(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 17/12 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
F04D17/12
(21)【出願番号】P 2024037523
(22)【出願日】2024-03-11
【審査請求日】2024-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 輝明
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519864(JP,A)
【文献】特開昭54-117916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が40以上である対象ガスを処理する多段式の遠心圧縮機であって、
前記対象ガスを段階的に昇圧する5段以上の圧縮部と、
動力源により駆動されるブルギアと、
前記ブルギアと直接的又はアイドラギアを介して噛み合い、前記5段以上の圧縮部に動力を伝達する3本以上のピニオンシャフトと、
を備え、
前記5段以上の圧縮部がそれぞれ、
インペラと、
前記インペラを通過したガスを回収するスクロールと、
を備え、
前記5段以上の圧縮部のうちの最終段の圧縮部を駆動するピニオンシャフトの外径は、前記5段以上の圧縮部のうちの1段目の圧縮部を駆動するピニオンシャフトの外径よりも小さく、
前記最終段の圧縮部のインペラの外径は、前記1段目の圧縮部のインペラの外径よりも小さく、
前記1段目の圧縮部において、前記インペラの周速マッハ数は1以上1.5以下であり、かつ、比速度は400以上500以下であって、前記1段目の圧縮部における前記周速マッハ数および前記比速度は、前記5段以上の圧縮部のうちの前記周速マッハ数および前記比速度の中で最も大きく、
前記最終段の圧縮部において、前記インペラの周速マッハ数は0.5以上1未満であり、かつ、比速度は150以上350以下である、遠心圧縮機。
【請求項2】
前記最終段の圧縮部における前記周速マッハ数および前記比速度は、前記5段以上の圧縮部のうちの前記周速マッハ数および前記比速度の中で最も小さい、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記5段以上の圧縮部のうちの2段目の圧縮部は、前記1段目の圧縮部と共通のピニオンシャフトに接続されており、
前記2段目の圧縮部において、
前記インペラの周速マッハ数は、前記1段目の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数と前記最終段の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数との間の値であり、かつ、
比速度は、前記1段目の圧縮部の比速度と前記最終段の圧縮部の比速度との間の値である、請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記5段以上の圧縮部のうちの最終段の1つ前の圧縮部は、前記最終段の圧縮部と共通のピニオンシャフトに接続されており、
前記最終段の1つ前の前記圧縮部において、
前記インペラの周速マッハ数は、前記2段目の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数と前記最終段の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数との間の値であり、かつ、
比速度は、前記2段目の圧縮部の比速度と前記最終段の圧縮部の比速度との間の値である、請求項3に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
分子量が40未満の対象ガスを吸入する前段圧縮部をさらに備え、
