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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20250311BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250311BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B32B27/36
C08J5/18 CFD
H01G4/30 547
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020140657
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2021038383
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019154482
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】郡司 淳史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 奨
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀樹
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-144422(JP,A)
【文献】特開平10-278157(JP,A)
【文献】特開2015-040220(JP,A)
【文献】特開2014-124844(JP,A)
【文献】特開2002-331575(JP,A)
【文献】特開2004-155187(JP,A)
【文献】特開2010-050598(JP,A)
【文献】特開2006-028440(JP,A)
【文献】特開2017-186510(JP,A)
【文献】特開2018-062656(JP,A)
【文献】特開2017-217901(JP,A)
【文献】特開2009-233919(JP,A)
【文献】特開2019-104247(JP,A)
【文献】特開2018-203818(JP,A)
【文献】特開2009-215350(JP,A)
【文献】特開2024-615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
H01G4/12
4/224
4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム厚みが10μmを超えるポリエステルフィルムであって、一方の表面から厚み方向に10μmカットした後の引裂強度が、フィルム幅方向とフィルム長手方向のいずれも3.0N/mm以上であり、フィルム厚みが50μm以下であって、3層以上の積層構造を有し、共重合ポリエステル樹脂を含む層と、ホモポリエステル樹脂からなる層を含み、積層セラミックコンデンサー用離型フィルムとして用いられる、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記共重合ポリエステル樹脂を含む層を少なくとも2層以上有し、表面を有する層が前記共重合ポリエステル樹脂を含む層である請求項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記表面を有する共重合ポリエステル樹脂を含む層の厚みが1.5~3.0μmである請求項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
フィルムのIVが0.70~0.90である請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルム幅方向、長手方向の厚みムラがいずれも3.0%以下である請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
フィルム幅方向の屈折率が1.65以上1.75以下であり、面配向係数fnが1.6×10-1以上1.8×10-1以下である請求項1~のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記表面を有する共重合ポリエステル樹脂を含む層が、カルボン酸構成成分としてイソフタル酸を含む共重合ポリエチレンテレフタレートを含む請求項2または3に記載のポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、機械特性、熱特性、成形性などに優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルムは、その優れた機械特性などから、積層セラミックスコンデンサー(MLCC;Multi Layered Ceramics Condenser)を製造する際の離型用フィルム、ドライフィルムレジスト(DFR)を製造する際の離型用フィルムや偏光板の欠点検出の際に用いられる離型用フィルムなどに用いられている。
【0003】
MLCCを製造する際の離型用ポリエステルフィルムは、薄膜化の検討が進められている。しかしながら、フィルムを薄膜化すると、熱しわやフィルムのコシが悪くなることによる歩留まり悪化等が懸念される。かかる懸念に対して、例えば、特許文献1に記載の技術では、フィルム基材の屈折率を規定することで上記の課題を解消することを検討している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-58371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MLCCを製造する用途においては、離型用ポリエステルフィルムの上に、グリーンシートを塗工、乾燥し、その上に電極を印刷した後の工程で、誘電体をハーフカットする工程があるが、特許文献1に記載の技術では、かかる工程において離型用ポリエステルフィルムが裂けることによって連続的なフィルムの搬送が困難となる課題を有しており、MLCCの生産効率悪化の要因となっていることが判った。
