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特許7646837急速充電システム及び車両を充電ステーションに電気的に接続する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】急速充電システム及び車両を充電ステーションに電気的に接続する方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/14 20190101AFI20250310BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20250310BHJP
   B60L 5/24 20060101ALI20250310BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
B60L53/14
B60M7/00 U
B60L5/24 Z
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023532224
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2020083944
(87)【国際公開番号】W WO2022111834
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】521205102
【氏名又は名称】シュンク トランジット ジステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ドメス マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ポッドゴルニー ヴァシリ
(72)【発明者】
【氏名】エファ ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】シュタウバッハ ティモ
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534695(JP,A)
【文献】特開2011-167003(JP,A)
【文献】特開2019-170093(JP,A)
【文献】特開2019-146473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0070187(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109515225(CN,A)
【文献】特開2008-287891(JP,A)
【文献】米国特許第07189922(US,B1)
【文献】米国特許第06459074(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60M 7/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と定置式充電ステーションとを電気的に接続するための、特に電動バスなどの電動車両用の高速充電システムであって、
接点装置、充電接点装置(10)及び位置決め装置を備え、前記接点装置または前記充電接点装置は車両に配置され、
前記充電接点装置は前記接点装置に接触位置で電気的に接続可能であり、
前記接点装置は前記位置決め装置によって前記充電接点装置に対して長手方向及び/または横方向に配置されて前記接触位置に移動可能であり、
前記充電接点装置は、複数の充電接点要素(13)を備えた充電接点要素キャリア(12)を有し、前記充電接点要素キャリアは、車両の移動方向に配置された長手方向のレールとして形成され、前記充電接点要素はそれぞれストリップ状の充電接触面(29)を形成し、前記接点装置は、複数の接点要素を含む接点要素キャリアを備え、前記接点要素はそれぞれ前記充電接触面よりも小さい接触面を形成し、前記接点要素は、前記接触位置にそれぞれの接点対を形成するために前記充電接点要素と電気的に接続可能であり、
前記充電接点装置が、前記充電接点要素の温度を制御可能な加熱装置(35)を備え
前記加熱装置(35)が、前記充電接点要素(13)に配置される電気的な加熱要素(36)を有し、
前記加熱要素(36)は、前記充電接触面(29)から離れる方向を向いている前記充電接点要素の裏面(41)に接する熱伝導体(40)であることを特徴とする高速充電システム。
【請求項2】
請求項に記載の高速充電システムにおいて、
