存疾患を持つ患者にも医師が処置を提供し得る。ここ数年、僧帽弁の修復や交換を行う、カテーテルを用いた手術が開発され、大口径の経中隔アクセスを用いる場合がある。経中隔穿刺は、医原性心房中隔欠損の形成につながる可能性があり、その後、心房中隔欠損処置デバイスにより閉鎖することが必要となる場合があるしかし、その心房中隔欠損処置デバイスは、その後の経中隔交差を妨げたり、困難にしたりすることがある。
【0005】
本開示は、上記の特定された懸念に対処する、その後の心房再アクセスを伴う大口径経中隔アクセスを可能にするデバイス及びその方法を提供する。心房中隔を横切る大口径デバイスの通過を可能にし、その後、処置によって形成された心房中隔欠損の迅速かつ寛容な閉鎖を提供する、制御された正確な心房中隔切開術が本明細書に記載されている。寛容な、という語は、中隔欠損が閉鎖され、将来的に標準的な経中隔法による心房中隔の交差を可能にする機構として定義され得る。他の利益及び利点は、本明細書で提供される開示から明らかになり、提供されるこれらの利点は説明のためのものである。本項の記載は、単に本開示に関連する背景を示すものであり、先行技術を構成するものではない。
【発明の概要】
【0006】
この概要は、以下に「本開示の説明」でさらに説明する概念の一部を簡略化して紹介するために提供される。この概要は、特許請求の範囲に記載された主題の主要な特徴を特定することを意図したものではなく、また、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図したものでもない。
【0007】
本開示の一態様によれば、経中隔穿刺を行うための血管デバイスが提供される。デバイスは、本体と、本体の遠位端から本体内に配置されたシャフトを介して延びるアンカーと、アンカー内の少なくとも1本の針に連結された少なくとも1本の縫合糸と、少なくとも1本の縫合糸を配置するための、少なくとも1本の針を本体内に引き込むために本体から延びる少なくとも1つのキャッチと、少なくとも1本の縫合糸と整列された作動シャフトに連結された、本体とアンカーとの間の切開器具と、を備え得る。
【0008】
本開示のさらに別の態様によれば、再アクセスを可能にする中隔開口部閉鎖装置が提供される。装置は、心臓の中隔の開口部の第1の側にある本体と、本体の遠位端から本体内に配置されたシャフトを通って延びる、中隔開口部の第二の側にあるアンカーと、アンカー内に配置された少なくとも1本の針に連結された少なくとも1本の縫合糸と、少なくとも1本の縫合糸を配置するための、少なくとも1本の針を本体内に引き込むために本体から延びる少なくとも1つのキャッチと、少なくとも1本の縫合糸と整列された作動シャフトに連結された、本体とアンカーとの間の切開器具と、を備え得る。
【0009】
本開示のさらに別の態様によれば、血管閉鎖装置が提供される。装置は、血管壁の穿刺部を通して配置され、血管壁の穿刺部を通過するように配置され、本体に引き込まれた位置と本体から拡張した位置との間で操作可能なアンカーと、アンカー内に配置された少なくとも1本の縫合糸と、少なくとも1本の縫合糸に連結され、アンカーが拡張した位置にあるときに少なくとも1本の縫合糸を接続するために、穿刺部に隣接して血管壁を通って延びる少なくとも1本の針と、少なくとも1本の縫合糸を配置するための、少なくとも1本の針を本体内に引き込むために本体から延びる少なくとも1つのキャッチと、少なくとも1本の縫合糸と整列された作動シャフトに連結された、本体とアンカーとの間の切開器具と、を備え得る。
【0010】
本開示の別の態様によれば、血管壁において中隔交差を行う方法が提供される。この方法は、本体とアンカーとを有する送達カテーテルを提供することと、血管壁の穿刺部を通してアンカーを挿入することと、本体とアンカーとの間の血管壁を捕捉して少なくとも1本の針を露出させる拡張位置にアンカーを操作することと、少なくとも1本の針を、穿刺部に隣接する血管壁を通して、少なくとも1本の縫合糸と係合するように捕捉することと、少なくとも1本の縫合糸を血管壁に配置することと、を含み得る。
【0011】
本開示の一態様によれば、血管用装置が提供される。装置は、組織平面を貫通する少なくとも1つのアンカーを有する送達システムであって、少なくとも1つのアンカーが縫合糸を有する送達システムと、組織平面に配置されて切開を容易にする切開器具と、切開部に進入した治療器具と、縫合糸を組織平面の組織に固定するファスナーと、を備え得る。
【0012】
本開示のさらに別の態様によれば、中隔開口部閉鎖装置が提供される。この装置は、カニューレを通して組織平面に導入される第1のプレジェットであって、組織平面への導入後に第1のプレジェットに張力をかける制御線に連結される、第1のプレジェットと、カニューレを通して組織平面に導入される第2のプレジェットであって、組織平面への導入後に第2のプレジェットに張力をかける制御線に連結される、第2のプレジェットと、第1のプレジェットと前記第2のプレジェットとの間に切開部を形成する切開器具と、切開部を通過させた治療デバイスと、第1のプレジェットの制御線と第2のプレジェットの制御線とからなり、その間の組織平面からの組織で第1のプレジェットと第2のプレジェットの張力を制御する結び目と、を含み得る。
【0013】
本開示の別の態様によれば、患者の心房中隔を穿刺するためのデバイスが提供される。このデバイスは、本体と、本体の遠位端から延びる先端部と、本体と先端部との間に配置された潰れた状態の切開部材であって、先端部と、それに引き続き切開部材とが組織平面に侵入し、切開部材が組織平面を通過した後に拡張する切開部材と、を備え得る。
【0014】
本開示の一態様によれば、血管用装置が提供される。装置は、送達システムと、送達システムの遠位端から延びる先端部と、送達システムと先端部の間に配置された切開器具と、を備え得る。
【0015】
本開示のさらに別の態様によれば、左心房のインスツルメンテーション方法が提供される。この方法は、針で中隔を穿刺することと、中隔の後ろに少なくとも1本の縫合糸を配置することと、治療器具を穿刺部に進めることと、少なくとも1本の縫合糸を締めて、穿刺部を閉じることと、を含み得る。
【0016】
本開示のさらに別の態様によれば、中隔開口部を閉鎖する方法が提供される。この方法は、ワイヤを介して経中隔アクセスを形成することと、ワイヤの上に送達カテーテルを挿入することと、送達カテーテルの切開器具により、経中隔アクセスを拡大することと、経中隔アクセスの周囲を通過する針に連結された少なくとも1本の縫合糸を挿入することと、少なくとも1本の縫合糸で経中隔アクセスを締め付けることと、送達カテーテルを取り外すことと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の特徴と考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。以下の説明において、本明細書及び図面中、同種の部品にはそれぞれ同じ数字を付している。図面の図は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、特定の図は、明瞭性及び簡潔性の観点から、誇張又は一般化された形で示されている場合がある。しかしながら、本開示自体、ならびにその好ましい使用態様、さらなる目的及び利点は、添付の図面と併せて読むことにより、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【0018】
【
図1】本開示の一態様に係る、大腿静脈から右心房に配索されるガイドワイヤを伴った患者の例示的なヒト静脈循環系の正面概略図である。
【0019】
【
図2】本開示の一態様に係る、右心房に進入した例示的な血管デバイスを伴った患者の例示的なヒト静脈循環系の正面概略図である。
【0020】
【
図3】本開示の一態様に係る、心房中隔に配置された例示的な血管デバイスと、心房中隔を横切って左心房に進入した中隔ペネトレータとを伴う心臓の断面説明図である。
【0021】
【
図4】本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイスが心房中隔を横切って左心房内に進められ、中隔ペネトレータが引き出された状態の心臓の断面図である。
【0022】
【
図5】本開示の一態様に係る、例示的な初期切開部に続いてそれらを長くすることを示す心臓の断面説明図である。
【0023】
【
図6】本開示の一態様に係る例示的な血管デバイスの例示的側面図である。
【0024】
【
図7】本開示の一態様に係る、目立たない状態の例示的な血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0025】
【
図8】本開示の一態様に係る、組織を穿刺し縫合糸を通すために使用される構成要素が見えている、デバイスの一部が前進した例示的な血管デバイスの遠位端を別の視点から見た等角図である。
【0026】
【
図9】本開示の一態様に係る、心房中隔の組織を通して進められたデバイスの一部を有する例示的な血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0027】
【
図10】本開示の一態様に係る例示的な内腔構成を有する例示的な血管デバイスの断面図である。
【0028】
【
図11】本開示の一態様に係る、その中の構成要素の内部形状が見えている、例示的な血管デバイスの遠位端の等角断面図である。
【0029】
【
図12】本開示の一態様に係る、血管デバイスの本体から前進したスネアが見えている、例示的な血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0030】
【
図13】本開示の一態様に係る、4つの縫合針及び縫合糸端が組織に通され、スネアされ、そしてデバイスの長さ部分を通して引かれた後の、例示的な血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0031】
【
図14】本開示の一態様に係る、縫合糸がデバイスの長さ部分を通して完全に引かれ、そして組織に対して引っ張られた後の、例示的な血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0032】
【
図15】本開示の一態様に係る、切開器具が部分的に前進して切開要素が見えるようになった後の血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0033】
【
図16】本開示の一態様に係る、切開器具が拡張された状態の血管デバイスの遠位端の等角図である。
【0034】
【
図17】本開示の一態様に係る、組織を切開するように配置された例示的な血管デバイスの等角図である。
【0035】
【
図18】本開示の一態様に係る、組織に挿入されるであろう縫合糸の等角図である。
【0036】
【
図19】本開示の一態様に係る、組織が縫合糸と係合した後の切開部の等角図である。
【0037】
【
図20A-20L】本開示の一態様に係る、回転して複数回使用され得る少なくとも1つの切開器具から作製され得る、心房中隔において血管デバイスを用いて作製され得る様々な例示的な切開パターンである。
【0038】
【
図21】本開示の一態様に係る、組織端の圧着を促進するための、切開部の例示的なカットパターンの等角図である。
【0039】
【
図22】本開示の一態様に係る、わずかな張力をかけながら、張力をかけた状態で組織縁を制御し縁部を重ならせる、組織縁の圧着を促進するための、切開部の例示的カットパターンの等角図である。
【0040】
【
図23】本開示の一態様に係る、組織縁の圧着を促進するための、切開部のカットパターンと、組織縁を制御する例示的なヘリカルアンカーとを示す等角図である。
【0041】
【
図24】本開示の一態様に係る、4つの拡張可能部材を有する例示的な拡張可能高周波(RF)切開器具の等角図である。
【0042】
【
図25】本開示の一態様に係る、組織に突き刺すための先端部を有する拡張可能な切開器具を備えた例示的な血管デバイスの等角図である。
【0043】
【
図26】本開示の一態様に係る、組織を超えて配置された例示的な拡張可能な切開器具を有する例示的な血管デバイスの等角図である。
【0044】
【
図27】本開示の一態様に係る、組織に切開部を形成する例示的な拡張可能な切開器具を有する例示的な血管デバイスの等角図である。
【0045】
【
図28】本開示の一態様に係る、アンカー機構を進める例示的な拡張可能切開器具を有する例示的な血管デバイスの等角図である。
【0046】
【
図29】本開示の一態様に係る、アンカー機構を進めるためにプッシュアンカーが更に挿入された例示的な拡張可能切開器具を有する例示的な血管デバイスの等角図である。
【0047】
【
図30】本開示の一態様に係る、アンカー機構が取り外された例示的な血管デバイスの等角図である。
【0048】
【
図31】本開示の一態様に係る、組織アンカーを組織に対して残してその組織から取り外された例示的な切開器具の等角図である。
【0049】
【
図32】本開示の一態様に係る、組織内の例示的なトグルの等角図である。
【0050】
【
図33】本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイスから展開された非傷性先端部を有する例示的な切開器具の等角図である。
【0051】
【
