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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/34 20060101AFI20250311BHJP
   E03D 1/24 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
E03D1/34
E03D1/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020197662
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085787
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立石 健太
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大知
(72)【発明者】
【氏名】末永 光宏
(72)【発明者】
【氏名】穴見 義和
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208964(JP,A)
【文献】特開2014-098301(JP,A)
【文献】特開2017-066759(JP,A)
【文献】実開昭52-012625(JP,U)
【文献】米国特許第08734596(US,B1)
【文献】中国実用新案第210658583(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットポンプ作用により洗浄水を便器本体に供給して洗浄する水洗大便器装置であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部に洗浄水を導くための導水路とを備えた便器本体と、
この便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンク本体と、
少なくともその一部が上記貯水タンク本体内で水没した状態で配置され、上記貯水タンク本体内の洗浄水を上記便器本体に供給するジェットポンプユニットと、を有し、
上記貯水タンク本体は、上記導水路と繋がる排出口を備え、
上記ジェットポンプユニットは、その下方に形成された吸引口から斜め上方に延びる上昇管と、上記上昇管と接続され排出口に向かって下方に延びる下降管を備えるスロート管と、
上記スロート管の吸引口に向けて洗浄水を噴射してジェットポンプ作用を誘発させるジェットノズルと、
給水源から上記ジェットノズルへの洗浄水の供給を給止水する給水弁と、
上記給水弁と上記ジェットノズルとをつなぐ給水管と、
を備え、
上記給水管はジェットノズルに繋がる最も曲率が大きい折り返し部と、上記折り返し部を除くホース部で構成されており、上記折り返し部が上記ホース部より可撓性が低く、
上記折り返し部は天井面を構成する折り返し上面部と、底面を構成する折り返し底面部によって構成されており、上記折り返し上面部と折り返し底面部は溶接によって嵌合されることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記折り返し部は曲率が一定である請求項1記載の洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に係り、特にジェットポンプ作用により洗浄水を便器本体に供給して洗浄する水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載されているように、ジェットポンプユニットを使用して大流量の洗浄水を便器本体に継続的に供給するようにした水洗大便器装置が知られている。
【0003】
この便器は水道管と直結したノズルから洗浄水を吐水して、タンク内の水をスロート内に巻き込み大流量の洗浄水を便器へ供給している。
【0004】
スロート管はジェットノズルから水が流入してきた洗浄水を斜め上方に導く上昇管と、上昇させた洗浄を排水口に導く下降管に分かれており、上に凸のくの字の形状をしている。上に凸のくの字をしており、先端部が下を向いている事から、使用者が洗浄動作を開始させ、タンク内の洗浄水が減少してきて、上昇管と下降管を繋ぐ箇所がタンク内の洗浄水から顔を出したとしても、スロート管が全て露出するまで大流量の洗浄水を便器本体に供給可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-58609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スロート管が上に凸のくの字形状のため、上昇管に流入させる洗浄水はジェットノズルから斜め上方に吐水する必要がある。そのため、ジェットノズルに洗浄水を導く給水管は、タンク上方から来る下方向の洗浄水を上方向に流れを変更させるための折り返し箇所を持たなければならない。
【0007】