前記加熱要素(36)は、前記充電接点要素(13)のそれぞれに配置され、前記加熱要素は、前記充電接点要素の全長にわたって延びることを特徴とする高速充電システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高速充電システムにおいて、
前記加熱要素(36)は、低電圧動作するように、交流230Vまたは直流24Vで動作するように構成されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記充電接点要素(13)は、金属ストリップ(14、15、16、17)で形成されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項5】
請求項に記載の高速充電システムにおいて、
前記金属ストリップ(14、15、16、17)は、前記充電接点要素キャリア(12)にネジ接続で取り付けられ、ネジボルト(30)が前記金属ストリップに配置され、前記充電接点要素キャリアの通路開口(31)を貫通していることを特徴とする高速充電システム。
【請求項6】
請求項またはに記載の高速充電システムにおいて、
前記各金属ストリップ(14、15、16、17)の対向する端部(19)は、前記充電接触面(29)に対して横方向に延び、前記充電接点要素キャリア(12)の通路開口(33)を貫通し、少なくとも一端が充電ステーションのケーブルに接続されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記充電接点要素(13)は、前記接点要素キャリアの方を向く前記充電接点要素キャリアの表面(27)と前記充電接触面(29)が同一面になるように、前記充電接点要素キャリア(12)に形成される1つの受入溝(28)にそれぞれが挿入されることを特徴とする高速充電システム。
【請求項8】
請求項に記載の高速充電システムにおいて、
前記受入溝(28)の底(38)に、加熱要素(36)が挿入される溝(39)が形成されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項9】
請求項に記載の高速充電システムにおいて、
前記溝(39)は、前記充電接点要素(13)の長手方向軸に対して平行、蛇行状及び/または螺旋状に延びていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記接点要素キャリアの方を向く前記充電接点要素キャリア(12)の表面(27)には、2つの充電接点要素(13)の間に切り欠き(42)が形成されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記充電接点要素キャリア(12)は、誘電性プラスチック材料または複合材料で形成され、一体に形成された本体(20)を有することを特徴とする高速充電システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記接点装置が車両のルーフに配置されて前記充電接点装置(10)が定置式充電ステーションに配置されるか、または前記接点装置と前記充電接点装置の配置がその逆であることを特徴とする高速充電システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記加熱装置(35)は、温度制御装置(37)と、前記充電接点要素(13)に接するサーモスタットとを有することを特徴とする高速充電システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記加熱装置(35)は、5℃以下の温度で前記充電接点要素(13)を加熱するように構成されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記充電接点要素キャリア(12)の長さが車両の長さよりも短いことを特徴とする高速充電システム。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記接点対は、それぞれ、前記高速充電システムの電源接点、信号接点及び保護接地接点になるように構成されることを特徴とする高速充電システム。
【請求項17】
請求項16に記載の高速充電システムにおいて、
前記電源接点は、少なくとも750Vから1000Vの電圧で500Aから100Aの電流が流れるように設計されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項18】
請求項16または17に記載の高速充電システムにおいて、
