(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】クリーニング装置、画像形成装置およびクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20250311BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020168914
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】平山 順哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 千晶
(72)【発明者】
【氏名】出石 由美子
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-146623(JP,A)
【文献】特開2022-30656(JP,A)
【文献】特開2013-173265(JP,A)
【文献】特開平10-63160(JP,A)
【文献】特開2009-862(JP,A)
【文献】特開2006-95880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、
前記被クリーニング面に代替して前記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材とを備え、
前記駆動部は、前記代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させ、
前記代替部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備え、
前記分布推定部は、前記検出部により検出された前記第2の指標値に基づいて、前記第1の指標値の分布を推定し、
前記第2の指標値は、前記代替面のうち前記クリーニング部材と前記代替部材とが接触している接触領域における、前記代替面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含
み、
前記検出部が当該第2の指標値を検出するための部材は、前記代替部材に設けられる複数の電極を含み、
前記検出部は、前記複数の電極のうち第1の電極と第2の電極との間に流れる電流の有無に基づいて、前記クリーニング部材が前記代替面に接触したことを判断する、クリーニング装置。
【請求項2】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部とを備え、
前記分布推定部は、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させる方向に対して垂直な方向における位置に応じた前記第1の指標値の分布を推定する、クリーニング装置。
【請求項3】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部とを備え、
前記クリーニング部材は、回転可能に構成され、
前記分布推定部は、当該クリーニング部材の回転量に応じた前記第1の指標値の分布を推定する、クリーニング装置。
【請求項4】
前記被クリーニング面は、前記被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドのノズル面を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記クリーニング部材は、多孔質弾性体により構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記被クリーニング面は、クリーニング液を吸収した状態の前記クリーニング部材により払拭される、請求項1~5のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記代替部材は、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に待機する位置の近傍に設けられる、請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記被クリーニング面と前記代替面とは同一の平面を構成する、請求項7に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、
前記被クリーニング面に代替して前記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材とを備え、
前記駆動部は、前記代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させ、
前記代替部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備え、
前記第2の指標値は、前記代替面のうち前記クリーニング部材と前記代替部材とが接触している接触領域における、前記代替面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含み、
前記検出部は、当該接触領域における当該方向に沿う複数の箇所での、前記クリーニング部材と前記代替面との接触の有無に基づいて、当該第2の指標値を検出
し、
前記検出部が当該第2の指標値を検出するための部材は、前記代替部材に設けられる複数の電極を含み、
前記複数の電極は、当該接触領域における当該方向に沿って設けられた線電極と、前記複数の箇所にそれぞれ対応して設けられた複数の点電極とを含み、
前記検出部は、前記線電極と、前記複数の点電極の各々との間に流れる電流の有無に基づいて、前記複数の箇所での、前記クリーニング部材と前記代替面との接触の有無を判断する、クリーニング装置。
【請求項10】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、
前記被クリーニング面に代替して前記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材とを備え、
前記駆動部は、前記代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させ、
前記代替部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備え、
前記第2の指標値は、前記代替面のうち前記クリーニング部材と前記代替部材とが接触している接触領域における、前記代替面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含み、
前記検出部は、前記クリーニング部材と前記代替面との接触の検出時間に基づいて、当該第2の指標値を検出する、クリーニング装置。
【請求項11】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、
前記被クリーニング面に代替して前記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材とを備え、
前記駆動部は、前記代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させ、
前記代替部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備え、
前記第2の指標値は、前記代替面のうち前記クリーニング部材と前記代替部材とが接触している接触領域における、前記代替面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含み、
前記検出部が当該第2の指標値を検出するための部材は、前記代替部材に設けられる複数の電極を含み、
前記検出部は、前記複数の電極のうち第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスの変化に基づいて、前記クリーニング部材が前記代替面に接触したことを判断する、クリーニング装置。
【請求項12】
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに隣接しており、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の抵抗成分の変化を含む、請求項11に記載のクリーニング装置。
【請求項13】
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに隣接しており、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量成分の変化を含む、請求項11に記載のクリーニング装置。
【請求項14】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、
前記被クリーニング面に代替して前記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材とを備え、
前記駆動部は、前記代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させ、
前記代替部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部と、
前記クリーニング部材における、前記第2の指標値が予め定められた範囲外である部位の位置を判別する判別部と、
前記判別部の判別結果を出力する出力部とをさらに備える、クリーニング装置。
【請求項15】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を前記駆動部が相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、
前記第1の指標値の分布において前記第1の指標値が閾値範囲外である部分の位置に基づいて、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングするときのクリーニング条件を決定する決定部とを備える、クリーニング装置。
【請求項16】
前記クリーニング条件は、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする回数N(Nは自然数)と、少なくとも1つの他のクリーニング条件とを含み、
前記決定部は、第n回目(1≦n≦N)に前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングするときの前記少なくとも1つの他のクリーニング条件を、第m回目(1≦m≦N、かつn≠m)に前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングするときの前記少なくとも1つの他のクリーニング条件とは異なるように決定する、請求項15に記載のクリーニング装置。
【請求項17】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
請求項1~16のいずれか1項に記載のクリーニング装置とを備える、画像形成装置。
【請求項18】
クリーニング方法であって、
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定するステップとを含み、
前記移動させるステップは、前記被クリーニング面に代替して前記クリーニング部材により接触される代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させることを含み、
前記クリーニング方法は、前記代替面を有する代替部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出するステップをさらに含み、
前記分布を推定するステップは、検出された前記第2の指標値に基づいて、前記第1の指標値の分布を推定することを含み、
前記第2の指標値は、前記代替面のうち前記クリーニング部材と前記代替部材とが接触している接触領域における、前記代替面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる方向の長さを含
み、
前記第2の指標値を検出するための部材は、前記代替部材に設けられる複数の電極を含み、
前記検出するステップは、前記複数の電極のうち第1の電極と第2の電極との間に流れる電流の有無に基づいて、前記クリーニング部材が前記代替面に接触したことを判断することを含む、クリーニング方法。
【請求項19】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定するステップとを含み、
前記分布を推定するステップは、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる方向に対して垂直な方向における位置に応じた前記第1の指標値の分布を推定することを含む、クリーニング方法。
【請求項20】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させることにより前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする前に、前記被クリーニング面における、前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定するステップとを含み、
前記クリーニング部材は、回転可能に構成され、
前記分布を推定するステップは、当該クリーニング部材の回転量に応じた前記第1の指標値の分布を推定することを含む、クリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーニング装置、画像形成装置およびクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、記録媒体に画像を形成する画像形成装置は、画像形成部に付着した、トナーまたはインクなどの記録剤、ちり、埃および汚れなどをクリーニングするためのクリーニング装置を備えている。クリーニング装置において、ローラーまたはブレードなどのクリーニング部材は、画像形成部の被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して被クリーニング面を払拭する。
【0003】
クリーニング装置に関し、例えば、特開2013-173265号公報は、インクジェットヘッドのノズル面を払拭部材により清掃するノズル面清掃装置を開示している。このノズル面清掃装置は、前記ノズル面と前記払拭部材とを相対的に昇降させる昇降手段と、前記払拭部材の当接を検知する検知手段と、前記払拭部材と前記ノズル面とを前記ノズル面に沿って相対的に移動させる払拭手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記昇降手段の昇降を停止させ、該昇降停止位置において前記払拭手段による払拭を行わせる制御手段とを備え([要約]参照)、払拭清掃前にダミーヘッドを用いて予め押圧ローラーの昇降位置(押圧力)を調整する(段落[0121]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリーニング装置では、クリーニング部材と被クリーニング部材との接触状態を適切に保つ必要がある。例えば、接触が不十分な場合には被クリーニング部材の被クリーニング面に付着した汚れなどをクリーニング部材が十分にクリーニングできない。一方、接触が過剰な場合には、クリーニング部材および被クリーニング部材が摩耗または変質して消耗する結果、それらの部材の寿命が低下してしまう。
【0006】
ここで、ローラーおよびブレードなどのクリーニング部材は、繰り返して使用されるため、クリーニング部材と被クリーニング部材との接触状態は、クリーニング動作中に変わり得る。特許文献1においては、クリーニング部材としての払拭部材と被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドとの接触状態が、クリーニング動作中に変わり得ることが考慮されていない。そのため、特許文献1のように予め押圧ローラーの昇降位置(押圧力)が調整された場合、クリーニング動作中に当該接触状態を適切に保つことができない場合がある。当該接触状態を適切に保つためには、当該接触状態がクリーニング動作中に変わり得ることを想定して、当該接触状態について適切な情報を事前に得ることが必要とされる。
【0007】
本開示は、上記のような背景を鑑みてなされたものである。ある局面において、クリーニング動作中に変わり得る、クリーニング部材と被クリーニング面との接触状態について適切な情報を事前に得る技術が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態に従うクリーニング装置は、被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して上記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、上記被クリーニング部材の上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を上記駆動部が相対的に移動させることにより上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングする前に、上記被クリーニング面における、上記被クリーニング部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する分布推定部と、を備える。
【0009】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記クリーニング装置は、上記代替部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備える。上記分布推定部は、上記検出部により検出された上記第2の指標値に基づいて、上記第1の指標値の分布を推定する。
【0010】
ある局面において、上記第2の指標値は、上記代替面のうち上記クリーニング部材と上記代替部材とが接触している接触領域における、上記代替面に対して上記クリーニング部材を上記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含む。
【0011】
ある局面において、上記分布推定部は、上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を上記駆動部が相対的に移動させる方向に対して垂直な方向における位置に応じた上記第1の指標値の分布を推定する。
【0012】
ある局面において、上記クリーニング部材は、回転可能に構成される。上記分布推定部は、当該クリーニング部材の回転量に応じた上記第1の指標値の分布を推定する。
【0013】
ある局面において、上記被クリーニング面は、上記被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドのノズル面を含む。
【0014】
ある局面において、上記クリーニング部材は、多孔質弾性体により構成される。
ある局面において、上記被クリーニング面は、クリーニング液を吸収した状態の上記クリーニング部材により払拭される。
【0015】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記代替部材は、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングする前に待機する位置の近傍に設けられる。
【0016】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記クリーニング装置は、上記代替部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備える。上記被クリーニング面と上記代替面とは同一の平面を構成する。
【0017】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記クリーニング装置は、上記代替部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備える。上記第2の指標値は、上記代替面のうち上記クリーニング部材と上記代替部材とが接触している接触領域における、上記代替面に対して上記クリーニング部材を上記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含む。上記検出部は、当該接触領域における当該方向に沿う複数の箇所での、上記クリーニング部材と上記代替面との接触の有無に基づいて、当該第2の指標値を検出する。
【0018】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記クリーニング装置は、上記代替部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備える。上記第2の指標値は、上記代替面のうち上記クリーニング部材と上記代替部材とが接触している接触領域における、上記代替面に対して上記クリーニング部材を上記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含む。上記検出部は、上記クリーニング部材と上記代替面との接触の検出時間に基づいて、当該第2の指標値を検出する。
【0019】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記クリーニング装置は、上記代替部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備える。
【0020】
上記第2の指標値は、上記代替面のうち上記クリーニング部材と上記代替部材とが接触している接触領域における、上記代替面に対して上記クリーニング部材を上記駆動部が相対的に移動させる方向の長さを含む。上記検出部が当該第2の指標値を検出するための部材は、上記代替部材に設けられる複数の電極を含む。上記検出部は、上記複数の電極のうち第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスの変化に基づいて、上記クリーニング部材が上記代替面に接触したことを判断する。
【0021】
ある局面において、上記第1の電極および上記第2の電極は、互いに隣接している。上記第1の電極と上記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の抵抗成分の変化を含む。
【0022】