近年、タンクにおける前後方向、又は左右方向の厚みはデザインや介護等の観点から小さく設計されているため、給水管に折り返し箇所を持たせようとすると、給水管の曲率が必然的に大きくなってしまう。
【0008】
曲率が大きいと洗浄水による抵抗を大きく受けるため、曲率が大きい個所では部品の変形が起こりやすく、硬度が低い場合、例えばホースのようなものだと、洗浄水が通る度にホースがたわんでしまう。たわみが生じると、給水管内の洗浄水が流れ方向が急激に変わる回数が増えてしまい、給水管内の水勢が低下、ひいてはジェットノズルからスロート管に向けて噴射される洗浄水の水勢も弱まるため、スロート管に水が入る時に巻き込める洗浄水の量が減少してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ジェットポンプ作用により洗浄水を便器本体に供給して洗浄する水洗大便器装置であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部に洗浄水を導くための導水路とを備えた便器本体と、この便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンクと、少なくともその一部が上記貯水タンク内で水没した状態で配置され、上記貯水タンク内の洗浄水を上記便器本体に供給するジェットポンプユニットと、を有し、上記ジェットポンプユニットは、その下方に形成された吸引口から斜め上方に延びる上昇管を備えたスロート管と、上記スロート管の吸引口に向けて洗浄水を噴射してジェットポンプ作用を誘発させるジェットノズルと、給水源から上記ジェットノズルへの洗浄水の供給を給止水する給水弁と、上記給水弁と上記ジェットノズルとをつなぐ給水管と、を備え、上記給水管はジェットノズルに繋がる最も曲率が大きい折り返し部と、上記折り返し部を除くホース部で構成されており、上記折り返し部が上記ホース部より可撓性が低いことを特徴とする。
このように構成された本発明においては、給水管の中でも洗浄水の抵抗を受けやすい曲率が大きい折り返し個所で、給水管が変形せず、給水管内の洗浄水が流れ方向が急激に変わる回数を減少させることができる。これにより、給水管内の水勢が低下、ひいてはジェットノズルからスロート管に向けて噴射される洗浄水の水勢の低下を抑制することができるため、スロート管に水が入る時に巻き込める洗浄水の量を確保することが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記折り返し部は曲率が一定であるように構成されている。
このように構成された本発明においては、曲率が一定であることにより、給水管を流れる水が流れ方向が法則性をもって変化するため、流路内の整流性が保たれると共に、水の圧損を減らすことができる。そのため、ジェットノズルからスロート管に速い流速で吐水されることにより、より多くの水を巻き込みつつスロート管に吐水されることで、排水口のから吐水される洗浄水の瞬間流量を大きくすることができ、ひいてはボウル部の洗浄性能が向上するため、残存汚物を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、曲率大部は曲率大部天井面を構成する上面部と、底面を構成する底面部によって構成されており、上記上面部と底面部は溶接されることを特徴とする。このように構成された本発明においては、水の圧損が減った影響で、曲率大部に流れる洗浄水の流速が高まり、曲率大部に大きな力が加わってしまったとしても、上面部と底面部が接着強度の高い溶接がなされていることで、上面部と底部が外れる故障を防ぐことができる。また、例えば折り返し部にホースを用いた場合、一定以上曲げた際に流路に潰れる箇所が発生し、流経が異なってしまうことが起こるが、上面部と底面部を溶接することで形成するこの構成では、ホースのように設置時に屈曲させることはできないが、折り返し部の曲率を大きくしたとしても潰れが発生しないため、流経が場所によって異なることを防ぎ、取り回しが効く。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄水タンク装置によれば、給水管の中でも洗浄水の抵抗を受けやすい曲率が大きい折り返し個所で、給水管が変形せず、給水管内の洗浄水が流れ方向が急激に変わる回数を減少させることができる。これにより、給水管内の水勢が低下、ひいてはジェットノズルからスロート管に向けて噴射される洗浄水の水勢の低下を抑制することができるため、スロート管に水が入る時に巻き込める洗浄水の量を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示す貯水タンク本体及び小タンクの概略正面断面図。
図5】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体の内部構造を示す平面図である。
図6】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の外装タンク本体の上面図である。