外部機器によって乾燥され、分子量が40以上となった前記対象ガスを前記1段目の圧縮部が吸入する、請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギア内蔵型の多段式遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素が地球温暖化への影響が大きいと考えられる。この地球温暖化問題に対する有効な対策として、二酸化炭素回収等の技術が注目されている。ところで、二酸化炭素を圧縮するため圧縮機というわけではないが、特許文献1に開示されるようにギア内蔵型の多段式遠心圧縮機が知られている。多段式遠心圧縮機は、ガスを段階的に昇圧できるように複数の圧縮部を備える。各圧縮部はインペラを有しており、各インペラは、対応のピニオンシャフトを介して共通のブルギアによって駆動される。なお、ピニオンシャフトにはピニオンギアが設けられており、このピニオンギアがブルギアに噛み合うにピニオンシャフトが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多段式遠心圧縮機では、ガスが順次昇圧されていくため後段側の圧縮部ほどガスの体積流量が小さくなる。そのため、後段側の圧縮部ではインペラが相対的に小型化される。これに伴い、当該インペラを駆動するピニオンシャフト(ピニオンギア)も相対的に小径となるため、ブルギアと噛み合うピニオンギアのうち、後段側の圧縮部におけるピニオンギアへの負担が大きくなりやすい。特に、CO2のような高分子量のガスを処理する場合には、低分子量のガスを処理する場合と比べて処理負荷が増大しやすい。
【0005】
しかし、特許文献1では、最適化問題を解く際の繰り返し評価回数を削減することによって設計期間の短縮を図ることが示されるのみで、圧縮部間の負荷分散については考慮されていない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、多段式の遠心圧縮機において後段側圧縮部への負担軽減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る遠心圧縮機は、分子量が40以上である対象ガスを処理する多段式の遠心圧縮機であって、前記対象ガスを段階的に昇圧する5段以上の圧縮部と、動力源により駆動されるブルギアと、前記ブルギアと直接的又はアイドラギアを介して噛み合い、前記5段以上の圧縮部に動力を伝達する3本以上のピニオンシャフトと、を備える。前記5段以上の圧縮部がそれぞれ、インペラと、前記インペラを通過したガスを回収するスクロールと、を備える。前記5段以上の圧縮部のうちの最終段の圧縮部を駆動するピニオンシャフトの外径は、前記5段以上の圧縮部のうちの1段目の圧縮部を駆動するピニオンシャフトの外径よりも小さく、前記最終段の圧縮部のインペラの外径は、前記1段目の圧縮部のインペラの外径よりも小さい。前記1段目の圧縮部において、前記インペラの周速マッハ数は1以上1.5以下であり、かつ、比速度は400以上500以下であって、前記1段目の圧縮部における前記周速マッハ数および前記比速度は、前記5段以上の圧縮部のうちの前記周速マッハ数および前記比速度の中で最も大きい。前記最終段の圧縮部において、前記インペラの周速マッハ数は0.5以上1未満であり、かつ、比速度は150以上350以下である。
【0008】
前記遠心圧縮機では、1段目の圧縮部の周速マッハ数と比速度を大きくすることで1段目の仕事量を確保することができる。
【0009】
前記最終段の圧縮部における前記周速マッハ数および前記比速度は、前記5段以上の圧縮部のうちの前記周速マッハ数および前記比速度の中で最も小さくてもよい。この態様では、最終段の圧縮部の周速マッハ数及び比速度を最も小さくすることで最終段の圧縮部の負荷を軽減することができる。
【0010】
前記遠心圧縮機において、前記5段以上の圧縮部のうちの2段目の圧縮部は、前記1段目の圧縮部と共通のピニオンシャフトに接続されていてもよい。この場合、前記2段目の圧縮部において、前記インペラの周速マッハ数は、前記1段目の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数と前記最終段の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数との間の値であり、かつ、比速度は、前記1段目の圧縮部の比速度と前記最終段の圧縮部の比速度との間の値であってもよい。この態様では、1段目の圧縮部よりも2段目の圧縮部での負荷の増大を防止できる。
【0011】
前記5段以上の圧縮部のうちの最終段の1つ前の圧縮部は、前記最終段の圧縮部と共通のピニオンシャフトに接続されていてもよい。この場合、前記最終段の1つ前の前記圧縮部において、前記インペラの周速マッハ数は、前記2段目の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数と前記最終段の圧縮部における前記インペラの周速マッハ数との間の値であり、かつ、比速度は、前記2段目の圧縮部の比速度と前記最終段の圧縮部の比速度との間の値であってもよい。
