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特許7646962導電性顔料ペースト、合材ペースト、及び、塗工膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】導電性顔料ペースト、合材ペースト、及び、塗工膜
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20250311BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20250311BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20250311BHJP
   C01B 32/00 20170101ALN20250311BHJP
【FI】
H01B1/24 A
H01B1/00 L
H01B5/14 Z
C01B32/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021019585
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122391
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】市 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】檜原 篤尚
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061916(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/24
H01B 1/00
H01B 5/14
C01B 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる平均粒子径(D50)が300~1200nmであり、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-2)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、導電性顔料ペースト。
【請求項2】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が10~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-2)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、導電性顔料ペースト。
【請求項3】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.0の関係であり、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-2)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、導電性顔料ペースト。
【請求項4】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAが9.3以上であり、かつ溶媒(C)の溶解性パラメーターδCが10.4~15.0であり、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-2)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、導電性顔料ペースト。
【請求項5】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
さらに、導電性顔料(B)を基準として、高極性低分子量成分を0.01~1.0質量%含有し、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-2)がBET比表面積10~250m /gのアセチレンブラックであり、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、導電性顔料ペースト。
【請求項6】
導電性顔料(B)の含有量が、導電性顔料ペーストの固形分を基準として、60質量%以上であり、導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)の合計量が、導電性顔料(B)の質量を基準として、50質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項7】
導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる平均粒子径(D50)が300~1200nmである、請求項2~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項8】
導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が、少なくとも2つのピークを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項9】
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が10~23mmol/gである、請求項1、3~8のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項10】
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.0の関係である、請求項1、2、4~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項11】
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~20質量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項12】
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAが9.3以上であり、かつ溶媒(C)の溶解性パラメーターδCが10.4~15.0である、請求項1~3、5~11のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項13】
さらに、導電性顔料(B)を基準として、高極性低分子量成分を0.01~1.0質量%含有する、請求項1~4、6~12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと、少なくとも1種の電極活物質とを含有する、合材ペースト。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを被塗物に塗工して得られる塗工膜。
【請求項16】
請求項14に記載の合材ペーストを集電材に塗工して得られる電池用電極層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高顔料濃度においても顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる、導電性顔料ペースト及び合材ペースト、並びに、仕上がり性などに優れる塗工膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料を顔料分散樹脂及び溶媒等の混合物中に分散させたペースト状の顔料分散体が、塗料、電池用電極、塗工材、コーティング材、電磁波シールド、ディスプレイパネル、タッチスクリーンパネル、着色フィルム、着色シート、化粧材、保護材、磁石改質材、印刷用インキ、デバイス部材、電子機器部材、プリント配線板、太陽電池、機能性ゴム部材、樹脂成形膜等の分野で広く用いられている。さらに、これらの材料に静電塗装性、導電性、電磁波シールド性、帯電防止性等の機能を付与するために導電性顔料や導電性高分子等を含有させている。