図7】本発明の第1実施形態による便器本体の洗浄水タンク装置の下側からの斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態による便器本体と洗浄水タンク装置の分解斜視図である。
図9】本発明の第1実施形態による第2給水管における折り返し部の位置を示す斜視図である。
図10】本発明の第1実施形態による第2給水管の折り返し部の分解斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態による第2給水管の折り返し部の正面断面図である。
図12】本発明の第1実施形態によるスロート管と分岐管とジェットノズル関係を示す断面図である。
図13】本発明の第1実施形態によるスロート管と分岐管とジェットノズル関係を示す組み立て図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器について説明する。
まず、図1及び図2により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器の基本構造について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を示す平面図であり、図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
【0015】
まず、図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置1を備えた水洗大便器2は、便器本体4を備えている。この便器本体4の後方側の上面には、詳細は後述する本実施形態の洗浄水タンク装置1が配置されている。
つぎに、図1及び図2に示すように、便器本体4は、その前方側に設けられたボウル部6と、ボウル部6の上縁に形成されたリム部8と、このリム部8の内周に形成された棚部10と、を備えている。
また、便器本体4のボウル部6の底部には、トラップ排水路12の入口12aが開口し、このトラップ排水路12は、上方に延びるトラップ上昇管12bと、下方に延びるトラップ下降管12cを備えている。このトラップ排水路12の形状から分かるように、本実施形態による水洗大便器2は、高さ方向の落差により汚物を排出する洗い落とし式便器である。
なお、本実施形態においては、洗い落とし式便器に適用した形態について説明するが、このような形態に限定されず、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式便器の形態等、他の水洗大便器の形態についても適用可能である。
【0016】
つぎに、便器本体4は、洗浄水タンク装置1の排水口14から排出される洗浄水が流入する導水路16と、棚部10の前方から見て左側中央に形成された第1リム吐水口18と、前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口20とを備えている。
また、導水路16は、下流に向かって第1導水路16aと第2導水路16bに分岐し、導水路16の洗浄水が第1導水路16aを経て第1リム吐水口18に到達する一方、第2導水路16bを経て第2リム吐水口20に到達し、洗浄水が、それぞれ、第1リム吐水口18及び第2リム吐水口20から吐水され、ボウル部6を洗浄し、汚物をトラップ排水路12から排出するようになっている。
【0017】
つぎに、図1図8により、本実施形態の洗浄水タンク装置1の詳細について説明する。
まず、図3は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示すブロック図である。また、図4は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の基本構成を示す貯水タンク本体及び小タンクの概略正面断面図。さらに、図5は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の貯水タンク本体の内部構造を示す平面図である。
なお、図3に示す洗浄水タンク装置1においては、便宜上、貯水タンク本体22の内部構造全体に亘って模式的に簡略化しているため、図4及び図5に示す洗浄水タンク装置1の構造の配置とは異なっている。
また、図4に示す洗浄水タンク装置1においても、一部の構造について簡略化している。
さらに、図1図8に示す洗浄水タンク装置1の左右方向については、水洗大便器2の便器本体4の前方側(使用者側)から見て左右方向の左側を「左側」、便器本体4の前方側から見て左右方向の右側を「右側」とそれぞれ定義する。
【0018】
まず、図3図5に示すように、洗浄水タンク装置1は、樹脂製の外装タンクTと、この外装タンクT内に収容される内装タンクである貯水タンク本体22と、水道等の給水源(図示せず)に接続された第一給水管24と、を備えている。
貯水タンク本体22においては、給水管24を経て供給された洗浄水の一部が貯留され、便器本体4の導水路16に供給可能になっている。
