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特許7646936デマンドレスポンス発動予測システム、及びデマンドレスポンス発動予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】デマンドレスポンス発動予測システム、及びデマンドレスポンス発動予測方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024168573
(22)【出願日】2024-09-27
【審査請求日】2024-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 理
(72)【発明者】
【氏名】杉本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】大森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 有輝
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-131627(JP,A)
【文献】特開2020-052732(JP,A)
【文献】特開2018-005296(JP,A)
【文献】特開2016-001950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
G06Q 50/00 -50/20
G06Q 50/26 -99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、予測対象エリアにおける予め定められた期間の需要履歴データに基づいて得られる需要予測データが含む需要予測値の単位期間の値が、前記需要履歴データにおける最大値に基づいて得られる第一条件、前記需要予測データの最大値に基づく第二条件、及び前記単位期間を含む一日における需要予測値の最大値に基づく第三条件を満たす場合に、該単位期間を、候補時刻であると判定する、
デマンドレスポンス発動予測システム。
【請求項2】
前記第一条件は、前記需要履歴データにおける最大値に第一係数を乗じた値よりも大きいことであり、
前記第二条件は、前記需要予測データの最大値に第二係数を乗じた値よりも大きいことであり、
前記第三条件は、前記需要予測値の最大値に第三係数を乗じた値よりも大きいことである、
請求項1に記載の、デマンドレスポンス発動予測システム。
【請求項3】
プロセッサが、
予測対象エリアにおける予め定められた期間の需要履歴データに基づいて得られる需要予測データが含む需要予測値の単位期間の値が、前記需要履歴データにおける最大値に基づいて得られる第一条件、前記需要予測データの最大値に基づく第二条件、及び前記単位期間を含む一日における需要予測値の最大値に基づく第三条件を満たす場合に、該単位期間を、候補時刻であると判定する、
デマンドレスポンス発動予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デマンドレスポンス発動予測システム、及びデマンドレスポンス発動予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電力需要家の建物の設計図書に記載された第1諸項目の情報と、建物の近況の使用状況を示す第2諸項目の情報とを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された第1諸項目の情報及び第2諸項目の情報に基づいて、建物の建物熱モデルを演算する第1演算部と、第1演算部で演算された建物熱モデルに基づいて、建物の設備の電力需要調整を実施する時間と電力需要調整を実施したときに得られると予想される電力の調整力とによって定まるDRプランを選択するための演算をする第2演算部と、を備えるDRプラン演算装置である事業者サーバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2024-000029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術で作成されるDRプランには、事業者がデマンドレスポンスを発動する時期について、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、予め定められた期間における電力需要ピークの予測精度を向上させるデマンドレスポンス発動予測システム、及びデマンドレスポンス発動予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様のデマンドレスポンス発動予測システムは、プロセッサを備え、前記プロセッサは、予測対象エリアにおける予め定められた期間の需要履歴データに基づいて得られる需要予測データが含むいずれか一日分の需要予測値の最大値が、前記需要履歴データにおける最大値に基づいて得られる第一条件、及び前記需要予測データの最大値に基づく第二条件を満たすと共に、該一日における需要予測値の単位期間における需要予測値の最大値が該一日における需要予測値の最大値に基づく第三条件を満たす場合に、該単位期間を、候補時刻であると判定する。