【0006】
本発明の課題は、かかる課題を解決し、MLCCを生産する際のハーフカット時にフィルムの破れが発生しない、MLCC離型用フィルムとして好適なフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。
[I]フィルム厚みが10μmを超えるポリエステルフィルムであって、一方の表面から厚み方向に10μmカットした後の引裂強度が、フィルム幅方向とフィルム長手方向のいずれも3.0N/mm以上であるポリエステルフィルム。
[II]フィルム厚みが50μm以下であって、3層以上の積層構造を有し、共重合ポリエステル樹脂を含む層と、ホモポリエステル樹脂からなる層を含む[I]に記載のポリエステルフィルム。
[III]前記共重合ポリエステル樹脂を含む層を少なくとも2層以上有し、表面を有する層が前記共重合ポリエステル樹脂を含む層である[II]に記載のポリエステルフィルム。
[IV]前記表面を有する共重合ポリエステル樹脂を含む層の厚みが1.5~3.0μmである[II]または[III]に記載のポリエステルフィルム。
[V]フィルムのIVが0.70~0.90である[I]~[IV]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VI]フィルム幅方向、長手方向の厚みムラがいずれも3.0%以下である[I]~[V]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VII]フィルムの幅方向の屈折率が1.65以上1.75以下であり、幅方向、長手方向、厚み方向の屈折率より求められる面配向係数fnが1.6×10-1以上1.8×10-1以下である[I]~[VI]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VIII]前記表面を有する共重合ポリエステル樹脂を含む層が、カルボン酸構成成分としてイソフタル酸とテレフタル酸を含む共重合ポリエステルを含む[I]~[VII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[IX]積層セラミックコンデンサー用離型フィルムとして用いられる[I]~[VIII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、MLCCの製造用離型フィルムとして用いた際、ハーフカット工程におけるフィルムの裂けを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム厚みが10μmを超えるポリエステルフィルムであって、一方の表面から厚み方向に10μmカットした後の引裂強度が、フィルム幅方向とフィルム長手方向のいずれも3.0N/mm以上でなければならない。強度を上記の通りとすることでMLCC用離型フィルムとして使用する際、フィルム上に積層された誘電体などをハーフカットする工程におけるフィルムの裂けや破断を抑制することができる。より好ましくは、フィルム幅方向とフィルム長手方向のいずれも3.5N/mm以上であり、さらに好ましくは、4.0N/mm以上である。上限は特に定められるものではないが、15.0N/mm以下であることが好ましい。一方の表面から厚み方向に10μmカットした後の引裂強度は、後述する測定方法により求められるものである。また、A層/B層といった積層ポリエステルフィルムである場合、A層側の表面から深さ10μmでハーフカットしたときの引裂強度、B層側の表面から深さ10μmでハーフカットしたときの引裂強度を求め、いずれか高い方の値が上述の範囲であることが好ましい。なお、一方の表面から厚み方向に10μmカットした後の引裂強度を上述の範囲とする方法については後述する。
【0010】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの厚みは10μm以上であることが必要である。フィルム厚みが薄すぎると、MLCCの製造用離型フィルムとして使用する際、フィルム上に積層された誘電体などをハーフカットする工程における、フィルムの裂けや破断を抑制することが困難となる。また、熱しわの発生やフィルムのコシが悪くなり、搬送性を損なってしまう。フィルムの厚みは15μm以上であることがより好ましい。
【0011】
一方、MLCCは、基材となるポリエステルフィルム上に誘電体ペースト層を設けた後にMLCCを作製した後、MLCCを離型用ポリエステルフィルムから剥離することで製造される。このとき、MLCCの製造に使用された離型用ポリエステルフィルムには、スラリーや印刷された電極の一部が残存するため、一度使用した離型用ポリエステルフィルムを再利用するには残存成分を除去する必要があるところ、コストが高くなるため再利用することは難しかった。そのため、MLCCの製造に使用された離型用ポリエステルフィルムは、使用された後に大量に破棄されているため、環境負荷への影響も考えられる。そのため、環境負荷を低減する観点から、上記の用途に用いられるポリエステルフィルムは、薄膜であることが好ましく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは31μm以下、特に好ましくは25μm以下である。しかしながら、ポリエステルフィルムの厚みが薄くなればなるほど、MLCCを製造する際のハーフカット工程においてのフィルムの裂けを抑制することは困難となる。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合体であるポリエステル樹脂をさす。ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸などが挙げられ、またそれらをエステル化したものなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、ジオール成分としては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0013】