図34】本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイスから展開された、シース内にスリットを有する例示的な切開器具の等角図である。
【0052】
【
図35】本開示の一態様に係る、シース内のスリットから延びる切開要素を有する例示的な切開器具の側面図である。
【0053】
【
図36】本開示の一態様に係る例示的な切開器具の遠位端の等角図である。
【0054】
【
図37】本開示の一態様に係る切開器具を示す断面説明図である。
【0055】
【
図38A-38E】本開示の一態様に係る、例示的な切開器具が、切開性能を最適化し、電力の入力を最小化するためにどのように使用され得るかを示す概略図である。
【0056】
【
図39】本開示の一態様に係る、例示的なガイドワイヤを用いて横断される例示的な組織の等角図である。
【0057】
【
図40】本開示の一態様に係る送達シース内の縫合糸アンカーの等角図である。
【0058】
【
図41】本開示の一態様に係る、組織を貫通させようとしている送達シース内の例示的な縫合糸アンカーの等角図である。
【0059】
【
図42】本開示の一態様に係る、組織に係合又は貫通する送達シース内の例示的な縫合糸のアンカーの等角図である。
【0060】
【
図43】本開示の一態様に係る、縫合糸制御線が取り付けられた組織と係合する送達シース内の例示的な縫合糸アンカーの等角図である。
【0061】
【
図44】本開示の一態様に係る、シースに収まった状態の例示的な切開器具の等角図である。
【0062】
【
図45】本開示の一態様に係る、シースを抜いた位置における例示的な切開器具の等角図である。
【0063】
【
図46】本開示の一態様に係る、シースを抜いた位置で拡張された例示的な切開器具の等角図である。
【0064】
【
図47】本開示の一態様に係る、組織に切開部又は切り込みを形成する例示的な切開器具の等角図である。
【0065】
【
図48】本開示の一態様に係る、ガイドワイヤが通過する組織内の例示的な切開部又は切り込みの等角図である。
【0066】
【
図49】本開示の一態様に係る、ガイドワイヤ上の組織の切り込みを通過させて例示的な治療器具を前進させている状態の等角図である。
【0067】
【
図50】本開示の一態様に係る、ヘリカルバーブを有する例示的な組織アンカーロックの等角図である。
【0068】
【
図51】本開示の一態様に係る、縫合糸制御線上に渡された、組織内に係合したヘリカルバーブを有する例示的な組織アンカーロックの等角図である。
【0069】
【
図52】本開示の一態様に係る、縫合糸制御線上に渡された、組織内に係合したヘリカルバーブ、及びアンカーのレベルまでトリミングされた制御線を有する例示的な組織アンカーロックの等角図である。
【0070】
【
図53】本開示の一態様に係る、組織の他方の側に係合されたヘリカルバーブを有する例示的な組織アンカーロックの等角図である。
【0071】
【
図54】本開示の一態様に係る、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェットの等角図である。
【0072】
【
図55】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレの等角図である。
【0073】
【
図56】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレと、カニューレを通して進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェットの等角図である。
【0074】
【
図57】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレと、カニューレから外へ進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェットの等角図である。
【0075】
【
図58】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレと、カニューレから外へ進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェットと、プレジェットを短くするように張力をかけられた制御線の等角図である。
【0076】
【
図59】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレが引き抜かれて心臓組織表面に保持された状態における、短くなるように張力をかけた状態の生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェットの等角図である。
【0077】
【
図60】本開示の一態様に係る、生体適合性材料又は生体吸収性材料から作られた例示的な同心円状プレジェットの等角図である。
【0078】
【
図61】本開示の一態様に係る、プレジェットの横で心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレの等角図である。
【0079】
【
図62】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレと、カニューレから外へと進められた生体適合性材料又は生体吸収性材料から作られた例示的な同心円状プレジェットの等角図である。
【0080】
【
図63】本開示の一態様に係る、心臓組織を
突き刺す例示的なカニューレと、カニューレから外へと進められた生体適合性、又は生体吸収性材料から作られた例示的な同心円状プレジェットと、プレジェットを短くするために張力をかけられた
制御線の等角図である。
【0081】
【
図64】本開示の一態様に係る、プレジェットを短くするために張力をかけられた生体適合性材料又は生体吸収性材料から作られた例示的な同心円状プレジェットと、プレジェットの間に作られた例示的な切開部の等角図である。
【0082】
【
図65】本開示の一態様に係る、プレジェットの間の切開部に配置されて組織に至る、例示的な治療器具の等角図である。
【0083】
【
図66】本開示の一態様に係る、2つのプレジェット制御線を用いて心臓組織まで進められた例示的な結び目の等角図である。
【0084】
【
図67】本開示の一態様に係る、2つのプレジェット制御線を用いて心臓組織まで進められ、組織の結び目側から締め付けられた、例示的な結び目の等角図である。
【0085】
【
図68】本開示の一態様に係る、プレジェット側から2つのプレジェット制御線が締め付けられた状態で組織まで進められた例示的な結び目の等角図である。
【0086】
【
図69】本開示の一態様に係る、プレジェット間で閉じられた例示的な切開部の等角図である。
【0087】
【
図70】本開示の一態様に係る、後続の心房再アクセスを伴う大口径経中隔アクセスを可能にするための例示的な処理を示すフローチャートである。
【開示内容の説明】
【0088】
添付図面に関連して以下に記載される説明は、本開示の例示的な実施形態の説明として意図されており、本開示が構築及び/又は利用され得る唯一の形態を表すことを意図するものではない。本説明は、図示された実施形態に関連して、本開示を構成し、動作させるための機能及びブロックの順序を示すものである。しかしながら、同一又は同等の機能及びシーケンスが、本開示の精神及び範囲内に包含されることも意図される異なる実施形態によって達成され得ることが理解される。
【0089】
本開示は、医療デバイスに関する。より詳細には、本開示は、中隔開口部を形成する前に閉鎖/組織近似縫合を予め配置することにより、その後の心房再アクセスを伴う大口径経中隔アクセスを可能にする血管デバイスを記載する。概して、本デバイスは、心房中隔を穿刺及び切開するための送達カテーテルを含み得る。送達カテーテルのアンカーは、心房内の縫合糸を中隔壁、例えば左心房に固定してもよい。切開は、縫合糸に干渉することなく機械的エネルギー又は高周波(RF)エネルギーを使用し得る拡張可能な切開器具によって行い得る。縫合糸は、切開器具と接触しても破損しないように、耐高温材料で作られていてもよい。切開器具で切開部を形成した後、組織平面を通して治療器具を進めてもよい。切開部の閉鎖は、先に入れた縫合糸で行ってもよい。
【0090】
血管デバイスに対する多数の他の変更又は構成は、以下に提供される説明から明らかになるであろう。例えば、心房中隔の切開部を閉じる場合、中隔に穿刺し、アンカーを組織内に押し込む針が関わってもよい。また、2つ以上のプレジェットに結ばれた制御線を使用し、カニューレを介して組織平面上に配置することで、組織端の重なり(オーバーラップ)や圧着(アポジション)を促進してもよい。
【0091】
有利なことに、近くで縫合管理を行う最初の穿刺により、心房中隔における単一の送達カテーテルアクセス内の複数のインスツルメントを寛容に許可しつつ、手技によって生じた医原性心房中隔欠損(ASD)を迅速に閉鎖することがでる。切開部は簡単に締められるので、アンカーや縫合糸を通して再アクセスが可能である。この血管デバイスは、経カテーテル僧帽弁置換術において左心房に大口径の経静脈アクセスを必要とする手技に有用であると考えられるが、この場合、送達システムによって大きなASDが残存してしまうのが一般的である。他の利益及び利点は、本明細書で提供される開示から明らかになり、提供されるこれらの利点は説明のためのものである。
【0092】
図1-5は、そこに定義されるガイドワイヤを伴う例示的な血管デバイスを伴う心臓を含むヒト静脈循環系を表し、
図6-23は、例示的な切開を伴うデバイスの第1の実施形態を説明する。
図24-38は、追加の例示的な切開を伴う血管デバイスの第2の実施形態を説明する。
図39-53は、送達シースと、組織を結びつけるためのヘリカルアンカーとを伴う第3の実施形態を説明する。
図54-69は、再アクセスを可能にする結び目で一緒に固定された生分解性材料で作られた複数のプレジェット及び縫合糸を配置する第4の実施形態を提供するものである。
図70は、様々な技術を提供するものである。実施形態内で以下に説明する構成要素は、本開示の範囲内であるデバイスの派生物を考え出すために、互いに交換、除去、又は追加してもよい。
【0093】
図1に目を向けると、本開示の一態様に係る、大腿静脈104から右心房106に配索されるガイドワイヤ102を伴った患者100の例示的なヒト静脈循環系の正面概略図が提供される。ガイドワイヤ102は、複数のツールが交換され得る連続的な存在を可能にしてもよい。例えば、これらのツールでは、閉鎖前縫合、その後の格納式ブレードによる制御された心房中隔切除、左心房への大口径カテーテルや他の医療器具の送達を行ってもよい。
【0094】
最初に、図示されているように、血管導入シース112を、経中隔的な穿刺又は切開を介して右大腿静脈104に挿入してもよい。あるいは、血管導入シース112を、頸静脈、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈、上腕動脈及び静脈等の非大腿部に配置されてもよい。その他のアプローチやアクセス部位としては、治療用カテーテルとは反対側の脚へのアプローチも考えられる。
【0095】
ガイドワイヤ102は、血管導入シース112を介して挿入し、下大静脈110を頭蓋方向に上昇して心臓108の部屋の1つである右心房106まで配索されてもよい。この図では、患者100の解剖学的左側面が向かって右側である。ガイドワイヤ102は、治療用又は診断用のカテーテルを心臓108の領域に導くために使用されるように配置されてもよい。
【0096】
ガイドワイヤ102が配索されている静脈循環は、一般に、下行大動脈がその一部である全身循環よりも0~20mmHgの間の低圧力であってよい。全身循環内の圧力は、患者100に存在する高血圧又は低血圧のレベルに応じて、60mmHgから、300mmHgを超える範囲であってもよい。静脈循環を通じて、大腿静脈104で心臓108にアクセスすることにより、カテーテル挿入部位からの出血の可能性を最小にされ得る。
【0097】
図2は、本開示の一態様に係る、右心房106に進入した例示的な血管デバイス200を伴った患者100の例示的なヒト静脈循環系の正面模式図である。
図2は患者100の前側から後側を見た正面図である。
図1の血管導入シース112が右大腿静脈104から抜き取られ、血管デバイス200がガイドワイヤ102上で静脈循環に挿入されている。デバイス200は、導入シースによって使用されるのと同じガイドワイヤ102を介して、下大静脈110から心臓108の右心房106へ配索されてもよい。
【0098】
図3を参照すると、本開示の一態様に係る、心房中隔300に配置された例示的な血管デバイス200と、心房中隔300を横切って左心房302に進入した中隔ペネトレータ304とを伴う心臓108の断面説明図が示されている。上行大動脈、大動脈弁、肺動脈、肺動脈弁は、明確化のためと心房中隔300を示すためにこの図から除かれている。実質的に右心房106内に位置する血管デバイス200の本体は、その長軸が心房中隔300に対して垂直になるように示されている。血管デバイス200の近位端は、下大静脈110内にあることが示されている。中隔ペネトレータ304は、心房中隔300の穿刺部306を通って延び、血管デバイス200の遠位端で左心房302へ配索される。
【0099】
