IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】ビニル化合物中の重合防止方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/50 20060101AFI20250310BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20250310BHJP
   C08F 18/08 20060101ALI20250310BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20250310BHJP
   C07C 69/15 20060101ALI20250310BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20250310BHJP
   C07C 57/075 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
C07C51/50
C08F2/38
C08F18/08
C08F20/00
C07C69/15
C07C255/08
C07C57/075
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024011451
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000234166
【氏名又は名称】伯東株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小枝 周平
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-348359(JP,A)
【文献】特開2001-181252(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142887(WO,A1)
【文献】特開2007-332138(JP,A)
【文献】特開2006-232874(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116573985(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルの群から選ばれる1種以上のビニル化合物に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含むことを特徴とするビニル化合物の重合防止方法。
【請求項2】
前記ビニル化合物に対し、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを0.01~1000ppm、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.01~1000ppm、ハイドロキノンを0.01~1000ppm、ベンゾキノンを0.01~1000ppm含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ビニル化合物に含まれる4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルとハイドロキノンの重量比が、1:40~10:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジ
カルと1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの重量比が、0
.1:1~30:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
ハイドロキノンとベンゾキノンの重量比が、1:2~60:1であることを特徴とする
請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記ビニル化合物に、酢酸及び/又は硫酸が1ppm以上含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル化合物中の重合防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のビニル化合物は熱等により、重合し易い性質を持つ。そのため、ビニル化合物の重合を防止するために種々の重合防止剤が添加されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビニル化合物の重合防止剤としてビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノオキシル)-セバケート等のN-オキシル化合物を用いることが記載されているや、特許文献2では、ビニル化合物に、N-オキシル化合物と、N-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン化合物と、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン化合物とを共存させることで、ビニル化合物中のN-オキシル化合物が安定化できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平4-14121
【文献】特開2001-181252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビニル化合物は重合性が高いため、上記方法を用いてもビニル化合物の重合を防止することが難しかった。さらに、ビニル化合物中に酢酸や硫酸等の不純物が存在すると、ビニル化合物の重合が促進されてしまうため、上記方法を用いても重合防止が難しかった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、ビニル化合物中の重合防止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ビニル化合物に、重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含むことで、ビニル化合物を効果的に重合防止できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、ビニル化合物に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含むことを特徴とするビニル化合物の重合防止方法である。
【0009】
また、ビニル化合物に対し、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを0.01~1000ppm、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.01~1000ppm、ハイドロキノンを0.01~1000ppm、ベンゾキノンを0.01~1000ppm含むことを特徴とする請求項1記載の方法である。
【0010】
また、ビニル化合物が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルの群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法である。
【0011】
また、ビニル化合物に含まれる4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルとハイドロキノンの重量比が、1:40~10:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法である。