前記充電接触面(29)及び/または前記接触面は、最初に保護接地接点、次に電力接点、最後に信号接点が形成されるように、互いに対して横方向または長手方向に配置されていることを特徴とする高速充電システム。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記接点要素が点状の接触面を形成することを特徴とする高速充電システム。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1つに記載の高速充電システムにおいて、
前記充電接点要素キャリア(12)は、前記接点要素キャリア用の受入開口(24)を形成し、前記接点要素キャリアが前記充電接点要素キャリアの受入開口に挿入可能であるか、または前記接点要素キャリアが前記充電接点要素キャリアの受入開口を形成し、前記充電接点要素キャリアは、前記接点要素キャリアの受入開口に挿入可能であり、前記接点要素キャリア及び前記充電接点要素キャリアを共にガイドするときに前記受入開口が前記接点要素キャリアまたは前記充電接点要素キャリア用のガイドを形成することを特徴とする高速充電システム。
【請求項21】
接点装置と充電接点装置(10)と位置決め装置とを用いて、車両と、定置式充電ステーション、特に電動バスなどの電動車両用の高速充電システムとを電気的に接続する方法であって、
前記充電接点装置は前記接点装置に接触位置で電気的に接続され、前記接点装置は前記位置決め装置によって前記充電接点装置に対して長手方向及び/または横方向に配置されて前記接触位置へ移動し、前記充電接点装置は複数の充電接点要素(13)を備えた充電接点要素キャリア(12)を有し、前記充電接点要素キャリアは車両の移動方向に配置された長手方向のレールとして形成され、前記充電接点要素はそれぞれストリップ状の充電接触面(29)を形成し、前記接点装置は複数の接点要素を備えた接点要素キャリアを有し、前記接点要素はそれぞれ前記充電接触面よりも小さい接触面を形成し、前記接点要素はそれぞれの接点対を前記接触位置に形成するために前記充電接点要素と電気的に接続され、
前記充電接点要素の温度を前記充電接点装置の加熱装置(35)で制御することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電動バスなどの電動車両用の高速充電システムと、接点装置、充電接点装置及び位置決め装置を用いて車両と定置式充電ステーションとを導電接続する方法とに関する。接点装置または充電接点装置は車両に配置され、充電接点装置は接触位置で接点装置と電気的に接続可能であり、接点装置は位置決め装置によって充電接点装置に対して長手方向及び/または横方向に配置され、接触位置に移動する。充電接点装置は充電接点要素を備えた充電接点要素キャリアを有し、充電接点要素キャリアは車両の移動方向に配置される長手方向のレールとして構成される。充電接点要素はそれぞれストリップ状(細長片状)の充電接触面を形成し、接点装置は接点要素を備えた接点要素キャリアを有し、接点要素はそれぞれ充電接触面より小さい接触面を形成し、接点要素は接触位置にそれぞれの接点対を形成するために充電接点要素と電気的に接続可能である。
【背景技術】
【0002】
この種の高速充電システム及び方法はこの技術分野で知られており、一般的には、バス停留所または停車位置で電動車両を高速充電するために用いられる。したがって、バスなどの地域輸送に使用される電動車両に、そのバス停留所で電気エネルギーを連続的に供給することができる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2から、屋根形の充電接点装置が、対応する構成の接点装置に電気的に接続される高速充電システムが知られている。充電接点装置は、導体ストリップの態様で実現されるとともに車両の移動方向へ延びるように配置された充電接点要素を有する。接点装置の接点要素はボルト状に形成され、接触位置にあるときに導体ストリップと点接触する。接点装置は、車両の移動方向に対して直角の方向へ充電接点装置に挿入されるため、接触位置に正確に到達することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102015219438号明細書