【0012】
後段になるに従って圧力が高くなるためガス密度が増大する。最終段の1つ前の圧縮部において、比速度が大きいインペラを採用しようとすると、ブレードの径方向高さが大きくなるためブレードにかかる応力が大きくなる。これに対して、比速度を小さくすることによって、ブレードの径方向高さを抑え、応力を抑制することができる。
【0013】
前記遠心圧縮機は、分子量が40未満の対象ガスを吸入する前段圧縮部をさらに備えてもよい。この場合、外部機器によって乾燥され、分子量が40以上となった前記対象ガスを前記1段目の圧縮部が吸入してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、多段式の遠心圧縮機において後段側圧縮部への負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る多段式の遠心圧縮機のうち第1段~第4段の圧縮部を含む部分を概略的に示す図である。
【
図2】前記遠心圧縮機のうち第5段~第6段の圧縮部を含む部分を概略的に示す図である。
【
図3】前記遠心圧縮機を部分的に示す斜視図である。
【
図4】その他の実施形態に係る遠心圧縮機のうち第5段~第7段の圧縮部を含む部分を概略的に示す図である。
【
図5】その他の実施形態に係る遠心圧縮機のうち第1段~第3段の圧縮部を含む部分を概略的に示す図である。
【
図6】その他の実施形態に係る遠心圧縮機の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
多段式の遠心圧縮機は、分子量が40以上であるガスを処理対象とする圧縮機である。処理対象のガス(対象ガス)として、二酸化炭素、プロピレン等を例示できる。なお、二酸化炭素を主成分とし且つ水分を含んだガスの場合でも、二酸化炭素が90%程度であれば、分子量比率換算でガスの分子量が40程度になることがあるため、そのようなガスも処理対象となる。
【0018】
図1及び
図2に示すように、遠心圧縮機10は、6段の圧縮部11~16と、動力源であるモータ18により駆動されるブルギア19と、3本のピニオンシャフト21~23と、を備えている。
【0019】
ピニオンシャフト21~23は、ブルギア19によって駆動されるピニオン31~33をそれぞれ有する。第1のピニオンシャフト21は、ブルギア19の動力を第1段目の圧縮部である第1段圧縮部11と第2段目の圧縮部である第2段圧縮部12とに伝達する。第2のピニオンシャフト22は、ブルギア19の動力を第3段目の圧縮部である第3段圧縮部13と第4段目の圧縮部である第4段圧縮部14とに伝達する。第3のピニオンシャフト23は、ブルギア19の動力を第5段目の圧縮部である第5段圧縮部15と第6段目の圧縮部である第6段圧縮部16とに伝達する。
【0020】
ピニオン31~33は、それぞれピニオンシャフト21~23の中間部に設けられており、各ピニオン31~33はブルギア19に噛み合っている。ピニオン31~33は、ピニオン31~33の歯数とブルギア19の歯数との比に応じて、ブルギア19の回転数から増速された回転数で駆動される。なお、ピニオン31~33は、ブルギア19と直接的に噛み合ってもよいが、図略のアイドラギアを介してブルギア19と噛み合ってもよい。
【0021】
ブルギア19は、ギアケース35(
図3参照)内に配置されており、ブルギア19の軸19aは、カップリング37を介してモータ18の軸18aに接続されている。ブルギア19の軸19aは、ギアケース35によって回転可能に支持されている。また、第1~第3のピニオンシャフト21~23もギアケース35によって回転可能に支持されている。
【0022】
各圧縮部11~16は、ピニオンシャフト21~23の端部に固定されたインペラ11a~16aと、インペラ11a~16aによって径方向に向きを変えた対象ガスを減速及び昇圧させるためのディフューザベーン11b~16bと、ディフューザベーン11b~16bを通過した対象ガスを回収するスクロール12c、13cと、を備えている。なお、第2段圧縮部12のスクロール12c及び第3段圧縮部13のスクロール13cが
図3において図示されているが、その他の段の圧縮部のスクロールについては、図示を省略している。
【0023】
