(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】抽出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 19/10 20060101AFI20250310BHJP
F26B 13/08 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
B65H19/10 A
F26B13/08
(21)【出願番号】P 2024570575
(86)(22)【出願日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2024021648
【審査請求日】2024-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2023129018
(32)【優先日】2023-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】結城 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】三宅 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】水上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】星崎 陸
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1856(JP,A)
【文献】特開平8-319046(JP,A)
【文献】実開昭57-11536(JP,U)
【文献】特開平5-77993(JP,A)
【文献】特開2013-28470(JP,A)
【文献】特開昭58-130852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/10
F26B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムが通る液体が貯留される貯留槽と、
前記貯留槽に配置されて前記フィルムを搬送する複数の搬送ロールと、
前記貯留槽に配置されて前記フィルムを複数の前記搬送ロールに掛け回すための通紙装置と、
を備え、
前記通紙装置は、
少なくとも前記貯留槽の壁面に、複数の前記搬送ロールによる前記フィルムの搬送経路に沿って配置される部分を有して複数が配置されるスプロケットと、
複数の前記スプロケットに掛け回され、且つ、前記フィルムを複数の前記搬送ロールに掛け回すためのロープが接続されるチェーンと、
複数の前記スプロケットのうちの一部の前記スプロケットが取り付けられ、前記チェーンの張力を変化させる方向への前記スプロケットの移動を可能に前記スプロケットを支持すると共に、前記スプロケットに対して前記チェーンの張力を大きくする方向への付勢力を付与する付勢部材を有する張力調整部と、
を有
し、
前記貯留槽は複数が設けられ、
前記通紙装置は前記貯留槽ごとに配置され、
前記通紙装置は、前記スプロケットと前記チェーンと前記張力調整部とを前記貯留槽ごとに備えることを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記張力調整部は、
前記スプロケットの軸方向に対して直交する方向に延びるスライド軸と、
前記スプロケットを支持し、且つ、前記スライド軸に対して前記スライド軸の延在方向に移動自在に配置されるスライド部材と、
を有し、
前記付勢部材は、前記スライド部材に対して、前記スライド軸の延在方向で、且つ、前記チェーンの張力が大きくなる方向の付勢力を付与する請求項
1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記スプロケットの軸方向に対して直交する方向で、且つ、前記チェーンの張力が大きくなる方向の付勢力を前記スプロケットに付与するエアシリンダである請求項
1に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記張力調整部は、
前記スプロケットの軸方向に平行な揺動軸と、
延在方向における両端の間で前記揺動軸に連結されて前記揺動軸を中心として揺動し、一端に前記スプロケットが配置される揺動部材と、
を有し、
前記付勢部材は、前記揺動部材の他端に連結され、前記チェーンの張力が大きくなる方向へ前記スプロケットを移動させる方向に、前記揺動軸を中心として前記揺動部材を揺動させる付勢力を前記揺動部材に付与するウエイトである請求項
1に記載の抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出乾燥装置が有する抽出装置に関し、特に、フィルムの通紙を行う通紙装置を有する抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に用いられるセパレータ等の多孔質フィルムの製造方法としては、可塑剤を用いて製造する方法が知られている。例えば、特許文献1や特許文献2には、樹脂組成物を可塑剤と混合し、高温で溶融・混錬を行ってシート状に成形した後、延伸機により延伸を行い、抽出乾燥装置で溶剤を用いて可塑剤を抽出して溶剤を乾燥させることにより、多孔質フィルムを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-239773号公報
【文献】特開2011-42805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抽出乾燥装置が有する抽出装置では、樹脂組成物をシート状に成形して延伸したフィルムから溶剤を用いて可塑剤を抽出する際には、フィルムを巻き掛ける複数の搬送ロールを溶剤の貯留槽に配置し、フィルムを溶剤の中で搬送ロールを用いて搬送しながら、溶剤によって可塑剤の抽出を行う。抽出乾燥装置が有する抽出装置では、このように複数の搬送ロールによってフィルムを搬送するため、溶剤の貯留槽には、フィルムを搬送ロールに掛け回すための通紙装置が配置されている。通紙装置は、フィルムを引っ張るためのロープを引っ掛けるチェーンと、チェーンを搬送するスプロケットとを有し、チェーンは搬送ロールによるフィルムの搬送経路に沿って貯留槽の側壁に配置される。
【0005】
通紙装置によってフィルムを搬送ロールに掛け回す際には、まず、ロープの一端をチェーンに引っ掛けた状態でチェーンをモータの駆動力や手動でチェーンの搬送経路に沿ってチェーンを引き回す。これにより、ロープを搬送ロールに掛け回し、フィルムの搬送経路に沿ってロープを配置する。このようにしてロープを搬送ロールに掛け回した後、ロープの一端をフィルムの先端に結わえてロープを引っ張ることにより、フィルムはロープが配置されている経路、即ち、フィルムの搬送経路に沿って引っ張られ、フィルムの搬送経路に沿ってフィルムは配置される。これにより、フィルムは、貯留槽に配置される搬送ロールに掛け回される。
【0006】
ここで、スプロケットの回転軸は、ベアリングにより支持されている。ベアリングは、一般的には潤滑剤としてグリスが用いられることが多いが、貯留槽には溶剤が溜められるため、ベアリングが溶剤に浸かった際には、ベアリングのグリスは溶剤に流出してしまう。このため、通紙装置では、溶剤自体をベアリングの潤滑に使用し、貯留槽には溶剤が溜められた状態でチェーンを引き回してフィルムを搬送ロールに掛け回している。
【0007】
しかしながら、溶剤は気化し易いため、チェーンは溶剤の気化熱によって冷やされて縮む傾向にある。チェーンが縮んだ場合、スプロケットに掛け回されているチェーンの張力が大きくなるため、スプロケットの回転軸に直交する方向に向けてチェーンがスプロケットを押す力が大きくなる。これにより、スプロケットの回転抵抗が上昇してチェーンを回し難くなったり、スプロケットの回転軸を支持するベアリングへの負荷が大きくなることによってベアリングの故障が発生し易くなったりする。チェーンの張力の調整は、例えば、スプロケットのベース部を取り付けるためのボルトが通る孔を長孔にして長孔によってベース部の位置を調整し、ベース部と共にスプロケットの位置を調整することにより張力の調整を行うことができる。
【0008】
しかし、通紙装置のチェーンの張力は、貯留槽に溜められる気化熱によって変化するため、張力の変化の頻度が比較的多くなっている。このため、従来の抽出乾燥装置が有する抽出装置では、フィルムの通紙を行う通紙装置が有するチェーンの張力が変化する度にスプロケットの位置を調整してチェーンの張力を調整することになり、チェーンの張力を調整が煩雑なものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通紙装置が有するチェーンの張力の調整を容易に行うことのできる抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る抽出装置は、フィルムが通る液体が貯留される貯留槽と、前記貯留槽に配置されて前記フィルムを搬送する複数の搬送ロールと、前記貯留槽に配置されて前記フィルムを複数の前記搬送ロールに掛け回すための通紙装置と、を備え、前記通紙装置は、少なくとも前記貯留槽の壁面に、複数の前記搬送ロールによる前記フィルムの搬送経路に沿って配置される部分を有して複数が配置されるスプロケットと、複数の前記スプロケットに掛け回され、且つ、前記フィルムを複数の前記搬送ロールに掛け回すためのロープが接続されるチェーンと、複数の前記スプロケットのうちの一部の前記スプロケットが取り付けられ、前記チェーンの張力を変化させる方向への前記スプロケットの移動を可能に前記スプロケットを支持すると共に、前記スプロケットに対して前記チェーンの張力を大きくする方向への付勢力を付与する付勢部材を有する張力調整部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る抽出装置は、通紙装置が有するチェーンの張力の調整を容易に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る抽出乾燥装置の装置構成の一部を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す複数の貯留槽のうちの1つの貯留槽の詳細図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す張力調整部のスプロケットを透過した状態を示す説明図である。
【
図9】
図9は、チェーンにおけるアタッチメントが配置される部分の詳細図である。
【
図11】
図11は、通紙装置が有するチェーンにロープを接続した状態を示す説明図である。
【
図12】
図12は、フィルムにロープを結わえてロープを用いてフィルムを搬送ロールに掛け回す際の説明図である。
【
図13】
図13は、付勢部材を有さない張力調整部の正面図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る抽出乾燥装置が有する張力調整部の正面図である。
