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  • 特許-獣害侵入防止用電気牧柵器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】獣害侵入防止用電気牧柵器
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/30 20110101AFI20250311BHJP
【FI】
A01M29/30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020204586
(22)【出願日】2020-11-21
(65)【公開番号】P2022083941
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】304061099
【氏名又は名称】有限会社 薩摩農機
(72)【発明者】
【氏名】黒田 順子
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 憲安
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-119310(JP,A)
【文献】特開2007-175007(JP,A)
【文献】特開2016-042796(JP,A)
【文献】実開昭52-044335(JP,U)
【文献】特開2005-013136(JP,A)
【文献】実開昭60-098299(JP,U)
【文献】登録実用新案第3150538(JP,U)
【文献】実開昭57-003393(JP,U)
【文献】特開昭58-071591(JP,A)
【文献】特開2020-159853(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102019005883(DE,A1)
【文献】米国特許第06173942(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/00-29/34
A01K 3/00
H05C 1/00-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
光センサー及び夜間時間測定回路が電気的に接続された衝撃電圧発生部を有する電気牧柵器であって、夜間時間測定回路は、前記光センサーの検知に基づいて、基準となる夜間時間を計測し、計測した夜間時間を内部データと比較、演算して季節を判断して当日の朝方延長時間を計算して結果に基づき衝撃電圧発生部に動作信号を送ることを特徴とする害獣侵入防止用電気牧柵器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の詳細な説明
【技術分野】
本発明は、果樹園や田畑等に野生動物が侵入し、農作物に被害を与える獣 たとえば 猪等による被害を防止する電気牧柵に関する。
【背景技術】
【0002】
猪等の侵入を防止する為に、電気牧柵器が利用されており、田畑の利用効率を低下させず、獣害防止に多額の費用を要しないで侵入を防止し、人と接触した際の安全性を高めるための提案が下記特許文献1,2に記載されている。
【0003】
その代表的な例は、図1に示すように、電気牧柵器本体1、支柱2、がいし3、裸電線4、アース5によって構成されている。その設置に際しては、田畑の周囲に支柱2を定間隔で立設し、これにがいし3を取り付け、このがいし3に裸電線4を固定させることによって田畑の周囲に張り巡らすものである。
【0004】
この使用に際しては、田畑の周囲に張り巡らされた裸電線4に、電気牧柵器本体1により発生させた衝撃電圧(パルス状)を印加するものである。この裸電線4に触れた猪は、電撃を受け感電、退散する。また、この電撃を受け電撃を学習した猪はこの裸電線4等を恐れ、裸電線4に近づかなくなるというのが電気牧柵器の効能で、広く、中山間部の農地で活用されている。
【0005】
猪は、従来から夜行性と言われてきたが、近年の研究によると、昼間も行動することが確認されています。非特許文献1によると、猪はとても警戒心が強く、ふだんは、なかなか人の前には姿を現わさない、遠くから人の足音、匂いが近寄るだけで気配を感じ取って逃げ、人を最も恐れる動物であることが記載されています。
【0006】
猪は人が屋外で姿を見せない時間帯に出没し、中山間部の農地では、人が屋外での農作業の活動しない時間帯に出没していたことが報告されています。
【0007】
人が屋外で農作業等をしない時間帯は夜間です。農作業等で活動しない時間帯と夜間が一致していたために、猪が出没する時間帯が夜間と錯覚し、猪は夜行性であると言う誤った認識がありました。
【0008】