中隔ペネトレータ304は、鋭く尖った遠位端を有する針又はシャフト方向に細長い構造体であってもよい。中隔ペネトレータ304は、ガイドワイヤ102内にあってもよく、ペネトレータ304は取り外し可能であってよい。中隔ペネトレータ304は、ボタン、レバー、ハンドル、又はトリガー等の制御機構を介して血管デバイス200の近位端で作動させることができ、この機構は、デバイス200の長さ部分を走る連結部、プッシャーロッド、電気バス等を介して、永久的又は取り外し可能に貼り付けられていてもよい。
【0100】
手術において、心房中隔300に対向する左心房302の壁を通る中隔ペネトレータ304は、透視、磁気共鳴画像(MRI)、超音波等を用いて誘導され、前進させてもよい。患者100の大動脈弓の上流又は解剖学的に近位の領域でペネトレータ304を介して大動脈を不用意に突き刺さないように注意を払ってもよい。血管デバイス200の遠位部分は、心房中隔300とほぼ垂直になるように、30度から120度の間の角度で曲げられ、偏向され、又は関節運動させられてもよい。
【0101】
中隔ペネトレータ304は、固体であってもよいし、皮下注射針のように中空であってもよいし、「U」字型又は「C」字型の断面を有していてもよい。中空の「C」又は「U」字型の中隔ペネトレータ304の中心又はコアは、誤って組織が貫通するのを防ぐためにガイドワイヤ又は他のコア要素で充填されてもよい。中隔ペネトレータ304は、硬質であってもよいし、柔軟であるが柱強度を保持するものであってもよい。このような柔軟な構成は、ペネトレータ304の壁に設けられた切り欠きや、ガイドワイヤのような構造を含んでいてもよい。中隔ペネトレータ304は、最初は直線状であってもよいし、最初は曲線状であってもよい。中隔ペネトレータ304は、ニチノール等の形状記憶材料から作製され、材料がマルテンサイト温度からオーステナイト温度に加熱されると、湾曲を引き起こすように熱処理されてもよい。このような加熱は、電気的加熱や温水注入等を用いて行い得る。中隔ペネトレータは、RF(高周波)等の中隔組織の穿刺を容易にするエネルギーを利用してもよい。
【0102】
図4を参照すると、本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイス200が心房中隔300を横切って左心房302内に進められ、中隔ペネトレータが引き出された状態の心臓108の断面図が示されている。遠位部で拡張した血管デバイス200は、右心房106から心房中隔300を越えて、穿刺部306を介して左心房302に進入している。これを通じて、血管デバイス200の遠位部分は、閉鎖前縫合糸又は他の器具の配置を提供し得る。
【0103】
血管デバイス200の近位領域、又は本体は、近位領域が下大静脈110内だけでなく、右心房106内にも位置するように前進している。これは、先に説明した透視法、MRI(磁気共鳴画像)、超音波等で誘導してもよい。
【0104】
図5は、本開示の一態様に係る、例示的な初期切開部502又は506を示し、その後、ユーザが選択/制御する長さへと長くする心臓108の断面説明図である。右心房側から見た心臓108の断面図を示す。心房中隔300は、上大静脈512の上大静脈縁510、後大静脈縁514、下大静脈110の下大静脈縁516、房室弁縁518、大動脈縁520、及び上縁522によって囲まれていてもよい。血管デバイス200は、心房中隔切開術によって形成された、縫合糸を介した閉鎖と関連して、格納可能な切開器具によって、ユーザが定義した、調整可能に制御された心房中隔切開術を形成してもよい。
【0105】
理想的な位置で中隔ペネトレータによって心房中隔300に穿刺した後、血管デバイス200の遠位端を組織平面を通して挿入してもよい。心房中隔壁の最初の切開部502又は506を形成し、その後、治療器具を可能にするのに適した所定の所望の量504又は508まで長くしてもよい。さらに、位置制御及び視覚化により、大動脈縁520又は上縁522のような妨害することが望ましくない解剖学的領域524を回避すること、又は心房の外側を穿刺すること、又は心筋を切開することを可能にしてもよい。
【0106】
組織切開部502又は506の標的は、僧帽弁等の所望の治療標的へのアクセスを可能にするような位置の心房中隔300上であってもよい。一例として、切開の長さ又は大きさは、組織平面をさらに損傷することなく治療器具又はデバイスを収容するように設定され得る。十分な大きさの特定の長さに切開された組織は、所望の切開長さを超えて組織が裂けることがないように促進してもよい。これは、所望の量504又は508と共に切開部502又は506の周縁を治療器具の周縁と一致させることによって達成され得る。一実施形態では、後続の治療用カテーテルよりわずかに大きい切り込みを作ることで、ユーザにより柔軟性を持たせてもよい。一般的な中隔穿刺部では、最初の穿刺部位が適切でない場合、ユーザはカテーテルを後退させ、再穿刺、再拡張を行う必要があり、組織が裂ける危険性がある。
【0107】
また、組織平面の伸縮を考慮して長さを調整してもよい。心房窩部の周囲の組織縁は、組織の切開部502又は506を開始又は制限するために使用又は参照されてもよい。切開部502又は506を窩の縁を越えて又は外側に伸ばすことは、形成するためにより多くの力又はエネルギーを必要とし、そのため、切開部502又は506の位置を決定するためのフィードバックループとして利用される。
【0108】
以下に示す一例では、血管デバイス200は、1つの切開アームと、センタリング穿刺部材とを有していてもよい。この構成では、手術者がツールを回転させ、所望の方向にスリットを形成してもよい。心臓108の窩の縁は、この点を最初に穿刺して、その後、切開部材を回転させて任意の方向に沿って切開することがより容易であるので、開始点として使用してもよい。また、中心から伸びる2本の対称的な切開アーム(中心穿刺面あり、なし)を用いてもよい。この構成により、医師は、既知の高さ又は位置を穿刺することができ、切り込みが対称であることから、これにより切り込みの中心が医師の意図する位置にあることを確認し得る。
【0109】
第1の実施形態を開示する
図6に目を向けると、本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイス200の例示的側面図が提供される。血管デバイス200は、デバイス200の本体から拡張可能な、先端又はアンカーであってよい遠位領域を有してもよい。シースチューブ606の長さは、シースハブ608まで本体を延長してもよい。チューブ606は、ガイドワイヤ102の出口経路から約180度の方向へのカテーテルの偏向を提供するために、その遠位端付近で実質的に湾曲していてもよい。図示されるように、シースハブ608は、トライポートハブ608であってもよい。ハブ608は、他の実施形態において、より少ない又はより多くのポートを有するように構成されてもよい。以下に示すハブ608には、複数の器具が挿入されたり引き込まれたりすることがある。
【0110】
大まかに説明すると、血管デバイス200は、ハブ608に配置された器具を介して制御された中隔開口を形成する前又は後のいずれかに、心房中隔に縫合糸を配置するために使用され得る。他の医療デバイスは、左心房に進入してその位置を確認し、その後にASDを閉鎖し得る。有利なことに、ASDの閉じ方によって、その後のカテーテルを用いた処置に必要な場合に、将来の組織交差を可能にし得る。
【0111】
図7に目を向けると、本開示の一態様に係る、低プロファイル状態における例示的な血管デバイス200の遠位端の等角図が提供される。デバイス200は、切開器具、すなわち、ブレード中隔切開術の導入前に、心房中隔切除閉鎖縫合糸の配置を可能にし得る。デバイス200全体は、右心房を通じて心房中隔に配置されたガイドワイヤの上を走行してもよい。
【0112】
本明細書に記載される血管デバイス200は、心房中隔等の組織平面におけるアクセス切開部を制御されたサイズ及び又は調整可能なサイズ及び位置に形成することを容易にし、処置が完了した後に治療器具又はカテーテルが切開部の制御閉鎖を容易に行うことができるようにし得る。閉鎖部は、血行力学的に密閉されるように調整されてもよいし、逆にある量の流れを許容してもよい。治療用機器は、例えば、心房細動の修正、僧帽弁修復の実行、中隔欠損の修正、又は人工心臓の移植を実行するための診断及び治療的介入を行ってもよい。
【0113】
遠位端の血管デバイス200は、カテーテルシャフト702又は本体、アンカー704、及びガイドワイヤ内腔706を含んでもよい。これらの部品は、例えば、高分子材料で作られてもよい。エラストマー材料は、柔軟性を最大化するためにカテーテルシャフト702を構築するために使用されてもよい。これらの材料は、シャフト702の内壁及び外壁を構成するために使用されてもよい。デバイス200内の補強構造は、ステンレス鋼、チタン等の金属から作られていてもよい。本実施形態では、補強構造は可鍛性であるが、付与された力に打ち勝つのに十分な力を保持する。
【0114】
カテーテルシャフト702、すなわち送達カテーテルは、管状構造である本体を有していてもよい。シャフト702は、一実施形態では、部品を収容するために円形の断面を有していてもよい。これらの構成要素は、血管デバイス200の近位端に向かって延びていてもよい。以下に説明する左心耳インプラントは、シャフト702を介した送達の間、半径方向に折り畳み可能であってもよい。一実施形態では、インプラントは、半径方向に拡張可能な送達シースを備えた14フレンチ以上のカテーテルを通じて送達され得る。
【0115】
図7を続けると、血管デバイス200のアンカー704は、心房中隔に送達され、カテーテルシャフト702から伸長可能であってもよい。アンカー704及びカテーテルシャフト702は、遠隔地から組織を横断する縫合糸の送達を可能にする特定の機能を果たす構成要素を組み込んでいてもよい。本実施形態の目的であるアンカー704は、円錐形であってもよい。あるいは、アンカー704は、漏斗状、丸みを帯びた、傾斜した、又は尖った形状を有していてもよいが、これらに限定されるものではない。アンカー704は、心房中隔に適合し得る面取りされたエッジを有していてもよい。
【0116】
血管デバイス200のカテーテルシャフト702及びアンカー704の走行部又はその内部に、ガイドワイヤ内腔706が存在してもよい。内腔706は、過去に配置されたガイドワイヤの上に血管デバイス200を前進させ、送達することを可能にし得る。先に述べたガイドワイヤは、大腿静脈から下大静脈に上がって患者の体内に入り、右心房に入り得る。最初の穿刺を行うための中隔ペネトレータは、ガイドワイヤ内にあってもよく、そこから取り外し可能であってもよい。
【0117】
図8は、本開示の一態様に係る、組織を穿刺し縫合糸を通すために使用される構成要素が見えている、デバイス200の一部が前進した例示的な血管デバイス200の遠位端を別の視点から見た等角図である。円錐形状を有するアンカー704は、カテーテルシャフト702の先端部から患者の心臓内に進入し得る。アンカー704が前進する距離の量は、それが横断している組織の厚さ及びそれが進入しているチャンバーのサイズに依存し得る。
【0118】
血管デバイス200は、アンカー704の移動量を変化させることを許容又は制限するように設計されてもよい。移動量は数ミリのものから数センチ以上のものまである。本開示の目的のために、アンカー704は、右心房から左心房に心房中隔を横断してもよく、カテーテルシャフト702は、右心房内の心臓の右側に残ってもよいと想定される。アンカー704は、アンカー704の針804が左心房302内に引っ掛かるか、又は掴まれることを許容するように、拡張されてもよい。
【0119】
アンカー704が前進したら、針804を露出させてもよい。一実施形態では、図示のように、4本の針804がアンカー704に取り外し可能に連結されてもよい。針804は、後方に向いていてもよい。例えば、針804は、アンカー704が左心房内に延びたときに、血管デバイス200のカテーテルシャフト702、又は本体に向かって延びてもよい。カテーテルシャフト702及びアンカー704の面は、組織とカテーテルシャフト702との間のより安定した界面を促進すべき組織とのより直交する接触を可能にするために所定の量角度が付いていてもよい。
【0120】
血管デバイス200のアンカー704のための前進シャフト802は、カテーテルシャフト702との正確な回転整列を維持するために、長方形の形状であり、カテーテルシャフト702内の対応する長方形の形状の内腔を通って移動してもよい。典型的には、アンカー704とカテーテルシャフト702との間の位置合わせは、デバイスの機能性を可能にするように維持される。前進シャフト802は、血管デバイス200の近位端で拡張されたり引き込まれていたりしてもよく、この近位端は、上に示したように、経皮的な穿刺点又は切開点に位置していてもよい。
【0121】
図9を参照すると、本開示の一態様に係る、心房中隔の組織900を通して進められたデバイス200の一部を有する例示的な血管デバイス200の遠位端の等角図が提供される。血管デバイス200は、組織900の代表的な部分を通して配置されている。円錐形状を有するアンカー704は、中隔ペネトレータによって先に行われた組織900の穿刺部位を横切って進入している。カテーテルシャフト702は、中隔ペネトレータによって形成された穿刺部よりも大きくてもよく、したがって、カテーテルシャフト702が組織900内に進入することを防止する。これにより、組織を装置の狭い側面の周囲に密着又は固定し得る。
【0122】