【
図17】
図17は、実施形態3に係る抽出乾燥装置が有する張力調整部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る抽出装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る抽出乾燥装置1の装置構成の一部を示す模式図である。
図1は、主に抽出乾燥装置1が有する抽出装置10を図示したものになっている。なお、以下の説明では、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における上下方向を、抽出乾燥装置1における上下方向Zとして説明し、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における上側を、抽出乾燥装置1における上側とし、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における下側を、抽出乾燥装置1における下側として説明する。また、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における水平方向を、抽出乾燥装置1においても水平方向として説明する。さらに、水平方向のうち、抽出乾燥装置1によって搬送するフィルムFが進む方向を抽出乾燥装置1における長さ方向Yとし、水平方向のうち、長さ方向Yに直交する方向を抽出乾燥装置1における幅方向Xとして説明する。
【0015】
<抽出乾燥装置1>
実施形態1に係る抽出乾燥装置1は、主に、リチウムイオン電池に用いられるセパレータフィルムの製造に用いられ、抽出装置10と、乾燥装置(図示省略)とを有している。セパレータフィルムの製造時における抽出乾燥装置1の上流側の工程では、セパレータフィルムの原料となる樹脂材料と、液体状の可塑剤である液状可塑剤とを溶融混練後にシート状に成形し、シート状の薄膜部材であるフィルムFを得るが、抽出乾燥装置1は、得られたフィルムFから液状可塑剤を除去する装置になっている。
【0016】
詳しくは、セパレータフィルムの原料となる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。また、液状可塑剤としては、例えば、オイルや流動パラフィン等が用いられる。セパレータフィルムの製造時における抽出乾燥装置1の上流側の工程では、これらの樹脂材料と液状可塑剤とを溶融混練後にシート状にし、さらに、シートを延伸することにより、ポリオレフィン系樹脂に多数の微細孔が開孔して微細孔に液状可塑剤が入り込んだ薄膜のフィルムFにする。抽出乾燥装置1は、このように形成されるフィルムFから、フィルムFに含浸されている液状可塑剤を抽出、除去することにより、ポリオレフィン系樹脂に開孔した多数の微細孔から液状可塑剤が抜けて、多数の微細孔が開孔したフィルムFにするための装置として構成されている。
【0017】
抽出乾燥装置1が有する抽出装置10は、抽出乾燥装置1に搬送されたフィルムFに対して、溶剤MCを用いて液状可塑剤の抽出を行う。このため、抽出装置10は、液体の溶剤MCの槽である貯留槽11を有しており、溶剤MCは、貯留槽11に溜められる。溶剤MCとしては、例えば、塩化メチレンが用いられる。貯留槽11には、複数の搬送ロール20が配置されており、抽出装置10では、貯留槽11内の搬送ロール20にフィルムFを巻き掛けて貯留槽11内の溶剤MCにフィルムFを浸けながらフィルムFを搬送することにより、液状可塑剤を抽出し、フィルムFから液状可塑剤を除去する。貯留槽11は、このようにフィルムFが通る液体が貯留される槽になっている。
【0018】
また、抽出装置10は、貯留槽11を複数有している。複数の貯留槽11は、フィルムFの搬送方向に沿って長さ方向Yに並んで配置されている。複数の貯留槽11は、上下方向Zにおける抽出装置10の下端寄りの位置では隣り合う貯留槽11同士が離隔され、上下方向Zにおける抽出装置10の上端寄りの位置では、隣り合う貯留槽11同士が、貯留槽11と一体で設けられる壁面14によって互いに接続されている。または、抽出装置10が有する複数の貯留槽11は、上下方向Zにおける抽出装置10の上端寄りの位置で、隣り合う貯留槽11同士がダクトによって連結されていてもよい。実施形態1では、各貯留槽11は、溶剤MCを貯留する貯留部をそれぞれ2つ有しており、1つの貯留槽11が有する2つの貯留部は、長さ方向Yに並んで配置されている。貯留槽11と一体で設けられる壁面14は、上下方向Zにおける貯留槽11の上側の位置に配置されており、貯留槽11が有する幅方向Xの両側の壁面12から連続して形成されている。
【0019】
つまり、抽出装置10は、長さ方向Yにおいて隣り合う貯留槽11同士が、貯留槽11の上側に位置する壁面14によって連結され、各貯留槽11は、長さ方向Yにおいて隣り合う貯留槽11に対して、上下方向Zにおける貯留槽11の上側の位置で互いに開口している。このため、抽出装置10が有する複数の貯留槽11は、長さ方向Yにおいて隣り合う貯留槽11同士で貯留槽11の内側の空間同士が連通している。これらのように抽出装置10は、隣り合う貯留槽11同士が長さ方向Yに離隔しつつ、隣り合う貯留槽11同士は、貯留槽11の上側に配置される壁面14によって接続されている。このため、抽出装置10が有する複数の貯留槽11は、一体となって設けられている。
【0020】
実施形態1では、抽出装置10は、3つの貯留槽11が長さ方向Yに並んで配置されている。抽出装置10が有する貯留槽11の数は、2つ以下であってもよく、4つ以上であってもよい。
【0021】
抽出乾燥装置1が有する乾燥装置(図示省略)は、フィルムFの搬送方向における抽出装置10の下流側に配置されており、抽出装置10が有する複数の貯留槽11における、フィルムFの搬送方向において最も下流側に位置する貯留槽11に連通している。抽出装置10が有する複数の貯留槽11に連通する乾燥装置は、抽出装置10でフィルムFに付着した溶剤MCを乾燥させる。即ち、乾燥装置は、フィルムFを乾燥させることにより、抽出装置10でフィルムFに付着した溶剤MCをフィルムFから取り除く。
【0022】
乾燥装置は、例えば、フィルムFの温度を高めながらフィルムFを搬送する温調ロール(図示省略)や、フィルムFに対して気体を吹き付けることによりフィルムFに付着している溶剤MCを取り除くエアノズル(図示省略)等を有している。乾燥装置では、これらにより、乾燥装置内でフィルムFを搬送しながら溶剤MCをフィルムFから取り除く。乾燥装置で溶剤MCが取り除かれたフィルムFは、乾燥装置の外に向けて搬送されることにより、抽出乾燥装置1の下流側の工程に向けて搬送される。
【0023】
図2は、
図1に示す複数の貯留槽11のうちの1つの貯留槽11の詳細図である。貯留槽11ごとに配置される複数の搬送ロール20は、それぞれ円柱状の形状で形成されており、搬送ロール20の軸方向における両端が、それぞれ回転自在に支持されている。詳しくは、貯留槽11ごとに配置される複数の搬送ロール20は、貯留槽11内に配置される搬送ロール20と、貯留槽11の上側に配置される搬送ロール20とを有している。このうち、貯留槽11の上側に配置される搬送ロール20は、貯留槽11の上側の位置で幅方向Xにおける両側に配置される壁面14に回転自在に支持されている。
【0024】
図3は、
図2のH-H矢視図である。貯留槽11内に配置される搬送ロール20は、貯留槽11が有する貯留部ごとに配置されている。このため、実施形態1では、貯留槽11内に配置される搬送ロール20は、貯留槽11が有する貯留部に合わせて各貯留槽11に2つが配置されている。貯留槽11内に配置される搬送ロール20は、それぞれ搬送ロール支持部材21によって支持されている。搬送ロール支持部材21は、貯留槽11内における貯留槽11の底面13に配置されている。搬送ロール支持部材21は、貯留槽11内に配置される搬送ロール20ごとに設けられており、搬送ロール20の長さに合わせて搬送ロール20の両端付近に配置されている。貯留槽11内に配置される搬送ロール20は、このように貯留槽11の底面13に配置される搬送ロール支持部材21に回転自在に支持されている。
【0025】
貯留槽11ごとに配置される複数の搬送ロール20は、これらのように貯留槽11の上側の位置に配置される壁面14、または貯留槽11内に配置される搬送ロール支持部材21によって、それぞれ回転自在に支持されている。また、これらの複数の搬送ロール20は、モータ等の動力源から供給される動力により、円柱の軸心を中心として回転可能になっている。このため、搬送ロール20は、フィルムFが巻き掛けられた状態で回転をすることにより、フィルムFを搬送することができる。搬送ロール20は、抽出装置10でフィルムFを搬送する際の搬送経路25に沿って配置されており、フィルムFは、貯留槽11内で複数の搬送ロール20に巻き掛けられることにより、搬送経路25に沿って搬送される。換言すると、フィルムFの搬送経路25は、貯留槽11ごとに複数の搬送ロール20が配置されることにより形成される。
【0026】
貯留槽11ごとに配置される複数の搬送ロール20のうち、搬送ロール支持部材21によって支持される搬送ロール20は、貯留槽11内における溶剤MCの液面よりも下側、即ち、溶剤MC内に配置される。これにより、フィルムFの搬送経路25は、貯留槽11内における溶剤MCが貯留する部分にも形成され、搬送ロール20によって搬送されるフィルムFは、貯留槽11に貯留される溶剤MCを通りながら搬送される。
【0027】
貯留槽11には、さらに、フィルムFを複数の搬送ロール20に掛け回すための通紙装置30が配置されている。通紙装置30は、抽出装置10が有する貯留槽11ごとに配置されている。通紙装置30は、フィルムFを複数の搬送ロール20に掛け回すのに用いるロープR(
図11参照)を、複数の搬送ロール20に掛け回すための装置になっている。通紙装置30は、複数のスプロケット31と、複数のスプロケット31に掛け回されるチェーン40とを有している。通紙装置30で用いられるチェーン40は、いわゆるローラチェーンになっており、スプロケット31は、ローラチェーン用のスプロケットになっている。
【0028】
複数のスプロケット31のうち、1つのスプロケット31は、動力源である駆動モータ35(
図12参照)からの駆動力によって回転をする駆動スプロケット34になっている。また、複数のスプロケット31のうち、他のスプロケット31は、複数のスプロケット31に掛け回されたチェーン40が、駆動スプロケット34が回転することによって動くことにより、動くチェーン40に従って回転をする従動スプロケット32になっている。
【0029】
