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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】真空断熱容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20250310BHJP
   A47J 41/02 20060101ALI20250310BHJP
   B23K 26/242 20140101ALN20250310BHJP
【FI】
B65D81/38 E
A47J41/02 102D
B23K26/242
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024012351
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】元岡 新也
(72)【発明者】
【氏名】野村 哲昭
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0047119(US,A1)
【文献】特開2015-181628(JP,A)
【文献】特開昭59-028933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
A47J 41/02
B23K 26/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状で金属製の内容器と有底筒状で金属製の外容器との間に真空断熱層が設けられ、
前記外容器が外筒と前記外筒の底側を閉塞する底部とから構成され、
前記外筒の下部に、内側に延びる延在壁が周設され、
前記底部に、外側に延びる延在底板が周設され、
前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部が面接触するように外側から重ねられ、
前記延在壁の延びる方向の中間位置で前記延在底板の先端縁が前記延在壁に隅肉溶接部で接合され、
前記延在底板の先端縁の近傍に設けられ且つ前記底部の周方向の一部に局所的に配置されている真空排気口が封止されていることを特徴とする真空断熱容器。
【請求項2】
前記外筒と前記底部とが同一金属で形成され、
前記外筒の前記延在壁の板厚より前記底部の前記延在底板の板厚が薄く形成されていることを特徴とする請求項1記載の真空断熱容器。
【請求項3】
前記延在底板が、上方に向かって外側に傾斜して延びる傾斜底板で構成され、
下方に凸で山形の突条が前記底部の前記傾斜底板の下端部に連なって形成されていることを特徴とする請求項2記載の真空断熱容器。
【請求項4】
前記隅肉溶接部が、前記真空排気口を構成する切欠きを有する弧状溶接部と、前記切欠きを閉塞するように局所的に形成される封止溶接部とから構成されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の真空断熱容器。
【請求項5】
前記延在壁と前記延在底板の重なり領域において前記隅肉溶接部より内側位置で前記傾斜底板に貫通する真空排気穴が前記真空排気口として設けられ、
前記真空排気穴が封止されていることを特徴とする請求項記載の真空断熱容器。
【請求項6】
前記真空排気穴が導電性封止材で封止されていることを特徴とする請求項5記載の真空断熱容器。
【請求項7】
内側に延びる延在壁が下部に周設された外筒と、外側に延びる延在底板が周設された底部とを用い、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を外側から重ねて配置する第1工程と、
前記延在壁の延びる方向の中間位置で前記延在底板の先端縁を前記延在壁に真空排気口を構成する切欠きを残すように弧状に隅肉溶接する第2工程と、
有底筒状で金属製の内容器と前記外筒とが接合されたワークを真空槽内に配置し、前記外筒及び前記底部と前記内容器との間の対象空間を、前記延在底板と前記延在壁との間と前記切欠きの経路によって真空排気し、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を面接触させる第3工程と、
前記ワークの前記切欠きを閉塞するように局所的に隅肉溶接して、前記外筒の底側を前記底部で閉塞して有底筒状で金属製の外容器を構成すると共に、前記内容器と前記外容器との間に真空断熱層を設ける第4工程を備えることを特徴とする真空断熱容器の製造方法。
【請求項8】
内側に延びる延在壁が下部に周設された外筒と、外側に延びる延在底板が周設された底部とを用い、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を外側から重ねて配置する第1工程と、
前記延在壁の延びる方向の中間位置で前記延在底板の先端縁を前記延在壁に全周に亘って溶接して隅肉溶接部を形成すると共に、前記延在壁と前記延在底板の重なり領域において前記隅肉溶接部より内側位置で前記延在底板に貫通している真空排気穴に封止材を設ける第2工程と、
有底筒状で金属製の内容器と前記外筒とが接合されたワークを真空槽内に配置し、前記外筒及び前記底部と前記内容器との間の対象空間を、前記延在底板と前記延在壁との間と前記真空排気穴の経路によって真空排気し、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を面接触させる第3工程と、
