(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】遊離脂肪酸の回収方法、回収システム
(51)【国際特許分類】
C12P 7/6409 20220101AFI20250311BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20250311BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20250311BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20250311BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20250311BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20250311BHJP
C11B 3/10 20060101ALI20250311BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250311BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250311BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250311BHJP
B01J 20/12 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C12P7/6409
C12M1/26
B01J20/04 B
B01J20/04 C
B01J20/10 D
B01J20/10 B
B01J20/34 G
C02F1/44 F
C11B3/10
C12M1/00 D
C12N1/19
C12N1/21
B01J20/12
(21)【出願番号】P 2021134544
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2023-12-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発 産業用物質生産システム実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-505838(JP,A)
【文献】特開2019-146514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N、C12P、C12M
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離脂肪酸生産微生物が分泌した
C12~C18の遊離脂肪酸を、
活性白土、シリカ-マグネシア系吸着材のいずれか1種以上である吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有することを特徴とする、遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項2】
前記遊離脂肪酸が、遊離脂肪酸生産微生物の培養液から分離膜を通じて培養液外に移行したものであることを特徴とする請求項
1に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項3】
前記分離膜が、中空糸状であることを特徴とする請求項
2に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項4】
遊離脂肪酸生産微生物の培養を行う培養槽と、
前記遊離脂肪酸生産微生物が分泌した
C12~C18の遊離脂肪酸を培養液外へ移行させる分離膜と、
活性白土、シリカ-マグネシア系吸着材のいずれか1種以上である吸着材が充填されたカラムと、
前記カラムに前記分離膜を通過した遊離脂肪酸を通水する吸着ラインと、
前記カラムにオクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒を通水する洗浄ラインと、
を有する遊離脂肪酸の回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離脂肪酸生産微生物が生産した遊離脂肪酸を回収する方法と、回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料依存からの脱却を目指して、エネルギー物質の持続可能な生産技術の開発が世界中で進められている。その中で、遺伝子組み換え微生物を用いた遊離脂肪酸(FFA、Free Fatty Acid)の細胞外生産系が注目されている。細胞外生産系では、生産されたFFAが菌体外に放出され、細胞を破壊することなくFFAを取り出すことができるため、生産量を飛躍的に増加できると期待されている。そのため、これまでに大腸菌、酵母、シアノバクテリアといった様々な微生物を材料にして、FFAを細胞外へと放出する遺伝子組み換え株が作製されている(非特許文献1~3)。
【0003】
しかしながら、培養液中からFFAを回収する技術に関する研究例は少なく、効率的なプロセスは構築されていない。例えば、特許文献1には、微粒子吸着体を培養液中に添加する、または、固定床カラムに詰めて培養液を通水することによりFFAを除去する方法が提案されているが、微粒子吸着体の回収方法や培養液の移送方法に課題が残っている。別の方法として、細胞毒性を示さない有機溶媒を培地に重相しながら培養する二相培養法が報告されているが(非特許文献4)、使用されている有機溶媒の物理化学的な性質がFFAに非常に近いために、有機溶媒からFFAを抽出することが不可能である。さらに、FFA濃度が高まると、遊離脂肪酸を生産する微生物自体に悪影響を及ぼし、死滅する場合がある(非特許文献5)。
そのため、より実用的な培養液からのFFAの回収方法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Rebecca M. Lennen., Drew J. Braden., Ryan M. West., James A. Dumesic., Brian F. Pfleger. (2010) A Process for Microbial Hydrocarbon Synthesis: Overproduction of Fatty Acids in Escherichia coli and Catalytic Conversion to Alkanes. Biotechnol Bioeng. June 1; 106(2)
【文献】Yongjin J. Zhou1., Nicolaas A. Buijs1., Zhiwei Zhu., Jiufu Qin., Verena Siewers., Jens Nielsen. (2016) Production of fatty acid-derived oleochemicals and biofuels by synthetic yeast cell factories. Nat. Commun. 7:11709
【文献】Liu, X., Sheng, J. and Curtiss, R. (2011) Fatty acid production in genetically modified cyanobacteria.Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 108: 6899-6904.