また、図4に示すように、貯水タンク本体22は、便器本体4の後方側の比較的低い位置に配置されて、貯水タンク本体22の上端高さ位置が低い、いわゆる、ローシルエットタイプのタンクであり、図5に示すように、平面視において左右方向に長い扁平形状に形成されている。
【0019】
つぎに、図6に示すように、外装タンクT、及び貯水タンク本体22内の湿度が上昇し、外装タンクTから漏水することや、貯水タンク本体22内にある電子部品を高湿度の状態にさらさないために、外気と貯水タンク本体内22の空気の入れ替え、貯水タンク本体22内の湿度の上昇を防ぐ吸気部21を貯水タンク本体22の下部、第一給水管の左後方側に形成されている。また、吸気部21と排出口50bの間に関部23を設ける。
これにより、仮に貯水タンク本体22の下部に結露水が溜まったとしても、関部23によって、吸気部近傍にせき止められた結露水は、近い個所で換気が行われることにより、乾燥が進みやすい。
【0020】
つぎに、図7図8に示すように、外装タンクTを便器本体4に固定する構造において、外装タンクTから便器本体4に固定するためのタンク脚部25を、外装タンクTの4か所に設けている。なお、本実施例はタンク脚部25を設ける数を2か所としているが、設ける数はこれに限らない。
また、外装タンクTには取り付け用のタンク側ボルト穴27が排水口を挟んで左右に1か所ずつ空いており、便器本体にも同じ間隔で便器側ボルト穴29が左右に1か所ずつ空いている。また、2か所のタンク脚部25はタンク側ボルト穴27の近傍に設ける。
外装タンクTと便器本体4の取り付け方は、上から、金板31、外装タンクTのタンク側ボルト穴27、便器本体4の便器側ボルト穴29の順番で取り付けボルト33が穴に通され固定される。この構成によれば、樹脂製の外装タンクTからタンク脚部25が出ており、樹脂を材料とする成形は陶器を材料とする成形に比べて公差を小さくすることができるため、便器本体4の上面へ接触したとしても局所的な応力が発生しないことから、外装タンクTの破損を防ぐことができる。例えば便器本体4側から脚が出ていた場合、便器本体4は陶器を材料としていることが多いため、最悪条件で各脚の差異が高さ方向に3mm生じることも考えられる。
【0021】
つぎに、図3図5に示すように、貯水タンク本体22の内部には、第一給水管24から定流量弁26を介して供給された洗浄水を給止水する給水弁装置28が設けられている。
この給水弁装置28は、定流量弁26よりも下流側の給水路を開閉させる給水弁である主弁30等を備えている。
また、洗浄水タンク装置1は、便器洗浄を開始する際に、給水弁装置28の作動を操作するための操作部である操作装置32(操作レバー32a、駆動回転軸32b)を備えている。
【0022】
つぎに、図3図5を参照して、給水弁装置28の内部構造と作動機構の詳細について説明する。
まず、給水弁装置28は、さらに、ポペット弁34と、フロート36と、フロート側パイロット弁38と、フロート高さ調整機構M1と、を備えている。
ポペット弁34は、操作装置32の操作レバー32a及び駆動回転軸32bの回転操作により主弁30を開閉させる操作側パイロット弁である。また、フロート36は、貯水タンク本体22内の水位WLに応じて浮力により上下動するものである。さらに、フロート側パイロット弁38は、フロート36の上下動により主弁30を開閉させるものである。
また、フロート高さ調整機構M1は、詳細については後述するが、フロート36の上下方向の高さ位置を調整する機構である。
【0023】
つぎに、給水弁装置28の主弁30部分の主要な構造として、パイロット式のダイアフラム弁である主弁体30aと、この主弁体30aが着座する主弁座30bと、内部の圧力により主弁体30aを主弁座30bに対して移動させる圧力室30cとを備えている。
これらにより、給水弁装置28は、主弁体30aが主弁座30bに着座して止水する止水状態、又は、主弁体30aが主弁座30bから離間して給水する給水状態のいずれかの状態に切り替え可能になっている。
また、圧力室30cには、この圧力室30cの圧力を開放するポペット穴34a及びフロート側パイロット穴38aがそれぞれ設けられている。
さらに、圧力室30cのポペット穴34aには、ポペット弁34が開閉可能に設けられている。このポペット弁34は、操作レバー32aと給水弁装置28とを接続する駆動回転軸32bに連結されている。この駆動回転軸32bは、使用者による操作レバー32aの手動操作と連動して軸回りに回転可能になっており、給水弁装置28の作動を操作するための操作部の一部となっている。
さらに、圧力室30cのフロート側パイロット穴38aには、フロート側パイロット弁38が設けられている。このフロート側パイロット弁38は、貯水タンク本体22内の洗浄水の水位WLに応じてフロート36が上下動することにより開閉可能になっている。
【0024】
また、主弁体30aには、ブリード穴(図示せず)が設けられており、止水状態のとき、ブリード穴(図示せず)により第一給水管24の一次側流路Aと圧力室30cの内部とが連通するようになっている。
