(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/457 20210101AFI20250311BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20250311BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20250311BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/451
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/46
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/423
H01M50/429
H01M50/42
(21)【出願番号】P 2020198669
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020089598
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】加門 慶一
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信康
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛子
(72)【発明者】
【氏名】佃 明光
(72)【発明者】
【氏名】今津 直樹
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054725(JP,A)
【文献】特許第5647378(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/017213(WO,A1)
【文献】特開2013-235824(JP,A)
【文献】特開2020-77618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、該多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子と有機樹脂を含有する多孔質層を有し、該多孔質層を厚さ方向に3等分し、それぞれ前記多孔質基材に接する内側層、該内側層に隣接する中間層、該中間層に隣接する外側層とするとき、下記(a)から(c)を満た
し、かつ前記有機樹脂が、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を有する有機樹脂Aである、二次電池用セパレータに用いられる、多孔性フィルム。
(a)前記外側層に存在する有機樹脂の含有率αが、全ての有機樹脂の含有量の30%以上60%以下。
(b)前記中間層に存在する有機樹脂の含有率βが、全ての有機樹脂の含有量の10%以上25%以下。
(c)前記内側層に存在する有機樹脂の含有率γが、全ての有機樹脂の含有量の30%以上60%以下。
【請求項2】
前記有機樹脂が有機樹脂粒子である請求項1に記載の多孔性フィルム。
【請求項3】
前記有機樹脂がバインダーを更に含む、請求項
1または請求項2に記載の多孔性フィルム。
【請求項4】
前記バインダーがポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ウレタンからなる群から選ばれる少なくとも1つのバインダーである、請求項
3に記載の多孔性フィルム。
【請求項5】
前記バインダーがアクリル樹脂である、請求項
3または請求項4に記載の多孔性フィルム。
【請求項6】
前記有機樹脂Aが、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体からなる重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を有し、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率が、前記有機樹脂Aの全構成成分を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下である、請求項
1から請求項5のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項7】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度が-100℃以上0℃以下である、請求項
6に記載の多孔性フィルム。
【請求項8】
前記有機樹脂Aは、1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体をさらに含み、有機樹脂Aに含有される前記1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体の含有率が1質量%以上10質量%以下である、請求項
6または請求項7に記載の多孔性フィルム。
【請求項9】
前記1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体が、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはウレタンジ(メタ)アクリレートである、請求項
8に記載の多孔性フィルム。
【請求項10】
前記有機樹脂が、フッ素を含有しない有機樹脂Bを含有する、請求項1から請求項
9のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項11】
前記多孔質層に含まれる無機粒子の含有率が、多孔質層の全構成成分を100質量%としたとき、60質量%以上95質量%以下である、請求項1から請求項
10のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項12】
請求項1から請求項
11のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータ。
【請求項13】
請求項
12に記載の二次電池用セパレータを用いてなる二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のような二次電池は、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの自動車用途や、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機などのポータブルデジタル機器、電動工具、電動バイク、電動アシスト補助自転車などに幅広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般的に、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成を有している。
【0004】
二次電池用セパレータとしては、ポリオレフィン系多孔質基材が用いられている。二次電池用セパレータに求められる特性としては、多孔構造中に電解液を含み、イオン移動を可能にする特性と、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、イオン移動を停止させることで、放電を停止させるシャットダウン特性が挙げられる。
【0005】
また、二次電池の高容量化、高出力化に伴い、二次電池用セパレータには高い安全性が求められており、高温時に二次電池用セパレータが熱収縮することで発生する正極と負極の接触による短絡を防ぐための、熱寸法安定性が求められてきている。
【0006】
さらに、二次電池の製造工程において、正極、セパレータ、負極を積層した積層体を運搬する際に、積層体構造を維持するため、または、捲回した正極、セパレータ、負極の積層体を円筒型、角型などの缶に挿入する場合、積層体を熱プレスしてから挿入するが、その際に形が崩れないようにするため、もしくは、積層体を熱プレスすることで、より多くの積層体を缶の中に入れ、エネルギー密度を高くするため、さらにはラミネート型において、外装材に挿入した後に形状が変形しないようにするために、電解液を含浸する前のセパレータと電極との接着性が求められている。
【0007】
また一方では、リチウムイオン電池には、高出力化、長寿命化といった優れた電池特性も求められており、高出力特性を低下させることなく、良好な電池特性の持続性を発現することが求められている。
さらには、上記特性を満たした二次電池用セパレータを低コストで提供することが求められている。
【0008】
これらの要求に対して、特許文献1では、耐熱層上に形成された接着層を積層することで電極との接着性と耐ブロッキング性との両立を図っている。また、特許文献2では、粒子状重合体の粒子径と無機粒子の粒子径が特定の関係を満たすことで電極との接着性を高めている。しかし、特許文献1および2に記載の耐ブロッキング性試験では試験条件が不十分であり、適切な試験条件の元では特許文献1に記載の技術では耐ブロッキング性が不十分であり、耐ブロッキング性を向上させると電極との接着性が不十分となる。また、熱プレスを行うことで接着層が膨潤し、電極活物質やセパレータの空隙を埋めることで空隙率が低下し、イオン輸送率が下がるために電池特性も低下してしまう。さらには、特許文献1は、耐熱層上に接着剤層を塗工するため高コストな二次電池用セパレータであることから、特許文献1および2に記載の技術では、熱寸法安定性、接着性、および電池特性の両立を低コストで達成することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6191597号公報
【文献】国際公開第2018/034094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のとおり、二次電池の製造工程における熱プレス工程によって電極とセパレータの接着性が求められる。また優れた電池特性も求められており、熱寸法安定性、接着性、並びに高出力特性および電池特性の長寿命化の両立を低コストで達成することが必要である。
【0011】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた放電特性とサイクル特性を有する多孔性フィルムを低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する低コスト多孔性フィルムを提供するために、鋭意検討を重ねた。
上記課題を解決するため本発明の多孔性フィルムは次の構成を有する。
【0013】
(1)多孔質基材と、該多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子と有機樹脂を含有する多孔質層を有し、該多孔質層を厚さ方向に3等分し、それぞれ前記多孔質基材に接する内側層、該内側層に隣接する中間層、該中間層に隣接する外側層とするとき、下記(a)から(c)を満たし、かつ前記有機樹脂が、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を有する有機樹脂Aである、二次電池用セパレータに用いられる、多孔性フィルム。
(a)前記外側層に存在する有機樹脂の含有率αが、全ての有機樹脂の含有量の30%以上60%以下。
(b)前記中間層に存在する有機樹脂の含有率βが、全ての有機樹脂の含有量の10%以上25%以下。
(c)前記内側層に存在する有機樹脂の含有率γが、全ての有機樹脂の含有量の30%以上60%以下。
(2)前記有機樹脂が有機樹脂粒子である(1)に記載の多孔性フィルム。
(3)前記有機樹脂がバインダーを更に含む、(1)または(2)に記載の多孔性フィルム。
(4)前記バインダーがポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ウレタンからなる群から選ばれる少なくとも1つのバインダーである、(3)に記載の多孔性フィルム。
(5)前記バインダーがアクリル樹脂である、(3)または(4)に記載の多孔性フィルム。