ある局面において、上記第1の電極および上記第2の電極は、互いに隣接している。上記第1の電極と上記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の静電容量成分の変化を含む。
【0023】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記被クリーニング面に代替して上記クリーニング部材により接触される代替面を有する代替部材をさらに備える。上記駆動部は、上記代替面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる。上記クリーニング装置は、上記代替部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第2の指標値を検出する検出部をさらに備える。上記クリーニング部材における、上記第2の指標値が予め定められた範囲外である部位の位置を判別する判別部と、上記判別部の判別結果を出力する出力部とをさらに備える。
【0024】
ある局面において、上記被クリーニング面は、上記被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドのノズル面を含む。上記インクジェットヘッドのノズルがインクを吐出している間に、上記分布推定部は、上記第1の指標値の分布を推定する。
【0025】
ある局面において、上記クリーニング装置は、上記第1の指標値の分布において上記第1の指標値が閾値範囲外である部分の位置に基づいて、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングするときのクリーニング条件を決定する決定部をさらに備える。
【0026】
ある局面において、上記クリーニング条件は、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングする回数N(Nは自然数)と、少なくとも1つの他の条件とを含む。
【0027】
上記決定部は、第n回目(1≦n≦N)に上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングするときの上記少なくとも1つの他のクリーニング条件を、第m回目(1≦m≦N、かつn≠m)に上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングするときの上記少なくとも1つの他のクリーニング条件とは異なるように決定する。
【0028】
他の実施形態に従うと、画像形成装置が提供される。この画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、上記クリーニング装置とを備える。
【0029】
さらに他の実施形態に従うと、クリーニング方法が提供される。このクリーニング方法は、被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して上記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を上記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させることにより上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングする前に、上記被クリーニング面における、上記被クリーニング部材と上記クリーニング部材との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、クリーニング動作中に変わり得る、クリーニング部材と被クリーニング面との接触状態について適切な情報を事前に得ることができる。
【0031】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】画像形成装置100のハードウェア構成を示す図である。
【
図2】クリーニング装置135の外観を示す図である。
【
図3】ヘッドノズル面222および代替面213を-z方向から見た図である。
【
図4】センサー320のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】クリーニング装置135に含まれる回路の構成を示す図である。
【
図6】クリーニング装置135のハードウェア構成を示す図である。
【
図7】払拭ローラー200の側面図および断面図を示す図である。
【
図8】クリーニング部材625と代替部材212との接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。
【
図9】検出回路505により出力される信号の一例を示す図である。
【
図10】検出回路505の出力信号の一例を示す図である。
【
図11】払拭ローラー200が1回転する間に検出された接触領域の長さLtの分布1100を示す図である。
【
図12】画像形成装置100において、クリーニング装置135が実行する処理を説明するための機能を表すブロック図である。
【
図13】クリーニング部材625が払拭ローラー200のようなローラー形状の部材である場合に実施される一連のクリーニング動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図14】実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】ステップS1430において表示器635に表示される画面の一例を示す図である。
【
図16】ごく一部において凹み1600がある払拭ローラー200を示す図である。
【
図17】凹み1600がある払拭ローラー200と代替部材212とが接触したときの第2の指標値の分布1700を示す図である。
【
図18】自由長Lfが均一である場合のブレード1800、および自由長Lfが均一でない場合のブレード1802を示す図である。
【
図19】検出回路505から出力される信号の一例を示す図である。
【
図20】ブレード1800,1802が代替面213に接触している間に検出された接触領域の長さLtの分布を示す図である。
【
図21】一部に欠け2102があるブレード2100を示す図である。
【
図22】欠け2102があるブレード2100が代替面213に接触したときに得られた、接触領域の長さLtの分布2200を示す図である。
【
図23】互いに隣接する線電極400および点電極500の間のインピーダンスの変化に基づいて、接触領域の長さLtを検出するための回路の構成を示す図である。
【
図24】クリーニング部材625が代替面213における絶縁層に接触したときに、隣接する電極400および電極500kに電流が流れることを示す図である。
【
図25】クリーニング部材625が絶縁層2400に接触したときに、線電極400および点電極500kの間のインピーダンスが変化することを示す図である。
【
図26】接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。
【
図27】接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。
【
図28】クリーニング部材625が点電極対2600kに接触しているときに検出される検出時間に基づいて、接触領域における長さLtをCPU520が検出するための回路の一例を示す図である。
【
図29】検出時間Tkに基づいて検出された接触領域の長さLtの分布2900を示す図である。
【
図30】実施形態5において接触領域の長さLtを検出するためのセンサー320のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図31】CPU520がクリーニング部材625を代替部材212を用いることなく第1の指標値の分布を推定することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本開示における実施形態を説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を繰り返さない。また、以下の説明では、複数の同一の構成要素に対して、構成123A,123B,123A,123Bのように表現することがある。それらの構成要素を総称する場合、構成123と表現する。
【0034】
[インクジェットヘッドのクリーニングにおける特有の課題]
まず、本開示に係るクリーニング装置が提案された背景を説明する。被クリーニング面がインクジェットのヘッドノズル面である場合において、一部のノズル近傍のみに付着物がある場合であっても、当該ノズルから吐出されるインクの液面であるメニスカスが適切に形成されず、インク吐出において「曲がり」と呼ばれる不具合が生じることがある。その結果、記録媒体に形成される画像の質が低下するという課題があった。そこで、インクジェットのヘッドノズル面において、そのような一部のノズル近傍のみに付着した付着物も適切にクリーニングする必要がある。しかし、例えばヘッドノズル面に対してクリーニング部材が強く接触すると吐出面の撥液状態が劣化したり、ノズルの孔に傷が生じて被クリーニング部材の寿命が短くなったり、ノズル内部に汚れなどが押込まれたりする不都合が生じ得る。
【0035】
そのような不都合が生じることを回避するために、クリーニング液を吸収した状態の多孔質体により構成されるクリーニング部材が用いられる場合がある。この場合、被クリーニング面とクリーニング部材とが接触している領域において圧力が分散されて低下した状態で、クリーニング部材が上記付着物をクリーニングする。ここで、当該圧力が適切な値よりも強い場合、ヘッドノズル面に過剰にクリーニング液が吐き出されるため、当該吐き出された液がクリーニング部材により回収されずにヘッドノズル面に残ることがある。他方、当該圧力が適切な値よりも低い場合、上記領域において圧力が低いため、例えば圧力センサーなどを用いると、被クリーニング面とクリーニング部材とが接触していることを検知すること自体が困難であり、接触の程度に応じてクリーニング条件を適切に決定できない場合があった。また、多孔質体は、使用されるにつれてその形状が変化しやすく、クリーニング部材がクリーニング液を含んでいる量に応じて当該部材の形状が変化する結果、クリーニング部材と被クリーニング部材との接触状態が変化して適切な接触状態を安定して保つことが難しいという課題があった。
【0036】
本開示におけるクリーニング装置は、上記の課題に対して特に有用である。以下、当該装置の構成などについて具体的に説明する。
【0037】
<実施形態1>
[画像形成装置およびクリーニング装置のハードウェア構成]
図1~
図6を参照して、画像形成装置100およびクリーニング装置135のハードウェア構成を説明する。
図1は画像形成装置100のハードウェア構成を示す図である。
【0038】
画像形成装置100は、記録媒体に画像を形成する画像形成部としてのヘッドユニット105と、第1の駆動モーター107と、第2の駆動モータ(図示しない)と、繰り出しロール110と、巻き取りロール115と、バックロール120および125と、定着装置130と、クリーニング装置135とを備える。
【0039】
ヘッドユニット105は、所定の位置108において記録媒体Pに向かってインクを射出することにより、記録媒体P上に画像を形成する。ヘッドユニット105は、上下または左右に往復移動する基板106に固定されている。第1の駆動モーター107および第2の駆動モーターは、互いに独立して動作する。第1の駆動モーター107は、ギアまたはカムなどの機構を介して、基板106を左右方向に移動させる。第2の駆動モーターは、それらの機構と同様の機構を介して、基板106を上下方向に移動させる。
【0040】
繰り出しロール110は、記録媒体Pを矢印AR1に示す方向に繰り出す。記録媒体Pは、例えば、用紙または布である。巻き取りロール115は、繰り出しロール110から繰り出されてヘッドユニット105により画像が形成された記録媒体Pを巻き取る。バックロール120および125は、繰り出しロール110と巻き取りロール115との間に設けられる。定着装置130は、記録媒体P上に供給されたインクを記録媒体Pに定着させる。
【0041】
クリーニング装置135は、基板106に固定されて矢印AR2の方向に移動するヘッドユニット105の被クリーニング面をクリーニングする。
【0042】
上記の説明において、画像形成装置100が備える画像形成部は、インクジェット方式により記録媒体に画像を形成するものとして説明した。他の局面において、画像形成部は、電子写真方式により記録媒体Pに画像を形成してもよい。画像形成部が記録媒体Pに画像を形成する方式は、限定されない。さらに他の局面において、画像形成装置100は、カット紙などの、断裁された記録媒体に画像を形成してもよい。
【0043】
図2は、クリーニング装置135の外観を示す図である。クリーニング装置135は、クリーニング部材としての払拭ローラー200と、水槽205と、押圧部材210と、代替部材212と、駆動モーター215とを含む。
【0044】
払拭ローラー200は、回転可能に構成され、払拭ローラー200の一部が水槽205内のクリーニング液207に浸るように設けられる。
図2の例では、払拭ローラー200は、スポンジなどの多孔質弾性体により構成される。他の局面において、払拭ローラー200は、ゴムを含む素材により構成されていてもよい。払拭ローラー200は、クリーニング液207を吸収した状態で、ヘッドユニット105の被クリーニング面であるヘッドノズル面222を払拭する。
【0045】
押圧部材210は、払拭ローラー200に対向するように設けられ、払拭ローラー200の回転に従って回転する。ある局面において、押圧部材210は、ステンレスにより構成され、押圧部材210の直径は8mmである。押圧部材210の回転軸と払拭ローラー200の回転軸との軸間距離は4mmである。押圧部材210は、払拭ローラー200に食い込むように設けられ、クリーニング液207を吸収した状態の払拭ローラー200に含まれる水分量を調整するために用いられる。
【0046】
代替部材212は、ヘッドユニット105に代替して払拭ローラー200に接触し得る。代替部材212は、後述する分布推定部が払拭ローラー200とヘッドユニット105との接触状態を推定するために用いられる。代替部材212は、後述する他の駆動機構がヘッドノズル面222に代えて払拭ローラー200を相対的に移動させるための面である代替面213を有する。
図2の例では、代替部材212は、ヘッドユニット105が有するヘッドのノズルが位置108においてインクを吐出している間(画像形成部が記録媒体に画像を形成している間)に、払拭ローラー200が待機する位置230の近傍に設けられている。位置230の近傍の一例として、クリーニング部材としての払拭ローラー200が有するz座標から閾値範囲内であるz座標を有する領域であって、払拭ローラー200が有するx座標およびy座標から、それぞれ閾値範囲内であるx座標およびy座標を有する3次元の領域内にある位置を例示できる。
図2の例では、代替部材212は、ヘッドユニット105とは別個の部材として設けられている。他の局面において、代替部材212は、ヘッドユニット105と一体となって設けられていてもよい。
【0047】
駆動モーター215は、カムなどの機構(図示しない)を介して払拭ローラー200を回転させる。より具体的には、駆動モーター215が回転することにより、当該機構を介して払拭ローラー200が回転する。
【0048】
第2の駆動モーターは、ヘッドノズル面222に対して、払拭ローラー200を接触、払拭または離間させる。例えば、第2の駆動モーターは、ヘッドノズル面222を-z方向に移動(下降)させ、払拭ローラー200をヘッドノズル面222に接触させる。次いで、第1の駆動モーター107は、ヘッドノズル面222を-x方向に移動させる。これにより、払拭ローラー200は、ヘッドノズル面222に対して+x方向に相対的に移動(摺動)し、ヘッドノズル面222を払拭する。ここで、例えば、第1の駆動モーター107が払拭ローラー200を+x方向に相対的に移動させている間、駆動モーター215は、払拭ローラー200を回転させる。その後、第2の駆動モーターは、ヘッドノズル面222を+z方向に移動させ、ヘッドノズル面222を払拭ローラー200から離間(上昇)させる。このように、第1の駆動モーター107および第2の駆動モーター(以下、「第1の駆動モーター107など」とも表す)が、ヘッドノズル面222に対して、払拭ローラー200を接触、払拭および離間させることにより、一連のクリーニング動作が実施される。
【0049】
図2の例とは異なり、クリーニング装置135は、払拭ローラー200および水槽205を移動させる他の駆動機構をさらに備え得る。より具体的には、
図2のように第1の駆動モーター107などが被クリーニング部材としてのヘッドユニット105を移動させることに代えて、当該他の駆動機構がヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を移動(接触、払拭または離間)させ得る。当該他の駆動機構は、代替面213に対しても払拭ローラー200を移動(接触、払拭または離間)させ得る。また、クリーニング装置135は、代替部材212を移動させるさらに他の駆動機構を備え得る。すなわち、クリーニング装置135は、ヘッドノズル面222などの被クリーニング面または代替面213に対して、払拭ローラー200などのクリーニング部材を相対的に移動させる駆動機構を備え得る。また、画像形成装置100が当該機構を備えていてもよい。
【0050】
実施形態では、一例として、クリーニング部材が払拭ローラー200またはブレードである場合を主に説明する。他の局面において、クリーニング部材は、ウェブまたはブラシ等であってもよい。クリーニング部材がブレードである場合については、実施形態2および実施形態4において説明する。
【0051】
なお、被クリーニング部材は、インクジェットヘッド(ヘッドユニット)に限定されない。例えば、画像形成部が電子写真方式により記録媒体に画像を形成する場合、被クリーニング部材は、感光体または中間転写ベルトなどであってもよい。
【0052】
図3は、ヘッドノズル面222および代替面213を-z方向から見た図である。
図3において、+z方向は、ヘッドノズル面222および代替面213と垂直な方向であって、ヘッドノズル面222および代替面213が払拭ローラー200から遠ざかる方向である。+x方向は、払拭ローラー200がヘッドノズル面222または代替面213を払拭する方向である。+y方向は、ヘッドノズル面222および代替面213においてx軸と垂直な方向である。
【0053】
ヘッドノズル面222には、ヘッド300A,300B,300Cを含む複数のヘッドが設けられている。代替面213には、センサー320が設けられている。センサー320は、y方向において区域a1~a6を含む複数の区域に区分される。他の局面において、
図3の例とは異なり、代替面213が、x方向およびy方向により複数の区域に区分されてもよい。例えば、y方向にn個に区分される区域を区域ai(i=1,2,…n)と表し、x方向にm個に区分される区域をbj(j=1,2,…m)と表し、x方向およびy方向により区分される各区域を区域aibjと表してもよい。
【0054】
ヘッド300Aは、インクの吐出口であるノズル310A,310Bおよび310Cを含む。ヘッド300Aは、ノズル310A,310Bおよび310Cに加えて他のノズル(図示しない)を含み得る。同様に、ヘッド300Bは、ノズル310D,310Eおよび310Fと、他のノズル(図示しない)とを含み得る。ヘッド300A,310B以外の各ヘッドも、ヘッド300A,300Bと同様に、複数のノズルを含む。例えば、ヘッド300Cは、ノズル310Gを含む複数のノズルを含む。これらのノズルは、x方向またはy方向に沿って予め定められた間隔に沿って設けられ得る。
【0055】
センサー320は、払拭ローラー200などのクリーニング部材が代替面213に接触したことを検知する。センサー320は、代替面213と払拭ローラー200とが接触するタイミングにおいて、代替面213と払拭ローラー200とが接触していることをCPU(後述する)が検知できる位置に設けられている。
図3の例では、代替面213に設けられるセンサー320は、ヘッドノズル面222よりも上流側(-x方向側)に設けられている。
【0056】
区域a1~a6の位置(例えば、
図3のx座標およびy座標)を示す情報は、不揮発性メモリー(後述する)に格納されている。例えば、払拭ローラー200が区域a2においてセンサー320に接触したときに接触不良が生じた場合、払拭ローラー200が、ヘッドノズル面222をx方向に払拭する間に、区域a2の位置(x座標およびy座標)に対応するノズル310A,310Bおよび310Cのいずれかに接触したときにも接触不良が生じる可能性がある。同様に、払拭ローラー200が区域a3においてセンサー320に接触したときに接触不良が生じた場合、払拭ローラー200が、ヘッドノズル面222をx方向に払拭する間に、区域a3の位置(x座標およびy座標)に対応するノズル310D,310Eおよび310Fのいずれかに接触したときにも接触不良が生じる可能性がある。このように、ヘッドノズル面222におけるノズルの各々は、センサー320において区分される複数の区域a1~a6のうちいずれかに対応し得る。センサー320がクリーニング部材による接触を検知する原理については、後述する。
【0057】
ここで、前述したように、クリーニング部材としての払拭ローラー200と被クリーニング面としてのヘッドノズル面222との接触状態は、クリーニング動作中に変わり得る。実施形態では、クリーニング装置135は、代替面213を利用することにより当該接触状態を事前に推定する。より具体的には、クリーニング装置135は、クリーニング動作が実施される(払拭ローラー200がヘッドノズル面222を払拭する)前に、払拭ローラー200と代替面213との接触状態を検知する。クリーニング装置135は、当該検知の結果に基づいて、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触状態を事前に推定する。例えば、クリーニング動作が実施される前に、区域a2において払拭ローラー200と代替部材212との接触が不足または過剰であることをセンサー320が検知した場合、クリーニング動作が実施されるときに、払拭ローラー200とノズル310A~310Cとの接触が不足または過剰になることを事前に推定できる。同様に、クリーニング動作が実施される前に、例えば区域a3において払拭ローラー200と代替部材212との接触状態をセンサー320が検知することにより、クリーニング動作が実施されるときの、払拭ローラー200とノズル310D~310Fとの接触状態を事前に推定できる。
【0058】
また、