ここで、ポペット穴34aは、その開口面積がフロート側パイロット穴38aの開口面積よりも大きく形成されている。また、ポペット穴34aは、フロート側パイロット穴38aよりも、図4に示すように、上方位置に形成されている。
【0025】
さらに、図4に示すように、給水弁装置28は、通常は止水状態であり、止水状態では、ポペット穴34a及びフロート側パイロット穴38aは共に閉鎖されており、かつ、第一給水管24の一次側流路Aは、圧力室30cとブリード穴(図示せず)を通じて連通している。
このため、第一給水管24の一次側流路Aと圧力室30cの水圧は、同じ水圧(一次側流路圧力α)、また、第一給水管24の二次側流路Bは大気開放となり、主弁体30aに水圧が作用する面積の方が一次側流路Aの面積よりも大であるため、主弁体30aは、主弁座30bに押し付けられ、閉弁した状態となっている。
【0026】
つぎに、給水弁装置28において、ポペット穴34aがポペット弁34により開放されるか、且つ/又は、フロート側パイロット穴38aがフロート側パイロット弁38により開放されると、圧力室30cから洗浄水が流出し、圧力室30c内の圧力が低下するようになっている。
これにより、主弁体30aが主弁座30bから離間するように移動して開弁し、吐水状態となるようになっている。
【0027】
また、給水弁装置28において、ポペット穴34aがポペット弁34により閉鎖されると共に、フロート側パイロット穴38aがフロート側パイロット弁38により閉鎖されると、圧力室30cの圧力が再び一次側流路圧力αとなり、主弁体30aが主弁座30bに向けて移動し、最終的に閉弁された状態(止水状態)となるようになっている。
このとき、一次側流路Aの洗浄水は、圧力室30c内へブリード穴から少しずつ注入されるため、ポペット穴34a及びフロート側パイロット穴38aが閉鎖されてから、所定時間遅れて、主弁体30aが閉弁状態(止水状態)となるようになっている。
なお、給水弁装置28の下流側の給水路には、真空破壊弁40を介して接続されたジェットポンプユニット42(詳細は後述する)が設けられている。
【0028】
つぎに、図3図5を参照して、ジェットポンプユニット42の詳細について説明する。
まず、図3図5に示すように、ジェットポンプユニット42は、真空破壊弁40から延びる第二給水管44の下流側に設けられており、上流側から下流側に向かって、ジェットノズル46、流路切替弁48、及び、スロート管50をそれぞれ備えている。第二給水管44は上流側が可撓性の高いホース44a、下流側が可撓性の低い折り返し部45によって形成されている。ここでいう可撓性とは、物体が柔軟であり、撓ませることが可能な性質のことを指す。つまり、可撓性が高い程、物質の弾性変形がしやすい。
また、これらのジェットノズル46、流路切替弁48、及び、スロート管50の吸引口50aのそれぞれは、貯水タンク本体22における左右一方側(図3に貯水タンク本体22を正面側から見て右側)から下方に突出するジェットノズル収容部H内に配置されている。
【0029】
図3図5に示すように、ジェットポンプユニット42のジェットノズル46は、貯水タンク本体22の内部において少なくとも一部が水没した状態で配置されており、真空破壊弁40から延びる第二給水管44から供給された洗浄水を噴射するものである。
なお、真空破壊弁40は、外部から空気を吸入し、真空破壊弁40からジェットノズル46までの第二給水管44内が負圧にならないようにするためのものである。
【0030】
つぎに、図3図5に示すように、ジェットポンプユニット42の流路切替弁48は、ジェットノズル46の下流側近傍に設けられ、ジェットノズル46から噴射された洗浄水の流路を貯水タンク本体22内の水位WLに応じて切り替え可能になっている。
また、図3図5に示すように、ジェットポンプユニット42のスロート管50は、流路切替弁48の下流側近傍に設けられている。このスロート管50の一端(上流端)には、吸引口50aが形成されている一方、スロート管50の他端(下流端)には、洗浄水を排出させる排出口50bが形成されている。
さらに、スロート管50は、図4に示すように、吸気口50aから流入してきた洗浄水を斜め上方に導くスロート上昇管50cと、上昇させた洗浄水を排出口50bに導くスロート下降管50dに分かれており、管形状が、例えば、逆U字形状(或いは、他の言い方をすれば、逆J字形状、又はグースネック型形状)に形成されている。これにより、使用者が洗浄動作を開始させ、貯水タンク本体22内の洗浄水が減少してきて、スロート上昇管50cとスロート下降管50dを繋ぐ箇所が貯水タンク本体22内の洗浄水からスロート管50の上部が出たとしても、洗浄水を便器本体に供給可能である。
また、スロート管50が上に凸の逆U字形状のため、吸引口50aに流入させる洗浄水はジェットノズル46から斜め上方に吐水する必要がある。そのため、ジェットノズル46に洗浄水を導く第二給水管44は、貯水タンク本体22の上方に設置された真空破壊弁40から来る下方向の洗浄水を上方向に流れを折り返し部45が変更する。