【文献】国際公開第2015/001887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から知られている高速充電システムでは、充電中であっても、望ましくない状況だと接点要素と充電接点要素との間に電気アークが生じることがある。例えば電動バスに対する乗客の乗り降りの結果に伴ってそのバスが充電中に動くと、接点要素と充電接点とが相対的にずれることがある。接触面や充電接触面が比較的大きな電気抵抗を有する場合は、電気アークが発生することがある。さらに、例えば車両と充電ステーションとの間の信号接点及び/またはデータ回路を通じてなされる情報伝達が影響を受けて乱れると、充電プロセスが意図されずに停止したり開始されなかったりすることがある。この種の影響は、高湿の気象条件下で発生することが多いことが経験的に分かっている。特に、沿面電流が発生し、充電プロセスを中断させるとともに電気アークの形成を促進する可能性がある。電気アークにより充電接点要素及び接点要素が比較的早く摩耗し、その結果、それらの交換が必要になる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、費用対効果の高い車両の運用が可能で、且つ安全な接触が可能な、車両と充電ステーションとを導電接続するための高速充電システムと方法とを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する高速充電システム及び請求項23の特徴を有する方法によって達成される。
【0008】
特に電動バス等の電動車両のための本発明に係る高速充電システムは、車両と定置式充電ステーションとを導電接続するために、接点装置、充電接点装置及び位置決め装置を備え、接点装置または充電接点装置は車両に配置され、充電接点装置は接触位置で接点装置と電気的に接続可能であり、接点装置は位置決め装置によって充電接点装置に対して長手方向及び/または横方向に配置されて接触位置に移動し、充電接点装置は充電接点要素を備えた充電接点要素キャリアを有し、充電接点要素キャリアは車両の移動方向に配置される長手方向のレールとして形成され、各充電接点要素はそれぞれストリップ状の充電接触面を形成し、接点装置は接点要素を含む接点要素キャリアを有し、各接点要素は充電接触面よりも小さい接触面を形成し、接点要素は接触位置にそれぞれの接点対を形成するために充電接点要素に電気的に接続可能であり、充電接点装置は充電接点要素の温度を制御できる加熱装置を有する。
【0009】
このように、本発明に係る高速充電システムは、互いに平行で且つ充電接点要素キャリアの長手軸の方向に配置される導体ストリップとして形成される充電接点要素を有する。充電接点装置が加熱装置を有しているので、この加熱装置により充電接点要素の温度の制御及び/または加熱が可能である。これは、加熱装置によって充電接点要素だけの温度を制御できることを意味する。充電接点装置の他の構成要素を加熱することは、必要ではなく、それは比較的大きなエネルギーを消費する。加熱装置によって充電接点要素の温度を制御できるため、霜、氷、雪などが充電接点装置の上に、及び/または充電接点要素に直接に溜まるのを防止できる。また、充電接点要素の水や湿気も蒸発しやすくなる。このように、特定の気象条件下での電気アークと、充電プロセスを中断することのない安全な接触を保証できることが分かっている。
【0010】
位置決め装置はパンタグラフまたはロッカー装置を有するようにしてもよく、これによって接点ユニットキャリアは充電接点ユニットに対して少なくとも垂直方向に配置可能になり、接点装置は車両または充電ステーションに配置される。ロッカー装置の場合、接点装置キャリアを充電接点装置に対して安定させ、且つ/またはそれぞれの方向に位置決めする追加の連結具を設けることができる。パンタグラフまたはロッカー装置及び/またはそれに相当する機械的駆動装置は、特に簡単かつコスト効率よく製造することができる。さらに、位置決め装置は、接点ユニットキャリアを充電接点装置に対して横方向に、または車両の移動方向に対して横方向に位置決め可能な横方向ガイドを有するようにしてもよい。横方向ガイドは、車両、または位置決め装置のパンタグラフもしくはロッカー装置に配置することができる。いずれの場合も、位置決め装置及び/または位置決め装置に配置された接点ユニットキャリアは、車両の移動方向に対して横方向に変位可能である。このように変位可能であることにより、例えば、進行方向に対して横にあるバス停留所での車両の誤った位置決めを補正できる。さらに、人が車両に乗り降りするために車両が片側へ下がることで起こり得る車両の動きは、接点ユニットキャリアが充電接点装置に対して横方向へ変位できなくなるようにして補正できる。例えば、接点装置は、接点ユニットキャリアが位置決め装置によって車両のルーフから充電接点装置へ移動して戻ることができるように、車両のルーフに配置できる。あるいは、接点装置が充電ステーションに配置されてから、接点ユニットキャリアがバス停留所のポールや橋などの支持体から、充電接点装置を有する車両ルーフに向かって移動して戻るようにすることができる。