前記真空排気穴を前記封止材で封止して、有底筒状で金属製の外容器を構成すると共に、前記内容器と前記外容器との間に真空断熱層を設ける第4工程を備えることを特徴とする真空断熱容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば缶ホルダー、マグカップ、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、卓上魔法瓶等の真空断熱容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容器と外容器との間に真空断熱層が設けられる真空断熱容器として特許文献1の真空断熱容器がある。この真空断熱容器は、有底筒状のステンレス製の内容器と有底筒状でステンレス製の外容器との間に真空断熱層が設けられ、外容器は外容器筒部と外容器底部とで形成されている。
【0003】
外容器筒部の周壁の下部には断面視L字形のL字形屈曲部で構成される溝が周方向に形成されており、この溝に、底部の周壁が外容器筒部の周壁と表面位置が合わさるようにして長手方向に嵌合されている。外容器筒部と底部との接合は、底部の周壁をL字形屈曲部に外嵌合して底部の周壁の先端をL字形屈曲部の根元から隙間を開けた位置に配置し、底部の周壁の先端をL字形屈曲部に溶接する(特許文献1の図5参照)、或いは底部の周壁の先端がL字形屈曲部の根元に当接するように底部の周壁をL字形屈曲部に外嵌合し、底部の周壁の先端近傍をL字形屈曲部にスポット溶接することにより行われる(特許文献1の図6参照)。
【0004】
この真空断熱容器を形成する際には、例えば高温の真空槽内に溶接装置を設置すると共に、外容器筒部のL字形屈曲部の根元と底部の周壁の先端等とが溶接されていないワークを真空槽内に配置し、空気が希薄な状態で回転台と駆動部でワークを水平方向に360度回転させ、外容器筒部のL字形屈曲部と、底部の周壁の先端或いは先端近傍とをビーム溶接で溶接することにより形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-154367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにワークを真空槽内に配置し、駆動部でワークを水平方向に回転させ、外容器筒部と底部を溶接して真空断熱容器を製造する方法では、ワークを回転させる駆動部に塗布されるグリス等の潤滑剤によって真空状態の汚染が生じたり、駆動部の真空槽内外の接続部分からエアリークが生ずる可能性が高くなる。そのため、真空槽内の真空度の安定性が低下し、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることが難しくなる。
【0007】
更に、真空断熱容器のワークに局所的な真空排気口を設け、真空排気口から真空排気する場合、真空排気口の周辺部位は、スムーズな真空排気と真空排気後の封止補助を両立することができ、真空断熱容器の真空断熱層の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図ることができる構造とすることが望ましい。
【0008】
また、特許文献1の真空断熱容器を製造する際に、底部の周壁をL字形屈曲部に外嵌合し、底部の周壁の先端をL字形屈曲部の根元から隙間を開けた位置に配置して溶接する場合、底部の周壁と外容器筒部のL字形屈曲部の寸法にばらつきが生ずると隙間にばらつきが生じ、溶け落ちや穴開きのような溶接不良の原因となる。或いは、底部の周壁の先端がL字形屈曲部の根元に当接するように底部の周壁をL字形屈曲部に外嵌合し、底部の周壁の先端近傍をL字形屈曲部にスポット溶接する場合、L字形屈曲部の外径が底部の周壁の内径より小さくなる寸法誤差が生じた場合、底部の周壁をL字形屈曲部に全周に亘って溶接することが出来なくなる。即ち、特許文献1の真空断熱容器を製造する際には、厳密な寸法精度が要求されるため、歩留まりが低下するという不具合も生ずる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、真空断熱層の所要真空度を確実に得ることができると共に、真空断熱層の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図ることができる真空断熱容器及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、外容器を構成する外筒と外筒の底側を閉塞する底部の寸法許容度を高め、歩留まりを向上することができる真空断熱容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真空断熱容器は、有底筒状で金属製の内容器と有底筒状で金属製の外容器との間に真空断熱層が設けられ、前記外容器が外筒と前記外筒の底側を閉塞する底部とから構成され、前記外筒の下部に、内側に延びる延在壁が周設され、前記底部に、外側に延びる延在底板が周設され、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部が面接触するように外側から重ねられ、前記延在壁の延びる方向の中間位置で前記延在底板の先端縁が前記延在壁に隅肉溶接部で接合され、前記延在底板の先端縁の近傍に設けられ且つ前記底部の周方向の一部に局所的に配置されている真空排気口が封止されていることを特徴とする。