【0031】
つぎに、図6図8に示す折り返し部45は、結晶性樹脂であるPBTを材料としており、詳しくは高摺動のフッ素樹脂を含まない材料を使用している(折り返し部45を除く第二給水管44はPBTより硬度の低いEPDMによって構成されている)。この構成によれば、第二給水管44の中でも洗浄水の抵抗を受けやすい曲率が大きい折り返し部45で硬度が高いことにより第二給水管44が変形せず、第二給水管44内の洗浄水が流れ方向が急激に変わる回数を減少させることができる。これにより、第二給水管44内の洗浄水の水勢が低下、ひいてはジェットノズル46からスロート管50に向けて噴射される洗浄水の水勢の低下を抑制することができるため、スロート管50に水が入る時に巻き込める洗浄水の量を確保することが可能である。従来は折り返し部45がEPDMによって製作されていたため、洗浄水が折り返し部45を通る際に、第二給水管44がしなるように動くことで、第二給水管44内の水勢が弱まる原因となっていた。
【0032】
また、図7に示す通り、折り返し部45はジェットノズル46に繋がり折り返し部45の上部領域を形成する折り返し上面部45aと、下部領域を形成する折り返し底面部45bの2部品を超音波溶着によって接合する。これにより、水の圧損が減った影響で、折り返し部45に流れる洗浄水の流速が高まり、折り返し部45に大きな力が加わってしまったとしても、折り返し上面部45aと折り返し底面部45bが接着強度の高い溶接がなされていることで、折り返し上面部45aと折り返し底面部45bが外れる故障を防ぐことができる。
ここで、ジェットノズル46は、スロート管50の吸引口50aと対向するように配置されている。これらのスロート管50の吸引口50aとジェットノズル46は、常時、貯水タンク本体22内で水没した状態となっている。
【0033】
また、図8に示す通り、折り返し部45は曲率が一定で構成されており、第二給水管44を流れる水が法則性をもった変化をするため、流路内の整流性が保たれると共に、水の圧損を減らすことができる。具体的には、折り返し部45は平面視で半円形状、且つ流経が一定である。
【0034】
また、図3及び図4に示すように、流路切替弁48は、ジェット噴射した洗浄水の流路について、貯水タンク本体22内の水位WLに応じて、便器本体4側に連通する便器洗浄用流路52、又は、貯水タンク本体22側に連通するタンク貯水用流路54のいずれか一方に切り替え可能になっている。
具体的には、便器洗浄用流路52は、便器本体4のボウル部6の洗浄時において、流路切替弁48によりスロート管50の吸引口50aが開放され、ジェットノズル46からジェット噴射した洗浄水について、スロート管50の吸引口50aに流入させる流路である。この流路により、スロート管50内に流入した洗浄水は、スロート管50の排出口50bを流出し、洗浄水タンク装置1の排水口14から便器本体4の導水路16側に排出されるようになっている。
一方、タンク貯水用流路54は、貯水タンク本体22の貯水時において、流路切替弁48によりスロート管50の吸引口50aが閉鎖され、ジェットノズル46からジェット噴射した洗浄水について、スロート管50内に流入させずに、スロート管50の外部の貯水タンク本体22内に差し向ける流路である。
【0035】
ちなみに、流路切替弁48が便器洗浄用流路52に設定された場合には、ジェットノズル46がスロート管50の吸引口50aから内部に向けて洗浄水をジェット噴射することにより、スロート管50内を流れる洗浄水の流量について、ジェットノズル46から噴射された洗浄水の流量よりも増大させる、いわゆる、「ジェットポンプ作用」が誘発されるようになっている。これにより、増大した流量の洗浄水がスロート管50の排出口50bから排水口14を経て便器本体4の導水路16に向けて供給されるようになっている。
なお、本明細書中に記載されている「ジェットポンプ作用」という用語については、ジェットノズル46からスロート管50の吸引口50aに向けて噴射される勢いのある洗浄水の流れ自体が、ポンプ等の他の機械要素に依存することなく、直接的にスロート管50の吸引口50aの近傍等の周囲の洗浄水を引き込むような負圧を形成し、この負圧を利用してスロート管50内に吸い込んだ貯水タンク本体22内の洗浄水を便器本体4側へ搬送する作用を意味する。
【0036】
また、図4及び図5に示すように、貯水タンク本体22内には、上下方向に延びるオーバーフロー管56が設けられている。このオーバーフロー管56は、ジェットポンプユニット42のスロート管50の上下方向に延びる下降管部38bに隣接して設けられており、その下端が排水口14に連通している。
これにより、貯水タンク本体22内の水位WLが止水水位WL0よりも上昇してオーバーフロー管56のオーバーフロー口56aの位置を上回った洗浄水は、オーバーフロー管56内に流入し、排水口14から便器本体4の導水路16に補給水として供給されるようになっている。