図1に示すように、第1段圧縮部11のインペラ11aは、第1のピニオンシャフト21の一端部に固定され、第2段圧縮部12のインペラ12aは、第1のピニオンシャフト21の他端部に固定されている。第3段圧縮部13のインペラ13aは、第2のピニオンシャフト22の一端部に固定され、第4段圧縮部14のインペラ14aは、第2のピニオンシャフト22の他端部に固定されている。
図2に示すように、第5段圧縮部15のインペラ15aは、第3のピニオンシャフト23の一端部に固定され、第6段圧縮部16のインペラ16aは、第3のピニオンシャフト23の他端部に固定されている。
【0024】
ディフューザベーン11b~16bは、ギアケース35に固定されている。ディフューザベーン11b~16bは、対応するインペラ11a~16aと同心状で、かつ対応するインペラ11a~16aの背面側に配置されている。ディフューザベーン11b~16bは、対応するインペラ11a~16aの外径よりも大きな外径を有しており、対応するインペラ11a~16aの外周から径方向の外側に広がっている。
【0025】
ディフューザベーン11b~16bは、対応するインペラ11a~16aによって付与された運動エネルギーの一部が圧力エネルギーに変換されるように、周方向に間隔をおいて並ぶ数の翼部を有する。
【0026】
ディフューザベーン11b~16bには、
図3に示すように、インペラ11a~16a及びディフューザベーン11b~16bとの間に空間を形成するケーシング39が結合されている。このケーシング39には、ガスの吸入口39aが形成されている。ケーシング39は、インペラ11a~16a及びディフューザベーン11b~16bとの間に、吸入口39aを通して吸入された対象ガスをインペラ11a~16aによって加速させる空間(加速空間)と、加速した対象ガスをディフューザベーン11b~16bによって昇圧させる空間(昇圧空間)と、を形成している。なお、
図3においては、第1段圧縮部11~第3段圧縮部13のケーシング39のみ図示しており、その他の圧縮部のケーシングの図示を省略している。
【0027】
吸入口39aから吸入された対象ガスは、インペラ11a~16aによって運動エネルギーを与えられて加速空間内を周方向に流れる。この対象ガスは、周方向に流れながら径方向の外側に流れ、昇圧空間内においてディフューザベーン11b~16bによって昇圧する。
【0028】
スクロール12c、13cは、ディフューザベーン11b~16bに沿って昇圧空間内を周方向に流れる対象ガスを回収して渦巻き方向に流す流路を形成するものであり、ケーシング39に接続されている。
【0029】
第1段圧縮部11のケーシング39の吸入口39aは、対象ガスの供給源から流れてきた対象ガスを吸入する。第1段圧縮部11のスクロールは、第2段圧縮部12のケーシング39の吸入口39aに第1接続管41(
図1参照)を通して接続されている。第2段圧縮部12のスクロール12cは、第3段圧縮部13のケーシング39の吸入口に第2接続管42(
図1参照)を通して接続されている。第3段圧縮部13のスクロール13cは、第4段圧縮部14のケーシングの吸入口に第3接続管43(
図1参照)を通して接続されている。第4段圧縮部14のスクロールは、第5段圧縮部15のケーシングの吸入口に第4接続管44(
図2参照)を通して接続されている。第5段圧縮部15のスクロールは、第6段圧縮部16のケーシングの吸入口に第5接続管45(
図2参照)を通して接続されている。第6段圧縮部16のスクロールは、対象ガスの供給先に繋がる配管46(
図2参照)に接続されている。
【0030】
したがって、供給源から送られてきた対象ガスは、第1段圧縮部11のケーシング39の吸入口39aを通して第1段圧縮部11に吸入される。第1段圧縮部11では、対象ガスは、ブルギア19によって駆動されるインペラ11aによって運動エネルギーが与えられて加速され、圧縮しながら昇圧する。この昇圧した対象ガスは、第1接続管41を通して第2段圧縮部12に導入されて、さらに昇圧する。この対象ガスは、さらに、第3段圧縮部13~第6段圧縮部16において順次昇圧し、第6段圧縮部16から吐出された対象ガスは、配管46を通して供給先に送られる。
【0031】
ここで、各圧縮部11~16間におけるインペラ11a~16aの諸元の関係、及び各圧縮部11~16間におけるピニオンシャフト21~23の諸元の関係について説明する。
【0032】
