(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】3Dセラミック印刷
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20250311BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250311BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250311BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2022581528
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 GB2021051693
(87)【国際公開番号】W WO2022008883
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-07-14
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522503285
【氏名又は名称】セラミック アディティブ マニュファクチャリング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジュマ,カシム
(72)【発明者】
【氏名】リーニー,マイケル ウィリアム
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-286416(JP,A)
【文献】特表2016-521195(JP,A)
【文献】特開2000-033211(JP,A)
【文献】特表2019-529066(JP,A)
【文献】特公昭52-031370(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第110395995(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106903775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B33Y 10/00
B33Y 80/00
C04B 35/00-35/84
C04B 38/00-38/10
B01D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック物品を製造する方法であって、
セラミック粉末および無機バインダを用いて、バインダジェット3Dセラミックプリンタによりセラミック構造を3D印刷することにより、前記セラミック構造を形成するステップであって、前記セラミック粉末は、焼結されたセラミック材料を含
み、前記焼結されたセラミック材料は、焼結されたセラミック材料の粒子を有し、該粒子は、10ミクロンよりも大きく200ミクロンよりも小さいサイズを有する、ステップと、
前記セラミック構造を焼成して前記セラミック物品を形成するステップであって、前記セラミック物品は、金属ろ過用のセラミック鋳物フィルタを有する、ステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記焼結されたセラミック材料は、焼結された粒状セラミック材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結されたセラミック材料は、10%未満または5%未満のポロシティを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック構造は、焼成の際に、10%未満または5%未満の収縮を受け、前記セラミック物品が形成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック粉末は、焼結されたセラミック材料の自由流動粉末を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼結されたセラミック材料は
、150ミクロン未満、100ミクロン未満、または50ミクロン未満のサイズを有する、焼結されたセラミック材料の粒子を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼結されたセラミック材料は
、30ミクロン超、50ミクロン超、または70ミクロン超のサイズを有する、焼結されたセラミック材料の粒子を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック構造を焼成するステップは、1,000℃、1,200℃、1,400℃、または1,600℃よりも高い温度に前記セラミック構造を焼成するステップを有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一例は、3Dセラミック印刷に関する。ある例は、前記範囲に害を及ぼすことなく、セラミック構造のバインダジェット3D印刷から得られるセラミック物品を製造する方法に関する。ある特定の例は、前記範囲に害を及ぼすことなく、溶融金属ろ過用のセラミック鋳物フィルタを製造する方法、およびそのような方法により製造された金属ろ過用のセラミック鋳物フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