【0007】
第二態様のデマンドレスポンス発動予測システムは、第一態様に記載のデマンドレスポンス発動予測システムにおいて、前記第一条件は、前記需要履歴データにおける最大値に第一係数を乗じた値よりも大きいことであり、前記第二条件は、前記需要予測データの最大値に第二係数を乗じた値よりも大きいことであり、前記第三条件は、前記需要予測値の最大値に第三係数を乗じた値よりも大きいことである。
【0008】
第三態様のデマンドレスポンス発動予測方法は、プロセッサが、予測対象エリアにおける予め定められた期間の需要履歴データに基づいて得られる需要予測データが含むいずれか一日分の需要予測値の最大値が、前記需要履歴データにおける最大値に基づいて得られる第一条件、及び前記需要予測データの最大値に基づく第二条件を満たすと共に、該一日における需要予測値の単位期間における需要予測値の最大値が該一日における需要予測値の最大値に基づく第三条件を満たす場合に、該単位期間を、候補時刻であると判定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、具体的には、予め定められた期間における電力需要ピークの予測精度を向上させるデマンドレスポンス発動予測システム、及びデマンドレスポンス発動予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】送配電区域として区分けされたエリアを示す図である。
図2】エリア別の容量拠出金の算定方法を説明する図である。
図3】H3需要を説明する図である。
図4】小売電気事業者がデマンドレスポンスを発動した場合の、需要家の取組みと、需要家に小売電気事業者が報酬を支払う様子を説明する図である。
図5】本実施形態に係るデマンドレスポンス発動予測システムを説明する図であり、(A)は本実施の形態に係る電力需要予測装置を含む電力需要予測システムの全体構成図、(B)は電力需要予測装置の制御ブロック図である。
図6】本開示の実施形態に係るデマンドレスポンス発動装置の要部構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態に係るデマンドレスポンス発動予測システムの予測結果に基づいて、デマンドレスポンスを実施するフロー図である。
図8】デマンドレスポンス発動予測システムが予測した、実績データに基づく電力需要の予測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
〈容量拠出金及びデマンドレスポンスについて〉
近年の再生可能エネルギー電源の導入加速や、電力需要に対する供給量が逼迫するなどの背景により、エリアAR全体の電力需要が高まる需要期における電力の供給力を担保するために、小売電気事業者ER、一般送配電事業者、及び配電事業者が電力設備の維持費用を負担する容量拠出金制度が制定されている。
【0013】
容量拠出金の負担金額は、次の通りとされている。まず、図1に示されるように、日本国において一般送配電事業者の送配電区域として区分けされたエリアAR毎に、対象実需給年度の容量市場メインオークション開催前に公表される最新の供給計画における実需給年度のH3需要を参照する。そして、図2及び(1)式に示されるように、日本国全体における容量拠出金の総額を、全てのエリアにおけるH3需要の値に対する当該エリアARのH3需要の値の割合で乗じ、当該エリアARの負担する容量拠出金の金額を算出する。
【0014】
【数1】
【0015】
そして、算出された当該エリアARの容量拠出金の金額について、当該エリアARで電気の送電事業を行う小売電気事業者ER、一般送配電事業者、及び配電事業者がそれぞれ予め定められた割合の金額を負担することにより、それぞれのエリアARごとの容量拠出金が拠出される。
【0016】
なお、H3需要とは、対象月における、上位3点のピーク需要電力とされている。より具体的には、図3に示されるように、当該エリアARにおける特定の月(例えば、8月)において需要された電力のうち、需要が多かった時刻(1時間当たりの平均値。ただし、同日に複数の時刻が該当する場合には、当該日の最も大きい時刻。)について算出された上位3点の平均値を、当該エリアARにおけるH3需要とする。
