IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7647019スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途
<>
  • -スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途 図1
  • -スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途 図2
  • -スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/1242 20250101AFI20250311BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250311BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C01G45/1242
H01M4/505
H01M4/36 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020062865
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160970
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諄
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-176732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にリン酸塩とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素とを含有し、化学式Li1+XMn2-X-YMg(式中X、Yはそれぞれ0.02≦X≦0.10、0.05≦Y≦0.30で表されるスピネル型マンガン酸リチウムであって、リン/マンガンモル比が0.0074以上0.0080以下であることを特徴とするスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項2】
リン酸塩として少なくともLiPOを含有することを特徴とする請求項1に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項3】
BET比表面積が0.3m/g以上1.5m/g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項4】
二次粒子の平均粒子径が4μm以上8μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項5】
XRD測定による(400)面の半値幅が0.005以上0.06以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項6】
二次粒子径の相対標準偏差が60%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項7】
SEM観察による一次粒子の平均径が0.5μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項8】
SOの含有量が0.3wt%以上1.0wt%以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項9】
Naの含有量が3,000wtppm以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項10】
表面にリンとアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素を含有するマンガン原料とリチウム原料とマグネシウム原料を混合し、大気中、又は、高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中含む)において850~950℃で焼成し、解砕することを特徴とする請求項1~9のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項11】
マンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムのリン酸塩の内少なくとも1種の金属元素を含有するリン酸原料を混合し、大気中、又は、高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中含む)において850~950℃で焼成し、解砕することを特徴とする請求項1~9のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項12】
リン酸原料の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする請求項11に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項13】
リン酸塩の水溶液を原料することを特徴とする請求項11に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれかの項に記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含むことを特徴とする電極。
【請求項15】
請求項14に記載の電極を正極に使用したことを特徴とするリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途に関するものであり、より詳しくは、リン酸塩を表面に付着させたスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法、並びにこれを電極に用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は他の蓄電池に比べてエネルギー密度が高いことから、携帯端末用の蓄電池として幅広く使用されている。また、最近では、定置用や車載用といった大型で大容量と高出力が必要とされる用途への適用も進められており、既に一部で実用化されたものも含めて、更なる高性能化を目指した研究が進められている。
【0003】
現在のリチウム二次電池の正極材料には、携帯電話等の民生用小型電池には主にコバルト系材料(LiCoO)が使用されており、また、定置用や車載用にはニッケル系材料(LiNi0.8Co0.15Al0.05)やニッケル-コバルト-マンガン三元系材料(LiNi0.5Co0.2Mn0.3等)が主に使用されている。しかし、コバルト原料やニッケル原料が資源的に多くなく高価であり、また、出力特性があまり高くない。