これによれば、真空排気口を底部の延在底板の先端縁の近傍で且つ底部の周方向の一部に局所的に配置することにより、真空度が安定した真空槽内でワークを回転させずに真空排気口を封止することが可能となり、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、真空槽内で内容器と外容器との間となる対象空間から真空排気を行う際に、真空排気口の周辺部位である底部の延在底板が外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板が延在壁に面接触するように変形する動作で真空排気口から真空排気を行うことができ、真空排気口の周辺にスムーズな真空排気と真空排気後の封止補助を両立する逆止弁構造を構築することができる。この逆止弁構造により、真空断熱層の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図ることができる。また、延在壁の下部に延在底板の先端部が面接触するように底部の延在底板を外筒の延在壁の外側に重ね、延在壁の延びる方向の中間位置で延在底板の先端縁を延在壁に隅肉溶接部で接合する構成により、底部の延在底板や外筒の延在壁の寸法誤差の影響を吸収して接合することができ、外容器を構成する外筒と外筒の底側を閉塞する底部の寸法許容度を高め、歩留まりを向上することができる。
【0011】
本発明の真空断熱容器は、前記外筒と前記底部とが同一金属で形成され、前記外筒の前記延在壁の板厚より前記底部の前記延在底板の板厚が薄く形成されていることを特徴とする。
これによれば、真空槽内で内容器と外容器との間となる対象空間から真空排気を行う際に、底部の延在底板が外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板が延在壁に面接触するように変形する動作をよりスムーズに行わせることができる。
【0012】
本発明の真空断熱容器は、前記延在底板が、上方に向かって外側に傾斜して延びる傾斜底板で構成され、下方に凸で山形の突条が前記底部の前記傾斜底板の下端部に連なって形成されていることを特徴とする。
これによれば、傾斜底板の下端部に連なる突条で底部の傾斜底板の剛性を高め、真空槽で真空排気を行う際に傾斜底板が延びる方向の中間箇所に座屈が発生することを確実に防止することができる。
【0013】
本発明の真空断熱容器は、前記隅肉溶接部が、前記真空排気口を構成する切欠きを有する弧状溶接部と、前記切欠きを閉塞するように局所的に形成される封止溶接部とから構成されることを特徴とする。
これによれば、真空槽内でワークを回転させずに、切欠きを閉塞する局所的な溶接をするだけで真空断熱層を封止することができ、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、ワークの局所的な真空排気口に封止材を設置する工程が不要となり、製造工程を効率化することができる。
【0014】
本発明の真空断熱容器は、前記延在壁と前記延在底板の重なり領域において前記隅肉溶接部より内側位置で前記傾斜底板に貫通する真空排気穴が前記真空排気口として設けられ、前記真空排気穴が封止されていることを特徴とする。
これによれば、延在底板の先端縁と延在壁とを全周に亘って隅肉溶接し、真空排気穴に封止材を設けたワークを真空槽内に設置するだけで、真空排気穴からの確実な排気と確実な封止を行うことができ、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、一度の隅肉溶接工程で外容器を構成する外筒と底部を一体化することができ、製造工程を効率化することができる。
【0015】
本発明の真空断熱容器は、前記真空排気穴が導電性封止材で封止されていることを特徴とする。
これによれば、金属製の底部の真空排気穴を導電性封止材で封止することにより、封止部分を目立ちにくくし、真空断熱容器の外観上の一体感を高めることができる。また、真空断熱容器の外形が完成した後に陽極酸化処理による表面処理を行うことが可能になる。また、真空排気穴をガラス封止する場合と同様の真空槽を用い、真空槽に設置されているヒーターの加熱能力を高める程度で真空断熱容器を製造することができ、製造コストの増加を抑制しつつ長寿命、高耐久性の真空断熱容器を製造することができる。
【0016】
本発明の真空断熱容器の製造方法は、内側に延びる延在壁が下部に周設された外筒と、外側に延びる延在底板が周設された底部とを用い、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を外側から重ねて配置する第1工程と、前記延在壁の延びる方向の中間位置で前記延在底板の先端縁を前記延在壁に真空排気口を構成する切欠きを残すように弧状に隅肉溶接する第2工程と、有底筒状で金属製の内容器と前記外筒とが接合されたワークを真空槽内に配置し、前記外筒及び前記底部と前記内容器との間の対象空間を、前記延在底板と前記延在壁との間と前記切欠きの経路によって真空排気し、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を面接触させる第3工程と、前記ワークの前記切欠きを閉塞するように局所的に隅肉溶接して、前記外筒の底側を前記底部で閉塞して有底筒状で金属製の外容器を構成すると共に、前記内容器と前記外容器との間に真空断熱層を設ける第4工程を備えることを特徴とする。