かかるジカルボン酸成分、ジオール成分から重縮合されるポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが代表的なものである。特にポリエチレンテレフタレートは、安価でありながらも耐熱性と熱収縮性に優れることから好ましい。
【0014】
また、ジカルボン酸成分、ジオール成分の少なくとも一方を2種以上含む共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸構成成分としてイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを共重合、および/または、ジオール構成成分として、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ポリアルキレングリコールなどを共重合したポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレン2,6-ナフタレート共重合体が好ましく例として挙げられる。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、共重合ポリエステル樹脂を含む層と、ホモポリエステル樹脂からなる層を含む積層構造を有することが好ましい。上記両層を有することでハーフカットされた際の引裂強度を高く保つことができる。また、たとえ破れが発生したとしてもフィルム端部までの破断が伝播することを抑制することができる。なお、本発明においてホモポリエステル樹脂からなる層とは、当該層を構成する樹脂全体に対してホモポリエステルが80重量%以上含む層を表し、共重合ポリエステル樹脂を含む層とは層を構成する樹脂全体に対して共重合ポリエステルが50重量%以上含む層であることを表す。
【0016】
また、本発明のポリエステルフィルムは3層以上の積層構造を有することが好ましく、5層以上の積層構造を有することがより好ましい。5層以上とすることで共重合ポリエステル樹脂層とホモポリエステル樹脂層を交互に複数回積層することができ、その構造を持つことによりハーフカットされた際において破断の伝播を抑制することが可能になる結果、ハーフカット時における引裂強度を高く保つことができる。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムは、共重合ポリエステル樹脂を含む層を少なくとも2層以上有し、表面を有する層が前記共重合ポリエステル樹脂を含む層であることが好ましい。フィルムの表層に共重合ポリエステル樹脂を用いることで、たとえ部分的に破れが発生したとしてもフィルム端部までの破れの伝播を抑制することができ、フィルム搬送を止める必要がなくなる。
【0018】
また、表面を有する共重合ポリエステル樹脂層の層厚みは、1.0~3.0μmであることが引裂強度、表面粗さの観点から好ましく、より好ましくは1.5~2.5μmである。上記範囲とすることで効果的にハーフカットされた際の引裂強度を維持できつつ、表面粗さの調整も容易となる。
【0019】
また、本発明のポリエステルが、共重合ポリエステル樹脂を含む層と、ホモポリエステル樹脂からなる層を含む積層構造を有する場合において、ホモポリエステル樹脂からなる層の層厚みの和と共重合ポリエステル樹脂を含む層の層厚みの和の比(ホモポリエステル樹脂からなる層の層厚みの和/共重合ポリエステル樹脂を含む層の層厚みの和)が、0.1~10であることが好ましい。当該範囲内とすることで、MLCCの製造用離型フィルムとして使用する際に実用に耐えうる機械強度を有しつつ、ハーフカットされた際の引裂強度を高く維持することが可能となる。より好ましくは0.3~7.5であり、さらに好ましくは0.5~5.0である。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムのIVは0.70~0.90であることが好ましく、より好ましくは0.75~0.85である。IVを上記範囲とすることで製膜性およびハーフカットされた際の引裂強度を高く維持する性能を両立でき、MLCC用離型フィルムの基材として好適なフィルムを提供することができる。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム幅方向とフィルム長手方向の厚みムラがいずれも3.0%以下であることが好ましい。フィルムの厚みムラが大きすぎると、MLCCの製造用離型フィルムとして用いる際に、MLCC製造用スラリーの塗布ムラが大きくなる場合がある。より好ましくはいずれも2.5%以下が好ましく、さらに好ましくはいずれも2.0%以下であることが好ましい。厚みムラを低下させる方法としては、詳しくは後述するが、例えば、フィルムを2軸配向させる方法が挙げられる。このとき強く配向させることで、フィルムの厚みムラを小さくすることができる。一方で、フィルムの厚みのムラを若干残す、すなわち、フィルムの厚い部分、薄い部分をフィルム上にあえて作ることで、フィルムの裂けの伝搬を抑制することに対し一定の効果があることがわかった。そのため、厚みムラは0.1%以上あることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましい。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム幅方向の屈折率が1.65以上1.75以下であり、後述する測定方法において幅方向、長手方向、厚み方向の屈折率より求められる面配向係数fnが1.6×10-1以上1.8×10-1以下であることが好ましい。フィルム幅方向の屈折率と面配向係数fnを前述の範囲とすることで、ハーフカットされた際の引裂強度とグリーンシートの塗布性をともに良好にすることができるため、MLCC用離型フィルムの基材として好適なフィルムとすることができる。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムの表面を有する層には搬送や巻き取り時のハンドリング性を向上させるため、粒子を含有させてもよい。表面を有する層に粒子を含有させると、各表面に微細な凸形態を形成させることができる。凸形態を形成すると搬送時において当該凸形態が形成すると、搬送時においては、搬送ロールとフィルムとの間の空気が抜けやすくなり、また、巻き取り時には、フィルムの一方の面とフィルムのもう一方の面の間の空気が抜けやすくなるため、ハンドリング性が向上するため好ましい。