3D印刷は、付加製造法としても知られており、物品を製造するためのよく知られた技術である。3D印刷技術は、3次元物品を合成するために異なる印刷媒体/印刷材料を使用する、各種異なる技術およびプロセスを包含する。通常、3D印刷法では、コンピュータ制御の下、例えば、バーチャル3DモデルまたはCAD設計に基づいて、材料の連続した層が形成され、これにより、ほぼ任意の形または幾何形状の物品の形成が可能となる。
【0003】
通常、3D印刷によりセラミック物品を形成するため、初期セラミック構造/モデルが3Dセラミックプリンタにより3D印刷される。そのような初期セラミック構造は、得られるセラミック物品の前駆体として機能し、該セラミック物品は、前記セラミック構造を焼結した際に形成される。
【0004】
3Dセラミックプリンタ技術の一つの形態は、バインダジェット付加製造/バインダジェット3D印刷(「粉末ベッドおよびインクジェット」、「ドロップオン粉末」印刷とも称される)であり、例えばインクジェットプリンタヘッドを用い、粉末の層の特定の部分に選択的に設置される結合剤を用いて、付加レイヤバイレイヤプロセスにおける一部の構築が支援される。
【0005】
通常のバインダジェットプロセスでは、粉末供給部からの粉末の薄い層が、構築プラットフォームの上部に広げられる。1つ以上のインクジェットノズルが、粉末粒子を相互に結合する結合剤の液滴を選択的に堆積/噴射し、3D印刷される部品の層を形成するパターンが形成される。セラミック粉末層に結合剤が設置される場合、いずれの箇所でも、セラミック粉末は、結合し固化する。層が完成すると、構築プラットフォームは、下方に移動し、粉末供給部が上方に移動し(例えば、構築プラットフォームを下げる構築ピストン、および粉体供給部を上昇させる粉末供給ピストンを介して)、別の粉末の薄い層が構築プラットフォーム上に広げられる(例えば、レベリングローラを介して)。このプロセスが繰り返され、全体部分が完成するまで、一部分が構築される。3D印刷プロセスの後、粉末床に封入された構築部品が粉末床から除去され、緩い未結合の過剰な粉末が除去/洗浄され、完成したセラミック構造が完全に露出される。その後、3D印刷部品、すなわち「グリーン状態」の初期セラミック構造は、焼結するように焼成される必要があり、例えば、3D印刷セラミック構造が溶融/ガラス化/凝固され、これにより、得られるセラミック物品が形成される。これにより、3D印刷された初期セラミック構造は、事実上、セラミック前駆体構造を形成し、これがいったん焼成/焼結されると、セラミック物品が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バインダジェット3Dセラミックプリンタ用のセラミック粉末、すなわち、セラミック粉末供給原料/セラミック印刷材料/媒体は、通常、スプレードライプロセスにより製造される。この方法では、セラミックスラリーを高温ガスで急速乾燥させ、バインダジェット3Dセラミックプリンタでの使用に適した、粒子サイズが50~100ミクロンの乾燥自由流動粉末を形成することにより、セラミックスラリーから乾燥粉末が形成される。しかしながら、そのような従来のセラミック印刷材料を用いてセラミック構造を形成するバインダジェット3Dセラミックプリンタでは、焼成/焼結して得られるセラミック物品が形成されると、例えば40%のオーダの大きな収縮が生じ得る。これは、得られるセラミック物品の非対称変形、およびクラックのような構造的欠点を引き起こす可能性がある。従って、得られるセラミック物品、すなわち焼成/焼結された3D印刷セラミック構造から得られるセラミック物品は、焼成前の3D印刷セラミック構造の初期形状/寸法に対して、低いネット形状および低い忠実度が得られ得る。得られるセラミック物品がセラミック鋳物フィルタである場合、例えば直接注入鋳造プロセスの場合、収縮は、フィルタのポロシティに影響し、単位インチ当たりのフィルタのポア数(PPI)を低下させ、フィルタのろ過効率および流量が低下し、これにより、鋳造プロセス中の注入時間が長くなり、鋳造プロセス中、例えば、鋳造プロセスの間、フィルタまたはるつぼにおいて、溶融金属が凍結するリスクが高まる。
【0007】
従来の3Dセラミック印刷技術は、常に最適であるとは限られない。ある状況では、3D印刷セラミック構造の焼成の際の収縮を低減し、得られる3D印刷セラミック物品を形成する、改善されたバインダジェット3Dセラミック印刷技術を提供することが望ましい場合がある。ある状況では、得られるセラミック物品における、すなわち焼成された3D印刷構造から生じる、非対称な変形および構造的欠点を抑制し、焼成前の3D印刷構造の初期の形状/寸法に対する忠実度を改善することが望ましい場合がある。
