(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】光トランシーバおよび光トランシーバの制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 25/49 20060101AFI20250311BHJP
H03M 5/12 20060101ALI20250311BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20250311BHJP
H04B 10/69 20130101ALI20250311BHJP
【FI】
H04L25/49 F
H03M5/12
H04B10/077
H04B10/69
(21)【出願番号】P 2020194066
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 康祐
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0054733(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102932103(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/49
H04B 10/077
H04B 10/69
H03M 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信する光トランシーバであって、
前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する復号回路を備え、
前記復号回路は、前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定する間隔測定部と、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する復号部と、
を備え
、
前記復号部は、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期に対する、前記第2時間間隔の比率であるクロック数を推定するクロック数推定部と、
推定した前記クロック数と、直前に復号した前記監視用信号の論理値とに基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する符号値判定部と、
を備える
、
光トランシーバ。
【請求項2】
マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信する光トランシーバであって、
前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する復号回路を備え、
前記復号回路は、前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定する間隔測定部と、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する復号部と、
を備え
、
前記間隔測定部は、前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔をさらに測定し、
前記復号部は、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記第3エッジに対応する第1論理値を復号し、前記第2時間間隔および前記第3時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記第4エッジに対応する第2論理値を復号する、
光トランシーバ。
【請求項3】
マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信する光トランシーバであって、
前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する復号回路を備え、
前記復号回路は、前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定する間隔測定部と、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する復号部と、
を備え
、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の前記比率が予め設定された所定の範囲から外れたことを前記復号部が検出した場合、
前記間隔測定部は、前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔と、前記第4エッジと、前記第4エッジの直後に検出した第5エッジとの間の第4時間間隔をさらに測定し、
前記復号部は、前記第3時間間隔および前記第4時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号を復号する、
光トランシーバ。
【請求項4】
前記復号部は、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期に対する、前記第2時間間隔の
比率であるクロック数を推定するクロック数推定部と、
推定した前記クロック数と、直前に復号した前記監視用信号の論理値とに基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する符号値判定部と、
を備える
請求項2または請求項3に記載の光トランシーバ。
【請求項5】
前記クロック数推定部は、
前記第1時間間隔を記憶する記憶部と、
前記第1時間間隔と複数の閾値のそれぞれとを乗算する複数の乗算器と、
前記複数の乗算器による複数の乗算結果のそれぞれと、前記第2時間間隔とを比較する複数の比較器と、
を備え、
前記複数の比較器による複数の比較結果に基づいて、前記クロック数を推定する、
請求項1または請求項4に記載の光トランシーバ。
【請求項6】
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の前記比率が予め設定された所定の範囲から外れたことを前記復号部が検出した場合、
前記間隔測定部は、前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔と、前記第4エッジと、前記第4エッジの直後に検出した第5エッジとの間の第4時間間隔をさらに測定し、
前記復号部は、前記第3時間間隔および前記第4時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号を復号する、
請求項2に記載の光トランシーバ。
【請求項7】
前記復号回路が受信するマンチェスタ符号化された前記監視用信号は、第1論理値、第1論理値、第2論理値、第1論理値が順次現れる補正パターンを含み、
前記第1論理値は、前記間隔測定部が検出する立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジにより示される、
請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の光トランシーバ。
【請求項8】
マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信し、前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する光トランシーバの制御方法であって、
前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、
検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、
前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定し、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号