猪は夜間出没して、昼は出没しないという認識に基づいて、特許文献1又は特許文献2のように光センサーを内蔵された電気牧柵器が開発され使用されています。これは、光センサーで明るさを感知し、昼間は電気牧柵器本体を非動作として停止させ、周囲が暗くなると、光センサーの信号により夜と判断し、電気牧柵器から衝撃電圧を発生させて猪の田畑への侵入を防止してきたものです。
【0009】
【文献】実開昭52-44335号
【0010】
【文献】実開昭60-98299号
【0011】
【文献】「江口祐輔著「イノシシから田畑を守る おもしろ生態とかしこい防ぎ方」(社団法人農山漁村文化協会 2003年3月10日発行)
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、この近年、早朝周囲が明るくなって、電気牧柵器が動作停止となり衝撃電圧の発生が無くなった時間に、猪の侵入が、目立つようになってきた。
【0013】
非特許文献1において、猪は、人が屋外で活動しない時間帯に出没すると記載されている。農作業等の屋外活動は、夜間は行わない。人の屋外活動は朝も夜明けと共に行うことはほとんど無く、夜明け後1~2時間は行われない。農作業等の屋外での活動は夜明けから1~2時間経過後から始まり夕方はほぼ暗くなるまで行われる。
【0014】
光センサーを搭載した電気牧柵器は、周囲が暗くなる夕方に動作となる。猪が出没するのは、農作業が行われない夕方以降であるから、電気牧柵器が夕方に動作となる。ところが、夜明けに周囲が明るくなると光センサーが検知して、電気牧柵器の衝撃電圧の発生を停止となる。この夜明け後1~2時間は人間が屋外で活動をしていないため猪の出没する時間帯となっている。従来の光センサーを設置した電気牧柵器は、夜明けから人間が屋外活動を始める1~2時間の間に猪が出没活動し、田畑へ侵入する時間帯に電気牧柵器は非作動の状態であり、猪の侵入を許してしまうという問題がある。
冬季の夕暮れ時も人が早く田畑から帰り猪の侵入を許してしまうという問題がある。
【0015】
この見地からは、猪が侵入する時間帯に電気牧柵器を作動させることが最も効果的である
【文献】公開 2005-013136
【0016】
特許文献3においてはこの明け方を検知して一定時間延長するタイマーを搭載したものが開発されている。
この場合、一定時間の延長であり季節により電気牧柵器の動作させたい時間は変化する。一定時間延長の場合は、冬場の延長は長い時間、電気牧柵器を動作させることとなる。例えば鹿児島県では6月の日の出時刻は5時15分前後である。2時間延長して7時15分となる。ほぼ農作業開始時間と一致する。12月では日の出時刻が7時15分前後でありこの時間から2時間延長すると9時15分となる。農作業が始まっておりこれは人が感電等に遭遇する危険度が高くなる。また、電力のムダ使いともなる欠点がある。この為冬場は延長時間を短縮する必要がある。
【0017】
本発明の課題は、季節毎に早朝、夕方の猪が活動する時間帯、(人が農作業していない時間帯)に効果的に作動し、猪の活動時間帯に猪侵入防止用電気牧柵器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、光センサー及び電気牧柵器に夜間時間測定回路が電気的に接続された衝撃電圧発生装置を有する電気牧柵器であって、前記光センサーが、周囲が明るい状態から暗い状態へ変化したときにこの変化を検知して衝撃電圧発生装置(電気牧柵器)を動作させるとともに、夜間時間測定回路が夜間の動作時間を計数する。周囲が暗い状態から明るい状態に変化するまでを計数する。周囲が暗い状態から明るい状態に変化すると光センサー回路が衝撃電圧発生装置を停止させる。前記夜間時間測定回路は夜間時間測定結果から内部のメモリーと夜間時間を照合して季節に合わせた当日の延長時間と昼間待機時間、夕暮れ時の早期延長時間を計算で求める。
【0019】
季節に合わせた延長時間を決定後に電気牧柵器に動作信号をだす。 延長時間終了後は信号を止め、昼間待機時間後に夕方早期起動延長時間に電気牧柵器に動作信号をだす。
明け方延長時間と夕暮れ前延長時間を出せることを特徴とする。
【0020】
通常、夜明けから人が屋外で活動を始めるまでの時間帯に衝撃電圧が発生し、猪の侵入を防止する。
人が夜明けから屋外で活動を始めるまでの時間は季節で異なるために夜間の時間を計測して内部の設定値と比較、季節を判断してその季節当日に最適な人が夜明けから屋外で活動を始めるまでの時間を求めている。
夕暮れ時も、暗闇では自宅に戻れないために早めに農作業を終えるために夕暮れ時に早期作動時間を季節ごとに計算して電気牧柵に動作信号を出している。
【0021】
つまりは、本発明は、光センサーを電気的に接続してこの光センサーにより出力された信号で、夕方暗くなってから衝撃電圧を発生させ、夜明けに明るくなった時衝撃電圧を停止させ 夜間時間測定値から季節毎当日の朝延長時間、昼間待機時間、夕方早期始動時間を求めて電気牧柵へ再び動作信号を送る装置である。光センサー信号とは別に動作信号を出す装置である