(6)前記有機樹脂Aが、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体からなる重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を有し、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率が、前記有機樹脂粒子の全構成成分を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下である、(1)から(5)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(7)前記水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度が-100℃以上0℃以下である、(6)に記載の多孔性フィルム。
(8)前記有機樹脂Aは、1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体をさらに含み、有機樹脂Aに含有される前記1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体の含有率が1質量%以上10質量%以下である、(6)または(7)に記載の多孔性フィルム。
(9)前記1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体が、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはウレタンジ(メタ)アクリレートである、(8)に記載の多孔性フィルム。
(10)前記有機樹脂が、フッ素を含有しない有機樹脂Bを含有する、(1)から(9)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(11)前記多孔質層に含まれる無機粒子の含有率が、多孔質層の全構成成分を100質量%としたとき、60質量%以上95質量%以下である、(1)から(10)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(12)(1)から(11)のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータ。
(13)(12)に記載の二次電池用セパレータを用いてなる二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多孔性フィルムによれば、多孔質基材と、多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子と有機樹脂を含有する多孔質層を有し、この多孔質層を厚さ方向に3等分する内側層、中間層、および外側層とするとき、有機樹脂の全含有量に対し、(a)外側層に存在する有機樹脂の含有率αが30%以上60%以下、(b)中間層に存在する有機樹脂の含有率βが10%以上25%以下、(c)内側層に存在する有機樹脂の含有率γが30%以上60%以下を満たすことで、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する二次電池を低コストで提供可能にする多孔性フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多孔性フィルムは、多孔質基材および多孔質層からなり、多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子と電極に対して接着性を有する有機樹脂を含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、「フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体」とは、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなるホモポリマーまたはフッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体をいう。また、「有機樹脂」は「有機樹脂A」を含み、「有機樹脂A」として、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなるホモポリマー、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体からなるホモポリマー、特定の単量体群を構成する単量体からなるホモポリマー、およびフッ素含有(メタ)アクリレート単量体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体からなる共重合体をいうことがある。
【0017】
[多孔質層]
本実施形態の多孔質層は無機粒子と有機樹脂Aからなる有機樹脂を含有する。また、有機樹脂は、有機樹脂A以外に、任意にバインダーおよび有機樹脂Bを含んでもよい。
【0018】
多孔質層は、厚さ方向に3等分し、それぞれ多孔質基材に接する内側層、内側層に隣接する中間層、中間層に隣接する外側層とするとき、下記(a)から(c)を満たすことで、多孔性フィルムは、電極との高い接着性と優れた熱寸法安定性、および電池特性が得られる。
(a)外側層に存在する有機樹脂の含有率をαとしたとき、αの値が多孔質層を構成する全ての有機樹脂の含有量を100%とした場合、30%以上60%以下で、好ましくはαが35%以上55%以下、より好ましくは40%以上50%以下である。αの値が30%未満の場合、十分な電極との接着性が得られない。一方、αの値が60%より大きい場合、多孔質層と多孔質基材の接着強度が低下し、電極と接着させた際に剥離が生じる場合がある。
(b)中間層に存在する有機樹脂の含有率をβとしたとき、βの値が多孔質層を構成する全ての有機樹脂の含有量を100%とした場合、10%以上25%以下で、好ましくはβが12%以上22%以下で、より好ましくは15%以上20%以下である。βの値が10%未満の場合、イオン透過性が低下し、電池特性が低下する場合がある。一方、25%を超える場合、α値が低下するため、十分な電極との接着性が得られなく、また後述するγ値が低下するため、多孔質層と多孔質基材の接着強度が低下し、電極と接着させた際に剥離が生じる場合がある。
(c)内側層に存在する有機樹脂の含有率をγとしたとき、γの値が多孔質層を構成する全ての有機樹脂の含有量を100%とした場合、30%以上60%以下で、好ましくはγが35%以上55%以下、より好ましくは40%以上50%以下である。γの値が30%未満の場合、多孔質層と多孔質基材の接着強度が低下し、電極と接着させた際に剥離が生じる場合がある。一方、γの値が60%より大きい場合、αの値が低下し、十分な電極との接着性が得られない。
【0019】
多孔質層を厚さ方向に3等分した外側層、中間層、内側層のうち、内側層は多孔質基材と多孔質層の界面を含む層であり、外側層は多孔質層の最表面であって、電極と接する層である。また、中間層は、内側層および外側層の間に介在する層である。
【0020】
外側層、中間層および内側層における有機樹脂の含有率α、βおよびγは、例えば多孔質層の断面を電解放射型走査電子顕微鏡により、断面SEM画像と炭素元素の断面SEM-EDX画像を観察することにより決定することができる。断面SEM画像に基づき、多孔質層を厚さ方向3等分し、外側層、中間層および内側層の各領域を決定する。断面SEM画像と炭素元素の断面SEM-EDX画像を重ね合わせ、外側層、中間層および内側層の各領域に含まれる有機樹脂に起因する炭素元素の面積を画像解析ソフトで解析する。得られた外側層、中間層および内側層の炭素元素の面積の合計を、多孔質層に存在する有機樹脂の合計100%とし、外側層、中間層および内側層の炭素元素の面積割合を算出し、有機樹脂の含有率α、βおよびγとすることができる。
【0021】
(有機樹脂)
(1)有機樹脂A
本明細書において、多孔質層は有機樹脂を含有する。有機樹脂の形態は特に限定しないが、有機樹脂粒子であることが望ましい。有機樹脂粒子とすることでイオン透過性が向上して、電池特性が向上する。
【0022】
有機樹脂は、有機樹脂Aを含有する。有機樹脂Aはフッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を有することが望ましい。これにより、有機樹脂Aの表面自由エネルギーを低下させることができ、有機樹脂Aを含有する塗工液を多孔質基材に塗工した際に、有機樹脂Aを表面側に偏在することができ、多孔質層の電極との接着性を向上することができる。本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0023】
フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体は、フッ素含有(メタ)アクリレートを重合して得られる繰り返し単位を含む。
フッ素含有(メタ)アクリレート単量体としては、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。フッ素含有(メタ)アクリレート単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0024】
有機樹脂Aに含まれるフッ素含有(メタ)アクリレート単量体の含有率は、有機樹脂Aの全構成成分を100質量%としたとき、20質量%より大きいことが好ましく、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、一層好ましくは30質量%以上である。また、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、一層好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは35質量%以下である。上記範囲とすることで、十分な電極との接着性が得られる。
【0025】
なお、有機樹脂Aに含まれるフッ素含有(メタ)アクリレート単量体の含有率は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(1H-NMR、19F-NMR、13C-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法(EDX)、および元素分析法、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(熱分解GC/MS)などにより、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を示すシグナル強度から算出することができる。特に熱分解GC/MSによってフッ素含有(メタ)アクリレート単量体の存在有無を確認した後、13C-NMR(固体NMR試料管に前記有機樹脂成分と適当量の溶媒(重クロロホルム)を充填し、一晩静置後にDD/MAS法にて測定)によって、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体の含有率を求めることができる。
【0026】
フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を構成するフッ素含有(メタ)アクリレートのフッ素原子数は、3以上13以下が好ましい。より好ましくは3以上11以下、さらに好ましくは3以上9以下である。上記範囲にすることで、有機樹脂Aの低表面自由エネルギー化と塗工性を両立することができる。フッ素原子数が3以上の場合は有機樹脂Aの表面自由エネルギーの低下が十分となり、電極との接着性が十分となる。また、フッ素原子数が13以下の場合、多孔質基材への塗工性が担保され、生産性が向上する。
【0027】
なお、フッ素含有(メタ)アクリレートのフッ素原子数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解し、無機粒子と分離する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(1H-NMR、19F-NMR、13C-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法(EDX)、および元素分析法、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(熱分解GC/MS)などにより、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を示すシグナル強度から算出することができる。この中でも特に熱分解GC/MSが有用である。
