(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】超純水製造方法及び超純水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20250310BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20250310BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20250310BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20250310BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/02 500
B01D61/04
C02F1/42 B
(21)【出願番号】P 2024105194
(22)【出願日】2024-06-28
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯山 真充
(72)【発明者】
【氏名】天谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】小川 龍三
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217463(JP,A)
【文献】特開2023-177791(JP,A)
【文献】特開平04-176400(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0028080(KR,A)
【文献】中国実用新案第205821014(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00- 1/78
B01D 61/00-71/82
C02F 9/00- 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、
前記前処理水中の全有機炭素成分
及びイオン成分
の少なくとも一方を除去して1次純水を製造する1次処理と、
前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、
前記原水のホウ素濃度が、前記超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整
し、
前記調整は、前記海水淡水化処理水のホウ素濃度が前記許容値を上回る場合に、前記前処理の前に前記海水淡水化処理水に含まれるホウ素を除去するホウ素除去処理により行う、超純水製造方法。
【請求項2】
前記ホウ素除去処理は、前記海水淡水化処理水を高圧逆浸透膜により処理することと、前記海水淡水化処理水をアルカリ添加して逆浸透膜により処理することと、前記海水淡水化処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理することと、アニオン交換樹脂により処理することと、電気脱イオン交換装置により処理することのいずれか1つ以上を含む、請求項
1に記載の超純水製造方法。
【請求項3】
前記許容値を前記超純水の使用量に応じて変化させる、請求項
1に記載の超純水製造方法。
【請求項4】
海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理装置と、
前記前処理水中の全有機炭素成分
及びイオン成分
の少なくとも一方を除去して1次純水を製造する1次純水装置と、
前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次純水装置と、
前記海水淡水化処理水のホウ素濃度を測定する計測部と、
前記前処理装置よりも流れ方向上流側に設けられ、前記海水淡水化処理水からホウ素を除去するホウ素処理装置と、を有し、
前記原水のホウ素濃度が、前記超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整する超純水製造装置。
【請求項5】
前記ホウ素処理装置は、高圧逆浸透膜により処理する高圧逆浸透膜装置と、前記海水淡水化処理水にアルカリを添加可能な添加部を有すると共に前記海水淡水化処理水を逆浸透膜により処理する逆浸透膜装置と、前記海水淡水化処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理するホウ素選択性イオン交換樹脂装置と、アニオン交換樹脂装置と、電気脱イオン交換装置のいずれか1つ以上を備える、請求項
4に記載の超純水製造装置。
【請求項6】
海水を少なくとも逆浸透膜により処理することによって前記海水淡水化処理水を得る海水淡水化処理装置を備える、請求項
4に記載の超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超純水製造方法及び超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、工水、その他の水を原水として用い、原水から超純水を製造する超純水製造装置が開示されている。超純水製造装置には、ホウ素吸着樹脂を用いて原水中のホウ素を除去するホウ素吸着樹脂塔が設けられている。
また、例えば、特許文献2には、供給水を高いpHで逆浸透膜ユニットを通すことにより、処理水中のホウ素などを除去する逆浸透処置装置が開示されている。
また、例えば、特許文献3には、ホウ素含有水を高圧型逆浸透膜装置に通水した後、イオン交換装置にて処理するホウ素含有水の処理方法が開示されている。ホウ素含有水としては、河川水、井水、湖沼水等の天然原水、又は半導体製造工程からの回収水やその処理水が用いられている。
上記の特許文献1-3に記載の技術では、原水として、工水、天然原水、又は半導体製造工程からの回収水などが用いられている。
【0003】
また、例えば、特許文献4には、逆浸透膜モジュールユニットを備え、海水を淡水化処理する逆浸透膜分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-89956号公報
【文献】特表2000-511109号公報
【文献】特開2015-20131号公報
【文献】特開2000-51663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、半導体等製造設備に対して超純水を供給する超純水製造装置では、原水として市水、井水などの上水、工業用水などの中水や、半導体等製造で使用した超純水の排水(回収水という場合もある。)などを利用する場合がある。