図3の例では、払拭ローラー200に対する代替面213のz方向の高さと、払拭ローラー200に対するヘッドノズル面222のz方向の高さとが等しく、ヘッドノズル面222と代替面213とが同一のxy平面を構成する。そのため、払拭ローラー200のヘッドノズル面222に対する押し込み量と、払拭ローラー200の代替面213に対する押し込み量とが、払拭ローラー200の位置のz座標によらず等しい。したがって、ヘッドノズル面222の位置のz座標と、代替面213の位置のz座標との違いを考慮することなく、払拭ローラー200と代替面213との接触状態から、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触状態を推定できる。なお、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の「押し込み量」とは、払拭ローラー200が
図2の-z方向から+z方向(ヘッドノズル面222または代替面213に対して近づく方向)に移動してヘッドノズル面222または代替面213に接触し始めた状態から、さらに+z方向に押し込まれた状態に至るまでに、払拭ローラー200が移動した距離をいう。
【0059】
以上のように、実施形態では、払拭ローラー200と代替部材212との接触状態を事前に検知することにより、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触状態を推定する。したがって、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触状態を調整するために当該接触状態を検知する時間を設けることを目的として、記録媒体への画像の形成を中断する必要がない。その結果、クリーニング装置135のメンテナンスのために記録媒体への画像の形成を中断する事態を回避しつつ、記録媒体への画像の形成を継続できる。
【0060】
また、前述したように、代替部材212は、ヘッドユニット105が有するヘッドのノズルがインクを吐出している間(画像形成部が記録媒体に画像を形成している間)に、払拭ローラー200が待機する位置230の近傍に設けられている。したがって、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触状態を事前に推定することと、ヘッドユニット105により記録媒体に画像が形成されること、またはヘッドユニット105にクリーニング液が付与されること等とを容易に同時に行うことができる。
【0061】
図4は、センサー320のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4の例では、センサー320は、基板401と、線電極400と、6つの点電極405A~405Fとを備える。以下、点電極405A~405Fを、点電極405と総称することがある。各点電極405は、y方向に沿って設けられている。線電極400および点電極405は、基板401上に形成された銅箔がエッチングされることにより形成される。他の局面において、各電極は、導電性のインクを用いてパターニングにより形成されたり、フォトリソグラフィーなどの一般的な方法により形成されたりしてもよい。
【0062】
線電極400のx方向の幅Lxは、0.2mmである。線電極400のy方向の長さLyは、55mmである。線電極400と各点電極405との間のx方向の間隔Iは2mmである。各点電極405の直径dは1mmである。各点電極405y方向の間隔Iyは10mmである。
図4の例では、点電極405A~405Fは、それぞれ、区域a1~a6に設けられている。
【0063】
基板401には、点電極405A~F405にそれぞれ対応するスルーホール(図示しない)が設けられている。各スルーホールは、基板401に設けられる線電極400および点電極405と検出回路505(
図5)との間に電流が流れるようにするために設けられる。これにより、線電極400および点電極405と、払拭ローラー200とが接触したときに、それらの電極と払拭ローラー200とが接触したことを示す信号は、
図5の検出回路505に伝わる。
【0064】
図5は、クリーニング装置135に含まれる回路の構成を示す図である。
図6は、クリーニング装置135のハードウェア構成を示す図である。検出回路505は、クリーニング装置135内に設けられる。検出回路505は、コンデンサC
kおよびTTL(Transistor-Transistor-Logic)素子TT
Kを有する部分回路506
kを含む。点電極500
k-1,500
kおよび500
k+1は、y方向においてこの順番で設けられており、それぞれ、点電極405A~405Fのうち隣接する3つの電極に対応し得る。
【0065】
説明の簡略化のため示されていないが、点電極500k-1,500kおよび500k+1以外に複数の他の点電極が代替面213に設けられている。点電極500k-1,点電極500kおよび点電極500k+1と当該複数の他の点電極とは、点電極405A~405Fに対応する。また、検出回路505は、部分回路506k-1,506kおよび506k+1以外に複数の他の部分回路を含む。当該複数の他の部分回路は、それぞれ、上記複数の他の点電極に接続される。
【0066】
払拭ローラー200などのクリーニング部材が、代替面213において線電極400および点電極500kの両方に接触するとき、信号源DC1からのDC信号は、抵抗素子R1と、線電極400と、当該クリーニング部材と、点電極500kとを介して、部分回路506kに入力される。
【0067】
部分回路506kは、入力された信号に対してローパスフィルタとして動作して当該信号の高周波数成分を除去した後に、当該成分が除去された信号をTTL信号に変換する。これにより、払拭ローラー200が、線電極400および点電極500kに接触した場合にのみ、部分回路506kは、High信号を出力する。そうでない場合、部分回路506kは、High信号を出力しない(Low信号を出力する)。出力された信号は、PIO(Programmed Input and Output)510を介してCPU520に伝わる。
【0068】
CPU520は、当該信号に基づいて、払拭ローラー200と代替面213とが接触したと判断する。より具体的には、CPU520は、部分回路506kから信号を受け付けたことに基づいて、部分回路506kに接続される点電極500kが設けられている、代替面213における区域(例えば、区域a1~a6のいずれか)で、払拭ローラー200が代替面213に接触したと判断する。
【0069】
ここで、CPU520が、部分回路506kからHigh信号を受け付けた場合、払拭ローラー200は、線電極400および点電極500kに接触している。したがって、この場合、代替面213のうち払拭ローラー200と代替部材212とが接触している接触領域における、x方向の長さが間隔I以上であると考えられる。対照的に、部分回路506kからLow信号を受け付けた場合、払拭ローラー200は、線電極400および点電極500kに接触していない。したがって、この場合、代替面213のうち払拭ローラー200と代替部材212とが接触している接触領域における、x方向の長さが間隔I未満であると考えられる。当該接触領域の長さは、払拭ローラー200と代替面213との接触の程度が適切または不適切(不足もしくは過剰)のいずれであるかに関連性が高い。
【0070】
ここで、払拭ローラー200と代替部材212との接触の程度が目標の程度である場合における、当該接触領域の長さ(以下、「目標長さ」とも表す)と間隔Iとが等しくなるように間隔Iが定められていれば、CPU520は、部分回路506
kから信号を受け付けたか否かに基づいて、払拭ローラー200と代替部材212との接触の程度が不足しているか否かを判断できる。
図6の例では、間隔Iは、目標長さになるように定められている。したがって、CPU520は、部分回路506
kから信号を受け付けたか否かに基づいて、点電極500kが設けられている区域(例えば、a1~a6のいずれか)において、払拭ローラー200と代替面213との接触の程度が不足しているか否かを判断できる。
【0071】
図6を参照して、クリーニング装置135は、CPU(Central Processing Unit)520と、不揮発性メモリー605と、揮発性メモリー607と、タイマー610と、PIO510と、ディスプレイドライバー617と、モータードライバー620と、クリーニング部材625と、代替部材212を含む。
【0072】
CPU520は、不揮発性メモリー605に格納されているプログラム、例えば、クリーニング動作を行うためのプログラム、または当該動作を行う前に代替部材212と払拭ローラー200との接触状態を検知するためのプログラムを実行する。CPU520は、検出回路505から出力された信号を、PIO510を介して受け付ける。ある局面において、CPU520に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)もしくはFPGA(Field-Programmable Gate Array)、または上記の回路素子の組み合わせが用いられてもよい。
【0073】
不揮発性メモリー605は、クリーニング動作におけるクリーニング条件などの、クリーニング装置135で使用される様々なプログラムおよびデータを格納する。不揮発性メモリー605は、例えば、代替面213において設けられる各点電極405の位置(例えば、
図3,4のx座標およびy座標)を示す情報を格納する。ある局面において、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置が不揮発性メモリー605として使用される。
【0074】
揮発性メモリー607は、RAM(Random Access Memory)を含む。RAMは、CPU520によって実行されるプログラムおよび参照されるデータを一時的に格納する。ある局面において、SRAM(Static Random Access Memory)またはDRAM(Dynamic Random Access Memory)が揮発性メモリー607として使用される。
【0075】
モータードライバー620は、クリーニング部材625と代替部材212とを、またはクリーニング部材625と被クリーニング部材630とを相対的に移動させるための信号を出力する回路である。モータードライバー620は、例えば、前述した他の駆動機構および第1の駆動モーター107などの少なくとも1つを駆動させるための信号を出力する。また、クリーニング部材625が回転可能に構成されている場合、モータードライバー620は、駆動モーター215を駆動することによりクリーニング部材625を回転させるための信号を出力する。ディスプレイドライバー617は、文字または画像などを含む画面を表示器635に表示させる。表示器635は、タッチセンサーが組み込まれた、複数のボタンを備えるタッチスクリーンであり得る。当該画面については、後述する。
【0076】
クリーニング部材625は、被クリーニング部材630の被クリーニング面に接触して当該面をクリーニングする。クリーニング部材625は、払拭ローラー200、ブレード、ブラシおよびウェブなどのいずれであってもよい。
【0077】
代替部材212は、前述したように、後述する分布推定部がクリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触状態を推定するために用いられる。代替部材212は、被クリーニング面としてのヘッドノズル面222に代替して、クリーニング部材としての払拭ローラー200により接触される面である代替面213を有する。
【0078】
[接触領域の長さLtを検出するための原理]
前述したように、クリーニング装置135は、クリーニング動作が実施される前に、払拭ローラー200と代替面213との接触状態を検知する。これにより、クリーニング動作が実施されるときの、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触状態を事前に推定する。
【0079】
クリーニング装置135は、払拭ローラー200と代替面213との接触の程度を示す指標値を検出する。実施形態では、当該指標値として、代替面213のうち払拭ローラー200と代替部材212とが接触している接触領域におけるx方向(払拭ローラー200が代替面213に対して移動する方向)の長さを主に用いる。前述したように、当該接触領域の長さは、払拭ローラー200と代替面213との接触の程度が適切または不適切のいずれであるかに関連性が高い。したがって、当該接触領域の長さは、当該接触の程度に基づいてヘッドノズル面222と払拭ローラー200との接触の程度を推定する際に有用であり、当該指標値として適している。
【0080】
図7~
図10を参照して、クリーニング部材625と代替部材212との接触領域の長さLtを検出するための原理を説明する。
【0081】
図7(A)および
図7(B)は、払拭ローラー200の側面図および断面図をそれぞれ示す図である。
図8は、クリーニング部材625と代替部材212との接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。
図9は、検出回路505により出力される信号の一例を示す図である。
【0082】
ここで、「接触領域の長さLt」は、クリーニング部材625と代替部材212とが接触している接触領域(ニップ領域)におけるx方向(代替面213に対してクリーニング部材625が相対的に移動する方向)の長さをいう。
図8の例では、当該方向は、矢印830により示される方向に対応する。代替面213に対してクリーニング部材625が相対的に移動することは、代替面213に対してクリーニング部材625が移動することと、代替面213がクリーニング部材625に対して移動することとのいずれであってもよい。
【0083】
実施形態では、接触領域の長さLtが目標長さから閾値範囲(以下、「目標範囲」とも表す)内である場合に、CPU520は、クリーニング部材625と代替部材212との接触の程度が適切であると判断する。したがって、当該接触の程度と同じ接触の程度でクリーニング部材625がヘッドノズル面222に接触すると、クリーニング部材625とヘッドユニット105との接触の程度も適切になる。例えば、上記の場合における、代替面213に対するクリーニング部材625の押し込み量を、ヘッドノズル面222に対するクリーニング部材625の押し込み量に適用することにより、ヘッドノズル面222が適切にクリーニングされると考えられる。目標長さおよび目標範囲は、クリーニング部材625、代替部材212または被クリーニング部材630を構成する材質の種類などに基づいて、実験などにより予め定められ得る。実施形態では、説明の簡略化のため、目標範囲の下限値が目標長さであるとする。
【0084】
他方、接触領域の長さLtが目標範囲外である場合、当該接触の程度が適切でないと判断する。例えば、接触領域の長さLtが目標長さ未満である場合、CPU520は、クリーニング部材625と代替部材212との接触の程度が不足していると判断する。また、接触領域の長さLtが目標範囲を超えるほど大きい場合、CPU520は、当該接触の程度が過剰であると判断する。
【0085】
図8(A)および
図8(B)は、クリーニング部材625が代替部材212に接触している場合において、接触領域の長さLtが目標長さである様子、および接触領域の長さLtが目標長さ未満である様子をそれぞれ示す。
【0086】
図8(A)のように、接触領域の長さLtが線電極400と点電極500
kとの間隔I以上である場合、クリーニング部材625を介して、線電極400と点電極500
kとの間で電流が流れる。ここで、前述したように、線電極400と点電極500
kの間の間隔Iが目標長さになるように設定されている。したがって、当該電流が流れる場合、接触領域の長さLtは目標長さ以上である。
図8(A)の例では、CPU520が検出する接触領域の長さLtは、目標長さである。
【0087】
これに対して、
図8(B)のように、接触領域の長さLtが間隔I未満である場合、線電極400と点電極500
kとの間で電流が流れない。したがって、当該電流が流れない場合、接触領域の長さLtが目標長さ未満である。
図8(B)の例では、CPU520が検出する接触領域の長さLtは、目標長さ未満の値(例えば、0)である。
【0088】
クリーニング部材625は、代替面213に設けられる線電極400および点電極500kに対して移動している。そのため、CPU520は、不揮発性メモリー605に格納されたプログラムに基づいて、部分回路506kから出力される信号を適度なタイミングで受け付けることにより、接触領域の長さLtを検出する。クリーニング部材625が払拭ローラー200のような回転体である場合、CPU520は、接触領域の長さLtが目標範囲外であった時間に基づいて、回転体の周方向の形状を把握することもできる。
【0089】
[接触領域の長さLtの分布]
図9~
図11を参照して、接触領域の長さLtの分布を説明する。
図9(A)および
図9(B)は、一部に凹み905がある払拭ローラー200の側面図および断面図をそれぞれ示す図である。
図10(A)は、払拭ローラー200に凹みが無い場合における、検出回路505の出力信号の一例を示す図である。
図10(B)は、払拭ローラー200に凹み905がある場合における、検出回路505の出力信号の一例を示す図である。
【0090】
前述したように、クリーニング部材625と被クリーニング部材630(代替部材212)との接触状態は、クリーニング装置135が動作している間に変わり得るため、当該接触状態を適切に保つことが困難であるという課題があった。そこで、発明者らは、当該課題を解決するために、当該接触状態の程度を示す指標値の分布に着目した。より具体的には、当該指標値が、当該指標値が検出される時間または位置(区域)に応じて変化することに着目した。例えば、払拭ローラー200の凹み905がある部分がヘッドノズル面222に当たる位置および時間において、クリーニング不良が生じ得る。
【0091】
実施形態1~6では、被クリーニング部材630とクリーニング部材625との接触の程度を表す指標値(第1の指標値)の分布を、クリーニング動作が実施される前に推定する。これにより、当該推定の結果に基づいて、クリーニング不良が生じることを未然に回避する。また、実施形態1~5では、代替部材212とクリーニング部材625との接触の程度を表す第2の指標値の分布に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。第2の指標値として、代替部材212とクリーニング部材625との接触領域の長さLtを用いた。また、後述するように、第1の指標値として、被クリーニング部材630とクリーニング部材625との接触領域の長さLt1を用いた。
【0092】
図10(A)および
図10(B)は、払拭ローラー200に凹みが無い場合(
図7)または凹み905がある場合(
図9)において、払拭ローラー200が代替面213に接触しているときに検出回路505から出力された信号の一例をそれぞれ示す。
【0093】
図10(A)を参照して、払拭ローラー200が、代替面213に設けられている、線電極400と、点電極500
k-1,500
kおよび500
k+1とに接触したとき、部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1は、High信号を出力する(時間t
a)。その後、払拭ローラー200が1回転するまで、各部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1は、High信号を出力する(時間t
a~時間t
d)。
【0094】
したがって、
図10(A)のように、部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1が、時間t
a~時間t
dの間、High信号を出力したことは、代替面213において点電極500
k-1,500
kおよび500
k+1が設けられる各区域において、接触領域の長さLtが目標長さ以上であることを示す。これは、各区域において接触不足が生じていないことを示しており、
図7に示されるように、払拭ローラー200において凹みが無いことと整合している。
【0095】
図10(B)を参照して、払拭ローラー200が、線電極400と、点電極500
k-1,500
kおよび500
k+1とに接触したとき、各部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1は、High信号を出力する(時間t
a)。払拭ローラー200が代替面213に接触して回転している間、各部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1は、High信号を継続して出力する(時間t
a~時間t
b)。その後、各部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1は、High信号の出力を停止する(時間t
b~時間t
c)。さらにその後、払拭ローラー200が、上記の電極に接触したとき(時間t
a)から1回転し終わるとき(時間t
c)まで、各部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1は、High信号の出力を継続する(時間t
c~t
d)。
【0096】
ここで、
図9の払拭ローラー200の凹み905がある部分に起因して、払拭ローラー200と代替部材212との接触領域において接触不足が生ずる場合、払拭ローラー200の凹み905の形状から、接触不足はy方向に一律に生ずることが想定される。
図10(B)のように、部分回路506
k-1,506
kおよび506
k+1が、時間t
b~時間t
cの間、一律にHigh信号を出力しなかったことは、代替面213において点電極500
k-1,500
kおよび500
k+1が設けられる区域(y方向に沿って区分される区域)の各々において、接触領域の長さLtが目標長さ未満であり、一律に接触不足が生じていることを示す。これは、
図9に示されるように、払拭ローラー200においてθ方向の一部に存在する凹み905がy方向に延在していることと整合している。
【0097】
図11(A)は、払拭ローラー200に凹みが無い場合に、払拭ローラー200が1回転する間に検出された接触領域の長さLtの分布1100を示す図である。当該結果は、表示器635の画面に表示される。
図11(B)は、払拭ローラー200に凹み905がある場合に、払拭ローラー200が1回転する間に検出された接触領域の長さLtの分布1105を示す図である。当該結果は、表示器635の画面に表示される。
【0098】