【0028】
有機樹脂Aは、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体からなる重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を含有することが好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体からなる重合体を含む混合物、又は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体と水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体を含有することにより、有機樹脂Aのガラス転移温度を調整し、電極との接着性に優れた有機樹脂粒子を得ることができる。
【0029】
水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率は、有機樹脂Aの全構成成分を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましい。より好ましくは2質量%より大きく、さらに好ましくは4質量%以上、一層好ましくは6質量%以上、とりわけ好ましくは10質量%以上、特に好ましくは10質量%超、最も好ましくは12質量%以上である。また、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。有機樹脂Aに含有される水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率が1質量%以上とすることで、十分な電極との接着性が得られ、電解液との親和性向上により電池特性が向上し、また、多孔質基材、無機粒子との接着性向上により熱寸法安定性を向上することができる。さらには、粒子形成後の安定性に優れた粒子が得られる。また、30質量%以下とすることで、粒子形成後の安定性に優れた粒子が得られ、また二次電池内での副反応を抑制し、優れた電池特性を付与することができる。
【0030】
なお、有機樹脂Aに含まれる水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(1H-NMR、19F-NMR、13C-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法(EDX)、および元素分析法、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(熱分解GC/MS)などにより、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体を示すシグナル強度から算出することができる。特に熱分解GC/MSによって水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の存在有無を確認した後、13C-NMR(固体NMR試料管に前記有機樹脂成分と適当量の溶媒(重クロロホルム)を充填し、一晩静置後にDD/MAS法にて測定)によって、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率を求めることができる。
【0031】
水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体として、例えばヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、5-ヒドロキシペンチルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、7-ヒドロキシヘプチシルメタクリレート、8-ヒドロキシオクチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。特に、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートが好ましい。
【0032】
水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度は、好ましくは-100℃以上、より好ましくは-70℃以上、さらに好ましくは-50℃以上である。上記範囲とすることで、十分な電極との接着性が得られる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(C)からなるホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-20℃以下である。ここでガラス転移温度とは、JIS K7121:2012に従って、示差走査熱量測定(DSC)により測定された中間点ガラス転移温度とする。中間点ガラス転移温度は、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。
【0033】
有機樹脂Aは1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体をさらに含むことが好ましい。1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなる重合体又はフッ素含有(メタ)アクリレート単量体と1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなる共重合体を含有するとよい。1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなる重合体又はフッ素含有(メタ)アクリレート単量体と1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなる共重合体を含有することにより、電解液への膨潤性を抑制した耐電解液性に優れ、かつ電極との接着性に優れた重合体粒子を得ることができる。「1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなる重合体」とは、1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなるホモポリマーまたは1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体を含む共重合体をいう。
【0034】
1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体の含有量は、有機樹脂A全体を100質量%とするとき、好ましくは1質量%以上10質量%以下である。より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは6質量%以上である。また、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体を1質量%以上とすることで、十分な電極との接着性が得られ、また過剰な電解液への膨潤を抑制することで電池特性を向上することができる。また、10質量%以下とすることで、安定性に優れた重合体粒子とすることができる。
【0035】
1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体からなる重合体としては、重合する際に架橋構造を形成しうる単量体を用いることができる。1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体として、特に、1分子あたり2個以上の反応性基を有する(メタ)アクリレート単量体を用いることが好ましく、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びウレタンジ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0036】
より具体的には、1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体は、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つ以上のオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体や、1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が挙げられる。オレフィン性二重結合は1分子あたり1つでもよく、2つ以上でもよい。熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、N-メチロールアミド基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
熱架橋性の架橋性基であるエポキシ基及び1分子あたり1つ以上のオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o-アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5-エポキシ-2-ペンテン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-9-デセンなどのアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル-4-ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル-4-メチル-3-ペンテノエート、3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4-メチル-3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0038】
熱架橋性の架橋性基であるN-メチロールアミド基及び1分子あたり1つ以上のオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体の例としては、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0039】
熱架橋性の架橋性基であるオキサゾリン基及び1分子あたり1つ以上のオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体の例としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンが挙げられる。
【0040】
1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン-トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン-ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
1分子あたり2個以上の反応性基を有する単量体は、その単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度が、好ましくは-50℃以上0℃以下であるとよい。より好ましくは、-45℃以上0℃以下であるとよい。ここでガラス転移温度とは、JIS K7121:2012に従って、示差走査熱量測定(DSC)により測定された中間点ガラス転移温度とする。中間点ガラス転移温度は、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とする。
【0042】