【0008】
従来の文献または本明細書の背景における一覧または考察は、必ずしも、文献または背景が従来技術の一部であり、または技術常識であるという知見と解してはならない。本開示の1つ以上の態様/実施例は、1つ以上の背景問題に対処しても、しなくてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、独立請求項に記載されている。
【0010】
本開示の少なくともいくつかの実施例では、
セラミック物品を製造する方法であって、
セラミック粉末および無機バインダを用いて、バインダジェット3Dセラミックプリンタによりセラミック構造を3D印刷することにより、前記セラミック構造を形成するステップであって、前記セラミック粉末は、焼結されたセラミック材料を含む、ステップと、
前記セラミック構造を焼成して前記セラミック物品を形成するステップと、
を有する、方法が提供される。
【0011】
本開示の少なくともいくつかの実施例では、前述の方法により製造されたセラミック物品が提供される。
【0012】
本開示の少なくともいくつかの実施例では、前述の方法により製造された金属ろ過用のセラミック鋳物フィルタが提供される。
【0013】
本開示の少なくともいくつかの実施例では、添付の特許請求の範囲に記載された実施形態が提供される。
【0014】
以下、本発明の詳細な説明および特定の実施形態を理解する上で有益な本開示の各種実施例をより良く理解するため、単なる一例である添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本開示の別の方法を概略的に示した図である。
【
図3】本開示のプロセスの概要を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面(特に、
図1乃至
図3に関して)には、セラミック物品304を製造する方法100を概略的に示す。本方法では、
101において、セラミック粉末302および無機バインダを用いたバインダジェット3Dセラミックプリンタ(図示されていない)によるセラミック構造303の3D印刷により、セラミック構造303が形成され、ここで、セラミック粉末は、焼結セラミック材料301を有し、
102において、セラミック構造を焼成して、セラミック物品304を形成する。
【0017】
本開示の例では、バインダジェット3Dセラミックプリンタ用のセラミック粉末(そのようなセラミック粉末は、セラミック供給材料であり、またはバインダジェット3Dセラミックプリンタ用のセラミック印刷媒体/材料である)は、既に焼結されているセラミック材料を有し、すなわち、これは「予備焼結」され、既に焼結され、既に焼結/溶融/ガラス化されているセラミック材料の個々の粒子が形成される。これは、セラミック粉末を構成する焼結セラミック材料の個々の粒子のポロシティを低下させ、セラミック粉末の密度を増加させる。バインダジェット3D印刷用のセラミック粉末を形成するセラミック材料のそのような予備焼結粒子は、比較的高いポロシティを有する未焼結(例えば、「グリーン」/「グリーン状態」および/または未焼成セラミック材料)のバインダジェット3D印刷用の従来のセラミック粉末と比較して、対照的である。
【0018】
本開示の実施例において、3D印刷セラミック構造自体が焼成され、これによりそれ自体が焼結/溶融/ガラス化され、得られるセラミック物品が形成される場合、セラミック粉末(すなわち、既に焼結されているセラミック材料)の予備焼結セラミック材料の使用により、従来の未焼結セラミック粉体が用いられる場合よりも、焼成後に得られるセラミック物品の形成における3D印刷セラミック構造の収縮が有意に低下される。例えば、セラミック粉末に予備焼結セラミック材料を使用することにより、焼成後の3D印刷物品(すなわち、グリーン本体/状態の3D印刷物)の収縮は、(バインダジェット3Dセラミック印刷用の従来のセラミック粉末の40%の収縮と比べて)10%または5%未満のオーダにできる。これは、得られるセラミック物品における非対称な変形および構造的欠点を抑制し、得られるセラミック物品の焼成前の3D印刷構造の初期の形状/寸法に対する忠実度が改善できる。
【0019】
本開示の方法により製造されるセラミック物品のある例には、例えば、溶融金属をろ過するセラミック鋳物フィルタのような、セラミックフィルタが含まれ、特に、高い耐熱性(例えば、1,650℃を超える温度に耐える能力)および高い構造強度/完全性を有するセラミック物品が要求される。しかしながら、本開示の方法は、セラミック鋳物フィルタの製造に限定されず、任意の好適なセラミック物品を製造できることが理解される。
【0020】
図1には、セラミック物品(例えば、
図3のセラミック物品304)を製造する方法100を概略的に示す。