図10は、本開示の一態様に係る例示的な内腔構成を有する例示的な血管デバイス200の断面図である。カテーテルシャフト702は、特定の構成要素がそこを通過することを可能にする複数のチャネル又は内腔を含んでもよい。一例として、等しい直径を有する4つの内腔1002は、スネアが、テザー縫合糸でアンカーに取り外し可能に連結された針を掴み、引っ掛け、又は輪にして、その中を通過させることを可能にし得る。中央の矩形状のチャネル1004は、その中をアンカーの矩形状の進退シャフトが移動することを許容してもよい。この構成により、カテーテルシャフト702内で、後に示す4つの針と切開器具の位置関係を維持し得る。
【0123】
血管デバイス200の断面に対する異なる構成は、縫合糸の配置に応じて実施し得る。例えば、4つを超える数の内腔1002が、それぞれが中心から等距離にあるカテーテルシャフト702を貫通して通じていてもよい。有利には、内腔1002は、縫合糸の管理ができるように、最初の穿刺に適切な間隔を提供し得る。内腔1002に針を捕捉するために使用される穿刺部は、組織の不必要な引き裂きが生じないように、なおかつ適切な縫合糸の配置が行われるように配置されてもよい。図示の構成では、4本の針を通して2本の縫合を行うことができるが、他の構成が存在してもよく、本開示の範囲内である。一実施形態では、開口部が中心内腔を放射状に取り囲み、ユーザが選択的に任意の数の針/縫合糸を通すことができるようにしてもよい。縫合糸は、ユーザが選択した任意の構成で近位端から装填してもよい。
【0124】
図11は、本開示の一態様に係る、その中の構成要素の内部形状が見えている、例示的な血管デバイス200の遠位端の等角断面図である。例示の目的のために、アンカー704の一部分は、円錐形アンカー704のリセスチャネル1104に収納されている束ねられた縫合糸1102の視認を可能にするように取り除かれている。
【0125】
縫合糸束1102の端部は、反対側の端部にある2つの針804に連結されてもよい。図示されているように、2つの縫合糸束1102は、4つの針804を有していてもよい。縫合糸束1102は、前進シャフトによって区切られた互いの反対側に配置されてもよいし、分離されてもよい。両側の針804は、両方の縫合糸束1102を繰り出すリセスチャネル1104に同時に係合されてもよい。リセスチャネル1104は、針804がカテーテルシャフト702に引き込まれている間、2つの異なる束ねられた縫合糸1102のために回転し得る。
【0126】
リセスチャネル1104は、縫合糸束1102の繰り出し及び解放を可能にする形状であってよい。一例では、縫合糸束1102の縫合糸は、アンカー704内でピンと張って保持され得るリセスチャネル1104内に巻き取られていてもよい。縫合糸束1102につながれた針が引っ張られると、縫合糸束1102が繰り出され得る。この量は、例えば、2~3cmでもよい。
【0127】
図12を参照すると、本開示の一態様に係る、血管デバイス200の本体から前進したスネア1202が見えている、例示的な血管デバイス200の遠位端の等角図である。4つのスネア1202は、各縫合糸束がスネア用の針804を反対側の端に有する縫合糸束を掴む、引っ掛ける、又は輪にするために使用されてもよい。スネア1202が組織を通過するために小さな穿孔がなされてもよいし、スネア1202自体が組織を穿孔することができる先端部を有していてもよい。スネア1202は、近位端でカテーテルシャフト702を通り、先に説明した内腔の外に配置されてもよい。針804が捕獲されると、スネア1202は、カテーテルシャフト702を通って引き込まれてもよい。
【0128】
一例では、針804内に配置されたリセス1204は、スネア1202によって使用され得る。これらのリセス1204は、血管デバイス200のアンカー704の方に斜めに向けられていてもよい。スネア1202がカテーテルシャフト702を通して押されると、スネア1202のフックがリセス1204に対して引っ張られてつながれることがある。
【0129】
複数のスネア1202を同時に押し通すために、カテーテルシャフト702の近位端に機構が使用されてもよい。スネア1202は、組織を通って針804を掴んでから同時に引いてもよい。代替の実施形態では、スネア1202は、そのリセス1204を通して一度に単一の針804を捕捉又は引っ掛けるために、シャフト702に個別に押し込まれ得る。一実施形態では、2つのスネア1202は、シャフト702を通して2つの対応する針804を引っ張るために、連動して働いてもよい。2つの針804は、縫合糸束の反対側に接続されてもよい。針804は、シャフト702に引き込まれた後、縫合糸から切り離されてもよい。
【0130】
スネア1202は、様々な材料で作られてもよい。例えば、スネア1202は、視認性を高めるために放射線不透過性の白金コイル及びチップで作られてもよい。スネア1202は、直角ループよりも小さいプロファイルでありながら長いリーチを実現するヘリカルループ設計を含んでもよい。耐久性のあるコバルトクロム製のループは、強度を増し、形状を保持するようにしてもよい。スネア1202は、臨床的な汎用性のために、1mm、2mm、3mmのループ径という大きさが異なるループを有していてもよい。
【0131】
図13は、本開示の一態様に係る、4つの縫合針804及び縫合糸端が組織900に通され、スネアされ、そしてデバイス200の長さ部分を通して引かれた後の、例示的な血管デバイス200の遠位端の等角図である。血管デバイス200のカテーテルシャフト702は、スネアによって引っ張られた後、針804を受け取ってもよい。反対側の端部に連結された針804の引っ張りにより束ねられた縫合糸から、縫合糸1302がリセスチャネルから繰り出され、張力をかけられてもよい。
【0132】
縫合糸1302は、一実施形態では、細かく織られたナイロン材料で作られてもよい。その他の材料としては、ポリプロピレン、シルク、ポリエステル等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。縫合糸1302は、頑丈であるが、曲げやすい材料で作られてもよい。縫合糸1302は、「U」字型又は「C」字型であってもよい。縫合糸1302は、その使用直前に殺菌された鉱油に浸しておいてもよい。縫合糸1302の端部は、心房中隔の切開部の縁に容易に縫合し得る。縫合糸は、切開器具と接触しても破損しないように、耐高温材料で作られていてもよい。
【0133】
図14は、本開示の一態様に係る、縫合糸1302がデバイス200の長さ部分を通して完全に引かれ、そして組織に対して引っ張られた後の、例示的な血管デバイス200の遠位端の等角図である。縫合糸1302は、アンカー704のリセスから完全に繰り出されていてもよい。縫合糸1302の端部は、血管デバイス200のカテーテルシャフト702の近位端を通してユーザに利用可能であってもよい。手術において、縫合線は特定の時間にユーザの必要性に応じて弛んだり締まったりしてもよい。
【0134】
ここで
図15を参照すると、本開示の一態様に係る、切開器具1500が部分的に前進して切開要素1506が見えるようになった後の血管デバイス200の遠位端の等角図が提供される。縫合糸1302が、切開されないように組織に対して引っ張られると、円錐形状を有するアンカー704は、前進シャフト802を介して左心房内に更に前進させられてもよい。シャフト802は、血管デバイス200のカテーテルシャフト702を通って、心房中隔の穿刺部に向かって、かつ、心房中隔の穿刺部を通って延在していてもよい。前進シャフト802は、血管デバイス200の近位端を通って延びていてもよい。
【0135】
シャフト802を心房中隔の組織を通して進めることにより、第2の矩形状の伸縮可能な切開器具1500をカテーテルシャフト702の矩形状のチャネルを通して送り得る。切開器具1500は、アンカー704のための前進シャフト802の上で伸縮することができる拡張作動シャフト1502を含んでもよい。すなわち、拡張作動シャフト1502は、アンカー704の前進シャフト802の上を摺動し得る。
【0136】
拡張作動シャフト1502は、穿刺部を通して進められ、切開器具1500を拡張する左心房内に配置されてもよい。拡張作動シャフト1502が前方に押し出されると、リンケージシステム1504を有する切開器具1500が露出する。切開器具1500の遠位端は、アンカー704の前進シャフト802の上部に一時的にロックされてもよく、一方、切開器具1500の近位端は、拡張作動シャフト1502の下部に接続されてもよい。
【0137】
リンケージシステム1504は、アンカー704が引き込まれ、拡張作動シャフト1502が所定の位置に保持されているとき、外側に弓なりになり、切開要素1506を血管デバイス200の直径よりはるかに大きい長さに拡張し得る。リンケージシステム1504は、前進シャフト802が引き込まれたときに、対称点1508で曲がってもよい。図示されているように、切開要素1506は、カテーテルシャフト702の方を向いてアンカー704の後方に配置される。動作において、リンケージシステム1504は、切開要素1506が拡張されたときに平行である縫合糸1302を切開する可能性を除去し得る。
【0138】
図16は、本開示の一態様に係る、切開器具1500が拡張された状態の血管デバイス200の遠位端の等角図である。アンカー704は、一構成では、進退シャフトを覆って引き込まれている。これを実行すると、切開器具1500の上部はアンカー704と共に保持されて下降し、拡張作動シャフト1502は切開器具1500の下部を保持する。これにより、リンケージシステム1504内の切開器具1500に湾曲が生じ、切開要素1506が露出する可能性がある。切開要素1506は、切開要素1506がカテーテルシャフト702の直径を越えて膨張するように、シャフトに対して垂直であってもよい。
【0139】
縫合糸1302に対する切開要素1506の平行な位置合わせは、切開要素1506が不用意に縫合糸1302を切開しないようになされてもよい。組織を切り裂き、切開要素1506を通して左心房に引き戻すことによって、切開要素1506によって複数の切り込み又は切開部が形成され得る。切開の回数によっては、この工程を繰り返してもよい。したがって、縫合糸や針の数や位置は、作製された切開部の大きさや数によって異なる場合がある。
【0140】
完了すると、アンカー704を前進させることによって切開要素1506を引き込み得る。この前進によってリンケージシステム1504が潰れ、切開要素1506が露出しない狭いチャネルに縮まってもよい。進退シャフトの上部と切開器具1500とを連結しているロックは、取り外されてもよい。その後、切開器具1500は、アンカー704を動かすことなく、カテーテルシャフト702を通して引っ張られてもよい。切開器具1500を取り外した後、縫合糸1302をそのままにして血管デバイスを取り外してもよい。
【0141】
血管デバイス200のアンカー704が左心房で使用されているときに、組織が不用意に切開されないように、切開要素1506を拡張及び崩壊させるために他の技術又はデバイスが使用されてもよい。切開要素1506の使用を可能にするリンケージシステム1504は、様々な形態であってよく、必ずしもこの実施形態に示されるものに限定されない。例えば、リンケージシステム1504は、全体が拡張作動シャフト1502上に存在してもよく、それによって、近位端の機構は、アンカー704を後退させる必要なしに切開要素1506を拡張及び崩壊させるために使用されてもよい。これは、切開要素1506を拡張及び折り畳むために、別のノブ、プルワイヤ等を使用してもよい。他の変形例が存在してもよく、それらの変形例も本開示の範囲内である。
【0142】
ここで
図17を参照すると、本開示の一態様に係る、組織900を切開するように配置された例示的な血管デバイス200の等角図が提供される。血管デバイス200は、組織900とのより直交する接触を可能にするために、所定量の角度が付けられてもよい。これは、組織900とカテーテルシャフト702との間のより安定した界面を促進し得る。
【0143】
カテーテルシャフト702の遠位端は、組織900に適合するように角度が付けられていてもよい。シャフト702は、典型的には、最初の穿孔部又は切開要素1506によって作られたスリット1702を通過しない。しかしながら、血管デバイス200のアンカー704は、穿刺部を通って左心房に伸びていてもよい。リンケージシステム1504は拡張されてもよく、ブレードの形態であってもよい切開要素1506は、組織900を通るスリット1702を切開するために使用されてもよい。スリット1702の長さは、リンケージシステム1504をどれだけ拡張するかによって制御してもよい。血管デバイス200を回転させて、他のスリット1702又はスリット1702の組み合わせを生成してもよい。
【0144】
動作において、血管デバイス200のアンカー704は、最初の穿刺部を通して前進してもよい。針は、カテーテルシャフト702に向かって延びていてもよい。その後、縫合糸は、任意のスリット1702が形成される前に、バックエンドから組織900に向かって運ばれてもよい。そして、スリット1702と治療器具を使用した後に、縫合糸を管理してもよい。
【0145】
図18は本開示の一態様に係る、組織900に挿入されるであろう縫合糸1302の等角図である。2つの縫合糸1302は、アンカーのリセスから繰り出されたものに対応してもよい。血管デバイスを除去した後、2つの長さの縫合糸1302は、左心房から延びる心房壁の後ろの定位置に残っていてもよい。
【0146】