本発明において、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなる重合体は、任意に特定の単量体群から選ばれる単量体からなる重合体を含むことができる。また、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体は、任意に特定の単量体群から選ばれる単量体を含む共重合体でもよい。特定の単量体群から選ばれる単量体を含む共重合体にすることで、有機樹脂Aの表面自由エネルギーとガラス転移温度を所定の条件に調整することができる。
【0043】
特定の単量体群から選ばれる単量体からなる重合体をコアとして、その周辺にフッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体をシェルとして形成させたコアシェル型にすることもできる。本明細書におけるコアシェル型とは、コア部をシェル部が全面被覆しているものに加え、コア部を部分的に被覆し、コア部とシェル部が共存しているものも含む。
【0044】
特定の単量体群を構成する単量体としては、不飽和カルボン酸単量体、(メタ)アクリレート単量体、スチレン系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体、アミド系単量体などが挙げられる。
これら特定の単量体群を構成する単量体として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ドデシルアクリレート、2-ジメチルアミノエチルアクリレート、2-ジエチルアミノエチルアクリレート、2-ジプロピルアミノエチルアクリレート、2-ジフェニルアミノエチルアクリレート、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-ジプロピルアミノエチルメタクリレート、2-ジフェニルアミノエチルメタクリレート、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。特定の単量体群を構成する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0045】
有機樹脂Aに含有される、特定の単量体群から選ばれる単量体の含有率は、有機樹脂Aの全構成成分を100質量%としたとき、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上である。また、80質量%以下が好ましい。より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、最も好ましくは65質量%以下である。有機樹脂Aに含有される特定の単量体群の含有率を20質量%以上とすることで、十分な電極との接着性が得られる。また80質量%以下とすることで、電解液への膨潤性を抑制でき、優れた電池特性が得られる。
【0046】
特定の単量体群の中でも、有機樹脂Aの作製時における粒子融着性低減を目的として、(メタ)アクリレート単量体の少なくとも1つが単環基の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体または1つ以上のアルキル基で置換されている(メタ)アクリレート単量体単位であることが好ましい。単環基の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体の場合、粒子融着性低減が顕著となるため、さらに好ましい。
【0047】
有機樹脂Aに含有される、単環基の環状炭化水素基を有するアクリレート単量体、および単環基の環状炭化水素基を有するメタクリレート単量体の含有率としては、有機樹脂Aの全構成成分を100質量%としたとき、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、最も好ましくは50質量%以上である。また、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、最も好ましくは65質量%以下である。有機樹脂Aに含有される単環基の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率を20質量%以上とすることで、十分な電極との接着性が得られる。また80質量%以下とすることで、電解液への膨潤性を抑制でき、優れた電池特性が得られる。
【0048】
また、ガラス転移温度を所定の温度に調整する目的、または二次電池の非水電解液を構成する鎖状カーボネートに対する耐薬品性を高める目的として、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン系、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系、アクリルアミドなどのアミド系などの単量体を、有機樹脂Aに含むことができる。これらのうち、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでもよい。
【0049】
有機樹脂Aを形成する、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体からなるホモポリマー、およびフッ素含有(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体の重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いてもよい。重合により水系溶媒に有機樹脂Aが分散した水溶液が得られる。こうして得られた水溶液をそのまま用いてもよく、または水溶液から有機樹脂Aを取り出して用いてもよい。有機樹脂には、任意に特定の単量体群を構成する単量体を含むことが好ましく、また、共重合体とすることで、電解液への膨潤性抑制、接着強度を向上することができる。
【0050】
重合する際には、乳化剤として、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。これらのうち、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等が好ましい。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。一般的には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が使用される。
【0054】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルナトリウム塩、イミダゾリンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0055】
また、乳化剤として、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルポリオキシエチレン、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸アンモニウム等のフッ素系界面活性剤を使用することもできる。
【0056】
さらに、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な、いわゆる反応性乳化剤、例えばスチレンスルホン酸ナトリウム塩、アリルアルキルスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル等を使用することができ、特に2-(1-アリル)-4-ノニルフェノキシポリエチレングリコール硫酸エステルアンモニウム塩と2-(1-アリル)-4-ノニルフェノキシポリエチレングリコールとの併用が好ましい。
【0057】
乳化剤の使用量は、有機樹脂Aに含まれる単量体の合計量100質量部当たり、好ましくは0.05質量部以上10質量部以下である。
【0058】
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性重合開始剤、あるいはこれらの水溶性重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤を使用することができる。これらの中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが好ましい。還元剤としては、例えば、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸またはその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、グルコース等が挙げられる。これらの中でも、L-アスコルビン酸またはその塩が好ましい。
【0059】
重合開始剤の使用量は、有機樹脂Aに含まれる単量体の合計量100質量部当たり、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
【0060】
本明細書における有機樹脂Aとは、粒子形状が好ましく、有機樹脂粒子Aとするとよい。有機樹脂粒子Aは粒子形状を有するものに加え、部分的に造膜し、周辺の粒子およびバインダーと融着しているものも含む。その形状は、特に制限されず、球状、多角形状、扁平状、繊維状等のいずれであってもよい。
【0061】
有機樹脂粒子Aの平均粒径は、0.01μm以上が好ましい。より好ましくは0.082μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上、最も好ましくは0.12μm以上である。また、5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、最も好ましくは0.3μm以下である。平均粒径を0.01μm以上とすることで、多孔質構造となり、電池特性が良好となる。また、5μm以下とすることで、多孔質層の膜厚が適切となり、電池特性の低下を抑制できる。
【0062】
有機樹脂粒子Aの平均粒径は以下の方法を用いて測定できる。電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-3400N)を用いて、多孔質層の表面を倍率3万倍の画像と、無機粒子と有機樹脂粒子からなる多孔質層に置いて無機粒子のみが含有する元素のEDX画像を得る。画像サイズは4.0μm×3.0μm、画素数は1,280画素×1,024画素であり、1画素の大きさは3.1nm×2.9nmとする。得られたEDX画像の中で無機粒子以外の粒子を本発明の有機樹脂粒子Aとする。目視で区別できないときには元素分析でフッ素元素を含有するものを有機樹脂粒子Aとする。画像上で1つの粒子を完全に囲む面積が最も小さい正方形または長方形を描き、すなわち、正方形または長方形の4辺に粒子の端部が接している正方形または長方形を描き、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺の長さ(長軸径)を粒径として、画像上の全ての有機樹脂粒子Aについてそれぞれの粒径を測定し、その算術平均値を平均粒径とした。撮影した画像中に50個の有機樹脂粒子Aが観察されなかった場合は、複数の画像を撮影し、その複数の画像に含まれる全ての有機樹脂粒子Aの合計が50個以上となるように有機樹脂粒子Aを測定し、その算術平均値を平均粒径とした。
【0063】
有機樹脂Aは、電極との接着性の観点より、無機成分を含まない有機樹脂であることが好ましい。有機樹脂Aを有機樹脂粒子とすることで、より強固な電極との接着性を付与することができる場合がある。
【0064】
有機樹脂Aのガラス転移温度は、20℃以上が好ましい。より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上、最も好ましくは35℃以上である。また、60℃以下が好ましく、より好ましくは55℃以下、さらに好ましくは50℃以下、最も好ましくは45℃以下である。ガラス転移温度を20℃以上とすることで、電解液への膨潤性を抑制し電池特性が良好となる。また60℃以下とすることで、電極との接着性が良好となる。ガラス転移温度を適切な範囲にするために、特定の単量体群から適宜選択することができる。
【0065】
(2)バインダー