し、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期に対する、前記第2時間間隔の比率であるクロック数を推定し、
推定した前記クロック数と、直前に復号した前記監視用信号の論理値とに基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する
光トランシーバの制御方法。
【請求項9】
マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信し、前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する光トランシーバの制御方法であって、
前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、
検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、
前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定し、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号
し、
前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔をさらに測定し、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記第3エッジに対応する第1論理値を復号し、前記第2時間間隔および前記第3時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記第4エッジに対応する第2論理値を復号する、
光トランシーバの制御方法。
【請求項10】
マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信し、前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する光トランシーバの制御方法であって、
前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、
検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、
前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定し、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号
し、
前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の前記比率が予め設定された所定の範囲から外れたことを検出した場合、
前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔と、前記第4エッジと、前記第4エッジの直後に検出した第5エッジとの間の第4時間間隔をさらに測定し、
前記第3時間間隔および前記第4時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号を復号する、
光トランシーバの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光トランシーバおよび光トランシーバの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンチェスタ符号は、伝送する2値の論理値のそれぞれを信号波形の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとに割り当てた符号である。例えば、マンチェスタ符号データから符号値と同期クロックとを生成する受信装置は、受信信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのエッジ間隔の時間を計測する。そして、受信装置は、計測した時間からその時点のエッジがビット中点かビット端点かを判定し、符号値と同期クロックとを生成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したマンチェスタ符号を復号する受信装置は、マンチェスタ符号データに含まれる同期クロックの周期であるビット幅が分かっていないと符号値を生成することができない。このため、受信装置の温度変化または経年変化等によりビット幅が変動し、ビット幅が変動の許容誤差を超えた場合、マンチェスタ符号の符号値を正常に復号できないおそれがある。
【0005】
また、マンチェスタ符号は、同じ符号値が連続したパターンと逆の符号値が連続したパターンとの区別がつかないというあいまいさを持つ。このため、マンチェスタ符号を途中から受信しようとした場合、期待する符号値と逆の符号値が復号される場合がある。
【0006】
そこで、本開示は、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が未知である場合、または同期クロックの周期が変動する場合にも、マンチェスタ符号の符号値を復号可能な光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光トランシーバは、マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信する光トランシーバであって、前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する復号回路を備え、前記復号回路は、前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定する間隔測定部と、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する復号部と、を備え、前記復号部は、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期に対する、前記第2時間間隔の比率であるクロック数を推定するクロック数推定部と、推定した前記クロック数と、直前に復号した前記監視用信号の論理値とに基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する符号値判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が未知である場合、または同期クロックの周期が変動する場合にも、マンチェスタ符号の符号値を復号可能な光トランシーバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる光トランシーバの回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、マンチェスタ符号とエッジ間隔との関係の一例を示す信号波形図である。
【
図3】
図3は、マンチェスタ符号において、連続する2つのエッジ間隔の変化を示す比率の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、低速受信データ信号の連続する2つのエッジ間隔の比率に応じて、エッジ間隔を推定する手法の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、低速受信データ信号のエッジ間隔と直前に復号した符号値とに基づいて、符号値を復号する手法の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、
図1の片エッジ間隔カウンタの一例を示す回路図である。
【
図8】
図8は、
図1のマンチェスタ復号回路の動作の一例を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