【0024】
含有させる粒子としては、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できる。また、粒子のサイズとして、平均粒径が0.2μm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を得ることができる範囲で、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などを含有してもよい。
【0026】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、二軸配向ポリエステルフィルムを例に挙げて説明するが、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
【0027】
本発明に用いられるポリエステルを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のジオール成分またはそのエステル形成性誘導体とを公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行っても良い。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
【0029】
2層以上の積層ポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、積層ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、これらを押出装置と口金の間に設けられた合流装置にて溶融状態で積層したのち口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法が好適に用いられる。該積層シートは、表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。
【0030】
次いで、ここで得られた未延伸フィルムにナノインプリントのようにモールドを用いて表面に形状を転写させる方法、紫外光照射やアーク放電によるコロナ処理、グロー放電によるプラズマ処理などの表面処理を施す。これらの表面処理は未延伸フィルムを得た直後でも、微延伸を施した後でも、長手および/又は幅方向に延伸した後でも良いが、本発明では未延伸フィルムに表面処理することが好ましい。特に、大気圧下でグロー放電によるプラズマ処理を施すことが好ましい。大気圧プラズマ処理によると、ポリエステルフィルム表面の極表層に存在するポリマー分子鎖を微細に切断することで局所的に微細部分を削り取るエッチングが起こりやすくなる。また、表面処理を施す面はキャストドラムに接していた面(ドラム面)でもキャストドラムに接していない面(非ドラム面)のいずれでも良い。
【0031】
その後、必要に応じて延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法又は同時二軸延伸法を用いることができる。最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法が、延伸破れなく本発明のフィルムを得るのに有効である。長手方向、幅方向の延伸は、延伸温度は90℃以上130℃以下であることが好ましく、100℃以上120℃以下であることがより好ましい。延伸倍率は2.5倍以上5.0倍以下、好ましくは2.8倍以上4.0倍以下であることがより好ましい。また、面積倍率(長手方向の延伸倍率×幅方向の延伸倍率)は、9.0倍以上20.0倍以下が好ましく、10.0倍以上17.5倍以下がより好ましい。延伸倍率、面積倍率を高くするとフィルムの厚みムラを小さくできる傾向にあるが、延伸倍率、面積倍率を高くすることで、高配向化により耐ハーフカット性能は向上するが、製膜安定性という観点から上記範囲で製膜をするのが好ましい。
【0032】
2軸方向に延伸を実施しや後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上などの従来公知の任意の方法で行うことができる。熱処理温度は通常150℃以上245℃未満の任意の温度とすることができ、熱処理時間は、通常1秒間以上60秒間以下行うことが好ましい。熱処理は、フィルムをその長手方向および/または幅方向に0.1%以上10%以下弛緩させつつ行なってもよい。
【0033】
かくして得られる本発明のポリエステルフィルムは、その特性を活かして、ハーフカット工程を有する用途のフィルム(例えば、ドライフィルムレジスト支持体用フィルム、積層セラミックコンデンサーを製造する工程におけるグリーンシート成形の支持体用フィルム)として好適に用いることができる。
【実施例
【0034】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
【0035】
A.一方の表面から厚み方向に10μmカットした後の引裂強度
フィルムを長さ25cm各に切り出し、測定する方向に対して垂直な方向にフィルムの中央位置に長さ15cm、深さ方向10μmハーフカットを施し、それぞれの向きの破断張力を最大荷重64Nの引裂試験機(東洋精機製)を用いて、JIS K 7128-2(1998)(エレメンドルフ引裂法)に基づいて引裂強さ(N)を測定した。この計測値を、フィルム厚みで除したものを引裂強度N/mmとした(なお、引裂強度を算出する際に用いるフィルム厚みは、ハーフカット処理後に残っているフィルム厚み(フィルム厚み-10μm)ではなく、ハーフカット処理を行う前のフィルム厚みの値とした)。なお、この引裂強度はフィルム幅方向および長手方向のそれぞれ20サンプルの試験結果を平均化したものとした。なお、実質的に引き裂けなかった場合はオーバーレンジとして、64Nとして計算した。