有機樹脂同士また有機樹脂と無機粒子を互いに密着させるため、および有機樹脂を多孔質基材に密着させるために、有機樹脂は、有機樹脂Aに加え、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、電池の使用範囲で電気化学的に安定である樹脂が好ましい。また、バインダーは有機溶媒に可溶なバインダー、水溶性バインダー、エマルジョンバインダーなどが挙げられ、単体でも、組み合わせて使用してもよい。
【0066】
有機溶媒に可溶なバインダーおよび水溶性バインダーを用いる場合、バインダー自体の好ましい粘度は、濃度が15質量%の際に、10000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは8000mPa・s以下であり、さらに好ましくは5000mPa・s以下である。濃度が15質量%で粘度を10000mPa・s以下とすることで、塗剤の粘度上昇を抑制でき、有機樹脂Aが表面へ偏在することで、電極との接着性が向上する。
【0067】
また、エマルジョンバインダーを用いる場合、分散剤は水や有機溶媒として、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒などが挙げられるが、水分散系が取り扱い性や、他の成分との混合性の点から好ましい。エマルジョンバインダーの粒径は、30~1000nm、好ましくは50~500nm、より好ましくは70~400nm、さらに好ましくは80~300nmである。エマルジョンバインダーの粒径を30nm以上とすることで透気度の上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。また、1000nm以下とすることで、多孔質層と多孔質基材との十分な密着性が得られる。
【0068】
バインダーに用いられる樹脂は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ウレタンなどの樹脂が挙げられる。有機樹脂との相溶性および電気的安定性の観点よりアクリル樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は、1種または必要に応じ2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
水溶性バインダーを用いる場合の添加量は、有機樹脂Aと無機粒子の合計量に対して、0.5質量%以上が好ましい。より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、10質量%以下が好ましい。より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。水溶性バインダーの添加量を0.5質量%以上とすることで、多孔質層と多孔質基材との十分な密着性が得られる。また、10質量%以下とすることで、透気度上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。
【0070】
エマルジョンバインダーを用いる場合の添加量は、有機樹脂Aと無機粒子の合計量に対して、1質量%以上が好ましい。より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7.5質量%以上である。また、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。エマルジョン系バインダーの添加量を1質量%以上とすることで、多孔質層と多孔質基材との十分な密着性が得られる。また、30質量%以下とすることで、透気度上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。特に7.5質量%以上20質量%以下とすることで有機樹脂Aと無機粒子の密着およびこれら粒子の基材への密着を促進するだけでなく、有機樹脂Aと相互作用を示し、電極との接着性も向上する。
【0071】
有機樹脂が有機樹脂と上記添加量のバインダーを含有することで、有機樹脂の表面自由エネルギーを調整することができ、有機樹脂を含有する塗工液を多孔質基材に塗工した際に、有機樹脂を外側層だけでなく内側層にも偏在することを促進する。
【0072】
(3)有機樹脂B
電極接着補助剤および基材密着補助剤として、有機樹脂は、有機樹脂A、バインダーに加え、フッ素を含有しない有機樹脂Bを含有してもよい。有機樹脂Bを含有すると、有機樹脂Aと相互作用し、一部が表面に偏在することで多孔質層と電極との接着性を向上する場合がある。また、多孔質層と多孔質基材の界面に存在することで基材密着性を向上する場合がある。有機樹脂Bに用いられる樹脂としては、フッ素を含有しない樹脂であり、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ウレタンなどが挙げられる。電極との接着性、多孔質基材との密着性の点から、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いることが好ましい。また、有機樹脂Bのガラス転移温度は、10℃以上が好ましい。より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上、最も好ましくは40℃以上である。また、100℃以下が好ましい。より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下、最も好ましくは70℃以下である。ガラス転移温度を10℃以上とすることで、電解液への膨潤性が抑制でき、電池特性が良好となる。また100℃以下とすることで、十分な電極との接着性が得られ、多孔質基材との密着性が得られる。
【0073】
有機樹脂Bの添加量は、有機樹脂Aと無機粒子の合計量に対して、0.1質量%以上が好ましい。より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1.0質量%以上である。また、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、一層好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。有機樹脂Bの添加量を0.1質量%以上とすることで、電極との十分な接着性が得られ、また多孔質層と多孔質基材との十分な密着性が得られる。また、30質量%以下とすることで、透気度上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。
【0074】
有機樹脂Bは、粒子形状が好ましく、有機樹脂粒子Bとするとよい。その粒径は、10nm以上が好ましい。より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上、一層好ましくは80nm以上、最も好ましくは100nm以上である。また、500nm以下が好ましく、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下、一層好ましくは250nm以下、特に好ましくは200nm以下、最も好ましくは150nm以下である。有機樹脂粒子Bの粒径を10nm以上とすることで、透気度上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。また、500nm以下とすることで、表面に偏在し、十分な接着性が得られる。
【0075】
(無機粒子)
本発明において、多孔質層は無機粒子を含有することが好ましい。多孔質層が無機粒子を含むことで熱寸法安定性および異物による短絡の抑制を付与することができる。
【0076】
具体的に無機粒子としては、酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粒子、窒化アルミニウム、窒化硅素などの無機窒化物粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子などが挙げられる。無機粒子の中でも高強度化に効果のある酸化アルミニウム、また有機樹脂粒子Aと無機粒子の分散工程の部品摩耗低減に効果のあるベーマイト、硫酸バリウムが特に好ましい。さらにこれらの無機粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0077】
用いる無機粒子の平均粒径は、0.05μm以上が好ましい。より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.20μm以上である。また、5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、特に好ましくは0.6μm以下である。0.05μm以上とすることで、透気度増加を抑制できるため、電池特性が良好となる。また、空孔径が小さくなることから電解液の含浸性が低下し生産性に影響を与える場合がある。5.0μm以下とすることで、十分な熱寸法安定性が得られるだけでなく、多孔質層の膜厚が適切となり、電池特性の低下を抑制できる。
【0078】
なお無機粒子の平均粒径は以下の方法を用いて測定して得た。電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-3400N)を用いて、多孔質層の表面を倍率3万倍の画像と、無機粒子と有機樹脂粒子からなる多孔質層に置いて無機粒子のみが含有する元素のEDX画像を得た。その際の画像サイズは4.0μm×3.0μmである。なお、画素数は1,280画素×1,024画素であり、1画素の大きさは3.1nm×2.9nmであった。次に得られたEDX画像から識別される無機粒子の1つの粒子を完全に囲む面積が最も小さい正方形または長方形を描き、すなわち、正方形または長方形の4辺に粒子の端部が接している正方形または長方形を描き、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺の長さ(長軸径)として、画像上の全ての無機粒子についてそれぞれの粒径を測定し、その算術平均値を平均粒径とした。なお、撮影した画像中に50個の粒子が観察されなかった場合は、複数の画像を撮影し、その複数の画像に含まれる全ての無機粒子の合計が50個以上となるように無機粒子を測定し、その算術平均値を平均粒径とした。
【0079】
用いる無機粒子の形状としては、球状、板状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、いずれの形状であってもよい。その中でも、表面修飾性、分散性、塗工性の観点から球状であることが好ましい。
【0080】
(多孔質層の形成)
本発明の多孔性フィルムは、多孔質基材と、多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子と有機樹脂を含有する多孔質層を有し、この多孔質層を厚さ方向に3等分し、それぞれ内側層、中間層、および外側層とするとき、全ての有機樹脂の含有量に対し、(a)外側層に存在する有機樹脂の含有率αが30%以上60%以下、(b)中間層に存在する有機樹脂の含有率βが10%以上25%以下、(c)内側層に存在する有機樹脂の含有率γが30%以上60%以下、を満たす。
【0081】
このような多孔性フィルムにすることで、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する低コスト多孔性フィルムが得られるが、その多孔質層の形成方法について以下に説明する。
【0082】