【0004】
一方、マンガン系材料の一つであるスピネル型マンガン酸リチウムは、原料のマンガンが資源的に豊富で安価であり、また、出力特性と安全性に優れることから、大型電池や高出力を必要とする用途に適した材料の一つである。
【0005】
しかしながら、スピネル型マンガン酸リチウムは高温安定性、すなわち、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性や保存特性に問題があり、この課題の解決が望まれていた。例えば、特許文献1及び特許文献2では、いずれもリン酸塩を含有したスピネル型マンガン酸リチウムが提案されているが、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性に改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5556983号公報
【文献】特開2017-31006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性及び出力特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウムを提供するものであり、さらには、スピネル型マンガン酸リチウムを正極に用いるリチウム二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、スピネル型マンガン酸リチウムについて鋭意検討を重ねた。その結果、下記を要旨とする本発明が、上記した課題を達成しうることを見出した。すなわち、本発明は、表面にリン酸塩とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素とを含有し、化学式Li1+XMn2-X-YMg(式中X、Yはそれぞれ0.02≦X≦0.10、0.05≦Y≦0.30で表されるスピネル型マンガン酸リチウムであって、リン/マンガンモル比が0.001以上0.1以下であることを特徴とするスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法、並びにその用途である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、これをリチウム二次電池用正極材料に使用する場合、従来に比べて高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性が向上するとともに、出力特性に優れるリチウム二次電池の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1参考例1で得られたリン酸塩含有Mnの粒子表面のSEM-EDX像である。
図2参考例1で得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムのXRDパターンである。
図3参考例1で得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの粒子表面のSEM-EDX像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、表面にリン酸塩とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素とを含有する。表面にリン酸塩とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素とを含有することで、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に、高温において優れた充放電特性を得ることが可能となる。高温においては、リチウム二次電池の電解液中に僅かに含まれるフッ化水素とスピネル型マンガン酸リチウムの反応によりマンガンが溶出することで充放電サイクル特性が低下する。スピネル型マンガン酸リチウムの表面にリン酸塩と金属元素が存在することにより、電解液中のフッ化水素が捕捉されてマンガン溶出が抑制され、高温における充放電での容量低下を抑制することが可能となる。
【0013】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、化学式Li1+XMn2-X-YMg(式中X、Yはそれぞれ0.02≦X≦0.10、0.05≦Y≦0.30)で表される。Xの値が0.02未満であると高温における充放電での容量低下が起きやすくなり、0.10を超えると十分な充放電容量が得られない。また、Yの値が0.05未満であると高温における充放電での容量低下が起きやすくなり、0.30を超えると十分な充放電容量が得られない。スピネル型マンガン酸リチウムのX、Yは組成分析から求めることができる。その方法としては、例えば、誘導結合プラズマ発光分析、原子吸光分析等が例示される。
【0014】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リン/マンガンモル比は0.001以上0.1以下である。リン/マンガンモル比が0.001以上0.1以下であることにより、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に、高温において優れた充放電特性を得ることが可能になるとともに、充放電容量を大きくすることが可能となる。リン/マンガンモル比が0.001未満になると、高温における充放電での容量低下が大きくなりやすくなり好ましくない。0.1より大きくなると、充放電容量が小さくなり好ましくない。リン/マンガンモル比は、0.001以上0.08以下が好ましく、0.005以上0.05以下がより好ましい。
【0015】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リン酸塩として少なくともLiPOを含有することが好ましい。本発明のスピネル型マンガン酸リチウムを合成する際に使用されるリン酸塩はアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素を含有するリン酸塩であるが、リン酸塩原料とマンガン原料とリチウム原料を混合して焼成する際に、リン酸塩とリチウム原料が反応してLiPOが生成する。生成したLiPOはスピネル型マンガン酸リチウムの表面にのみ存在する。また、本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、LiPO以外のアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素を含有するリン酸塩が表面に存在しても良い。