これらの分野では、顔料の分散性、貯蔵安定性、塗工性、導電性、仕上がり性、耐溶剤性等の性能向上がますます要求されており、そのため、優れた顔料分散能力と、形成された顔料分散体中の顔料粒子を再凝集させないだけの優れた顔料分散安定性を有する顔料分散樹脂及び顔料ペーストの開発がなされつつある。
【0003】
顔料ペーストの設計にあたっては、顔料分散樹脂が塗工膜等の最終製品そのものの導電性能に悪い影響を及ぼさないように、あるいは溶媒及び顔料分散樹脂の使用量を低減することや乾燥時の使用エネルギーを低減する観点から、少量の顔料分散樹脂で高濃度かつ均一に分散された顔料ペーストを作製することが重要となっている。
例えば、特許文献1には、芯材として金属粒子を用い、当該金属粒子の表面がカーボンで被覆されてなるカーボン被覆金属粒子と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む導電性顔料ペーストが開示されている。しかしながら、銀や銅等の高価な導電性材料を使用することから汎用的な材料には用いることができなかった。
また、特許文献2には、カーボンナノチューブを分散させた水溶性キシラン水溶液と、カーボンブラックアセトン分散液とを混合して得られた混合液が記載されている。しかしながら、この混合液(ペースト)は、樹脂に添加するカーボン複合フィラーを形成するためのもので、塗布して塗工膜を作るためのものではない。また、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックの分散性について、なんら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-22598号公報
【文献】国際公開第2015/064708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高顔料濃度においても顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる、導電性顔料ペースト及び合材ペースト、並びに、仕上がり性などに優れる塗工膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストによって、前記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の導電性顔料ペースト、合材ペースト、及び塗工膜を提供するものである。
項1: 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、
導電性顔料ペースト。
項2: 導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)が、それぞれ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる1種以上より選ばれる、項1に記載の導電性顔料ペースト。
項3; 導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)のBET比表面積がともに10~250m/gである、項1又は2に記載の導電性顔料ペースト。
項4: 導電性顔料(B)の含有量が、導電性顔料ペーストの固形分を基準として、60質量%以上であり、導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)の合計量が、導電性顔料(B)の質量を基準として、50質量%以上である、項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項5: 導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる平均粒子径(D50)が300~1200nmである、項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項6: 導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が、少なくとも2つのピークを有する、項1~5のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項7: 顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が10~23mmol/gである、項1~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項8: 顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.0の関係である、項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項9: 顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~20質量%である、項1~8のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項10: 顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAが9.3以上であり、かつ溶媒(C)の溶解性パラメーターδCが10.4~15.0である、項1~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項11: さらに、導電性顔料(B)を基準として、高極性低分子量成分を0.01~1.0質量%含有する、項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項12: さらに、重量平均分子量10万以上及び/又は溶解性パラメーターδDが10.0未満である皮膜形成樹脂(D)を含有する、項1~11のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
項13: 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有し、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径X1と前導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径X2の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、
導電性顔料ペーストを、実質的にメジアを用いずに分散する、導電性顔料ペーストの顔料分散方法。
項14: 項1~12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと、少なくとも1種の電極活物質とを含有する、合材ペースト。
項15: 項1~12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを被塗物に塗工して得られる塗工膜。
項16: 項14に記載の合材ペーストを集電材に塗工して得られる電池用電極層。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高顔料濃度においても顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる、導電性顔料ペースト及び合材ペーストを提供することができる。