また、血管デバイスで過去に使用していたガイドワイヤをそのまま残しておいてもよい。ガイドワイヤは、治療器具のような、より大きな口径のデバイスによって使用され、ガイドワイヤ上を移動し、スリットを通して左心房に容易にアクセスし、過去に配置した縫合糸に隣接して走らせるようにしてもよい。大口径デバイスが取り外されると、縫合糸1302の自由端は、結ばれ、組織に向かって押されて、閉鎖力を生じ得る。これにより、大口径のデバイスを使用した組織内の切り込みや穴の大きさを小さくし得る。有利なことに、これにより、心室間の血行動態の連絡を防止又は最小化し、ユーザは心房中隔に簡単な結び目を残すことができる。一般的には、短期的に穴が閉じることがある。長期的には、患者に別のカテーテルによる処置や処置が必要な場合に、左心房へのアクセスを可能にするためにこれを使用することができる。
【0147】
図19は、本開示の一態様に係る、組織900が縫合糸1302と係合した後の切開部の等角図である。結び目1902が結ばれた後の組織900の様子をクローズアップしている。切開器具によって作られたスリットは、結び目1902によって中央で締め付けられ、これにより、血行動態の流れ及び心室間の連絡の量が減少又は除去されてもよい。例示の目的で、結び目1902は、単純な「X」構成によって表し得る。あるいは、結び目1902は、遠隔の場所を介して血管デバイスを結んで押し下げることができるいくつかの異なるタイプの外科用結び目のうちの1つであってもよい。
【0148】
一実施形態では、結び目1902は、遠位側ポート及び鋭利な外側シースの形態の切開部材を装着したプッシャーロッドを有する結び目プッシャで形成し、前進させてもよい。結び目1902は、プッシャーロッド遠位側ポート及び切開部材の遠位鋭利化部分の剪断作用によって過剰な線が切り取られ得る場所に、関連するパッチを保持してもよい。余分な線及び他の要素をカテーテルから取り除いてもよい。
[00100]
当技術分野で公知のノットプッシャーには、エドワーズスルーポートノットプッシャー(Edwards ThruPort knot pusher)、メドラインエンドスコピックプッシャー(Medline Endoscopic Pushers)、クーパーサージカル(Cooper Surgical)社によるラパロスコピックノットプッシャー(Laparoscopic Knot Pushers)が含まれる。
[00101]
アーテックス(Arthrex)社では、いくつかのオプションを用意している。シングルホールノットプッシャー(Single-Hole Knot Pusher)は、スライドノットやハーフヒッチを簡単に前進させてもよい。このクローズドエンドノットプッシャーは、人間工学に基づいた操作感を実現するために、ハンドルが改良されている。また、遠位端はスリップノットやハーフヒッチを前進させやすいように改良されている。第6指は、外科医の結び目を結び、外科医が最初のスローで張力をかけ、維持しながら後続のスローを前進させることができるように設計される。クラブクロー(CrabClaw)は、縫合糸を関節内に捕捉できるように、開口顎(オープニングジョー)を組み込んでいる。
【0149】
閉鎖を伴う簡単な切開について事前に説明した。
図20A~Lに着目すると、本開示の一態様に係る、回転して単数回又は複数回使用され得る少なくとも1つの切開器具から作製され得る、心房中隔において血管デバイスを用いて作製され得る様々な例示的なカットパターンが提供される。実施形態では、心房中隔に様々な切開形状を形成し得る。これらの形状は、複数の切開アームで形成してもよいし、上記の切開器具のように、1つの切開アームを回転させて複数回使用することで形成してもよい。切開の長さは、調整可能な切開器具を作動させることにより、ユーザによって制御され得る。切開は、治療デバイスの通過と治療後の組織平面の閉鎖の両方を容易にするために一般的に使用される多くの異なる形状を取り得る。
【0150】
図20A~20Cを参照すると、組織縁の圧着、アンカー又は縫合部2002及び2004の位置の性質によって制御され得る。重なり又は組織の圧着を増加させるために、縫合部2002及び2004の間の第1の距離2006は、第2の距離2010にまで増加されてもよい。別の方法又は技術として、様々な交差する経路で縫合位置又は縫合部2012を追加してもよい。切開部2008は、縫合部2002、2004、2012の真ん中にあってもよい。
【0151】
切開部2008は、
図20D~Fに示されるように、いくつか例を挙げると、直線カット、Vカット2020、ジグザグ2022、又は三日月弧2024などの多くのパターンの形態をとり得る。これらの切り込みは、次に、
図20J~Lに示される組織の複数のフラップ2030、2032、又は2034をもたらす他の形状と一緒に結合されてもよい。様々な構成は、通過するために必要なデバイスの形状やサイズ、または処置後に望まれる閉鎖のタイプや量によって有利になることがあり得る。
図20D~Fのようないくつかの切開形状は、切り込みの形状及び治癒前及び治癒中の組織の張力により、閉鎖時に組織平面の重畳部2026を促進する可能性がある。重畳部は、組織端の治癒を大きく助け得る。すなわち、
図20G~Iにおいて示されているのは、異なる切開形状2020、2022、2024からの組織平面の重畳部2026である。
【0152】
本明細書で説明する実施形態は、切開部2008の閉鎖を制御するための変数を管理する。組織端は、切開部2008を形成する前に制御部材を配置することで管理してもよい。例えば、上に示したように、切開器具によって切開部2008が形成される前に、縫合部2002、2004、2012を適所に有することによって組織を固定してもよい。一実施形態では、制御機能は、切開部2008が形成された後に適用されてもよい。
【0153】
組織の重なり量、圧着圧力、クローザー貼付後の残流量を管理するために、組織の端部位置と端部同士の圧着を制御し得る。この制御は、切開部に対する縫合線の位置を制御することで行ってもよい。この例として、縫合線の距離が切開端から遠くなると、組織の束ねや組織の重なりが多くなることがある。組織アンカー及び/又は縫合糸通過位置の数を増やすと、切開部の長さ方向に沿った組織の圧着量を増やすことができる。縫合糸の張力線にかかる張力や圧力の大きさは、さらに切開部2008の閉鎖量に影響することもある。これらの機構は、リアルタイムで管理し、エコーフローモニタリング及び/又は透視による可視化により監視してもよい。
【0154】
一実施形態では、患者に長期的なインプラントを残さないような機構を用いてもよい。この機構は、組織を密閉する、組織を密閉した状態で治癒させる、又は組織を部分的に密閉した状態で治癒させる、のいずれかになるように設計してもよい。機構の適用を変えることで、止血の割合を調整してもよい。この機構は、様々な時点を通して組織を固定するように設計されてもよい。これらの時点は、組織の凝固、接着、内皮化、瘢痕化の時間等、様々な組織治癒のカスケードポイントと相関している可能性がある。
【0155】
閉鎖を容易にし、時間の経過とともに身体に吸収されるような吸収体を残してもよい。一実施形態では、吸収性体は、後の時点で体内から除去されてもよい。閉鎖具は、切開部2008が形成される前に、切開部2008の近くの組織平面に完全に又は部分的に係合させてもよい。別の実施形態では、組織平面に完全に又は部分的に係合した閉鎖具を適用するのは、切開部が形成された後の切開部2008の近傍であってもよい。一実施形態では、閉鎖機構は、切開部2008及び治療器具が切開部2008から取り外された後、切開部2008の近くの組織平面内に完全に又は部分的に係合して適用されてもよい。
【0156】
本明細書に記載の切開器具は、組織に切開部を形成する方法に基づいて、組織の端部の状態を制御するために使用してもよい。限定されないが、切開部を形成する方法としては、金属やセラミック等の耐久性のある材料から作られた鋭い刃物、電気メスの技術、RFエネルギー、プラズマジェット気化、ウルトラソニック、高電圧気化、制御拡張、熱、及び冷気等が含まれ得る。このような様々な切開の方法を用いて、切開面の端の細胞の状態を制御し、治癒のカスケードを最適化し得る。
【0157】
図21は、本開示の一態様に係る、組織端の圧着を促進するための、切開部の例示的なカットパターン2106の等角図である。カットパターン2106は、第1の端部2102及び第2の端部2104によって画定されてもよい。また、組織900にカットパターン2106を形成してもよい。内縁2108は、外縁2110から離間している。これは、組織端の重なりや圧着を促進するための、直線状と円弧状の切開部の組み合わせのカットパターン2106であってもよい。
【0158】
図22は、本開示の一態様に係る、わずかな張力をかけながら、張力をかけた状態で組織縁を制御し縁部を重ならせる、組織縁の圧着を促進するための、切開部の例示的カットパターンの等角図である。これは、第1の端部2102と第2の端部2104との間のカットパターンによって引き起こされる組織900における、内縁2108と外縁2110とのイールドオーバーラップ2202を実証している。
【0159】
図23は、本開示の一態様に係る、組織縁の圧着を促進するための、切開部のカットパターンと、組織縁を制御するヘリカルアンカー2300とを示す等角図である。切り込みの端部2102、2104の方向に張力を付与してもよい。組織900におけるイールドオーバーラップ2202を有する内縁2108及び外縁2110は、ヘリカルアンカー2300等で固定されてもよい。
【0160】
上に、血管デバイスの第1の実施形態について説明した。
図24~
図38は、追加の例示的な切開を伴う血管デバイス2400の第2の実施形態を説明する。これらの実施形態を有する構成要素は、合理的な構成に基づいて、交換、追加、削除することができることは、本開示から理解されるであろう。これらの改変を用いた新たな実施形態は、本開示の範囲内である。
【0161】
図24に目を向けると、本開示の一態様に係る、4つの拡張可能部材2416を有する例示的な拡張可能高周波(RF)切開器具2410の等角図が提供される。切開器具2410は、先に説明したように、カテーテルシャフトと遠位アンカーとの間にあってもよい。4つの切開部材2414が示されているが、各切開部材2412は互いに等距離にある状態で、より少ない数又はより多い数のものを使用してもよい。
【0162】
切開器具2410は、上述した同様のリンケージシステムを通じて伸縮可能であってもよい。切開器具2410は、最初の穿刺部を進むと潰れてもよく、組織を通過した後に拡張してもよい。切開器具2410は、4つの切開部材2412に接続された4つの拡張可能な部材2414を有していてもよい。切開部材2412は、切開器具が組織に向かって引き戻されて切り込みを形成するように、切開器具2410の近位端に設けられてもよい。
【0163】
切開部材2412は、切開器具2410の中心から半径方向に延びていてもよい。切開部材の幅は、送達カテーテルのフレンチサイズに基づいて切開長さを変えるために幅は変わり得る。切開器具2410は、切開器具2410の遠位端に、先端穿孔デバイス2416を含んでもよい。これは組織を穿刺するために使用されてもよい。切開部材2412及び先端穿孔デバイス2416は、機械的なエネルギー又は電気的なエネルギーを使用してもよい。機械的又は電気的エネルギーは、刃物、セラミック、電気メス技術、RF、プラズマジェット気化、超音波、高電圧気化、制御拡張、熱及び冷気の少なくとも1つから得てもよい。一例では、切開部材2412と先端穿孔デバイス2416は、共に機械的エネルギーを使用してもよい。あるいは、両方とも電気エネルギーを使用してもよい。さらに別の変形例では、切開部材2412及び先端穿孔デバイス2416は、異なる種類のエネルギーを使用してもよい。切開器具2410は、その部材2412及びアームとともに、切開器具2410が不注意に切開したり、過去に配置された閉鎖縫合糸に悪影響を及ぼす可能性を最小化又は防止するように、制御された様式又は平面で半径方向に拡張したりしてもよい。
【0164】
図25は、本開示の一態様に係る、組織900に突き刺すための先端を有する拡張可能な切開器具2410を備えた例示的な血管デバイス2400の等角図である。先端穿孔デバイス2416は、切開器具2410に連結されてもよく、組織900を通して押されて、組織900内に穿孔を形成してもよい。穿刺部は、医師が血管デバイス2400を制御できるように、近位端の機構を介して行われてもよい。切開器具2410は、組織900を通って前進する前には引き込まれた状態であってもよい。
【0165】
限定されないが、カテーテルシャフト2504、又は送達カテーテルは、切開器具2410及びアンカー機構2502を収容してもよい。アンカー機構2502は、カテーテルシャフト2504の中心から等距離にあってもよい。4つのアンカー機構2502が示されているが、組織900に形成された切開部の閉鎖戦略に応じて、より少ない数又はより多い数が存在する。
【0166】
血管デバイス2400は、図示しないが、患者内のデバイス2400の位置を決定するための可視化ツールを含んでもよい。一実施形態では、カテーテルの位置及び向きを決定するために、デバイス2400にセンサが貼り付けられてもよい。代替的に及び/又は追加的に、独立したトラッキングシステムは、超音波、インピーダンス又は蛍光透視トラッキングに基づくものであってもよい。インピーダンスの場合、電界発生装置で発生した電位を既存の電極で検出され得る。透視の場合、電極の位置は、デバイス2400上に位置する電極及び/又は不透明なマーカーを識別及び追跡する画像処理スキームによって検出され得る。