複数のスプロケット31は、少なくとも貯留槽11における幅方向Xの端部に位置する壁面12に配置されており、実施形態1では、複数のスプロケット31は、貯留槽11の壁面12と、貯留槽11の上側の位置に配置される壁面14とに配置されている。つまり、複数のスプロケット31は、搬送ロール20が支持される、貯留槽11の上側の位置で幅方向Xの両側に位置する壁面14のうちの一方の壁面14と、当該壁面14から連続する貯留槽11の壁面12とにそれぞれ配置されている。このように、貯留槽11の壁面12と、貯留槽11と一体で設けられる壁面14とに配置される複数のスプロケット31は、幅方向Xに見た場合において、複数の搬送ロール20によるフィルムFの搬送経路25に沿って配置される部分を有して配置されている。
【0030】
詳しくは、複数のスプロケット31のうちの一部の複数のスプロケット31は、幅方向Xに見た場合において複数の搬送ロール20によるフィルムFの搬送経路25の近傍に配置されて、概ねフィルムFの搬送経路25に沿って配置されている。また、複数のスプロケット31のうちの他の複数のスプロケット31は、フィルムFの搬送経路25よりも上側に配置されている。
【0031】
これらのように配置される複数のスプロケット31に掛け回されるチェーン40は、複数のスプロケット31を周回し、循環するように掛け回される。このため、チェーン40は、複数のスプロケット31のうちフィルムFの搬送経路25に沿って配置されるスプロケット31に掛け回される部分では、幅方向Xに見た場合に概ね搬送経路25に沿って配置される。また、複数のスプロケット31のうちフィルムFの搬送経路25よりも上側に配置される部分では、当該貯留槽11におけるフィルムFの搬送経路25における上流側と下流側との間にかけて、チェーン40は配置される。
【0032】
このため、複数のスプロケット31に掛け回されるチェーン40は、駆動スプロケット34が回転をした際に、フィルムFの搬送経路25に沿って移動しつつ、搬送経路25における上流側と下流側と間で移動することにより循環することが可能になっている。なお、チェーン40が循環をする際における移動方向は、フィルムFの搬送経路25に沿った部分では、フィルムFの搬送方向における上流側から下流側に移動し、搬送経路25よりも上側に位置する部分では、フィルムFの搬送方向における下流側から上流側に移動する向きで循環をする。
【0033】
また、実施形態1では、1つの通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうち、一部のスプロケット31は、長さ方向Yにおける位置が、当該通紙装置30が配置される貯留槽11の下流側で隣り合う貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内に配置されている。詳しくは、通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうち、フィルムFの搬送経路25よりも上側に位置する一部のスプロケット31が、当該通紙装置30が配置される貯留槽11の下流側で隣り合う貯留槽11の上側の壁面14に配置されている。フィルムFの搬送経路25は、長さ方向Yに隣り合う貯留槽11同士の間に亘っても形成されるため、1つの通紙装置30が有する一部のスプロケット31が、隣り合う貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内に配置されることにより、スプロケット31に掛け回されるチェーン40は、貯留槽11同士の間に位置する搬送経路25の近傍にも配置される。
【0034】
通紙装置30は、さらに、チェーン40の張力を調整するための張力調整部50を有している。張力調整部50には、複数のスプロケット31のうちの一部のスプロケット31が取り付けられており、張力調整部50は、張力調整部50に取り付けられるスプロケット31に対してチェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を付与することにより、チェーン40の張力を調整する。
【0035】
張力調整部50は、スプロケット31と同様に、貯留槽11の壁面12、または貯留槽11と一体で設けられる壁面14に配置されている。実施形態1では、張力調整部50は、貯留槽11の上側の位置に配置されて貯留槽11と一体で設けられる壁面14における、抽出装置10の上面15の近傍の位置に配置されている。このため、張力調整部50は、貯留槽11に貯留される溶剤MCの液面よりも上側となる位置に配置されている。
【0036】
また、貯留槽11の上側の壁面14に配置される張力調整部50は、フィルムFの搬送方向における上流寄りの位置に配置されている。また、貯留槽11の上側の壁面14には、当該貯留槽11の上流側に配置される貯留槽11の通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうちの一部のスプロケット31が、フィルムFの搬送方向における上流寄りの位置に配置されている。このため、張力調整部50は、上流側に配置される貯留槽11の通紙装置30が有する一部のスプロケット31の近傍に配置されている。
【0037】
また、抽出装置10の上面15における、壁面14に配置される張力調整部50の近傍には、ハッチ扉16が配置されている。上面15には、張力調整部50の近傍に、上面15を上下方向Zに貫通する孔状のハッチが形成されており、ハッチ扉16は、ハッチを開閉する扉になっている。張力調整部50の近傍には、上流側に配置される貯留槽11の通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうちの一部のスプロケット31が配置されるため、ハッチ扉16は、長さ方向Yにおいて当該スプロケット31と、張力調整部50との間に亘って配置されている。
図1では、3つの貯留槽11のうちの中央の貯留槽11ではハッチ扉16が開いた状態で図示されており、左右両側の貯留槽11ではハッチ扉16が閉じた状態で図示されている。
【0038】
図4は、
図2に示す張力調整部50の詳細図である。
図5は、
図4に示す張力調整部50のスプロケット31を透過した状態を示す説明図である。
図6は、
図4のA-A矢視図である。
図7は、
図4のB-B矢視図である。張力調整部50は、ベースプレート51と、ガイド53と、スライドベース60と、張力調整ユニット70とを有する。ベースプレート51は、張力調整部50におけるベースとなる部材となっており、ベースプレート51を貯留槽11の上側の壁面14に取り付けることにより、張力調整部50は貯留槽11の上側の壁面14に配置される。ベースプレート51は、略矩形の板状に形成されており、複数の取付ボルト52によって貯留槽11の上側の壁面14に取り付けられる。これにより、張力調整部50は、貯留槽11の上側の壁面14に配置される。
【0039】
ガイド53は、ベースプレート51上におけるスライドベース60の移動方向を規制すると共に、スライドベース60を移動させる際のガイドを行うための部材になっている。具体的には、スライドベース60は、ベースプレート51に重ねてベースプレート51上に配置される部材になっており、ガイド53は、長さ方向Yにおけるスライドベース60の両側の位置で取付ボルト54によってベースプレート51に取り付けられている。これにより、ガイド53は、長さ方向Yへのスライドベース60の移動を規制することができる。
【0040】
また、長さ方向Yにおけるスライドベース60の両側の位置するガイド53は、それぞれ上下方向Zに延びて形成されている。これにより、ガイド53は、上下方向Zへスライドベース60を移動させる際におけるガイドを行うことが可能になっている。
【0041】
スライドベース60には、長さ方向Yの両端付近に、上下方向Zに延びる長孔61が形成されている。長孔61には、スライドベース60をベースプレート51に固定するための取付ボルト62が差し込まれる。このため、取付ボルト62を緩めた際には、長孔61の延在方向である上下方向Zに、スライドベース60を取付ボルト62に対して相対移動させることができ、取付ボルト62を締め込んだ際には、取付ボルト62によってスライドベース60をベースプレート51に固定することができる。従って、スライドベース60は、取付ボルト62を緩めることにより、ガイド53によってガイドされながら上下方向Zに移動させることができ、取付ボルト62を締め込むことにより、スライドベース60を上下方向Zにおける現在の位置でベースプレート51に固定することができる。
【0042】
このように、ベースプレート51に対して上下方向Zに移動させることのできるスライドベース60には、調整ボルト55が連結されている。調整ボルト55は、ベースプレート51に対しては上下方向Zに相対移動不可となって配置され、スライドベース60に対しては、調整ボルト55を回転させることにより、スライドベース60に対して上下方向Zに相対移動可能となって連結されている。このため、スライドベース60は、取付ボルト62を緩めた状態で調整ボルト55を回転させることによってスライドベース60を上下方向Zに移動させ、任意の位置で取付ボルト62を締め込むことにより、スライドベース60の上下方向Zにおける位置を調整することが可能になっている。
【0043】
張力調整ユニット70は、ブラケット71と、スライド軸73と、ばね75と、スライド部材80とを有しており、スライドベース60に取り付けられている。ブラケット71は、長さ方向Yに見た場合における形状が略コの字状の形状で形成されている。ブラケット71は、コの字の開口側が、スライドベース60が位置する側の反対側に位置し、コの字の閉塞側が、スライドベース60が位置する側に位置する向きで、取付ボルト72によってスライドベース60に取り付けられている。このため、ブラケット71は、コの字の上下端の部分が、上下方向Zにおける上端側と下端側とにそれぞれ位置しており、スライドベース60が位置する側から、スライドベース60が位置する側の反対側に向けて幅方向Xに突出する向きで配置されている。張力調整ユニット70は、ブラケット71がスライドベース60に取り付けられることにより、スライドベース60に取り付けられている。
【0044】
スライドベース60には、長さ方向Yにおける、ブラケット71が取り付けられる部分の両側には、それぞれガイド部材63が配置されている。ガイド部材63は、スライドベース60に形成されるねじ孔(図示省略)に螺合するボルトと、ボルトのねじ部が内側に入り込むパイプ部材とからなり、パイプ部材の内側にボルトのねじ部を入り込ませた状態で、スライドベース60のねじ孔にボルトを螺合させてスライドベース60に取り付ける。張力調整ユニット70のブラケット71は、スライドベース60に取り付けられるガイド部材63同士の間に入り込ませることにより、長さ方向Yにおける位置合わせを行いながら、スライドベース60に取り付ける。
【0045】
スライド軸73は、上下方向Zに延びる向きで配置されており、ブラケット71における上下方向Zの上端側と下端側とにそれぞれ位置して幅方向Xに突出して形成される部分同士の間に亘って配置されている。スライド軸73は、下側部分がナット74によってブラケット71に固定されることにより、上下方向Zに延びる向きでブラケット71に取り付けられている。ブラケット71には、このように取り付けられるスライド軸73が2本配置されており、2本のスライド軸73は、長さ方向Yに離隔してそれぞれ上下方向Zに延びる向きでブラケット71に配置されている。