さらに、図3図5に示すように、貯水タンク本体22内には、タンク貯水用流路54の一部とオーバーフロー口56aとを接続する分岐管58が設けられている。
これにより、タンク貯水用流路54の洗浄水の一部は、分岐管58を介してオーバーフロー管56内へ流入し、排水口14から便器本体4の導水路16に供給され、最終的には、便器本体4で封水を形成する補給水として利用されるようになっている。
【0037】
また、図9図10に示すように、分岐管58は、スロート管50とジェットノズル46と共にネジ59によって固定される。分岐管58には回転止め凸部58a、ジェットノズル46には回転止め凹部46bがあり、各々をはめ込むことにより、ネジ止めの他に勘合手段を有する。通常、3部品で固定しているため、本来であれば樹脂の応力緩和によって変形量が大きくなり、結果的にネジが緩んでジェットノズル46とスロート管50の相対位置が変化するため、ジェットポンプ性能に悪影響があるところを、勘合手段をネジ止めの他にもう一つ有することにより、ネジの緩みを抑制でき、ひいてはジェットポンプ性能への悪影響を減少させることができる。
【0038】
また、分岐管58には組み立て時にジェットノズル46に固定するためのスナップフィット61を備えている。なお、スナップフィット61とジェットノズル46には固定後、微小に隙間をもつよう設計してあるため、分岐管58が受ける洗浄水による力はスナップフィット61に伝わる事はない。分岐管58が洗浄水の力により回転を行う際は、回転中心Oを中心に、回転方向eに回転しようとするため接触点Pが分岐管58とジェットノズル46の接触箇所となる。
【0039】
つぎに、図4及び図5に示すように、洗浄水タンク装置1は、貯水タンク本体22内に設けられた大小洗浄切替装置60を備えており、この大小洗浄切替装置60により大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれか一方の洗浄モードに切り替え可能になっている。
また、大小洗浄切替装置60は、貯水タンク本体22内に設けられた大小洗浄切替用の小タンク62と、この小タンク62に設けられた大小洗浄切替弁装置64とを備えている。
図4に示すように、大小洗浄切替装置60が大洗浄モードに切り替えられている場合には、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体64aが開弁状態となって小タンク62の切替開口部62aを開放するようになっている。
一方、大小洗浄切替装置60が小洗浄モードに切り替えられている場合には、大小洗浄切替弁装置64の切替弁体64aが閉弁状態となって小タンク62の切替開口部62aを閉鎖するようになっている。
【符号の説明】
【0040】
1 本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置
2 水洗大便器
4 便器本体
6 ボウル部
8 リム部
10 棚部
12 トラップ排水路
12a トラップ排水路の入口
12b トラップ上昇管
12c トラップ下降管
14 排水口
16 便器本体の導水路
16a 第1導水路
16b 第2導水路
18 第1リム吐水口
20 第2リム吐水口
21 吸気部
22 貯水タンク本体
23 関部
24 第一給水管
25 タンク脚部
26 定流量弁
27 タンク側ボルト穴
28 給水弁装置
28a 給水弁装置の本体部
28b ヒンジ部
29 便器側ボルト穴
30 主弁(給水弁)
30a 主弁体
30b 主弁座
30c 圧力室
31 金板
32 操作装置(操作部)
32a 操作レバー(操作部)
32b 駆動回転軸(操作部)
33 取り付けボルト
34 ポペット弁
34a ポペット穴
36 フロート
36a フロート本体
36b フロート軸
36c 雄ねじ溝(雄ねじ)
36d フロート軸回転規制用の縦凹部(フロート軸回転規制部、嵌合凹部)
36e フロート本体の短辺
36f フロート本体の長辺
38 フロート側パイロット弁
38a フロート側パイロット穴
40 真空破壊弁
42 ジェットポンプユニット
44 第二給水管
44a ホース部
46 ジェットノズル
46a 回転止め凹部
45 折り返し部
45a 折り返し上面部
45b 折り返し底面部
48 流路切替弁
50 スロート管
50a 吸引口
50b 排出口
50c スロート上昇管
50d スロート下降管
52 便器洗浄用流路
54 タンク貯水用流路
56 オーバーフロー管
56a オーバーフロー口
58 分岐管
58a 回転止め凸部
59 ネジ
60 大小洗浄切替装置
61 スナップフィット
62 大小洗浄切替用の小タンク
62a 切替開口部
64 大小洗浄切替弁装置(大小洗浄切替弁)
64a 切替弁体
A 給水管の一次側流路
B 給水管の二次側流路
T 外装タンク
O 回転中心
e 回転方向
P 接触点
WL 水位
WL0 止水水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13