【0006】
しかしながら、半導体等製造には多くの超純水が使用されるため、超純水の製造に使用される上水の量も多くなっている。上水の供給量には限りがあるため、他の用途で上水が不足しないよう、超純水製造において上水の使用量を少なくするための対策が求められている。また、上記回収水の利用も限界があるため、原水の利用を減らす効果はあるものの、現在の半導体等製造工場の大型化へ十分に対応できるわけではない。
また、現在の環境問題や気候変動問題が生じてきたことにより、上水の供給も不安定な傾向となりつつあり、新たな原水源を確保する必要が生じてきた。
【0007】
新たな原水源として、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水(海淡処理水)が考えられる。しかしながら、海水を淡水化するためには、例えば、海水淡水化装置を用いる必要がある。海水淡水化装置は、高圧逆浸透膜装置を主要な機器とする場合が多く、多大な運転コストがかかるため、超純水製造装置の原水として、海水淡水化装置の処理水を用いることは、一般的に行われてこなかった。なお、海水淡水化装置は、飲料用水を製造するために一般的には使われてきた技術である。
【0008】
上記の特許文献1-3に記載の技術は、いずれも、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を原水として用いるものではない。また、特許文献1-3に記載の技術では、海水に含まれる高濃度のホウ素に対応することは困難である。
また、上記特許文献4には、海水を淡水化処理する逆浸透膜分離装置が記載されているが、原水から超純水を製造する超純水製造装置に対する対応については記載されていない。
【0009】
本開示の発明者らは、海水淡水化装置の処理水を、超純水製造装置の原水として利用することを検討したところ、次のような問題があることを見出した。
すなわち、
1)海水淡水化装置の処理水には、上水又は回収水のホウ素濃度よりも高い濃度のホウ素が含まれている。すなわち、飲料水として海水淡水化装置による処理水を利用する場合には、飲料水としてのホウ素濃度の基準である1mg/Lを満たすように設計されているため、比較的、ホウ素の濃度が他の上水より高い場合がある。一方、超純水製造装置では、そもそもホウ素を除去する能力は低く、上記他の上水の一般的なホウ素濃度、例えば、最大でも0.1~0.2mg/L程度を想定した設計になっているため、何らかの対応が必要になる。例えば、海水淡水化装置の処理水を、そのまま超純水装置の原水として利用する場合には、超純水装置内に設置されるホウ素選択性イオン交換樹脂装置のイオン交換樹脂量が多くなり、それに応じて、ホウ素選択性イオン交換樹脂装置からの有機物TOCの溶出が問題となる等の問題が生じる。
2)海水淡水化処理水では、海水淡水化処理設備の運用状況によって、処理水中のホウ素の濃度変動が発生する場合がある。この濃度変動が比較的、数十日単位での変動があるため、この変動に対応する必要がある。なお、調査した結果、この変動は、高圧逆浸透膜装置の洗浄や、膜交換等のメンテナンスに関連するものであった。
なお、海水淡水化装置の処理水の水質の変動例を
図2に示す。
【0010】
半導体等製造プロセスは年単位で運転継続をすることが多く、超純水の安定供給は年単位で必要不可欠である。したがって、海水淡水化処理水を半導体等製造用の超純水の原水として利用することは、上記の対応をして、可能な限りホウ素濃度が安定した原水を供給する必要がある。
【0011】
本開示は上記事実を考慮し、超純水製造に使用される原水として、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1態様に係る超純水製造方法は、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、前記前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、前記原水のホウ素濃度が、前記超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整する。
【0013】
この超純水製造方法では、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を含む原水のホウ素濃度が、超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整するので、原水として海水淡水化処理水を利用することができる。例えば、原水として海水淡水化処理水と上水を用いる場合には、原水として上水のみを使用する場合と比較して、上水の使用量を抑制できる。
【0014】
第2態様は、第1態様に係る超純水製造方法において、前記海水淡水化処理水のホウ素濃度が前記許容値を上回る場合に、前記前処理の前に前記海水淡水化処理水に含まれるホウ素を除去するホウ素除去処理を行う。
【0015】
この超純水製造方法では、海水淡水化処理水のホウ素濃度が許容値を上回る場合に、前処理の更に前のホウ素除去処理により海水淡水化処理水に含まれるホウ素を除去することで、海水淡水化処理水のホウ素濃度を許容値以下に下げることができる。またこれによって、超純水製造の原水として海水淡水化処理水を利用することができる。
【0016】
第3態様は、第2態様に係る超純水製造方法において、前記ホウ素除去処理は、前記海水淡水化処理水を高圧逆浸透膜により処理することと、前記海水淡水化処理水をアルカリ添加して逆浸透膜により処理することと、前記海水淡水化処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理することと、アニオン交換樹脂により処理することと、電気脱イオン交換装置により処理することのいずれか1つ以上を含む。
【0017】
この超純水製造方法では、海水淡水化処理水を高圧逆浸透膜により処理することと、海水淡水化処理水をアルカリ添加して逆浸透膜により処理することと、海水淡水化処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理することと、アニオン交換樹脂により処理することと、電気脱イオン交換装置により処理することのいずれか1つ以上が行われる。これによって、海水淡水化処理水に含まれるホウ素を効率よく除去することができる。
【0018】
第4態様は、第1態様又は第2態様に係る超純水製造方法において、前記許容値を前記超純水の使用量に応じて変化させる。
【0019】