【文献】Kato, A., Takatani, N., Ikeda, K., Maeda, S., Omata, T. (2017) Removal of the product from the culture medium strongly enhances free fatty acid production by genetically engineered Synechococcus elongatus. Biotechonology for Biofuels Vol. 10, 141
【文献】Kato, A., Use, K., Takatani, N., Ikeda, K., Matsuura, M., Kojima, K., Aichi, M., Maeda, S., Omata, T. (2016) Modulation of the balance of fatty acid production and secretion is crucial for enhancement of growth and productivity of the engineered mutant of the cyanobacterium Synechococcus elongatus. Biotechonology for Biofuels Vol. 9, 91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遊離脂肪酸生産微生物が生産した遊離脂肪酸の簡便な回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも一種の酸化物又は水酸化物を含む吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有することを特徴とする、遊離脂肪酸の回収方法。
2.前記吸着材が、活性白土、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、ベントナイト、パーライト、Mg-Al系ハイドロタルサイト系吸着材、シリカ-マグネシア系吸着材のいずれか1種以上であることを特徴とする1.に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
3.前記遊離脂肪酸が、遊離脂肪酸生産微生物の培養液から分離膜を通じて培養液外に移行したものであることを特徴とする1.または2.に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
4.前記分離膜が、中空糸状であることを特徴とする3.に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
5.遊離脂肪酸生産微生物の培養を行う培養槽と、
前記遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を培養液外へ移行させる分離膜と、
マグネシウム、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも一種の酸化物又は水酸化物を含む吸着材が充填されたカラムと、
前記カラムに前記分離膜を通過した遊離脂肪酸を通水する吸着ラインと、
前記カラムにオクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒を通水する洗浄ラインと、
を有する遊離脂肪酸の回収システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回収方法は、遊離脂肪酸を特定の吸着材に吸着させた後、特定の溶媒で洗浄するという非常に簡便な方法で、遊離脂肪酸を回収することができる。本発明の回収方法は、遊離脂肪酸が吸着材に吸着して濃縮されるため、遊離脂肪酸を効率的に回収することができる。
遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を、培養液から分離膜を通じて培養液外に移行することにより、培養液中の遊離脂肪酸濃度が高くなることによる遊離脂肪酸生産微生物の培養への悪影響と、遊離脂肪酸生産微生物が吸着材に付着することによる悪影響とを防止することができる。
本発明の回収システムは、遊離脂肪酸を特定の吸着材に吸着させた後、特定の溶媒で洗浄するという非常に簡便な方法で、遊離脂肪酸を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の遊離脂肪酸の回収方法を実施する回収システムの一実施態様例の構成図。
【
図3】実験2における活性白土による遊離脂肪酸の回収率の測定結果。
【
図4】実験2におけるシリカ-マグネシア系吸着材による遊離脂肪酸の回収率の測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸の回収方法と、回収システムに関する。
培養する遊離脂肪酸生産微生物(以下、微生物ともいう)としては、遊離脂肪酸を生産できるものであれば特に制限されず、大腸菌、酵母、シアノバクテリア等の中から、遊離脂肪酸を生産できるように遺伝子組み換えされた株を用いることができる。これらの中で、光合成を行う微生物が、二酸化炭素から遊離脂肪酸を直接生合成できるため好ましい。微生物が生産する遊離脂肪酸も特に制限されず、例えば、C12~C18の飽和、不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