【0011】
加熱装置は、充電接点要素に配置される電気的な加熱要素を有するものにすることができる。電気的な加熱要素は、例えば、抵抗加熱要素にすることができる。加熱要素は、電気絶縁性を有するものにすることができ、充電接点要素に直接配置してもよいし、または充電接点要素に直接に接するようにしてもよい。したがって、充電接点要素を加熱するために必要な電気エネルギーが比較的少なく、充電接点要素の迅速かつ効果的な加熱が常に保証される。
【0012】
加熱要素は各充電接点要素に配置することができ、加熱要素は充電接点要素の全長にわたって延びることが好ましい。充電接点装置は複数の充電接点要素を有するので、各充電接点要素を1つの加熱要素で加熱できる。それぞれの加熱要素は、充電接点要素のそれぞれの構成に適合させることができる。加熱要素が充電接点要素の全長にわたって延びる場合、その温度もその全長にわたって制御できる。
【0013】
加熱要素は、充電接触面から離れる方を向いた充電接点要素の背面に接する熱伝導体にすることができる。熱伝導体は、基本的に円形または平坦なストラップ状の断面を有する導体の態様で形成できる。熱伝導体が充電接点要素の裏面に直接に接するので、熱伝導体が周囲の影響から保護され、同時に充電接点要素を直接に加熱する効果がある。
【0014】
加熱要素は、低電圧動作、好ましくは交流230Vまたは直流24Vで動作するように構成できる。この低電圧は一般的であり、通常は充電ステーションにも提供されるため、加熱要素を動作させるために特別な電圧変換は必要でない。加熱要素は、例えば、簡単なスイッチ素子によってオンとオフを切り換えることもできる。このようにして、加熱装置は特に簡単に形成できる。
【0015】
充電接点要素は金属ストリップで形成できる。金属ストリップは、比較的平坦な断面を有するものにすることができる。金属ストリップは、基本的に車両の移動方向に相当する長手方向及び/または水平方向に配置することが可能な導体ストリップを形成できる。例えば、充電接点要素は、車両がバス停留所の領域内で停止できるように、長さが1メートルを超えるようにすることができる。このように、充電接点要素は、接点要素のための比較的大きな接触可能面を形成できる。金属ストリップは、例えばほぼ完成の製品を充電用接点要素として使用することによっても容易に製造できる。
【0016】
金属ストリップは、ネジ接続によって充電接点要素キャリアに取り付けることができ、ネジボルトが金属ストリップに配置されて充電接点要素キャリアの通路開口を貫通する。金属ストリップをネジ接続によって充電接点要素キャリアの本体に取り付けることにより、充電接点要素が例えば損傷したときに特に簡単に交換できる。金属ストリップは、銅、アルミニウムまたは同等の合金で作ることができる。ネジボルトは、金属ストリップにネジ込むことができ、または突合せ溶接で取り付けることができる。充電接点要素キャリアの本体にはネジボルトを案内する通路開口を形成できる。充電接点要素または金属ストリップは、ネジボルトのナットによって本体に簡単にネジ止めできる。基本的には、金属ストリップを本体に固定するためにネジを用いることも可能である。有利なことに、金属ストリップはこのように接着剤なしで取り付けることができ、極めて容易に交換できる。
【0017】
金属ストリップの対向する端部は、充電接触面に対して横方向に延びて充電接点要素キャリアの通路開口を通過し、少なくとも一端を充電ステーションのケーブルに接続することができる。したがって、その端部を、例えば直交する充電接触面に対して直交方向に延びるように曲げることができる。充電接点要素を取り付けるとき、その端部を、このように充電接点要素キャリアの本体内に通路開口から挿入して案内することができる。充電ステーションのケーブルは少なくとも1つの端部に直接に接続でき、その結果、このケーブルで充電接点要素が充電ステーションまたは電源に直接に接続される。
【0018】
充電接点要素は、それぞれ、充電接点要素キャリアに形成されている1つの受入溝に挿入することができ、その結果、充電接触面は接点要素キャリアに面する充電接点要素キャリアの表面と同一面となる。充電接点要素キャリアの表面の少なくとも一部は接点要素が前記表面に沿って摺動できるように形成され、大きな中断はない。受入溝は、充電接点要素の断面の高さ及び幅に基本的に対応する深さ及び幅を有する。