また、本発明により、仕上がり性などに優れる塗工膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本発明の「合材ペースト」とは、導電性顔料ペーストを含んだ液状の組成物であり、「塗工材」と言い換えることができる。合材ペーストを被塗物に塗工して乾燥したものを「塗工膜」という。塗工膜が電池用電極に用いられる場合は「電極層」と言い換えることができる。
ここで、溶解性パラメーターとは、一般にSP値(ソルビリティ・パラメーター)とも呼ばれるものであって、溶媒や樹脂の親水性又は疎水性の度合い(極性)を示す尺度である。また、溶媒と樹脂、樹脂間の溶解性や相溶性を判断する上で重要な尺度となるものであり、溶解性パラメーターの値が近い(溶解性パラメーターの差の絶対値が小さい)と、一般的に溶解性や相溶性が良好となる。
本発明の一実施形態は、まず適度な分散状態の導電性顔料(B)を有する導電性顔料ペーストを調整し、さらに諸性能を満足する塗工膜を得るため、導電性顔料ペーストに各種の成分を追加して合材ペーストを製造するものである。
【0009】
[導電性顔料ペースト]
本発明の導電性顔料ペーストは、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストであって、
導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、
導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径X1と、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径X2の比率X1/X2が1.2~2.5(好ましくは1.3~2.0、より好ましくは1.4~1.7)、X1とX2がともに100nm以下であり、
導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である。
【0010】
<顔料分散樹脂(A)>
顔料分散樹脂(A)は、顔料分散機能を有する樹脂であれば特に限定されない。
顔料分散樹脂(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、多環芳香族炭化水素基を有する樹脂及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0011】
顔料分散樹脂(A)は、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を含有することが好ましい。
顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度は、分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、例えば10~23mmol/gであり、好ましくは15~22.9mmol/gであり、より好ましくは20~22.8mmol/gである。
【0012】
顔料分散樹脂(A)は、該ペーストから形成される塗工膜の優れた仕上がり性や導電性を低下させることなく、塗工膜に十分な造膜性を付与する観点から、下記式(1)の重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを重合又は共重合することにより得られるビニル(共)重合体(A-1)を含有することが好ましい。尚、本発明の「(共)重合体」とは、1種類のモノマーを重合した重合体と2種以上のモノマーを共重合した共重合体の両方を含むものである。
C(-R)=C(-R) ・・・式(1)
〔式(1)中、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は有機基である。〕
【0013】
前記ビニル(共)重合体(A-1)としては、その構造中に「-CH-CH(-X)-」で表される構造単位(ただし、Xは極性官能基を有する有機基である。)を含むものが好ましく、当該構造単位中の極性官能基Xとしては、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基である。
前記ビニル(共)重合体(A-1)としては、例えば、水酸基含有ビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ビニル(共)重合体、アミド基含有ビニル(共)重合体、スルホン酸基含有ビニル(共)重合体、リン酸基含有ビニル(共)重合体、アミノ基含有ビニル(共)重合体等が挙げられる。これらの(共)重合体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
水酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール-脂肪酸ビニル共重合体、ビニルアルコール-エチレン共重合体、ビニルアルコール-(N-ビニルホルムアミド)共重合体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。(共)重合体中のビニルアルコール単位は脂肪酸ビニル単位を(共)重合した後に一部又は全部を加水分解して得られたものでも良い。
カルボキシル基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸の重合体、又はポリ(メタ)アクリル酸とその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
ピロリドン基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリビニルピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン-エチレン共重合体、N-ビニル-2-ピロリドン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
アミド基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドの重合体、又は(メタ)アクリルアミドとその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
スルホン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、アリルスルホン酸又はスチレンスルホン酸等の重合体、アリルスルホン酸及び/又はスチレンスルホン酸とその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
リン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートの重合体、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートとその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
アミノ基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの重合体、又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0015】
ビニル(共)重合体(A-1)は、分散性を向上させる観点、及び塗工膜の表面抵抗率を低減させる観点から、水酸基含有ポリビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ポリビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ポリビニル(共)重合体が好ましく、水酸基含有ポリビニル(共)重合体がより好ましく、ポリビニルアルコール(共)重合体がさらに好ましい。