【0012】
また、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの重量比が、0.1:1~30:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法である。
【0013】
また、ハイドロキノンとベンゾキノンの重量比が、1:2~60:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法である。
【0014】
また、ビニル化合物に、酢酸及び/又は硫酸が1ppm以上含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の重合防止方法を行うことで、重合性が高いビニル化合物を、効果的に重合防止することができるため有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で使用されるビニル化合物とは、ビニル結合を有するものであり、例えば、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物、ビニルエステル化合物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルエステル化合物、(メタ)アクリロニトリル等を挙げることができ、中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルであることが好ましい。
本発明の重合防止剤を用いることで、前記ビニル化合物に対し、効果的に重合防止することができる。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン、ビニルトルエン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、スチレンスルホン酸、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
【0018】
共役ジエン化合物としては、具体的には、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、α-ファルネセン、β-ファルネセン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができる。
【0019】
ビニルエステル化合物としては、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等を挙げることができる。
【0020】
(メタ)アクリルとしては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸を挙げることができる。また、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示す。
【0021】
(メタ)アクリルエステル化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を挙げることができる。
【0022】
(メタ)アクリロニトリルとは、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを挙げることができる。また、本発明において、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを示す。
【0023】
ビニル化合物は、その沸点としては特に限定されないが、例えば、沸点が50℃以上であることが好ましく、より好ましくは沸点が60℃以上であり、更に好ましくは沸点が70~150℃である。上記沸点のビニル化合物に対して、本発明の重合防止剤が含まれることで、蒸留の際に、十分に重合防止効果を発揮することができる。
【0024】
本発明で用いられる重合防止剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含むものであり、ビニル化合物にこれら重合防止剤を含むことで、効果的に重合防止することができる。なお、本発明のベンゾキノンには、構造異性体である1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノンを含み、本発明のハイドロキノンには、構造異性体であるカテコール、レゾルシノールを含む。
【0025】
ビニル化合物に含まれる重合防止剤の含有量は、ビニル化合物の重合を防止できれば特に限定されないが、ビニル化合物に対し、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを0.01~1000ppm、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.01~1000ppm、ハイドロキノンを0.01~1000ppm、ベンゾキノンを0.01~1000ppm含むことが好ましい。より好ましくは、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを0.05~500ppm、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.05~500ppm、ハイドロキノンを0.05~500ppm、ベンゾキノンを0.05~500ppm含むことであり、更に好ましくは、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを0.1~400ppm、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.1~400ppm、ハイドロキノンを0.1~400ppm、ベンゾキノンを0.1~400ppm含むことである。この範囲の含有量であると、ビニル化合物を効果的に重合防止することができる。なお、単位「ppm」はビニル化合物の質量に対する重合防止剤の含有量である。
【0026】
ビニル化合物に含まれる4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルとハイドロキノンの重量比は、ビニル化合物の重合を防止できれば特に限定されないが、1:40~10:1であることが好ましく、更に好ましくは1:20~1:1であり、特に好ましくは、1:10~3:10である。
【0027】
ビニル化合物に含まれる4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの重量比は、ビニル化合物の重合を防止できれば特に限定されないが、0.1:1~30:1であることが好ましく、更に好ましくは1:1~18:1である。
【0028】
ビニル化合物に含まれるハイドロキノンとベンゾキノンの重量比は、ビニル化合物の重合を防止できれば特に限定されないが、1:2~60:1であることが好ましく、更に好ましくは1:1~50:1であり、特に好ましくは2:1~18:1である。
【0029】
ビニル化合物に含まれる1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとベンゾキノンの重量比は、ビニル化合物の重合を防止できれば特に限定されないが、1:20~10:1であることが好ましく、更に好ましくは1:15~2:1である。
【0030】
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンの添加方法は特に限定はなく、それぞれ別々に、または同時にビニル化合物へ添加してもよい。
【0031】