これによれば、真空排気口を構成する切欠きを底部の延在底板の先端縁の近傍で且つ底部の周方向の一部に局所的に配置することにより、真空度が安定した真空槽内でワークを回転させずに真空排気口を封止することが可能となり、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、真空槽内で内容器と外容器との間となる対象空間から真空排気を行う際に、真空排気口の周辺部位である底部の延在底板が外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板が延在壁に面接触するように変形する動作で真空排気口を構成する切欠きから真空排気を行うことができ、真空排気口の周辺にスムーズな真空排気と真空排気後の封止補助を両立する逆止弁構造を構築することができる。この逆止弁構造により、真空断熱層の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図ることができる。また、真空槽内でワークを回転させずに、切欠きを閉塞する局所的な溶接をするだけで真空断熱層を封止することができ、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、ワークの局所的な真空排気口に封止材を設置する工程が不要となり、製造工程を効率化することができる。また、延在壁の下部に延在底板の先端部が面接触するように底部の延在底板を外筒の延在壁の外側に重ね、延在壁の延びる方向の中間位置で延在底板の先端縁を延在壁に隅肉溶接することにより、底部の延在底板や外筒の延在壁の寸法誤差の影響を吸収して接合することができ、外容器を構成する外筒と外筒の底側を閉塞する底部の寸法許容度を高め、歩留まりを向上することができる。
【0017】
本発明の真空断熱容器の製造方法は、内側に延びる延在壁が下部に周設された外筒と、外側に延びる延在底板が周設された底部とを用い、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を外側から重ねて配置する第1工程と、前記延在壁の延びる方向の中間位置で前記延在底板の先端縁を前記延在壁に全周に亘って溶接して隅肉溶接部を形成すると共に、前記延在壁と前記延在底板の重なり領域において前記隅肉溶接部より内側位置で前記延在底板に貫通している真空排気穴に封止材を設ける第2工程と、有底筒状で金属製の内容器と前記外筒とが接合されたワークを真空槽内に配置し、前記外筒及び前記底部と前記内容器との間の対象空間を、前記延在底板と前記延在壁との間と前記真空排気穴の経路によって真空排気し、前記延在壁の下部に前記延在底板の先端部を面接触させる第3工程と、前記真空排気穴を前記封止材で封止して、有底筒状で金属製の外容器を構成すると共に、前記内容器と前記外容器との間に真空断熱層を設ける第4工程を備えることを特徴とする。
これによれば、真空排気口を構成する真空排気穴を底部の延在底板の先端縁の近傍で且つ底部の周方向の一部に局所的に配置することにより、真空度が安定した真空槽内でワークを回転させずに真空排気口を封止することが可能となり、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、真空槽内で内容器と外容器との間となる対象空間から真空排気を行う際に、真空排気口の周辺部位である底部の延在底板が外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板が延在壁に面接触するように変形する動作で真空排気口を構成する真空排気穴から真空排気を行うことができ、真空排気口の周辺にスムーズな真空排気と真空排気後の封止補助を両立する逆止弁構造を構築することができる。この逆止弁構造により、真空断熱層の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図ることができる。また、延在底板の先端縁と延在壁とを全周に亘って隅肉溶接し、真空排気穴に封止材を設けたワークを真空槽内に設置するだけで、真空排気穴からの確実な排気と確実な封止を行うことができ、真空断熱容器の真空断熱層に求められる真空度を確実に得ることができる。また、一度の隅肉溶接工程で外容器を構成する外筒と底部を一体化することができ、製造工程を効率化することができる。また、延在壁の下部に延在底板の先端部が面接触するように底部の延在底板を外筒の延在壁の外側に重ね、延在壁の延びる方向の中間位置で延在底板の先端縁を延在壁に隅肉溶接することにより、底部の延在底板や外筒の延在壁の寸法誤差の影響を吸収して接合することができ、外容器を構成する外筒と外筒の底側を閉塞する底部の寸法許容度を高め、歩留まりを向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、真空断熱容器の真空断熱層の所要真空度を確実に得ることができると共に、真空断熱層の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による第1実施形態の真空断熱容器を示す縦断面図。
図2】(a)は図1のA部拡大図、(b)は図1のB部拡大図。
図3】(a)は第1実施形態の真空断熱容器を示す底面図、(b)は同図(a)のC部拡大図。
図4】(a)は外筒の延在壁の下部に底部の延在底板の先端部を外側から重ねて配置したワークの部分断面図、(b)は切欠きを残して隅肉溶接したワークの部分断面図。
図5】第1実施形態の真空断熱容器のワークが真空槽に配置された状態の模式図。
図6】真空排気時における第1実施形態のワークの延在底板の変形を説明する断面説明図。
図7】本発明による第2実施形態の真空断熱容器を示す縦断面図。
図8】(a)は図7のD部拡大図、(b)は図7のE部拡大図。
図9】(a)は第2実施形態の真空断熱容器を示す底面図、(b)は同図(a)のF部拡大図。
図10】(a)は外筒の延在壁の下部に底部の延在底板の先端部を外側から重ねて配置したワークの部分断面図、(b)は隅肉溶接部が形成されて真空排気穴に導電性封止材が設けられたワークの部分断面図。