尚、上記ポリビニルアルコール(共)重合体に関して、(共)重合体中に「酢酸ビニル」と「ビニルアルコール」のモノマー単位を含む場合、本明細書においては「酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体」とも言い換えることができる。
ビニル(共)重合体(A-1)は、前記の「-CH-CH(-X)-」で表される構造単位以外に、必要に応じて、共重合可能な重合性不飽和基含有モノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。共重合可能な重合性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体又はビニリデン単量体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
ビニル(共)重合体(A-1)の重合方法は、それ自体既知の重合方法で製造することができる。例えば溶液重合を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、具体的には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30~200℃程度の範囲で設定することができる。
【0017】
ビニル(共)重合体(A-1)の重合度は、100~4,000であることが好ましく、100~3,000、150~700であることがより好ましい。
ビニル(共)重合体(A-1)の重量平均分子量は、1,000~200,000であることが好ましく、2,000~100,000、7,000~30,000であることがより好ましい。
ビニル(共)重合体(A-1)は、合成終了後に脱溶媒及び/又は溶媒置換することで、固体又は任意の溶媒に置き換えた樹脂溶液にすることができる。
脱溶媒の方法としては、常圧で加熱により行ってもよいし、減圧下で脱溶媒してもよい。溶媒置換の方法としては、脱溶媒前、脱溶媒途中、又は脱溶媒後のいずれの段階で置換溶媒を投入してもよい。
【0018】
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAは、分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、9.3以上が好ましく、10.0~13.0がより好ましく、11.0~12.5がさらに好ましい。
樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
顔料分散樹脂(A)が2種以上の場合の「顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδA」は、各樹脂の溶解性パラメーター値に質量分率を乗じたものを合計した値である。
【0019】
導電性顔料ペースト中の顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、特に限定されないが、ペーストの固形分総量を基準として、例えば0.1~20質量%であり、0.5~15質量%が好ましく、1.5~10質量%が好ましい。このような範囲とすることにより、顔料分散時の粘度、顔料分散性、貯蔵安定性、生産効率及び導電性等を好適なものとできる。
【0020】
<導電性顔料(B)>
導電性顔料(B)は、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径をX1とし、前記導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径をX2とし、X1>X2とした場合に、両者の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1(好ましくは10/90~90/10)である。
前記X1/X2が1.2未満であると、導電性カーボンが実質的に単峰性の粒度分布となり、導電性が低下するおそれがある。X1/X2が2.5を超えると、導電性カーボンの平均一次粒子径又は平均直径の差が大きすぎ、分散性や仕上がり性などが低下するおそれがあり、また、導電性が低下するおそれがある。
【0021】
本発明において、平均一次粒子径又は平均直径が異なるとともに特定の関係を有する導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)を併用することで、導電性が向上する理由・原理等は特に明らかではない。本発明者等は、平均一次粒子径又は平均直径が大きい導電性カーボン(B-1)が太い導電パスを形成するとともに、平均一次粒子径又は平均直径が小さい導電性カーボン(B-2)が隙間に効果的に充填されることとなり、これにより良好な導電パスが形成され、導電性が向上すると考えている。
【0022】
導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)は、それぞれ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる1種以上より選ばれる。
なお、導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)において、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、グラフェン、黒鉛の場合は、平均一次粒子径が用いられ、カーボンナノチューブの場合は、平均直径が用いられる。
導電性カーボン(B-1)は、好ましくは、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、アセチレンブラック及び/又はカーボンナノチューブであり、特に好ましくは、アセチレンブラックである。
導電性カーボン(B-2)は、好ましくは、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは、アセチレンブラック及び/又はカーボンナノチューブであり、特に好ましくは、アセチレンブラックである。
【0023】
導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径は、粘度及び導電性の関係から、ともに100nm以下であり、ともに10~80nmの範囲内であることが好ましく、ともに20~52nmの範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、本発明の平均一次粒子径とは、顔料を電子顕微鏡で観察し、100個の粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の粒子の直径を単純平均して求めた一次粒子の平均径をいう。なお、顔料が凝集状態になっていた場合は、凝集粒子を構成している一次粒子で計算をする。
【0024】
導電性カーボン(B-1)のDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)は、特に限定されないが、顔料分散性及び導電性の関係から、例えば60~1,000ml/100g、好ましくは150~800ml/100gであることが好ましい。導電性カーボン(B-2)のDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)は、特に限定されないが、顔料分散性及び導電性の関係から、例えば60~1,000ml/100g、好ましくは150~800ml/100gであることが好ましい。