〔1〕本開示の一態様にかかる光トランシーバは、マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信する光トランシーバであって、前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する復号回路を備え、前記復号回路は、前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定する間隔測定部と、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する復号部と、を備える。これにより、光トランシーバは、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が未知である場合、または同期クロックの周期が変動する場合にも、連続する第1時間間隔と第2時間間隔との比率に基づいて、マンチェスタ符号化された監視用信号を復号することができる。
【0012】
〔2〕上記〔1〕において、前記復号部は、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期に対する、前記第2時間間隔のクロック数を推定するクロック数推定部と、推定した前記クロック数と、直前に復号した前記監視用信号の論理値とに基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する符号値判定部と、を備えてもよい。これにより、第1時間間隔と第2時間間隔とを測定し、時間間隔の比率から第2時間間隔のクロック数を求めることで、同期クロックの周期が分からない場合にも、マンチェスタ符号化された監視用信号を復号することができる。さらに、第2時間間隔のクロック数から同期クロックの周期であるビット幅を求めることができる。
【0013】
〔3〕上記〔2〕において、前記クロック数推定部は、前記第1時間間隔を記憶する記憶部と、前記第1時間間隔と複数の閾値のそれぞれとを乗算する複数の乗算器と、前記複数の乗算器による複数の乗算結果のそれぞれと、前記第2時間間隔とを比較する複数の比較器と、を備え、前記複数の比較器による複数の比較結果に基づいて、前記クロック数を推定してもよい。これにより、連続する第1時間間隔と第2時間間隔との比率を求めるための除算の代わりに乗算器による乗算を実行することで、第2時間間隔のクロック数を推定することができ、監視用信号を復号することができる。この結果、復号部の回路規模を抑制することができ、光トランシーバのコストを削減することができる。
【0014】
〔4〕上記〔1〕において、前記間隔測定部は、前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔をさらに測定し、前記復号部は、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記第3エッジに対応する第1論理値を復号し、前記第2時間間隔および前記第3時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号の前記第4エッジに対応する第2論理値を復号してもよい。これにより、復号部は、連続する2つの時間間隔のペアを順次使用して、マンチェスタ符号の連続する符号値を順次判定することができる。
【0015】
〔5〕上記〔1〕において、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の前記比率が予め設定された所定の範囲から外れたことを前記復号部が検出した場合、前記間隔測定部は、前記第3エッジと、前記第3エッジの直後に検出した第4エッジとの間の第3時間間隔と、前記第4エッジと、前記第4エッジの直後に検出した第5エッジとの間の第4時間間隔をさらに測定し、前記復号部は、前記第3時間間隔および前記第4時間間隔の比率に基づいて、前記監視用信号を復号してもよい。これにより、復号部は、誤った符号値を検出し続けることなく、マンチェスタ符号化された前記監視用信号の復号を改めて再開することができる。
【0016】
〔6〕上記〔1〕から〔5〕のいずれかにおいて、前記復号回路が受信するマンチェスタ符号化された前記監視用信号は、第1論理値、第1論理値、第2論理値、第1論理値が順次現れる補正パターンを含み、前記第1論理値は、前記間隔測定部が検出する立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジにより示されてもよい。これにより、復号部は、例えば、連続する第1論理値の符号を、連続する第2論理値の符号と誤検出し続ける場合にも、補正パターンの受信により、符号値の受信動作を正常に戻すことができ、その後正しい符号値を検出することができる。
【0017】
〔7〕本開示の別の態様にかかる光トランシーバの制御方法は、マンチェスタ符号化された監視用信号が重畳された光信号を受信し、前記光信号から生成される電気信号から前記監視用信号を復号する光トランシーバの制御方法であって、前記電気信号の波形の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出し、検出した第1エッジと、前記第1エッジの直後に検出した第2エッジとの間の第1時間間隔を測定し、前記第2エッジと、前記第2エッジの直後に検出した第3エッジとの間の第2時間間隔を測定し、前記第1時間間隔および前記第2時間間隔の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された前記監視用信号を復号する。これにより、光トランシーバは、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が未知である場合、または同期クロックの周期が変動する場合にも、連続する第1時間間隔と第2時間間隔との比率に基づいて、マンチェスタ符号化された監視用信号を復号することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光トランシーバの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、同一の要素または対応する要素には同一の符号を付し、それらについては説明を省略する場合がある。また、入力端子、出力端子および各ノードの符号を、信号を示す符号としても使用する。
【0019】
〔一実施形態〕
〔光トランシーバの回路構成〕
図1は、一実施形態にかかる光トランシーバの回路構成の一例を示すブロック図である。例えば、
図1に示す光トランシーバ100は、光信号を送受信するホスト装置等の通信装置に接続される。光トランシーバ100は、デジタル信号を光信号に変換して他の光トランシーバに送信する機能と、他の光トランシーバから受信した光信号をデジタル信号に変換する機能とを有する。光トランシーバ100は、DSP(Digital Signal Processor)10、マンチェスタ符号化回路20、光電変換部30、ローパスフィルタ(LPF)40およびマンチェスタ復号回路50を有する。
【0020】
光電変換部30は、レーザーダイオード(LD)ドライバ32、レーザーダイオード(LD)34、フォトダイオード(PD)36およびトランスインピーダンスアンプ(TIA)38を有する。以下では、レーザーダイオードドライバ32、レーザーダイオード34、フォトダイオード36およびトランスインピーダンスアンプ38を、それぞれLDドライバ32、LD34、PD36およびTIA38とも称する。また、ローパスフィルタ40をLPF40とも称する。マンチェスタ復号回路50は、片エッジ間隔カウンタ60および復号部70を有する。マンチェスタ復号回路50は、復号回路の一例である。
【0021】
DSP10は、他の光トランシーバ100に送信する情報を含む並列の高速送信データ信号(デジタル信号)をホスト装置から受信する。DSP10は、受信した高速送信データ信号を、例えば、PAM(Pulse Amplitude Modulation)4信号等のアナログ送信信号に変換する。DSP10は、変換したアナログ送信信号をLDドライバ32に出力する。
【0022】