多孔質層は、有機樹脂、無機粒子を含有する。有機樹脂は、有機樹脂Aからなり、任意にバインダーおよび有機樹脂Bを含んでもよい。多孔質層は、多孔質層の全構成成分を100質量%としたとき、有機樹脂Aを好ましくは2質量%以上含有する。また、好ましくは30質量%以下含有する。有機樹脂Aは、より好ましくは4質量%以上である。またより好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下含有する。多孔質層における有機樹脂Aの含有率を2質量%以上とすることで、十分な電極との接着性が得られる。また、多孔質層における有機樹脂Aの含有率を30質量%以下とすることで、十分な熱寸法安定性が得られる。多孔質層における有機樹脂Aの含有率の測定は公知の手法を用いればよい。例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分全量の質量を測定した後、得られた構成成分に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(1H-NMR、19F-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法(EDX)、ガスクロマトグラフ質量分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF-MS)、および元素分析法などにより、粒子Aのみの質量を測定する。(有機樹脂Aの質量/構成成分全量の質量)×100の式より多孔質層における有機樹脂Aの含有率を算出することができる。
【0083】
多孔質層における無機粒子の含有率は、多孔質層の全構成成分を100質量%としたき、60質量%以上が好ましく、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは、70質量%以上、最も好ましくは75質量%以上である。また、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。多孔質層における無機粒子の含有率が60質量%以上とすることで、十分な熱寸法安定性が得られる。また、多孔質層における粒子Bの含有率が95質量%以下とすることで、有機樹脂の含有率が十分となり、電極との接着性が得られる。
【0084】
多孔質層を構成する有機樹脂を、所定の濃度に分散させることで水系分散塗工液を調製する。水系分散塗工液は、有機樹脂を、溶媒に分散、懸濁、又は乳化することで調製される。水系分散塗工液の溶媒としては、少なくとも水が用いられ、さらに、水以外の溶媒を加えてもよい。水以外の溶媒としては、有機樹脂を溶解せず、固体状態で、分散、懸濁又は乳化し得る溶媒であれば特に限定されるものではない。例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤が挙げられる。環境への負荷の低さ、安全性及び経済的な観点からは、水、又は、水とアルコールとの混合液に、有機樹脂を乳化した水系エマルションが好ましい。水系分散塗工液の濃度を適切に調整することで、有機樹脂Aを外側層に偏在するように調整できる。
【0085】
また、塗工液には、必要に応じて、造膜助剤、分散剤、増粘剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤等を添加してもよい。
【0086】
塗工液の分散方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、ペイントシェーカーなどが挙げられる。これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。
【0087】
次に、得られた塗工液を多孔質基材上に塗工し、乾燥を行い、多孔質層を積層する。塗工方法としては、例えば、ディップコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、コンマコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。これらに限定されることはなく、用いる有機樹脂、バインダー、分散剤、レベリング剤、使用する溶媒、基材などの好ましい条件に合わせて塗工方法を選択すればよい。また、塗工性を向上させるために、例えば、多孔質基材にコロナ処理、プラズマ処理などの塗工面の表面処理を行ってもよい。
【0088】
多孔質層の膜厚は、1.0μm以上が好ましい。より好ましくは1.0μmより大きく、さらに好ましくは2.0μm以上、一層好ましくは2.5μm以上、最も好ましくは4.0μm以上である。また、10.0μm以下が好ましい。より好ましくは8.0μm以下、さらに好ましくは7.0μm以下、一層好ましくは6.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。ここでいう多孔質層の膜厚とは、多孔質基材の片面に多孔質層を有する多孔性フィルムの場合は、当該多孔質層の膜厚をいい、多孔質基材の両面に多孔質層を有する多孔性フィルムの場合は、当該両方の多孔質層の膜厚の合計をいう。多孔質層の膜厚が1.0μm以上とすることで、十分な熱寸法安定性および電極との接着性が得られる。また、10.0μm以下とすることで、多孔質構造となり、電池特性が良好となる。また、コスト面でも有利となる。
【0089】
[多孔質基材]
本実施形態において多孔質基材は、内部に空孔を有する基材である。また、本実施形態において、多孔質基材としては、例えば内部に空孔を有する多孔膜、不織布、または繊維状物からなる多孔膜シートなどが挙げられる。多孔質基材を構成する材料としては、電気絶縁性であり、電気的に安定で、電解液にも安定である樹脂から構成されていることが好ましい。また、シャットダウン機能を付与する観点から用いる樹脂は融点が200℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。ここでのシャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、発電を停止させる機能のことである。
【0090】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂が挙げられ、前記多孔質基材はポリオレフィン系多孔質基材であることが好ましい。また、ポリオレフィン系多孔質基材は融点が200℃以下であるポリオレフィン系多孔質基材であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびこれらを組み合わせた混合物などが挙げられ、例えばポリエチレンを90質量%以上含有する単層の多孔質基材、ポリエチレンとポリプロピレンからなる多層の多孔質基材などが挙げられる。
【0091】
多孔質基材の製造方法としては、ポリオレフィン系樹脂をシートにした後に延伸することで多孔質化する方法やポリオレフィン系樹脂を流動パラフィンなどの溶剤に溶解させてシートにした後に溶剤を抽出することで多孔質化する方法が挙げられる。
【0092】
多孔質基材の厚みは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上、また30μm以下である。多孔質基材の厚みが50μm以下とすることで多孔質基材の内部抵抗の増加を抑制できる。また、多孔質基材の厚みが3μm以上とすることで、多孔質基材の製造が可能となり、また十分な力学特性を得られる。
【0093】
なお、多孔質基材の厚みは、断面を顕微鏡観察し、測定することができる。多孔質層が積層されている場合は、多孔質基材と多孔質層との界面間の垂直距離を多孔質基材の厚みとして測定する。100mm×100mmサイズに5枚切り出し、そのサンプルの中央部を5枚それぞれについて観察、測定し、その平均値を多孔質基材の厚みとした。
【0094】
多孔質基材の透気度は、50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下であることが好ましい。より好ましくは50秒/100cc以上、また500秒/100cc以下である。透気度が1,000秒/100cc以下であると、十分なイオン移動性が得られ、電池特性を向上させることができる。50秒/100cc以上であると、十分な力学特性が得られる。
【0095】
[多孔性フィルム]
本実施形態の多孔性フィルムは、多孔質基材の少なくとも片面に、上述の多孔質層を有する多孔性フィルムである。多孔質層は、イオン透過性を有するために十分に多孔化されていることが好ましく、多孔性フィルムの透気度として、50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下であることが好ましい。より好ましくは、50秒/100cc以上500秒/100cc以下である。さらに好ましくは、50秒/100cc以上300秒/100cc以下である。透気度が1,000秒/100cc以下であると、十分なイオン移動性が得られ、電池特性を向上させることができる。50秒/100cc以上であると、十分な力学特性が得られる。
【0096】
[二次電池]
本実施形態の多孔性フィルムは、リチウムイオン電池等の二次電池用セパレータに好適に用いることができる。リチウムイオン電池は、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成となっている。
【0097】
正極は、活物質、バインダー樹脂、および導電助剤からなる正極材が集電体上に積層されたものであり、活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、Li(NiCoMn)O2、などの層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn2O4などのスピネル型マンガン酸化物、およびLiFePO4などの鉄系化合物などが挙げられる。バインダー樹脂としては、耐酸化性が高い樹脂を使用すればよい。具体的にはフッ素樹脂、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂などが挙げられる。導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料が用いられている。集電体としては、金属箔が好適であり、特にアルミニウム箔が用いられることが多い。
【0098】
負極は、活物質およびバインダー樹脂からなる負極材が集電体上に積層されたものであり、活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料、スズやシリコンなどのリチウム合金系材料、Liなどの金属材料、およびチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などが挙げられる。バインダー樹脂としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂などが用いられる。集電体としては、金属箔が好適であり、特に銅箔が用いられることが多い。
【0099】
電解液は、二次電池の中で正極と負極との間でイオンを移動させる場となっており、電解質を有機溶媒にて溶解させた構成をしている。電解質としては、LiPF6、LiBF4、およびLiClO4などが挙げられるが、有機溶媒への溶解性、イオン電導度の観点からLiPF6が好適に用いられている。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられ、これらの有機溶媒を2種類以上混合して使用してもよい。
【0100】
二次電池の作製方法としては、まず活物質と導電助剤をバインダー樹脂の溶液中に分散して電極用塗布液を調製し、この塗布液を集電体上に塗工して、溶媒を乾燥させることで正極、負極がそれぞれ得られる。乾燥後の塗工膜の膜厚は50μm以上500μm以下とすることが好ましい。得られた正極と負極の間に二次電池用セパレータを、それぞれの電極の活物質層と接するように配置し、アルミラミネートフィルム等の外装材に封入し、電解液を注入後、負極リードや安全弁を設置し、外装材を封止する。このようにして得られた二次電池は、電極と二次電池用セパレータとの接着性が高く、かつ優れた電池特性を有し、また、低コストでの製造が可能となる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これにより本発明が制限されるものではない。なお、以下の記載において「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表わす。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
【0102】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
[測定方法]
(1)透気度