【0046】
スライド部材80は、ブラケット71に配置されるスライド軸73に対して、スライド軸73の延在方向に移動自在に配置されている。詳しくは、スライド部材80には、上下方向Zに延びてスライド軸73が貫通する貫通孔(図示省略)が形成されており、スライド部材80は、貫通孔にスライド軸73を貫通させて配置されている。このため、スライド部材80は、スライド軸73に対して、スライド軸73の延在方向に移動自在になっており、即ち、スライド部材80は、スライド軸73が取り付けられるブラケット71に対して、スライド軸73に沿って上下方向Zに相対移動自在に配置されている。
【0047】
ばね75は、コイル状の圧縮ばねになっており、スライド軸73における、スライド部材80が位置する部分よりも上下方向Zにおける下側に配置されている。ばね75は、2本のスライド軸73の双方に配置されている。ばね75は、スライド軸73の外側に配置されており、即ち、スライド軸73は、コイル状のばね75の内側を通って配置されている。圧縮ばねであるばね75は、上下方向Zにおける上端がスライド部材80に当接し、上下方向Zにおける下端が、ブラケット71における、スライドベース60が位置する側から幅方向Xに突出している部分に当接している。
【0048】
このため、ばね75は、ブラケット71の下端で幅方向Xに突出している部分と、スライド部材80とに対して、双方が上下方向Zに離隔する方向の付勢力を付与している。換言すると、ばね75は、スライド部材80の下側からスライド部材80に対して、上下方向Zにおける上側方向への付勢力を付与する。ばね75は、このようにスライド部材80に対して付勢力を付与する付勢部材として設けられている。
【0049】
スライド部材80には、スプロケット31を回転自在に支持するスプロケット支持部材81が取り付けられている。スプロケット支持部材81には、通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうちの1つのスプロケット31が回転自在に取り付けられている。このため、スライド部材80には、スプロケット支持部材81を介してスプロケット31が回転自在に取り付けられている。スプロケット支持部材81を介してスライド部材80に取り付けられているスプロケット31は、駆動スプロケット34の回転に伴って動くチェーン40の動きに従って回転をする、従動スプロケット32になっている。また、スプロケット支持部材81を介してスライド部材80に取り付けられるスプロケット31は、スライド軸73に沿ってスライド部材80が動いた際にスプロケット31もスプロケット支持部材81及びスライド部材80と一体となって動くことにより、チェーン40の張力を調整することのできる調整用スプロケット33としても設けられている。
【0050】
スプロケット支持部材81は、スライド部材80に対して、幅方向Xにおいてブラケット71やスライドベース60が位置する側の反対側の端部側に配置されている。また、調整用スプロケット33は、スプロケット支持部材81に対して、幅方向Xにおいてスライド部材80が位置する側の反対側の端部側に配置されている。調整用スプロケット33は、調整用スプロケット33が回転する際の回転軸が幅方向Xとなる向きで、スプロケット支持部材81に取り付けられている。
【0051】
図8は、
図6のC-C断面図である。調整用スプロケット33は、ベアリング82を介してスプロケット支持部材81に取り付けられている。ベアリング82は、いわゆる転がり軸受になっている。スプロケット支持部材81は、ベアリング82が有する内輪の内側に入り込み、ベアリング82の内輪を軸方向における両側から、スライド部材80と内輪押え部材85とで挟み込む。内輪押え部材85は、ベアリング82の内輪を挟み込んだ状態で取付ボルト86によってスプロケット支持部材81に取り付ける。
【0052】
また、調整用スプロケット33は、ベアリング82が有する外輪を調整用スプロケット33の内側に入り込ませる状態で、ベアリング82の外輪を軸方向における両側から、調整用スプロケット33と外輪押え部材83とで挟み込む。外輪押え部材83は、ベアリング82の外輪を挟み込んだ状態で取付ボルト84によって調整用スプロケット33に取り付ける。調整用スプロケット33は、このようにベアリング82を介してスプロケット支持部材81に取り付けられており、これにより、調整用スプロケット33は、ベアリング82の軸心を中心としてスプロケット支持部材81に対して相対回転をする。
【0053】
なお、通紙装置30が有する他の従動スプロケット32も、調整用スプロケット33と同様に、従動スプロケット32を支持する支持部材に対して、それぞれベアリング82を介して取り付けられている。これにより、通紙装置30が有する各従動スプロケット32は、それぞれ回転自在に配置されている。
【0054】
張力調整ユニット70が有するスプロケット支持部材81には、ベアリング82を介して調整用スプロケット33が取り付けられ、スプロケット支持部材81は、スライド部材80に取り付けられることにより、調整用スプロケット33は、軸方向が幅方向Xとなる向きで、スライド部材80に対して回転自在に取り付けられる。即ち、スライド部材80は、軸方向が幅方向Xとなる向きで、スプロケット支持部材81を介して調整用スプロケット33を回転自在に支持する。スライド部材80を貫通するスライド軸73は、上下方向Zに延びるため、スライド軸73は、スライド部材80で回転自在に支持する調整用スプロケット33の軸方向に対して直交する方向に延びる。このため、スプロケット支持部材81を介してスライド部材80に支持される調整用スプロケット33は、スライド軸73に沿ってスライド軸73に対して上下方向Zに相対移動をすることにより、スプロケット支持部材81及びスライド部材80と共に、調整用スプロケット33の軸方向に直交する方向である上下方向Zに移動をする。
【0055】
スライド部材80で支持する調整用スプロケット33には、
図5に示すように、チェーン40は調整用スプロケット33に対して上側に掛け回される。このため、スライド部材80がスライド軸73に沿って上下方向Zに移動した際には、チェーン40が掛け回される調整用スプロケット33も上下方向Zに移動することにより、チェーン40の張力が変化する。張力調整ユニット70が有するスライド部材80は、このようにチェーン40の張力を変化させる方向への調整用スプロケット33の移動を可能に、調整用スプロケット33を支持する。
【0056】
一方、付勢部材であるばね75は、調整用スプロケット33を支持するスライド部材80に対して、スライド軸73に沿ってスライド部材80の下側から上側方向への付勢力を付与する。チェーン40は、調整用スプロケット33に対して上側に巻き掛けられるため、ばね75からの付勢力によってスライド部材80が上側に移動した場合には、スライド部材80と共に上側に移動する調整用スプロケット33の動きは、チェーン40を張らせる動きとしてチェーン40に対して作用する。
【0057】
つまり、スプロケット支持部材81を介してスライド部材80に支持される調整用スプロケット33がスライド部材80と共に上側に移動した場合には、チェーン40が上側に掛け回される調整用スプロケット33は、チェーン40の張力を大きくさせる。このため、換言すると、付勢部材であるばね75は、調整用スプロケット33を支持するスライド部材80に対して、スライド軸73の延在方向で、且つ、調整用スプロケット33に掛け回されるチェーン40の張力が大きくなる方向の付勢力を付与する。ばね75は、このようにスライド部材80に対して付勢力を付与することにより、スライド部材80を介して、調整用スプロケット33に対してチェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を付与する。
【0058】
このように、調整用スプロケット33に対してチェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を付与するばね75は、チェーン40の張力によってチェーン40から調整用スプロケット33に作用する下向きの力等に応じて、ばね定数が適宜設定されたものが用いられるのが好ましい。
【0059】
図9は、チェーン40におけるアタッチメント41が配置される部分の詳細図である。
図10は、
図9のD-D矢視図である。通紙装置30が有するチェーン40は、フィルムFを複数の搬送ロール20に掛け回すためのロープR(
図11参照)を接続することが可能になっている。このため、ローラチェーンであるチェーン40には、チェーン40が有する一部のリンクに、ロープRを接続するためのアタッチメント41が取り付けられている。アタッチメント41は、チェーン40の幅方向における一方側に配置されている。アタッチメント41は、チェーン40の幅方向に突出する板状の部材を有しており、板状の部材には、板の厚み方向に貫通する孔部42が形成されている。
【0060】
ロープRは、アタッチメント41の孔部42に係合させる接続器具(図示省略)をロープRの端部に設け接続器具をアタッチメント41に係合させたり、アタッチメント41の孔部42にロープRを通してアタッチメント41に結わえたりすることにより、チェーン40に接続する。
【0061】
<抽出乾燥装置1の作用>
実施形態1に係る抽出乾燥装置1は、以上のような構成を含み、以下、その作用について説明する。抽出乾燥装置1は、リチウムイオン電池に用いられるセパレータフィルム等の多孔質のフィルムFの製造工程において、フィルムFの抽出・乾燥を行う。抽出乾燥装置1を用いて、フィルムFの抽出・乾燥を行う際には、抽出乾燥装置1の運転を開始する前に、まず、抽出乾燥装置1が有する搬送ロール20等の各ロールにフィルムFを掛け回し、これらのロールによりフィルムFを搬送できる状態にする。これにより、各ロールを回転させることにより、フィルムFを連続的に搬送することが可能になる。
【0062】
このようにフィルムFを配置した状態で、抽出乾燥装置1の運転を開始することにより、抽出乾燥装置1には、フィルムFの搬送方向における上流側の工程で成形した、ポリオレフィン系樹脂に多数の微細孔が開孔して微細孔に液状可塑剤が入り込んだ薄膜のフィルムFが搬送される。フィルムFは、まず、抽出乾燥装置1が有する抽出装置10に搬送され、抽出装置10では、貯留槽11内に配置される搬送ロール20によりフィルムFを搬送しながら、貯留槽11に貯留された溶剤MCにフィルムFを浸けることにより、フィルムFから液状可塑剤を除去する。
【0063】
液状可塑剤が除去されたフィルムFは、抽出装置10から乾燥装置(図示省略)に搬送される。乾燥装置では、フィルムFを搬送しながらフィルムFを乾燥させ、フィルムFに付着した溶剤MCをフィルムFから取り除く。抽出装置10で溶剤MCによって液状可塑剤が抽出され、乾燥装置で溶剤MCの乾燥が行われたフィルムFは、乾燥装置の外に送り出されて抽出乾燥装置1の下流側の工程に搬送される。