【0017】
また、小売電気事業者ERが負う、容量拠出金の金額は、次の数2に示される計算式に基づいて定められる。
【0018】
【数2】
【0019】
なお、(2)式の計算式における「基準時」とは、夏季(7月から9月まで)及び、冬季(12月から2月まで)のそれぞれの電力需要に基づいて定められる。具体的には、4月から9月までの負担金に対しては、前年度の7月から9月までのうち、当該エリアARにおける電力需要量が最も多い1時間が「基準時」とされる。同様に、10月から3月までの負担金に対しては、前年度の12月から2月までのうち、当該エリアARにおける電力需要量が最も多い1時間が「基準時」とされる。
【0020】
すなわち、上記(2)式に示されるように、容量拠出金の支払い義務を負う小売電気事業者ERは、夏季(7月から9月まで)及び、冬季(12月から2月まで)のピーク需要を低減させることにより、当該エリアARの容量拠出金の金額を低減させることができる。
【0021】
ここで例えば、具体的なピーク需要を低減する方法としては、デマンドレスポンスと称される、需要家CRに協力を要請することにより、当該エリアARにおける電力消費パターンを変化させる技術がある。
【0022】
当該エリアARにおける小売電気事業者ERは、デマンドレスポンスを発動することで、需要がピークとなると予測される特定の時刻(コマと称される時間単位)に、電力需要、言い換えれば、電気設備の使用量を削減することを要求する。そして、図4に示されるように、小売電気事業者ERが発動したデマンドレスポンスに対し、需要家CRがデマンドレスポンスの発動に応えた場合、言い換えれば、デマンドレスポンスの発動により、電力の需要量が削減されたと確認された場合には、小売電気事業者ERは、需要家CRに対して報酬を支払う。
【0023】
このように、デマンドレスポンスを発動して電力の需要量を削減することができれば、小売電気事業者ERとしては(2)式に示される「基準時」における電力需要が低減されたことにより、容量拠出金の負担金額が減少するため、経済的な利益を得ることができる。一方、徒にデマンドレスポンスの発動をすると、小売電気事業者ERは、需要家CRに対して不必要な報酬を支払う必要が生じるため、上記経済的な利益が減ずるか、又は損失となり得る。言い換えれば、小売電気事業者ERがデマンドレスポンスを実施するには、効果的なタイミングを予測する必要がある。
【0024】
しかし、小売電気事業者ERがデマンドレスポンスを実施するには、効果的なタイミングを予測する体制を構築する必要があるが、最適な発動タイミングを予測する体制を構築する労力は、大きい。より具体的には、小売電気事業者ERにおける経済的利益が得られる時期、更に言い換えれば、需要期において特に需要量が大きくなる時期を予測する労力は、大きい。
【0025】
ここで、本実施形態のデマンドレスポンス発動予測システム80は、当該エリアAR(予測対象エリアの一例)において小売電気事業者ERがデマンドレスポンスを発動する効果的な時刻を予測する。デマンドレスポンス発動予測システム80が効果的な時刻を予測し、デマンドレスポンスを発動する手順を、図5から図8を参照しながら適宜説明する。
【0026】
〈構成〉
図5は、本開示のデマンドレスポンス発動予測システム80の一例である。図5に示される様の、デマンドレスポンス発動予測システム80は、複数の端末装置14、気象データサーバ16、電力需要予測装置10、及びデマンドレスポンス発動装置82がネットワーク12を介して接続されている。
【0027】
ネットワーク12上には、複数の端末装置14、気象データサーバ16、及び電力需要予測装置10が接続されている。電力需要予測装置10は、この気象データサーバ16から気象データを取り込む。取り込んだ気象データは、少なくとも、過去1~3年分を電力需要予測装置10の大規模記録装置24(図5(B)参照)に、更新記憶する。
【0028】
なお、外部から気象データを取り込むのではなく、電力需要予測装置10が、自ら気象データサーバ16を持っていてもよい。
【0029】
端末装置14は、電力需要予測装置10へアクセスし、予測対象日の電力需要に関する情報の提供を通知する。電力需要予測装置10では、この端末装置14から通知を受けて、予測対象日の電力需要に関する情報を提供する。
【0030】
図5(B)は、本実施の形態に係る電力需要予測装置10の制御ブロック図である。
【0031】