また、DSP10は、他の光トランシーバ100から受信する光信号から変換されたPAM4信号等のアナログ受信信号をTIA38から受信する。DSP10は、アナログ受信信号を並列の高速受信データ信号(デジタル信号)に変換する。DSP10は、変換した高速受信データ信号をホスト装置に出力する。なお、DSP10は、図示しないハイパスフィルタを含む。ハイパスフィルタは、TIA38から受信するアナログ受信信号に重畳された監視制御情報を除去する。
【0023】
例えば、高速送信データ信号および高速受信データ信号は、NRZ(Non-Return-to-Zero)信号である。なお、高速送信データ信号および高速受信データ信号とPAM4信号との相互の変換は、DSP10と、LDドライバ32およびTIA38との間に接続される変換回路で行われてもよい。
【0024】
マンチェスタ符号化回路20は、送信用の監視制御情報(送信監視制御情報)をマンチェスタ符号化し、符号化した監視制御情報を監視用の低速送信データ信号としてLDドライバ32に出力する。監視用の低速送信データ信号の転送レートは、DSP10により送受信される通信対象のデータ信号の転送レートに比べて低い。例えば、DSP10に送受信されるPAM4信号が25Gボーであるのに対して、マンチェスタ符号化回路20から出力される低速送信データ信号の周波数は、数十kHzから1MHz程度である。
【0025】
LDドライバ32は、DSP10から受信するアナログ送信信号に監視制御情報を含む低速送信データ信号を重畳する。LDドライバ32は、重畳したアナログ送信信号をLD34に出力してLD34を駆動する。LD34は、低速送信データ信号が重畳されたアナログ送信信号(電気信号)から光送信信号を生成し、生成した光送信信号を光ケーブルに出力する。
【0026】
例えば、LD34から出力される光信号は、PAM4信号である。なお、監視用の低速送信データ信号のアナログ送信信号への重畳は、LDドライバ32に供給されるバイアス電流を低速送信データ信号に応じて変化させることで行われてもよい。
【0027】
PD36は、監視制御情報が重畳された光受信信号を、光ケーブルを介して、他の光トランシーバ100から受信する。PD36は、受信した光受信信号から電流信号(電気信号)を生成し、生成した電流信号をTIA38に出力する。例えば、PD36が受信する光信号は、PAM4信号である。TIA38は、PD36から受信する微少な電流信号を増幅し、増幅した電流信号を電圧信号(アナログの受信データ信号)としてDSP10およびLPF40に出力する。
【0028】
LPF40は、TIA38から受信する直列の受信データ信号の高周波成分を遮断することで、受信データ信号に重畳された低速受信データ信号(マンチェスタ符号化されている監視制御情報)を抽出する。LPF40は、抽出した低速受信データ信号をマンチェスタ復号回路50に出力する。低速受信データ信号は、マンチェスタ符号化された監視用信号の一例である。
【0029】
マンチェスタ復号回路50は、片エッジ間隔カウンタ60および復号部70を使用して、マンチェスタ符号化された低速受信データ信号を復号する。マンチェスタ復号回路50は、復号した低速受信データ信号を受信監視制御情報としてホスト装置に出力する。
【0030】
片エッジ間隔カウンタ60および復号部70の例は、
図6および
図7で説明される。例えば、送信監視制御情報および受信監視制御情報として、光信号の送信のオン/オフを制御する情報、光信号の伝送速度またはデータレートを設定する情報、光信号の強度を設定する情報、光トランシーバ100の電源電圧または温度を示す情報等がある。
【0031】
〔マンチェスタ符号とエッジ間隔との関係〕
図2は、マンチェスタ符号とエッジ間隔Dとの関係の一例を示す信号波形図である。例えば、
図1のマンチェスタ符号化回路20は、同期クロックに同期して生成されるデータが論理値1の場合、クロックサイクルの中点に立ち上がりエッジ(符号値P)を割り当てる。また、マンチェスタ符号化回路20は、同期クロックに同期して生成されるデータが論理値0の場合、クロックサイクルの中点に立ち下がりエッジ(符号値N)を割り当てる。符号値Pは、第1論理値の一例であり、符号値Nは、第2論理値の一例である。なおマンチェスタ符号は、立ち下がりエッジを符号値Pとし、立ち上がりエッジを符号値Nとしてもよい。
【0032】
そして、マンチェスタ符号化回路20は、クロックサイクルの中点に割り当てるエッジに応じて、同期クロックのエッジ(立ち下がりエッジ)に対応する位置に、立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジを割り当てる。このように生成されたマンチェスタ符号では、同期クロックの周期、すなわち、ビット幅を"T"とする場合、互いに隣接する2つの立ち上がりエッジのエッジ間隔Dは、"T"、"1.5T"、"2T"のいずれになる。なお、エッジ間隔Dは、互いに隣接する立ち下がりエッジの間隔でもよいが、以下では、互いに隣接する2つの立ち上がりエッジのエッジ間隔Dの例が説明される。
【0033】
図2において、連続する2つのエッジ間隔Dの間を結ぶ円弧の矢印に付した数値は、
図3および
図4に示すエッジ間隔Dの変化の比率R(n)の番号に対応する。連続する2つのエッジ間隔Dのうち、先のエッジ間隔D(n-1)は、第1エッジと、第1エッジの直後の第2エッジとの間の第1時間間隔の一例である。連続する2つのエッジ間隔Dのうち、後のエッジ間隔D(n)は、第2エッジと、第2エッジの直後の第3エッジとの間の第2時間間隔の一例である。さらに、エッジ間隔D(n)の次のエッジ間隔D(n+1)は、第3エッジと、第3エッジの直後の第4エッジとの間の第3時間間隔の一例である。第1エッジ、第2エッジおよび第3エッジは、マンチェスタ符号の信号波形において互いに隣接する立ち上がりエッジである。
図2の下側の信号波形のマンチェスタ符号において、一点鎖線の枠で示す符号値P、P、N、Pは、所定の間隔を置いて挿入される補正パターンと同じパターンである。補正パターンについては、
図8で説明される。
【0034】
〔エッジ間隔の変化と比率〕
図3は、マンチェスタ符号において、連続する2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)の変化を示す比率R(n)の一例を示す説明図である。比率R(n)は、式(1)により求められる。
R(n)=D(n)/D(n-1) ‥(1)
エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は、番号(1)から(7)に示すように、7種類ある。
【0035】
エッジ間隔Dが"2T"から"T"に変化する場合、エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は"0.5"になる。エッジ間隔Dが"1.5T"から"T"に変化する場合、エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は"0.67"になる。エッジ間隔Dが"2T"から"1.5T"に変化する場合、エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は"0.75"になる。
【0036】
エッジ間隔Dが変わらない場合("T"から"T"、"1.5T"から"1.5T"または"2T"から"2T")、エッジ間隔Dの比率R(n)は"1"になる。エッジ間隔Dが"1.5T"から"2T"に変化する場合、エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は"1.33"になる。エッジ間隔Dが"T"から"1.5T"に変化する場合、エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は"1.5"になる。エッジ間隔Dが"T"から"2T"に変化する場合、エッジ間隔Dの変化の比率R(n)は"2"になる。
【0037】
〔ビット幅の推定と符号値の復号〕
図4は、低速受信データ信号の連続する2つのエッジ間隔Dの比率に応じて、エッジ間隔Dを推定する手法の一例を示す説明図である。
図4の左側に括弧で示す番号と比率R(n)は、