【0064】
抽出乾燥装置1では、このように搬送ロール20等のロールによってフィルムFを搬送するため、抽出乾燥装置1によってフィルムFの抽出・乾燥を行う際には、各ロールにフィルムFを掛け回すことになるが、ロールは抽出乾燥装置1に複数配置されている。抽出乾燥装置1に配置される複数のロールは、抽出乾燥装置1でフィルムFの抽出・乾燥を行う際におけるフィルムFの搬送経路25を確保するために、ロール同士を離隔して配置されている。このため、複数のロールへのフィルムFの掛け回しは行い難くなっている。
【0065】
例えば、抽出装置10に配置される複数の搬送ロール20は、複数の貯留槽11を跨いだフィルムFの搬送経路25を確保するために上下方向Zに離隔させて、上下方向Zに往復する搬送経路25を形成している。このため、抽出装置10においても、複数の搬送ロール20へのフィルムFの掛け回しは行い難くなっている。このため、抽出装置10には、複数の搬送ロール20にフィルムFを掛け回すための通紙装置30が貯留槽11ごとに配置されている。抽出装置10に配置される複数の搬送ロール20にフィルムFを掛け回す際には、通紙装置30を用いて掛け回す。
【0066】
図11は、通紙装置30が有するチェーン40にロープRを接続した状態を示す説明図である。通紙装置30を用いてフィルムFを搬送ロール20に掛け回す際には、通紙装置30を用いて搬送ロール20にロープRを掛け回した後、搬送ロール20に掛け回されたロープRを用いて、フィルムFを搬送ロール20に掛け回す。通紙装置30を用いて搬送ロール20にロープRを掛け回す際には、まず、チェーン40に配置されるアタッチメント41にロープRを接続する。ロープRは、貯留槽11内に対してはフィルムFの搬送方向における上流側から貯留槽11内に入り込ませ、ロープRにおける貯留槽11内に入り込ませた側の端部、即ち、フィルムFの搬送方向における下流側に位置するロープRの端部を、チェーン40のアタッチメント41に接続する。ロープRは、ロープRをアタッチメント41に接続するための接続器具(図示省略)を用いたり、アタッチメント41に形成される孔部42にロープRを通してロープRをアタッチメント41に結わえたりすることにより、アタッチメント41にロープRを接続する。
【0067】
通紙装置30は、このようにチェーン40のアタッチメント41にロープRを接続した状態で、駆動モータ35を駆動させることによりチェーン40を周回させる。つまり、駆動モータ35を駆動させることによって駆動スプロケット34を回転させ、駆動スプロケット34の回転を駆動スプロケット34からチェーン40に伝達することにより、チェーン40が掛け回される複数のスプロケット31に沿ってチェーン40を周回させる。
【0068】
ここで、複数のスプロケット31は、抽出装置10を幅方向Xに見た場合にフィルムFの搬送経路25に沿って配置される部分を有している。このため、複数のスプロケット31に掛け回されるチェーン40も、抽出装置10を幅方向Xに見た場合に、フィルムFの搬送経路25に沿って配置される部分を有している。駆動モータ35を駆動させることによってチェーン40を周回させる際は、チェーン40の周回の方向は、チェーン40における、フィルムFの搬送経路25に沿って配置される部分が、フィルムFの搬送方向に沿った方向となる向きで周回させる。
【0069】
チェーン40を周回させる際には、チェーン40に配置されているアタッチメント41も、周回するチェーン40に沿って移動する。このため、アタッチメント41に接続されるロープRも、アタッチメント41に接続されている部分が、複数のスプロケット31に掛け回されるチェーン40に沿って移動する。その際に、チェーン40は、アタッチメント41にロープRが接続された状態では、アタッチメント41が、フィルムFの搬送経路25に沿ってフィルムFの搬送方向における上流側から下流側に向かって移動する範囲でチェーン40を周回させる。
【0070】
チェーン40のアタッチメント41に接続されているロープRは、抽出装置10に対してはフィルムFの搬送方向における上流側から抽出装置10内に入り込ませることによって、アタッチメント41に接続されている。このため、チェーン40が周回することに伴って、アタッチメント41がフィルムFの搬送経路25に沿って搬送方向おける上流側から下流側に移動した際には、ロープRはフィルムFの搬送方向における下流側の端部が、アタッチメント41と共にフィルムFの搬送方向おける上流側から下流側に移動することになる。これにより、抽出装置10内に対してフィルムFの搬送方向における上流側から入り込むロープRは、チェーン40の周回に伴って移動するアタッチメント41に引かれながら徐々に抽出装置10内に入り込む。
【0071】
その際に、アタッチメント41は、幅方向Xに見た場合にフィルムFの搬送経路25に沿って移動するため、ロープRにおけるアタッチメント41に接続される側の端部も、フィルムFの搬送経路25に沿って移動する。フィルムFの搬送経路25は、抽出装置10内に複数の搬送ロール20が配置されることにより形成されているため、ロープRにおけるアタッチメント41に接続される側の端部が、フィルムFの搬送経路25に沿って移動した際には、ロープRは、複数の搬送ロール20同士の間に亘って移動する。これにより、アタッチメント41と共にフィルムFの搬送方向における上流側から下流側に移動するロープRは、チェーン40が周回することに伴って搬送ロール20に掛け回されながら移動する。
【0072】
このように、搬送ロール20にロープRを掛け回すことのできる通紙装置30は、貯留槽11ごとに配置されており、抽出装置10は、貯留槽11を複数有している。通紙装置30によって、貯留槽11に配置される搬送ロール20にロープRを掛け回す際には、フィルムFの搬送方向における上流側に位置する貯留槽11に配置される搬送ロール20から順番に掛け回す。
【0073】
フィルムFの搬送方向において最も上流側に位置する貯留槽11に配置される搬送ロール20にロープRを掛け回す際には、当該貯留槽11に配置される通紙装置30を用いて上述した手法で掛け回す。これにより、最も上流側に位置する貯留槽11では、貯留槽11内においてフィルムFの搬送方向における上流側から下流側にかけて搬送ロール20に対してロープRを掛け回す。
【0074】
通紙装置30のチェーン40を周回させることによって、当該通紙装置30が配置される貯留槽11の長さ方向Yの範囲内に配置される全ての搬送ロール20にロープRを掛け回し、ロープRが接続されるアタッチメント41が、当該貯留槽11とその下流側の貯留槽11とが連通する部分付近に到達したら、下流側の貯留槽11の通紙装置30にロープRを付け替える。詳しくは、実施形態1では、1つの通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうち、フィルムFの搬送経路25よりも上側に位置する一部のスプロケット31が、当該通紙装置30が配置される貯留槽11の下流側で隣り合う貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内に配置されている。
【0075】
このため、ロープRが接続されたアタッチメント41が、チェーン40を周回させることによって下流側で隣り合う貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内に入り込んだら、駆動モータ35を停止させてチェーン40の周回を停止させ、アタッチメント41に接続されるロープRをアタッチメント41から外す。アタッチメント41から外したロープRは、下流側の貯留槽11に配置される通紙装置30が有するチェーン40のアタッチメント41に接続する。これにより、上流側の貯留槽11に配置される通紙装置30のチェーン40のアタッチメント41に接続されるロープRを、下流側の貯留槽11に配置される通紙装置30のチェーン40のアタッチメント41に付け替える。
【0076】
ロープRの付け替えは、抽出装置10の上面15に形成されるハッチより行う。ハッチには、開閉自在なハッチ扉16が配置されており、ロープRの付け替えは、ハッチ扉16を開けて抽出装置10の外から行う。ハッチ扉16は、抽出装置10の上面15における張力調整部50の近傍と、上流側に配置される貯留槽11の通紙装置30が有する複数のスプロケット31のうちの一部のスプロケット31の近傍との間に亘って配置されている。
【0077】
このため、ハッチ扉16を開けることにより、ハッチ扉16が配置される側の貯留槽11の通紙装置30が有するチェーン40と、上流側に配置される貯留槽11の通紙装置30が有するチェーン40との双方を外から触れることができる。従って、ロープRを付け替える際には、ハッチ扉16を開いて抽出装置10内に位置するロープRを、上流側の貯留槽11に配置される通紙装置30のチェーン40のアタッチメント41から、下流側の貯留槽11に配置される通紙装置30のチェーン40のアタッチメント41に作業者が手で付け替える。
【0078】
チェーン40のアタッチメント41にロープRが付け替えられた、下流側の貯留槽11に配置される通紙装置30では、上流側の貯留槽11に配置される通紙装置30と同様にチェーン40を周回させることにより、当該貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内に配置される搬送ロール20に対して上述した手法でロープRを掛け回す。これにより、通紙装置30が有するチェーン40のアタッチメント41にロープRが付け替えられた貯留槽11では、フィルムFの搬送方向における上流側から下流側にかけて搬送ロール20に対してロープRを掛け回し、貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内の全ての搬送ロール20にロープRを掛け回す。
【0079】
ロープRが接続されるチェーン40のアタッチメント41が、チェーン40を周回させることによって下流側で隣り合う貯留槽11の長さ方向Yにおける範囲内に入り込んだら、駆動モータ35を停止させて、アタッチメント41に接続されるロープRを、下流側の貯留槽11に配置される通紙装置30が有するチェーン40のアタッチメント41に付け替える。
【0080】
これらを繰り返すことにより、抽出装置10が有する複数の貯留槽11にそれぞれ配置される複数の搬送ロール20のそれぞれに対してロープRを掛け回す。即ち、抽出乾燥装置1では、抽出装置10が有する複数の搬送ロール20にフィルムFを掛け回す際には、まず、抽出装置10が有する複数の貯留槽11にそれぞれ配置される通紙装置30を用いて、抽出装置10が有する全ての搬送ロール20にロープRを掛け回す。
【0081】