例えば、超純水の使用量の変化に応じて、1次純水装置、および2次純水装置の各単位機器、もしくはホウ素を除去する主要な単位機器のホウ素除去能力が変化する。この超純水製造方法では、許容値を超純水の使用量に応じて変化させることで、海水淡水化処理水に含まれるホウ素を効率よく除去することができる。
【0020】
第5態様に係る超純水製造装置は、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理装置と、前記前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次純水装置と、前記1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次純水装置と、前記海水淡水化処理水のホウ素濃度を測定する計測部と、を有し、前記原水のホウ素濃度が、前記超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整する。
【0021】
この超純水製造装置では、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を含む原水のホウ素濃度が、超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整するので、原水として海水淡水化処理水を利用することができる。例えば、原水として海水淡水化処理水と上水を用いる場合には、原水として上水のみを使用する場合と比較して、上水の使用量を抑制できる。
【0022】
第6態様は、第5態様に係る超純水製造装置において、前記海水淡水化処理水からホウ素を除去するホウ素処理装置を備える。
【0023】
この超純水製造装置では、海水淡水化処理水のホウ素濃度が許容値を上回る場合に、前処理の更に前のホウ素処理装置により海水淡水化処理水に含まれるホウ素を除去することで、海水淡水化処理水のホウ素濃度を許容値以下に下げることができる。またこれによって、超純水製造の原水として海水淡水化処理水を利用することができる。
【0024】
第7態様は、第6態様に係る超純水製造装置において、前記ホウ素処理装置は、高圧逆浸透膜により処理する高圧逆浸透膜装置と、前記海水淡水化処理水にアルカリを添加可能な添加部を有すると共に前記海水淡水化処理水を逆浸透膜により処理する逆浸透膜装置と、前記海水淡水化処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理するホウ素選択性イオン交換樹脂装置と、アニオン交換樹脂装置と、電気脱イオン交換装置のいずれか1つ以上を備える。
【0025】
この超純水製造装置では、高圧逆浸透膜装置と、海水淡水化処理水にアルカリを添加して逆浸透膜により処理する逆浸透膜装置と、ホウ素選択性イオン交換樹脂装置と、アニオン交換樹脂装置と、電気脱イオン交換装置のいずれか1つ以上により、海水淡水化処理水に含まれるホウ素を効率よく除去することができる。
【0026】
第8態様は、第5態様に係る超純水製造装置において、海水を少なくとも逆浸透膜により処理することによって前記海水淡水化処理水を得る海水淡水化処理装置を備える。
【0027】
この超純水製造装置では、海水淡水化処理装置として、逆浸透膜により海水を処理することによって海水淡水化処理水を得るため、必要な量の海水淡水化処理水を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、超純水製造に使用される原水として、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水を利用可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る超純水製造装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】運転時間の経過による海水淡水化処理水のホウ素濃度と導電率の変化の例を示すグラフである。
【
図3】第2実施形態に係る超純水製造装置の概要を示すブロック図である。
【
図4】第3実施形態に係る超純水製造装置の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の技術を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0031】
[第1実施形態]
図1には、第1実施形態に係る超純水製造装置100が示されている。
【0032】
図1において、第1実施形態に係る超純水製造装置100は、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水(海淡処理水)を受け入れて超純水を製造することができる。この超純水製造装置100は、前処理装置10と、1次純水装置11と、2次純水装置12とを有している。さらに、超純水製造装置100は、海水淡水化装置40と、ホウ素計48と、ホウ素除去装置60とを有している。ここで、海水とは、海の水のことであり、ナトリウム塩やカルシウム塩を主成分とする多くの無機塩類を重量比で3.5%程度含む水をいう。海水の含有成分の濃度は海域により異なるが、組成はほぼ一定している。
【0033】
前処理装置10は、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水32を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る装置である。一例として、ろ過砂等のメディアを充てんした砂濾過等やMMF(マルチメディアフィルター塔)などの充填槽濾過塔、MF(マイクロフィルター)やUF(限外ろ過膜)などのフィルターを用いた膜ろ過装置、および/もしくは、粒状活性炭塔等によって、原水中の残留塩素や大きなゴミなどの不純物をろ過する。
第1実施形態では、原水に工業用水14が含まれる。工業用水14は、工業用に使用される水である。工業用水14の代わりに、市水、井水、回収水などを用いてもよい。市水は、河川水、湖水及び井水等である自然水を上水処理場において凝集沈殿工程、ろ過工程経て得られる、所謂水道水である。市水のホウ素濃度は、例えば40μg/L(導電率200μS/cm)以下である。井水、回収水は、概ね市水と同様の水質である。工業用水14は原水として、原水槽である例えばPIT20に貯められて超純水製造に使用される。
【0034】