また、微生物の培養方法も特に制限されず、培養する微生物の種類に応じて、培地の組成、温度、pH、光照射の有無、照射する光の波長、酸素濃度、二酸化炭素濃度等を調整すればよい。
【0011】
・回収方法
本発明の回収方法は、微生物が分泌した遊離脂肪酸を、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも一種の酸化物又は水酸化物を含む吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有する。
【0012】
「吸着工程」
吸着材は、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも一種の酸化物又は水酸化物を含めばよく、その他に亜鉛、チタン、ジルコニウム等を含むこともできる。吸着材としては、例えば、活性白土、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、ベントナイト、パーライト、Mg-Al系ハイドロタルサイト系吸着材、シリカ-マグネシア系吸着材、酸性白土、活性アルミナ、アルミニウムシリケート等の一種以上を用いることができ、これらの中で、活性白土、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、ベントナイト、パーライト、Mg-Al系ハイドロタルサイト系吸着材、シリカ-マグネシア系吸着材が、吸着性と脱着性の点から好ましい。
【0013】
吸着材としては、粒径が小さいほどその比表面積が大きくなり、吸着性が高くなる。一方、粒径が小さくなりすぎると、吸着材の回収、洗浄、再利用がしにくくなる。そのため、吸着材のメジアン径の下限値は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、メジアン径の上限値は、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
【0014】
吸着材は、遊離脂肪酸を含む水層と接触させるだけで、遊離脂肪酸を吸着する。吸着材は、微生物の培養液と直接、接触させることもできるが、吸着材の表面に微生物が付着して、吸着性能が低下する場合がある。また、微生物が表面に付着した吸着材を回収、洗浄すると、培養系における微生物の菌体量が減少してしまう。そのため、培養液から、分離膜を通じて遊離脂肪酸を培養液外に移行させて微生物と分離し、この遊離脂肪酸を吸着材と接触、吸着させることが好ましい。遊離脂肪酸を培養液外に移行することにより、培養液中の遊離脂肪酸濃度を低く保つことができ、遊離脂肪酸による微生物培養への悪影響を抑えることができる。
【0015】
分離膜としては、微生物を通さず、遊離脂肪酸を通すものであれば特に制限することなく使用することができ、透析膜、濾過膜等を用いることができる。透析膜を用いる場合、分画分子量が5kDa以上のものが好ましく、10kDa以上のものがより好ましく、25kDa以上のものがさらに好ましい。また、透析膜は、分画分子量が300kDa以下のものが好ましく、200kDa以下のものがより好ましい。濾過膜を用いる場合、孔径0.1μm以上のものが好ましく、0.3μm以上のものがより好ましい。また、濾過膜は、孔径2μm以下のものが好ましく、1μm以下のものがより好ましい。分離膜を通過できる大きさが大きくなるほど遊離脂肪酸を効率的に移行させることができるが、遊離脂肪酸以外の化合物の移行も増えてしまうため、回収した遊離脂肪酸を精製する際の手間が大きくなる場合がある。
分離膜としては、強度が強いろ過膜が好ましく、微生物が付着しにくいためフッ素系樹脂からなるろ過膜がより好ましい。また、ろ過膜は、遊離脂肪酸を培養液外へ移行させて取り出すことができるため中空糸状であることがさらに好ましい。
【0016】
「脱着工程」
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒で洗浄するだけで、吸着材から遊離脂肪酸を脱着することができる。
オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒としては、メタノール(-0.82、括弧内の数字はオクタノール-水分配係数である)、アセトニトリル(-0.34)、エタノール(-0.31)、アセトン(-0.24)、イソプロパノール(0.05)、酢酸エチル(0.73)等が挙げられる。また、オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内であれば、混合溶媒を用いることもできる。
洗浄時間としては、1分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましく、10分以上であることが更に好ましい。また、180分以下であることが好ましく、120分以下であることがより好ましく、60分以下であることが更に好ましい。
洗浄に使用する溶媒量は、吸着材のスラリー1gに対して、3ml以上であることが好ましく、5ml以上であることがより好ましい。また、15ml以下であることが好ましく、10ml以下であることがより好ましい。