電力需要予測装置10は、マイクロコンピュータ18を備えている。マイクロコンピュータ18は、CPU18A(Central Processing Unit)、RAM18B(Random Access Memory)、ROM18C(Read Only Memory)、入出力装置(I/O)18D、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス18Eで構成される。
【0032】
I/O18Dには、ユーザI/F20が接続されている。ユーザI/F20は、例えば、入力デバイスとしてのキーボード、マウス、および出力デバイスとしてのモニタ、プリンタを含む。なお、入出力デバイスとしてタッチパネルを適用してもよい。
【0033】
また、I/O18Dには、通信I/F22が接続されており、ネットワーク12との接続を可能としている。この通信I/F22を介して、気象データサーバ16及び端末装置14との通信が実行される。
【0034】
さらに、I/O18Dには、大規模記録装置24が接続されている。この大規模記録装置24は、例えば、HDD(Hard Disk ive)やSSD(Solid State ive)が代表的である。
【0035】
この大規模記録装置24の一部の記録領域は、本実施の形態の電力需要予測に用いる、気象データに基づき学習した長期回帰モデルが格納される、長期回帰モデルデータベースとして機能するようになっている。
【0036】
図6は、本実施形態にデマンドレスポンス発動装置82の要部構成を示すブロック図である。なお、デマンドレスポンス発動装置82は、基本的には一般的なコンピュータと同様の構成である。
【0037】
デマンドレスポンス発動装置82は、CPU82A(Central Processing Unit)、ROM82C(Read Only Memory)、RAM82B(Random Access Memory)、及び通信部82D等を備えている。
【0038】
CPU82Aは、デマンドレスポンス発動装置82の全体の動作を司る装置であり、本実施形態における「プロセッサ」の一例である。ROM82Cは、各種制御プログラム及び各種パラメータ等が予め記憶される。RAM82Bは、CPU82Aによる各種プログラムの実行時のワークエリアAR等として用いられる。通信部82Dは、ネットワーク12(図5参照)に接続され、当該ネットワーク12に接続された電力需要予測装置10等の他の構成と各種データの送受信を行う。デマンドレスポンス発動装置82の各部は、図示しないバスにより相互に接続されている。
【0039】
デマンドレスポンス発動装置82は、CPU82AがROM82C及びRAM82Bに対するアクセスをし、プログラムの内容に従って処理を実行する。また、デマンドレスポンス発動装置82は、CPU82Aにより、通信部82Dを介した通信データの送受信の制御を実行する。
【0040】
また、デマンドレスポンス発動装置82は、電力需要予測装置10が予測した電力需要予測結果に基づいて、図示しない需要家CRに対して、ネットワーク12を介してデマンドレスポンスを発動する。そして、デマンドレスポンス発動装置82が需要家CRに対してデマンドレスポンスを発動した場合、クライアントの情報端末には、デマンドレスポンスの発動が通知される。なお、デマンドレスポンス発動装置82がデマンドレスポンスを発動する具体的な手順については、後述する。
【0041】
なお、電力需要予測装置10が電力需要を予測する方法としては、どのようなものでもよい。電力需要を予測する方法の一例としては、特許7062144号公報に記載の方法を用いることができる。また、高精度に需要予測ができるようであれば、他の計算方法により予測してもよい。
【0042】
続いて、電力需要予測装置10が予測した電力需要予測結果に基づいて、デマンドレスポンス発動装置82が図示しない需要家CRに対して、ネットワーク12を介してデマンドレスポンスを発動する手順について、図7から図8を適宜参照しながら説明する。
【0043】
(デマンドレスポンス発動予測手順)
図7は、CPU82Aがデマンドレスポンスを発動する時期について判断する手順を示す図である。また、図8は、需要履歴データ88及び電力需要予測装置10が予測した需要予測データ90を示す図である。図7に示されるように、CPU82Aは、次の手順でデマンドレスポンス発動の要否を判断する。
【0044】
まず、CPU82Aは、ステップ302において、作業日(予測を行う日)以前の需要履歴データ88を取得する。より具体的には、CPU82Aは、ネットワーク12を介して、図8に示される、「実績期間」に係る需要履歴データ88として、電力需要の実績値を取得する。そして、デマンドレスポンス発動装置は、ステップ304へと移行する。