1次純水装置11は、前処理水中の全有機炭素(TOC)成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する装置である。一例として、半透膜を用いて前処理水を逆浸透させる逆浸透膜装置、イオン交換樹脂を充てんしたイオン交換樹脂装置や電気脱イオン装置(EDI)、有機物を分解する紫外線照射装置、溶存ガスを脱気する脱気膜装置などを組み合わせて1次純水を精製する。1次純水装置11は、必要に応じ、例えば、高圧逆浸透膜装置、次亜臭素酸等の添加で尿素分解する酸化反応槽などの尿素分解装置を設置してもよい。なお、イオン交換樹脂装置は、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂を、単床、複床、混床のいずれかの方式で充填したものであるが、ホウ素選択性イオン交換樹脂を含むことが好ましい。イオン交換樹脂装置として、ホウ素選択性イオン交換樹脂装置を単独で設置してもよい。製造された1次純水は純水タンク22に供給される。
【0035】
2次純水装置12は、1次純水中の不純物をさらに除去して超純水を製造する装置であり、例えば、1次純水中に微量に含まれる無機イオンを、例えば、非再生型イオン交換塔(ポリッシャー)によって除去する。さらに、紫外線照射装置、過酸化水素分解装置、脱気装置等が組み合わせられている。2次純水装置12の末端には限外ろ過膜が設置され、微粒子が除去される。製造された超純水は、POU(Point Of Use:使用場所)19に供給され、半導体製造等に利用され、一部は、循環ライン28によって、純水タンク22に循環される。
【0036】
海水淡水化装置40は、原水が貯められるPIT20の上流側に設けられている。海水淡水化装置40は、海水30を淡水化処理する複数の海水淡水化処理部42を備えている。複数の海水淡水化処理部42により、海水30を淡水化処理することで、海水淡水化処理水32が得られる。
図1では、海水淡水化処理部42は3つであるが、海水淡水化処理部42の数は変更可能である。一例として、海水30は、タンク31に貯められており、タンク31に接続される配管43は、3つの配管44に分岐されて3つの海水淡水化処理部42にそれぞれ接続されている。複数(例えば、3つ)の海水淡水化処理部42を備えることで、1つが故障等により稼働できない場合に、他の海水淡水化処理部42により処理を行うことができる。なお、超純水製造装置100では、配管43又は配管44等に、海水30や海水淡水化処理水32などの流体を供給するためのポンプが設けられているが、本開示は構成を分かりやすくするため、ポンプの図示は省略する。
【0037】
一例として、海水淡水化処理部42は、前処理設備と、複数段(例えば、2段)の逆浸透膜装置(RO)と、後処理設備とを備えている。前処理設備では、砂ろ過および限外ろ過膜(UF膜)によるろ過などを行う。第1段の逆浸透膜装置(RO)では、例えば、pHを6.0以上6.5以下に調整し、逆浸透膜により処理する。第2段の逆浸透膜装置(RO)では、例えば、ホウ素の除去を行うために、pHを9以上10以下に調整し、逆浸透膜により処理する。いずれの場合も、最初に処理する逆浸透膜は、CA(酢酸セルロース)型高圧逆浸透膜を用いる場合が多い。後処理設備では、必要に応じ、逆浸透膜により処置された透過水に酸を添加してpHを調整した後、カルサイトによる硬度成分の調整及び次亜塩素酸ナトリウムによる滅菌などを行う。なお、海水淡水化処理部42の構成は、変更可能である。
【0038】
海水淡水化装置40によって処理された海水淡水化処理水32は、海水淡水化処理水槽46に貯められる。一例として、3つの海水淡水化処理部42の下流側で3つの配管44は1本の配管43に合流され、海水淡水化処理水槽46に接続されている。
【0039】
ホウ素計48は、海水淡水化処理水槽46の下流側に接続された配管43に設けられている。ホウ素計48は、計測部の一例であり、海水淡水化処理水32のホウ素濃度を測定する。
【0040】
海水淡水化処理水32のホウ素濃度が、超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整するため、第1実施形態の超純水製造装置100では、海水淡水化処理水32からホウ素を除去するホウ素除去装置60が設けられている。ホウ素除去装置60は、ホウ素処理装置の一例である。POU19において超純水に求められるホウ素濃度は、例えば50ng/L、好ましくは1ng/Lである。ここから、2次純水装置、1次純水装置の各単位機器もしくは、ホウ素を除去する主要な単位機器のホウ素除去性能より算出される許容値は、例えばPIT20すなわち、前処理装置10への供給水で0.2mg/Lである。
さらに、超純水の使用量の変化に応じて、1次純水装置、および2次純水装置の各単位機器、もしくはホウ素を除去する主要な単位機器のホウ素除去能力が変化するので、その分を考慮して、上記許容値を変化させることも可能である。
例えば、上記の場合、末端での水の使用量が1/2になったときには、許容値を0.3mg/Lとする等の対応が可能となる。
【0041】
一例として、海水淡水化処理水槽46の下流側に接続された配管43には、切替弁50を介して配管52が接続さており、配管52にホウ素除去装置60が設けられている。さらに、ホウ素除去装置60の下流側で、配管52が海水淡水化処理水槽46の下流側の配管43に接続されている。これにより、ホウ素計48による海水淡水化処理水32のホウ素濃度の測定後、海水淡水化処理水32中のホウ素を除去した方がよい場合は、切替弁50により配管43の流れを配管52に切り替える。これにより、海水淡水化処理水32が配管52に導入され、海水淡水化処理水32がホウ素除去装置60によって処理される。
なお、切替弁50の代わりに、流量調整弁を用いて、海水淡水化処理水32の一部をホウ素除去装置60に供給し、他方をホウ素除去装置60をバイパスするようにしてもよい。この態様にする場合には、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の変化に対し、よりフレキシブルに対応することが可能である。例えば、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の増加に応じ、ホウ素除去装置60への供給割合を増やすことで対応可能となる。
【0042】
また、工業用水14が貯留されるタンク74には、工業用水14が供給される配管75が接続されている。海水淡水化処理水32が流れる配管43は、工業用水14が流れる配管75と合流されることで、1本の配管76とされ、この配管76がPIT20に接続されている。配管43における配管75との合流部の上流側には、配管43を開閉する弁73が設けられている。
【0043】