図3に示した番号と比率R(n)に対応している。比率R(n)は、連続する2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)の比D(n)/D(n-1)である。エッジ間隔D(n-1)は、先行するエッジ間隔Dであり、エッジ間隔D(n)は、後続のエッジ間隔Dである。
【0038】
図4では、互いに隣接する2つの比率R(n)の中央値がそれぞれ閾値VT1、VT2、VT3、VT4、VT5、VT6に設定される。また、閾値VT0は、閾値VT1=0.58と比率R(n)=0.5との差0.08を比率R(n)=0.5から引いた値(0.42)に設定される。閾値VT7は、比率R(n)=2と閾値VT6=1.75との差0.25を比率R(n)=2に加えた値(2.25)に設定される。なお、閾値VT0からVT7を総称して閾値VTと呼ぶ場合がある。
【0039】
例えば、復号部70は、実際に測定されるエッジ間隔D(n-1)、エッジ間隔D(n)から比率R(n)を求める。復号部70は、求めた比率R(n)を各閾値VTと比較する。そして、復号部70は、比較結果に基づいて、2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)のうち後続のエッジ間隔D(n)がビット幅Tの何倍(1倍、1.5倍、2倍のいずれか)であるかを推定する。ここで、ビット幅Tは、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期である。以下では、ビット幅T(クロック周期)に対するエッジ間隔Dの比率をクロック数とも称する。例えば、エッジ間隔Dがビット幅Tの1.5倍の場合、エッジ間隔Dのクロック数は"1.5"である。
【0040】
エッジ間隔Dのクロック数を推定することにより、
図5で説明するように、低速受信データ信号LDTに含まれるマンチェスタ符号化された符号値を復号することができる。また、エッジ間隔Dのクロック数を推定できるため、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が未知の場合、あるいは、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が変動した場合にも、符号値を復号することができる。換言すれば、比率R(n)を得る毎に同期クロックの周期を推定することができ、同期クロックの周期を更新することができる。
【0041】
例えば、比率R(n)が"0.75"である場合、推定されたエッジ間隔D(n)を"1.5"で割ることで、同期クロックの周期、すなわち、ビット幅Tを推定することができる。比率R(n)が"1.33"である場合、推定されたエッジ間隔D(n)を"2"で割ることで、同期クロックの周期、すなわち、ビット幅Tを推定することができる。なお、同期クロックの周期、すなわち、ビット幅Tは、エッジ間隔D(n-1)、D(n)の和を2で除した平均値に基づいて推定されてもよい。
【0042】
なお、
図4の(3)においてビット幅Tは、エッジ間隔D(n)を1/1.5倍して推定するのでなく、エッジ間隔D(n-1)を1/2倍にして推定してもよい。
図4の(6)及び(7)において、ビット幅Tは、エッジ間隔D(n)を用いて推定するのではなく、エッジ間隔D(n-1)をビット幅Tと推定してもよい。この場合、同期クロックの周期を、計算なし、または、エッジ間隔D(n-1)を示す2進数のビット列を1ビット右シフトすることで算出することができ、計算量を抑えることができる。
【0043】
復号部70は、比率R(n)が"0.88"より大きく、"1.17"以下の場合、エッジ間隔D(n-1)、D(n)が互いに等しいと判定する。この場合、エッジ間隔D(n-1)、D(n)は、例えば、"T"、"1.5T"および"2T"のいずれかであり、定まらない。このため、復号部70は、エッジ間隔D(n)の推定を保留する。なお、復号部70は、エッジ間隔Dの推定を保留する場合にも、
図5で説明する手法を用いて、低速受信データ信号LDTに含まれる符号値を復号することができる。例えば、エッジ間隔D(n-1)において、エッジ間隔が確定している場合には、当該エッジ間隔D(n-1)のエッジ間隔を、エッジ間隔D(n)としてもよい。
【0044】
復号部70は、比率R(n)が閾値VT0以下の場合、エッジ間隔D(n)が小さすぎるため、推定不能と判定する。また、復号部70は、比率R(n)が閾値VT7より大きい場合、エッジ間隔D(n)が大きすぎるため、推定不能と判定する。
【0045】
復号部70は、推定不能と判定した場合、エッジ間隔Dの比率R(n)の取得を最初からやり直す。この場合、復号部70は、エッジ間隔D(n)の次のエッジ間隔D(n+1)とその次のエッジ間隔D(n+2)の比率R(n+2)=D(n+2)/D(n+1)を求める。エッジ間隔D(n+1)は、第3エッジと、第3エッジの直後に検出された第4エッジとの間の第3時間間隔の一例である。エッジ間隔D(n+2)は、第4エッジと、第4エッジの直後に検出された第5エッジとの間の第4時間間隔の一例である。第3エッジ、第4エッジおよび第5エッジは、マンチェスタ符号の信号波形において互いに隣接する立ち上がりエッジである。
【0046】
このように、比率R(n)の上限値および下限値を閾値VT0、VT7として設定することで、ノイズ等により誤って発生したエッジ、マンチェスタ符号の伝送レートの変化、または、低速受信データ信号LDTの伝送の中断を検出することができる。この場合、復号部70は、片エッジ間隔カウンタ60に最初のエッジ間隔D(n-1)の測定からやり直させる。これにより、復号部70は、新たなエッジ間隔D(n-1)、D(n)の比率R(n)に基づいて、低速受信データ信号LDTの復号を再開することができる。
【0047】
図4の右側に示す符号ERR1=1、BW1=1、BW2=1、BW3=1、BW4=1、BW5=1、BW6=1、BW7=1、ERR2=1は、
図7に示す復号部70内で使用する信号の値であり、いずれか1つのみが論理値1に設定される。符号ERR1、ERR2は、エラー信号であり、符号BW1から符号BW7のそれぞれは、ビット幅信号である。なお、ビット幅信号BW1からビット幅信号BW7のそれぞれを総称してビット幅信号BWという場合がある。
【0048】
例えば、論理値1のビット幅信号BW1および論理値1のビット幅信号BW2は、エッジ間隔D(n)のクロック数が"1"であることを示し、エッジ間隔D(n)がビット幅T(クロック周期)とほぼ等しいことを示す。論理値1のビット幅信号BW3および論理値1のビット幅信号BW6は、エッジ間隔D(n)のクロック数が"1.5"であることを示し、エッジ間隔D(n)がビット幅T(クロック周期)の1.5倍とほぼ等しいことを示す。
【0049】
論理値1のビット幅信号BW5および論理値1のビット幅信号BW7は、エッジ間隔D(n)のクロック数が"2"であることを示し、エッジ間隔D(n)がビット幅T(クロック周期)の2倍とほぼ等しいことを示す。このように、ビット幅信号BWは、エッジ間隔D(n)がマンチェスタ符号化において用いられた同期クロックのビット幅Tの何倍であるかの推定結果を示す。
【0050】
〔エッジ間隔から符号値を復号する手法〕
図5は、低速受信データ信号LDTのエッジ間隔Dと直前に復号した符号値とに基づいて、符号値を復号する手法の一例を示す説明図である。なお、
図5は、
図1の復号部70による復号動作を示している。
図5において、エッジ間隔Dは、低速受信データ信号LDTの信号波形において、互いに隣接する2つの立ち上がりエッジの間隔を示す。
図2に示したように、エッジ間隔Dは、"T"、"1.5T"、"2T"のいずれである。
【0051】
破線の矩形枠で示す"基準符号値P"は、直前に復号した符号値が"P"であることを示す。破線の矩形枠で示す"基準符号値N"は、直前に復号した符号値が"N"であることを示す。破線の丸枠は、復号により判定された符号値のうち、最後の符号値を示す。判定された最後の符号値が"P"の場合、"LastP"と示され、判定された最後の符号値が"N"の場合、"LastN"と示される。なお、判定された符号値が1つの場合、判定された符号値が"LastP"または"LastN"になる。"LastP"は、次の符号値の判定時に基準符号値Pとなる。"LastN"は、次の符号値の判定時に基準符号値Nとなる。