導電性カーボン(B-1)のBET比表面積は、特に限定されないが、粘度及び導電性の関係から、例えば1~500m/g、好ましくは10~250m/gであることが好ましい。導電性カーボン(B-2)のBET比表面積は、特に限定されないが、粘度及び導電性の関係から、例えば1~500m/g、好ましくは10~250m/gであることが好ましい。また、導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)のBET比表面積がともに10~250m/gであることが好ましく、12~200m/gであることがより好ましく、20~150m/gであることが特に好ましい。
【0025】
前記導電性顔料(B)は、顔料分散性の関係から、塩基性であることが好ましく、例えばpHが7.5以上であることが好ましく、8.0~12.0であることがより好ましく、8.5~11.0であることがさらに好ましい。
また、前記導電性顔料(B)がカーボンブラックを含む場合、導電性の観点から、カーボンブラックの一次粒子が鎖状構造(ストラクチャー)を形成している状態が好ましい。その際、ストラクチャー指数が1.5~4.0の範囲内であることがより好ましく、1.7~3.2の範囲内であることが特に好ましい。
ストラクチャー自体は電子顕微鏡で撮影した画像でも比較的容易に観察できるが、ストラクチャー指数はストラクチャーの度合いを定量化した数値である。ストラクチャー指数は一般的にDBP吸油量(ml/100g)を比表面積(m/g)で割った値で定義することができる。ストラクチャー指数が1.5未満であると、ストラクチャーが発達していないために、十分な導電性を得ることができず、また、4.0を超えるとDBP吸油量に対して粒子径が大きいために導電経路が減少し、十分な導電性を示さなくなるか、又は合材ペーストの粘度が高くなる恐れがある。
【0026】
前記導電性顔料(B)の含有量としては、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば60質量%以上であり、60~99.9質量%が好ましく、65~98.5質量%がより好ましく、70~97質量%が特に好ましい。
導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)の合計量は、導電性顔料(B)の質量を基準として、例えば50質量%以上であり、50~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、70~100質量%がより好ましい。
【0027】
本発明の導電性顔料ペーストにおいて、導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)以外の導電性顔料としては、形成される塗工膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状の形状の顔料を挙げることができる。具体的には、例えば、銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウム等の金属粉、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボン又はグラファイトのウィスカー表面に酸化錫等を被覆した顔料、フレーク状のマイカ表面に酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料、二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料等が挙げられる。前記導電性顔料(B)は2種以上を組合せて使用することができる。
【0028】
<溶媒(C)>
溶媒(C)は、顔料分散樹脂(A)を溶解し、導電性顔料(B)を分散し得るものであれば、特に限定されない。例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名:出光興産社製、アミド系溶剤)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
本発明においては、顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの分散性、貯蔵安定性の観点から、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基等の極性官能基を持つ溶媒を含有することが好ましい。
これらの中でも、高沸点極性溶媒が好ましく、アミド系溶媒が特に好ましく、
【0029】
溶媒(C)の溶解性パラメーター(SP値)は、顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの分散性、貯蔵安定性の観点から、10.4~15.0(cal/cm1/2の範囲内であることが好ましく、10.5~13.0(cal/cm1/2の範囲内であることがさらに好ましい。
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.0の関係であることが好ましく、|δA-δC|<1.5であることがより好ましく、|δA-δC|<1.3であることがさらに好ましい。
【0030】
溶媒の溶解性パラメーターは、J.Brandrup及びE.H.Immergut編“Polymer Handbook” VII Solubility Parament Values,pp519-559(John Wiley & Sons社、第3版 1989年発行)に記載される方法に従って求めることができる。2種以上の溶媒を組合せて混合溶媒として用いる場合、その混合溶媒の溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
本発明の「溶媒(C)の溶解性パラメーター」とは、導電性顔料ペーストに含まれる全ての溶媒(混合溶媒)の溶解性パラメーターのことである。
【0031】
<導電性顔料ペースト>
本発明の導電性顔料ペーストは、前記顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)及び溶媒(C)の他に、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、顔料分散樹脂(A)以外の樹脂、高極性低分子量成分(E)、導電性顔料(B)以外の顔料、中和剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0032】
(顔料分散樹脂(A)以外の樹脂)
顔料分散樹脂(A)以外の樹脂は、特に限定されないが、顔料分散樹脂及び/又は皮膜形成樹脂であることが好ましい。例えば、前記顔料分散樹脂(A)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系樹脂、ジエン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
(皮膜形成樹脂(D))
本発明の導電性顔料ペーストは、顔料分散樹脂(A)以外の樹脂として、皮膜形成樹脂(D)を含有することが好ましい。
皮膜形成樹脂(D)は、塗工膜に膜形成性を付与できれば特に限定されない。例えば、顔料分散樹脂(A)が有する極性官能基を実質的に含有していない低極性の樹脂であることが好ましい。ここで、極性官能基濃度は、例えば10mmol/g未満であり、好ましくは5mmol/g以下であり、より好ましくは1mmol/g以下である。
皮膜形成樹脂(D)としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ジエン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