【0045】
続いて、CPU82Aは、ステップ304において、電力需要予測装置10が予測した需要予測データ90を取得する。より具体的には、CPU82Aは、ネットワーク12を介して、電力需要予測装置10から、図8に示される、「予測期間」に係る電力需要予測結果を、一例として作業日から14日分だけ取得する。そして、デマンドレスポンス発動装置は、ステップ306へと移行する。
【0046】
続いて、CPU82Aは、ステップ306で、予測期間におけるいずれかの単位期間を選択する。より具体的には、上述の電力需要予測方法で計算された通り、需要予測データ90の予測期間に含まれるいずれかのコマ(30分毎の区切)を単位期間として選択する。そして、CPU82Aは、ステップ308へと移行する。
【0047】
続いて、CPU82Aは、ステップ308において、ステップ306で選択した単位期間の電力需要値と、需要履歴データ88の最大値に対して予め定められた値(α値)を乗じた値との大小を比較する。より具体的には、CPU82Aは、当該選択したコマにおける電力需要値と、実績期間における電力需要の最大値である実績期間最大値92にα値を乗じた値(実績期間最大値92をα倍した値)との大小を比較する。またCPU82Aは、ステップ308において、選択したコマにおける電力需要値が実績期間最大値92にα値を乗じた値よりも大きい場合に肯定判定する。そして、CPU82Aは、ステップ308において肯定判定した場合、ステップ310へと移行する。一方、CPU82Aは、ステップ308において否定判定した場合、ステップ316へと移行する。
【0048】
ステップ308において肯定判定した場合、続いて、CPU82Aは、ステップ310において、ステップ306で選択した単位期間の電力需要値と、需要予測データ90の最大値に対して予め定められた値(β値)を乗じた値との大小を比較する。より具体的には、CPU82Aは、当該選択したコマにおける電力需要値と、予測期間における電力需要の最大値である予測期間最大値96にβ値を乗じた値(予測期間最大値96をβ倍した値)との大小を比較する。またCPU82Aは、ステップ310において、選択したコマにおける電力需要値が予測期間最大値96にβ値を乗じた値よりも大きい場合に肯定判定する。そして、CPU82Aは、ステップ310において肯定判定した場合、ステップ312へと移行する。一方、CPU82Aは、ステップ310において否定判定した場合、ステップ316へと移行する。
【0049】
ステップ310において肯定判定した場合、続いて、CPU82Aは、ステップ312において、ステップ306で選択した単位期間の電力需要値と、需要予測データ90における、ステップ306で選択した単位期間を含む一日の需要予測電力の最大値に対して予め定められた値(γ値)を乗じた値との大小を比較する。より具体的には、CPU82Aは、当該選択したコマにおける電力需要値と、当該選択したコマを含む一日の需要予測電力の最大値である予測日最大値94にγ値を乗じた値(予測日最大値94をγ倍した値)との大小を比較する。またCPU82Aは、ステップ312において、選択したコマにおける電力需要値が予測日最大値94にγ値を乗じた値よりも大きい場合に肯定判定する。そして、CPU82Aは、ステップ312において肯定判定した場合、ステップ314へと移行する。一方、CPU82Aは、ステップ312において否定判定した場合、ステップ316へと移行する。
【0050】
ステップ312において肯定判定した場合、続いて、CPU82Aは、ステップ314において、ステップ306で選択した単位期間についてデマンドレスポンスを発動する。より具体的には、CPU82Aは、当該選択したコマについて、需要家CRにデマンドレスポンスを発動する。すなわち、ステップ314において、ステップ306で選択した単位期間は、本実施形態に係る候補時刻の一例である。そして、CPU82Aは、ステップ316へと移行する。
【0051】
ステップ314に続いて、またはステップ308、ステップ310、ステップ312において否定判定した場合、CPU82Aは、ステップ316において、ステップ306で選択した単位期間の他に選択されていない単位期間があるか判定する。より具体的には、CPU82Aは、需要予測データ90に、ステップ316において選択したコマの他に選択されていない単位期間があるか判定する。そして、CPU82Aは、ステップ316において肯定判定した場合、ステップ306へと移行する。一方、CPU82Aは、ステップ316において否定判定した場合、デマンドレスポンス発動予測手順を終了する。
【0052】