【0021】
ブロック101では、最初に、バインダジェット3Dセラミックプリンタを用いて、セラミック構造を3D印刷することにより、セラミック構造が形成される。バインダジェット3Dセラミックプリンタは、セラミック粉末および無機バインダを使用する。さらに、セラミック粉末は、焼結セラミック材料を含む。
【0022】
各種例において、バインダジェット3Dセラミックプリンタの噴射材料は、無機系のバインダである(すなわち、有機結合剤は含まれない)。無機バインダは、例えば、セラミックバインダ、ケイ酸塩、リン酸塩、アルミン酸塩、アルミニウムリン酸塩、リン酸、およびアルミナゲルの少なくとも1つを有してもよい。
【0023】
これにより、3Dセラミックプリンタは、初期セラミック構造/モデルを印刷し、これは、実質的に、いったん焼成プロセスを経た後に、得られるセラミック物品に対するセラミック前駆体を形成する。本願において、「前駆体」とは、別の物質が形成される物質を表す際に使用され得る。
【0024】
ブロック102では、3D印刷セラミック構造が焼成され、セラミック物品が形成される。
【0025】
いくつかの例では、セラミック構造を焼成するステップは、セラミック構造を、1,000℃、1,200℃、1,400℃または1,600℃を超える温度まで焼成するステップを有する。
焼成温度は、使用されるセラミック材料およびその耐熱材料に適するように選択され、そのような材料には、炭化ケイ素、シリカ、粘土、アルミナ(二酸化アルミニウムAl2O3)、ジルコニア(二酸化ジルコニウムZrO2)、酸化マグネシウム(MGO)、酸化カルシウム(CaO)、ムライト、イットリア/イットリア酸化物(Y2O3)、溶融ジルコニアムライトの少なくとも1つ以上が含まれる。
【0026】
本開示の例では、バインダジェット3Dセラミックプリンタ用のセラミック粉末(すなわち、3Dプリンタでセラミック構造を形成するため、噴射バインダと組み合わせて使用されるセラミック印刷媒体/材料)は、既に焼成されたセラミック材料を含み、既に焼結/溶融/ガラス化されたセラミック材料を含むグレイン/粒が形成され、すなわち、セラミック材料の粒子は、まとめて焼結/溶融/ガラス化され、焼結セラミック材料のグレイン/粒が形成される。そのような予備焼結セラミック材料は、未焼結セラミック材料と比べて、ポロシティが低く、密度が高い。バインダジェット3Dプリンタ用のセラミック粉末にそのような予備焼結セラミック材料を用いることにより、3D印刷セラミック構造において、得られるセラミック物品を形成する際の焼成の際の収縮の量を低減することが可能となる。
【0027】
本開示の例では、セラミック粉末(すなわち、セラミック印刷媒体/材料)は、セラミック粉末であり、そのグレイン/粒は、相互に焼結されたより小さな粒子から形成され、これにより、焼結粒状セラミック材料、またはセラミック材料の粒子の焼結集塊が形成される。例えば、初期(造粒および焼結の前)に、2~50ミクロンのオーダのサイズの粒子を有するセラミック材料が相互に組み合わされ、焼結され、例えば50~150ミクロンのオーダの、より大きな粒子サイズを有する焼結グレイン/粒が形成される。
【0028】
セラミック粉末は、実質的に焼結された粒状セラミック材料を有してもよく、すなわち、焼結された粒状セラミック材料は、セラミック粉末の実質的な割合、例えば重量比および/または体積比を有してもよい。例えば、焼結セラミック材料は、セラミック粉末の90~100重量%を含んでもよい。セラミック粉末中に存在し得る他の材料/添加剤(すなわち、バインダジェット3Dプリンタ材料のセラミック印刷媒体/材料の10重量%未満を形成する他の材料/添加剤)は、マイクロシリカ/シリカフューム(噴射バインダのセラミック粉末の吸収を高めるために使用され得る)、および粘土(3D印刷構造のグリーン強度を高めるために使用され得る)を含む。
【0029】
いくつかの例では、焼結された粒子状セラミック材料は、セラミック材料の焼結された粒状粒子、凝集粒子、または集塊化粒子のグレイン/粒を有する。例えば、
図3を参照すると、セラミック材料301の個々の別個の粒子は、粒状/凝集/集塊化され、相互に焼結され(そのような粒状/凝集/集塊化、および焼結は、矢印200により概略的に表されている)、バインダジェット3Dセラミックプリンタ用のセラミック粉末を形成する、セラミック材料の焼結された粒子/凝集/集塊化粒子のグレイン/顆粒/粒子が形成される。
【0030】
いくつかの例では、焼結セラミック材料は、10%未満または5%未満のポロシティを有し、すなわち、個々の粒子のポロシティは、10%未満または5%未満である。有意には、セラミック粉末のそのような低いポロシティレベルにより、ステップ102において、3D印刷セラミック構造が焼成/焼結され、セラミック物品が形成される際の収縮量が低下する。いくつかの例では、セラミック粉末は、印刷されたセラミック構造3Dが、焼成の際に10%または5%未満の収縮を受け、セラミック物品が形成されるように構成される。