【0036】
B.各層厚み
フィルムの層構成は、フィルムの断面観察より求めた。すなわち、ウルトラミクロトーム ウルトラカットUCT(ライカ製)にて冷凍破断した断面を、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を3000~200000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。
【0037】
C.厚みムラ
フィルムを幅30mm幅、長さ1mにサンプリングした。またこの際、対象とする測定方向(長手方向あるいは幅方向)が長さ1mとなる向きと一致するようにした。測定は、アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」および電子マイクロメータ「K306C」を用い、フィルムを連続的に測定する。フィルムの搬送速度は1.5m/分とした。1m長での厚み最大値Tmax(μm)、最小値Tmin(μm)からR=Tmax-Tminを求め、Rと1m長の平均厚みTave(μm)から厚みむら(%)=R/Tave×100として求めた。厚みむらは、10回の測定の平均値とした。
【0038】
D.フィルムのIV
o-クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した溶融粘度より次式から計算される値を用いた。すなわちηsp/C=[η]+k[η]2・Cである。ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)-1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー量(g/100ml) 、Kはハギンス定数(0.343)。溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計にて測定した。
【0039】
E.フィルムの屈折率、面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いて、幅方向、長手方向、厚み方向の屈折率(各々、nTD、nMD、nZD)を求めた。求めた屈折率から下記の式により、面配向係数(fn)を算出した。なお、測定は製膜時のTダイから吐出後、冷却ドラムに密着した表面側で行い、任意の3ヶ所での測定値の平均で評価した。
fn=(nTD+nMD)/2-nZD。
【0040】
F.MLCC製造用離型フィルムとして用いた際の評価
以下a.からb.の方法により、グリーンシートスラリの塗布性、c.~d.の方法により、ハーフカット時のフィルムの破れや裂けの評価を行う。
【0041】
a.離型層の塗布
ポリエステルフィルムの微細な突起を形成させた面に、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24-846)を固形分1質量%に調整した塗布液を塗布/乾燥し、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化した。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)100質量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2質量部を固形分5質量%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻き取り、離型フィルムを得た。
【0042】
b.グリーンシートの塗布性
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT-1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL-1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン-エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型フィルムの上に乾燥後の厚みが2μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、グリーンシートを得た。 上記で巻き取られたグリーンシートを、繰り出し、離型フィルムから剥がさない状態にて目視で観察し、ピンホールの有無や、シート表面および端部の塗布状態を確認する。なお観察する面積は幅300mm、長さ500mmである。離型フィルムの上に成型されたグリーンシートについて、背面から1000ルクスのバックライトユニットで照らしながら、塗布抜けによるピンホールあるいは、離型フィルム背面の表面転写による凹み状態を観察し、以下のように評価した。4級を不合格とした。
1級:ピンホールや凹みが観察面積内で一切確認できない
2級:ピンホールあるいは凹みが観察面積内で1個~2個確認された。
3級:ピンホールあるいは凹みが観察面積内で3個~4個確認された。
4級:ピンホールあるいは凹みが観察面積内で5個以上確認された。
【0043】
c.内部電極のパターンの形成
Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール52重量部と、エチルセルロース3重量部と、ベンゾトリアゾール0.4重量部とを、混練し、スラリー化して内部電極層用塗料を得る。内部電極層用塗料を、グリーンシートの上に、スクリーン印刷法によって所定パターンで塗布し、内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを得た。乾燥温度は90℃、乾燥時間は5分である。
【0044】
d.ハーフカット時のフィルムの破れや裂けの評価