【0016】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に、高温において優れた充放電特性を得ることが可能になるとともに、優れた出力特性を得ることが可能となるため、BET比表面積が0.3m/g以上1.5m/g以下であることが好ましく、0.3m/g以上0.6m/g以下がより好ましい。
【0017】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に、優れた出力特性が得られるとともに、正極合剤の充填性を高くすることが可能となるため、二次粒子の平均粒子径が4μm以上8μm以下であることが好ましく、5μm以上7μm以下が好ましい。
【0018】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に結晶性を高くし、マンガンの溶出を抑制するとともに充放電に伴う結晶構造変化を抑制し、高温において優れた充放電特性を得るため、XRD測定による(400)面の半値幅が0.005以上0.06以下であることが好ましく、0.005以上0.05以下であることがより好ましい。
【0019】
半値幅の測定方法は、実施例の<XRDによる半値幅の測定>により行い、測定装置の誤差を補正するため、予め標準物質の測定を行った後、スピネル型マンガン酸リチウムの半値幅から標準物質の半値幅を差し引いて算出した。
【0020】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に組成を均一にし、高温において優れた充放電特性を得るため、二次粒子径の相対標準偏差が60%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に高温において優れた充放電特性を得るため、一次粒子の平均径が0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上2.5μm以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際の充放電容量を大きくするとともに、高温において優れた充放電特性を得るため、SOの含有量が0.3wt%以上1.0wt%以下であることが好ましく、0.4wt%以上0.7wt%未満であることがより好ましい。
【0023】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、結晶性を高くし、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に、高温において優れた充放電特性を得るため、Naの含有量が3,000wtppm以下であることが好ましく、1,000wtppm以下であることがより好ましい。
【0024】
次に、本発明のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法について説明する。
【0025】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、表面にリンとアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素を含有するマンガン原料とリチウム原料とマグネシウム原料を混合し、大気中、又は、高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中含む)において850~950℃で焼成し、解砕することによって得られる。また、マンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムのリン酸塩の内少なくとも1種の金属元素を含有するリン酸原料を混合し、大気中、又は、高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中含む)において850~950℃で焼成し、解砕することによっても得られる。
【0026】
マンガン原料に特に制限はないが、スピネル型マンガン酸リチウムを合成する際に充填性を高くすることができることから、晶析法Mn、電解法MnO、又は、晶析法Mn若しくは電解法MnOを焼成して得られるMnが好ましい。
【0027】
表面にリンとアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素を含有するマンガン原料は、晶析法Mn、電解法MnO等を含有するスラリーを調製し、スラリーにアルカリ性のリン酸塩水溶液とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素を含有する酸性水溶液を添加することにより得られる。
【0028】
リチウム原料に特に制限はなく、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、シュウ酸リチウム等が例示されるが、これらに制限されない。
【0029】
マグネシウム原料に特に制限はなく、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸化マグネシウム等が例示されるが、これらに制限されない。
【0030】
アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムのリン酸塩の内少なくとも1種の金属元素を含有するリン酸原料は、例えば、AlPO4、Al(HPO、Mg(PO、Mg(HPO、Zn(PO、Ni(PO、Ni、Co(PO、Fe(PO、Ca(PO2、CaHPO、CaH等が例示される。
【0031】
マンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料の混合方法、又はマンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料、リン酸原料の混合方法としては、例えば、乾式混合、湿式混合等が例示される。
【0032】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムを得るための焼成は、大気中もしくは高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中含む)、即ち、酸素含有量が18~100vol%の酸素雰囲気中で、850~950℃で行う。850℃より低温ではスピネル型マンガン酸リチウムのBET比表面積が大きくなり易くなり、950℃を超えるとスピネル型マンガン酸リチウムの酸素欠損が増加し、その結果、リチウム二次電池の正極活物質として使用する際に充放電サイクル特性が低下し易くなる。焼成は900~930℃で行うことが好ましい。