【0052】
復号部70は、基準符号値が"P"でエッジ間隔Dが"T"の場合(
図5(a))、符号値Pを受信したと判定する。復号部70は、基準符号値が"N"でエッジ間隔Dが"T"の場合(
図5(b))、符号値Nを受信したと判定する。
【0053】
復号部70は、基準符号値が"P"でエッジ間隔Dが"1.5T"の場合(
図5(c))、符号値Nを受信したと判定される。なお、受信した符号値Nの後に続く括弧で示す符号値Nは、次回に復号される。復号部70は、基準符号値が"N"でエッジ間隔Dが"1.5T"の場合(
図5(d))、符号値Nと符号値Pを受信したと判定する。
【0054】
復号部70は、基準符号値が"P"でエッジ間隔Dが"2T"の場合(
図5(e))、符号値Nと符号値Pを受信したと判定する。復号部70は、基準符号値が"N"でエッジ間隔Dが"2T"の場合(
図5(f))、マンチェスタ符号には存在しないパターンのため、位相ずれが発生したと判定し、受信した符号値を判定しない。但し、復号部70は、後半の立ち上がりエッジを"LastP"と判定することで、次に現れるエッジ間隔Dでの符号値の判定を可能にすることができる。
【0055】
図2の波形で示されるように、復号部70は、連続する2つのエッジ間隔Dを使用してマンチェスタ符号を復号する。例えば、復号部70は、エッジ間隔D(n-1)とエッジ間隔D(n)との比率R(n)に基づいて1つまたは2つの符号値を判定し、エッジ間隔D(n)とエッジ間隔D(n+1)との比率R(n+1)に基づいて1つまたは2つの符号値を判定する。このように、符号値の判定に使用したエッジ間隔D(n-1)、D(n)のうち、後のエッジ間隔D(n)は、次の符号値の判定に使用される。この結果、復号部70は、連続する2つのエッジ間隔Dのペアを順次使用して、マンチェスタ符号の連続する符号値を順次判定することができる。
【0056】
〔片エッジ間隔カウンタ60の回路構成〕
図6は、
図1の片エッジ間隔カウンタ60の一例を示す回路図である。片エッジ間隔カウンタ60は、カウンタ62およびレジスタ64を有する。片エッジ間隔カウンタ60は、低速受信データ信号LDTの互いに隣接する立ち上がりエッジのエッジ間隔Dを繰り返し測定する間隔測定部の一例である。なお、片エッジ間隔カウンタ60は、立ち上がりエッジを検出しているが、立ち下がりエッジを検出してもよい。ただし、片エッジ間隔カウンタ60は、あらかじめ定められた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのいずれかのみを検出する。
【0057】
カウンタ62は、リセット端子RSTと、クロック信号CLKを受けるクロック端子CKと、カウント値CNTを出力する出力端子OUTとを有する。リセット端子RSTは、
図1のLPF40から出力されるマンチェスタ符号化された低速受信データ信号LDTを受ける。カウンタ62は、低速受信データ信号LDTの立ち上がりエッジに同期してカウント値CNTを"0"にリセットし、クロック信号CLKに同期してカウント値CNTを"1"ずつ増加させる。
【0058】
これにより、カウンタ62は、低速受信データ信号LDTの立ち上がりエッジ毎に、1つ前の立ち上がりエッジからの時間間隔をカウント値CNTとして出力する。すなわち、カウンタ62は、互いに隣接する2つの立ち上がりエッジのエッジ間隔Dをカウント値CNTとして繰り返し測定する。
【0059】
レジスタ64は、低速受信データ信号LDTを受けるロード端子と、カウント値CNTを受ける入力端子INと、ロードしたカウント値CNTを出力する出力端子OUTとを有する。レジスタ64は、低速受信データ信号LDTの立ち上がりエッジに同期してカウント値CNTをラッチし、ラッチしたカウント値CNTをエッジ間隔Dとして出力端子OUTから出力する。
【0060】
図6の下側の括弧内に示す信号波形は、片エッジ間隔カウンタ60の動作を示す。波形図のクロック信号CLKおよびカウント値CNTの縦縞は、クロック信号CLKの周波数が低速受信データ信号LDTの周波数に比べて十分高いことを示す。例えば、クロック信号CLKとして、DSP10で使用するクロック信号の周波数を所定の分周比で分周した分周クロック信号が使用されてもよく、他のクロック信号が使用されてもよい。
【0061】
信号波形に示すように、1つのエッジ間隔Dを得るためには、低速受信データ信号LDTの2つの立ち上がりエッジが必要である。また、復号部70で受信監視制御情報を復号するためには、連続する2つのエッジ間隔D(例えば、D(n-1)とD(n))が必要である。
【0062】
なお、片エッジ間隔カウンタ60は、低速受信データ信号LDTの互いに隣接する立ち下がりエッジのエッジ間隔Dを繰り返し測定してもよい。この場合、カウンタ62は、低速受信データ信号LDTの立ち下がりエッジでリセットされる。レジスタ64は、低速受信データ信号LDTの立ち下がりエッジに同期してカウント値CNTをラッチし、ラッチしたカウント値CNTをエッジ間隔Dとして出力端子OUTから出力する。但し、立ち下がりエッジのエッジ間隔Dを計測する場合の復号部70の構成および動作は、以下で説明する復号部70の構成および動作と異なる。
【0063】
〔復号部70の回路構成〕
図7は、
図1の復号部70の一例を示す回路図である。復号部70は、クロック数推定部80および符号値判定部90を有する。クロック数推定部80は、前回値メモリ82、8個の乗算器84、8個の比較器86、8個のインバータIVおよび7個のアンド回路ANDを有する。なお、乗算器84、比較器86、インバータIVおよびアンド回路ANDの数は、
図3に示した比率R(n)の数(種類)に合わせて設定される。
【0064】
前回値メモリ82は、クロック端子CKで受信する低速受信データ信号LDTの立ち上がりエッジに同期して、片エッジ間隔カウンタ60から受信するエッジ間隔D(n)を取り込み、エッジ間隔D(n-1)として出力する。前回値メモリ82が出力するエッジ間隔D(n-1)は、各乗算器84に供給される。
【0065】
前回値メモリ82に入力されるエッジ間隔D(n)は、
図6の信号波形に示したように、低速受信データ信号LDTの3つの立ち上がりエッジのうちの遅い側の2つの立ち上がりエッジのエッジ間隔Dである。すなわち、エッジ間隔D(n)は、2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)のうち後続のエッジ間隔Dである。
【0066】
前回値メモリ82から出力されるエッジ間隔D(n-1)は、
図6の信号波形に示したように、低速受信データ信号LDTの3つの立ち上がりエッジのうちの早い側の2つの立ち上がりエッジのエッジ間隔Dである。すなわち、エッジ間隔D(n-1)は、連続する2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)のうち先行するエッジ間隔Dである。前回値メモリ82は、低速受信データ信号LDTの連続する2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)のうち先行するエッジ間隔D(n-1)を記憶する記憶部の一例である。
【0067】
各乗算器84は、エッジ間隔D(n-1)を互いに異なる乗数で乗じ、乗算結果を比較器86にそれぞれ出力する。8個の乗算器84で使用される乗数は、それぞれ"0.42"、"0.58"、"0.71"、"0.86"、"1.17"、"1.42"、"1.75"、"2.25"であり、
図4で説明した閾値VT0、VT1、...、VT7である。
【0068】
各比較器86は、対応する乗算器84が出力する乗算結果とエッジ間隔D(n)とを比較し、比較結果を出力する。各比較器86は、エッジ間隔D(n)が乗算結果より大きい場合、論理値1を出力し、エッジ間隔D(n)が乗算結果以下の場合、論理値0を出力する。
【0069】
なお、
図7に示す回路は、
図3で説明した式(1)を変形した式(2)を利用して構成される。
D(n)=R(n)・D(n-1) ‥(2)