払拭ローラー200が、+z方向に移動して代替面213に接触してから1回転するまでの間、CPU520は、接触領域の長さLtを検出した。
図11の例では、払拭ローラー200は、代替面213に接触した後に、x方向に移動せずに回転していた。他の局面において、払拭ローラー200は、代替面213に接触した後に、x方向に移動しながら回転してもよい。これにより、クリーニング動作が実施されるときに第1の指標値が実際に検出されるときの当該第1の指標値の分布により近い分布を、代替面213において検出された接触領域の長さLt(第2の指標値)から推定できる。
【0099】
図11(A)および
図11(B)を参照して、分布1100,1105は、代替面213に設けられるセンサー320でy方向に区分される区域a1~a6における、接触領域の長さLtの時間的な変化を示す。より具体的には、分布1100,1105は、払拭ローラー200が1回転するときの周期Tにおける各時間間隔T1~T12において区域a1~a6で検出された接触領域の長さLtの分布をそれぞれ示す。分布1100,1105において、周期Tに代えて予め定められた期間が用いられてもよい。
【0100】
分布1100によると、各時間間隔T1~T12における各区域a1~a6で検出された接触領域の長さLtは、全て目標長さ以上である。すなわち、払拭ローラー200と代替部材212との接触状態に関して、接触不足が生じていない。これは、
図7に示されるように、払拭ローラー200において凹みが無いことと整合している。
【0101】
また、分布1105によると、時間間隔T1,T2,T4~T12において各区域a1~a6で検出された接触領域の長さLtは、目標長さ以上である。さらに時間間隔T3において、各区域a1~a6で検出された接触領域の長さLtは、一律に目標長さ未満である。ここで、y方向に沿って区分される区域a
i(i=1,2,…,6)および時間間隔T
j(j=1,2,…,12)により指定されるセルのうち、接触領域の長さLtが目標長さ未満であるセルにハッチングが付されている。分布1105は、
図9に示されるように、払拭ローラー200においてθ方向の一部に存在する凹み905がy方向に延在していることと整合している。
【0102】
図11(A)および(B)の例では、分布1100または1105は、y座標により指定される区域a1~a6における、接触領域の長さLtの時間変化を示す分布である。すなわち、分布1100または1105は、被クリーニング面1262における位置を表す座標と、時間とに応じた分布である。他の局面において、分布1100または1105は、上記のようにy座標により指定される区域と、払拭ローラー200の回転量とに応じた分布であってもよい。
【0103】
図11(A)および(B)の場合、払拭ローラー200の角速度をωとすると、払拭ローラー200が代替面213に接触し始めてから経過した時間tと角速度ωとを乗ずることにより表される回転量としての回転角度θが、分布1100または1105において時間tに代えて用いられてもよい。すなわち、分布1100または1105においてt軸に代えてθ軸が用いられてもよい。さらに他の局面において、分布1100または1105で、払拭ローラー200がθ方向に回転した回転距離l
rが回転量として時間tに代えて用いられてもよい。このように、分布1100または1105は、払拭ローラー200と代替面213との接触領域の長さLtが、払拭ローラー200の周方向の回転量(例えば、クリーニング部材625の回転角度、θ方向に回転した回転距離)に応じて変化することを表す分布であってもよい。当該分布は、y方向における位置(区域)に応じた分布であり、かつ払拭ローラー200の回転量に応じた分布でもある。
【0104】
さらに他の局面において、
図3の例とは異なり、代替面213が、x方向およびy方向により複数の区域に区分される場合、分布1100または1105は、各区域(例えばa1b1,a1b2,…)において検出された接触領域の長さLtの時間的な変化を示す分布により表されてもよい。すなわち、分布1100または1105は、x軸、y軸およびt軸の各座標に関連付けられた接触領域の長さLtを表してもよい。
【0105】
CPU520は、払拭ローラー200が1回転したときに検出される第2の指標値の分布としての分布1100または1105から、払拭ローラー200とヘッドユニット105との接触領域の長さLt1の分布(第1の指標値の分布)を推定できる。例えば、払拭ローラー200がヘッドユニット105を払拭している間(ヘッドノズル面222に対してx方向に速度vで移動している間)にn回転する場合、ヘッドノズル面222において第1の指標値が検出されるとしたならばその間に得られる第1の指標値の分布は、代替部材212を用いて得られる第2の指標値の分布に基づいて推定できる。一例として、代替面213に対してx方向に速度vで払拭ローラー200が移動しながら1回転している間に代替面213における各区域a1~a6で検出された第2の指標値の分布が得られるとする。CPU520は、当該第2の指標値の分布に基づいて、当該第2の指標値の分布が周期的にn回繰り返された分布が第1の指標値の分布であると推定できる。第2の指標値の分布を構成する座標軸(例えば、y軸およびt軸など)は、第1の指標値の分布を構成する座標軸でもある。クリーニング装置135は、当該第1の指標値の分布に基づいて、ヘッドユニット105が有するノズルにおいて接触不足または過剰接触が生じ得る位置(第1の指標値が閾値範囲外となる位置)を事前に推定できる。
【0106】
例えば、CPU520は、払拭ローラー200の凹み905がある部分が、区域a1~a6に時間間隔T3で当たることを分布1105から判断する。CPU520は、分布1105に基づいて、払拭ローラー200の凹み905がある部分が、ヘッドノズル面222において区域a1~a6と同じy座標を有するノズル(例えばノズル310A,310Dなど)に、特定の時間で当たることを第2の指標値の分布から判断し得る。当該特定の時間は、クリーニング部材625がヘッドノズル面222に接触してから時間間隔T1,T2が経過した時間間隔T3により指定される期間、および当該期間よりも周期T×n(nは、クリーニング動作中の払拭ローラー200の回転数)後の期間であり得る。
【0107】
クリーニング装置135は、当該推定の結果に基づいて、適切なクリーニング条件を事前に決定する。以下、クリーニング条件の決定について説明する。
[クリーニング条件の決定]
CPU520は、クリーニング動作が実施される前に検出された第2の指標値としての接触領域の長さLtの分布に基づいて第1の指標値の分布を推定し、クリーニング部材625がヘッドノズル面222をクリーニングするときの適切なクリーニング条件を事前に決定する。クリーニング条件として、被クリーニング面に対するクリーニング部材625の相対的な移動速度、相対的な位置、押し込み量およびクリーニング回数、ならびにクリーニング部材625の回転速度などを例示できる。
【0108】
不揮発性メモリー605は、第2の指標値としての接触領域の長さLtの分布(例えば、分布1100,1105など)に基づいて、CPU520がクリーニング条件を決定するためのプログラムまたはデータを予め格納している。より具体的には、接触領域の長さLtが閾値範囲外である場合に、不揮発性メモリー605は、検出された接触領域の長さLtと目標範囲の上限値または下限値との差に応じてクリーニング条件を決定するためのデータを格納している。他の局面において、当該データは、CPU520の記憶領域に格納されていてもよい。
【0109】
例えば、CPU520は、第1の指標値の分布に基づいて、クリーニング部材625がヘッドノズル面222に接触するときに、接触領域の長さLt1が目標範囲の下限値よりも小さくなる(接触不足によりクリーニング不足が生じる)部分があると推定する。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の相対的な移動速度が、現在設定されている値よりも小さくなるようにクリーニング条件を決定し得る。これにより、当該部分にクリーニング部材625が接触している時間を、当該部分以外の部分にクリーニング部材625が接触している時間よりも長くすることができる。その結果、ヘッドノズル面222におけるノズルのクリーニング不足を解消し得る。なお、当該現在設定されている値は、上述した第2の指標値の分布を得るために代替面213に対して払拭ローラー200が相対的に移動したときの速度vを示す値であり得る。また、ヘッドノズル面222における、クリーニング不足が生じ得る部分以外の部分を払拭ローラー200が払拭するときの移動速度には、当該現在設定されている値が適用され得る。
【0110】
他方、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標範囲の上限値よりも大きくなる(過剰接触によりクリーニング過剰が生じる)部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の相対的な移動速度が、現在設定されている値よりも大きくなるようにクリーニング条件を決定し得る。これにより、当該部分にクリーニング部材625が接触している時間を、当該部分以外の部分にクリーニング部材625が接触している時間よりも短くすることができ、ノズルのクリーニング過剰を解消し得る。
【0111】
また、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標範囲の下限値よりも小さくなる部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量が、現在設定されている値よりも大きくなるようにクリーニング条件を決定し得る。CPU520は、モータードライバー620を制御することにより、押し込み量を調整する。当該現在設定されている値は、上述した第2の指標値の分布を得るために代替面213に払拭ローラー200が接触したときの押し込み量であり得る。これにより、当該部分にかかる圧力をより大きくすることができ、ノズルのクリーニング不足を解消し得る。
【0112】
他方、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標範囲の上限値よりも大きくなる部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量が、現在設定されている値よりも小さくなるようにクリーニング条件を決定する。これにより、当該部分にかかる圧力をより小さくすることができ、ノズルのクリーニング過剰を解消し得る。
【0113】
また、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標範囲の下限値よりも小さくなる(クリーニング不足が生じる)部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200のクリーニング回数が、少なくとも2回以上になるようにクリーニング条件を決定し得る。これにより、ノズルのクリーニング不足を解消し得る。
【0114】
他方、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標範囲の上限値よりも大きくなる(クリーニング過剰が生じる)部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200のクリーニング回数が、現在設定されている回数よりも少なくなるようにクリーニング条件を決定し得る。
【0115】
ある局面において、CPU520は、ヘッドノズル面222内の特定のノズル(例えば、ノズル310A)のクリーニング回数が、他のノズル(例えば、ノズル310D)のクリーニング回数と異なるようにクリーニング条件を決定し得る。例えば、
図9のように払拭ローラー200に凹み905がある場合、ヘッドノズル面222とクリーニング部材625との接触領域の長さLt1の分布(第1の指標値の分布)は、第2の指標値の分布(例えば、分布1105)に基づいて推定され得る。ここで、払拭ローラー200とヘッドノズル面222とが接触するときに、払拭ローラー200における当該凹み905がある部分と特定のヘッド(例えば、ヘッド310A)との接触状態と、払拭ローラー200における当該部分以外の部分と当該特定のヘッド以外のヘッド(例えば、ヘッド310D)との接触状態とが異なり得る。これらの接触状態が異なると、当該特定のヘッドにおいてクリーニング不良が生じる場合がある。この場合、CPU520は、分布1105に基づいてそれらの接触状態が異なり得ると判断し、ヘッドノズル面222全体に対して再びクリーニング動作が実施されるようにクリーニング条件を決定し得る。CPU520は、局所的なクリーニング不良を解消するために、当該特定のヘッドに対してのみ、再びクリーニング動作が実施されるようにクリーニング条件を決定してもよい。
【0116】
また、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標長さよりも小さくなる(クリーニング不足が生じる)部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、払拭ローラー200の回転速度を、現在設定されている値よりも大きくなるようにクリーニング条件を決定し得る。当該現在設定されている値は、上述した第2の指標値の分布(例えば、分布1105)を得るために払拭ローラー200が代替面213に接触して回転したときの回転速度を示す値であり得る。これにより、当該部分にあるノズルに付着した異物を除去しやすくできる。クリーニング部材625として、払拭ローラー200に代えてウェブが用いられる場合、当該回転速度は、ウェブの巻き取り速度に対応する。
【0117】
他方、CPU520は、接触領域の長さLt1が目標長さよりも大きくなる(クリーニング過剰が生じる)部分があると推定し得る。CPU520は、ヘッドノズル面222において当該部分があると推定すると、払拭ローラー200が当該部分を払拭するときの、払拭ローラー200の回転速度を、現在設定されている値よりも小さくなるようにクリーニング条件を決定し得る。これにより、クリーニング過剰を解消できる。
【0118】
CPU520は、上記のクリーニング条件の1つまたは複数を決定し得る。より具体的には、CPU520は、検出された接触領域の長さLtと目標範囲の上限値または下限値との差に応じて、当該1つまたは複数のクリーニングを決定し得る。CPU520は、例えば、代替面213全体で接触領域の長さLtが同程度に目標範囲の上限値または下限値と異なっている場合、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量のみが、現在設定されている値(払拭ローラー200が代替面213に接触したときの押し込み量)と異なるように、クリーニング条件を決定し得る。この場合、CPU520は、払拭ローラー200が代替面213に接触したときに検出される接触領域の長さLtが目標範囲内になるまで、当該検出動作を繰り返すことにより、代替面213に対する払拭ローラー200の押し込み量を段階的に調整してもよい。これにより、接触領域の長さLtが目標範囲内になったときの当該押し込み量を、クリーニング動作が実施されるときのヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量として利用できる。また、CPU520は、クリーニング動作が実施されるときの押し込み量以外のクリーニング条件(払拭ローラー200の回転速度および移動速度など)が、払拭ローラー200が代替面213に接触したときの条件と同じになるようにクリーニング条件を決定してもよい。
【0119】
また、CPU520は、ヘッドノズル面222の一部のみにおいて、接触領域の長さLt1が目標範囲外になるほど押込み量が過多または不足になると推定する場合がある。この場合、CPU520は、クリーニング部材625に当該部分をクリーニングさせるときのみ、押し込み量に加えて、または押し込み量に代えて他のクリーニング条件(例えば、クリーニング回数、および払拭ローラー200の回転速度数など)を、払拭ローラー200が代替面213に接触したときの条件と異なるように、クリーニング条件を決定し得る。CPU520は、クリーニング部材625に当該部分以外の部分をクリーニングさせるときのクリーニング条件を、払拭ローラー200が代替面213に接触したときの条件と同じになるように決定し得る。このように、CPU520が、第1の指標値の分布に基づいてクリーニング条件を決定することにより、ヘッドノズル面222と払拭ローラー200との接触状態を適切に保つことができる。その結果、ヘッドノズル面222全体が十分にクリーニングされない状態(ヘッドノズル面222の一部のノズルが十分にクリーニングされない状態)で記録媒体Pに画像が形成され、当該ノズルにおけるインク吐出の不具合に起因して画像の質が低下することを抑制できる。
【0120】
[検証結果]
発明者らは、払拭ローラー200において周方向(θ方向)の凹みが無い場合(
図7)と、払拭ローラー200において周方向の凹み905がある場合(
図9)との各々において、代替面213における、接触領域の長さLtの分布を検知するための実験を行った。
【0121】
実験において、払拭ローラー200は、多孔質部材であるスポンジが回転軸上に形成されたものを用いた。払拭ローラー200の芯金の直径は16mmであった。払拭ローラー200を構成する多孔質部材の厚みは7mmであった。払拭ローラー200の直径は30mmであった。凹み905が有る払拭ローラー200(
図9)において、凹み905の幅は12mmであった。払拭ローラー200の下半分は、クリーニング液207としての純水が入った水槽205に浸されていた。払拭ローラー200が回転しているときの払拭ローラー200の表面速度(周方向の速度)は、80mm/sであった。払拭ローラー200の被クリーニング面に対する移動速度は10mm/sであった。代替面213に対する払拭ローラー200の押し込み量は、1.5mmであった。目標長さは、線電極400と点電極500kとの間隔Iに等しい2mmであった。ヘッドノズル面222上のヘッドの幅は57mmであった。ヘッドユニット105において1サイクルあたりのインク供給量は0.1mLであった。
【0122】
実験において、払拭ローラー200において周方向(θ方向)の凹みが無い場合(
図7)、検出された第2の指標値の分布は、分布1100と同様の分布であった。すなわち、当該分布は、分布1100と同様に、払拭ローラー200と代替部材212との接触不足が生じていないことを示した。CPU520は、不揮発性メモリー605に予め登録されたデータに基づいて、クリーニング条件を決定した。
【0123】
他方、払拭ローラー200において周方向の凹み905がある場合(
図9)、検出された第2の指標値の分布は、分布1105と同様の分布であった。当該分布に関して、CPU520は、時間間隔T3において各区域a1~a6で検出された接触領域の長さLtが閾値範囲外であることに基づいて、クリーニング条件を決定した。より具体的には、払拭ローラー200がヘッドノズル面222に接触して矢印830の方向に移動し始めてから経過した時間が時間間隔T3にある間(払拭ローラー200がヘッドノズル面222に接触してから移動した距離がv×t
23~v×t
34の範囲である間)に、各区域a1~a6と同じy座標を有するノズルに払拭ローラー200が接触するときに第1の指標値が閾値範囲外になると、CPU520は、分布1105から推定される第1の指標値の分布に基づいて判断した。CPU520は、ヘッドノズル面222に対するクリーニング部材625のその間の押し込み量を、その間以外の押し込み量と比較して、1.5mmから2.0mmに増やした。また、CPU520は、払拭ローラー200が当該範囲を移動している間のクリーニング条件について、当該範囲を移動していない間のクリーニング条件と比較して、速度vを10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げるようにクリーニング条件を決定した。払拭ローラー200が当該範囲以外の範囲を移動している間のクリーニング条件は、前述したクリーニング条件(押し込み量が1.5mm、移動速度が10mm/s、および回転数が94mm/s)と同じであった。
【0124】
また、クリーニング動作が実施されている間の、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であるか否かを検査するために、ヘッドノズル面222における各ノズルの近傍にセンサー(図示しない)が設けられた。各センサーは、払拭ローラー200とヘッドノズル面222との接触領域の長さLt1をCPU520が検出するために設けられた。接触領域の長さLt1の検出原理は、
図5、
図6および
図8を参照して説明した原理と同様である。ここで、当該センサーによる検出結果は、クリーニング動作が実施されて払拭ローラー200が各ノズルに接触するときの、各ノズル310における接触領域の長さLt1と基本的に同じであると考えられる。そのため、各ノズルの近傍に設けられているセンサーが検出する接触領域の長さLt1が目標長さである場合、クリーニング動作が実施されている間、各ノズルとクリーニング部材625との接触の程度が適切である。したがって、この場合、当該ノズルが適切にクリーニングされたことを確認できる。すなわち、当該センサーによる検出結果を用いることにより、第1の指標値の分布から決定されたクリーニング条件に基づいて、適切なクリーニング動作が実施されたことを確認できる。
【0125】
クリーニング動作が実施された後、CPU520は、各センサーを用いて、各ノズル近傍の接触領域の長さLt1を検出した。その結果、各ノズル近傍において検出された接触領域の長さLt1は、全て目標範囲内であった。すなわち、クリーニング動作が実施されるときの接触領域の長さLt1が、ヘッドノズル面222全体で目標範囲内であった。したがって、第2の指標値(接触領域の長さLt)の分布を用いて推定された第1の指標値の分布に基づくクリーニング条件に従ってクリーニング動作が実施されることにより、ヘッドノズル面222全体が適切にクリーニングされたことを発明者らは確認できた。
【0126】
図12を参照して、接触領域の長さLtを検出するための画像形成装置100の機能的な構成を説明する。
図12は、画像形成装置100において、クリーニング装置135が実行する処理を説明するための機能を表すブロック図である。
【0127】
クリーニング装置135は、代替部材212と、クリーニング部材625と、検出部1205と、駆動部1210と、制御部1215とを備える。
【0128】