ホウ素除去装置60は、高圧逆浸透膜装置(高圧RO)62を備えている。高圧逆浸透膜装置62は、ホウ素の除去率が高い。高圧逆浸透膜装置62としては、既存の高圧ROが使用可能であり、具体的には、SWCシリーズ(HYDEANAUTICS社製)、TM800シリーズ(東レ社製)、SWシリーズ(ダウケミカル社製)等が例示される。
【0044】
ホウ素除去装置60は、高圧逆浸透膜装置(高圧RO)62の上流側で、配管52を流れる海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加可能な添加部64を備えている。一例として、添加部64は、アルカリ65を貯留する貯留部64Aと、貯留部64Aと配管52とを繋ぐ供給管64Bと、供給管64Bに設けられた調整弁64Cとを備えている。また、添加部64は、アルカリ65を供給するポンプ(図示省略)を備えていてもよい。添加部64により海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加することで、海水淡水化処理水32が高いpH(例えば、pHが9以上10以下)に調整される。高いpHで高圧逆浸透膜装置62を稼働させることで、海水淡水化処理水32に含まれるホウ素の除去率を高めることができ、また除去率の調整も容易である。
ホウ素除去装置60において、添加部64でアルカリ65を添加した場合、ホウ素除去装置60の処理水のpHが高すぎて、後段での処理に影響を与える場合もある。その場合には、例えば、pH10のような上限値を設け、それを超える場合には、高圧逆浸透膜装置(高圧RO)62の下流の任意の位置で、塩酸、硫酸等の鉱酸を適宜添加して、後段での処理において好ましいpHとなるように調整してもよい。
【0045】
また、高圧逆浸透膜装置62の下流側の配管52には、高圧逆浸透膜装置62で処理された後の海水淡水化処理水32のホウ素濃度を測定するホウ素計70が設けられている。例えば、ホウ素計48によるホウ素濃度の測定値が、許容値(例えば、0.2mg/L)を超える場合に、切替弁50により配管43の流れを配管52に切り替えて、海水淡水化処理水32の少なくとも一部をホウ素除去装置60に通水して処理する。
なお、本実施形態の場合、ホウ素除去装置60は、濁質の除去も可能なので、前処理装置10と同様の機能も持っている。したがって、ホウ素除去装置60の処理水は、前処理装置10を経ずに、前処理装置10と1次純水装置11の間で合流させてもよい。この場合、一般的には、前処理装置10と1次純水装置11の間には、タンクもしくはピット(いずれも図示していない)が設置されている場合には、タンクもしくはピットで合流させるとよい。
高圧逆浸透膜装置62の濃縮水は、硬度が少ないので、クーリングタワーへ供給し、クーリングタワー用水として利用してもよい。
さらにホウ素計70によるホウ素濃度の測定値が許容値を大きく超える状況になった場合(例えば、0.3mg/L)には、添加部64を稼働して、添加部64により海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加することで、ホウ素の除去率を高くすることができる。
【0046】
図2には、超純水製造装置100の運転時間の経過による海水淡水化処理水のホウ素濃度と導電率の変化の例が示されている。導電率は、導電率計で測定した値であり、導電率計は、配管43におけるホウ素計48と同様の位置に配置されている。
図2に示すように、超純水製造装置100の運転時間の経過により、海水淡水化処理水32の導電率は30μS/cm付近であまり変化しないが、海水淡水化処理水32のホウ素濃度は大きく変化する。これは、海水淡水化装置40の使用を継続すると、例えば、通水継続や塩素等による殺菌に伴う膜の劣化、膜へのスケーリングやバイオファウリングにより、海水淡水化処理部42の逆浸透膜装置(RO)によるホウ素の除去率が低下するからである。このため、複数の海水淡水化処理部42のいずれか1つ以上で、逆浸透膜装置(RO)を水ないし酸、アルカリ、界面活性剤等の薬剤により洗浄、もしくは膜交換することで、ホウ素の除去率が回復する。このように、ホウ素の除去率の低下と、洗浄によるホウ素の除去率の回復を繰り返すことで、海水淡水化処理水32のホウ素濃度が変化する。海水淡水化処理部42は、上記のように定期的に洗浄するほか、後段での水の使用量に応じて、逆浸透膜装置(RO)のオンオフも行われる、これらの操作は必要不可欠な操作であるものの、物理的・化学的ショックが逆浸透膜に与えられるため、長期的には逆浸透膜装置(RO)のホウ素除去性能の低下の要因になりうる。
また、近年の温暖化による、海水温の上昇、夏季・冬季の海水温の変化の増大などの影響によって、海水淡水化処理水32のホウ素濃度は長期的に変動することもある。水温の上昇自体は、逆浸透膜のホウ素除去率を低下させる要因となるが、長期間の高温での運転が逆浸透膜の劣化の要因となる。
【0047】
図2では、超純水製造装置100では、ホウ素計48によって測定された海水淡水化処理水32のホウ素濃度がAの値(0.2mg/L)と、Bの値(0.5mg/L)とで、運転を切り替える例が示されている。
なお、濃度Aは、超純水製造装置ホウ素受け入れ可能な最大濃度から求められる数値であり、例えば、超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値である。この濃度は、超純水製造装置の設計条件から定められる。さらに、PIT20での工業用水の混合比を考慮して決めてもよい。
また、濃度Bは、ホウ素除去装置60のホウ素除去性能から決められる濃度である。例えば、高圧逆浸透膜装置62において、アルカリ65を添加して運転しても、超純水製造装置100のホウ素受け入れ可能な最大濃度を達成できない濃度を濃度Bとすることができる。
【0048】
一例として、ホウ素計48によって測定された海水淡水化処理水32のホウ素濃度がAの値(0.2mg/L)以下である場合は、海水淡水化装置40による海水淡水化処理水32と、工業用水14とをブレンドする。この場合は、ホウ素除去装置60を使用しないため、切替弁50により配管43から配管52への流路を閉止する。
【0049】
また、一例として、ホウ素計48によって測定された海水淡水化処理水32のホウ素濃度がAの値(0.2mg/L)を超え、Bの値(0.5mg/L)以下である場合は、ホウ素除去装置60を使用する。例えば、ホウ素除去装置60によりホウ素の除去処理を行った海水淡水化処理水32と工業用水14とをブレンドする。この場合は、ホウ素除去装置60を使用するため、切替弁50により配管43から配管52への流路を開放する。また、ホウ素除去装置60が逆浸透膜装置で構成されている場合には、ホウ素除去装置60を使用するとき、ホウ素計48によるホウ素濃度の測定値(例えば、所定値より高い場合)に応じて、添加部64によりアルカリ65を添加してもよい。このように、ホウ素除去装置60を使用することで、海水淡水化処理水32のホウ素濃度を0.2mg/L以下に低下させることができる。