皮膜形成樹脂(D)は、顔料分散時に含有していてもよく、あるいは顔料分散後に添加して含有してもよい。
【0034】
皮膜形成樹脂(D)の重量平均分子量は、基材との密着性、塗膜物性の補強、及び耐溶剤性の観点から、10万以上であることが好ましく、50万~300万であることがより好ましい。
皮膜形成樹脂(D)の溶解性パラメーターは、10未満であることが好ましく、9.3未満であることがより好ましい。
【0035】
本発明の導電性顔料ペーストが皮膜形成樹脂(D)を含有する場合、樹脂の溶解性と貯蔵安定性の観点から、前記皮膜形成樹脂(D)の溶解性パラメーターδDと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δD-δC|<2.5の関係であることが好ましく、0≦|δD-δC|≦2.2の関係であることがより好ましい。
【0036】
(高極性低分子量成分(E))
本発明の導電性顔料ペーストは、導電性顔料のぬれ性、分散性及び貯蔵安定性の1つ以上の特性を上げる観点から、高極性低分子量成分(E)を含有することが好ましい。
高極性低分子量成分(E)としては、塩基性又は酸性のものが好ましく、一部又は全部が塩であっても良い。なかでも、顔料が酸性の場合は塩基含有低分子量成分が好ましく、顔料が塩基性の場合は酸基含有低分子量成分が好ましい。
高極性低分子量成分は、溶媒蒸発(加熱乾燥)後の塗工膜にできる限り残留しないことが耐水性等の観点から好適であり、分子量としては、1,000未満が好ましく、400未満がより好ましい。
【0037】
高極性低分子量成分(E)としては、例えば、有機酸及び無機酸から選ばれる酸性の高極性低分子量成分の1種又は2種以上を用いることができる。また、有機塩基及び無機塩基から選ばれる塩基性の高極性低分子量成分の1種又は2種以上を用いることができる。有機酸としては、有機カルボン酸(ギ酸、グルタミン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸等)、有機スルホン酸(ベンゼンスルホン酸等)等が、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が、有機塩基としては、アミン化合物(ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、アニリン等)等が、無機塩基としては、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アンモニア等がそれぞれあげられ、酸無水物や水和物も含まれる。
前記高極性低分子量成分(E)の含有量としては、導電性顔料(B)を基準として、0.01~2.0質量%含有することが好ましく、0.02~1.0質量%含有することがより好ましい。
【0038】
(導電性顔料(B)以外の顔料)
本発明の導電性顔料ペーストは、導電性顔料(B)以外の非導電性の顔料を含有していてもよい。導電性顔料(B)以外の顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華等の白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料;シアニングリーン、緑青等の緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系等の有機赤色顔料、ベンガラ等の赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛等の黄色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
これらの導電性顔料(B)以外の顔料は、導電性を大きく損なわない範囲内で色調整や膜の物性補強等の目的で使用することができ、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)と共に同時に分散してもよく、また、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)を分散してペーストを作成した後に顔料又は顔料ペーストとして混ぜても良い。
前記導電性顔料(B)以外の顔料の含有量としては、導電性顔料ペースト中の全顔料を基準として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0040】
(水の含有量)
本発明の導電性顔料ペーストは、分散性や樹脂を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、導電性顔料ペーストの全量を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることをいう。
本発明において、導電性顔料ペーストの水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定することができる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業社製、商品名:MKC-610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子工業社製、商品名:ADP-611)の設定温度は130℃として測定することができる。
【0041】
(平均粒子径(D50))
本発明の導電性顔料ペーストは、導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる平均粒子径(D50)が、300~1200nmの範囲内であることが好ましく、400~1100nmの範囲内であることがより好ましい。
【0042】
(導電性顔料(B)の粒度分布)
前記組成で得られた導電性顔料ペースト中の導電性顔料(B)の粒度分布としては、導電性顔料ペーストを溶媒(C)で過希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が少なくとも2つのピークを有するのが好ましい。
【0043】
導電性顔料(B)の粒度分布が少なくとも2つのピークを有し、前記条件を満たすことで、導電性顔料ペースト中の導電性顔料は適度な流動性を有しながらストラクチャーを形成することができ、その塗工膜は良好な仕上がり性や導電性を得ることができる。
なお、本発明においては、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定は、粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、商品名:マイクロトラックMT3000)により行った。
【0044】
本発明の導電性顔料ペーストは、導電性顔料(B)の一次粒子の平均粒子径(D50)を1とした場合、前記導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる平均粒子径(D50)が、10~50となるのが好ましく、18~32がより好ましい。
なお、前記粒度分布測定において、導電性顔料ペースト中に導電性顔料(B)以外の顔料が含有されていた場合、導電性顔料(B)のみを用いて作成した導電性顔料ペーストを測定するものとする。
【0045】
[導電性顔料ペーストの顔料分散方法]
本発明の導電性顔料ペーストの顔料分散方法は、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有し、導電性顔料(B)が、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)を含有し、導電性カーボン(B-1)の平均一次粒子径又は平均直径X1と前期導電性カーボン(B-2)の平均一次粒子径又は平均直径X2の比率X1/X2が1.2~2.5、X1とX2がともに100nm以下であり、導電性カーボン(B-1)と導電性カーボン(B-2)の含有割合が1/99~99/1である、顔料ペーストの構成成分を、分散させることを含む。