図11】第2実施形態の真空断熱容器のワークが真空槽に配置された状態の模式図。
図12】真空排気時における第2実施形態のワークの延在底板の変形を説明する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態の真空断熱容器及びその製造方法〕
本発明による第1実施形態の真空断熱容器1は、図1図3に示すように、有底筒状でステンレス等の金属製の内容器2と有底筒状でステンレス等の金属製の外容器3を有し、内容器2と外容器3との間に空間が設けられ、この空間が真空断熱層4になっている。図示例の真空断熱層4は、内容器2と外容器3との間の空間を真空状態或いは減圧状態の空洞にした真空断熱層になっているが、内容器2と外容器3との間の空間に断熱材が充填されると共に当該空間を真空状態或いは減圧状態にした真空断熱層としても良好である。尚、図示例の真空断熱容器1は缶ホルダーである。
【0021】
内容器2は、周側壁21と底部22とから構成され、周側壁21と底部22とが同一金属材で一体形成された有底筒状になっており、全体が薄い金属板材で形成されている。底部22の略中央には内容器2の口側に向かってドーム状に突出するように形成された凹部221が設けられている。
【0022】
外容器3は、上下に貫通する略円筒状の外筒31と、外筒31の底側を閉塞する底部32とから構成されており、外筒31と底部32のそれぞれは全体が薄い金属板材で一体形成されている。外筒31の外容器3の口側には、内側に断面視略L字形に折り曲げられた折曲部311が設けられており、折曲部311の先端部が内容器2の周側壁21の口側の先端部の外側に重なるように配置され、周側壁21の口側の先端縁と折曲部311の先端縁とが溶接部7で周状に溶接されている。
【0023】
外筒31の下部には、内側に向かって湾曲する湾曲部312が周設され、湾曲部312の下側に延在壁313が設けられている。延在壁313は、内側に延びるように周設されており、本実施形態における延在壁313は、下方に向かって内側に傾斜して延びるように周設された傾斜壁になっている。延在壁313の鉛直方向に対する角度は、好適には15度~90度、より好適には60度~90度とすると良く、又、延在壁313の長さは、好適には2.0mm以上、より好適には4.0mm以上とすると良い。
【0024】
底部32は、底面視で略円盤状であり、外側に延びる延在底板321が形成され、本実施形態における延在底板321は、上方に向かって外側に傾斜して延びるように周設された傾斜底板になっている。真空断熱層4が設けられた状態における延在底板321は、外筒31の延在壁313に倣う角度で設けられ、延在底板321の延在壁313に対する傾斜角度は、好適には0度~12度、より好適には0度~4度とすると良い。延在底板321の上端部は延在壁313の下部に面接触するように外側から重ねて設けられ、延在底板321の上端部と延在壁313との重なり領域の延在壁313の延びる方向における重なり長さは、例えば延在壁313の長さの1/4~3/4程度、より好適には1/3~2/3程度とすると好適である。
【0025】
底部32の傾斜底板で構成される延在底板321の下端部には、下方に凸で山形の突条322が連なって形成され、突条322は真空断熱容器1の底面視で周状に形成されている。突条322で囲まれた領域は上方に凹で皿状にへこんだ凹部323になっている。また、凹部323と凹部221との間の真空断熱層4にはゲッター9が設けられている。
【0026】
外筒31と底部32は、異種の金属材で形成することも可能であるが、同一金属材で形成すると好適であり、更に、外筒31と底部32とを同一金属で形成する場合、外筒31の延在壁313の板厚より底部32の延在底板321の板厚を薄く形成するとより好適である。外筒31と底部32とを同一金属で形成し、延在壁313の板厚より延在底板321の板厚を薄く形成することにより、真空排気を行う際に、延在底板321が外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板321が延在壁313に面接触するように変形する動作をよりスムーズに行わせることが可能となる。
【0027】
延在壁313の外側に重ねられた延在底板321の先端縁は、延在壁313の延びる方向の中間位置で延在壁313に隅肉溶接部5で接合されている。また、延在底板321の先端縁の近傍には真空排気口6が設けられ、真空排気口6は底部32の周方向の一部に局所的に配置されており、第1実施形態では、隅肉溶接部5を構成する弧状溶接部51の切欠き61で真空排気口6が構成されている。
【0028】
隅肉溶接部5は、真空排気口6を構成する切欠き61を有する弧状溶接部51と、切欠き61を閉塞するように局所的に形成される封止溶接部52とから構成され、封止溶接部52により、真空排気口6である切欠き61が封止されている。
【0029】
第1実施形態の真空断熱容器1を製造する際には、下方に向かって内側に傾斜して延びる延在壁313が下部に周設された外筒31と、上方に向かって外側に傾斜して延びる延在底板321が周設された底部32とを用い、外筒31の延在壁313の下部に底板32の延在底板321の先端部を外側から重ねて配置し、外容器3のワークW1を構成する(図4(a)参照)。
【0030】
更に、図4(b)に示すように、延在壁313の延びる方向の中間位置で延在底板321の先端縁を延在壁313に真空排気口6を構成する切欠き61を残すように弧状に隅肉溶接して弧状溶接部51を形成すると共に、外筒31の内側に配置した有底筒状で金属製の内容器2を外筒31に口側で溶接部7によって周状に溶接し、内容器2と外筒31と底部32とが接合されたワークW2を形成する。