上記の、離型フィルムの上に成形され、内部電極パターンを付与した、セラミックグリーンシートを繰り出し、離型フィルム上にてグリーンシートを100枚分切断し打ち抜く。切断には回転式の丸刃カッターを使用する。この際、グリーンシートを切断するための、回転式丸刃カッターの切り込み深さは、グリーンシート厚みプラス2μm~3μmに設定する。打ち抜き時の評価として、打ち抜き後のフィルムの破れを観察した。以下のように評価し、4級は不合格とした。
1級:幅方向、長手方向ともに破れ、裂けの発生がない
2級:幅方向、長手方向のいずれかに破れ、裂けの発生があるが、微少であり、フィルム全体の破断の発生がない。
3級:幅方向、長手方向のいずれかにやや大きめな破れ、裂けの発生があるが、フィルム全体の破断の発生がない。
4級:幅方向、長手方向のいずれかで大きな破れ、裂けが発生するか、フィルム全体の破断が発生した。
【0045】
なお、前述の測定において、フィルムの幅方向、長手方向が分からない場合は、いずれかの方向を0°とし、フィルム面内に-90°から90°まで10°毎に方向を変えて屈折率を測定し、最大の屈折率を有する方向を幅方向、それに直交する方向を長手方向とみなす。屈折率の測定はナトリウムD線(波長589nm)を光源とし、マウント液としてヨウ化メチレンを用い、25℃にてアッベ屈折計を用いて測定を行う。
【0046】
(用いた樹脂)
ホモポリエステルA:ポリエチレンテレフタレート(IV=0.75)
ホモポリエステルB:ポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)
ホモポリエステルC:ポリエチレンテレフタレート(IV=0.95)
ホモポリエステルD:ポリエチレンテレフタレート(IV=0.85)
ホモポリエステルE:ポリブチレンテレフタレート(IV=0.85)
共重合ポリエステルA:ジオール成分全体に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを25mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(IV=0.85)
共重合ポリエステルB:ジオール成分全体に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを25mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)
共重合ポリエステルC:ジオール成分全体に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを25mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(IV=0.55)
共重合ポリエステルD:ジオール成分全体に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを50mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(IV=0.85)
共重合ポリエステルE:カルボン酸成分全体に対してイソフタル酸を5mol%共重合
した共重合ポリエチレンテレフタレート(IV=0.90)。
【0047】
(実施例1)
ホモポリエステルAおよび共重合ポリエステルAを、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、壁面の表目粗さが0.2Sのフィードブロックにて合流し、ホモポリエステルAが2層、共重合ポリエステルAが3層からなる厚み方向に交互に積層された構造とし、両表層部分を共重合ポリエステルAとなるようにした。
【0048】
このようにして得られた計5層からなる積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度を25℃に保ったキャスティングドラム上で急冷固化した。得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、長手方向に3.0倍延伸後、この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、幅方向に4.0倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で230℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度にて幅方向に7%の弛緩処理を施し、室温まで徐冷し、巻き取った。得られたフィルムの特性は表1のとおりであった。フィルムの表面にカットした時の引裂強度に優れたフィルムであり、グリーンシートの塗布性やハーフカット時の破れや裂けの評価に優れたフィルムであった。
【0049】
(実施例2)
ホモポリエステルAが3層、共重合ポリエステルAが2層からなる厚み方向に交互に積層された構造とし、全層厚みを25μmとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであった。表層をホモポリエステルとした結果、引裂強度は若干低下したが、実用上問題ないレベルであった。
【0050】
(実施例3)
ホモポリエステルAが3層、共重合ポリエステルAが2層からなる厚み方向に交互に積層された構造とし、両表層部分をホモポリエステルAとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであった。表層をホモポリエステルとした結果、引裂強度は若干低下したが、実用上問題ないレベルであった。
【0051】
(実施例4)
共重合ポリエステルAの代わりに共重合ポリエステルBを用いた以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであった。フィルムのIVが低下させた結果、実施例1に比べてやや引裂強度が低く、ハーフカット時の破れや裂けの評価結果は3級となったが、実用上問題ないレベルであった。
【0052】
(実施例5)