【0019】
受入溝の底部には加熱要素を挿入できる溝を形成することができる。充電接点要素が受入溝の底部に接することで充電接点要素キャリアの表面に対して安全に配置されるように、受入溝の底部に形成される溝は、その溝自体より狭くすることができる。溝は、加熱要素がその中に配置されて溝を実質的に埋めるように構成できる。したがって、加熱要素が充電接点要素にできるだけ密に接することが保証される。さらに、加熱要素を特に簡単に取り付けることができる。
【0020】
溝は、充電接点要素の長手方向軸に対して平行、蛇行状、及び/または螺旋状に延びるようにすることができる。加熱要素が特に薄い場合、加熱要素と充電接点要素との間に大きな接触面を形成できる。
【0021】
接点要素キャリアに面する充電接点要素キャリアの表面には、2つの充電接点要素の間に切り欠きを形成することができる。切り欠きは、溝の形態で形成でき、充電接点要素の長手方向軸に平行に延びるようにすることができる。切り欠きは、充電接点要素間の充電接点要素キャリアの表面積を増やすことができるので、充電接点要素間に意図しない沿面電流が生じるのを効果的に阻止できる。特に、まとまりのある水の膜ないし水のネットワーク(連なり)が表面に形成されるのを防止できる。また、2つの充電接点要素間にこの種の切り欠きを2つ以上形成することも可能である。さらに、いずれの場合も、すべての充電接点要素の間に複数の切り欠きを形成することも可能である。
【0022】
充電接点要素キャリアは、誘電性のプラスチック材料または複合材料で形成できる本体を有してもよく、一体に形成することが好ましい。この場合、特に簡単で安定し、且つコスト効率よく製造できる。本体が誘電材料で形成されるので、充電接点要素及び場合によってはその取り付け要素は、特別な電気絶縁を必要としない。この場合、本体は耐候性があり、腐食しない。本体は、例えば、ガラス繊維強化プラスチックで作ることができるので容易に大量生産できる。
【0023】
接点装置を車両のルーフに配置するとともに充電接点装置を定置式充電ステーションに配置するか、その逆の配置にすることも可能である。これは、電動バスや路面電車の車両ルーフであってもよい。例えば、この場合、接点装置または充電接点装置を、車両ルーフの進行方向における運転席側に位置するように、車両ルーフに配置することが可能である。このように、接点装置及び/または充電接点装置を配置することは、その装置及び/またはその位置が運転者の視線に入るため、車両の運転者にとって非常に容易になる。
【0024】
加熱装置は、温度制御装置と、充電接点要素に接するサーモスタットとを有してもよい。温度制御は、加熱装置のオンとオフをいつ切り換えるか制御するために使用できる。また、加熱装置の加熱出力も制御できる。サーモスタットは、少なくとも1つの充電用接点要素の温度を測定できる。すべての充電接点要素は、個別に、すなわちそれぞれに1つのサーモスタットを用いて接触制御することができる。また、サーモスタットを1つだけ設け、このサーモスタットに従って全ての充電接点要素の温度を制御することもできる。
【0025】
加熱装置は、充電用接点要素を5℃以下の温度で加熱するように構成できる。このようにして、充電接点要素が凍結しないことを常に保証できる。霜や氷で覆われた充電接点要素は、充電プロセス中に電気アークを形成しやすい。さらに、充電接点エレメントの加熱は、15℃以上でオフに切り換わるように構成することができる。また、異なる切り換えポイントを有するサーモスタット、及び/または異なる温度でそれぞれの切り換えプロセスを引き起こすサーモスタットを用いることも可能である。
【0026】
充電接点要素キャリアの長さは、車両の長さよりも短くすることができる。したがって、長手方向レールの態様で形成されるとともに車両の移動方向に延びる充電接点要素キャリアは、その端部が車両を越えて突出する必要はない。このように、充電接点要素キャリアは比較的短くするように構成できるので、生産のコスト効率がよくなり、また、充電ステーションのポールあるいは車両のルーフに容易に取り付けることもできる。
【0027】
電源接点またはそれに対応する接点要素は、少なくとも750Vから1000Vの電圧で500アンペアから1000アンペアの電流を伝達するように構成される。例えば、375kW~750kW、好ましくは600kWの電力を、充電接点ユニットを介して送ることができる。この場合、充電接点要素に接続するための1本の接続ラインを用意するだけで十分である。また、大電流をより短時間で送ることができるため、車両をより高速に充電することができる。