【0167】
図26は、本開示の一態様に係る、組織900を超えて配置された例示的な拡張可能な切開器具2410を有する例示的な血管デバイス2400の等角図である。なお、引き込まれた状態の切開器具2410は、組織900に穿刺した後、押し通してもよい。切開器具2410は、近位端で制御されてもよい前進シャフトによって送り出されてもよいのに対し、カテーテルシャフト2504はそこを流通しない。
【0168】
切開器具2410が左心房に配置された後、切開器具2410は拡張されてもよい。拡張可能部材2414は、その中心から、デバイス2400自体の直径よりも大きな直径に放射状に広がるように拡張されてもよい。
【0169】
カテーテルシャフト2504内のアンカー機構2502は、以下に説明する送達機構を押すために使用されてもよい。アンカー機構2502は、カテーテルシャフト2504内に配され、内腔内に封入されてもよい。アンカー機構2502は、集中切開器具2410を取り囲み、互いに等距離であってよい。
【0170】
図27を参照すると、本開示の一態様に係る、組織900内に切開部を形成する、例示的な拡張可能な切開器具2410を有する例示的な血管デバイス2400の等角図である。拡張可能部材2414が拡張された後、前進シャフトは、先端穿孔デバイス2416と共に、カテーテルシャフト2504に向かって引き戻されて、組織900に切開部を形成してもよい。これらの切開部は、左心房の背面に形成されてもよい。切開器具2410は、組織900に追加の切開を行うために、伸長し、回転させ、その後引き込んでもよい。この間、アンカー機構2502は、静止状態に保持されてもよい。
【0171】
図28は、本開示の一態様に係る、アンカー機構2502を進める例示的な拡張可能な切開器具2410を有する例示的な血管デバイス2400の等角図である。アンカー機構2502がカテーテルシャフト2504を介して押されると、組織900を通って反対側、すなわち左心房に延びてもよい。アンカー機構2502は、組織900を通って移送され得る送達機構2802に連結されてもよい。送達機構2802は、組織穿刺点を有していてもよい。
【0172】
4つのアンカー機構2502に連結された4つの送達機構2802は、組織900に突き刺してもよい。血管デバイス2400内には、より少ない又はより多くの組み合わせ構造が存在してもよい。送達機構2802は、拡張可能な部材2414及び先端穿孔デバイス2416と同様のエネルギーを使用してもよい。つまり、機械的エネルギー及び/又は電気的エネルギーを組み合わせて使用してもよい。
【0173】
図29は、本開示の一態様に係る、アンカー機構2502を進めるためにプッシュアンカー2902が更に挿入された例示的な拡張可能切開器具2410を有する例示的な血管デバイス2400の等角図である。アンカー機構2502は、カテーテルシャフト2504内の送達機構2802を、組織900の中及びそれを越えて、すなわち、左心房内に前進させてもよい。その後、プッシュアンカー2902は、送達機構2802によって展開させてもよい。プッシュアンカー2902は、組織900、及びその周囲を固定するために使用されてもよい。アンカー2902は、PLGA、PLLA、ナイロン、ポリエステル、PEEK、又は他の生体適合性材料から作られてもよい。切開器具2410は、プッシュアンカー2902が所定位置に設定された後、組織900の中に前進させることができることに留意されたい。
【0174】
組織900の固定には、他のアンカーを用いてもよい。例えば、組織アンカーラインを利用してもよい。特に限定されないが、これらには、縫合糸、トグル、らせん構造、把持デバイス、反転クリップ、拡張構造、メッシュ構造、ステント状構造、パッチ構造、クリップ、拡張可能バルブ、及び縫合糸の結び目構成が含まれ得る。
【0175】
図30は、本開示の一態様に係る、送達機構2802が取り外された例示的な血管デバイス2400の等角図である。送達機構2802に連結されたアンカー機構2502は、カテーテルシャフト2504の近位端で引っ張られてもよい。これは、送達機構2802を左心房302から右心房106に引き込んでもよい。拡張可能な部材2414と先端穿孔デバイス2416を有する切開器具2410は、未だ患者の左心房に挿入されていてもよい。アンカー2902は、組織900に対して残しておいてもよい。これらは、そこに埋め込まれていてもよい。
【0176】
図31は、本開示の一態様に係る、組織アンカー2902を組織900に対して残してその組織から取り外された例示的な切開器具2410の等角図である。切開器具2410は、血管デバイス2400のカテーテルシャフト2504を通して取り外してもよい。このとき、カテーテルシャフト2504は、まだ患者の右心房に配置されていてもよい。
【0177】
図32を参照すると、本開示の一態様に係る、組織900内の例示的なトグル3202の等角図が提供される。トグル3202は、右心房から左心房に長手方向に組織を通して押されるか、又は前進させられてよい。トグル3202は、水平方向にずらして中隔壁に固定し、組織を固定してもよい。トグル3202は、アンカーと同様の材料で作られてもよく、生分解性であってもよい。この閉鎖装置又は本明細書に開示された他の閉鎖装置は、将来、別のアクセス手順を妨げない大きさ及び位置で存在する。
【0178】
複数の切開器具を上で説明した。これらの器具や後述する器具は、機械的なエネルギーやRFエネルギーを使用してもよい。電気エネルギーを使用する場合、露出した金属が工具の所望の組織切開領域にのみ存在するように、露出した金属の量を絶縁体によって最小にすることができる。金属の露出量が少なければ少ないほど、組織に対する切開効果が高くなり得る。有利には、より少ない電力を使用することができる。最高の切開効果を得るために、手術者は、切開領域が対象組織と良好な機械的接触状態にあることを確認してもよい。
【0179】
最初の中隔穿刺部位と中隔切り込みは、別々のエネルギーを用いて実施してもよい。例えば、電気エネルギーを用いて、第1の回路で第1の穿刺を行い、第2の回路でより大きな切開を行ってもよい。最初の穿刺を切開とは別に行う場合、手術者は切開器具を回転させ、切開しようとする方向にカッティングアームを合わせてもよい。右心房から左心房に切開器具を進めることによって最初の穿刺部の後に2回目の切開を行う場合、最初の穿刺部と2回目の大きな切り込みの切開領域が重なり、組織の一部が切開されない可能性がないことが有益であると考えられる。
【0180】
中央の穿刺要素の両側に対称的なカッティングアームがある場合、切り込み全体の中心は意図された穿刺部位にあり、一方向にずれることはない場合がある。このことは、後続の手順で対象構造物から一定の距離を離す必要がある場合に重要である。
【0181】
以下の切開器具は、中央の穿刺部位から切り込みの端まで連続した切り込みを形成してもよい。これらの道具は、中心から端まで切ることを意図している。切開器具の調節性又は拡張性は、上述した、ワイヤを引っ張ると切開器具が圧縮されて外側に弓なりになるような、引きワイヤ/リング機構を用いて実現し得る。また、バネを使ったり、形状記憶合金でできた成形工具を使って行ったりしてもよい。
【0182】
ここで
図33に目を向けると、本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイスから展開された非傷性先端部3304を有する例示的な切開器具3300の等角図が提供される。切開器具3300は、電気的絶縁体が選択的に除去された管状部材3302の遠位端から展開されていてもよい。この切開器具3300は、サイズが固定されていてもよいし、機構設計によって調整可能であってもよい。
【0183】
デザインは、卵円窩又は他の所望の目標位置を見つけるために使用され得る非傷性先端部3304が組み込まれていてもよい。また、非傷性先端部3304の両側に対称に伸びていてもよい切開面3306を有している。これらのタイプの実施形態では、最初の中隔穿刺及びスリット形成は、同じ連続切開面3306で1つの動作で行われてもよく、すなわち、それらはエネルギーを供給するための同じ回路の一部であってもよく、また、それらは個別の回路上であってもよい。穿刺・切開エネルギーがRF、マイクロ波、その他の電気エネルギーである場合、金属構造から戦略的に絶縁体を除去してもよい。絶縁体の除去量、あるいは金属の露出量は、性能を最適化するために変えてもよい。例えば、切開面アームの周囲を完全に包むようにしてもよいし、切開面アームの長さに沿って細い線で存在してもよい。目標は、切開面が通電し、組織と良好に接触するようにし、血液プールへの直接の接触を最小限にすることであり得る。
【0184】
図34は、本開示の一態様に係る、例示的な血管デバイスから展開された、シース3402内にスリット3404を有する例示的な切開器具3400の等角図である。1つの切開アームを組み込んだ切開ツールは、後述する針状シース3402のスリット3404を通って放射状に広がってもよい。本実施形態では、切開アームが1つしかないため、例えば、引き線、バネ等を用いた機構により、アームの大きさを固定又は調整してもよい。切開器具3400の遠位部分3406は、最初の穿刺に使用されてもよい。上述の実施形態とは異なり、組織の切開に電気エネルギーが使用される場合、最初の中隔穿刺部位とスリット形成は、別々の並列回路の一部となる。
【0185】
図35は、本開示の一態様に係る、シース3402内のスリット3404から延びる切開要素3502を有する例示的な切開器具3400の側面図である。拡張可能な切開アーム3504は、カテーテルの長さ部分を走行させることができるプルワイヤの一部であり、穿刺針面は別の一部である。
【0186】
一実施形態では、最初の穿刺針は完全に絶縁され、遠位領域でのみ、組織にエネルギーを供給するための金属が露出していてもよい。半径方向に延びるアームの形態の拡張可能な切開要素3502は、切開面に沿って走る露出した金属の細い線(又は最小の表面積で金属を露出するための任意の数のパターン)で大部分が絶縁されていてもよい。この2つの異なる切開面を1つのスイッチで同時に通電したり、ハンドル端部の異なるスイッチを通して、処置中の異なるタイミングで通電したりすることは可能であろうし、より望ましいこともある。最初に針で穿刺するだけで、組織にアンカーポイントを作ることができるという利点がある。この最初の穿刺がなされると、手術者は、拡張可能な切開要素3502が切開の長さ部分を望む場所に並べるまで切開器具3400を回転させてもよい。
【0187】
図36は、本開示の一態様に係る、例示的な切開器具3400の遠位端の等角図である。切開要素3502のための拡張可能な切開アーム3504は、カテーテルの長さ部分を走行するワイヤであってもよい。穿刺針3602は、作動させる他の機構の一部であってもよい。切開要素3502は、周方向に金属が露出していてもよいし、切開面に沿って細い線状の金属が露出しているだけで大部分が絶縁されていてもよい。手術において、拡張可能な切開アーム3504は、切開要素3502の形状を変更するために上下に押されてもよい。
【0188】
最初の穿刺針3602は完全に絶縁され、遠位領域でのみ、組織にエネルギーを供給するための金属が露出していてもよい。一実施形態では、切開器具3400は、1つのスイッチで同時に通電したり、ハンドル端部の異なるスイッチを通して、処置中の異なるタイミングで通電したりできる2つの異なる切開面を有していてもよい。最初に針3602で穿刺することの利点は、組織内にアンカーポイントを作成し得ることである。最初の穿刺がなされると、手術者は、拡張可能な切開アームが切開の長さ部分を望む場所に並べるまで器具を回転させてもよい。
【0189】
さらに、拡張可能な切開アーム3504が近位方向に引っ張られると、切開要素3502は内側に引き込まれてもよい。切開要素3502は、切開器具3400の中心に向かって引き込まれてもよい。切開要素3502に加えられたエネルギーは、不用意な切開を防ぐために除去されてもよい。
【0190】
図37は、本開示の一態様に係る切開器具3400の断面説明図である。特定の領域における露出金属3702がツールの切開性能を最適化し、必要な電力入力を最小化するのを可能にするために、実施形態の切開アームがどのように作られているかを示す概略図が示されており、露出金属表面とのより良い組織接触を確実にするために、最も薄い絶縁体を使用してもよい。また、絶縁体3704を用いた金属が露出していないシース3402も提供されている。本実施形態では、切開要素、すなわち切開アームは使用しない。むしろ、RFパワーを使って切開することもある。
【0191】
図38A~Eは、本開示の一態様に係る、切開器具が、切開性能を最適化し、電力の入力を最小化するためにどのように使用され得るかを示す概略図である。心房中隔を通る実施形態によって形成され得る様々な切開形状が示されている。これらの形状は、複数のカッティングアームで形成してもよいし、1つのカッティングアームを回転させて複数回使用してもよい。
【0192】
図39~53は、送達シースと、組織を結びつけるためのヘリカルアンカーとを有する第3の実施形態を説明する。カテーテルシャフトには、後述する部品が装着されてもよい。シャフト内部には、これらの部品のために、いくつかの異なる内腔やチャンネルを有してもよい。一実施形態では、各構成要素に別々のツールを用いてもよい。これらのツールは、設置されたガイドワイヤに沿って追従し得る。以下に、大口径の経中隔アクセス及びその後の心房再アクセスのための技術及び/又はデバイスを示す。