【0022】
本発明に使用できる夜間時間測定回路はマイクロコンピュータを使用している。
【発明の実施の態様】
【0023】
以下に、本発明の実施の態様を図面に示す実施例に基づいて具体的に説明する。
【0024】
実施例1
図1に示す従来の電気牧柵器の回路に図3に示す夜間時間測定回路を付加し、図5に示す回路とした例を示す。
【0025】
図1において、C は光センサー回路であり、 夜間は12vを出力する。昼間は0v信号を出すことが出来る昼夜判別回路である。
【0026】
図1において、D は 光センサー回路からの信号12vを得て衝撃電圧を発生させる回路である。E は 衝撃電圧の出力線である。柵線と 大地へ接続する。
【0027】
図1において、Fは 電気牧柵器の収納箱である。
【0028】
図3において、Gは マイクロコンピュータである。
Hは 光センサーからの夜信号を取り込む回路と衝撃電圧発生部からの衝撃電圧の周期信号を取り込む回路である。I部は 衝撃電圧発生部を制御する電圧出力回路である。
【0029】
図3において、J部は 朝方延長と朝方、夕方延長を選択するスイッチ回路である。
K部は 12vからマイクロコンピュータへ電気を供給する回路である。
【0030】
図4は電気牧柵器に 図3 夜間時間測定回路を組み込んだ回路ブロック図である。
【0031】
図4に示す回路ブロック図で動作を説明する。
【0032】
昼間は光センサーから信号は0vの為に衝撃電圧発生部は停止、夜間時間測定回路も停止している。
Lは光センサーと衝撃電圧発生部、夜間時間測定回路を分離するダイオードである。
【0033】
光センサーが夜を感知して12vを出力すると衝撃電圧発生部が動作を開始して衝撃電圧を柵線に出力する。
【0034】
光センサーが夜を感知して12vを出力すると同時に夜間時間測定回路にも夜間信号が入力される。
【0035】
夜間時間測定回路は光センサーからの12vを受け取り 夜間時間の計数を開始する。
【0036】
光センサーが夜明けを検出するとセンサーの出力は0vとなり衝撃電圧発生部が停止して衝撃電圧が柵線に供給されなくなる。
【0037】
光センサーが夜明けを検出するとセンサーの出力は0vとなり夜間時間測定回路は夜明けを確認する計数を停止する。
【0038】
夜間時間測定回路は夜間時間の測定結果から コンピュータ内部で保管されているデータと照合して季節を判定し当日に最適な朝方延長時間、夕方延長時間を求める。昼間待機時間は下記の式で求める。
昼間待機時間 = 24時間 ― 夜間時間 + 朝方延長時間 + 夕方延長時間
光センサーから夜明けを検出するとセンサーの出力0vを受け取り直ちにコンピュータ内部で計算して動作信号12vを衝撃電圧発生部へ再起動信号として供給する。
【0039】
衝撃電圧発生部は夜間時間測定回路の起動信号を受けて動作を開始し衝撃電圧を柵線に出力する。
【0040】
朝方延長時間後は夜間時間測定回路から0vの信号となり衝撃電圧発生部は昼間待機時間に入る。昼間待機時間が経過して、夕方延長時間になれば夜間時間測定回路から信号12vが出力され衝撃電圧発生部は夜間時間測定回路の信号を受けて動作を開始し衝撃電圧を柵線に出力する。
【0041】
夕方延長時間中に光センサーが夜を感知して、信号12vを出力すると夜間時間測定回路は信号を受けてプログラムリセットをして、新しく夜間時間測定に入る。
【0042】
図3において、J部は 朝方延長と朝夕方延長を選択するスイッチ回路であり、使用者が選択できる。なお朝方延長を選択した場合は朝方延長終了と同時に夜間時間測定回路はプログラムをリセットして光センサーが夜を感知して12vを出力するまで待機する。
【発明の効果】
本発明の猪等侵入防止用電気牧柵器は、農作業等で人が屋外で活動しない時間帯が、猪等の出没する時間帯であるという認識の上に、人が農作業等で屋外に出て活動しない時間、すなわち猪が出没する時間帯は衝撃電圧を発生させて、人が農作業等で屋外に出て活動する時間帯、衝撃電圧を発生させず、また季節により衝撃電圧発生の延長時間を自動で決定する事で電源のムダを防ぎ又感電等の危険が少ない非常に効率的な猪等侵入防止用電気牧柵器である。
【図面の簡単な説明】
図1】従来の猪侵入防止用電気牧柵設置の代表例を示す
図2】従来の猪侵入防止用電気牧柵の回路を示す。
図3図4に付加される夜間時間測定回路を示す。
図4】本発明の実施例を示す。
図5】本発明の時間の説明図である。
【符号の説明】
1 電気牧柵器本体
2 支柱
3 がいし
4 裸電線
C 光センサー回路
D 衝撃電圧発生部
E 衝撃電圧出力線
F 電気牧柵器
G マイクロコンピュータ
H マイクロコンピュータ入力信号整形回路
I 信号出力回路(時間延長動作信号)
J 朝方延長 朝方、夕方延長選択回路
K マイクロコンピュータ用電源供給回路
L 分離ダイオード
M 夜間時間測定回路
図1
図2
図3
図4
図5