各圧縮部11~16のインペラ11a~16aは、後段の圧縮部12~16ほどインペラ11a~16aの外径が小さくなるように設定されている。すなわち、第1段圧縮部11のインペラ11aよりも、第2段圧縮部12のインペラ12aの方が外径が小さく、第2段圧縮部12のインペラ12aよりも第3段圧縮部13のインペラ13aの方が外径が小さい。以下、第4段~第6段圧縮部14~16についても、同様の関係となっている。なお、
図1及び
図2においては、便宜上、インペラ11a~16aはそのような関係が明確になるようには描かれていない。
【0033】
なお、6つのインペラ11a~16aのうち、第1段圧縮部11のインペラ11aの外径が最も大きく、かつ、第6段圧縮部16(最終段の圧縮部)のインペラ16aの外径が最も小さければ、第1段~第6段の全てにおいて、上記のような関係になっている必要はない。例えば、連続する2段の圧縮部11~16間において、インペラ11a~16aの外径が同じになっている圧縮段が存在していてもよい。例えば、第3段圧縮部13のインペラ13aの外径と第4段圧縮部14のインペラ14aの外径とが、同じであってもよい。
【0034】
第1段圧縮部11のインペラ11aの周速マッハ数が1以上1.5以下になるように、第1のピニオンシャフト21の回転数と、インペラ11aの外径と、が設定されている。インペラ11aの周速マッハ数は、対象ガスの音速に対する、インペラ11aの周速の比(無次元量)である。なお、インペラ11aの周速は、第1のピニオンシャフト21の回転数とインペラ11aの外径とに基づいて決められる。第1のピニオンシャフト21の回転数は、ブルギア19の回転数と、ブルギア19及びピニオン31間のギア比と、を設定することによって設定できる。
【0035】
第6段圧縮部(最終段の圧縮部)16のインペラ16aの周速マッハ数が0.5以上1未満になるように、第3のピニオンシャフト23の回転数と、インペラ16aの外径と、が設定されている。インペラ16aの周速マッハ数は、対象ガスの音速に対する、インペラ16aの周速の比(無次元量)である。すなわち、第6段圧縮部(最終段の圧縮部)16では、インペラ16aの周速が対象ガスの音速未満になるように設定されている。このため、最も高圧になる最終段の圧縮部において、対象ガスのチョーク流れが生ずることが抑制されるため、最終段の圧縮部に負荷がかかり過ぎないようにすることができる。
【0036】
なお、インペラ16aの周速は、第3のピニオンシャフト23の回転数とインペラ16aの外径とに基づいて決められる。第3のピニオンシャフト23の回転数は、ブルギア19の回転数と、ブルギア19及びピニオン33間のギア比と、を設定することによって設定できる。
【0037】
第2段圧縮部12のインペラ12aは、第1段圧縮部11のインペラ11aの周速マッハ数と、第6段圧縮部16のインペラ16aの周速マッハ数との間の値になるように設定されている。本実施形態では、第1段圧縮部11と第2段圧縮部12とが、共通のピニオンシャフトである第1のピニオンシャフト21に接続されているため、第1段圧縮部11のインペラ11aと第2段圧縮部12のインペラ12aとは同じ回転数となる。したがって、第2段圧縮部12のインペラ12aの外径は、第1段圧縮部11のインペラ11aの外径よりも小さい。これにより、第2段圧縮部12のインペラ12aの周速マッハ数は、第1段圧縮部11のインペラ11aの周速マッハ数よりも小さくなっている。
【0038】
第5段圧縮部15のインペラ15aは、第2段圧縮部12のインペラ12aの周速マッハ数と、第6段圧縮部16のインペラ16aの周速マッハ数との間の値になるように設定されている。本実施形態では、第5段圧縮部15と第6段圧縮部16とが、共通のピニオンシャフトである第3のピニオンシャフト23に接続されているため、第5段圧縮部15のインペラ15aと第6段圧縮部16のインペラ16aとは同じ回転数となる。したがって、第5段圧縮部15のインペラ15aの外径は、第6段圧縮部16のインペラ16aの外径よりも大きい。これにより、第5段圧縮部15のインペラ15aの周速マッハ数は、第6段圧縮部16のインペラ16aの周速マッハ数よりも大きくなっている。
【0039】
第1段圧縮部11は、比速度が400以上450以下になるように設定されており、第6段圧縮部16は、比速度が200以上300以下になるように設定されている。また、第2段圧縮部12は、比速度が第1段圧縮部11の比速度と第6段圧縮部16の比速度の間の値になるように設定されており、第5段圧縮部15は、比速度が第2段圧縮部12の比速度と第6段圧縮部16の比速度の間の値になるように設定されている。