【0193】
図39に目を向けると、本開示の一態様に係る、例示的なガイドワイヤ102を使用して交差される例示的な組織900の等角図が提供される。手技は、最初に、ガイドワイヤ102を組織900に突き刺すか、又は交差することから始めてもよい。ガイドワイヤ102は、下大静脈を頭蓋方向に上昇して右心房に至る血管導入シースを介して配索されてもよい。ガイドワイヤ102は、治療用又は診断用のカテーテルを心臓の領域に誘導するために配置されてもよい。
【0194】
図40は、本開示の一態様に係る送達シース4004内の縫合糸アンカー4002の等角図である。送達シース4004は、組織アンカー4002に加え、他の構成要素を収容してもよい。ガイドワイヤを用いて、送達シース4004は、心房中隔の組織900の方に向けられてもよい。
【0195】
図41は、本開示の一態様に係る、組織900を貫通させようとしている送達シース4004内の例示的な縫合糸アンカー4002の等角図である。縫合糸アンカー4002は、ガイドワイヤ102を介して誘導され得る第1の穿刺点4102及び第2の穿刺点4104に配置されてもよい。その後、組織900に挿入してもよい。
【0196】
図42を参照すると、本開示の一態様に係る、組織900に係合又は貫通する送達シース4004内の例示的な縫合糸アンカー4002の等角図が提供される。送達シース4004内の縫合糸アンカー4002は、ガイドワイヤ102の近傍の組織900に係合又は貫通されてもよい。
【0197】
図43は、本開示の一態様に係る、縫合糸制御線4302が取り付けられた組織900と係合する送達シース4004内の例示的な縫合糸アンカー4002の等角図である。縫合糸制御線4302は、手術が行われている間、ガイドワイヤ102の近傍の組織900内の所定の位置に縫合糸を保持するために使用され得る。送達シースが取り除かれ、縫合糸制御線4302が露出している。
【0198】
図44は、本開示の一態様に係る、シースに収まった状態の例示的な切開器具4400の等角図である。切開器具4400は、シース4402の中に収納されてもよい。切開器具4400は、ガイドワイヤと共に遠回りしていてもよく、すなわち、その誘導は、ガイドワイヤに基づいて組織に対して行われてもよい。
【0199】
図45に目を向けると、本開示の一態様に係る、シースを抜いた位置における例示的な切開器具4400の等角図である。切開器具4400は、シース4402の外側に延在していてもよい。これは、シース4402を介した前進機構によって近位端で実行されてもよい。
【0200】
図46は、本開示の一態様に係る、シースを抜いた位置で拡張された例示的な切開器具4400の等角図である。切開器具4400は、シース4402の外側に延びた後、左右対称に拡張するように、ばね荷重をかけてもよい。また、切開器具4400は、プルワイヤ等の機構によって拡張してもよい。切開器具4400を拡張することで、組織の切開を容易にし得る。
【0201】
図47は、本開示の一態様に係る、組織900に切開部又は切り込みを形成する例示的な切開器具4400の等角図である。送達シース内の縫合糸アンカー4002は、切開器具4400の誘導を可能にしつつ、組織900を所定の位置に保持するために使用されてもよい。切開器具4400は、送達シースの2つの縫合糸アンカー4002の間に切開部を形成してもよい。
【0202】
図48を参照すると、本開示の一態様に係る、ガイドワイヤ102が通過する組織900内の例示的な切開部4800の等角図が提供される。切開器具が取り外された状態では、ガイドワイヤ102とともに縫合糸制御線4302に連結された2つの縫合アンカー4002が残る。
【0203】
図49は、本開示の一態様に係る、ガイドワイヤ上の組織900の切開部を通過させて例示的な治療器具4900を前進させている状態の等角図である。治療器具4900は、ガイドワイヤを通して、且つ組織900の切開部を通して前進させてもよい。治療器具4900は、縫合糸制御線4302に連結された2つの縫合糸アンカー4002の間に配置されてもよい。
【0204】
図50は、本開示の一態様に係る、ヘリカルバーブ5002を有する例示的な組織アンカーロック5000の等角図である。ヘリカルバーブ5002を有するロック5000は、切開部を閉じるために、以下に示すような組織に埋め込んでもよい。
【0205】
図51に目を向けると、本開示の一態様に係る、縫合糸制御線4302上に渡された、組織900内に係合したヘリカルバーブを有する例示的な組織アンカーロック5000の等角図である。この手法では、切開部4800を有する組織900を、ヘリカルバーブを用いて組織アンカーロック5000で捻ってもよい。これにより、縫合糸、アンカー、及び組織900を互いに固定してもよい。
【0206】
図52は、本開示の一態様に係る、縫合糸制御線上に渡された、組織内に係合したヘリカルバーブ、及びアンカーのレベルまでトリミングされた制御線4302を有する例示的な組織アンカーロック5000の等角図である。余分な縫合糸制御線4302は、ガイドワイヤを用いて組織に誘導される別の切開器具を介してトリミングされてもよい。切開部4800は、最小限の制御線4302が取り付けられているロック5000で閉じられてもよい。
【0207】
図53は、本開示の一態様に係る、組織900に係合されたヘリカルバーブ5002を有する例示的な組織アンカーロック5000の、組織900の他方の側からの等角図である。ロック5000は、組織900の間に介在して、組織900とともに治癒して内皮化するか、吸収又は溶解されるようにしてもよい。この図は
図52で示した心房壁の反対側を見たものである。ロック5000は、組織900を掴んだり引っ掛けたりした後、切開部を封じるために捻られてもよい。
【0208】
切開部を閉じて再アクセスを可能にするための複数の手法を上で述べた。さらに、
図54~
図69は、後の時点での再アクセスを可能にしつつ切開部を閉じるために結び目で一緒に固定された生分解性材料で作られた複数のプレジェットを配置する第4の実施形態を提供する。以下では、2枚のプレジェットを使用することがあるが、部位固定のために組織内に通す枚数はそれより少なくても多くてもよい。限定されないが、プレジェットは、糖、塩、コラーゲン、PLGA、PLLA、他の吸収性ポリマー、マグネシウム、又は他の材料を含む生体吸収性、生分解性材料から構築されてもよい。プレジェットは、異なる構造特性を容易にするために、材料の組み合わせで構成されてもよい。限定されないが、これらの材料のいくつかは、ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム、PEEK、HDPE等を含む金属又はポリマー等の従来のインプラント材料であってもよい。
【0209】
図54に目を向けると、本開示の一態様に係る、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェット5402の等角図である。生体適合性材料又は生体吸収性材料からなるプレジェット5402は、制御線5404を全体的に絡み合わせるようにしてもよい。プレジェット5402は、プレジェット5402の間に制御線5404を分散させて細長くし、プレジェット5402の端部で結んだり留めたりした一枚の材料であってもよい。制御線5404は、プレジェット5402内の開口部の間に点在していてもよい。
【0210】
図55は、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500の等角図である。カニューレ5500は、鋭い遠位端を有していてもよいが、好ましくは、RFエネルギーを使用して組織900に突き刺さる。カニューレ5500は、管状構造を覆う絶縁体を有する遠位端でRFを使用してもよい。管状構造は、その中にプレジェット等の機構を流通させてもよい。カニューレ5500は、患者の心臓に到達するために、大腿静脈等の静脈に挿入されてもよい。カニューレ5500は、所定の位置にしっかりと設定されてもよい。カニューレ500の異なるバリエーションが存在し、本明細書で説明する技術は、示されたカニューレ500に限定されない。
【0211】
図56は、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500と、カニューレ5500を通して進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェット5402の等角図である。カニューレ5500は、組織900を円形の切り込みで貫通させてもよい。一般に、圧縮されたプレジェットが切り込みを塞ぐか、埋めることができ、後の閉鎖のために組織に張力を与えるのに十分な圧着を提供することができる程度に切り込みは小さくてもよい。カニューレ5500の断面に応じて、切り込みの他の形状を用いてもよい。
【0212】
図57を参照すると、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500と、カニューレ5500から外へ進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェット5402の等角図が提供される。前進部材5702は、制御線5404を有するプレジェット5402を左心房に押し込むために、近位端からカニューレ5500内に配置されてもよい。一実施形態では、プレジェット5402の近位端は、距離を短くし、プレジェットの断面積を拡大することによってプレジェットを作動させるために、制御線5404を介して前進部材5702の遠位端に連結される。
【0213】
図58は、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500と、カニューレ550から外へ進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェット5402と、プレジェット5402を短くするように張力をかけた制御線の等角図である。なお、制御線5404は、前進部材5702を介して引き出されてもよい。そして、プレジェット5402内の開口部間に介在していた制御線5404により、プレジェット5402を引き込んだり、短縮させたりしてもよい。そのため、プレジェット5402がひとかたまりになる場合がある。
【0214】
図59は、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレが引き抜かれて心臓組織表面に保持された状態における、プレジェット5402が短くなるように張力をかけた状態の生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェット5402の等角図である。カニューレが引き出され、プレジェット5402が短縮されて圧縮されることにより、カニューレによって作られた最初の切り込みは塞がれ、又は固定されている。
【0215】
図60を参照すると、本開示の一態様に係る、生体適合性又は生体吸収性材料から作成される例示的なプレジェット6002の等角図が提供される。生体適合性又は生体吸収性材料から作られた同心円状のプレジェット6002は、他のプレジェットと同様の方法で導入されてもよい。同心円状のプレジェット6002は、他のプレジェットと同一又は類似の材料で作られてもよい。制御線6004は、同心円状のプレジェット6002に連結され、同心プレジェット6002が収縮又は束になって断面積を拡大し、組織平面により大きな圧着力を与えるように、プレジェット6002を引き戻すことができるようにしてもよい。
【0216】
図61は、本開示の一態様に係る、プレジェット5402の横で心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500の等角図である。カニューレ5500は、他のプレジェット5402の近傍で組織900に配置されてもよい。一般的に、前述したように、周辺組織の完全性を維持し、再アクセスを可能にするために、プレジェットを互いに挿入してもよい。この配置は、切開部を作成するためにプレジェットの間に配置される切開器具と、切開部に挿入される治療又は診断器具を提供し得る。
【0217】
図62は、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500と、カニューレ5500を通して進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的な同心円状のプレジェット6002の等角図である。前進部材5702は、カニューレ5500を通してプレジェット6002を押すか、又は前進させるために使用されてもよい。制御線6004に接続されたプレジェット6002は、他のプレジェット5402の隣にあるカニューレ5500を介して組織900に押し込まれてもよい。
【0218】
図63は、本開示の一態様に係る、心臓組織900を
突き刺す例示的なカニューレ5500と、カニューレ5500から外へ進められた、生体適合性又は生体吸収性材料から作られた例示的なプレジェット6002と、プレジェットを短くするように張力をかけた制御線の等角図である。なお、同心円状のプレジェット6002の制御線は、前進部材5702を介して引き出されてもよい。このようにすることで、同心円状のプレジェット6002を短くしたり、束ねたりしてもよい。
【0219】