【0031】
ワークW2は、図5に示す真空槽100の内部に配置する。真空槽100は、真空ポンプ101と、ヒーター102と、レーザー光を透過するガラス窓103と、ワークW2が載置される載置台104を備え、ガラス窓103の外側にレーザー溶接機105が設置される。ワークW2は、ガラス窓103を介して真空槽100の内部にレーザー光を照射するレーザー溶接機102のレーザー溶接位置に、切欠き61が配置されるようにして載置台104上に載置され、図示例では底側を上向きにして載置台104上に載置されている。
【0032】
そして、真空槽100の内部をヒーター102で加熱しながら真空ポンプ101によって減圧状態にし、ワークW2の外筒31及び底部32と内容器2との間の対象空間を、底部31の延在底板321と外筒31の延在壁313との間と切欠き61の経路によって真空排気し、ワークW3を形成する(図6参照)。この際、底部32の延在底板321は外筒31の延在壁313から離れるように外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し(図6の太点線矢印参照)、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板321が延在壁313に面接触するように変形する(図6の太線矢印参照)。
【0033】
その後、真空槽100の内部において、レーザー溶接機105により、ワークW3の切欠き61を閉塞するように局所的に隅肉溶接して封止溶接部52を形成して、外筒31の底側を底部32で閉塞して有底筒状で金属製の外容器3を構成すると共に、内容器2と外容器3との間に真空断熱層4を設け、第1実施形態の真空断熱容器1を得る(図2参照)。
【0034】
第1実施形態によれば、真空排気口6を底部32の延在底板321の先端縁の近傍で且つ底部32の周方向の一部に局所的に配置することにより、真空度が安定した真空槽100内でワークW3を回転させずに真空排気口6を封止することが可能となり、真空断熱容器1の真空断熱層4に求められる真空度を確実に得ることができる。また、真空槽100内で内容器2と外容器3との間となる対象空間から真空排気を行う際に、真空排気口6の周辺部位である底部32の延在底板321が外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板321が延在壁313に面接触するように変形する動作で真空排気口6から真空排気を行うことができ、真空排気口6の周辺にスムーズな真空排気と真空排気後の封止補助を両立する逆止弁構造を構築することができる。この逆止弁構造により、真空断熱層4の所要真空度を長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器1の長寿命化、耐久性向上を図ることができる。
【0035】
また、外筒31の延在壁313の下部に底部32の延在底板321の上端部が面接触するように底部32の延在底板321を外筒31の延在壁313の外側に重ね、延在壁313の延びる方向の中間位置で延在底板321の先端縁を延在壁313に隅肉溶接部5で接合する構成により、底部32の延在底板321や外筒31の延在壁313の寸法誤差の影響を吸収して接合することができ、外容器3を構成する外筒31と外筒31の底側を閉塞する底部32の寸法許容度を高め、歩留まりを向上することができる。
【0036】
また、外筒31と底部32とを同一金属で形成し、外筒31の延在壁313の板厚より底部32の延在底板321の板厚を薄く形成することにより、真空槽100内で内容器2と外容器3との間となる対象空間から真空排気を行う際に、底部32の延在底板321を外側に膨らませて対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板321が延在壁313に面接触するように変形する動作をよりスムーズに行わせることができる。
【0037】
また、下方に凸で山形の突条322を底部32の傾斜底板で構成される延在底板321の下端部に連なって形成することにより、底部32の延在底板321の剛性を高め、真空槽100で真空排気を行う際に延在底板321が延びる方向の中間箇所に座屈が発生することを確実に防止することができる。
【0038】
また、隅肉溶接部5を、真空排気口6を構成する切欠き61を有する弧状溶接部51と、切欠き61を閉塞するように局所的に形成される封止溶接部52とから構成することにより、真空槽100内でワークW3を回転させずに、切欠き61を閉塞する局所的な溶接をするだけで真空断熱層4を封止することができ、真空断熱容器1の真空断熱層4に求められる真空度を確実に得ることができる。また、ワークW3の局所的な真空排気口6に封止材を設置する工程が不要となり、製造工程を効率化することができる。
【0039】
〔第2実施形態の真空断熱容器及びその製造方法〕
本発明による第2実施形態の真空断熱容器1aは、図7図9に示すように、有底筒状でステンレス等の金属製の内容器2aと有底筒状でステンレス等の金属製の外容器3aを有し、内容器2aと外容器3aとの間に空間が設けられ、この空間が真空断熱層4aになっている。真空断熱層4aは、内容器2aと外容器3aとの間の空間を真空状態或いは減圧状態の空洞にした真空断熱層になっているが、内容器2aと外容器3aとの間の空間に断熱材が充填されると共に当該空間を真空状態或いは減圧状態にした真空断熱層としても良好である。尚、図示例の真空断熱容器1aも第1実施形態と同様、缶ホルダーである。
【0040】