【0046】
導電性顔料ペーストを構成する前記各成分の分散に際しては、特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー(商品名:クレアミックス、フィルミックス等)等の従来公知の分散機を用いて均一に混合、分散させることにより調製することができる。
このうち、本発明においては、塗工膜の導電性の観点から、導電性顔料(B)に含まれる導電性カーボン(B-1)及び導電性カーボン(B-2)を、一次粒子まで細かく分散しないことが好ましく、実質的にメジアを用いずに分散することが好適である。
【0047】
[合材ペースト(塗工材)]
本発明で用いられる合材ペーストは、前記導電性顔料ペーストに含まれる顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を必須成分とするものであって、さらに必要に応じて、その他の樹脂、顔料、溶媒、添加剤等の成分を導電性顔料ペーストに添加して得ることができる。
【0048】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0049】
顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料、金属粒子等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、合材ペーストを電池用電極層の材料として用いる場合は電極活物質を含有することが好ましい。電極活物質としては、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Co1/3Mn1/32等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
電極活物質を含有する場合、上記合材ペースト固形分中の電極活物質の固形分含有量は、通常70~99.9質量%、好ましくは80~99質量%であることが、電池容量及び電池抵抗などの面から好適である。
【0050】
溶媒としては、特に制限はないが、前述した溶媒(C)と同様の溶媒を好適に用いることができる。上記溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
添加剤としては、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、粘性調整剤等が挙げられる。
【0051】
合材ペースト中の顔料分散樹脂(A)の含有量は、合材ペースト中の固形分総量を基準として、通常0.01~80質量%、好ましくは0.02~50質量%、より好ましくは0.05~20質量%、特に好ましくは0.08~10質量%であることが、顔料分散時の粘度、顔料分散性、貯蔵安定性、生産効率、及び導電性等の面から好ましい。
合材ペーストは、以上に述べた各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー等の従来公知の撹拌機又は分散機を用いて均一に混合又は分散させることにより調製することができる。
【0052】
[塗工膜(電極層)]
前述の合材ペーストを被塗物に塗布(塗工)することで塗工膜が形成される。
本発明において、塗工膜とは、液状の合材ペーストを被塗物(基材)に塗布して加熱乾燥した固形状の膜のことであり、被塗物から剥がして導電性フィルムを得ることや、板状被塗物(基材)の両面に塗工して導電性材料を得ることもできる。
被塗物は特に限定されるものではなく、例えば、金属材;各種プラスチック材;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。また、これらの被塗物は、必要に応じて適宜、脱脂処理、表面処理等することができる。
なお、電池用電極層としては集電材に塗布(塗工)することが好ましい。上記電極層は、例えば、リチウムイオン電池の正極または負極として用いることができる。
【0053】
塗布方法としては、一定の膜厚範囲内で塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、霧化塗装、ディッピング塗装、アプリケーター塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装、ダイコーター塗装等が挙げられる。
膜厚としては、乾燥膜厚で1~200μmが好ましく、2~150μmがより好ましい。
乾燥温度としては、60~300℃の温度が好ましく、80~200℃の温度がより好ましい。
加熱乾燥することにより、合材ペーストに含まれる溶媒が80%以上消失することが好ましく、90%以上消失することがより好ましく、95%以上消失することが特に好ましい。また、高極性低分子量成分を含有している場合、上記の加熱乾燥により、一部又は全部が消失することが好ましい。
【実施例
【0054】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0055】
[導電性顔料ペーストの製造]
<実施例1~21及び比較例1~8>
表1~表3に記載した顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)及びその他の成分を、それぞれ表1~表3に記載した量で混合し、続いて薄膜旋回型高速ミキサー(プライミクス社製、商品名:フィルミックス)又はボールミルにて表1~表3に記載されている時間分散し、導電性顔料ペーストX-1~X-29を得た。尚、表中の樹脂配合量は固形分の値である。
また、表1~表3には、粒度(ピーク数、平均粒子径(D50)、粒子径比、及び評価試験結果(初期粘度、分散性、貯蔵安定性、仕上がり性、導電性)をあわせて記載する。
なお、前記導電性顔料ペーストX-1~X-29の水分含有量をカールフィッシャー電量滴定法にて測定したが、全て0.1質量%以下であった。
本発明においては、評価試験における全項目の性能に優れていることが重要であり、いずれか1つに「D」(不合格)の評価がある場合、その導電性顔料ペーストは不合格となる。
尚、比較例8に関しては、粘度、分散性及び貯蔵安定性が不合格であったため、塗工膜の評価(仕上がり性、導電性)は行わなかった。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
[導電性顔料ペーストの構成成分]
<顔料分散樹脂(A)>
分散樹脂A:酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(SP値:12.4、水酸基濃度:21.4mmol/g、重量平均分子量:20,000、けん化度97.0mol%)
分散樹脂B:酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(SP値:12.0、水酸基濃度:17.2mmol/g、重量平均分子量:15,000、けん化度89.0mol%)
分散樹脂C:酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(SP値:10.8、水酸基濃度:9.9mmol/g、重量平均分子量:28,000、けん化度60.0mol%)
分散樹脂D:ポリビニルアセタール(SP値:10.0、水酸基濃度:15.8mmol/g、重量平均分子量:20,000、アセタール化度78重量%)
分散樹脂E:メチルセルロース(SP値:17.7、水酸基濃度:11.5mmol/g、重量平均分子量:40,000)