【0028】
充電接触面及び/または接触面は、最初に保護接地接点、次に電力接点、最後に信号接点を形成できるように、互いに対して横方向または長手方向に配置できる。ストリップ状の充電接触面の長手方向に割り当てられた接触面に対する充電接触面のこの配置によって、長手方向に対する接点対の形成及び切断の順序を定めることができる。この場合、「長手方向」は、ストリップ状の充電接触面が実質的に延びる方向を意味する。これは車両の移動方向にすることができるので、充電接点要素キャリアが水平に配置されている場合、長手方向は基本的に水平方向に対応する。充電接点要素キャリアは、車両の道路に平行に配置してもよいし、道路は水平に対して傾斜していてもよい。「横方向」は、ストリップ状の充電接触面に対して横方向及び/または直交方向に延びる垂直方向を意味する。接点装置及び充電接点装置が垂直方向及び/または水平方向へ一緒に案内されるとき、接点対を形成するための定められた順序に従って、他の接点対の前に、第1の接点対を最初に形成できる。
【0029】
接点要素は点状の接触面を形成することができる。接点要素はボルト形状にすることができる。さらに、接触エレメントは接触エレメントキャリアに弾性的に取り付けることができる。この場合、接点要素は特に簡単に製造することができ、前記接点要素は、接点要素内または接点要素上の単純な圧縮ばねを用いて弾性的に取り付けられる。その結果、充電接点要素との点接触をばねのプリロード下で確立することができる。さらに、複数の接点要素、すなわち複数の接点対を、例えば電源接点用の接点対に設けることができる。好ましくは、各相または各電力接点に対して、2つの接点要素を設けることができる。基本的には、接点要素の形態によって、接触面を他の形状に形成することも可能である。しかしながら、それぞれの接触面は、最も小さい充電接触面よりも、及び/または長手方向に最も短い充電接触面よりも常に小さいことが必須である。
【0030】
接点要素キャリアのための受入開口を充電接点要素キャリアが形成できて接点要素キャリアを充電接点要素キャリアの受入開口に挿入できるか、または充電接点要素キャリアのための受入開口を接点要素キャリアが形成できて充電接点要素キャリアを接点要素キャリアの受入開口に挿入可能であり、受入開口は、接点要素キャリア及び充電接点要素キャリアを一緒に案内する場合に接点要素キャリアまたは充電接点要素キャリアの案内部を形成する。この場合、受入開口は、好ましくはV字形状にすることができる。接点要素と充電接点要素とを一緒に案内する際に接点要素キャリアが受入開口に向かって相対的にずれた場合、受入開口のV字形状により、接点要素キャリア及び/または充電接点要素キャリアのセンタリングが起こる。その逆に、接点要素キャリアが充電接点要素キャリアのための受入開口を形成してもよく、その結果、充電接点要素キャリアは接点要素キャリアの受入開口内に挿入可能になる。この場合、好ましくは、受入開口はV字形状にすることもでき、接点要素はV字形状の受入開口内に配置される。バス停留所での停車中に車両の位置に起こり得る目的の停車位置からの逸脱は、接点要素キャリア及び/または充電接点要素キャリアを受入開口によって接触位置に案内することで容易に相殺できる。充電接点要素キャリアは、車両の移動方向に配置される屋根形の長手方向レールにすることができる。この場合、充電接点要素は、充電接点要素が天候の影響を直接受けないように、屋根形の長手方向レールの下に配置することができる。さらに、ルーフ形状の長手方向レールは、好ましくは、接点要素キャリアを進行方向へルーフ形長手方向レールに挿入及び/またはルーフ形長手方向レールから取り外すこともできるように、その端部において開放されるように形成できる。充電接点要素キャリアが車両に配置される場合、充電接点要素キャリアは、車両の移動方向に配置されるウェブ状の高台として形成できる。
【0031】