【0050】
また、一例として、ホウ素計48によって測定された海水淡水化処理水32のホウ素濃度がBの値(0.5mg/L)を超えた場合は、海水淡水化装置40による海水淡水化処理水32の使用を中止する。この場合は、配管43の弁73を閉止し、工業用水14のみを含む原水で超純水製造装置100を運転する。
【0051】
また、図示を省略するが、超純水製造装置100では、配管43におけるホウ素計48と切替弁50との間に、流路をクリーニングタワーに切り替えるための切替手段を設けてもよい。これにより、ホウ素除去装置60において、ホウ素の除去性能には限界があるので、ホウ素の除去性能に応じ、クーリングタワーへの切り替え水質を設定することができる。例えば、海水淡水化処理水32のホウ素濃度が
図2のBの値(例えば、0.5mg/L)を超えたら、海水淡水化処理水32をクーリングタワーへ供給し、クーリングタワー用水として利用してもよい。
【0052】
原水のホウ素濃度を調整する方法として、工業用水14と海水淡水化処理水32の配合比の変更や、PIT20の大型化も考えられる。海水淡水化処理水32のホウ素濃度が高ければ、工業用水14の割合を増やすことで、ホウ素濃度を許容値に収めることができる。
【0053】
また、PIT20が大型であれば、海水淡水化処理水32のホウ素濃度が例えばBの値(0.5mg/L)を上回る場合に海水淡水化処理水32の使用を止め、PIT20に貯められているホウ素濃度の低い原水を消費しながら超純水製造を行うことができる。ホウ素濃度が例えばBの値(0.5mg/L)以下となる場合には海水淡水化処理水32の使用を再開することで、PIT20の貯水量を復活させることができる。この場合、原水として工業用水14の利用を併用してもよい。また、PIT20の容量は、海水淡水化処理水32の水質の傾向、超純水の供給量、さらに工業用水14の使用量等を考慮して決めればよい。
【0054】
(作用)
第1実施形態では、海水30を淡水化処理した海水淡水化処理水32のホウ素濃度が、超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整するので、原水として海水淡水化処理水32を利用することができる。原水として海水淡水化処理水と上水を用いる場合には、原水として上水のみを使用する場合と比較して、上水の使用量を抑制できる。
【0055】
また、海水を淡水化処理した海水淡水化処理水32のホウ素濃度が許容値を上回る場合に、前処理の更に前のホウ素除去装置60により海水淡水化処理水32に含まれるホウ素を除去することで、海水淡水化処理水32のホウ素濃度を許容値以下に下げることができる。またこれによって、超純水製造の原水として海水淡水化処理水32を利用することができる。
【0056】
また、ホウ素除去装置60は、海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加可能な添加部64を有すると共に海水淡水化処理水32を高圧逆浸透膜により処理する高圧逆浸透膜装置62を備えている。これにより、海水淡水化処理水32に含まれるホウ素濃度に応じて、アルカリ65を添加せずに海水淡水化処理水32を高圧逆浸透膜により処理し、又は海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加して高圧逆浸透膜により処理することができる。海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加して高圧逆浸透膜により処理することで、ホウ素の除去率を高めることができる。このため、海水淡水化処理水32に含まれるホウ素を効率よく除去することができる。
【0057】
また、高圧逆浸透膜装置62の場合、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の増加に伴い、ホウ素除去装置60への海水淡水化処理水32への供給量を段階的に増やすことが有効である。さらに、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の増加があれば、アルカリ65の添加も有効になる。この場合、海水淡水化処理水32のホウ素濃度が低いときは、アルカリ65を添加せずに運転しているので、薬品の使用量の増加を抑制できる。
【0058】
第1実施形態によれば、超純水製造に使用される原水として海水淡水化処理水32を利用可能にすることができる。
【0059】
なお、図示を省略するが、高圧逆浸透膜装置62が並列で複数ライン存在する構成としてもよい。高圧逆浸透膜装置62は、消費電力が大きい。ホウ素除去装置60への海水淡水化処理水32の供給量が少ない場合には、高圧逆浸透膜装置62が並列で複数ライン存在する構成では、並列のうち1つを用いてホウ素を除去し、供給量の増加と共に、使用ライン数を増加すればよい。
ホウ素除去装置60には、適宜、その他の装置を設置してもよい。例えば、海水淡水化処理水32の水質によって、例えば、ナトリウム型カチオン交換装置等からなるソフナー、脱気塔、脱気膜などの炭酸除去設備などを設置してもよい。
また、工業用水等の原水をホウ素除去装置60へ直接供給するラインを設置してもよい。この場合、工業用水等の原水のホウ素濃度が何らかの理由で急上昇した場合にホウ素除去装置60を臨時的に工業用水等の原水のホウ素除去装置として利用することが可能となる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る超純水製造装置について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0061】
図3には、第2実施形態に係る超純水製造装置200が示されている。
図3に示すように、超純水製造装置200では、第1実施形態の超純水製造装置100に設けられたホウ素除去装置60に代えて、配管52にホウ素除去装置210が設けられている。ホウ素除去装置210は、ホウ素選択性イオン交換樹脂装置212を備えている。ホウ素選択性イオン交換樹脂装置212は、ホウ素処理装置の一例であり、ホウ素選択性イオン交換樹脂により海水淡水化処理水32に含まれるホウ素を除去する。
【0062】