内容器2aは、第1実施形態における内容器2と同一であり、周側壁21aと底部22aとから構成され、全体が薄い金属板材で形成されている。底部22aの略中央には内容器2aの口側に向かってドーム状に突出するように形成された凹部221aが設けられている。
【0041】
外容器3aは、上下に貫通する略円筒状の外筒31aと、外筒31aの底側を閉塞する底部32aとから構成されており、外筒31aと底部32aのそれぞれは全体が薄い金属板材で一体形成されている。外筒31aは第1実施形態における外筒31と同一であり、外筒31aの折曲部311aの先端部が内容器2aの周側壁21aの口側の先端部の外側に重なるように配置され、周側壁21aの口側の先端縁と折曲部311aの先端縁とが溶接部7aで周状に溶接されている。
【0042】
外筒31aの下部には、内側に向かって湾曲する湾曲部312aが周設され、湾曲部312aの下側に延在壁313aが設けられている。延在壁313aは、内側に延びるように周設されており、本実施形態における延在壁313aは、下方に向かって内側に傾斜して延びるように周設された傾斜壁になっている。延在壁313aの鉛直方向に対する角度は第1実施形態における傾斜壁313の鉛直方向に対する角度と同様に設定すると良く、又、延在壁313aの長さは、後述する真空排気穴62aの直径分だけ第1実施形態よりも長めに形成すると良く、好適には4.0mm以上、より好適には6.0mm以上とすると良い。
【0043】
底部32aは、底面視で略円盤状であり、外側に延びる延在底板321aが形成され、本実施形態における延在底板321aは、上方に向かって外側に傾斜して延びるように周設された傾斜底板になっている。真空断熱層4aが設けられた状態における延在底板321aは、外筒31aの延在壁313aに倣う角度で設けられ、延長底板321aの延在壁313aに対する傾斜角度は、好適には0度~7度、より好適には0度~3度とすると良い。延在底板321aの上端部は延在壁313aの下部に面接触するように外側から重ねて設けられる。延在底板321aの上端部と延在壁313aとの重なり領域は、真空排気穴62aの全体に傾斜壁313aが重なるように設定すれば適宜であるが、重なり領域における延在壁313aの延びる方向における重なり長さは、例えば延在壁313aの長さの1/4~3/4程度、より好適には1/3~2/3程度とすると好適である。
【0044】
底部32aの傾斜底板で構成される延在底板321aの下端部には、下方に凸で山形の突条322aが連なって形成され、突条322aは真空断熱容器1aの底面視で周状に形成されている。突条322aで囲まれた領域は上方に凹で皿状にへこんだ凹部323aになっている。また、凹部323aと凹部221aとの間の真空断熱層4aにはゲッター9aが設けられている。
【0045】
外筒31aと底部32aは、異種の金属材で形成することも可能であるが、同一金属材で形成すると好適であり、更に、外筒31aと底部32aとを同一金属で形成する場合、外筒31aの延在壁313aの板厚より底部32aの延在底板321aの板厚を薄く形成するとより好適である。外筒31aと底部32aとを同一金属で形成し、延在壁313aの板厚より延在底板321aの板厚を薄く形成することにより、真空排気を行う際に、延在底板321aが外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板321aが延在壁313aに面接触するように変形する動作をよりスムーズに行わせることが可能となる。
【0046】
延在壁313aの外側に重ねられた延在底板321aの先端縁は、延在壁313aの延びる方向の中間位置で延在壁313aに隅肉溶接部5aで接合されている。第2実施形態における隅肉溶接部5aは、真空断熱容器1aに底面視で周状に一連で形成されている。
【0047】
延在底板321aの先端縁の近傍には真空排気口6aが設けられ、真空排気口6aは底部32aの周方向の一部に局所的に配置されている。第2実施形態では、延在壁313aと延在底板321aの重なり領域において隅肉溶接部5aより内側位置で延在底板321aに貫通する真空排気穴62aが真空排気口6aとして設けられている。真空排気穴62aは封止材で封止され、第2実施形態では、加熱状態の真空排気の際に溶融する金属ろう材のような導電性金属材等の導電性封止材8aで封止されている。
【0048】
第2実施形態の真空断熱容器1aを製造する際には、下方に向かって内側に傾斜して延びる延在壁313aが下部に周設された外筒31aと、上方に向かって外側に傾斜して延びる延在底板321aが周設された底部32aとを用い、外筒31aの延在壁313aの下部に底板32aの延在底板321aの先端部を外側から重ねて配置し、外容器3aのワークW4を構成する(図10(a)参照)。
【0049】
更に、図10(b)に示すように、延在壁313aの延びる方向の中間位置で延在底板321aの先端縁を延在壁313aに全周に亘って溶接して隅肉溶接部5aを形成し、延在壁313aと延在底板321aの重なり領域において隅肉溶接部5aより底側位置で延在底板321aに貫通している真空排気穴62aに導電性封止材8aを設けると共に、外筒31aの内側に配置した有底筒状で金属製の内容器2aと外筒31aとを口側で溶接部7aによって周状に溶接し、内容器2aと外筒31aと底部32aとが接合されたワークW5を形成する(図11参照)。
【0050】
ワークW5は、図11に示す真空槽100aの内部に配置する。真空槽100aは、真空ポンプ101aと、ヒーター102aと、ワークW5が載置される載置台104aを備え、ワークW5は例えば底側を上向きにして載置台104a上に載置される。