【0033】
スピネル型マンガン酸リチウムは、焼成時に二次粒子同士が固結し易いため、目的の粒子径を得るために解砕を行う。解砕方法は、微粉生成、及び、BET比表面積増加を抑制するため、せん断力による解砕が好ましい。
【0034】
スピネル型マンガン酸リチウムを解砕した後、正極の厚みを超える粗大粒子を除去するため、篩を通過させることが好ましい。篩の目開きは50μm以下が好ましい。
【0035】
本発明のリン酸塩を含有したスピネル型マンガン酸リチウムをリチウム二次電池の正極に使用することで、従来では得ることができなかった、高温における充放電サイクル特性に優れ、かつ、出力特性に優れるリチウム二次電池を構成することが可能になる。
【0036】
正極以外のリチウム二次電池の構成としては、特に制限はないが、負極にはLiを吸蔵放出する材料、例えば、炭素系材料、酸化錫系材料、LiTi12、SiO、Liと合金を形成する材料等が例示される。Liと合金を形成する材料としては、例えば、シリコン系材料やアルミニウム系材料等が例示される。電解質には、例えば、有機溶媒にLi塩や各種添加剤を溶解した有機電解液や、Liイオン伝導性の固体電解質、これらを組み合わせたもの等が例示される。
【実施例
【0037】
次に、本発明を具体的な実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0038】
<電池性能試験>
(1)初期容量測定、リチウム対極充放電サイクル試験
各実施例で得られたスピネル型マンガン酸リチウム25mgと導電性バインダー(商品名:TAB-2,宝泉製)12.5mgをメノウ乳鉢を使用して混合した。得られた混合物を、直径16mmφのSUSメッシュ(SUS316)に2ton/cmで一軸プレスし、形状がディスク状であるペレット状にした後に、150℃で2時間、減圧乾燥して正極とした。
【0039】
負極に金属リチウムを使用し、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの体積比1:2の溶媒にLiPFを1mol/dm溶解したものを電解液に使用し、ポリエチレンシート(商品名:セルガード、ポリポア製)をセパレータに使用し、セルにはモデルセル(商品名:トムセル、有限会社日本トムセル製)を使用して電池を作製した。
【0040】
作製した電池を用いて、60℃で、セル電圧が4.3Vと3.0Vの間で、電流密度0.4mA/cmにおいて定電流で1サイクル充放電を行い、1サイクル目の充電容量を初期容量とした。次いで、60℃で、セル電圧が4.3Vと3.0Vの間で、電流密度1.3mA/cmにおいて定電流で50サイクル充放電を行い、50サイクル目と1サイクル目の放電容量の比からリチウム対極充放電サイクル特性を求めた。
【0041】
(2)カーボン対極充放電サイクル試験
負極として、球晶黒鉛シート(宝泉製TSG-A1、公称容量1.6mAh/cm)を直径16.156mmφに打ち抜いた後、3ton/cmで一軸プレスしたものを使用したことと、負極/正極容量比が1.2となるように正極活物質の量を調整したことと、ガスケットにポリプロピレン製ガスケットを使用したことと、セルにCR2032型コインセルを使用した以外は、リチウム対極充放電サイクル試験と同様の方法で電池を作製した。
【0042】
作製した電池を用いて、24℃で、セル電圧が4.25Vと3.0Vの間で、電流密度0.14mA/cmにおいて定電流定電圧充電-定電流放電を1サイクル行った。次いで、24℃で、セル電圧が4.25Vと3.0Vの間で、電流密度0.28mA/cmにおいて定電流定電圧充電-定電流放電を1サイクル行い、放電容量を電池容量とした。次に、60℃で、セル電圧が4.25Vと3.0Vの間で、電池容量に対し1時間放電率の電流密度において定電流定電圧充電-定電流放電を50サイクル行い、50サイクル目と1サイクル目の放電容量の比からカーボン対極充放電サイクル特性を求めた。なお、定電圧充電の終了条件は、充電電流が定電圧充電時の1/10まで減衰した時点とした。
【0043】
(3)出力特性試験
スピネル型マンガン酸リチウムを10mg、導電性バインダー(商品名:TAB-2、宝泉製)を10mgとした以外は、リチウム対極充放電サイクル試験と同様の方法で電池を作製した。
【0044】
作製した電池を用いて、24℃で、セル電圧が4.3Vと3.0Vの間で、電流密度0.15mA/cmにおいて定電流で3サイクル充放電を行った後、充電電流0.15mA/cm、放電電流5mA/cmにおいて定電流で3サイクル充放電を行った。電流密度5mA/cmにおける3サイクル目の放電容量と電流密度0.15mA/cmにおける3サイクル目の放電容量の比から出力特性を求めた。
【0045】
<組成分析、SO含有量、Na含有量の測定>
実施例および比較例で調製した調製したスピネル型マンガン酸リチウムの組成、リン/マンガンモル比、SO含有量、Na含有量は、スピネル型マンガン酸リチウムを塩酸-過酸化水素混合水溶液に溶解した後、誘電結合プラズマ発光分析装置(商品名:ICP-AES、パーキンエルマージャパン製)で分析した。
【0046】
<リン及び金属元素の分布状態とマンガン酸リチウムの一次粒子の平均粒子径の測定>
実施例および比較例で調製したスピネル型マンガン酸リチウムについて、リン及び金属元素の分布状態と一次粒子の平均粒子径の測定を走査電子顕微鏡(商品名:JSM-IT500、日本電子製)で行った。
【0047】
<XRDによる半値幅の測定>
実施例および比較例で調製したスピネル型マンガン酸リチウムについて、XRDによる半値幅の測定を粉末XRD測定装置(商品名:Ultima IV、Rigaku製)で行った。計測条件は、以下の通りとした。
【0048】
・ターゲット:Cu
・出力:1.6kW(40mA-40kV)
・フィルタ:Kβフィルター
・発散スリット:1°
・発散縦制限スリット:10mm
・散乱スリット:解放
・受光スリット;解放
・走査モード:連続
・スキャンスピード:4.000°/分
・サンプリング幅:0.04°(2θ/θ)
・積算回数:1回
・測定範囲:10-90°(2θ/θ)
得られたスピネル型マンガン酸リチウムのXRDデータを、粉末X線回折測定装置に付属の解析ソフト(PDXL2)を用いて解析し、2θ=44°付近の(400)面の積分幅を求めた。
【0049】
また、測定装置の誤差を補正するため、予めXRD用標準物質(NIST製α型石英粉末)の測定を行い、スピネル型マンガン酸リチウムの積分幅から標準物質の積分幅を差し引いて半値幅を求めた。
【0050】
<BET比表面積の測定>
試料1.0gをBET比表面積測定用のガラス製セルに入れ、窒素気流下で150℃、30分間脱水処理を行い、粉体粒子に付着した水分の除去を行った。