【0031】
いくつかの例では、セラミック粉末は、焼結セラミック材料の実質的に自由流動性の粉末となるように構成される。すなわち、セラミック粉末のグレインは、実質的に凝集せず、相互に固着しないように構成される。セラミック粉末のそのような自由流動特性は、焼結セラミック材料のグレイン/顆粒/粒子の形態により、効果的であり得る。特に、それらの粒子サイズ(例えば、150ミクロン未満)、形状(例えば、実質的に球形)、および表面特性(例えば、摩擦力を減少させるよう,平滑に構成される)に関して、効果的であり得る。
【0032】
いくつかの例では、焼結セラミック材料は、200ミクロン未満、150ミクロン未満、100ミクロン未満、または50ミクロン未満のサイズを有する焼結セラミック材料の粒子を含む。
【0033】
いくつかの例では、焼結セラミック材料は、10ミクロン超、30ミクロン超、50ミクロン超、または70ミクロン超のサイズを有する粒子焼結セラミック材料の粒子を含む。
【0034】
本開示の3D印刷プロセス、およびこれにより使用されるセラミック粉末の特定の例の利点は、3D印刷セラミック構造を炭化するステップ(すなわち、有機材料/炭素含有化合物のような炭素前駆体で、3D印刷セラミック構造を含浸またはコーティングするステップ、および3D印刷セラミック構造を熱分解するステップ(すなわち、空気/酸素の非存在下で3D印刷セラミック構造を焼成するステップ)を有し、3D印刷セラミック構造内/周囲の有機材料が炭化され、これにより、得られたセラミック物品内/周囲の炭素結合のネットワークが形成されるステップ)を有する代替3D印刷プロセスよりも、焼成プロセス201を酸素の存在下で実施できることである。従って、より単純で安価な製造プロセスを採用することができ、外気中で行うことができ、脱酸素化は、必要とされない。またこれにより、脱酸素化環境での焼成が要求されるバッチプロセスの代わりに、連続焼成プロセスを利用することができる。さらに、3D印刷セラミック構造を炭化するステップを含む代替3D印刷プロセスでは、得られる熱分解炭化3D印刷セラミック物品は、約600℃の温度で酸化する。有意には、本開示の3D印刷プロセスの例では、600℃で酸化しないセラミック物品が得られる。得られるセラミック物品が金属ろ過のセラミック鋳物フィルタである場合、フィルタを予備加熱することができるため、これは有意である(これにより、金属ろ過プロセス中のフィルタによる初期衝撃の際の金属凍結を抑制することができる)。
【0035】
図2には、3Dセラミックプリンタ用のセラミック粉末(例えば、
図3のセラミック印刷材料302)を製造する方法200の例を概略的に示す。
【0036】
ブロック201では、セラミック材料301の第1の複数の粒子(例えば、粉末:アルミナ、シリカおよび/またはジルコニア)が粒状化され、第2の複数のグレインが形成され、各グレインは、複数の粒子301で形成される。
【0037】
ブロック202では、セラミック材料の第2の複数のグレインが焼結され、セラミック材料302の第2の複数の焼結されたグレインが形成される。これにより、セラミック粉末は、一緒に焼結されたセラミック材料の(より小さい)粒子(例えば、2~50ミクロンのオーダ)で構成された(より大きな)粒子(例えば、100ミクロンのオーダ)を含み、これらは、無機的に相互に結合される。本開示の実施例では、そのようなセラミック材料302の焼結されたグレインは、バインダジェット3Dセラミックプリンタのセラミック粉末として使用される。いくつかの例では、セラミック材料302のそのような焼結粒子は、セラミックビーズまたは人工砂に対応してもよい。
【0038】
図3には、本開示のプロセスおよび前述の方法を概略的に示す。
【0039】
図3には、セラミック材料(301)の複数の粒子が、粒状化、凝集および/または集塊化された後、焼結され、グレインが形成されることを概略的に示す。その各々は、複数の焼結粒子(302)を有する。実際、セラミック材料の(より小さな)粒子の粒状化/凝集/集塊化から、(より大きな)グレイン/顆粒/粒子が形成され、これらは、まとめて焼結され、より大きなグレイン/顆粒/粒子が形成される。粒状化/凝集/集塊化、および焼結プロセスは、矢印200で表されており、
図2のプロセスに対応する。そのような予備焼結粒子は、バインダジェット3D印刷用のセラミック粉末として使用される。
【0040】