クリーニング部材625は、前述したように、被クリーニング部材630の被クリーニング面1262に接触して被クリーニング面1262をクリーニングする。クリーニング部材625は、代替部材212が有する代替面213にも接触する。
【0129】
検出部1205は、代替部材212とクリーニング部材625との接触の程度を示す第2の指標値を検出する。検出部1205は、例えば、代替面213のうち代替部材212とクリーニング部材625とが接触している接触領域1207における、代替面213に対してクリーニング部材625が相対的に移動する方向の長さ(すなわち、接触領域の長さLt)を、第2の指標値として検出する。当該方向は、矢印830により表される方向(x方向)であり得る。検出部1205は、例えば、検出回路505から出力される信号をCPU520が解析することにより実現される。クリーニング部材625が、当該方向に相対的に移動している間、または回転している間、CPU520は、接触領域の長さLtを検出する。なお、検出部1205により検出される第2の指標値は、接触領域の長さLtに限定されず、例えば、各区域a1~a6に設けられ得る圧力センサーにより測定される圧力値であってもよい。
【0130】
検出部1205が第2の指標値を検出するための部材1208A,1208Bは、ある局面において、代替面213と同一の平面に設けられる。これにより、検出部1205は、部材1208A,1208Bとクリーニング部材625とが接触したタイミングで、代替面213とクリーニング部材625とが接触したと判断できる。
図3の例では、部材1208A,1208Bは、線電極400および点電極405(点電極500
k)であり得る。このように、部材1208として電極が用いられることにより、部材1208を単純化および小型化できる。その結果、部材1208および検出回路505を用いて第2の指標値を検出するクリーニング装置135の構成は、様々な種類のクリーニング装置に適用でき、汎用性が高い。部材1208A,1208Bとして、電極に代えて、圧力センサーなど、接触の有無を検知するためのその他の部品が用いられてもよい。
【0131】
他の局面において、検出部1205により検出される第2の指標値が圧力値である場合、部材1208は、代替面213における各区域に設けられる圧力センサーであり得る。当該圧力センサーは、圧力値を検知するという使用目的において、上述した、接触の有無を検知するための使用目的の圧力センサーと異なる。
【0132】
駆動部1210は、代替面213に対してクリーニング部材625を相対的に移動させる。また、駆動部1210は、被クリーニング部材630の被クリーニング面1262に対してクリーニング部材625を相対的に移動させる。ある局面において、駆動部1210は、モータードライバー620などの駆動回路により実現される。他の局面において、駆動部1210は、CPU520が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムに従って動作することにより実現されてもよい。
【0133】
制御部1215は、クリーニング装置135全体の動作を制御する。より具体的には、制御部1215は、分布生成部1218と、分布推定部1220と、判別部1240と、出力部1245と、決定部1250とを含む。ある局面において、制御部1215の機能は、CPU520が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムに従って動作することにより実現され得る。他の局面において、上記の機能は、少なくとも1つのサーバーが当該プログラムの処理の全部または一部を実行する所謂クラウドサービスにより実現されてもよい。
【0134】
分布生成部1218は、検出部1205により検出された第2の指標値に基づいて、代替面213における各区域(例えば、区域a1~a6)で検出された第2の指標値の分布を生成する。分布生成部1218は、第2の指標値が検出された時刻t、または第2の指標値が検出された位置(例えば、各区域a1~a6が有するx座標またはy座標)の少なくとも1つに応じた第2の指標値の分布を生成する。第2の指標値の分布は、代替面213に対してクリーニング部材625を駆動部1210が相対的に移動させるx方向に対して垂直なy方向の位置(区域)に応じた分布(例えば、分布1100または1105)を含む。なお、分布生成部1218により生成される第2の指標値の分布は、
図11の例のように表示器635の画面に表示されなくてもよい。第2の指標値と、第2の指標値が検出された時刻t、または第2の指標値が検出された位置の少なくとも1つとが関連付いた情報も、分布生成部1218により生成される第2の指標値の分布であり得る。
【0135】
また、クリーニング部材625が払拭ローラー200のように回転可能に構成されている場合、第2の指標値の分布は、払拭ローラー200が回転しているときに検出される第2の指標値の分布であってもよい。より具体的には、当該分布は、クリーニング部材625が代替面213に接触して回転しているときの、払拭ローラー200の回転量に応じた第2の指標値の変化を表す分布を含んでいてもよい。
【0136】
分布推定部1220は、被クリーニング面1262における、被クリーニング部材630とクリーニング部材625との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する。より具体的には、分布推定部1220は、分布生成部1218により生成された、第2の指標値の分布に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。第2の指標値の分布がy方向における位置に応じた分布である場合、第2の指標値の分布もy方向における位置に応じた分布であり得る。また、第2の指標値の分布がクリーニング部材625の回転量に応じた分布である場合、第1の指標値の分布もクリーニング部材625の回転量に応じた分布であり得る。
【0137】
第1の指標値は、被クリーニング部材630とクリーニング部材625とが接触する接触領域1265における、被クリーニング面1262に対してクリーニング部材625が移動するx方向の長さLt1を含むが、接触領域の長さLt1に限定されない。他の局面において、第1の指標値は、例えば、被クリーニング面1262内の各区域に設けられる圧力センサーにより測定されるであろう圧力値などのその他の値であってもよい。
【0138】
分布推定部1220は、被クリーニング面1262に対してクリーニング部材625を駆動部1210が相対的に移動させることによりクリーニング部材625が被クリーニング面1262をクリーニングする前(クリーニング動作が実施される前)に、第1の指標値の分布を推定する。すなわち、検出部1205による第2の指標値の検出と、分布生成部1218による第2の指標値の分布の生成と、分布推定部1220による第1の指標値の分布の推定とを含む一連の処理が、クリーニング部材625が被クリーニング面1262をクリーニングする前に実施される。当該一連の処理は、例えば、ヘッドユニット105が有するノズル300がインクを吐出している間に実施されてもよい。
【0139】
なお、分布生成部1218が、クリーニング部材625と代替部材212との接触の程度を示す第2の指標値の分布を生成することに対して、分布推定部1220は、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定するという点で分布生成部1218と異なる。
【0140】
本実施形態では、分布推定部1220は、分布生成部1218により生成された第2の指標値の分布に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。第1の指標値が、ヘッドノズル面222における各区域(例えば、a1~a6)で検出される圧力値である場合、分布推定部1220は、ヘッドノズル面222における各区域に圧力センサーが設けられるときに各区域で検出される圧力値の分布を推定してもよい。
【0141】
判別部1240は、分布生成部1218により生成された第2の指標値の分布に基づいて、クリーニング部材625における、第2の指標値が予め定められた範囲外である部位の位置を判別する。
図11の例では、クリーニング部材625における当該部位は、クリーニング部材625が時間間隔T3で区域a1~a6に接触した部位である。当該部位のy座標は、y
0~y
6である。当該部位のθ座標はθ
0+ωt(θ
0は、クリーニング部材625が代替面213に接触したときのクリーニング部材625のθ座標、ωはクリーニング部材625の角速度、t
23≦t≦t
34)であると判別する。
【0142】
出力部1245は、判別部1240による判別の結果を出力する。
図11の例では、出力部1245は、分布1100または分布1105を表示器635に表示させることにより、クリーニング部材625における、第2の指標値が予め定められた範囲外である部位のy座標を出力する。他の局面において、出力部1245は、クリーニング部材625における、第2の指標値が予め定められた範囲外である部位の位置を、マイク(図示しない)を介して音声により出力してもよい。
【0143】
決定部1250は、分布推定部1220により推定された第1の指標値の分布に基づいて、クリーニング部材625が被クリーニング面1262をクリーニングするときのクリーニング条件を決定する。より具体的には、決定部1250は、第1の指標値の分布において第1の指標値が閾値範囲外である部分の位置に基づいて、クリーニング条件を決定する。
図11の例では、当該位置は、ハッチングが付されたセルの位置であり、区域a1~a6および時間間隔T1~T12により指定される。当該位置は、y軸の座標およびt軸の座標により表されてもよい。決定部1250は、当該位置に対応する、ヘッドノズル面222上の位置と、当該位置にクリーニング部材625が接触するときの時間とに基づいて、クリーニング条件を決定する。クリーニング条件は、前述したように、クリーニング部材625が被クリーニング面1262をクリーニングする回数N(Nは自然数)と、被クリーニング面1262に対するクリーニング部材625の押し込み量と、被クリーニング面1262に対するクリーニング部材625の相対的な移動速度と、クリーニング部材625の回転速度とを含む。
【0144】
クリーニング動作が複数回実施される場合(回数Nが2以上である場合)、クリーニング条件は、毎回同じでなくてもよい。すなわち、決定部1250は、第n回目(1≦n≦N)のクリーニング動作における、少なくとも1つの他のクリーニング条件(上述した、押し込み量、回転速度および移動速度など)を、第m回目(1≦m≦N、かつn≠m)のクリーニング動作における当該少なくとも1つの他のクリーニング条件とは異なるように決定してもよい。例えば、決定部1250は、第1回目のクリーニング動作における押し込み量と、第2回目のクリーニング動作における押し込み量とが異なるようにクリーニング条件を決定してもよい。
【0145】
他の局面において、検出部1205、駆動部1210および制御部1215の少なくとも1つは、画像形成装置100における、クリーニング装置135とは異なる構成要素の機能として実現されてもよい。
【0146】
図13は、クリーニング部材625が払拭ローラー200のようなローラー形状の部材である場合に実施される一連のクリーニング動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【0147】
CPU520は、ヘッドユニット105に固定された基板106と払拭ローラー200とに対して、移動処理を開始する。より具体的には、以下のように移動処理が実行される。まず、CPU520は、移動処理を実行する前(
図13の時間t
1~時間t
2までの期間T
A)に、ヘッドノズル面222に設けられる各ノズルにインクを吐出させる。CPU520は、
図13の時間t
2から期間T
Bが経過した時間t
3において、駆動部1210を介して、払拭ローラー200を回転させ、ヘッドユニット105を払拭ローラー200に対して移動させる移動処理を開始する。
【0148】
時間t
3~時間t
4までの間、CPU520は、駆動部1210を介して、ヘッドユニット105を払拭ローラー200に対して下降(
図2の例では、-z方向に移動)させる。当該下降距離は、ヘッドノズル面222に設けられた、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の位置を検知するためのマイクロスイッチ(図示しない)により規制され、予め定められた押し込み量に設定される。当該押し込み量を示すデータは、不揮発性メモリー605に格納されている。
【0149】
CPU520は、タイマー610を参照することにより、時間t
4から期間T
Cが経過した時間t
5において、ヘッドノズル面222を払拭ローラー200に払拭させる動作(ヘッドユニット105の走査)を開始する。CPU520は、ヘッドユニット105が固定された基板106を走査方向(
図2の例では-x方向)に移動させることによりヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を+x方向に相対的に移動させるために、モータードライバー620に制御指令としての信号を出力する。モータードライバー620は、ヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を+x方向に相対的に移動させる。基板106が当該方向に移動することにより、払拭ローラー200は、ヘッドノズル面222におけるノズル310に付着しているインクを払拭する。基板106が当該方向に移動する距離は、ヘッドノズル面222の一方端(ヘッドユニット105の-x方向における端部)から他方端(ヘッドユニット105の+x方向における端部)までが払拭ローラー200により払拭されるように、基板106に設けられた上記のマイクロスイッチにより規制される。
【0150】
時間t6において、払拭ローラー200がヘッドノズル面222の+x方向における端部まで払拭し終わることを当該マイクロスイッチが検知する。CPU520は、タイマー610を参照することにより、時間t6から期間TDが経過した時間t7において、ヘッドユニット105が固定された基板106を+z方向に上昇させ始める。これにより、払拭ローラー200とヘッドノズル面222とが離間する。CPU520は、時間が時間t8になるまでヘッドユニット105が固定された基板106を上昇させる。また、CPU520は、時間t8において払拭ローラー200の回転を停止する。
【0151】
時間t
8から期間T
Eが経過した時間t
9において、CPU520は、ヘッドユニット105が固定された基板106を、主走査方向とは反対の方向(
図2の例では、+x方向)に移動させて初期位置まで移動(復帰)させる。時間t
10において、CPU520は、ヘッドユニット105の移動を停止し、図示しない駆動機構を介して、水槽205に入っているクリーニング液207を廃棄して新しいクリーニング液と入れ替える。
【0152】
図13の例では、ヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200が相対的に移動するときの、クリーニング装置135の動作の一例が示された。CPU520が、第1の指標値の分布を推定するために、払拭ローラー200を代替面213に接触させて代替面213に対して相対的に移動させるときのクリーニング装置135の動作も、
図13に示される動作と同様であり得る。
【0153】
例えば、CPU520は、払拭ローラー200の回転を開始して、代替部材212を払拭ローラー200に対して相対的に移動させるための移動処理を開始する(時間t3)。CPU520は、モータードライバー620を介して、代替部材212を払拭ローラー200に対して下降させ(時間t3~時間t4)、クリーニング部材625を代替面213に接触させる。CPU520は、代替面213に対して払拭ローラー200を接触させた状態で回転させて相対的に移動させている間(時間t5~時間t6)、払拭ローラー200が1回転するまで代替面213における各区域(例えば、a1~a6)で第2の指標値を検出する。これにより、第2の指標値の分布が生成され、第1の指標値の分布が推定される。
【0154】
他の局面において、CPU520は、代替面213に対して払拭ローラー200を相対的に移動させることなく払拭ローラー200を回転させ、払拭ローラー200が1回転するまで代替面213における各区域で第2の指標値を検出してもよい。
【0155】
時間t6の後、CPU520は、払拭ローラー200と代替面213とを離間させ(時間t7)、代替部材212を上昇させ(時間t7~時間t8)、払拭ローラー200の回転を停止する(時間t8)。CPU520は、代替部材212を、上記の移動処理が開始される前の位置まで移動させる(時間t8~時間t9)。以上の一連の動作が、クリーニング動作が実施される前に第1の指標値の分布を推定するために行われる。以下、上記の一連の動作を「分布推定動作」とも表す。
【0156】
図14および
図15を参照して、実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順について説明する。
図14は、実施形態1の画像形成装置100がクリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。
図15は、ステップS1430において表示器635に表示される画面の一例を示す図である。
【0157】
ある局面において、
図14に示される処理は、CPU520が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムを実行することにより実現される。上記の処理において、他の局面において、CPU520に代えて、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、当該処理を実行するように構成されたその他の回路素子、またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。
【0158】
ステップS1405において、CPU520は、代替部材212を払拭ローラー200に対して相対的に移動させるための移動処理を開始する。CPU520は、クリーニング部材625を代替面213に接触させる。CPU520は、画像形成装置100が有する入力装置(図示しない)を介して受信した、ユーザーからの命令に基づいて、当該処理を開始し得る。
【0159】
ステップS1410において、CPU520は、代替面213に対して払拭ローラー200が相対的に移動しながら回転している間、または相対的に移動せずに回転している間、検出回路505(部分回路506k)から出力される信号を取得する。
【0160】
ステップS1415において、CPU520は、取得された信号を揮発性メモリー607に格納する。より具体的には、CPU520は、当該信号をバイナリコードとして揮発性メモリー607に格納する。
【0161】
ステップS1420において、CPU520は、検出部1205として、取得された信号に基づいて第2の指標値を検出する。ある局面において、CPU520は、払拭ローラー200が代替面213に接触しているときの、各区域a1~a6での接触領域の長さLtを第2の指標値として検出する。他の局面において、CPU520は、所定の演算処理により、接触領域の長さLtを検出してもよい。CPU520が演算処理により接触領域の長さLtを検出する場合については、実施形態5において説明する。
【0162】
ステップS1422において、CPU520は、分布生成部1218として、検出された第2の指標値に基づいて、第2の指標値の分布を生成する。
【0163】
ステップS1424において、CPU520は、分布推定部1220として、第2の指標値の分布に基づいて第1の指標値の分布を推定する。
【0164】
ステップS1425において、CPU520は、第2の指標値の分布において第2の指標値が目標範囲外である部分の位置があるか否かを判断する。第2の指標値が目標範囲外である部分の位置がある場合(ステップS1425においてYES)、CPU520は、判別部1240として、クリーニング部材における、第2の指標値が目標範囲外である部位の位置を判別し、処理をステップS1430に進める。そうでない場合(ステップS1425においてNO)、CPU520は、処理をステップS1440に進める。
【0165】
ステップS1430において、CPU520は、クリーニング部材において接触不良が生じた位置を表示器635に表示する。すなわち、CPU520は、出力部1245として上記判別の結果を出力し、クリーニング部材における、第2の指標値が目標範囲外である部位の位置を表示器635に表示する。
図15の画面1500は、代替面213に設けられるセンサー320がy方向にm個の区域に区分され、分布推定動作が実施されたときに表示器635に表示される画面の一例である。画面1500は、m個の区域のうち左からp番目の区域およびq番目の区域a
p,a
qにおいて、第2の指標値が目標範囲外であり、接触不良が生じたことを示す。画面1500が表示器635に表示されることにより、クリーニング部材625と代替部材212との接触不良が生じているときに、クリーニング部材625における、当該接触不良が生じた部位の位置をユーザーに通知できる。これにより、クリーニング動作が実施されるときに、当該位置(例えば、区域a
p,a
qが有するy座標)に対応する、ヘッドノズル面222上の位置に設けられるノズルにおいてクリーニング不良が生じ得ることユーザーに知らせることができる。これにより、クリーニング不良を回避するためにクリーニング部材625をメンテナンスさせるかまたは交換させる動機付けをユーザーに与えることができる。その結果、クリーニング不良に起因する被クリーニング部材630の故障、例えばノズルの目詰まりなどを未然に回避できる。
【0166】
ステップS1435において、CPU520は、不揮発性メモリー605に格納されているデータに予め登録された条件に基づいて、クリーニング条件(
図14において「CL」は、クリーニングに対応)を算出する。より具体的には、第1の指標値の分布と、当該条件とに基づいて、クリーニング条件を算出する。
【0167】
ステップS1440において、CPU520は、決定部1250として、クリーニング条件を決定する。より具体的には、CPU520は、第1の指標値の分布において第1の指標値が閾値範囲外である部分の位置に基づいて、クリーニング部材625が被クリーニング面1262をクリーニングするときのクリーニング条件を決定する。
【0168】
ステップS1445において、CPU520は、決定されたクリーニング条件に基づいてクリーニング動作を開始する。より具体的には、