一例として、ホウ素選択性イオン交換樹脂は、n-メチルグルカミン基をもつイオン交換樹脂であり、例えば、CRB02、CRB03、CRB05(三菱化学株式会社製)、アンバーライトIRA743(登録商標;ロームアンドハース社)などが例示される。ホウ素選択性イオン交換樹脂は、塩濃度の高低に関係なく、選択的にホウ素を吸着するので、塩濃度の高低に関係なくホウ素の除去処理可能であり、好適にホウ素除去装置として機能する。
【0063】
海水淡水化処理水32のホウ素濃度の推移が
図2のように事前にわかる場合には、最大ホウ素濃度をもとに、例えば、1~5日に1回再生するようにホウ素選択性イオン交換樹脂量(BTC:貫流交換容量)を決定しておくと良い。海水淡水化処理水32のホウ素濃度は長周期で変動するので、ホウ素除去装置210を用いる場合には、長期間(例えば、数日から数十日)運転することが予測される。したがって、この期間、選択性イオン交換樹脂量が破過せずに運転することは困難なので、ホウ素選択性イオン交換樹脂は通水と再生を交互に行いながらの運転となる。ホウ素選択性イオン交換樹脂装置212がホウ素選択性イオン交換樹脂塔を複数並列に備える場合には、順次再生をすれば良い。ホウ素選択性イオン交換樹脂塔が単数の場合には、再生の間は、工業用水を用いる、ピット内の原水を利用する等によって原水を確保すれば良い。
この実施形態の場合には、ホウ素選択性イオン交換樹脂は、ホウ素濃度が高くても対応可能なのでホウ素濃度が高くなったとしても、運転を継続することができる。ただし、ホウ素選択性イオン交換樹脂の再生頻度が増加する。
【0064】
また、ホウ素選択性イオン交換樹脂の代わりに、無機系のホウ素吸着剤を使うことも可能である。具体的には、READ-B(株式会社日本海水製)等のセリウム系吸着剤などがある。また、ホウ素選択性イオン交換繊維なども使用可能である。キレスパールCH351、キレストファイバー GRYシリーズ(キレスト株式会社製)等が例示される。
以下ホウ素選択性イオン交換樹脂の記載は、無機系のホウ素吸着剤、ホウ素選択性イオン交換繊維等も含まれるものとする。なお、超純水製造装置200の他の構成は、第1実施形態の超純水製造装置100と同様である。
なお、本実施形態において、ホウ素選択性イオン交換繊維等の代わりに、アニオン交換樹脂塔や電気式脱イオン交換装置を用いることも可能である。これらの装置はいずれもアニオン樹脂全般を除去できるため、ホウ素のみを選択的に除去することは難しいが、
図2に示したように、海水淡水化処理水32は、市水等の一般的な原水に比べ導電率が低いことから、これらの装置を用いることも可能である。
なお、アニオン交換樹脂としては、市販の強塩基性アニオン交換樹脂、例えば、ダイヤイオンPAシリーズ、ダイヤイオンHPAシリーズ、ダイヤイオンSAシリーズ(以上三菱化学株式会社製)550Aシリーズ(ダウ・ケミカル製)、電気式脱イオン交換装置としては、例えば、VNX55EX(エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ製)等の市販の装置が例示される。なお、VNX55EX(エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ製)は炭酸除去性能も高く、炭酸によるホウ素除去性能が低下しないため、ホウ素除去装置312として好適に用いることができる。
アニオン交換樹脂は処理水のホウ素濃度が上昇した際は、既存の方法により、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを用いて再生して運転を継続する。
また、ホウ素選択性イオン交換樹脂の再生剤、アニオン樹脂の再生剤、電気式脱イオン交換装置の濃縮水は、いずれも硬度が低いので、これらを、クーリングタワーへ供給し、クーリングタワー用水として利用してもよい。
【0065】
超純水製造装置200は、第1実施形態の超純水製造装置100と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0066】
また、ホウ素除去装置210は、海水淡水化処理水32をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理するホウ素選択性イオン交換樹脂装置212を備えている。このため、超純水製造装置200では、ホウ素除去装置210により海水淡水化処理水32の塩濃度の高低に関係なくホウ素の除去処理が可能である。
なお、切替弁50の代わりに、流量調整弁を用いて、海水淡水化処理水32の一部をホウ素除去装置210に供給し、他方をホウ素除去装置210をバイパスするようにしてもよい。この態様にする場合には、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の変化に対し、よりフレキシブルに対応することが可能である。例えば、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の増加に応じ、ホウ素除去装置210への供給割合を増やすことで対応可能となる。このようにすることで、ホウ素選択性イオン交換樹脂212の再生頻度を最小限にすることが可能である。
ホウ素除去装置210には、適宜、その他の装置を設置してもよい。例えば、海水淡水化処理水32の水質によって、例えば、ナトリウム型カチオン交換装置等からなるソフナー、脱気塔、脱気膜などの炭酸除去設備などを設置してもよい。
【0067】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る超純水製造装置について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0068】
図4には、第3実施形態に係る超純水製造装置300が示されている。
図4に示すように、超純水製造装置300では、第1実施形態の超純水製造装置100に設けられたホウ素除去装置60に代えて、配管52にホウ素除去装置310が設けられている。ホウ素除去装置310は、添加部64と、逆浸透膜装置(RO)312とを備えている。逆浸透膜装置312として、中圧、低圧、又は超低圧のいずれの逆浸透膜装置を用いてもよい。逆浸透膜装置312では、アルカリ65を添加しなければ、ホウ素の除去が難しいため、逆浸透膜装置312の使用時に、添加部64からアルカリ65を添加する。中圧、低圧、又は超低圧の逆浸透膜装置312としては、市販の逆浸透膜装置が使用可能である。例えば、TM700シリーズ、TMLシリーズ(東レ社製)などが例示される。