【0051】
そして、真空槽100aの内部をヒーター102aで加熱しながら真空ポンプ101aによって減圧状態にし、ワークW5の外筒31a及び底部32aと内容器2aとの間の対象空間を、底部31aの延在底板321aと外筒31aの延在壁313aとの間と真空排気穴62aの経路によって真空排気する(図12参照)。この際、底部32aの延在底板321aは外筒31aの延在壁313aから離れるように外側に膨らんで対象空間からの真空排気を促進し(図12の太点線矢印参照)、対象空間からの真空排気の進行に伴って延在底板321aが延在壁313aに面接触するように変形する(図12の太線矢印参照)。
【0052】
ヒーター102aで加熱しつつ真空排気を進行することにより、真空排気穴62aに設けられた導電性封止材8aが溶融し、真空排気穴62aに流れ込んで充填される。その後、ヒーター102aの加熱と真空排気の停止により、真空排気穴62aが凝固した導電性封止材8aによって封止され、有底筒状で金属製の外容器3aが構成されると共に内容器2aと外容器3aとの間に真空断熱層4aを設けられ、第2実施形態の真空断熱容器1aが得られる(図8参照)。
【0053】
第2実施形態によれば、延在底板321aの先端縁と延在壁313aとを全周に亘って隅肉溶接し、真空排気穴62aに導電性封止材8aを設けたワークW6を真空槽100a内に設置するだけで、真空排気穴62aからの確実な排気と確実な封止を行うことができ、真空断熱容器1aの真空断熱層4aに求められる真空度を確実に得ることができる。また、一度の隅肉溶接工程で外容器3aを構成する外筒31aと底部32aを一体化することができ、製造工程を効率化することができる。
【0054】
また、金属製の底部32aの真空排気穴62aを導電性金属材等の導電性封止材8aで封止することにより、封止部分を目立ちにくくし、真空断熱容器1aの外観上の一体感を高めることができる。また、真空断熱容器1aの外形が完成した後に陽極酸化処理による表面処理を行うことが可能になる。また、真空排気穴をガラス封止する場合と同様の真空槽100aを用い、真空槽100aに設置されているヒーター102aの加熱能力を高める程度で真空断熱容器1aを製造することができ、製造コストの増加を抑制しつつ長寿命、高耐久性の真空断熱容器1aを製造することができる。
【0055】
また、第2実施形態は、第1実施形態と対応する構成により第1実施形態と対応する効果を得ることができる。
【0056】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態及びその変形例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0057】
例えば本発明の真空断熱容器の種類は、上記第1、第2実施形態の缶ホルダーに限定されず適宜の真空断熱容器とすることが可能であり、例えばマグカップ、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、或いは卓上魔法瓶等の真空断熱容器としても好適である。また、本発明の真空断熱容器における有底筒状で金属製の内容器と有底筒状で金属製の外容器との口側の閉塞構造は、上記第1、第2実施形態の閉塞構造に限定されず、適宜である。また、第2実施形態の変形例として、導電性封止材8aに代え、封止材として非導電性の封止材を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば例えば缶ホルダー、マグカップ、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、卓上魔法瓶等の真空断熱容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1、1a…真空断熱容器 2、2a…内容器 21、21a…周側壁 22、22a…底部 221、221a…凹部 3、3a…外容器 31、31a…外筒 311、311a…折曲部 312、312a…湾曲部 313、313a…延在壁 32、32a…底部 321、321a…延在底板 322、322a…突条 323、323a…凹部 4、4a…真空断熱層 5、5a…隅肉溶接部 51…弧状溶接部 52…封止溶接部 6、6a…真空排気口 61…切欠き 62a…真空排気穴 7、7a…溶接部 8a…導電性封止材 9、9a…ゲッター 100、100a…真空槽 101、101a…真空ポンプ 102、102a…ヒーター、103…ガラス窓 104、104a…載置台 105…レーザー溶接機 W1、W2、W3、W4、W5…ワーク
【要約】
【課題】真空断熱層の所要真空度を確実に得、長期に亘って安定して維持し、真空断熱容器の長寿命化、耐久性向上を図る。
【解決手段】有底筒状で金属製の内容器2と有底筒状で金属製の外容器3との間に真空断熱層4が設けられ、外容器3が外筒31と外筒31の底側を閉塞する底部32とから構成され、外筒31の下部に、内側に延びる延在壁313が周設され、底部32に、外側に延びる延在底板321が周設され、延在壁313の下部に延在底板321の先端部が面接触するように外側から重ねられ、延在壁313の延びる方向の中間位置で延在底板321の先端縁が延在壁313に隅肉溶接部5で接合され、延在底板321の先端縁の近傍に設けられ且つ底部32の周方向の一部に局所的に配置されている真空排気口6が封止されている真空断熱容器1。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12