本発明で用いられるビニル化合物は、その製造過程で副生する不純物やビニル化合物の出発原料から持ち込まれる不純物等を含んでいてもよい。例えば、水、酢酸等の有機酸や、硫酸等の無機酸や、アクロレイン等のアルデヒド類を初めとする種々の不純物を含む場合にも、重合防止効果が発揮される。中でも、ビニル化合物に不純物として酢酸や硫酸等を含有すると、ビニル化合物が重合しやすいため、本発明の重合防止剤を含有することで、効果的に重合防止することができる。
【0032】
ビニル化合物に含まれる酢酸及び/又は硫酸の含有量は、特に限定されないが、ビニル化合物に対して、0.1ppm以上含有することが好ましく、1ppm以上含有することがより好ましく、10ppm以上含有することが特に好ましい。ビニル化合物に所定量の酢酸及び/又は硫酸が含有し、重合しやすい場合でも、ビニル化合物に本発明の重合防止剤を含有することで、効果的に重合防止することができる。
【0033】
本発明においては、フェノチアジン、メトキノン、ジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸マンガン、p-フェニレンジアミン等の、ビニル化合物に対してその他の公知の重合防止剤を併用してもよい。その他の重合防止剤の含有量は、通常用いられる範囲であれば特に限定されないが、通常、ビニル化合物に対し、0.01~10000ppmの範囲で含まれることが好ましい。
【0034】
本発明において、ビニル化合物を取り扱う際、具体的には、例えばビニル化合物の精製時、タンクでの貯蔵、タンクローリー等による輸送、パイプライン等による移送等の際に、ビニル化合物に本発明の重合防止剤を含むことで、効果的に重合防止を発揮する。ビニル化合物の精製時としては、ビニル化合物の精製蒸留時に、この重合防止効果を得ることができる。タンクでの貯蔵としては、製品貯蔵用のタンクや、プロセス中の各工程間の中間タンク等のあらゆる場合において、この重合防止効果を得ることができる。パイプライン等による移送についても製品の移送や、プロセス中の各工程間の移送等の様々な状況において本発明の効果が得られる。
【実施例
【0035】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「ppm」は、特に断らない限り質量基準である。
【0036】
[供試試薬]
・アクリロニトリル(東京化成工業株式会社製の試薬を減圧下で蒸留を行い、予め含まれている安定剤(メトキシハイドロキノン)を除去)
・メタクリル酸(東京化成工業株式会社製の試薬を減圧下で蒸留を行い、予め含まれている安定剤(メトキシハイドロキノン)を除去)
・酢酸ビニル(東京化成工業株式会社製の試薬を減圧下で蒸留を行い、予め含まれている安定剤(ハイドロキノン)を除去)
・ラウロイルパーオキシド(試薬、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・H-TEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカル、試薬、東京化成工業株式会社製)
・H-TEMPOH(1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、試薬、Alfa Chemistry製)
・BQ(1,4-ベンゾキノン、試薬、東京化成工業株式会社製)
・HQ(1,4-ハイドロキノン、試薬、東京化成工業株式会社製)
【0037】
[アクリロニトリルの重合防止試験1]
(実施例1)
安定剤を除去したアクリロニトリル200gに、重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表1記載の量添加した後、窒素ガスを50mL/分の割合で導入しつつ、常圧で78℃にて還流加熱した。重合により、発生するポリマーが析出して、試験液が白濁する時間を誘導期間(単位:分)とした。誘導期間が長いほど、重合防止効果が高いことを示す。結果を表1に記載した。
【0038】
(実施例2~7)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表1記載の添加量に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表1に記載した。
【0039】
(比較例1~8)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表1記載の添加量に変更した以外は、実施例1と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表1に記載した。
【0040】
(比較例9)
重合防止剤を添加しない以外は、実施例1と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表1に記載した。
【0041】
[アクリロニトリルの重合防止試験2]
(実施例8)
安定剤を除去したアクリロニトリル200gに、酢酸を10ppm添加した後、重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表1記載の量添加した後、窒素ガスを50mL/分の割合で導入しつつ、常圧で78℃にて還流加熱した。重合により、発生するポリマーが析出して、試験液が白濁する時間を誘導期間(単位:分)とした。誘導期間が長いほど、重合防止効果が高いことを示す。結果を表2に記載した。
【0042】
(実施例9~14)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表1記載の添加量に変更した以外は、実施例8と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表2に記載した。
【0043】
(比較例10~17)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表2記載の添加量に変更した以外は、実施例8と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表2に記載した。
【0044】
(比較例18)
重合防止剤を添加しない以外は、実施例8と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表2に記載した。
【0045】
実施例1~7のように、アクリロニトリルに対して、本発明の重合防止剤である4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含む場合、いずれも誘導期間が450分以上であり、優れた重合防止効果を発揮した。一方、比較例1~9のように、本発明以外の構成の重合防止剤では、いずれも誘導期間が450分以下であり、明確に重合防止効果が劣った。
また、アクリロニトリルに酢酸を含む場合、比較例10~18のように重合が促進し、誘導期間が260分以下であったが、実施例8~14のように、本発明の重合防止剤を含むと、いずれも誘導期間が390分以上であり、酢酸を含み重合しやすい状況であっても優れた重合防止効果を発揮した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
[メタクリル酸の重合防止試験1]
(実施例15)
安定剤を除去したメタクリル酸10gを試験管に入れ、重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表3記載の量添加した後、試験管を大気開放条件で120℃に設定したシリコンオイルバスに浸漬した。重合により試験液が固化する時間を誘導期間(単位:時間)とした。誘導期間が長いほど、重合防止効果が高いことを示す。結果を表3に記載した。
【0049】