そして、吸着材から脱着して溶媒に移行した遊離脂肪酸は、減圧濃縮等の公知の方法で回収することができる。また、洗浄後の吸着材は、吸着工程に再利用することができる。
【0017】
・回収システム
図1に、本発明の遊離脂肪酸の回収システムの一実施態様例の構成図を示す。
図1に示す回収システムは、遊離脂肪酸生産微生物の培養を行う培養槽1と、微生物が分泌した遊離脂肪酸を培養液外へ移行させる中空糸状の分離膜2と、吸着材が充填されたカラム3と、カラムに分離膜を通過した遊離脂肪酸を通水する吸着ライン4と、カラムにオクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒を通水する洗浄ライン5と、を有する。この回収システムにより、遊離脂肪酸生産微生物の培養と遊離脂肪酸の回収を同時に行うことができる。
なお、
図1に示す回収システムは一例であり、例えば、2本以上のカラムを並列に設け、吸着ラインと洗浄ラインを各カラムと接続するように分岐し、少なくとも一本のカラムでのFFAの脱着工程と、少なくとも一本のカラムでの吸着工程を同時に行うこと、吸着ラインのカラムより下流に栄養塩類等を添加する装置を設けること等もできる。
【実施例】
【0018】
「実験1」
FFAの溶解液は、両性界面活性剤であるCHAPS(3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate)とFFAの試薬を用いて作製した。
FFAは、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)を用いた。
1%(w/w)CHAPS溶液200mLに、各FFAを1g添加して室温で一晩撹拌した。溶け残ったFFAをガラスフィルターで濾過して取り除き、濾液をFFA溶解液として分取した。
【0019】
FFA溶解液50mLに活性白土(富士フイルム和光純薬株式会社、活性白土)2gを添加して室温で一晩振とう培養し、振とう前後の溶液中のFFA濃度を、Free Fatty Acid Quantification Kit(Biovision社製)を用いて測定した。結果を
図2に示す。
いずれのFFAも、活性白土にほぼ100%吸着することが確かめられた。吸着速度は、飽和脂肪酸の方が、不飽和脂肪酸よりも速い傾向であった。
【0020】
「実験2」
上記実験1の方法で活性白土、またはシリカ-マグネシア系吸着材(水澤化学工業株式会社、ミズカライフ)にパルミチン酸(16:0)を吸着させた。吸着後のFFA濃度を、Free Fatty Acid Quantification Kit(Biovision社製)を用いて測定し、吸着量を算出した。
吸着後の液を、50mlファルコンチューブに移し、遠心分離(5,000rpm、10min)により活性白土を沈殿させた。上澄みを捨て、0.2g程度の活性白土を2mlエッペンチューブに分取し、分取した活性白土の重さを精秤した。
このエッペンチューブに抽出溶媒1mlを入れ、30分撹拌して洗浄した後、遠心分離(14,000rpm、1min)により活性白土を沈殿させ、上澄み1を分取した。沈殿に抽出溶媒1mlを再添加し、30分撹拌した後、遠心分離(14,000rpm、1min)し、上澄みを先の上澄み1と合わせて測定液とした。
測定液中のFFA濃度を、Free Fatty Acid Quantification Kit(Biovision社製)を用いて測定した。洗浄前の吸着材に吸着しているFFAの吸着量と、洗浄後の測定液中のFFA濃度から、FFAの回収率を算出した。活性白土、シリカ-マグネシア系吸着材の結果を、それぞれ
図3、4に示す。
【0021】
オクタノール-水分配係数が、-0.85~0.8の範囲内である溶媒で洗浄することにより、活性白土とシリカ-マグネシア系吸着材から約90%以上の遊離脂肪酸を回収することができた。それに対し、水、およびクロロホルム(1.97)、ヘキサン(3.9)では、遊離脂肪酸の回収率が低かった。
【0022】
「実験3」
活性炭(富士フイルム和光純薬株式会社、活性炭素(粉末・中性))と、抽出溶媒として、水、メタノール(-0.83)、ヘキサン(3.9)を用いた以外は、実験2と同様にして、FFAの回収率を算出した。
水、メタノール(-0.83)、ヘキサン(3.9)のいずれからもFFAは検出できず、回収率は0%であり、活性炭からはFFAを脱着させることはできなかった。
【0023】
「実験4」
実験1と同様にして調製したFFA溶解液を、ろ過膜(ADVANTEC社、メンブレンフィルター 親水性PTFEタイプ、孔径0.2μmもしくは0.5μm)でろ過し、ろ過前後の溶液中のFFA濃度をFree Fatty Acid Quantification Kit(Biovision)を用いて測定した。結果を
図5に示す。
いずれのFFAも、ろ過膜を透過することができた。
このことから、ろ過膜を分離膜として用いることにより、遊離脂肪酸を培養液外へ移行させることができ、移行させた遊離脂肪酸をマグネシウム、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも一種の酸化物又は水酸化物を含む吸着材と、オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒を用いることで回収できることが示唆された。
【符号の説明】
【0024】
培養槽 1
分離膜 2
カラム 3
吸着ライン 4
洗浄ライン 5