【0040】
比速度は、流体機械としての相似性を示す1つの指標であって、単位流量のガスを揚程分くみ上げるために必要な回転速度を意味するものであり、次式(1)で表される。すなわち、比速度は無次元量である。
【0041】
【0042】
ここでns:比速度(sec-1、m3/sec、m)、n:回転速度(sec-1)、Q:流量(m3/sec)、g:重力加速度(m/sec2)、H:落差又はヘッド(m)である。
【0043】
したがって、単位流量の対象ガスを所定圧力だけ昇圧させるために必要な回転速度としては、第1段圧縮部11、第2段圧縮部12、第5段圧縮部15、第6段圧縮部16の順に小さくなるように設定されている。なお、第1段圧縮部11の比速度と、第2段圧縮部12の比速度とは同じ値に設定されていてもよい。また、第5段圧縮部15の比速度と、第6段圧縮部16の比速度とは同じ値に設定されていてもよい。
【0044】
各ピニオンシャフト21~23は、後段の圧縮部11~16が接続されたピニオンシャフト21~23ほど、外径が小さくなるように設定されている。すなわち、第1のピニオンシャフト21の外径よりも、第2のピニオンシャフト22の外径の方が小さく、また、第2のピニオンシャフト22の外径よりも、第3のピニオンシャフト23の外径の方が小さい。したがって、第6段圧縮部(最終段の圧縮部)16を駆動するピニオンシャフト23の外径は、第1段圧縮部11を駆動するピニオンシャフト21の外径よりも小さい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1段圧縮部11の周速マッハ数と比速度が他の圧縮部のそれよりも大きいため、第1段圧縮部11での仕事量を確保できる。さらに、第6段圧縮部(最終段の圧縮部)16での周速マッハ数及び比速度が最も小さいため、対象ガスが最も高圧になる第6段圧縮部16での負荷を軽減することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第2段圧縮部12における周速マッハ数及び比速度が、第1段圧縮部11における周速マッハ数及び比速度と第6段圧縮部16における周速マッハ数及び比速度との間の値に設定されている。したがって、第1段圧縮部11よりも第2段圧縮部12での負荷の増大を防止できる。
【0047】
多段の遠心圧縮機10では、後段になるに従ってガスの圧力が高くなるため、ガス密度が増大する。このため、最終段の1つ前の圧縮部(第5段圧縮部15)において、比速度が大きいインペラを採用しようとすると、インペラに設けられたブレードの吸込側端部における回転軸に垂直な方向における高さ(以下、インペラのブレードにおける「径方向高さ」という。径方向高さは、例えば
図7に示す高さr1である。すなわち、ブレード50の径方向高さr1は、ブレード50の吸込側端部におけるハブ外面51からの回転軸52に垂直な方向の高さである。)が大きくなるため、ブレードに生ずる応力が大きくなってしまう。これに対して、第5段圧縮部15において、第2段圧縮部12よりも比速度の小さいインペラ15aを採用することにより、ブレードの径方向高さを抑えることができて、ブレードに生ずる応力を抑制することができる。
【0048】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、本実施形態の遠心圧縮機10は、6段の圧縮部を有する圧縮機であるが、6段圧縮機に限られるものではない。遠心圧縮機10は、例えば、少なくとも5段の圧縮部を有していれば、7段の圧縮部や、8段の圧縮部を有する圧縮機であってもよい。
図4は、遠心圧縮機10が7段圧縮機によって構成されている場合の5段目~7段目の圧縮部15~17を示しており、
図2の構成に加え、第4のピニオンシャフト24が追加されている。第4のピニオンシャフト24には、ピニオン34が設けられており、このピニオン34はブルギア19に噛み合っている。なお、ピニオン34は、ブルギア19と直接的に噛み合ってもよいが、図略のアイドラギアを介してブルギア19と噛み合ってもよい。また、第4のピニオンシャフト24の他端部に、第8段圧縮部(図示省略)が設けられてもよい。
【0049】
最終段の圧縮部である第7段圧縮部17のインペラ17aは、第4のピニオンシャフト24の一端部に固定されている。第7段圧縮部17にもディフューザベーン17bが設けられている。第6段圧縮部16のスクロールは、第7段圧縮部17のケーシングの吸入口に第6接続管47を通して接続されている。第7段圧縮部17のスクロールは、対象ガスの供給先に繋がる配管46に接続されている。