図13を参照して説明された一連の動作が開始される。例えば、CPU520は、駆動部1210としてのモータードライバー620に、被クリーニング面1262に対してクリーニング部材625を相対的に移動させるように、制御指令を出力する。モータードライバー620は、当該指令に基づいて、被クリーニング面1262に対してクリーニング部材625を相対的に移動させる。
【0169】
ステップS1450において、CPU520は、当該クリーニング動作を終了した後、一連の処理を終了する。
【0170】
[実施形態1の効果]
実施形態に従うクリーニング装置135は、クリーニング動作が実施される前に、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する。より具体的には、クリーニング装置135は、クリーニング部材625と代替部材212との接触の程度を示す第2の指標値を検出することにより、第1の指標値の分布を推定する。これにより、クリーニング動作が実施されるときに変わり得る、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触状態を事前に推定できる。すなわち、被クリーニング面1262においてクリーニング不良が生じ得る位置および時間を推定できる。
【0171】
また、クリーニング装置135は、第1の指標値の分布に基づいて、当該クリーニング条件を決定する。これにより、クリーニング部材625と被クリーニング面1262との接触状態が適切に保つことができる。その結果、クリーニング動作が実施されたにも拘わらず被クリーニング面1262が十分にクリーニングされなかったことに起因して再びクリーニング動作が実施される頻度を減らすことができる。また、特に、クリーニング部材が、クリーニング液を吸収した状態の多孔質体により構成され、当該部材の形状が動作中に変化することによりクリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触状態が変化する場合であっても、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触状態を安定して適切に保つことができる。したがって、クリーニング装置135は、前述した、インクジェットヘッドのクリーニングにおける特有の課題も解決できる。
【0172】
また、クリーニング装置135は、電極(線電極400および点電極500)を用いて、クリーニング部材625と代替面213との接触領域の長さLtを第2の指標値として検出し得る。これにより、クリーニング液を吸収した、多孔質体などの低い硬度のクリーニング部材625が、代替面213に対して低い圧力で接触する場合であっても、クリーニング装置135は、クリーニング部材625と代替面213との接触不足または過剰接触を確実に検知できる。その結果、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触状態(第1の指標値の分布)を推定する際の精度を向上できる。
【0173】
[変形例]
図16および
図17を参照して、クリーニング部材625のごく一部において凹みがあったり異物が付着したりする場合における、第1指標値の分布および第2の指標値の分布について説明する。
【0174】
図16は、ごく一部において凹み1600がある払拭ローラー200を示す図である。
図17は、凹み1600がある払拭ローラー200と代替部材212とが接触したときの第2の指標値の分布1700を示す図である。
【0175】
CPU520は、凹み1600がある払拭ローラー200と代替部材212とを用いて、分布推定動作を実施した。より具体的には、CPU520は、凹み1600がある払拭ローラー200と代替部材212とが接触したときの、接触領域の長さLtを第2の指標値として検出した。
【0176】
CPU520は、当該第2の指標値に基づいて、払拭ローラー200が代替面213に接触してから周期T経過したときの、接触領域の長さLtの分布1700を生成する。分布1700は、区域a1~a6において検出された接触領域の長さLtの時間変化を示す分布である。より具体的には、分布1700は、時間間隔T1~T12において区域a1~a4,a6で検出された接触領域の長さLtと、時間間隔T1~T2,T6~T12において区域a5で検出された接触領域の長さLtとが目標長さ以上である様子を示す。他方、分布1700は、時間間隔T3~T5において区域a5で検出された接触領域の長さLtが、目標長さ未満であることを示す。これは、
図16に示されるように、払拭ローラー200の一部(y座標がy
45~y
56であって、x-z平面において角度θ1を有する部分)に凹み1600があることと整合している。なお、接触領域の長さLtが目標長さ未満であるセル(区域a5および時間T3~T4により指定されるセル)にハッチングが付されている。
【0177】
CPU520は、第2の指標値の分布としての分布1700に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。
図17の例では、CPU520は、分布1700が繰り返された分布を第1の指標値の分布として推定する。そのため、CPU520は、クリーニング動作が実施される場合、区域a5に対応するy座標を有するノズル(ノズル310Gなど)において、時間間隔T3~T5でクリーニング不良が生じ得ると判断する。
【0178】
CPU520は、当該判断の結果に基づいて、クリーニング条件を決定する。CPU520は、例えば、x-z平面において角度θ1を有する部分(
図16(A)において点線により表される部分)がヘッドノズル面222に接触する間(接触した時間の後の時間間隔T3~T5により指定される期間、および当該期間から周期T×n経過した時間(nは、払拭ローラー200の回転数))に、払拭ローラー200をθ方向に回転させたまま、x方向に移動させずに一時的に待機させるようにクリーニング条件を決定する。CPU520は、当該期間が経過した後、払拭ローラー200をx方向に移動させ始めるようにクリーニング条件を決定する。これにより、凹み1600に起因して、被クリーニング面1262においてクリーニング不良が生じることを回避でき、被クリーニング面1262全体を適切にクリーニングできる。
【0179】
上記の説明では、クリーニング部材625のごく一部の位置において凹み1600がある場合について説明したが、同様の位置において異物が付着している場合についても、本変形例を適用できる。その場合、凹み1600に起因して接触不足が生じることに代えて、当該付着した異物に起因して過剰接触が生じる。CPU520は、例えば、当該異物が付着した部分が被クリーニング面1262に接触しないようすることを目的として、払拭ローラー200を+y方向または-y方向にシフトさせた状態になるように、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の相対的なy方向の位置を、予め定められた位置から変更するようにクリーニング条件を決定し得る。CPU520は、当該条件に基づいて、払拭ローラー200に被クリーニング面1262をクリーニングさせる。なお、本変形例は、払拭ローラー200以外のクリーニング部材625、例えばブレードなどに欠け、異物がある場合についても、適用できる。
【0180】
<実施形態2>
実施形態1では、クリーニング部材625が払拭ローラー200である場合のクリーニング装置135を主に説明した。実施形態2では、クリーニング部材625がブレードである場合のクリーニング装置135を説明する。
【0181】
図1~
図6、
図8および
図12~
図15のその他の点について、実施形態2のクリーニング装置135の構成および動作は、実施形態1のクリーニング装置135の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0182】
図18(A)および
図18(B)を参照して、クリーニング部材625として用いられるブレード1800,1802を説明する。
図18(A)は、自由長Lfが均一である場合のブレード1800を示す図である。
図18(A)において、ブレード1800の上面は、xy平面に平行なヘッドノズル面222に対して平行である。ブレード1800のx方向の幅はLwである。
図18(B)は、自由長Lfが均一でない場合のブレード1802を示す図である。
図18(B)において、ブレード1802の上面は、ヘッドノズル面222に対して平行ではない。
図18(A)および
図18(B)の各々において、支持部材1805A,1805Bは、板状のブレード1800,1802を支持している。
図18の例では、ブレード1800,1802は、多孔質部材であるスポンジにより構成され得る。他の局面において、ブレード1800,1802は、多孔質部材と、当該部材とは異なる材質のソリッドゴムなどの部材とが貼り合わせられることにより構成されてもよい。
【0183】
図19(A)は、自由長Lfが均一であるブレード1800が代替面213に接触しているときに検出回路505から出力される信号の一例を示す。
【0184】
払拭ローラー200は、代替面213に接触したとき、線電極400と、点電極500k-1,500k,500k+1とに接触したとする(時間t21)。ブレード1800が代替面213に接触している間、検出回路505における各部分回路506k-1,506k,506k+1は、High信号を出力する(時間t21~時間t22)。ブレード1800が代替面213から離間すると、各部分回路506k-1,506k,506k+1は、High信号の出力を停止する(時間t22)。
【0185】
図19(A)は、代替面213において点電極500k-1,500
k,500
k+1が設けられる区域(区域a1~a6のいずれか)の各々において、接触領域の長さLtが目標長さ以上であることを示す。すなわち、
図19(A)は、各区域において接触不足が生じていないことを示しており、これは、自由長Lfが均一であるということと整合している。
【0186】
図19(B)は、自由長Lfが均一でないブレード1802が代替面213に接触しているときに検出回路505から出力された信号の一例を示す。
【0187】
図19(B)を参照して、ブレード1802は、代替面213に接触すると、線電極400と、点電極500
k,500
k+1とに接触する一方で、点電極500
k-1に接触しない。そのため、部分回路506
k,506
k+1は、High信号を出力する一方で、部分回路506
k-1は、High信号を出力しない(時間t
21)。
【0188】
ブレード1802が代替面213に接触している間、各部分回路506k,506k+1は、High信号を出力する(時間t21~時間t22)。ブレード1802が代替面213から離間すると、各部分回路506k,506k+1は、High信号の出力を停止する(時間t22)。
【0189】
図19(B)は、代替面213において点電極500
k,500
k+1が設けられる区域の各々において、接触領域の長さLtが目標長さ以上であることを示す。また、
図19(B)は、代替面213において点電極500
k-1が設けられる区域において、接触領域の長さLtが目標長さ未満であることも示す。ここで、点電極500
k+1のy座標、点電極500
kのy座標、および点電極500
k-1のy座標は、この順で小さくなる。これは、
図18(B)に示されるように、y座標が小さくなるにつれて、ブレード1802の上面のz座標が小さくなる(自由長Lfが均一ではなく、被クリーニング面1262に対する接触の程度が小さくなる)ことと整合している。
【0190】
図20(A)は、自由長Lfが均一である場合に、ブレード1800が代替面213に接触している間に検出された接触領域の長さLtの分布2000を示す図である。当該結果は、表示器635に表示される。
【0191】
分布2000は、代替面213でy方向に区分される区域a1~a6において、各時間間隔T1~T12で検出された第2の指標値としての接触領域の長さLtの分布を示す。ある局面において、時間間隔T1~T12の合計は、ブレード1800が代替面213に接触してから離間するまでの時間Ttに相当し得る。ブレード1800は、+z方向に移動して代替面213に接触してから離間するまで+x方向に速度vで移動し得る。時間Ttは、例えば、ブレード1800のx方向の幅Lwを速度vで除算した値であり得る。他の局面において、ブレード1800は、代替面213に接触している間に+x方向に移動しなくてもよい。
【0192】
分布2000によると、接触領域の長さLtは、全て目標範囲内である。したがって、分布2000は、ブレード1800と代替部材212との接触状態に関して、接触不足が生じていなかったことを示す。当該結果は、
図18(A)に示されるように、自由長Lfが均一であることと整合している。
【0193】
図20(B)は、自由長Lfが均一でないブレード1802が代替面213に接触している間に検出された接触領域の長さLtの分布2005を示す図である。当該結果は、表示器635に表示される。
【0194】
分布2005は、区域a1~a6において、時間間隔T1~T12の各々で検出された接触領域の長さLtの分布をそれぞれ示す。区域ai(i=1,2,…,6)およびT(j=1,2,…,12)により指定されるセルのうち、接触領域の長さLtが目標長さ未満であるセルにハッチングが付されている。
【0195】
分布2005によると、時間間隔T1~T8において区域a1で検出された接触領域の長さLtは、目標長さ未満である。また、時間間隔T1~T7において区域a2で検出された接触領域の長さLtも、目標長さ未満である。さらに、時間間隔T1~T12において区域a3~a6で検出された接触領域の長さLtは、目標範囲内である。すなわち、分布2005は、y座標が比較的に小さい区域a1,a2において接触不足が生じていることを示している。したがって、分布2005は、
図18(B)に示されるように、y方向において自由長Lfが均一でないこと、すなわち、y座標が小さくなるにつれてブレード1802の上面のz座標が小さくなり、被クリーニング面1262に対する接触の程度が小さくなることと整合している。
【0196】
分布2000または2005は、y座標により指定される区域a1~a6における接触領域の長さLtの時間変化を示す分布である。他の局面において、分布2000または2005は、上記のようにy座標により指定される区域と、ブレード1800,1802の上面のx座標とにより表されてもよい。
図19の場合、ブレード1800,1802の+x方向の移動速度をvとすると、x=v×tの変換式に従い算出されたx座標を表すx軸がt軸に代えて用いられていてもよい。すなわち、分布2000または2005は、2次元の座標に応じた、第2の指標値の分布であってもよい。
【0197】
CPU520は、例えば、ブレード1800,1802が代替面213に接触してから幅Lw移動するまでの、第2の指標値の分布を、分布2000または分布2005として生成する。CPU520は、第2の指標値の分布から、第1の指標値の分布を推定する。例えば、ブレード1800が代替面213に対してx方向に速度vで移動している間に得られる第2の指標値の分布から、接触不足が生じた区域(例えば、区域a1~a6の少なくとも1つ)と当該区域において接触不足が生じた時間とをCPU520は判別できる。CPU520は、代替面213において接触不良が生じた区域と同じy座標を有する、ヘッドノズル面222上の特定の位置において、接触不良によるクリーニングが生じ得ることを示す第1の指標値の分布を、上記判別の結果に基づいて推定する。
【0198】
CPU520は、ヘッドノズル面222上の上記特定の位置において、接触不良によるクリーニング不良が生じ得ると判断した場合、以下のようにクリーニング条件を決定する。CPU520は、例えば、分布2005から、クリーニング回数を1回としてブレード1802を用いてクリーニング動作が実施された場合に、区域a1およびa2が有するy座標と同じy座標を有する、ヘッドノズル面222上の位置でクリーニング不良が生じ得ると判断する。CPU520は、当該判断結果に基づいて、クリーニング回数が2回以上になるようにクリーニング条件を決定する。
図20の例では、CPU520は、クリーニング回数が2回になるようにクリーニング条件を決定する。
【0199】
CPU520は、1回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件を、不揮発性メモリー605に予め登録された条件に基づいて決定する。
【0200】
CPU520は、2回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件を、1回目のクリーニング動作の後に生じ得るクリーニング不良が解消するように決定する。より具体的には、CPU520は、1回目のクリーニング動作における、ブレード1802とヘッドノズル面222の相対的な位置と、2回目のクリーニング動作における、当該相対的な位置とが異なるようにクリーニング条件を決定する。
図22の例では、CPU520は、2回目のクリーニング動作において、1回目のクリーニング動作におけるブレード1802の位置から、ブレード1802をy方向に予め定められた距離移動(シフト)させた状態で、ブレード1802にヘッドノズル面222をクリーニングさせるようにクリーニング条件を決定する。これにより、1回目のクリーニング動作においてクリーニング不良が生じ得る場合であっても、2回目のクリーニング動作において当該クリーニング不良を解消できる。
【0201】
[検証結果]
図19および
図20を参照して、第2の指標値としての接触領域の長さLtに基づいて、クリーニング不良の有無を検証した結果を説明する。発明者らは、自由長Lfが均一であるブレード1800と、自由長Lfが均一でないブレード1802とを用いて、第1の指標値の分布に基づいて決定されたクリーニング条件の下で、クリーニング不良を解消できるか否かを検証するために実験を行った。クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であるか否かを検査するために、ヘッドノズル面222における各ノズルの近傍にセンサー(図示しない)が、実施形態1と同様に設けられた。
【0202】
図18(A)および
図18(B)の各々の場合において、ブレード1800,1802は、その先端にクリーニング液207としての純水を含んだ状態で用いられた。ブレード1800,1802のx方向の厚さは5mmであった。ブレード1800,1802のy方向の長さは50mmであった。ブレード1800,1802を構成する多孔質部材の厚みは5mmであった。ブレード1800がx方向に移動(摺動)する速度は10mmであった。ヘッドノズル面222に対するブレード1800の押し込み量は1.5mmであった。当該押し込み量の基準は、
図18(A)の場合、ブレード1800の上面であり、
図18(B)の場合、ブレード1802の上面のうち左端である。
図18(A)において、自由長Lfは15mmであった。クリーニング装置135がブレード1800を用いて分布推定動作を実施したときに得られた第2の指標値の分布は、分布2000であった。クリーニング装置135がブレード1802を用いて分布推定動作を実施したときに得られた第2の指標値の分布は、分布2005であった。
【0203】
ブレード1800が用いられた場合に関して、CPU520は、分布2000に基づいて、第1の指標値の分布を推定した。当該分布において、第1の指標値としての接触領域の長さLtは全て閾値範囲内であった。CPU520は、不揮発メモリーに予め格納されたクリーニング条件に基づいて、クリーニング動作を実施した。当該クリーニング動作が終了した後、CPU520は、各ノズルの近傍に設けられたセンサーからの出力信号に基づいて、クリーニング部材625とヘッドノズル面222との接触領域の長さLt1を検出した。その結果、ヘッドノズル面222全体において、検出された接触領域の長さLt1は全て目標範囲以内であった。
【0204】
他方、ブレード1802が用いられた場合に関して、CPU520は、分布2005に基づいて、第1の指標値の分布を推定した。CPU520は、当該第1の指標値の分布において、1回目のクリーニング動作において、y座標が比較的小さい区域a1,a2と同じy座標を有する、ヘッドノズル面222上のノズルで接触不足が生じ得ると判断する。したがって、CPU520は、2回目のクリーニング動作においてブレード1802を副走査方向(-y方向)にさらに5mm移動(シフト)させてブレード1802に被クリーニング面1262をクリーニングさせるように、クリーニング条件を決定した。その後、CPU520は、決定された条件に基づいて、ブレード1802に被クリーニング面1262をクリーニングさせた。2回目のクリーニング動作において、ブレード1802を-y方向にシフトさせたこと以外のクリーニング条件(ヘッドノズル面222に対するブレード1802の押し込み量、移動速度など)は、1回目のクリーニング動作と同一であった。
【0205】
2回目のクリーニング動作が終了した後、CPU520は、各ノズルの近傍に設けられたセンサーからの出力信号に基づいて、クリーニング部材625とヘッドノズル面222との接触領域の長さLt1を検出した。その結果、ヘッドノズル面222全体において、検出された接触領域の長さLt1は全て目標範囲以内であった。
【0206】
以上から、発明者らは、クリーニング動作が実施される前に推定された、第1の指標値の分布に基づいてCPU520がクリーニング条件を決定することにより、ブレード1802がヘッドノズル面222全体におけるノズル310を適切にクリーニングできたことを確認した。
【0207】
なお、自由長Lfが一定でないブレード1802がクリーニング部材625として用いられた場合、上記の例とは異なり、1回目のクリーニング動作において+y方向に一律に接触過剰が生じている場合も考えられる。例えば、
図20において、区域a1,a2において時間間隔T1~T7(T8)で接触不足が生じる代わりに、区域a5,a6において時間T1~T7で過剰接触が生じる場合も考えられる。この場合、CPU520は、ヘッドノズル面222に対するブレード1800の押し込み量を、分布推定動作が実施されたときの代替面213に対する押し込み量よりも小さくすることにより、当該方向における過剰接触によるクリーニング過剰を解消してもよい。
【0208】
[実施形態2の効果]
上記の通り、クリーニング部材625がブレード1800,1802である場合においても、クリーニング装置135は、第1の指標値の分布を推定する。クリーニング装置135は、第1の指標値の分布に基づいて、適切なクリーニング条件を決定する。特に、クリーニング装置135は、ブレード1802のように自由長Lfが一定でないことに起因するクリーニング不良を、当該適切なクリーニング条件に基づいて解消できる。