いくつかの例では、最初、セラミック材料(301)の未焼結粒子は、2~50ミクロンのオーダの粒子サイズを有する。これらは、例えば、水および有機バインダを用いて、粒状化/凝集/集塊化され、50~150ミクロンのオーダの粒子サイズを有する大きな粒状化/凝集/集塊化されたグレインが形成される。次に、これらのグレインが焼結され、セラミック材料の焼結された粒状化/凝集/集塊化粒子が形成される。焼結プロセスに続いて、閾値サイズ(例えば、150ミクロン)よりも大きく閾値サイズ(例えば、50ミクロン)よりも小さな任意のグレインが、ふるい分け/ろ過され、粒子サイズ範囲(例えば、50~150ミクロン)を有するグレインが残される。そのような粒子サイズは、自由流動粉末を提供する上で最適/好適であり、従って、バインダジェット3Dセラミックプリンタ用のセラミック粉末302として使用される上で最適/好適である。粒状化/凝集/集塊化プロセスは、実質的に球状のグレインを形成するように構成されてもよく、そのようなグレイン形状は、自由流動粉末を提供する上で最適/好適であり、従って、バインダジェット3Dセラミックプリンタのセラミック粉末として使用される上で最適/好適である。
【0041】
次に、セラミック粉末302は、バインダジェット3Dセラミックプリンタに使用され、セラミック粉末302およびジェットバインダを用いて形成された、セラミック構造303が3D印刷される。そのような印刷プロセスは、矢印101で表されており、
図1のプロセス101に対応する。
【0042】
次に、セラミック構造体303が焼成され、セラミック物品307が形成される。そのような焼成プロセスは、
図1の矢印102により表されている。
【0043】
前述の方法およびプロセスは、セラミック物品、特にセラミックフィルタ、例えば金属ろ過用のセラミック多孔質鋳造フィルタの製造に使用されてもよく、初期セラミック多孔質構造(セラミック鋳造フォーム(foam)フィルタの構造および形状に類似する)は、3Dセラミックプリンタにより印刷され、その後、焼成され、結果として、セラミック鋳造フィルタが形成される。しかしながら、本開示の方法は、セラミック鋳物フィルタの製造に限定されるものではなく、任意の好適なセラミック物品、例えば、セラミックノズル(例えば、金属計量用)、セラミック流量制御装置、エンジニアリング用のテクニカルセラミックス/セラミックス、医療用セラミック(例えば、インプラント用)、電気セラミックおよび絶縁体、が製造され得ることが理解される。
【0044】
本開示の例が、フローチャートおよび概略的なブロック図を用いて説明される。(フローチャートおよびブロック図の)各ブロックおよびブロックの組み合わせは、一つのブロックまたは複数のブロックに特定された機能を実施することに適した、任意の手段、装置、または機械により実施することができることが理解される。従って、ブロックは、特定の機能を実施する手段、装置、または機械の組み合わせ、および特定の機能を実施する動作の組み合わせをサポートする。
【0045】
ある実施例を参照して特徴が記載されているが、これらの特徴は、記載されているか否かにかかわらず、他の実施例にも存在してもよい。これまでの段落において、本開示の各種例が説明されたが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、所与の実施例に修正を加えることができることを理解する必要がある。例えば、各種例(および処理方法)は、組み合わされてもよい。
【0046】
本願で使用される「有する」という用語は、排他的な意味ではなく、包含的な意味で使用される。すなわち、Yを有するXという任意の言及は、Xが1つのYのみを含むこと、または2つ以上のYを含んでもよいことを表す。もし排他的な意味で「有する」を使用することを意図する場合、「のみを有する」と言及され、または「からなる」を使用することにより、文脈において明確にされる。
【0047】
本願において、各種実施例が参照される。実施例に関する特徴または機能の説明は、それらの特徴または機能が当該実施例に存在することを示す。文中の「例」または「例えば」または「てもよい」と言う用語の使用は、明示的に記述されているか否かにかかわらず、そのような特徴または機能が、例として記述されているか否かにかかわらず、少なくとも記載された例に存在すること、および必ずしも必要ではないが、それらがいくつかのまたは全ての他の例に存在し得ることを意味する。従って、「例」、「例えば」または「てもよい」は、ある例のクラスにおける特定の事象を表す。事象の特性は、その事象のみの特性であっても、クラスの特性であっても、クラスにおける事象の全てではなく一部を含む、クラスのサブクラスの特性であってもよい。
【0048】
本願において、「a/an/the」[特徴、素子、微雨剤、手段…]の言及は、明示的な規定がない限り、「少なくとも1つの」[特徴、素子、微雨剤、手段…]の意味として解される。
【0049】
前述の記載では、特に重要であると考えられる本開示の例の特徴に対して注意が向けられるように試みられるが、特に強調されているか否かにかかわらず、出願人は、本願において先に言及され、および/または図面に示された任意の特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関して、保護を主張することが理解される必要がある。
【0050】
本開示の例および添付の特許請求の範囲は、当業者に明らかな任意の方法で、適切に組み合わされてもよい。