このように、本開示において、CPU82Aは、需要履歴データ88の最大値、需要予測データ90における最大値、及び需要予測データ90においてコマを含む一日の最大値をそれぞれ参照する。
【0053】
なお、上述の説明において、α値は、本実施形態における「第一係数」の一例であり、ステップ308は、本実施形態における第一条件の一例である。また、上述の説明において、β値は、本実施形態における「第二係数」の一例であり、ステップ310は、本実施形態における第二条件の一例である。また、上述の説明において、γ値は、本実施形態における「第三係数」の一例であり、ステップ312は、本実施形態における第三条件の一例である。
【0054】
(α値、β値、γ値の導出方法)
なお、α値、β値、γ値については、過去の需要履歴に対して、容量拠出金の削減額とデマンドレスポンスによる需要家CRへの報酬の総額とを比較し、最も収益が最大となる場合のα値、β値、γ値を採用する。より具体的には、デマンドレスポンス発動装置82は、予測データに対する前年同月の需要履歴データ88に対して上述のデマンドレスポンス発動予測手順を適用した場合に収益が最大となるα値、β値、γ値を採用する。
【0055】
また、本開示人らは、上記α値、β値、γ値については、それぞれ0.50から1.50まで、0.01ずつ変化させてシミュレーションを行うことで、適当な値を採用し得ることができることを確認している。なお、電力需要の予想結果にもよるが、上述の通り、α値、β値、γ値については、1を超えて設定されてもよい。
【0056】
以上、本開示に係るデマンドレスポンス発動予測システム80、及びデマンドレスポンス発動予測方法により、小売電気事業者ERは、高精度にデマンドレスポンスの発動の時期を判断することが可能となる。
【0057】
〈変形例〉
なお、上述の説明において、第一条件は、選択されたコマにおける需要予測値と、需要履歴データ88における最大値にα値を乗じた値との大小関係とされていたが、本実施形態における第一条件は、これに限られない。例えば、第一条件は、予め定められた固定値(閾値)に対する大小関係とされていてもよい。
【0058】
なお、上述の説明において、第二条件は、選択されたコマにおける需要予測値と、需要予測データ90における最大値にβ値を乗じた値との大小関係とされていたが、本実施形態における第二条件は、これに限られない。例えば、第二条件は、予め定められた固定値(閾値)に対する大小関係とされていてもよい。
【0059】
なお、上述の説明において、第三条件は、選択されたコマにおける需要予測値と、需要予測データ90における最大値にγ値を乗じた値との大小関係とされていたが、本実施形態における第三条件は、これに限られない。例えば、第三条件は、予め定められた固定値(閾値)に対する大小関係とされていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 電力需要予測装置
12 ネットワーク
14 端末装置
16 気象データサーバ
18 マイクロコンピュータ
18A CPU
18B RAM
18C ROM
18D 入出力装置(I/O)
18E バス
20 ユーザI/F
22 通信I/F
24 大規模記録装置
26 気象データ格納部
28 学習部
30 第1予測部
31 予測対象日受付部
32 第2予測部
34 第3予測部
36 予測結果ブレンド部
38 連続性補正部
40 結果出力部
80 デマンドレスポンス発動予測システム
82 デマンドレスポンス発動装置
82A CPU(プロセッサの一例)
82B RAM
82C ROM
82D 通信部
88 需要履歴データ
90 需要予測データ
92 実績期間最大値
94 予測日最大値
96 予測期間最大値
【要約】
【課題】本開示は、予め定められた期間における電力需要ピークの予測精度を向上させるデマンドレスポンス発動予測システム、及びデマンドレスポンス発動予測方法を提供することを目的とする。
【解決手段】デマンドレスポンス発動予測システム80は、CPU82Aと、を備え、CPU82Aは、エリアARにおける予め定められた期間の需要履歴データ88に基づいて得られる需要予測データ90が含むいずれか一日分の需要予測値の最大値が、需要履歴データ88における最大値に基づいて得られる第一条件、及び需要予測データ90の最大値に基づく第二条件を満たすと共に、該一日における需要予測値の単位期間における需要予測値の最大値が該一日における需要予測値の最大値に基づく第三条件を満たす場合に、該単位期間を、候補時刻であると判定する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8