図12は、フィルムFにロープRを結わえてロープRを用いてフィルムFを搬送ロール20に掛け回す際の説明図である。抽出装置10が有する搬送ロール20にロープRを掛け回したら、搬送ロール20に掛け回されたロープRを用いてフィルムFを搬送ロール20に掛け回す。具体的には、搬送ロール20に掛け回されているロープRの、フィルムFの搬送方向における上流側の端部を、フィルムFの下流側の端部に接続する。フィルムFへのロープRの接続は、例えば、フィルムFの幅方向Xにおける中央付近にロープRを縛り付け、フィルムFに対してロープRを結わくことにより接続する。また、フィルムFの搬送方向におけるロープRの下流側の端部は、通紙装置30が有するチェーン40のアタッチメント41から取り外す。この状態で、搬送ロール20にフィルムFを掛け回す作業を行う作業者が、ロープRの下流側の端部側からロープRを下流側に引っ張ることにより、フィルムFを引っ張る。これにより、ロープRに引っ張られるフィルムFは下流側に移動する。
【0082】
その際に、ロープRは貯留槽11内に配置される搬送ロール20に掛け回されているため、ロープRに引っ張られて下流側に移動するフィルムFは、ロープRと同様に搬送ロール20に掛け回されながら下流側に移動する。つまり、フィルムFは、ロープRに引っ張られることにより下流側に移動するため、フィルムFは、ロープRの配置経路に沿って移動する。ロープRの配置経路は、貯留槽11内に配置される搬送ロール20に掛け回される経路になっており、即ち、フィルムFの搬送経路25に沿った経路になっている。このため、ロープRに引っ張られることにより下流側に移動するフィルムFは、ロープRの配置経路と実質的に一致する、フィルムFの搬送経路25に沿って下流側に移動し、上流側の搬送ロール20から順次掛け回される。
【0083】
また、ロープRは、貯留槽11ごとに配置される通紙装置30によって、複数の貯留槽11に跨って搬送ロール20に掛け回されるため、ロープRに引っ張られることにより移動するフィルムFは、複数の貯留槽11を跨いで移動し、それぞれの貯留槽11内で搬送ロール20に掛け回される。
【0084】
このように、ロープRを下流側から引っ張ることによりフィルムFの搬送経路25に沿ってフィルムFを下流側に移動させる際には、搬送ロール20を回転させながら行う。つまり、搬送ロール20が停止している場合、フィルムFと搬送ロール20との間の摩擦や、ロープRと搬送ロール20との間の摩擦によりフィルムFを移動させ難いため、フィルムFを搬送方向における上流側から下流側に移動させることができる方向に、搬送ロール20を回転させる。これにより、フィルムFは、作業者がフィルムFに接続されたロープRを引っ張ることによる力のみでなく、搬送ロール20が回転することによる、搬送ロール20がフィルムFを上流側から下流側に送り出す作用によっても、フィルムFは搬送経路25に沿って下流側に移動する。
【0085】
これらのように、フィルムFに接続されると共にフィルムFの搬送経路25に沿って配置されたロープRを、フィルムFの搬送方向における下流側から引っ張ってフィルムFを移動させることにより、フィルムFは上流側から下流側に向けて徐々に搬送ロール20に掛け回される。フィルムFは、上流側から下流側に向けて順次搬送ロール20に掛け回されることにより、最終的には抽出装置10が有する全ての搬送ロール20に掛け回され、複数の貯留槽11内におけるフィルムFの搬送経路25に沿って配置される。
【0086】
抽出装置10の貯留槽11ごとに配置される通紙装置30を用いてフィルムFを搬送ロール20に掛け回す際には、これらのように通紙装置30によって搬送ロール20にロープRを掛け回した後、フィルムFにロープRを接続してロープRを引っ張ることにより、搬送ロール20にフィルムFを掛け回す。
【0087】
通紙装置30では、ロープRを搬送ロール20に掛け回すための部材として、複数のスプロケット31間を周回させるチェーン40を使用している。チェーン40は、張力の調整が必要なため、通紙装置30は、チェーン40の張力を調整するための部材として張力調整部50を有している。張力調整部50によってチェーン40の張力を調整する際には、通紙装置30の各スプロケット31にチェーン40が掛け回された状態で、スライドベース60を固定する取付ボルト62を緩め、調整ボルト55を回転させる。これにより、スライドベース60は、ガイド53に沿って上下方向Zに移動するため、スライドベース60に取り付けられる張力調整ユニット70で支持する調整用スプロケット33も、スライドベース60と共に上下方向Zに移動する。
【0088】
チェーン40は、このように調整用スプロケット33が上下方向Zに移動することにより張力が変化するため、調整用スプロケット33の位置が、適切なチェーン40の張力となる位置で、スライドベース60を固定する取付ボルト62を締め付ける。張力調整部50では、このようにスライドベース60の上下方向Zにおける位置を調整することを介して調整用スプロケット33の上下方向Zにおける位置を調整することにより、チェーン40の張力を調整する。
【0089】
また、チェーン40が掛け回される従動スプロケット32は、それぞれベアリング82によって回転自在に支持されているが、通紙装置30が配置される貯留槽11は、溶剤MCを貯留する。このため、ベアリング82の潤滑剤にグリスを用いた場合、ベアリング82が溶剤MCに浸かった際にグリスが溶剤MCに流出してしまう。このため、実施形態1に係る通紙装置30では、貯留槽11内に配置される従動スプロケット32では溶剤MCをベアリング82の潤滑にも使用し、貯留槽11に溶剤MCが溜められた状態で駆動モータ35を駆動させてチェーン40を周回させる。
【0090】
一方で、溶剤MCは気化し易いため、貯留槽11に溶剤MCを溜めた際には、チェーン40は溶剤MCの気化熱によって冷やされて長さが縮み易くなる。チェーン40の長さが縮んだ場合、チェーン40の張力が大きくなるため、スプロケット31が回転する際の回転抵抗が大きくなり易くなるが、張力調整部50に配置される調整用スプロケット33は、スライド軸73に沿って移動可能なスライド部材80によって支持されている。また、スライド部材80は、付勢部材であるばね75によって、チェーン40の張力が大きくなる方向に調整用スプロケット33を移動させる方向の付勢力が付与されている。
【0091】
このため、溶剤MCの気化熱によってチェーン40が冷やされてチェーン40の長さが縮んだ際には、スプロケット支持部材81を介して調整用スプロケット33を支持するスライド部材80が、チェーン40から調整用スプロケット33に作用する力によってスライド軸73に沿って移動する。これにより、長さが縮んだチェーン40の張力が大きくなり過ぎることが抑制され、スプロケット31が回転する際の回転抵抗が大きくなり過ぎることが抑制される。また、調整用スプロケット33を支持するスライド部材80には、チェーン40の張力が大きくなる方向への付勢力がばね75によって付与されているため、チェーン40が縮むことによりスライド部材80が移動する場合でも、スライド部材80が移動し過ぎることが抑制される。
【0092】
さらに、貯留槽11から溶剤MCが抜かれること等により、チェーン40の長さが伸びてチェーン40の張力が小さくなった場合でも、調整用スプロケット33を支持するスライド部材80にはばね75によって付勢力が付与されているため、スライド部材80は、チェーン40の張力を大きくする方向へ移動する。これにより、チェーン40が伸びてチェーン40の張力が小さくなる状況でも、調整用スプロケット33がチェーン40の張力を大きくする方向にスライド部材80と共に移動することにより、チェーン40の張力は確保される。従って、チェーン40が伸びた場合でも、チェーン40は適切な張力が維持される。
【0093】
<実施形態1の効果>
以上の実施形態1に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10では、溶剤MCが貯留される貯留槽11の搬送ロール20にフィルムFを掛け回すための通紙装置30は、チェーン40の張力を調整する張力調整部50を有している。張力調整部50は、チェーン40の張力を変化させる方向への調整用スプロケット33の移動を可能に調整用スプロケット33を支持しており、チェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を調整用スプロケット33に付与するばね75を有している。これにより、チェーン40の張力に変化に応じて調整用スプロケット33を移動させることができると共に、ばね75から調整用スプロケット33に対して付与する付勢力により、チェーン40の張力を適切な大きさで継続的に維持することができる。従って、チェーン40の長さが変化し易く、チェーン40の張力が変化し易い状況においても、作業者がチェーン40の張力を手動で調整することなく、チェーン40の張力を適切な大きさで維持することができる。
【0094】
図13は、付勢部材を有さない張力調整部150の正面図である。
図14は、
図13のE-E矢視図である。実施形態1に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10の張力調整部50とは異なり、
図13、
図14に示す張力調整部150のように、張力調整部150がばね75等の付勢部材を有さない場合は、チェーン40の張力を適切な大きさで維持するのが困難になり易くなる。
図13、
図14に示す張力調整部150は、ベースプレート151と、ガイド153と、スライドベース160とを有している。ベースプレート151は、複数の取付ボルト152によって貯留槽11の上側に位置する壁面14に取り付けられる。
【0095】
スライドベース160には、上述した実施形態1と同様に、上下方向Zに延びる長孔161が形成されて取付ボルト162によってベースプレート151に上下方向Zに移動自在に取り付けられている。ガイド153は、長さ方向Yにおけるスライドベース160の両側の位置で取付ボルト154によってベースプレート151に取り付けられ、上下方向Zへスライドベース160を移動させる際におけるガイドを行うことが可能になっている。また、スライドベース160には調整ボルト155が連結され、スライドベース160は、調整ボルト155を回転させることによって、上下方向Zにおける位置を調整することができる。
【0096】
また、
図13、
図14に示す張力調整部150は、上述した実施形態1における張力調整部50とは異なり、スライドベース160には幅方向Xに延びる固定軸170が配置され、調整用スプロケット33は、固定軸170よって回転自在に支持されている。このように構成されている張力調整部150では、チェーン40の張力の調整は、スライドベース160をベースプレート151に対して上下方向Zに移動させることにより行う。これにより、スライドベース160に配置される固定軸170と、固定軸170によって支持される調整用スプロケット33とがスライドベース160と共に上下方向Zに移動するため、チェーン40の張力を調整することができる。
【0097】