【0050】
第7段圧縮部17のインペラ17aの外径は、第1段圧縮部11のインペラ11aの外径及び第6段圧縮部16のインペラ16aの外径よりも小さい。第7段圧縮部(最終段の圧縮部)17のインペラ17aは、周速マッハ数が0.5以上1未満になるように、第4のピニオンシャフト24の回転数と、インペラ17aの外径と、が設定されている。
【0051】
第2段圧縮部12のインペラ12aは、第1段圧縮部11のインペラ11aの周速マッハ数と、第7段圧縮部17のインペラ17aの周速マッハ数との間の値になるように設定されている。第6段圧縮部16のインペラ16aは、第2段圧縮部12のインペラ12aの周速マッハ数と、第7段圧縮部17のインペラ17aの周速マッハ数との間の値になるように設定されている。第7段圧縮部17は、比速度が200以上300以下になるように設定されている。第6段圧縮部16の比速度は、第2段圧縮部12の比速度と第7段圧縮部17の比速度との間の値になるように設定されている。
【0052】
前記実施形態では、第1のピニオンシャフト21の両端部にそれぞれ圧縮部が設けられた構成であるが、これに限られるものはない。例えば、
図5に示すように、第1のピニオンシャフト21の一端部に第1段圧縮部11が設けられる一方で、第2段圧縮部12は、第1のピニオンシャフト21ではなく、第2のピニオンシャフト22に設けられてもよい。この場合、第3段圧縮部13は第2のピニオンシャフト22における他端部に設けられ、第4段圧縮部14及び第5段圧縮部15は、第3のピニオンシャフト23に設けられることになる。なお、第1のピニオンシャフト21において、一端のみに圧縮部が設けられるのではなく、第2のピニオンシャフト22において、一端のみに圧縮部が設けられる構成でもよく、あるいは、第3のピニオンシャフト23において、一端のみに圧縮部が設けられる構成であってもよい。
【0053】
遠心圧縮機10には、
図6に示すように第1段圧縮部11よりも上流側に前段圧縮部81,82が設けられてもよい。なお、
図6では、2つの前段圧縮部81,82が設けられているが、前段圧縮部81,82の数は2以外の数でもよい。前段圧縮部81,82は、分子量が40未満(例えば25)の対象ガス(gas A)を吸入し、遠心圧縮機10の外部機器9に供給する。対象ガス(gas A)は、外部機器9において乾燥処理されて、分子量が40以上の対象ガス(gas B)となる。分子量が40以上の対象ガス(gas B)は、外部機器9から排出されて、第1段圧縮部11に吸入される。前段圧縮部81,82は、ブルギア19の駆動力によって回転するインペラ81a、82aを有する圧縮部であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 :遠心圧縮機
11 :第1段圧縮部
11a :インペラ
11b :ディフューザベーン
12 :第2段圧縮部
12a :インペラ
12b :ディフューザベーン
12c :スクロール
13 :第3段圧縮部
13a :インペラ
13b :ディフューザベーン
13c :スクロール
14 :第4段圧縮部
14a :インペラ
14b :ディフューザベーン
15 :第5段圧縮部
15a :インペラ
15b :ディフューザベーン
16 :第6段圧縮部
16a :インペラ
16b :ディフューザベーン
17 :第7段圧縮部
17a :インペラ
17b :ディフューザベーン
18 :モータ
19 :ブルギア
21 :第1のピニオンシャフト
22 :第2のピニオンシャフト
23 :第3のピニオンシャフト
24 :第4のピニオンシャフト
31 :ピニオン
32 :ピニオン
33 :ピニオン
34 :ピニオン
【要約】
【課題】後段側圧縮部への負担軽減を図る。
【解決手段】遠心圧縮機10は、5段以上の圧縮部11~14とブルギア19とピニオンシャフト21,22とを備える。最終段の圧縮部を駆動するピニオンシャフトの外径は、第1段圧縮部11を駆動するピニオンシャフト21の外径よりも小さく、最終段の圧縮部のインペラの外径は、第1段圧縮部11のインペラ11aの外径よりも小さい。インペラ11aの周速マッハ数は1以上1.5以下であり、かつ、比速度は400以上450以下である。最終段の圧縮部のインペラの周速マッハ数は0.5以上1未満であり、かつ、比速度は150以上350以下である。
【選択図】
図1