図64を参照すると、本開示の一態様に係る、プレジェット6002が短くなるように張力をかけられた生体適合性材料又は生体吸収性材料から作られた例示的な同心円状プレジェット6002と、プレジェット5402及び6002の間に作られた例示的な切開部6402の等角図が提供される。プレジェット5402及び6002は、組織900が一緒に結ばれ得るアンカーポイントを提供し得る。
【0220】
その間に切開部6402を設けるために、上述したような切開器具を用いてもよい。直線的な切り込みが示されているが、他のタイプの切開部6402が形成されていてもよい。これらには直線カット、Vカット、ジグザグカット、クレセントアーク等が含まれるが、これらに限定されない。両方の組織固定用プレジェット5402及び6002が適所にある状態で、次に、切開部6402を形成してもよい。
【0221】
図65は、本開示の一態様に係る、プレジェット5402及び6002の間の切開部6402に配置されて組織900に至る、例示的な治療器具4900の等角図である。治療器具4900がそこに配置されるとき、切開部6402の拡がりが生じることがある。治療器具4900は、右心房にもたらされた他の機構のために挿入されたガイドワイヤに追従してもよい。また、診断機器を使用してもよい。
【0222】
図66は、本開示の一態様に係る、2つのプレジェット制御線5404及び6004を用いて心臓組織900まで進められた例示的な結び目6602の等角図である。治療器具4900の使用時及び取り外し時に、固定用結び目6602をプレジェットの制御線5404及び6004の締め付けによって前進させてもよい。
【0223】
図67を参照すると、本開示の一態様に係る、2つのプレジェット制御線5404及び6004を用いて心臓組織900まで進められ、組織900の結び目側からきつく引っ張られた、例示的な結び目6602の等角図が提供されている。引っ張られると、制御線5404及び6004は、結び目
6602を組織900に対してさらに前進させることができる。なお、制御線5404及び6004は、後述するように、切開して短くすることもできる。
【0224】
図68は、本開示の一態様に係る、2つのプレジェット制御線を用いて心臓組織900まで進められ、組織900の結び目側から締め付けられた、例示的な結び目の等角図である。締め付けると、プレジェット5402及び6002は、その間に組織900が折り畳まれた状態で互いに向かって潰れることができる。
【0225】
図69は、本開示の一態様に係る、プレジェット間で閉じられた例示的な切開部6402の等角図である。結び目6602を作るために使用した制御線は、取り除いたり、切開したりしてもよい。これによって、患者の中にある干渉を取り除くことができる場合もある。
【0226】
組織の端部を連結するための縫合糸や機械的装置に加えて、接着剤材料を使用して、一次的又は補助的又は付属的機構として組織を密封又は連結してもよい。限定されないが、これらの材料としては、接着性シアノアクリレート、メトキシプロピルシアノアクリレート、n-ブチル、イソブチル又はn-オクチルシアノアクリレート等のアルキルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、バイオグルー(BioGlue)(登録商標)サージカル接着剤(Surgical Adhesive)(バイオグルー(BioGlue)、牛血清アルブミン(BSA)、精製(BSA)のグルタルアルデヒド、細胞外マトリックスECMヒト連結組織、自己及び同族フィブリンシーラント、フィブリン糊、ポリエチレングリコール(PEG)ベースのヒドロゲルシーラント、ヒドロゲル、メタクリロイル置換トロポエラスチン(MeTro)、その他多くのものが含まれる。これらのシーラントは、生体適合性と再吸収性を有していてもよい。
【0227】
一実施形態では、「バイポーラ」カテーテルタイプの機構を使用して、組織を再び密閉してもよい。例えば、血管の止血に使用するバイポーラ凝固鉗子等を使用してもよい。この手順を実行するための手順には、順序の選択肢が存在し得る。
【0228】
図70は、本開示の一態様に係る、後続の心房再アクセスを伴う大口径経中隔アクセスを可能にするための例示的な処理を示すフローチャートである。これらの工程は例示する目的のものであり、本明細書に記載された技術に従って改変することができる。処理は、ブロック7000から開始してもよい。
【0229】
ブロック7002では、ガイドワイヤを心室に挿入し、心房中隔に配してもよい。ガイドワイヤは、血管導入シースから静脈循環系に挿入してもよい。最初の経中隔な穿刺や切開は、例として、患者の大腿静脈で行ってもよい。限定されないが、ガイドワイヤが患者に入り得る他の部位としては、頸静脈、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈、上腕動脈及び静脈が含まれ得る。
【0230】
ガイドワイヤは下大静脈を頭蓋方向に上昇して心臓の右心房まで配索されてもよい。ガイドワイヤは、治療用又は診断用のカテーテルを心臓の領域に導くために、心房中隔に設置されてもよい。その際、ガイドワイヤは心房中隔に一時的又は取り外し可能に固定されてもよい。
【0231】
ブロック7004では、針で心房中隔を通り左心房に穿刺してもよい。中隔ペネトレータは、鋭く尖った遠位端を有する針又はシャフト方向に細長い構造体であってもよい。一実施形態では、中隔ペネトレータはガイドワイヤ内に常駐していてもよい。中隔ペネトレータは、ボタン、レバー、ハンドル、又はトリガー等の制御機構を介して血管デバイスの近位端で作動させることができ、この機構は、デバイスの長さ部分を走る連結部、プッシャーロッド、電気バス等を介して、永久的又は取り外し可能に貼り付けられていてもよい。
【0232】
ガイドワイヤを穿刺デバイスとして使用してもよい。限定されないが、ガイドワイヤは、尖端、らせん状先端、RFエネルギー電極チップ、他のエネルギーチップ、又は組織貫通を補助する他のデバイス等、隔壁の交差を容易にする先端部を有していてもよい。
【0233】
縫合糸は、ブロック7006の穿刺部を通して、アンカーを介して引っ張られてもよい。縫合糸は、縫合糸束の中に束ねられ、アンカーのリセスに収納されてもよい。カテーテルシャフトを右心房内に配置し、縫合糸束を有するアンカーを穿刺部より左心房内に前進させてもよい。そして、縫合糸の端に連結された針を捕捉するスネアによって、縫合糸束を繰り出してもよい。針付きスネアは、カテーテルシャフトに引き込んでもよい。縫合糸束からの縫合糸は、スネアを介して管理してもよい。
【0234】
縫合は装置に応じて右心房から左心房へ、又は左心房から右心房へ行ってもよい。縫合糸は、中隔を横切って何度も配置することで、複数の係合ポイントを確保してもよい。縫合糸は、ヘリカルアンカーやバーブデバイス等、別の種類の装置であってもよい。また、縫合糸は、治療が完了したブロック7012の後に配置されてもよい。
【0235】
ブロック7008で、縫合糸が適所に配置された後、針通過の近位の切開器具を用いて心房中隔に切り口が形成されてもよい。縫合糸は、最初の穿刺部の近くに作られた穴から展開されてもよい。切開や切開は、縫合糸が切開器具で切開されないように平行に行ってもよい。切開器具が誤って縫合糸を切開しないように、切開器具をカテーテルに連結してもよい。
【0236】
本明細書では、様々な切開器具について説明した。機械的エネルギーやRFエネルギーが使用されてもよい。電気エネルギーを使用する場合、露出した金属が工具の所望の組織切開領域にのみ存在するように、露出した金属の量を絶縁体によって最小にし得る。機械的エネルギーは、単方向に展開されるブレードを使用してもよいし、対称的に展開されるブレードを使用してもよい。切開は装置に応じて右心房から左心房へ、又は左心房から右心房へ行ってもよい。切開は、アンカー設置後でもよい。あるいは、切開は、ブロック7006で説明される縫合糸アンカーの配置により先に行ってもよい。切開は、組織を穿刺し切開するデバイスで上記ブロック7002及び7004に統合してもよい。
【0237】
ブロック7010では、縫合糸を管理し得る。すなわち、縫合糸は、血管壁に向かって引っ張られ、治療器具カテーテルと干渉したり絡まったりしないように、移動又は操作され得る。組織縫合管理線は、アクセスシースの内腔で管理してもよいし、別のカテーテルで管理してもよい。
【0238】
ブロック7012で治療器具を使用して治療を行ってもよい。治療用機器は、例えば、心房細動の修正、僧帽弁修復の実行、中隔欠損の修正、又は人工心臓の移植を実行する等のための診断及び治療的介入を行ってもよい。治療や診断は左心房で行われてもよい。逆に、治療器具を取り外してもよい。
【0239】
ブロック7014において、制御縫合糸は、切開部を閉じるために使用されてもよい。この閉鎖の量は、望ましい治療目標に合わせて調整してもよい。切開部を完全に密閉することが望ましい場合もあれば、片側から反対側へ過剰な圧力を逃がすための通路を残しておくこともある。一例では、制御縫合糸は、上述した組織に対して押圧されてもよい。プロセスは、ブロック7016で終了してもよい。
【0240】
また、大口径の経中隔アクセスで心房再アクセスを可能にするために、他の技術を用いてもよい。例えば、そしてこの実施形態では、上記方法は、針通過のために隔壁を穿刺し、縫合糸又は他の何らかのアンカーを後に残し、そして処置を行うことを含んでもよい。残されたアンカーや縫合糸は、中隔を閉じるために一緒に締め付けてもよい。その後、余分な縫合糸をカットしてもよい。
【0241】
心房再アクセスの別の手法では、まず中隔を切開することがある。中隔は、針が過去に切開された中隔を通過できるように、針の穿刺半径を安定させることができる。針通過デバイスを導入してもよい。左心房側の針は、スネアされ/掴まれ、カテーテルを通して引っ張ることができる。また、ニチノールワイヤで中隔を貫通させることも可能である。余分な縫合糸をカットして切開部を閉じるために、制御構造を使用してもよい。
【0242】
さらに別の手法では、経中隔アクセスは標準的な経中隔アプローチで得てもよい。ガイドワイヤは、左心房の経中隔アクセス部位を横切って残してもよい。ガイドワイヤの上に、切開・拡大・縫合を行う血管デバイスを進める。放射状に配置された4つの切開部材は、中隔をスライスし、制御された一貫した方法で経中隔アクセスポイントを拡大してもよい。その後、針で中隔を穿刺し、スライス同士を締めたときに最適に医原性ASDを閉鎖できるスライス間の位置で心房間組織に縫合糸を通す。その後、中隔を横切る4本の縫合糸を残したまま、血管デバイスを取り外してもよい。縫合糸は静脈から引き抜かれ、後の処置まで一時的に下大静脈に留まってもよい。
【0243】
さらに別の技術では、縫合糸、アンカー、切開器具、及び閉鎖機能の送達を促進する機構は、患者体内のデバイスの交換を最小限にするために治療器具に統合されてもよい。
【0244】
さらに別の手法では、異物を残さないようにしてもよい。この技術は、関連するデバイスとともに、処置後に心房内に入り込み、付着させる組織を密閉しながら治癒を促進するために、しばらくの間、締め付けてもよい。ひいては、構造物や装置の除去を含む技術であってもよい。この技術は、制御された切開と、その後、本明細書に記載の装置、又は当技術分野で公知の装置による締め付けとの組み合わせであってもよい。限定されないが、装置には、グラバー、鉗子、ヘリカルアンカー、ピンチャー、ノット(結び目)、吸引デバイス、バーブ等が含まれる。そして、この技術は、切開形態により組織の自然治癒を促進することもある。この一時的な圧着の時間は、所望の組織の治癒の度合いに応じて、数分から数日、あるいは数週間に及ぶことがある。
【0245】
いくつかの実施形態では、上述のアンカーは、その後、組織から除去されてもよく、あるいは、代わりに、そのまま残されてもよい。アンカーを取り外すための技術や手順には、グラバー、スネア、切開要素、又は、その機構に特有の係合機能を使用することができる。アンカーデバイスの右心房側には、その後つかんでねじを外すことができるような機械的機能を付加してもよい。この機械的機能は、フックや楕円形等の形状であってもよい。この機能は、例えば、スネアで把持して組織から回転させることができるように、右心房中隔から突出していてもよい。
【0246】
上述の説明は、当業者であれば誰でも、本明細書に記載された様々な実施形態を実践できるようにするために提供されるものである。これらの実施形態に対する様々な改変は、当業者には容易に明らかになり、本明細書で定義された一般的な原理は、他の実施形態にも適用することができる。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示され、説明された実施形態に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲が与えられるものであり、また単数形の要素への言及は、特に明記しない限り「1つのみ」を意味することを意図するものではなく、「1つ以上」を意図するものである。本開示を通じて説明される様々な実施形態の要素に対する、当業者に既知であるか、又は後に既知となる全ての構造的及び機能的均等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に包含されることを意図している。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かにかかわらず、大衆に開放することを意図したものではない。