このように、調整用スプロケット33を支持する固定軸170がスライドベース160に配置される張力調整部150では、チェーン40の張力の調整は、チェーン40をスプロケット31に掛け回したときのみでなく、溶剤MCで冷やされてチェーン40の長さが縮んだときも行う。溶剤MCの気化熱に起因するチェーン40の長さの変化は、チェーン40を長期間使用するによってチェーン40が伸びることとは異なり、比較的頻繁に変化し易くなっている。このため、チェーン40の張力も頻繁に変化し易くなっているが、
図13、
図14に示す張力調整部150では、チェーン40の張力が変化する度に、作業者がスライドベース160を上下方向Zに移動させて調整用スプロケット33の位置を調整することにより、チェーン40の張力を調整する。従って、ばね75等の付勢部材を有さない、
図13、
図14に示す張力調整部150では、チェーン40の張力の調整が煩雑なものとなる。
【0098】
これに対し、実施形態1に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10では、通紙装置30が有する張力調整部50は、スライドベース60に、付勢部材であるばね75を有する張力調整ユニット70が配置され、調整用スプロケット33には、チェーン40の張力を大きくする方向への付勢力が付与されている。これにより、チェーン40の張力が変化し易い状況においても、付勢力を付与されながら調整用スプロケット33がチェーン40の張力に応じて移動することにより、作業者がチェーン40の張力を手動で調整することなく、チェーン40の張力を適切な大きさで維持することができる。この結果、通紙装置30が有するチェーン40の張力の調整を容易に行うことができる。
【0099】
また、通紙装置30が有する張力調整部50は、チェーン40の張力を変化させる方向へ移動可能な調整用スプロケット33に対して、チェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を付与するため、作業者がチェーン40の張力を手動で調整することなく、張力を適切な大きさで維持することができる。これにより、チェーン40の張力が大きくなり過ぎることに起因して、チェーン40に作用する荷重が大きくなり過ぎることを抑制できるため、チェーン40の耐久性を確保することができる。また、チェーン40の張力が大きくなることに起因して、スプロケット31を回転自在に支持するベアリング82に作用する荷重が大きくなり過ぎることを抑制できるため、ベアリング82の耐久性を確保することができる。これらの結果、通紙装置30の耐久性を向上させることができる。
【0100】
また、抽出装置10には貯留槽11が複数設けられ、通紙装置30は、貯留槽11ごとに配置されるため、通紙装置30の耐久性を向上させることができる。つまり、各貯留槽11毎に1つのチェーン40を設けるのでなく、抽出装置10全体に亘った1つの長いチェーン40を掛け回す場合、スプロケット31の駆動源が1箇所ではチェーン40の自重や張力が掛かったスプロケット31のベアリング82の摩擦抵抗やロープRと搬送ロール20との間の摩擦抵抗により駆動源の負荷が高くなり易くなる。この場合、駆動源の負荷を分散して駆動源の負荷を軽減するために、駆動源を複数設けることになる。しかし、駆動源が複数ある場合、駆動源同士の速度合わせを高い精度で行う必要がある。つまり、複数設けられる駆動源同士の速度合わせの精度が高くない場合、駆動スプロケット34間のチェーン40の張力に差が付き易くなるため、チェーン40の張力が高まった部分の走行抵抗が高くなり、チェーン40を駆動出来なくなる虞がある。
【0101】
これに対し、通紙装置30を貯留槽11ごとに配置して各貯留槽11毎に1つのチェーン40と1つの駆動モータ35を設ける場合には、チェーン40ごとに設けられる駆動モータ35によって駆動スプロケット34の駆動制御を容易に行うことができる。これにより、チェーン40の張力が高くなり過ぎることを抑制できるため、チェーン40やスプロケット31のベアリング82の耐久性を向上させることができる。また、チェーン40やベアリング82に故障が生じた場合でも、各貯留槽11毎に1つのチェーン40を設けているので、装置全体に亘った1つの長いチェーン40を掛け回す場合と比べ通紙装置30全体が故障することを抑制でき、故障リスクを分散させることができる。これらの結果、通紙装置30の耐久性を向上させることができる。
【0102】
また、張力調整部50は、スライド軸73と、調整用スプロケット33を支持してスライド軸73に対して移動自在に配置されるスライド部材80と、を有し、ばね75は、スライド部材80に対して、チェーン40の張力が大きくなる方向の付勢力を付与する。このため、調整用スプロケット33は、調整用スプロケット33に掛け回されるチェーン40の張力に応じてスライド軸73の延在方向に移動すると共に、チェーン40に対して、張力が大きくなる方向に付勢力を付与することができる。これにより、作業者が調整作業を行うことなく、チェーン40の張力を継続的に維持することができる。この結果、通紙装置30が有するチェーン40の張力の調整を容易に行うことができる。
【0103】
[実施形態2]
実施形態2に係る抽出乾燥装置1は、実施形態1に係る抽出乾燥装置1と略同様の構成であるが、張力調整部50が有する付勢部材にエアシリンダ100が用いられる点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0104】
図15は、実施形態2に係る抽出乾燥装置1が有する張力調整部50の正面図である。
図16は、
図15のG-G矢視図である。実施形態2に係る抽出乾燥装置1では、実施形態1に係る抽出乾燥装置1と同様に、抽出装置10が有する貯留槽11ごとに通紙装置30が配置され、通紙装置30は、チェーン40の張力を調整する張力調整部50を有している。実施形態2では、張力調整部50が有する付勢部材は、実施形態1とは異なり、エアシリンダ100が用いられている。実施形態2における張力調整部50が有するエアシリンダ100は、調整用スプロケット33の軸方向に対して直交する方向で、且つ、チェーン40の張力が大きくなる方向の付勢力を調整用スプロケット33に付与する。
【0105】
詳しくは、エアシリンダ100は、本体部101と、本体部101から突出すると共に伸縮自在に配置されるロッド103とを有している。本体部101には、配管接続部102が設けられており、配管接続部102には、ロッド103を伸縮させるためのエアを供給するエア配管(図示省略)が接続される。本体部101は、外部のコンプレッサ(図示省略)等からのエアが、エア配管を介して配管接続部102から本体部101に供給されることにより、供給されたエアによってロッド103を伸縮させることができる。
【0106】
ロッド103は、棒状の部材からなり、本体部101に対して伸縮自在に配置されている。実施形態2では、エアシリンダ100はロッド103が上下方向Zに延在する向きで配置されると共に、本体部101に対してロッド103が上下方向Zにおける上側に突出する方向となる向きで配置されている。また、実施形態2では、ロッド103は3本が設けられており、3本のロッド103は、長さ方向Yに並んで配置されている。
【0107】
ロッド103の先端部、即ち、実施形態2では、ロッド103の上側の端部には、台座部104が配置されている。台座部104は、1つの台座部104が3本のロッド103の先端部に跨いで配置されている。調整用スプロケット33は、取付部材105を介して台座部104に取り付けられている。
【0108】
つまり、調整用スプロケット33は、ベース部材106に配置される固定軸107に回転自在に支持され、ベース部材106は取付部材105に取り付けられている。その際に、ベース部材106は、固定軸107が幅方向Xに延びる向きで取付部材105に取り付けられており、固定軸107が延びる方向は、調整用スプロケット33の回転軸と一致する方向になっている。このため、調整用スプロケット33は、調整用スプロケット33の軸方向が、エアシリンダ100はロッド103の延在方向に直交する向きで、ロッド103の先端に配置されている。
【0109】
実施形態2に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10では、張力調整部50はこのようにエアシリンダ100を有しており、エアシリンダ100は、本体部101の配管接続部102から供給されるエアにより、ロッド103を上下方向Zに伸縮させることが可能になっている。調整用スプロケット33は、ロッド103に配置されているため、張力調整部50は、ロッド103を伸縮させることにより、調整用スプロケット33を、調整用スプロケット33の軸方向に直交する方向である上下方向Zに移動させることができる。
【0110】
張力調整部50は、このように調整用スプロケット33を、調整用スプロケット33の軸方向に直交する方向にエアシリンダ100によって移動させることができるため、調整用スプロケット33を移動させることにより、調整用スプロケット33に掛け回されるチェーン40の張力を調整することができる。チェーン40は、実施形態2においても調整用スプロケット33に対して上側から掛け回されるため、ロッド103が延びて調整用スプロケット33が上側に移動した際にはチェーン40の張力は大きくなり、ロッド103が縮んで調整用スプロケット33が下側に移動した際にはチェーン40の張力は小さくなる。
【0111】
また、調整用スプロケット33は、エアシリンダ100のロッド103の先端に配置されているが、エアシリンダ100は、エアによってロッド103を伸縮させるため、ロッド103を縮ませる方向に大きな力がロッド103に作用した場合、エアが圧縮されることにより、ロッド103が縮む。このため、貯留槽11に貯留される溶剤MCの気化熱によってチェーン40の長さが縮むことによりチェーン40の張力が大きくなり、チェーン40から調整用スプロケット33に作用する力が大きくなることにより、ロッド103を縮ませる方向の力が大きくなった場合、ロッド103はこの力により僅かに縮む。これにより、ロッド103の先端に配置される調整用スプロケット33は、ロッド103と共に、チェーン40の張力を緩和する方向に移動するため、長さが縮んだチェーン40の張力が大きくなり過ぎることが抑制される。
【0112】
また、調整用スプロケット33には、エアシリンダ100の本体部101に供給されるエアにより、チェーン40の張力を大きくする方向の付勢力がロッド103を介して継続的に付与される。このため、溶剤MCが抜かれること等によりチェーン40が伸びてチェーン40の張力が小さくなる状況でも、ロッド103が延びることによって、チェーン40の張力を大きくする方向に調整用スプロケット33がロッド103と共に移動することにより、チェーン40の張力は確保される。これにより、チェーン40が伸びた場合でも、チェーン40は適切な張力が維持される。
【0113】