王研式透気度測定装置(旭精工(株)製EG01-5-1MR)を用いて、100mm×100mmサイズの中央部をJIS P 8117(2009)に準拠して測定した。上記測定を試料3枚について実施し、計測された値を平均し、その平均値を透気度(秒/100cc)とした。
【0103】
(2)多孔質層の膜厚
100mm×100mmサイズに多孔性フィルムを切り出した。次にそのサンプルの中央部において、ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-800、加速電圧26kV)にて10000倍の倍率にて観察して、多孔質基材との界面から最も高いところを厚みとし、片面の場合は片面のみ、両面の場合は両面ともに計測し、その合計を多孔質層の膜厚とした。なお多孔質基材と多孔質層の界面について、無機粒子の存在領域において、無機粒子が確認されなくなった場所を界面と規定した。上記測定を試料5枚について実施し、計測された値を平均した。
【0104】
(3)多孔質層に含まれる無機粒子の含有率
10cm×10cmの多孔性フィルム上から水40gを用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得た。得られた構成成分全量の質量を測定した後、構成成分を有機樹脂成分が溶融・分解する程度の高温で燃焼し、無機粒子のみの質量を測定した。(無機粒子の質量/構成成分全量の質量)×100の式より多孔質層における無機粒子の含有率を質量%で算出した。
【0105】
(4)有機樹脂Aのガラス転移温度
「JIS K7121:2012 プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)にて測定された中間点ガラス転移温度とした。中間点ガラス転移温度は、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とした。
【0106】
(5)有機樹脂の含有率α、β、γ
「(2)多孔質層の膜厚」にて測定した多孔質層を3分割し、外側層、中間層、内側層とし、それぞれの領域に存在する有機樹脂の含有率α、β、γについて、下記方法を用いて算出した。まずミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-800、加速電圧26kV)にて、10000倍の倍率にて、同一視野における断面SEM画像と炭素元素の断面SEM-EDX画像を取得した。次に断面SEM画像を用いて、「(2)多孔質層の膜厚」より多孔質層の膜厚を計測した。膜厚を3分割し、外側層、中間層、内側層の各領域を決定した。断面SEM画像と炭素元素の断面SEM-EDX画像を重ね合わせることで、炭素元素の断面SEM-EDX画像に前記外側層、中間層、内側層の各領域を照らし合わせた。外側層、中間層、内側層の各領域について、解析を行った。画像解析ソフト(東陽テクニカ,SPIP)により以下のように解析した。HeightSensor像に対して、汎用のプラグイン(PrugIn_BoundaryDropper(Particle7x7))にて有機樹脂Aの境界を強調した後、画像イメージの端は含まず閾値の自動算出で視野に含まれる炭素元素の面積について算出した。
外側層の領域に含まれる炭素元素の面積×100/(外側層、中間層、内側層の全領域に含まれる炭素元素の面積)として算出し、5つのサンプルについて同様の測定を行い、その平均値を有機樹脂の含有率α(%)とした。中間層の領域に含まれる炭素元素の面積×100/(外側層、中間層、内側層の全領域に含まれる炭素元素の面積)として算出し、5つのサンプルについて同様の測定を行い、その平均値を有機樹脂の含有率β(%)とした。内側層の領域に含まれる炭素元素の面積×100/(外側層、中間層、内側層の全領域に含まれる炭素元素の面積)として算出し、5つのサンプルについて同様の測定を行い、その平均値を有機樹脂の含有率γ(%)とした。
【0107】
(6)塗膜外観
100×200mmサイズの試料を黒色の画用紙上に載せ、塗膜外観を観察し、以下の指標に基づき、評価した。
・塗膜外観が優:塗工スジ、塗工ハジキなし
・塗膜外観が良:塗工スジ、塗工ハジキのいずれかが若干確認される
・塗膜外観が可:塗工スジ、塗工ハジキが若干確認される
・塗膜外観が悪:塗工スジ、塗工ハジキが確認され、評価が困難
【0108】
(7)熱収縮率(熱寸法安定性)
100mm×100mmサイズの試料3枚から、各試料の一辺の中点から対辺の中点の長さを測定し、150℃のオーブン中に無張力下で30分熱処理を行った。熱処理後に試料を取り出し、熱処理前と同一箇所の中点間の長さを測定し、以下の式より熱収縮率を算出した。1枚の試料より同時に2ヶ所算出し、すべての数値の平均値を熱収縮率(熱寸法安定性)とし、5%未満を秀、5%以上10%未満を優、10%以上20%未満を良、20%以上40%未満を可、40%以上を悪とした。
熱収縮率(%)=[(熱処理前の中点間の長さ-熱処理後の中点間の長さ)/(熱処理前の中点間の長さ)]×100。
【0109】
(8)基材との接着性
18mm幅、100mm長さにカットした透明両面テープ(3M社製、品番665)を厚み2cmのアクリル板に貼り付ける。次に20mm、200mm長さにカットした多孔性フィルムを0.5MPa、25℃、0.2m/分でロールプレスを行い、透明両面テープと多孔性フィルムを貼り付けた。その後、はく離速度300mm/minの条件で180度はく離接着強さを測定した。
・接着強度が秀: より強い力で多孔質基材と多孔質層が剥離した。
・接着強度が優: 強い力で多孔質基材と多孔質層が剥離した。
・接着強度が良: やや強い力で多孔質基材と多孔質層が剥離した。
・接着強度が可: 弱い力で多孔質基材と多孔質層が剥離した。
・接着強度が悪: 極弱い力で多孔質基材と多孔質層が剥離した。
【0110】
(9)電極との接着性
活物質がLi(Ni5/10Mn2/10Co3/10)O2、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂、導電助剤がアセチレンブラックとグラファイトの正極15mm×100mmと多孔性フィルムを、活物質と多孔質層が接触するように設置し、熱ロールプレス機にて0.5MPa、100℃、0.2m/分で熱プレスを行い、ピンセットを用いて手動で剥離させ、接着強度を下記4段階にて評価を行った。同様に、活物質が黒鉛、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂、導電助剤がカーボンブラックの負極と多孔性フィルムとの接着強度も測定し、正極および負極のそれぞれの評価結果を統合した平均接着強度を接着強度として判定した。
・接着強度が秀: より強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が優: 強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が良: やや強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が可: 弱い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が悪: 極弱い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
【0111】
(10)電池作製
正極シートは、正極活物質としてLi(Ni5/10Mn2/10Co3/10)O2を92質量部、正極導電助剤としてアセチレンブラックとグラファイトを2.5質量部ずつ、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部を、プラネタリーミキサーを用いてN-メチル-2-ピロリドン中に分散させた正極スラリーを、アルミ箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した(塗布目付:9.5mg/cm2)。
この正極シートを40mm×40mmに切り出した。この時、活物質層の付いていない集電用のタブ接着部が、前記活物質面の外側に5mm×5mmの大きさになるように切り出した。幅5mm、厚み0.1mmのアルミ製のタブをタブ接着部に超音波溶接した。
負極シートは、負極活物質として天然黒鉛98質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1質量部、負極結着剤としてスチレン-ブタジエン共重合体1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて水中に分散させた負極スラリーを、銅箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した(塗布目付:5.5mg/cm2)。
この負極シートを45mm×45mmに切り出した。この時、活物質層の付いていない集電用のタブ接着部が、前記活物質面の外側に5mm×5mmの大きさになるように切り出した。正極タブと同サイズの銅製のタブをタブ接着部に超音波溶接した。
次に、多孔性フィルムを55mm×55mmに切り出し、多孔性フィルムの両面に上記正極と負極を活物質層が多孔性フィルムを隔てるように重ね、正極塗布部が全て負極塗布部と対向するように配置して電極群を得た。1枚の90mm×200mmのアルミラミネートフィルムに上記正極・多孔性フィルム・負極を挟み込み、アルミラミネートフィルムの長辺を折り、アルミラミネートフィルムの長辺2辺を熱融着し、袋状とした。
エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1モル/リットルとなるように溶解させ、作製した電解液を用いた。袋状にしたアルミラミネートフィルムに電解液1.5gを注入し、減圧含浸させながらアルミラミネートフィルムの短辺部を熱融着させてラミネート型電池とした。
【0112】
(11)放電負荷特性
放電負荷特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率にて評価した。
上記ラミネート型電池を用いて、25℃下、0.5Cで放電したときの放電容量と、10Cで放電したときの放電容量とを測定し、(10Cでの放電容量)/(0.5Cでの放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。ここで、充電条件は0.5C、4.3Vの定電流充電とし、放電条件は2.7Vの定電流放電とした。上記ラミネート型電池を5個作製し、放電容量維持率が最大、最小となる結果を除去した3個の測定結果の平均を容量維持率とした。放電容量維持率が40%未満を悪、45%以上50%未満を良、50%以上55%未満を優、55%以上を秀とした。
【0113】
(12)充放電サイクル特性
上記ラミネート型電池の充放電サイクル特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率にて評価した。
〈1~300サイクル目〉
充電、放電を1サイクルとし、充電条件を2C、4.3Vの定電流充電、放電条件を2C、2.7Vの定電流放電とし、25℃下で充放電を300回繰り返し行った。
〈放電容量維持率の算出〉
(300サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。上記ラミネート型電池を5個作製し、放電容量維持率が最大、最小となる結果を除去した3個の測定結果の平均を容量維持率とした。放電容量維持率が50%未満を充放電サイクル特性が悪、50%以上60%未満を充放電サイクル特性が良、60%以上70%未満を充放電サイクル特性が優、70%以上を充放電サイクルが秀とした。
【0114】
(実施例1)