【0209】
[変形例]
上記の例では、自由長Lfが一定でない場合に、CPU520が第1の指標値の分布を推定する場合について説明した。変形例では、
図21および
図22を参照して、ブレード1800の一部に欠け、または異物がある場合に、CPU520が第1の指標値の分布を推定する場合について説明する。
【0210】
図21は、一部に欠け2102があるブレード2100を示す図である。
図22は、欠け2102があるブレード2100が代替面213に接触したときに得られた、接触領域の長さLtの分布2200を示す図である。
【0211】
CPU520は、ブレード2100が代替面213に接触してから時間T
t経過したときの、第2の指標値の分布を、分布2200として生成する。分布2200は、区域a1~a6における、接触領域の長さLtの時間変化を示す。分布2200は、時間間隔T1~T12において区域a1~a4,a6で検出された接触領域の長さLtは、目標長さ以上であったことを示す。対照的に、分布2200は、時間間隔T1~T12において区域a5で検出された接触領域の長さLtは、目標長さ未満であったことを示す。これは、
図21(B)に示されるように、ブレード1800においてy座標がy
45~y
56である位置に、欠け2102があることと整合している。なお、接触領域の長さLtが目標長さ未満であるセル(区域a5により指定されるセル)にハッチングが付されている。
【0212】
CPU520は、第2の指標値の分布としての分布2200に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。
図22の例では、CPU520は、第1の指標値の分布は、分布2200が繰り返された分布であると推定する。CPU520は、当該分布に基づいて、クリーニング動作が実施されるとき、区域a5に対応するy座標を有するノズル(ノズル3100Gなど)において、クリーニング不良が生じ得ると判断する。
【0213】
CPU520は、当該判断の結果に基づいて、クリーニング条件を決定する。CPU520は、例えば、第1の指標値の分布から、クリーニング動作が1回のみ実施された場合に、区域a5と同じy座標を有する、ヘッドノズル面222上の特定のノズルにおいて接触不足によるクリーニング不足が生じ得ると判断する。CPU520は、当該判断の結果に基づいて、クリーニング回数が2回以上となるようにクリーニング条件を決定する。CPU520は、一例として、2回目のクリーニング動作においてブレード2100を副走査方向(+y方向)にさらに5mm移動(シフト)させてブレード2100にヘッドノズル面222をクリーニングさせるように、クリーニング条件を決定し得る。これにより、1回目のクリーニング動作が実施された後に、上記特定のノズルにクリーニング不良が生じ得る場合であっても、2回目のクリーニング動作が実施されることにより、当該特定のノズルを適切にクリーニングできる。その結果、ヘッドノズル面222全体を適切にクリーニングできる。
【0214】
<実施形態3>
実施形態1および実施形態2では、CPU520は、線電極400と点電極500kとの間に電流が流れたか否かに基づいて、クリーニング部材625が代替面213に接触したと判断する。他方、実施形態3では、CPU520は、クリーニング部材625が接触している部材1208としての電極(線電極400および点電極500)の間のインピーダンスの変化に基づいて、クリーニング部材625が代替面213に接触したと判断する。
【0215】
図1~4、
図6~
図22のその他の点について、実施形態3のクリーニング装置135の構成および動作は、実施形態1,2のクリーニング装置135の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0216】
図23~
図25を参照して、代替面213におけるクリーニング部材625と代替部材212との接触領域の長さLtを検出するための原理を説明する。
【0217】
図23は、互いに隣接する線電極400および点電極500の間のインピーダンスの変化に基づいて、接触領域の長さLtを検出するための回路の構成を示す図である。検出回路2300は、部分回路2305
k-1,2305
kおよび2305
k+1を含む。部分回路2305
kは、抵抗素子R
kと、増幅および絶対値回路P
kと、コンデンサC
kと、コンパレーターCP
kとを含む。線電極400と、点電極500
kとの間のx方向の間隔Iは、目標長さと等しい2mmに設定されている。点電極500
kと点電極500
k+1との間のy方向の間隔Idは、間隔Iの1.2倍以上であることが望ましいため、実施形態では、間隔Idは、間隔Iの5倍である10mmに定められた。
【0218】
払拭ローラー200またはブレード1800などのクリーニング部材625が、代替面213において線電極400および点電極500kの両方に接触するとき、発振器2303からのAC信号は、線電極400と、クリーニング部材625と、点電極500kとを介して、部分回路2305kに入力される。
【0219】
増幅および絶対値回路Pkは、入力された、微少な量のAC信号を増幅した後、当該信号を増幅、整流化および平滑化して信号を出力する。コンパレーターCPkは、出力された信号の値が、予め定められた電圧値VR以上であるか否かを判断する。コンパレーターCPkは、出力された信号の電圧値が電圧値VR以上である場合、High信号を出力する。他方、コンパレーターCPkは、出力された信号の電圧値が電圧値VR未満である場合、High信号を出力しない(Low信号を出力する)。このように、コンパレーターCPkは、出力された信号の電圧値が電圧値VR以上である場合のみHigh信号を出力する。出力された信号は、PIO510を介してCPU520に伝わる。
【0220】
CPU520は、当該信号に基づいて、線電極400および点電極500kの両方にクリーニング部材625が接触したと判断する。CPU520は、部分回路506kに接続される点電極500kが設けられている区域(例えば、区域a1~a6のいずれか)で、払拭ローラー200が代替面213に接触したと判断する。CPU520は、当該区域における、接触領域の長さLtを、目標長さに等しい間隔I以上であると検出する。CPU520は、検出された接触領域の長さLt(第2の指標値)に基づいて、第2の指標値の分布を生成する。CPU520は、第2の指標値の分布に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。
【0221】
図24は、クリーニング部材625が代替面213における絶縁層に接触したときに、隣接する電極400および電極500
kに電流が流れることを示す図である。
【0222】
図24において、代替面213に設けられる、線電極400および点電極500
kの上に絶縁層2400が形成されている。線電極400および点電極500
kの間隔Iは、目標長さである2mmに設定されている。絶縁層2400は、ポリイミド、エポキシ樹脂または二酸化ケイ素など一般的な材料により構成される。
図24の例では、ポリイミドからなるテープが、線電極400および点電極500
kの上に絶縁層2400として貼り付けられている。
【0223】
図25は、クリーニング部材625が絶縁層2400に接触したときに、線電極400および点電極500
kの間のインピーダンスが変化することを示す図である。
【0224】
クリーニング部材625が線電極400および点電極500
kに接触していないとき、線電極400および点電極500
kの間において、絶縁層2400の誘電成分C
A,C
Bと空気などの誘電成分C
C(浮遊容量)とが、インピーダンスZを有する直列回路を構成する(状態1)。ここで、クリーニング部材625は、静電容量成分および抵抗成分を有する。クリーニング部材625の静電容量成分は、空気層の静電容量成分C
Cに比べて高い。また、クリーニング部材625の抵抗成分は、空気層の抵抗成分に比べて低い。そのため、クリーニング部材625が線電極400(第1の電極)および点電極500
k(第2の電極)の両方に接触するとき、それらの電極の間のインピーダンスの静電容量成分および抵抗成分は、クリーニング部材625がそれらの電極の両方に接触していないときの静電容量および抵抗成分に比べて、それぞれ大きくおよび小さくなる。また、クリーニング部材625が線電極400および点電極500
kの両方に接触するとき、絶縁層2600の誘電成分C
A,C
Bとクリーニング部材625の抵抗成分R
Aとが直列回路を形成する(状態2)。このように代替面213に対してクリーニング部材625が接触すると(状態1が状態2に変化すると)、線電極400および点電極500
kとの間のインピーダンスZがインピーダンスZ1に変化する。
図23の検出回路2300は、当該変化を検出して信号を出力する。CPU520は、当該信号に基づいて、クリーニング部材625が代替面213に接触していることを判断する。
【0225】
上記の説明において、CPU520は、検出回路2300からの出力信号に基づいて、互いに隣接する線電極400と点電極500kとの間のインピーダンスZがインピーダンスZ1に変化することを検出する。ここで、インピーダンスZの変化は、インピーダンスZの抵抗成分の変化であってもよいし、インピーダンスZの静電容量成分の変化であってもよい。
【0226】
例えば、発振器2303からのAC信号の周波数が十分に高い場合、CPU520は、クリーニング部材625の静電容量成分によるインピーダンスZの変化を検出しにくい一方で、RAによるインピーダンスZの変化を検出しやすい。上述したように、クリーニング部材625が線電極400と点電極500kの両方に接触するとき、それらの電極の間の抵抗成分は、クリーニング部材625がそれらの電極の両方に接触していないときの抵抗成分に比べて小さくなる。したがって、それらの電極の間に電流が流れやすくなる。CPU520は、当該電流が流れることに起因してコンパレーターCPkから出力される信号に基づいて、RAによるインピーダンスZの変化を検出する。これにより、CPU520は、クリーニング部材625が被クリーニング面1262に接触したことを判断する。
【0227】
これに対して、発振器2303からのAC信号の周波数が十分に低い場合、CPU520は、RAによるインピーダンスZの変化を検出しにくい一方で、クリーニング部材625の静電容量成分によるインピーダンスZの変化を検出しやすい。上述したように、クリーニング部材625が線電極400と点電極500kの両方に接触するとき、それらの電極の間の静電容量成分は、クリーニング部材625がそれらの電極の両方に接触していないときの静電容量成分に比べて大きくなる。したがってそれらの電極の間に変位電流が流れやすくなる。CPU520は、当該電流が流れることに起因してコンパレーターCPkから出力される信号に基づいて、クリーニング部材625の静電容量成分によるインピーダンスZの変化を検出する。これにより、CPU520は、クリーニング部材625が代替面213に接触したことを判断できる。
【0228】
発明者らは、クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200(
図7)と、周方向に凹みが有る払拭ローラー200(
図9)とを用いて、電極間のインピーダンスZの変化に基づいて、クリーニング部材625と代替部材212との接触不良の有無を判断できるか否かを検証するために実験を行った。当該実験において用いた払拭ローラー200の直径、移動速度および回転速度などは、実施形態1の場合と同じであった。
【0229】
また、実施形態1の場合と同様に、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であるか否かを検査するために、ヘッドノズル面222における各ノズルの近傍にセンサー(図示しない)が設けられた。
【0230】
クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200を用いた場合、CPU520は、代替面213全体において、接触不良は発生しなかった。より具体的には、第2の指標値の分布は、分布1100と同様の分布であった。CPU520は、得られた第2の指標値分布に基づいて第1の指標値の分布を推定した。CPU520は、当該第1の指標値の分布に基づいてクリーニング条件を決定し、クリーニング動作を実施した。CPU520は、ヘッドノズル面222全体においてクリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であることを、各ノズルの近傍にセンサーから出力される信号から判断した。
【0231】
他方、クリーニング部材625として、周方向に凹みが有る払拭ローラー200を用いた場合、代替面213の一部において、接触不足が生じていた。より具体的には、第2の指標値の分布は、分布1105と同様の分布であった。CPU520は、第2の指標値の分布としての分布1105に基づいて、第1の指標値の分布を推定した。
【0232】
例えば、CPU520は、当該分布において、払拭ローラー200がヘッドノズル面222に接触して矢印830の方向に移動し始めてから経過した時間が時間間隔T3にある間(払拭ローラー200が、ヘッドノズル面222に接触してからv×t23~v×t34の距離移動した範囲の位置にある間)において、接触領域の長さLt1(第1の指標値)が目標範囲の下限値未満になると推定する。また、nを払拭ローラー200の回転数とし、払拭ローラー200の回転周期を周期Tとすると、当該分布は、当該位置から+x方向にn×v×Tの距離離れた位置においても、接触領域の長さLt1が目標範囲未満になり得ると判断する。
【0233】
すなわち、CPU520は、これらの位置において、払拭ローラー200とヘッドユニット105との接触不足によるクリーニング不足が生じ得ると判断する。CPU520は、当該判断の結果に基づいて、クリーニング動作が1回のみ実施される場合には、当該クリーニング不足を解消できないと判断し、クリーニング回数が2回以上となるようにクリーニング条件を決定した。
【0234】
実施形態では、CPU520は、2回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件ついて、1回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件と比較して、押し込み量を1.5mmから2.0mmに増やし、相対的な移動速度を10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げてクリーニング動作を実施するようにクリーニング条件を決定した。1回目および2回目のクリーニング動作が実施された後、CPU520は、上述した、各ノズルの近傍に設けたれたセンサーから出力される信号に基づいて、クリーニング動作が実施されていた間に各ノズルの近傍で検出された接触領域の長さLt1を取得した。その結果、ヘッドノズル面222全体において、接触領域の長さLt1が目標長さ以上である状態でクリーニング動作が実施されていたことを確認できた。すなわち、発明者らは、CPU520が、第1の指標値の分布に基づいてクリーニング条件を決定することにより、クリーニング不良が解消されたことを確認できた。
【0235】
[実施形態3の効果]
クリーニング装置135は、代替面213に設けられる電極の間のインピーダンスZの変化に基づいて、接触領域の長さLtを第2の指標値として検出する。CPU600は、電極の間のインピーダンスにおける静電容量成分の変化を検出することにより、クリーニング部材625または絶縁層2600の抵抗値が高かったり、電極400,500kの表面をコーティングするためのコート層が形成されている場合であっても、クリーニング部材625が被クリーニング面1262に接触したことを判断できる。
【0236】
<実施形態4>
実施形態1~4では、検出部1205が、代替面213における線電極400および点電極500
kの間隔Iに基づいて接触領域の長さLtを第2の指標値として検出する場合を説明した。実施形態4では、
図26~
図29を参照して、検出部1205が、クリーニング部材625と代替面213との接触の検出時間に基づいて、接触領域の長さLtを検出する場合を説明する。
【0237】
図1~
図3、
図6、
図7、
図12~
図15のその他の点について、実施形態5のクリーニング装置135の構成および動作は、実施形態1のクリーニング装置135の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0238】
図26および
図27は、接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。
図28は、クリーニング部材625が点電極対2600
kに接触しているときに検出される検出時間に基づいて、接触領域における長さLtをCPU520が検出するための回路の一例を示す図である。
【0239】
図26を参照して、代替面213に対してクリーニング部材625が相対的に移動する速度v、点電極対2600
kの直径d、接触領域の長さLtおよび検出時間T
kの間の関係式は、T
k=(Lt+d)/vの式により表される。クリーニング部材625が点電極対2600
kに接触したときに、点電極対2600
kにおける各点電極の間で電流が流れ得る。したがって、CPU520は、クリーニング部材625が点電極対2600
kに接触していたときの接触領域の長さLtを検出時間T
kに基づいて検出できる。検出部1205としての機能は、例えば、
図27の検出回路2700から出力される信号をCPU520が解析することにより実現される。
【0240】
図27を参照して、代替面213に対するクリーニング部材625の相対的な移動方向(+x方向)に沿って、部材1208としての、点電極対2600
k,2600
k+1,…が設けられている。点電極対2600は、点電極2600A
k,2600B
kを含む。点電極対2600の数は6であった。x方向における、各点電極対の距離Isは3mmであった。
【0241】
点電極2600Ak, 2600Ak+1…は、代替面213に設けられる。代替面213において点電極2600Ak, 2600Ak+1…が設けられている区域は、区域ai(i=1,2,…6)に対応し得る。点電極2600Akと点電極2600Bkとの間に電流が流れるように、基板401にスルーホールが設けられた。当該電流は、検出回路2700に含まれるTTL素子TTkを介して、CPU520へ伝わる。
【0242】
また、クリーニング部材625が、点電極対2600
k,2600
k+1…の2つ以上に同時に接触しないように、x方向における、点電極対2600
k,2600
k+1の間隔Isは、目標長さの1.2倍以上であることが望ましい。そこで、
図28の例では、当該間隔は、目標長さの1.5倍である3mmに設定されている。
【0243】
検出回路2700は、抵抗素子R
kと、TTL素子TT
kと、バイナリーカウンター2805
k回路とを含む。TTL素子TT
kは、点電極対2600
kから入力された信号をTTL信号に変換する。クリーニング部材625が点電極対2600
kの両方に接触している間(点電極対2600
kを中心にx方向に幅2Lt+dの範囲内をクリーニング部材625が移動している間)、信号源DC1からの信号がTTL素子TT
kに伝わる。TTL素子TT
kは、High信号を出力する(
図27(B)の時間t
31)。バイナリーカウンター回路2805
kは、TTL素子TT
kから出力されるHigh信号を、基準パルスを用いてカウントする。
【0244】
クリーニング部材625が点電極対2600
kから離れて、点電極対2600
kに接触しなくなると(
図27(B)時間t
32)、信号源DC1からの信号がTTL素子TT
kに伝わらない。TTL素子TT
kは、High信号を出力しない。CPU520は、PIO510を介して上記カウント値を取得する。2進数により表される当該カウント値は、クリーニング部材625と代替面213との接触の検出時間T
k(クリーニング部材625が点電極対2600
kに接触していた時間)に比例する。CPU520は、取得した当該カウント値に基づいて、接触領域の長さLtを算出(検出)する。より具体的には、CPU520は、High信号が出力されていた時間である検出時間T
kに基づいて、上述した関係式から接触領域の長さLtを検出する。
【0245】
CPU520は、検出された接触領域の長さLtが目標範囲内であるか否かを判断する。検出時間Tkに基づく接触領域の長さLtが目標範囲の上限値よりも大きい場合、点電極2600kが設けられている区域(例えば、a1~a6のいずれか)において過剰接触が生じたとCPU520は判断する。検出時間Tkに基づく接触領域の長さLtが目標範囲の下限値よりも小さい場合、点電極2600kが設けられている区域において接触不足が生じたとCPU520は判断する。
【0246】
図29を参照して、CPU520が検出時間T
kに基づいて接触領域の長さLtを検出したときの、接触領域の長さLtの分布を説明する。
図29は、検出時間T
kに基づいて検出された接触領域の長さLtの分布2900を示す図である。
【0247】
CPU520は、ブレード1800を用いて分布推定動作を実施し、第2の指標値の分布として分布2000を生成する。CPU520は、例えば、第1の指標値の分布を、第2の指標値の分布が繰り返された分布と推定する。CPU520は、分布推定動作が実施されたときの、代替面213に対するブレード1800の押し込み量および回転速度などの条件と同一のクリーニング条件を、クリーニング動作に適用できると判断する。CPU520は、当該同一の条件の下で、クリーニング動作を実施する。
【0248】
また、CPU520は、ブレード1802を用いて分布推定動作を実施した。CPU520は、例えば、第2の指標値の分布として分布2900を生成する。分布2900によると、時間間隔T1~T8において区域a1で、クリーニング部材625と代替部材212との接触が不足している。また、時間間隔T1~T7において区域a2で、クリーニング部材625と代替部材212との接触が不足している。さらに、時間間隔T1~T3において区域a6で、クリーニング部材625と代替部材212との接触が過剰である。
【0249】
CPU520は、分布2900から、第1の指標値の分布を推定する。CPU520は、当該第1の指標値の分布に基づいて、クリーニング動作が1回のみ実施される場合、区域a1,a2と同じy座標を有する、ヘッドノズル面222上の位置において時間間隔T1~T7(T8)で接触不足が生じ得ると判断する。また、CPU520は、区域a6において過剰接触が生じ得ると判断する。そこで、CPU520は、クリーニング回数が2回以上になるようにクリーニング条件を決定する。