(実施例16~24)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表3記載の添加量に変更した以外は、実施例15と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表3に記載した。
【0050】
(比較例19~28)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表3記載の添加量に変更した以外は、実施例15と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表3に記載した。
【0051】
(比較例29)
重合防止剤を添加しない以外は、実施例15と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表3に記載した。
【0052】
[メタクリル酸の重合防止試験2]
(実施例25)
安定剤を除去したメタクリル酸10gを試験管に入れ、さらに硫酸を10ppm添加した後、重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表3記載の量添加した後、試験管を大気開放条件で120℃に設定したシリコンオイルバスに浸漬した。重合により試験液が固化する時間を誘導期間(単位:時間)とした。誘導期間が長いほど、重合防止効果が高いことを示す。結果を表4に記載した。
【0053】
(実施例26~34)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表4記載の添加量に変更した以外は、実施例25と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表4に記載した。
【0054】
(比較例30~39)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表4記載の添加量に変更した以外は、実施例25と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表4に記載した。
【0055】
(比較例40)
重合防止剤を添加しない以外は、実施例25と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表4に記載した。
【0056】
実施例15~24のように、メタクリル酸に対して、本発明の重合防止剤である4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含む場合、いずれも誘導期間が23時間以上であり、優れた重合防止効果を発揮した。一方、比較例19~29のように、本発明の重合防止剤以外の構成であると、いずれも誘導期間が22時間以下であり、明確に重合防止効果が劣った。
また、メタクリル酸に硫酸を含む場合、比較例30~40のように重合が促進し、誘導期間が21時間以下であったが、実施例25~34のように、本発明の重合防止剤を含むと、いずれも誘導期間が22時間以上であり、硫酸を含んだ重合しやすい状況であっても優れた重合防止効果を発揮した。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
[酢酸ビニルの重合防止試験1]
(実施例35)
安定剤を除去した酢酸ビニル10gを試験管に入れ、これに重合触媒であるラウロイルパーオキシド130mgを添加した。そこに重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表5記載の量添加した後、試験管を大気開放条件で65℃に設定したウォーターバスに浸漬した。重合反応によって気泡が発生するまでの時間を測定した。また、重合防止剤を含まない酢酸ビニルでも同様の測定を行い、その時間差を重合抑制時間(単位:秒)とした。重合抑制時間が長いほど、重合防止効果が高いことを示す。結果を表5に記載した。
【0060】
(実施例36~44)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表5記載の添加量に変更した以外は、実施例35と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表5に記載した。
【0061】
(比較例41~50)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表5記載の添加量に変更した以外は、実施例35と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表5に記載した。
【0062】
[酢酸ビニルの重合防止試験2]
(実施例45)
安定剤を除去した酢酸ビニル10gを試験管に入れ、これに酢酸10ppmと重合触媒であるラウロイルパーオキシド130mgを添加した。そこに重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表6記載の量添加した後、試験管を大気開放条件で65℃に設定したウォーターバスに浸漬した。重合反応によって気泡が発生するまでの時間を測定した。また、重合防止剤を含まない酢酸ビニルでも同様の測定を行い、その時間差を重合抑制時間(単位:秒)とした。重合抑制時間が長いほど、重合防止効果が高いことを示す。結果を表6に記載した。
【0063】
(実施例46~54)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表6記載の添加量に変更した以外は、実施例45と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表6に記載した。
【0064】
(比較例51~60)
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを表6記載の添加量に変更した以外は、実施例45と同様な方法で、重合防止試験を実施した。結果を表6に記載した。
【0065】
実施例35~44のように、酢酸ビニルに対して、本発明の重合防止剤である4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含む場合、いずれも重合抑制時間が315秒以上であり、優れた重合防止効果を発揮した。一方、比較例41~50のように、本発明の重合防止剤以外の構成であると、いずれも重合抑制時間が310秒以下であり、明確に重合防止効果が劣った。
また、酢酸ビニルに酢酸を含む場合、比較例51~60のように重合が促進し、重合抑制時間が250秒以下であったが、実施例45~54のように、本発明の重合防止剤を含むと、いずれも重合抑制時間が270秒以上であり、酢酸を含んだ重合しやすい状況であっても優れた重合防止効果を発揮した。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0068】
ビニル化合物の重合防止方法として本発明の処理方法を用いることで、効果的な重合抑制が可能であり、ビニル化合物の製造や精製時に汚れ発生を防止することができ、プラントの効率的な運転を達成することができる。



【要約】      (修正有)
【課題】重合性の高いビニル化合物の重合防止方法を提供する。
【解決手段】ビニル化合物に、重合防止剤として、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルと、1,4-ジヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、ハイドロキノンと、ベンゾキノンを含むことで、ビニル化合物を効果的に重合防止できることを見出した。
【選択図】なし