イオン交換水120部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)製乳化剤)1部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で2,2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)(和光純薬工業(株)製)0.4部を添加し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FMA)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)14部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)56部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)製乳化剤)9部、イオン交換水115部からなる混合物を60℃で2時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後4時間にわたり重合処理を行い、共重合体の有機樹脂からなる有機樹脂粒子A(平均粒径170nm、ガラス転移温度40℃)を含む分散液Aを製造した。
無機粒子として平均粒径0.5μmのアルミナ粒子(酸化アルミニウム)を用い、溶媒として無機粒子と同量の水、および分散剤としてカルボキシメチルセルロースを無機粒子に対して1質量%添加した上で、ビーズミルにて分散し、分散液Bを調製した。
分散液Aと分散液Bを多孔質層に含まれる無機粒子の含有率が70質量%となるように、水中に分散させて、攪拌機にて混合し、さらにバインダーとしてアクリル系エマルジョンバインダー(アクリル粒子、100nm)を有機樹脂粒子Aと無機粒子の合計量に対して17質量%添加し、塗工液を調製した。
得られた塗工液を、ワイヤーバーを用いてポリエチレン多孔質基材(厚み9μm、透気度60秒/100cc)上へ両面塗工し、熱風オーブン(乾燥設定温度50℃)内で1分間乾燥し、含有される溶媒が揮発することで多孔質層を形成し、本発明の多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて、多孔質層の膜厚、透気度、有機樹脂の含有率α、有機樹脂の含有率β、有機樹脂の含有率γ、塗膜外観、熱収縮率(熱寸法安定性)、多孔質基材との接着性、電極との接着性、放電負荷特性および充放電サイクル特性の測定結果を表2に示す。
【0115】
(実施例2)
有機樹脂粒子Aの組成比を、表1-1に示すように2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FMA)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)2部、アルキレングリコールジメタクリレート(日油(株)製PDE-600、ホモポリマーTg:-34℃)7部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)68部に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0116】
(実施例3)
多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例2と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0117】
(実施例4)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0118】
(実施例5)
多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例4と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0119】
(実施例6)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0120】
(実施例7)
多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例6と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0121】
(実施例8)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0122】
(実施例9)
多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0123】
(実施例10)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0124】
(実施例11)
多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例10と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0125】
(実施例12)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0126】
(実施例13)
有機樹脂粒子B(ポリエチレン、融点80℃)を有機樹脂粒子Aと無機粒子の合計量に対して、2.2質量%添加した以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0127】
(実施例14)
有機樹脂Aとして粒子ではなくクラム状を用いた以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0128】
(実施例15)
有機樹脂粒子B(ポリプロピレン、融点60℃)を有機樹脂粒子Aと無機粒子の合計量に対して、2.2質量%添加した以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0129】
(実施例16)
多孔質層に含まれる無機粒子の含有率を55質量%にした以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0130】
(実施例17)
多孔質層に含まれる無機粒子の含有率を90質量%、アクリル系エマルジョンバインダー(アクリル粒子、100nm)を有機樹脂粒子Aと無機粒子の合計量に対して7.5質量%にした以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0131】
(実施例18)
無機粒子を硫酸バリウムとした以外は、実施例8と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0132】
(実施例19)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0133】
(実施例20)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-2に示す組成に変更し、多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0134】
(実施例21)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0135】
(実施例22)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-2に示す組成に変更し、多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0136】
(実施例23)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0137】
(実施例24)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更し、多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す
【0138】
(実施例25)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0139】
(実施例26)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更し、多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0140】
(実施例27)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0141】
(実施例28)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更し、多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0142】
(実施例29)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0143】
(実施例30)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更し、多孔質層の膜厚を表2に示す膜厚にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0144】
(実施例31)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0145】
(実施例32)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0146】
(実施例33)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0147】
(実施例34)
有機樹脂粒子Aの組成を表1-4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0148】
(比較例1)
有機樹脂粒子Aの組成比を、表1-4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0149】
(比較例2)
有機樹脂粒子Aの組成比を、表1-4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0150】
(比較例3)
有機樹脂粒子Aの組成比を、表1-4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、有機粒子Aの作製を試みたが、安定した粒子が得られなかった。そのため多孔質層を形成できず、多孔性フィルムを測定できなかった。
【0151】
(比較例4)
有機樹脂粒子Aを用いずに表1-4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔性フィルムを得た。多孔性フィルムの測定結果を表2に示す。
【0152】
表1-1、表1-2、表1-3、表1-4および表2から、実施例1~34は、いずれも、多孔質基材と、多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子と電極に対して接着性を有する有機樹脂を含有する多孔質層を有し、多孔質層を厚さ方向に3等分した、内側層、中間層、および外側層が、全ての有機樹脂の含有量に対し、(a)外側層に存在する有機樹脂の含有率αが30%以上60%以下、(b)中間層に存在する有機樹脂の含有率βが10%以上25%以下、(c)内側層に存在する有機樹脂の含有率γが30%以上60%以下、を満たす多孔性フィルムであるため、十分な熱寸法安定性、電極との接着性、および良好な電池特性が得られる。
【0153】
一方、比較例1は、外側層の有機樹脂の含有率αが30質量%未満、かつ中間層の有機樹脂の含有率βが25質量%を超えるので、電極との接着性が劣る。比較例2は、内側層の有機樹脂の含有率γが30質量%未満、かつ中間層の有機樹脂の含有率βが25質量%を超えるので、多孔質基材と多孔質層の接着性が十分でないため、十分な電極との接着性が得られない。比較例3は、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体の含有率が30質量%を超えるため、安定した有機樹脂Aが得られない。この有機樹脂Aでは多孔質層を形成できない。比較例4は、多孔質層が有機樹脂を添加していないため、十分な電極との接着性および十分な多孔質基材との接着性が得られない。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】