図20の例では、CPU520は、クリーニング回数が2回になるようにクリーニング条件を決定する。
【0250】
CPU520は、1回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件を、不揮発性メモリー605に予め登録された条件に基づいて決定する。また、CPU520は、2回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件を、1回目のクリーニング動作の後に生じ得るクリーニング不良が解消するように決定する。CPU520は、例えば、1回目のクリーニング動作における、ヘッドノズル面222に対するブレード1802の相対的な位置よりも副走査方向(-y方向)に所定の距離移動(シフト)させた状態で、2回目のクリーニング動作においてブレード1802に被クリーニング面1262をクリーニングさせるように、クリーニング条件を決定する。
【0251】
[検証結果]
発明者らは、自由長Lfが均一であるブレード1800と、自由長Lfが均一でないブレード1802とを用いて、接触領域の長さLtの分布に基づいて決定されたクリーニング条件の下で、クリーニング不良を解消できるか否かを検証するために実験を行った。また、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であるか否かを検査するために、ヘッドノズル面222における各ノズルの近傍にセンサー(図示しない)が、実施形態1と同様に設けられた。
【0252】
CPU520は、ブレード1800を用いて分布推定動作を実施した場合、第2の指標値の分布は、分布2000と同様の分布であった。CPU520は、分布2000が繰り返された分布を第1の指標値の分布として推定した。CPU520は、分布推定動作が実施されたときの、代替面213に対するブレード1800の押し込み量および回転速度などの条件と同一のクリーニング条件を、クリーニング動作に適用した。CPU520は、当該クリーニング条件の下で、クリーニング動作を実施した。
【0253】
当該クリーニング動作が実施された後、CPU520は、各ノズルの近傍に設けられたセンサーからの出力信号に基づいて、各ノズルの近傍における接触領域の長さLt1を検出した。その結果、ヘッドノズル面222全体において、検出された接触領域の長さLt1は全て目標範囲以内であった。
【0254】
他方、CPU520は、ブレード1802を用いて分布推定動作を実施した。当該分布推定動作において生成された第2の指標値の分布は、分布2900と同様の分布であった。CPU520は、分布2900が繰り返された分布を第1の指標値の分布として推定した。
【0255】
CPU520は、当該分布から、区域a1,a2と同じy座標を有するヘッドノズル面222上のノズルにおいて時間間隔T1~T7(T8)でクリーニング不足が生じないように、および、区域a6と同じy座標を有するヘッドノズル面222上のノズルにおいてクリーニング過剰が生じないように、クリーニング条件を決定した。
【0256】
より具体的には、CPU520は、クリーニング回数が2回になるようにクリーニング条件を決定し、2回目のクリーニング動作における他のクリーニング条件を、1回目のクリーニング動作の後に生じ得るクリーニング不良が解消するように決定した。上記の検証において、CPU520は、2回目のクリーニング動作においてブレード1802を副走査方向(+y方向)にさらに5mm移動(シフト)させて被クリーニング面1262をクリーニングさせるように、クリーニング条件を決定した。その後、CPU520は、決定された条件に基づいて、ブレード18002にヘッドノズル面222をクリーニングさせた。2回目のクリーニング動作において、ブレード1802を+y方向にシフトさせたこと以外のクリーニング条件(ヘッドノズル面222に対するブレード1900の押し込み量、移動速度など)は、1回目のクリーニング動作と同一であった。
【0257】
2回目のクリーニング動作が終了した後、CPU520は、各ノズルの近傍に設けられたセンサーからの出力信号に基づいて、クリーニング部材625とヘッドノズル面222との接触領域の長さLt1を検出した。その結果、ヘッドノズル面222全体において、検出された接触領域の長さLt1は全て目標範囲以内であった。
【0258】
以上のように、発明者らは、第1の指標値の分布に基づいてCPU520がクリーニング条件を決定することにより、クリーニング不足およびクリーニング過剰が生じることを回避でき、ヘッドノズル面222全体を適切にクリーニングできた確認した。
【0259】
[実施形態4の効果]
クリーニング装置135は、クリーニング部材625と代替面213との接触の検出時間に基づいて、接触領域の長さLtを第2の指標値として検出する。ここで、検出時間Tkをカウントするための基準パルスの幅が小さく設定されるにつれて、接触領域の長さLtが検出されるときの感度をより高くできる。これにより、第2の指標値を検出するときの精度を向上できる。したがって、第1の指標値の分布に基づいて、被クリーニング面1262においてクリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触不足または過剰接触が生じ得る位置を推定する精度を向上できる。その結果、当該推定の結果に基づいて最適なクリーニング条件を決定でき、より適切なクリーニング動作を実施できる。
【0260】
<実施形態5>
実施形態1,2では、検出部1205が、クリーニング部材625が接触している部材1208としての、線電極400および点電極500kの間の距離に基づいて、接触領域の長さLtを検出する場合を主に説明した。実施形態3では、検出部1205が、接触領域1207の複数の箇所における、代替面213とクリーニング部材625との接触の有無に基づいて、接触領域の長さLtを検出する場合を説明する。
【0261】
図1~
図3,
図5~
図7、
図9、
図12~
図15のその他の点について、実施形態3のクリーニング装置135の構成および動作は、実施形態1,2のクリーニング装置135の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0262】
図30を参照して、接触領域の長さLtを検出するための原理を説明する。
図30は、実施形態5において接触領域の長さLtを検出するためのセンサー320のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0263】
図30において、センサー320は、区域a1~anによりn個の区域に区分される。センサー320は、基板3005と、各区域ai(i=1,2,…n)において、線電極400
iと、点電極500
i1,…,500
ik-1,500
ik,…500
ih(k=1,2,…h)とを備える。基板3005は、CPU520が接触領域の長さLtを検出するために、
図4の基板401に代えて用いられる。点電極500
i1,…,500
ik-1,500
ik,…500
ihは、クリーニング部材625が移動するx方向に沿ってこの順で設けられている。
【0264】
基板3005には、複数の点電極500
ikにそれぞれ対応する複数のスルーホール(図示しない)が設けられている。各スルーホールは、線電極400
iおよび点電極500
ikと検出回路との間に電流が流れるようにするために設けられる。これにより、線電極400
iおよび点電極500
ikと、クリーニング部材625とが接触したときに、それらの電極とクリーニング部材625とが接触したことを示す信号は、当該検出回路に伝わる。ここで、当該検出回路は、
図5の検出回路505においてx方向とy方向とが入れ替えられた回路である。各区域aiに設けられる点電極500
ikは、当該回路において、
図5の点電極500
kに対応し得る。
【0265】
実施形態5では、x方向における点電極500ikと点電極500ik+1との距離Ixが目標長さ未満(例えば、目標長さの1/2未満)となるように設けられている。また、点電極500ikの直径はdである。
【0266】
図30において、クリーニング部材625が線電極400
iおよび点電極500
ikに接触すると、点電極500
ikに接続された部分回路は、
図5の部分回路506
kと同様に、high信号を出力する。CPU520は、high信号を受け付けることにより、クリーニング部材625が線電極400
iと点電極500
ikとに接触していることを判断できる。
【0267】
ここで、クリーニング部材625が、区域aiにおいて、線電極400iおよび各点電極500i1,,…500ik-1,500ikに接触している場合を想定する。クリーニング部材625がこれらの電極に接触すると、これらの点電極に接続された各部分回路は、high信号を出力する。したがって、CPU520は、クリーニング部材625が線電極400iと点電極500i1,…500ik-1,500ikとに接触していることを判断できる。
【0268】
また、上記の場合、各点電極500ik+1,…,500ihに接触される部分回路は、high信号を出力しない。したがって、CPU520は、クリーニング部材625が線電極400iと点電極500ik+1,…,500ihとに接触していないことを判断できる。このように、CPU520は、各部分回路からhigh信号を受け付けたか否かに基づいて、接触領域1207での、x方向での複数の箇所(部材1208としての点電極500i1,…500ik,…500ihが設けられる箇所)の各々における、代替面213とクリーニング部材625との接触の有無を判断する。
【0269】
CPU520は、当該複数の箇所での、代替面213とクリーニング部材625との接触の有無に基づいて、第2の指標値としての接触領域の長さLtを検出する。クリーニング部材625が、区域aiにおいて、線電極400iおよび各点電極500i1,,…,500ikに接触している場合、CPU520は、(k-1)×Ix+(k-2)×dの式に従う所定の演算処理により接触領域の長さLtを検出する。なお、距離Ix、直径dの値は、不揮発性メモリー605に格納されている。
【0270】
CPU520は、検出された接触領域の長さLtに基づいて、接触領域の長さLtが閾値範囲内であるか否かを判断する。接触領域の長さLtが閾値範囲未満であるとき、CPU520は、クリーニング部材625と代替部材212との接触の程度が不足していると判断する。接触領域の長さLtが閾値範囲以上であるとき、CPU520は、クリーニング部材625と代替部材212との接触の程度が過剰であると判断する。
【0271】
CPU520は、検出された接触領域の長さLtに基づいて、第2の指標値の分布を生成し、第1の指標値の分布を推定する。以降の処理は、実施形態1において説明した処理と同様である。したがって、詳細な説明を繰り返さない。
【0272】
[実施形態5の効果]
クリーニング装置135は、クリーニング部材625が移動するx方向に沿う複数の箇所における接触の有無に基づいて、第2の指標値としての接触領域の長さLtを検出する。当該複数の箇所の間隔(例えば、点電極500ikおよび500ik+1の間の間隔Ix)が小さく設定されるにつれて、接触領域の長さLtが検出されるときの感度をより高くできる。これにより、第2の指標値を検出するときの精度を向上できる。したがって、第1の指標値の分布に基づいて、被クリーニング面1262においてクリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触不足または過剰接触が生じ得る位置を推定する精度を向上できる。その結果、当該推定の結果に基づいて最適なクリーニング条件を決定でき、より適切なクリーニング動作を実施できる。
【0273】
<実施形態6>
実施形態1~5におけるクリーニング装置135は、クリーニング部材625が代替部材212に接触したときに検出される第2の指標値に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。実施形態6におけるクリーニング装置135は、クリーニング部材625を代替部材212に接触させることなく、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度を示す第1の指標値の分布を推定する。
【0274】
図31(A)および
図31(B)を参照して、実施形態6において第1の指標値の分布を推定するための原理を説明する。
図31(A)および
図31(B)は、CPU520がクリーニング部材625を代替部材212を用いることなく第1の指標値の分布を推定することを説明するための図である。
【0275】
クリーニング装置135は、分布推定用部材3100を備える。分布推定用部材3100は、第1の指標値の分布を推定するための部材であり、代替部材212を含む概念の部材である。分布推定用部材3100は、代替部材212のようにクリーニング部材625により接触されることを必ずしも必要としない。分布推定用部材3100は、ヘッドノズル面222に対する、z方向の距離が既知である基準面3101を有する基準部材3103を含む。分布推定用部材3100は、基準面3101とクリーニング部材625との間の距離Lzを測定するための部材1208としての光学センサー3102を有する。
【0276】
光学センサー3102は、距離Lzを測定することにより、クリーニング部材625の形状を光学的に読み取る(スキャンする)。例えば、クリーニング部材625に凹み905、欠け1600または異物などがある場合における距離Lzは、それらがない場合における距離Lzと異なるので、光学センサー3102は、測定された距離Lzに基づいて、クリーニング部材625の形状を光学的に読み取ることができる。
【0277】
CPU520は、当該読み取りの結果に基づいて、クリーニング部材625の形状を取得する。CPU520は、取得された当該形状(距離Lz)に基づいて、クリーニング部材625が被クリーニング面1262に接触したときに検出される第1の指標値(例えば、接触領域の長さLt1)の分布を推定する。より具体的には、CPU520は、読み取られた形状を有するクリーニング部材625が所定の押し込み量の条件の下で被クリーニング面1262に接触した場合に、被クリーニング面1262にセンサーが設けられているときに検出される第1の指標値の分布を推定する。例えば、CPU520は、当該所定の押し込み量の条件の下での第1の指標値と距離Lzとの関係を予め実験などにより定めたデータテーブルに基づいて、測定された距離Lzを第1の指標値に変換する。当該データテーブルは、不揮発性メモリーに格納されている。CPU520は、当該変換された第1の指標値に基づいて、第1の指標値の分布を推定する。このように、CPU520(分布推定部1220)は、分布推定用部材3100を用いることにより、クリーニング部材625を接触させるための代替部材212を用いることなく第1の指標値の分布を推定してもよい。
【0278】
また、光学センサー3102は、
図31(A)に示されるように、基準部材3103と一体として設けられなくてもよい。例えば、
図31(B)に示されるように、光学センサー3102を構成する発光ユニット3102Aおよび受光ユニット3102Bは、基準部材3103とは別個に設けられていてもよい。
【0279】
図31(B)を参照して、基準面3101は、ヘッドノズル面222から-z方向に2mm離れた位置に設けられた。基準部材3103として、黒塗りしたPP(Polypropylene)により構成される樹脂ブロックを用いた。クリーニング部材625と基準面3101との間の隙間に光が通過するように、6つの発光素子(フォトダイオード)を含む発光ユニット3102Aが設けられた。当該6つの発光素子は、z方向に沿って設けられた。また、クリーニング部材625を挟んで発光ユニット3102Aに対向する位置に、透過光量を測定するための6つの受光素子を含む受光ユニット3102Bが設けられた。当該6つの発光素子も、上記6つの発光素子と同様に、z方向に沿って設けられた。発光ユニット3102Aおよび受光ユニット3102Bは、部材1208に対応し得る。
【0280】
CPU520は、発光ユニット3102Aにより発光された発光量と、受光ユニット3102Bにより測定された透過光量とに基づいて、距離Lzを算出する。例えば、CPU520は、当該受光量および当該透過光量と距離Lzとの関係を予め実験などにより定めたデータテーブルに基づいて距離Lzを算出する。CPU520は、算出された距離Lzに基づいて、
図31(A)の場合と同様に、第1の指標値の分布を推定する。
【0281】
なお、例えば、クリーニング部材625が払拭ローラー200のような回転体である場合、光学センサー3102は、クリーニング部材625が回転している間の距離Lzの変化を測定してもよい。また、クリーニング部材625がブレード1800である場合、クリーニング部材625がxy平面を移動している間の距離Lzの変化を測定してもよい。
【0282】
[検証結果]
発明者らは、分布推定用部材3100を用いて推定された第1の指標値の分布に基づくクリーニング条件に従って実施されたクリーニング動作が適切であるか否かを検証するために実験を行った。クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200(
図7)と、周方向に凹みが有る払拭ローラー200(
図9)とを用いた。当該実験において用いた払拭ローラー200の直径、移動速度および回転速度などは、実施形態1の場合と同じであった。
【0283】
また、実施形態1の場合と同様に、クリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であるか否かを検査するために、ヘッドノズル面222における各ノズルの近傍にセンサー(図示しない)が設けられた。
【0284】
クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200を用いた場合、推定された第1の指標値の分布は、実施形態1において当該ローラーを用いた検証で推定された分布と同様であった。より具体的には、当該第1の指標値の分布は、分布1100が繰り返された分布であった。CPU520は、推定された分布に基づくクリーニング条件に従い、クリーニング動作を実施した。CPU520は、ヘッドノズル面222全体においてクリーニング部材625と被クリーニング部材630との接触の程度が適切であることを、各ノズルの近傍にセンサーから出力される信号から判断した。
【0285】
他方、クリーニング部材625として、周方向に凹みが有る払拭ローラー200を用いた場合も、第1の指標値の分布は、実施形態1において当該ローラーを用いた検証で推定された分布と同様であった。CPU520は、当該第1の指標値の分布に基づいて、クリーニング動作が1回のみ実施される場合には、当該クリーニング不足を解消できないと判断し、クリーニング回数が2回以上となるようにクリーニング条件を決定した。
【0286】
より具体的には、CPU520は、2回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件について、1回目のクリーニング動作におけるクリーニング条件と比較して、押し込み量を1.5mmから2.0mmに増やし、相対的な移動速度を10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げてクリーニング動作を実施した。1回目および2回目のクリーニング動作が実施された後、CPU520は、上述した、各ノズルの近傍に設けたれたセンサーから出力される信号に基づいて、各ノズルの近傍において検出された接触領域の長さLt1を取得した。その結果、ヘッドノズル面222全体において、接触領域の長さLt1が目標長さ以上である状態でクリーニング動作が実施されたことを確認できた。すなわち、発明者らは、CPU520が、第1の指標値の分布に基づいてクリーニング条件を決定することにより、クリーニング不良が解消されたことを確認できた。
【0287】
[実施形態6の効果]
実施形態6に従うクリーニング装置135は、分布推定用部材3100を用いることにより、クリーニング部材625を代替部材212に接触させることなく、第1の指標値の分布を推定する。これにより、クリーニング装置135は、クリーニング部材625と代替部材212とを接触させることにより第2の指標値を直接的に検出することが困難な場合であっても、第1の指標値の分布を推定できる。したがって、そのような場合であっても、クリーニング装置135は、推定された、第1の指標値の分布に基づく最適なクリーニング条件の下で、被クリーニング面1262全体を適切なクリーニングできる。
【0288】
[実施形態における多孔質弾性体およびインクの組成について]
各実施形態における多孔質弾性材は、ウレタンおよびオレフィンなどに発泡剤が加えられることにより形成された発泡構造を含み得る。多孔質弾性材は、特に、微小なセルが連続した連泡構造を有することが望ましい。多孔質弾性材は、例えば抽出法により形成され得る。主材料中に気孔形成材が混練り分散されて型に流し込まれることにより溶剤が飛ばされて成形した後に、気孔形成材が抽出される結果、連続多孔体が形成される。払拭ローラー200は、これらの多孔質弾性体を回転軸上に形成している。
【0289】
また、各実施形態では、水系顔料のマゼンタインクが用いられた。水系のインクは、どんなインクでも本実施形態の効果を奏すると考えるが、顔料系のインクは、多孔質部材の内部に残留しやすく、当該効果を奏しやすい。実施形態において用いられたインクは、市販の水系マゼンタ顔料インクであり、当該インクの組成は、一般的なものである。当該インクにおいて、着色剤としてのキナクリドン系の顔料と、溶媒としての水とが多く使用されている。当該インクにおいて、当該着色剤の分散剤、メディアにインクを浸透させる浸透剤、目詰まりを防止するための乾燥防止剤としての2価または3価のアルコール、PH(Power of Hydrogen)調整剤、および防腐剤などがさらに含まれている。
【0290】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0291】
100 画像形成装置、105 ヘッドユニット、135 クリーニング装置、200 払拭ローラー、212 代替部材、213 代替面、222 ヘッドノズル面、320 センサー、400 線電極、500 電極、625 クリーニング部材、630 被クリーニング部材、1205 検出部、1207,1265 、1210 駆動部、1215 制御部、1218 分布生成部、1220 分布推定部、1240 判別部、1245 出力部、1250 決定部、1262 被クリーニング面、Lt,Lt1 接触領域の長さ。