【0051】
処理後の試料を、BET測定装置(商品名:MiCROMERITICS DeSorbIII、島津製作所製)で、吸着ガスとして、窒素30%-ヘリウム70%の混合ガスを用いて、1点法でBET比表面積を測定した。
【0052】
<マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、相対標準偏差の測定>
粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)を使用して、平均粒子径(D50)と粒子径の標準偏差を測定した。
【0053】
測定した二次粒子の平均粒子径と標準偏差から、以下の式に基づき二次粒子径の相対標準偏差を求めた。
【0054】
相対標準偏差(%)=(粒子径の標準偏差)/(平均粒子径)×100
参考例1
60℃の純水に空気を吹き込みながら、これを攪拌した。当該純水の酸化還元電位が水素電極基準で100mVと一定になるようにしながら、2mol/Lの硫酸マンガン水溶液、及び、20wt%の水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ当該純水中に連続的に添加した後、得られたスラリーをろ過、洗浄、乾燥することにより平均粒子径3.8μmのMnを得た。
【0055】
Mn100gに純水2.5Lを添加してスラリーを調製し、23℃に保持して攪拌しながら7.8mmol/kgの硫酸アルミニウム300gと31.3mmol/kgのリン酸二アンモニウム300gを5時間かけて連続的に同時添加した後、ろ過、水洗、110℃乾燥を行った。得られた物質の組成はアルミニウム/マンガンモル比、リン/マンガンモル比いずれも0.0038であった。粒子表面のSEM-EDS像を図1に示す。SEM-EDS像から、粒子表面にアルミニウムとリンが均一に存在していることが観察された。また、XRDパターンはJCPDSのNo.24-734のMnのみ観察された。よって、得られた物質は、表面にアモルファス状リン酸アルミニウムが均一に担持されたMnと考えられた。
【0056】
リン酸アルミニウム担持Mn78.00gと、平均粒子径3μmのLiCO22.00gと、Mg(OH)(和光純薬工業製、平均粒子径0.07μm)1.77gを乾式で混合し、箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら900℃で6時間焼成を行い、室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は900℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを、強力小型粉砕機(商品名:フォースミル、大阪ケミカル製)で解砕してリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0057】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06であった。また、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムのXRDパターンを図2に示す。XRDパターンはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS像を図3に示す。表面にアルミニウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
実施例2
硫酸アルミニウムの濃度を15.6mmol/kg、リン酸二アンモニウムの濃度を62.6mmol/kgとしたことと、Li2CO3混合量を22.17gとした以外は、参考例1と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。



【0061】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.07Mn1.87Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にアルミニウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0062】
実施例3
焼成温度を930℃とした以外は、実施例2と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0063】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.07Mn1.87Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にアルミニウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0064】
参考例2
硫酸アルミニウムの濃度を3.9mmol/kg、リン酸二アンモニウムの濃度を15.7mmol/kgとしたことと、LiCO混合量を22.23gとしたことと、焼成温度を930℃とした以外は、参考例1と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0065】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.09Mn1.85Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にアルミニウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0066】
実施例5
60℃の純水に空気を吹き込みながら、これを攪拌した。当該純水の酸化還元電位が水素電極基準で100mVと一定になるようにしながら、2mol/Lの硫酸マンガン水溶液、及び、20wt%の水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ当該純水中に連続的に添加した後、得られたスラリーをろ過、洗浄、乾燥することにより平均粒子径3.8μmのMnを得た。
【0067】