【0060】
<導電性顔料(B)>
導電性顔料A:カーボンブラック(アセチレンブラック)(平均一次粒子径18nm、BET比表面積210m/g、pH:9)
導電性顔料B:カーボンブラック(アセチレンブラック)(平均一次粒子径26nm、BET比表面積120m/g、pH:9)
導電性顔料C:カーボンブラック(アセチレンブラック)(平均一次粒子径35nm、BET比表面積68m/g、pH:9)
導電性顔料D:カーボンブラック(アセチレンブラック)(平均一次粒子径50nm、BET比表面積35m/g、pH:9)
導電性顔料E:カーボンブラック(アセチレンブラック)(平均一次粒子径90nm、BET比表面積15m/g、pH:9)
導電性顔料F:カーボンブラック(アセチレンブラック)(平均一次粒子径110nm、BET比表面積11m/g、pH:9)
【0061】
<溶媒(C)>
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド(SP値11.2)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン(SP値11.1)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値10.4)
【0062】
<皮膜形成樹脂(D)>
PVDF:ポリフッ化ビニリデン(重量平均分子量:100万、SP値:9.1)
【0063】
<高極性低分子量成分(E)>
NaOH:水酸化ナトリウム
HCOOH:ギ酸
【0064】
[|δA-δC|]
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとの関係|δA-δC|は、顔料分散樹脂(A)のδAであるSP値から溶媒(C)のSP値を引いた値の絶対値であって、下記の式により算出した。
|δA-δC|=|顔料分散樹脂(A)のSP値-溶媒(C)のSP値|
【0065】
[粒度]
<ピーク数>
導電性顔料ペーストを対応する溶媒で希釈し、レーザ回折散乱法を用いた粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名マイクロトラックMT3000)で体積基準の粒度分布測定を行い、頻度分布曲線を得た。次いで該頻度分布曲線のピーク数(山数)を数えた。
【0066】
<平均粒子径(D50)>
導電性顔料ペーストを溶媒で希釈し、粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名:マイクロトラックMT3000、レーザ回折散乱法)を用いて体積基準の平均粒子径(D50)を算出した。
【0067】
<粒子径比>
上記平均粒子径(D50)を平均2次粒子径として、用いた導電性顔料の平均1次粒子径との比を下記の式で算出した。
粒子径比=平均2次粒子径(nm)/平均1次粒子径(nm)
【0068】
[評価試験]
<初期粘度>
得られた顔料分散ペーストをコーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度0.1s-1で粘度を測定し、下記基準により評価した。
A:粘度が、1000mPa・sより低い。
B:粘度が、1000mPa・s以上、かつ5000mPa・sより低い。
C:粘度が、5000mPa・s以上、かつ10000mPa・sより低い。
D:粘度が、10000mPa・s以上。
【0069】
<分散性>
得られた顔料分散ペーストをJIS K-5600-2-5の分散度試験に準じ、ツブゲージを用いて下記基準により分散性を評価した。
S:顔料が10μm未満で分散されている。分散性は非常に良好である。
A:顔料が10μm以上、かつ15μm未満で分散されている。分散性は良好である。
B:顔料が15μm以上、かつ20μm未満で分散されている。分散性はやや良好である。
C:顔料が20μm以上で分散されているが、目視で凝集物は確認できない。分散性はやや劣る。
D:目視で凝集物が確認される。分散性は非常に劣る。
【0070】
<貯蔵安定性(粘度上昇率)>
得られた顔料分散ペーストを50℃の温度で1ヶ月貯蔵を行い、初期粘度と貯蔵後の粘度の比較を行なった。粘度は、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度1.0s-1で測定し、下記式により粘度上昇率を求め、下記の基準により貯蔵安定性を評価した。
粘度上昇率(%)=貯蔵後粘度(mPa・s)/初期粘度(mPa・s)×100-100
S:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、10%未満である。
A:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、10%以上、かつ50%未満である。
B:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、50%以上、かつ100%未満である。
C:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、100%以上、かつ200%未満である。
D:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、200%以上である。
【0071】
<仕上がり性>
後述する導電性の評価試験で得られた試験板の外観を観察し、目視での仕上がり性を評価した。
S:極めて均一な外観を有している。
A:均一な外観を有している。
B:ややムラがあると視認される部分があるものの、ほぼ均一な外観を有している。
C:ムラが視認され、やや不良である。
D:外観が明らかに不均一であり、不良である。
【0072】
<導電性>
ポリプロピレン板(10cm×15cm×3mm)の上にアルミ箔テープ(住友3M社製、No.425)を3cm間隔で平行に2本貼り付けた。次いで、得られた導電性顔料ペーストにPVDFをカーボンとPVDFの重量比率が1:1になるように加え、その混合ペーストをアルミ箔テープの間に長さ5cm、乾燥膜厚15μmになるようにアプリケーターで塗装し、室温で2分間放置してから、80℃で10分間加熱乾燥し、幅3cm×長さ5cm×膜厚15μmの乾燥塗膜を作成した。
アルミ箔テープ間に塗装した乾燥塗膜の抵抗率を計測機(横河計測社製、商品名ディジタルマルチメーターMODEL73401)を用いて20℃、相対湿度65%の状態下で測定し、下記基準により導電性を評価した。
A:抵抗率が、0.007Ωm未満であり、導電性は非常に良好である。
B:抵抗率が、0.007Ωm以上、かつ0.008Ωm未満であり、導電性は良好である。
C:抵抗率が、0.008Ωm以上、かつ0.09Ωm未満であり、導電性はやや劣る。
D:抵抗率が、0.009Ωm以上であり、導電性は非常に劣る。
【0073】
[合材ペースト(塗工材)、及び塗工膜(電極層)の製造]
<実施例Y-1~Y-21、Z-1~Z-21>
実施例1~21で得られた導電性顔料ペースト100部に、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを50部、及び、ニッケル酸リチウム(LiNiO)を20部加え、ディスパーを用いて60分間混合攪拌し、実施例Y-1~Y-21となる合材ペースト(塗工材)Y-1~Y-21を得た。
続いて、平均厚み25μmのアルミニウム箔(集電体)を被塗物として、前記合材ペースト(塗工材)Y-1~Y-21をアプリケーターで乾燥膜厚5μmになるように両面に塗工し、150℃の温度で40分乾燥し、実施例Z-1~Z-21となるとなる塗工膜(電極層)Z-1~Z-21を得た。
得られた塗工膜(電極層)は、いずれも残存溶媒量が1%未満であり、仕上がり性が良好な塗工膜(電極層)であった。