各乗算器84は、式(2)の右辺を算出し、比較器86は、式(2)の左辺と右辺とを比較する。すなわち、比較器86は、エッジ間隔D(n)を閾値R(n)・D(n-1)と比較する。
【0070】
これにより、式(1)に示した除算を実行することなく、エッジ間隔D(n-1)と各閾値VTとの乗算により比率R(n)と閾値VTとを比較することができる。この結果、復号部70の回路規模を抑制することができ、光トランシーバ100のコストを削減することができる。なお、クロック数推定部80の回路構成は、
図7に限定されるものではない。
【0071】
また、閾値R(n)・D(n-1)は、エッジ間隔D(n-1)により変化する。すなわち、クロック数推定部80は、前回測定されたエッジ間隔D(n-1)に応じて、閾値を毎回更新して、エッジ間隔D(n)と比較することができる。したがって、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周波数が変化し、あるいは、同期クロックジッタ等が発生した場合にも、周波数の変化やジッタ等に追従して、閾値を更新することができる。この結果、閾値が固定の場合に比べて、マンチェスタ復号回路50の復号の精度を向上することができ、光トランシーバ100の信頼性を向上することができる。
【0072】
各アンド回路ANDは、対応する比較器86が出力する論理値と、対応する比較器86が比較する乗算結果より倍率が1つ高い乗算結果を比較する比較器86が出力する論理値をインバータIVで反転した論理値とを受ける。各アンド回路ANDは、論理演算結果をビット幅信号BW(BW1、BW2、...、BW7)として符号値判定部90に出力する。
【0073】
図7の一番左側の比較器86が出力する論理値は、インバータIVで反転され、エラー信号ERR1として符号値判定部90に出力される。
図7の一番右側の比較器86が出力する論理値は、エラー信号ERR2として符号値判定部90に出力される。
【0074】
例えば、エッジ間隔D(n-1)、D(n)がともに"1"の場合、0.42倍から0.88倍の4個の乗算器84に対応する比較器86は、論理値1を出力し、1.17倍から2.25倍の4個の乗算器84に対応する比較器86は、論理値0を出力する。この場合、クロック数推定部80は、論理値1のビット幅信号BW4と、論理値0のビット幅信号BW1-BW3、BW5-BW7、エラー信号ERR1、ERR2とを出力する。すなわち、論理値1のビット幅信号BW4は、比率R(n)が0.88より大きく1.17以下であることを示す。
【0075】
また、エッジ間隔D(n-1)が"1"で、エッジ間隔D(n)が"2"の場合、0.42倍から1.75倍の7個の乗算器84に対応する比較器86は、論理値1を出力し、2.25倍の乗算器84に対応する比較器86は、論理値0を出力する。この場合、クロック数推定部80は、論理値1のビット幅信号BW7と、論理値0のビット幅信号BW1-BW6、エラー信号ERR1、ERR2とを出力する。すなわち、論理値1のビット幅信号BW7は、比率R(n)が1.75より大きく2.25以下であることを示す。
【0076】
エッジ間隔D(n-1)が"1"で、エッジ間隔D(n)が"3"の場合、全ての比較器86は、論理値1を出力する。この場合、クロック数推定部80は、論理値1のエラー信号ERR1と、論理値0のビット幅信号BW1-BW7、エラー信号ERR2とを出力する。すなわち、論理値1のエラー信号ERR1は、比率R(n)が0.42以下であることを示す。
【0077】
エッジ間隔D(n-1)が"3"で、エッジ間隔D(n)が"1"の場合、全ての比較器86は、論理値0を出力する。この場合、クロック数推定部80は、論理値1のエラー信号ERR2と、論理値0のエラー信号ERR1、ビット幅信号BW1-BW7とを出力する。すなわち、論理値1のエラー信号ERR2は、比率R(n)が2.25より大きいことを示す。
【0078】
符号値判定部90は、符号値抽出部92とLast値保持部94とを有する。符号値抽出部92は、クロック数推定部80が出力するビット幅信号BW1-BW7の論理値と、Last値保持部94が保持する符号値(PまたはN)とに基づいて、受信した低速受信データ信号LDTに含まれる符号値を抽出する。Last値保持部94が保持する符号値は、符号値抽出部92が直前に抽出した符号値である。
【0079】
符号値抽出部92による符号値の抽出は、
図5に示した符号値を復号する手法にしたがって実施される。
図5に破線の矩形枠で示した直前に復号された符号値は、Last値保持部94に保持され、符号値抽出部92での符号値の抽出に使用される。
図5に破線の丸枠で示したLastPまたはLastNは、符号値抽出部92で抽出される最後の符号値であり、Last値保持部94に保持される。そして、復号部70は、符号値抽出部92が抽出した符号値を、受信監視制御情報としてホスト装置に出力する。
【0080】
図7に示す復号部70により、低速受信データ信号LDTにおいて、連続する2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)の比率R(n)を閾値VTと比較することで、マンチェスタ符号化された符号値を復号することができる。換言すれば、クロック数推定部80は、前回測定されたエッジ間隔D(n-1)毎に更新される閾値R(n)・D(n-1)をエッジ間隔D(n)と比較することで、エッジ間隔D(n)のクロック数を求めることができる。
【0081】
なお、一般に、情報をマンチェスタ符号化する場合、プリアンブルなどの同期用ビット列が任意のタイミングで挿入される。同期用ビット列の挿入により、多数の符号値Pのみ、または多数の符号値Nのみが連続することを避けることができる。
【0082】
このため、マンチェスタ復号回路50は、低速受信データ信号LDTの受信を続けることで、エッジ間隔Dのクロック数を順次推定することができ、マンチェスタ符号を順次復号することができる。すなわち、低速受信データ信号LDTの復号に一度成功した後は、
図5に示した手法を用いて、低速受信データ信号LDTの復号を続けることができる。
【0083】
〔マンチェスタ復号回路の状態遷移図〕
図8は、
図1のマンチェスタ復号回路50の動作の一例を示す状態遷移図である。マンチェスタ復号回路50は、スタート状態、測定状態、LastP状態、LastN状態を有する。LastP状態では、
図7に示した復号部70は、
図5に示した基準符号値Pの場合の判定手法にしたがって、符号値を判定する。LastN状態では、復号部70は、
図5に示した基準符号値Nの場合の判定手法にしたがって、符号値を判定する。
【0084】
まず、スタート状態において、片エッジ間隔カウンタ60は、マンチェスタ符号化された低速受信データ信号LDTの受信を開始する。片エッジ間隔カウンタ60は、最初の立ち上がりエッジを検出すると、エッジ間隔D(n-1)の測定状態に遷移する(
図8(a))。片エッジ間隔カウンタ60は、最初のエッジ間隔D(n-1)の測定に失敗した場合、カウント値CNTをリセットすることで、エッジ間隔D(n-1)を再測定する(
図8(b))。
【0085】
片エッジ間隔カウンタ60は、低速受信データ信号LDTの次の立ち上がりを検出することで、最初のエッジ間隔D(n-1)の測定に成功した場合、エッジ間隔D(n-1)を決定し、LastP状態に遷移する(
図8(c))。Last値保持部94は、符号値PをLast値として保持する。
【0086】
図2に示したように、符号値が"P"の場合、信号の立ち上がりエッジは、ビット幅Tの中点(同期クロックの立ち下がりエッジ)に位置する。なお、符号値が"N"の場合、信号の立ち下がりエッジは、ビット幅Tの中点(同期クロックの立ち下がりエッジ)に位置する。また、信号の立ち上がりエッジが同期クロック内にある場合、信号の立ち上がりエッジは、ビット幅Tの端点(同期クロックの立ち上がりエッジ)に位置する。
【0087】
このため、測定状態に遷移後、初めてエッジ間隔D(n-1)が測定された場合、LastP状態またはLastN状態のいずれかを取り得る。この実施形態では、測定状態に遷移後、初めてエッジ間隔D(n-1)が測定された場合、仮の状態としてLastP状態に遷移させる。なお、測定状態に遷移後、初めてエッジ間隔D(n-1)が測定された場合、マンチェスタ復号回路50は、LastN状態に遷移されてもよい。