本実施形態に用いるROは、高圧ROと比較して、運転の消費電力が小さいため、ホウ素除去装置310への海水淡水化処理水32の供給量が増加しても、消費電力が増大しにくい。
【0069】
例えば、ホウ素濃度が増加したら、ホウ素濃度の増加と共にアルカリ65の添加量を上げることが有効になる。例えば、ホウ素濃度の増加と共に、低圧ROに供給される水のpHを、7→8→9→10と上げると、ホウ素の除去率を上げることが可能である。この場合は、ホウ素濃度の増加と共にホウ素除去装置310への海水淡水化処理水32の供給量を増加してもよい。
ホウ素除去装置60において、添加部64でアルカリ65を添加した場合、ホウ素除去装置60の処理水のpHが高すぎて、後段での処理に影響を与える場合もある。その場合には、例えば、pH10のような上限値を設け、それを超える場合には、高圧逆浸透膜装置(高圧RO)62の下流の任意の位置で、塩酸、硫酸等の鉱酸を適宜添加して、後段での処理において好ましいpHとなるように調整してもよい。
【0070】
なお、超純水製造装置300の他の構成は、第1実施形態の超純水製造装置100又は第1実施形態の超純水製造装置200と同様である。
【0071】
超純水製造装置300は、第1実施形態又は第2実施形態の超純水製造装置100、200と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0072】
超純水製造装置300では、海水淡水化処理水32にアルカリ65を添加して逆浸透膜装置312により処理するホウ素除去装置310を備えている。ホウ素除去装置310により、海水淡水化処理水32に含まれるホウ素を効率よく除去することができる。
なお、切替弁50の代わりに、流量調整弁を用いて、海水淡水化処理水32の一部をホウ素除去装置310に供給し、他方をホウ素除去装置310をバイパスするようにしてもよい。この態様にする場合には、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の変化に対し、よりフレキシブルに対応することが可能である。例えば、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の増加に応じ、ホウ素除去装置310への供給割合を増やすことで対応可能となる。
ホウ素除去装置300には、適宜、その他の装置を設置してもよい。例えば、海水淡水化処理水32の水質によって、例えば、ナトリウム型カチオン交換装置等からなるソフナー、脱気塔、脱気膜などの炭酸除去設備などを設置してもよい。
なお、本実施形態の場合、ホウ素除去装置60は、濁質の除去も可能なので、前処理装置10と同様の機能も持っている。したがって、ホウ素除去装置60の処理水は、前処理装置10を経ずに、前処理装置10と1次純水装置11の間で合流させてもよい。この場合、一般的には、前処理装置10と1次純水装置11の間には、タンクもしくはピット(いずれも図示していない)が設置されている場合には、タンクもしくはピットで合流させるとよい。
高圧逆浸透膜装置62の濃縮水は、硬度が少ないので、クーリングタワーへ供給し、クーリングタワー用水として利用してもよい。
【0073】
[超純水製造方法]
第1-第3実施形態に係る超純水製造方法は、海水30を淡水化処理した海水淡水化処理水32を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、原水のホウ素濃度が、超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整する。
そのため、海水淡水化処理水32の高いホウ素濃度に対応し、後段の超純水製造装置の運転を可能とすることができる。また、海水淡水化処理水32のホウ素濃度の変動に対しても、ホウ素除去装置の運転状況を変えることにより対応可能である。
【0074】
ここで、海水30を淡水化処理した海水淡水化処理水32のホウ素濃度が許容値を上回る場合に、前処理の前に海水淡水化処理水32に含まれるホウ素を除去するホウ素除去処理を行ってもよい。
【0075】
また、ホウ素除去処理は、海水淡水化処理水32を高圧逆浸透膜により処理することと、海水淡水化処理水32をアルカリ添加して逆浸透膜により処理することと、海水淡水化処理水32をホウ素選択性イオン交換樹脂により処理することのいずれか1つ以上を含んでいてもよい。
【0076】
本開示の超純水製造方法を用いると、海水淡水化処理水32の高いホウ素濃度に対応可能なので、超純水製造装置を改造せずに利用することが可能である。したがって、既存の超純水製造装置に、ホウ素除去装置を増設するのみで、海水淡水化処理水32を原水として利用可能となる。また、新設の超純水製造装置の場合にも、新たに設計を行う必要がないため、容易に実施することが可能である。
【0077】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0078】
例えば、工業用水14をホウ素除去装置60、ホウ素除去装置210、又はホウ素除去装置310で処理するラインを設けてもよい。このようなラインを設置しておけば、万が一、例えば、大雨時などで河川水の水質が一時的に悪化して、市水などのホウ素濃度が一時的に増加した場合に対応することが可能である。
【0079】
例えば、超純水製造装置では、高圧逆浸透膜装置62又は逆浸透膜装置312と添加部64とを備えた第1ホウ素除去装置と、ホウ素選択性イオン交換樹脂装置212を備えた第2ホウ素除去装置とを併用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 前処理装置
11 1次純水装置
12 2次純水装置
30 海水
32 海水淡水化処理水
40 海水淡水化装置
48 ホウ素計(計測部の一例)
60 ホウ素除去装置(ホウ素処理装置の一例)
62 高圧逆浸透膜装置
64 添加部
65 アルカリ
100 超純水製造装置
200 超純水製造装置
210 ホウ素除去装置(ホウ素処理装置の一例)
212 ホウ素選択性イオン交換樹脂装置
300 超純水製造装置
310 ホウ素除去装置(ホウ素処理装置の一例)
312 逆浸透膜装置
【要約】
【課題】超純水製造に使用される原水として海水淡水化処理水を利用可能にする。
【解決手段】超純水製造方法は、海水30を淡水化処理した海水淡水化処理水32を含む原水の懸濁物質を除去して前処理水を得る前処理と、前処理水中の全有機炭素成分やイオン成分を除去して1次純水を製造する1次処理と、1次純水中の不純物を除去して超純水を製造する2次処理と、を有し、原水のホウ素濃度が、前記超純水に求められるホウ素濃度より算出される許容値以下となるように調整する。
【選択図】
図1