Mn78.00gと、平均粒子径3μmのLiCO 22.18gと、Mg(OH)(和光純薬工業製、平均粒子径0.07μm)1.77gと、Mg(PO・8HO(キシダ化学製)1.61gを乾式で混合し、箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら900℃で6時間焼成を行い、室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は900℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを、強力小型粉砕機(商品名:フォースミル、大阪ケミカル製)で解砕してリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0068】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.06Mn1.87Mg0.07であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にマグネシウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0069】
実施例6
LiCOの混合量を22.44gとし、リン酸塩としてZn(PO・4HO(キシダ化学製)1.82gを用いた以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0070】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面に亜鉛とリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0071】
実施例7
LiCOの混合量を22.36gとし、リン酸塩としてMg(HPO・4HO(純正化学製)1.14gを純水5gに溶解した水溶液を用いた以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0072】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.06Mn1.87Mg0.07であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にマグネシウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0073】
実施例8
LiCOの混合量を22.36gとし、リン酸塩としてAl(HPO(純正化学製)0.83gを用いたことと、焼成温度を930℃とした以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0074】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.07Mn1.87Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にアルミニウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0075】
実施例9
LiCOの混合量を22.18gとし、リン酸塩としてCaHPO・2HO(和光純薬製)1.33gを用いた以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0076】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にカルシウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0077】
実施例10
LiCOの混合量を22.44gとし、リン酸塩としてCaH(和光純薬製)0.86gを用いた以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0078】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にカルシウムとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0079】
実施例11
LiCOの混合量を22.18gとし、リン酸塩としてCo(PO・8HO(和光純薬製)2.11gを用いた以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0080】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にコバルトとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0081】
実施例12
LiCOの混合量を22.20gとし、リン酸塩としてNi・7HO(和光純薬製)1.60gを用いた以外は実施例5と同様の方法でリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0082】
得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)とNo.25-1030(LiPO)の混合相であった。また、リン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウム粒子表面のSEM-EDS測定から、粒子表面にニッケルとリンが観察された。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0083】
比較例1
リン酸塩を添加しなかったことと、LiCOの混合量を21.21gとした以外は実施例5と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0084】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成はLi1.07Mn1.87Mg0.06であった。また、XRD測定から、得られたスピネル型マンガン酸リチウムはJCPDSのNo.35-782(LiMn)単相であった。リン/マンガンモル比、BET比表面積、マンガン酸リチウム二次粒子の平均粒子径、XRD測定による(400)面の半値幅、二次粒子径の相対標準偏差、マンガン酸リチウム一次粒子平均粒子径、SO含有量、Na含有量を表1に示し、電池性能を表2に示す。表2から、比較例1は、カーボン対極サイクル特性が実施例に対して劣ることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のリン酸塩含有スピネル型マンガン酸リチウムは、特異的なリン酸塩とアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、カルシウムの内少なくとも1種の金属元素とを含有し、XRD測定による半値幅、BET比表面積及び二次粒子径を有するため、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性に優れるとともに、出力特性に優れたリチウム二次電池の正極活物質として使用することができる。
図1
図2
図3