【0088】
LastP状態またはLastN状態において、片エッジ間隔カウンタ60は、低速受信データ信号LDTの次の立ち上がりを検出した場合、エッジ間隔D(n-1)を前回値メモリ82に記憶する。そして、
図7で説明したように、クロック数推定部80は、比率R(n)(=エッジ間隔D(n)/D(n-1))に基づいて、ビット幅信号BW1-BW7またはエラー信号ERR1、ERR2のいずれかを論理値1に設定する。すなわち、マンチェスタ符号の受信を開始する。
【0089】
LastP状態において、符号値抽出部92は、エッジ間隔D(n)="T"を示す論理値1のビット幅信号BW1または論理値1のビット幅信号BW2を受信した場合、符号値Pの受信を判定し、LastP状態に留まる(
図8(d))。Last値保持部94は、符号値抽出部92が判定した符号値PをLast値として保持する。
【0090】
LastP状態において、符号値抽出部92は、エッジ間隔D(n)="1.5T"を示す論理値1のビット幅信号BW3または論理値1のビット幅信号BW6を受信した場合、符号値Nの受信を判定し、LastN状態に遷移する(
図8(e))。Last値保持部94は、符号値抽出部92が判定した符号値NをLast値として保持する。
【0091】
LastP状態において、符号値抽出部92は、エッジ間隔D(n)="2T"を示す論理値1のビット幅信号BW5または論理値1のビット幅信号BW7を受信した場合、符号値N、Pの受信を判定し、LastP状態に留まる(
図8(f))。Last値保持部94は、符号値抽出部92が最後に判定した符号値PをLast値として保持する。
【0092】
LastP状態において、符号値判定部90は、論理値1のエラー信号ERR1または論理値1のエラー信号ERR2を受信した場合、エッジ間隔D(n)を繰り返し測定する動作を停止する。そして、符号値判定部90は、新たに最初のエッジ間隔D(n-1)から測定を開始するために測定状態に遷移する(
図8(g))。
【0093】
論理値1のエラー信号ERR1は、エッジ間隔D(n)が短すぎる場合に出力される。論理値1のエラー信号ERR2は、エッジ間隔D(n)が長すぎる場合に出力される。これにより、マンチェスタ復号回路50は、誤った符号値を検出し続けることなく、マンチェスタ符号の復号を改めて再開することができる。
【0094】
一方、LastN状態において、符号値抽出部92は、エッジ間隔D(n)="T"を示す論理値1のビット幅信号BW1または論理値1のビット幅信号BW2を受信した場合、符号値Nの受信を判定し、LastN状態に留まる(
図8(h))。Last値保持部94は、符号値抽出部92が判定した符号値NをLast値として保持する。
【0095】
LastN状態において、符号値抽出部92は、エッジ間隔D(n)="1.5T"を示す論理値1のビット幅信号BW3または論理値1のビット幅信号BW6を受信した場合、符号値N、Pの受信を判定し、LastP状態に遷移する(
図8(i))。Last値保持部94は、符号値抽出部92が最後に判定した符号値PをLast値として保持する。
【0096】
LastN状態において、符号値抽出部92は、エッジ間隔D(n)="2T"を示す論理値1のビット幅信号BW5または論理値1のビット幅信号BW7を受信した場合、エッジ間隔D(n)の測定が誤ったと判定する。そして、符号値抽出部92は、符号値の受信判定をせずに、LastP状態に遷移する(
図8(j))。
【0097】
LastN状態において、符号値判定部90は、論理値1のエラー信号ERR1または論理値1のエラー信号ERR2を受信した場合、エッジ間隔D(n)を繰り返し測定する動作を停止する。そして、符号値判定部90は、新たに最初のエッジ間隔D(n-1)から測定を開始するために測定状態に遷移する(
図8(k))。これにより、マンチェスタ復号回路50は、誤った符号値を検出し続けることなく、マンチェスタ符号の復号を改めて再開することができる。
【0098】
なお、LastP状態またはLastN状態において、符号値判定部90の符号値抽出部92は、ビット幅信号BW4が論理値1の場合、エッジ間隔D(n)の推定を保留する。しかしながら、復号部70は、エッジ間隔D(n)の推定を保留する場合にも、
図5に示した手法を用いて、マンチェスタ符号の復号することができる。例えば、エッジ間隔D(n-1)において、エッジ間隔が確定している場合には、当該エッジ間隔D(n-1)のエッジ間隔を、エッジ間隔D(n)としてもよい。
【0099】
また、マンチェスタ符号のビット列の中に、
図2に示した補正パターン(符号P、P、N、P)を挿入することで、復号部70は、比率R(n)が"2"のエッジ間隔D(n-1)、D(n)を検出する。そして、復号部70は、論理値1のビット幅信号BW7を出力することで、符号値Nの受信を判定する。したがって、復号部70は、補正パターン以外が全て符号値Pのビット列を連続して受信し、同じエッジ間隔D(n-1)、D(n)により推定を保留し続ける場合にも、補正パターンを受信することでエッジ間隔D(n)を推定することができる。
【0100】
さらに、復号部70は、連続する符号値Pを連続する符号値Nと誤検出し続け、LastN状態を繰り返す場合にも、補正パターンの受信により、LastP状態に遷移する。これにより、符号値の受信動作を正常に戻すことができ、その後正しい符号値を検出することができる。
【0101】
以上、第1の実施形態では、光トランシーバ100は、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期が未知である場合、または同期クロックの周期が変動する場合にも、マンチェスタ符号化された監視用信号を復号することができる。具体的には、光トランシーバ100は、連続する2つのエッジ間隔D(n-1)、D(n)の比率に基づいて、マンチェスタ符号化された監視用信号を復号することができる。
【0102】
すなわち、光トランシーバ100は、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期がどのように設定される場合にも、マンチェスタ符号化された監視用情報を復号できる。したがって、共通の光トランシーバ100を使用して、様々なホスト装置で使用する、同期クロックの周期が様々なマンチェスタ符号を復号することができる。
【0103】
これにより、システム毎に光トランシーバ100を用意する場合に比べて、光トランシーバ100の開発コスト、製造コスト、保守コストを削減することができる。例えば、監視用情報は、本来通信する信号に冗長されて通信される。このため、マンチェスタ符号化において用いられた同期クロックの周期は、本来の通信対象であるPAM4信号等の通信品質への影響を避けるため、システムの設置環境、動作環境に応じて変更される場合がある。この場合にも、同期クロックの周期の変更に自動的に追従して、マンチェスタ符号化された監視制御情報を復号することができる。
【0104】
以上、本開示の実施形態などについて説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0105】
10 DSP
20 マンチェスタ符号化回路
30 光電変換部
32 レーザーダイオード(LD)ドライバ
34 レーザーダイオード(LD)
36 フォトダイオード(PD)
38 トランスインピーダンスアンプ(TIA)
40 ローパスフィルタ(LPF)
50 マンチェスタ復号回路
60 片エッジ間隔カウンタ
62 カウンタ
64 レジスタ
70 復号部
80 クロック数推定部
82 前回値メモリ
84 乗算器
86 比較器
90 符号値判定部
92 符号値抽出部
94 Last値保持部
100 光トランシーバ
BW(BW1-BW7) ビット幅信号
CNT カウント値
D、D(n)、D(n-1) エッジ間隔
ERR1、ERR2 エラー信号
IV インバータ
LDT 低速受信データ信号
R(n) 比率
T ビット幅
VT(VT0-VT7) 閾値