車両と定置式充電ステーションとを導電接続するための、特に電動バス等の電動車両のための高速充電システムのための本発明に係る方法において、高速充電システムは、接点装置、充電接点装置及び位置決め装置を備え、充電接点装置は接触位置で接点装置に電気的に接続され、接点装置は位置決め装置によって充電接点装置に対して長手方向及び/または横方向に配置されて接触位置に移動し、充電接点装置は充電接点要素を備えた充電接点要素キャリアを有し、充電接点要素キャリアは車両の移動方向に配置された長手方向のレールとして形成され、充電接点要素はそれぞれストリップ状の充電接触面を形成し、接点装置は接点要素を備えた接点要素キャリアを有し、接点要素はそれぞれ充電接触面よりも小さい接触面を形成し、接点要素は接触位置においてそれぞれの接点対を形成するために充電接点要素に電気的に接続され、充電接点要素の温度が充電接点装置の加熱装置により制御される。本発明に係る方法の有利な効果に関するさらなる詳細については、本発明に係る高速充電システムの効果の説明を参照されたい。この方法の更に有利な実施形態は、請求項1を引用する各従属請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、高速充電システムの充電接点装置の斜視図である。
図2図2は、充電接点装置の底面斜視図である。
図3図3は、充電接点装置の充電接点要素キャリアの底面斜視図である。
図4図4は、充電接点装置の充電接点要素キャリアの他の底面斜視図である。
図5図5は、充電接点要素の斜視図である。
図6図6は、充電接点装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【0034】
図1及び図2は、特に電動バスなどの電動車両用の高速充電システム(図示せず)の充電接点装置10を示し、充電接点装置10は接点装置(図示せず)に接続されるように構成されている。充電接点装置10は屋根形であり、取付装置11によって道路上の車両の上方でポール(図示せず)に取り付けることができる。図を分かりやすくするため、充電接点装置10の上部カバーは図示していない。充電接点装置10の下方に位置する車両は、位置決め装置(図示せず)によって充電接点装置10の下側に配置可能な接点装置を有していてもよい。
【0035】
充電接点装置10は、基本的に、プラスチック材料、特にガラス繊維強化プラスチックで形成された充電接点要素キャリア12と、充電接点要素13とで形成される。充電接点要素13自体は、それぞれが金属ストリップ14、15、16、17として形成され、充電接点要素キャリア12の長手方向へ延びる。金属ストリップ14及び17は、充電電流を伝える機能を有し、金属ストリップ15は保護接地導体に相当し、金属ストリップ16は制御配線に相当する。金属ストリップ14及び17の曲げられた各端部19の接触トラック18は、電気配線(図示せず)に対する接続機能を有する。充電接点要素キャリア12は、基本的に本体20により一体的に形成されていて、本体20は、補強リブ21と、充電接点要素キャリア12をポールなどに吊り下げるためのボルト23を有する取付リブ22とを有する。充電接点装置10の受入開口24はV字形状であり、対称な2つの脚部25が水平ウェブ26を介して互いに接続されている。充電接点装置、または充電接点要素13を有する充電接点要素キャリア12は、受入開口24内に、接点装置が接点要素(図示せず)に接触する表面27を形成している。
【0036】
図3及び図4に示すように、充電接点要素13または金属ストリップ14~17のために各受入溝28が形成されている。充電接点要素13は、受入開口24内にストリップ(細長片)形状の充電接触面29を形成する。
【0037】
図5は、ネジボルト30が突合せ溶接で取り付けられた個々の充電接点要素13を示している。ネジボルト30は、充電接点要素キャリア12の通路開口31から挿入され、充電接点要素キャリア12にナット32でネジ止めされる。さらに、充電接点要素キャリア12には、端部19が挿入されるスリット状の通路開口33が形成されている。充電接点要素13は、好適には、充電接点要素キャリア12の上面34に取り付けて接続することができる。
【0038】
さらに、充電接点装置10は、各充電接点要素キャリア12の加熱要素36によって形成される加熱装置36と、サーモスタット(図示せず)を有する温度制御装置37とを有する。図3図4及び図6を組み合わせると、各受入溝28の底38に、熱伝導体40が挿入される溝39が形成され、前記熱伝導体40が加熱要素36を形成することが分かる。熱伝導体40が充電接点要素13の裏面41に接しているため、各充電接点要素13を効果的に温度制御及び/または加熱できる。
【0039】
さらに、充電接点要素キャリア12の表面27には、2つの充電接点要素13の間に切り欠き42が形成されている。切り欠き42は、充電接点要素13の長さ方向と平行に延びている。この切り欠きにより、充電接点要素13の間で沿面電流が発生しにくくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6