ホモポリエステルA、共重合ポリエステルAの各層厚み、フィルムの総厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。厚みが厚いため、廃棄したときの環境負荷は実施例1よりも高くなり、また、1リールあたりの巻き長さが短くなるため、生産効率は悪化したが、引裂強度や、ハーフカット時の破れや裂けの評価は問題の無い結果となった。
【0053】
(実施例6)
ホモポリエステルA、共重合ポリエステルAの各層厚み、フィルムの総厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。実施例4に比べてさらにフィルム厚みが高いため、廃棄したときの環境負荷や生産効率は悪化したが、引裂強度や、ハーフカット時の破れや裂けの評価は問題の無い結果となった。
【0054】
(実施例7)
ホモポリエステルAが1層、共重合ポリエステルAが2層からなる厚み方向に交互に積層された構造とし、各層厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。積層数を減らすことで、若干ハーフカット時の破れや裂けの評価の低下は認められたが、実用上問題ないレベルであった。
【0055】
(実施例8)
ホモポリエステルAが3層、共重合ポリエステルAが4層からなる厚み方向に交互に積層された構造とし、各層厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。引裂強度や、ハーフカット時の破れや裂けの評価は問題の無い結果となった。
【0056】
(実施例9,10)
各層厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。ホモポリエステル樹脂層を厚くした実施例8ではハーフカット時の破れや裂けの評価は若干劣る結果となったが、実用上問題ないレベルであった。
【0057】
(実施例11)
ホモポリエステルAの代わりにホモポリエステルBを用い、共重合ポリエステルAの代わりに共重合ポリエステルCを用いた以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1、2のとおりであった。IVが低下することで、ハーフカット時の破れや裂けの評価は若干劣る結果となったが、実用上問題ないレベルであった。
【0058】
(実施例12)
ホモポリエステルAの代わりにホモポリエステルCを用いた以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1、2のとおりであった。フィルムのIVが上がることで引裂強度は上昇したが、厚みムラ若干悪化し、グリーンシートの塗布性が若干劣る結果となったが、問題ないレベルであった。
【0059】
(実施例13)
長手方向の延伸倍率を3.0から2.9倍へ、幅方向の延伸倍率を4.0から3.9倍へ変更した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1、2のとおりであった。延伸倍率を下げたことで厚みムラが悪化した。厚みムラが悪化したことによりグリーンシートの塗布性が悪化したが、問題ないレベルであった。
【0060】
(実施例14)
長手方向の延伸倍率を3.0から2.7倍へ、幅方向の延伸倍率を4.0から3.7倍へ変更した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1、2のとおりであった。延伸倍率を下げたことで厚みムラが悪化した。厚みムラが悪化したことによりグリーンシートの塗布性が悪化したが、問題ないレベルであった。
【0061】
(実施例15)
共重合ポリエステルAの代わりに共重合ポリエステルDを用いた以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1、2のとおりであった。フィルムのIVが上がることで引裂強度は上昇したが、厚みムラが若干悪化し、グリーンシートの塗布性が若干劣る結果となったが、問題ないレベルであった。
【0062】
(実施例16)
共重合ポリエステルAの代わりにホモポリエステルDとホモポリエステルEを50:50でブレンドしたホモポリエステルを用いた以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1,2のとおりであった。共重合ポリエステルではなくブレンドしたポリマーを用いることでハーフカット時の破れや裂けが若干悪化したが、問題ないレベルであった。
【0063】
(実施例17)
長手方向の延伸倍率を3.0から4.0倍へ、幅方向の延伸倍率を4.0から4.5倍へ変更した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1、2のとおりであった。延伸倍率をあげたことで製膜安定性が低下し、破れが発生したが、ハーフカット性能としては良好であった。
【0064】
(実施例18)
全層厚みを20μmとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであった。全層厚みを薄くすることで引裂強度は低下し、ハーフカット時の破れや裂けが若干悪化したが、問題ないレベルであった。
【0065】
(実施例19)
共重合ポリエステルAの代わりに共重合ポリエステルEを用いた以外は実施例18と同様の方法にてフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1のとおりであった。ハーフカット時の破れや裂けの評価に優れたフィルムであった。
【0066】
(比較例1)
ホモポリエステルDのみの単層としてTダイに供給した以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。ハーフカット時の破れや裂けの評価に劣るフィルムであった。
【0067】
(比較例2)
共重合ポリエステルEのみの単層としてTダイに供給した以外は実施例1と同様の方法にてフィルムを得た。比較例1と同様にハーフカット時の破れや裂けの評価に劣るフィルムであった。
【0068】
【表1】