以上の実施形態2に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10では、張力調整部50において調整用スプロケット33に対してチェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を付与する付勢部材には、エアシリンダ100が用いられている。このため、チェーン40の張力を調整する際には、エアシリンダ100に供給するエアの圧力を調整することにより、容易に行うことができる。また、貯留槽11に貯留される溶剤MCの気化熱によってチェーン40の長さが縮み、チェーン40の張力が大きくなった際には、チェーン40から調整用スプロケット33を介してエアシリンダ100のロッド103に作用する力が大きくなることにより、ロッド103は僅かに縮む。これにより、チェーン40の張力が大きくなり過ぎることが緩和され、作業者が張力を調整する作業を行うことなく、チェーン40の張力を適切な大きさに維持することができる。この結果、通紙装置30が有するチェーン40の張力の調整を容易に行うことができる。
【0114】
[実施形態3]
実施形態3に係る抽出乾燥装置1は、実施形態1に係る抽出乾燥装置1と略同様の構成であるが、張力調整部50に、揺動軸110を中心として揺動する揺動部材111が用いられる点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0115】
図17は、実施形態3に係る抽出乾燥装置1が有する張力調整部50の模式図である。実施形態3に係る抽出乾燥装置1では、実施形態1に係る抽出乾燥装置1と同様に、抽出装置10が有する貯留槽11ごとに通紙装置30が配置され、通紙装置30は、チェーン40の張力を調整する張力調整部50を有している。実施形態3では、スプロケット31の軸方向に平行な揺動軸110と、揺動軸110を中心として揺動する揺動部材111と、揺動部材111に連結されるウエイト115とを有している。
【0116】
揺動部材111は、所定の方向に延びる部材になっており、揺動部材111の延在方向における両端の間で揺動軸110に連結されている。これにより、揺動部材111は、揺動軸110を中心として揺動自在になっている。また、揺動部材111の一端には、調整用スプロケット33が配置されている。
【0117】
ウエイト115は、揺動部材111における調整用スプロケット33が配置される側の反対側に連結されている。これにより、ウエイト115は、チェーン40の張力が大きくなる方向へ調整用スプロケット33を移動させる方向に、揺動軸110を中心として揺動部材111を揺動させる付勢力を揺動部材111に付与する。
【0118】
詳しくは、実施形態3においても、調整用スプロケット33に対しては、チェーン40は上側から掛け回される。一方で、揺動部材111における、調整用スプロケット33が配置される側の他端側に連結されるウエイト115は、揺動部材111に対しては、ウエイト115が連結される側の端部を下側に押し下げる力を付与する。揺動部材111は、ウエイト115から付与される力により、ウエイト115が連結される側の端部が上下方向Zにおける下側に下がる方向に、揺動軸110を中心として揺動する。
【0119】
このため、揺動部材111における、ウエイト115が連結される側の反対側の端部は、揺動部材111の揺動によって上下方向Zにおける上側に移動し、揺動部材111における、ウエイト115が連結される側の反対側の端部に配置される調整用スプロケット33は、揺動部材111の揺動により上側に移動する。調整用スプロケット33には、チェーン40は上側から掛け回されているため、調整用スプロケット33が上側に移動した場合には、チェーン40の張力が大きくなる。
【0120】
従って、換言すると、ウエイト115から揺動部材111に対して付与する力は、チェーン40の張力が大きくなる方向へ調整用スプロケット33を移動させる方向に、揺動軸110を中心として揺動部材111を揺動させる付勢力として作用する。このため、実施形態3では、ウエイト115は、チェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を、揺動部材111を介して調整用スプロケット33に対して付与する付勢部材として設けられている。
【0121】
なお、ウエイト115の質量は、チェーン40の張力によってチェーン40から調整用スプロケット33に作用する下向きの力や、揺動部材111の長さ等に応じて適宜設定されるのが好ましい。
【0122】
実施形態3に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10では、このように調整用スプロケット33は、他端にウエイト115が連結される揺動軸110の一端に配置されているため、調整用スプロケット33には、上方向に力が継続的に作用する。これにより、調整用スプロケット33は、調整用スプロケット33の上側から掛け回されるチェーン40に対して、張力が大きくなる方向の力をかけ続ける。
【0123】
一方で、調整用スプロケット33が取り付けられる揺動部材111は、揺動軸110を中心として揺動するため、調整用スプロケット33を押し下げる方向の大きな力がチェーン40から調整用スプロケット33に対して作用した場合は、この力によって揺動軸110が揺動することにより調整用スプロケット33は下に下がる。
【0124】
このため、貯留槽11に貯留される溶剤MCの気化熱によってチェーン40が冷やされてチェーン40の長さが縮むことにより、チェーン40の張力が大きくなった場合は、チェーン40から調整用スプロケット33に対して作用する下方向の力が大きくなって揺動軸110が揺動することにより、調整用スプロケット33は下方向に移動する。これにより、チェーン40の張力は緩和され、長さが縮んだチェーン40の張力が大きくなり過ぎることが抑制される。
【0125】
また、長さが縮んだチェーン40の長さが伸びた場合には、調整用スプロケット33は、揺動部材111を介してウエイト115から付与される付勢力によって上側に移動するため、チェーン40の張力は確保される。従って、チェーン40が伸びた場合でも、チェーン40は適切な張力が維持される。
【0126】
以上の実施形態3に係る抽出乾燥装置1が有する抽出装置10では、張力調整部50は、揺動軸110を中心として揺動する揺動部材111を有し、揺動部材111の一端に調整用スプロケット33が配置され、他端にウエイト115が連結されている。このため、揺動軸110を中心とする揺動部材111の揺動によって、チェーン40の張力が変化する方向への調整用スプロケット33の移動を可能としつつ、チェーン40の張力が大きくなる方向の付勢力を、簡易な構成で調整用スプロケット33に対して付与することができる。これにより、貯留槽11に貯留される溶剤MCの気化熱によってチェーン40の長さが縮み、チェーン40の張力が大きくなった場合でも、チェーン40から調整用スプロケット33に作用する下向きの力によって調整用スプロケット33を押し下げることができ、チェーン40の張力を小さくすることができる。従って、チェーン40の張力が大きくなり過ぎることが緩和され、作業者が張力を調整する作業を行うことなく、チェーン40の張力を適切な大きさに維持することができる。この結果、通紙装置30が有するチェーン40の張力の調整を容易に行うことができる。
【0127】
[変形例]
なお、上述した実施形態1では、スプロケット支持部材81を介して調整用スプロケット33を支持するスライド部材80は、上下方向Zに延在するスライド軸73に沿って上下方向Zに移動自在になっており、ばね75は、スライド部材80に対して上方向の付勢力を付与しているが、スライド部材80の移動方向や付勢力の方向は、これ以外の方向であってもよい。また、実施形態2では、エアシリンダ100は、ロッド103が上下方向Zに延びる向きで配置されると共に、ロッド103の先端に配置される調整用スプロケット33に対して上方向の付勢力を付与しているが、エアシリンダ100が配置される向きや付勢力の方向は、これ以外の方向であってもよい。調整用スプロケット33が移動する方向は、調整用スプロケット33が移動することによりチェーン40の張力を変化させることができる方向であればよく、付勢力の方向は、調整用スプロケット33に掛け回されるチェーン40の張力を大きくすることができる方向であればよい。
【0128】
また、上述した実施形態2では、エアシリンダ100は、ロッド103を3本有するものを用いているが、エアシリンダ100は、これ以外の形態のものを用いてもよい。
【0129】
また、上述した実施形態1~3では、抽出装置10の貯留槽11には、フィルムFに含浸されている液状可塑剤を抽出する溶剤MCが貯留されているが、貯留槽11に貯留される液体は、溶剤MC以外であってもよい。抽出装置10は、例えば、溶剤MCが貯留される貯留槽11と、フィルムFの搬送方向における上流側に配置されてフィルムFから溶剤MCを除去する水が貯留される貯留槽11とが並んで配置されていてもよい。この場合、通紙装置30は、溶剤MCが貯留される貯留槽11と水が貯留される貯留槽11との双方に配置されるのが好ましい。
【符号の説明】
【0130】
1…抽出乾燥装置、10…抽出装置、11…貯留槽、12…壁面、13…底面、14…壁面、15…上面、16…ハッチ扉、20…搬送ロール、21…搬送ロール支持部材、25…搬送経路、30…通紙装置、31…スプロケット、32…従動スプロケット、33…調整用スプロケット、34…駆動スプロケット、35…駆動モータ、40…チェーン、41…アタッチメント、42…孔部、50…張力調整部、51…ベースプレート、52…取付ボルト、53…ガイド、54…取付ボルト、55…調整ボルト、60…スライドベース、61…長孔、62…取付ボルト、63…ガイド部材、70…張力調整ユニット、71…ブラケット、72…取付ボルト、73…スライド軸、74…ナット、75…ばね、80…スライド部材、81…スプロケット支持部材、82…ベアリング、83…外輪押え部材、84…取付ボルト、85…内輪押え部材、86…取付ボルト、100…エアシリンダ、101…本体部、102…配管接続部、103…ロッド、104…台座部、105…取付部材、106…ベース部材、107…固定軸、110…揺動軸、111…揺動部材、115…ウエイト、F…フィルム、R…ロープ、MC…溶剤
【要約】
抽出装置10は、溶剤MCが貯留される貯留槽11と、貯留槽11に配置されてフィルムFを搬送する複数の搬送ロール20と、貯留槽11に配置されてフィルムFを搬送ロール20に掛け回すための通紙装置30と、を備え、通紙装置30は、少なくとも貯留槽11の壁面12に複数が配置されるスプロケット31と、複数のスプロケット31に掛け回され、且つ、フィルムFを搬送ロール20に掛け回すためのロープRが接続されるチェーン40と、調整用スプロケット33が取り付けられ、チェーン40の張力を変化させる方向への調整用スプロケット33の移動を可能に調整用スプロケット33を支持すると共に、調整用スプロケット33に対してチェーン40の張力を大きくする方向への付勢力を付与するばね75を有する張力調整部50と、を有する。