(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20250311BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20250311BHJP
【FI】
B62D25/20 D
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2020210975
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄眞
(72)【発明者】
【氏名】長崎 雄太
(72)【発明者】
【氏名】佐口 公一
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-089376(JP,A)
【文献】中国実用新案第210941325(CN,U)
【文献】特開2018-187978(JP,A)
【文献】特開2020-069845(JP,A)
【文献】特開2019-048566(JP,A)
【文献】特開2019-202747(JP,A)
【文献】特開2018-140729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
H01M 50/20-50/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア部の前部から車両前方に延びているフロントサイドメンバと、該フロントサイドメンバの車両後方側で車幅方向外側に設けられ、車両前後方向に延びているサイドシルと、を有し、
前記フロア部の下面側で両側のサイドシルの間には、バッテリを収容するバッテリケースが、バッテリブラケットを介して固定されている、車両下部構造において、
前記バッテリケースの前部は、車幅方向に延びるケース直線部と、該ケース直線部の車幅方向外側の両端から幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びるケース傾斜部とを有し、前記ケース直線部と前記ケース傾斜部とによりケース角部が形成されており、
前記フロントサイドメンバの後部は、前記バッテリブラケットを介して、前記ケース角部に接合されており、
前記バッテリケースの車両前方側には、フロントクロスメンバが配置され、
前記フロントクロスメンバは、前記ケース直線部に対応するように車幅方向に延びるメンバ直線部と、該メンバ直線部の車幅方向両側部に設けられ、前記ケース傾斜部の対応するように傾斜するメンバ傾斜部と、を有し、前記メンバ直線部と前記メンバ傾斜部とによりメンバ角部が形成されており、
前記バッテリブラケットは、前記フロントクロスメンバの前記メンバ角部を介して前記ケース角部に接合されていることを特徴とする、車両下部構造。
【請求項2】
前記フロントクロスメンバの車両前方側には、車幅方向に延びるロアメンバが配置され、
前記ロアメンバの車幅方向外側には、車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びるサイドブレースが設けられ、該サイドブレースは、前記ロアメンバと前記サイドシルとを連結し、
前記ロアメンバ及び前記サイドブレースは、前記フロントクロスメンバの前記メンバ直線部及び前記メンバ傾斜部に対応する形状を有し、
前記バッテリブラケットは、前記フロントサイドメンバの後部、前記ロアメンバの車幅方向端部及び前記サイドブレースの前部が接合される接合部またはその周辺に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記バッテリケースの下面側には、車幅方向に延びる外側クロスメンバが設けられ、
前記バッテリケースの内側には、前記外側クロスメンバに対応する位置に車幅方向に延びる内側クロスメンバが設けられ、
前記内側クロスメンバは、前記ケース直線部の車両後方側に間隔を空けて配置されており、
前記バッテリケースの内部における前部には、車両前後方向に延びる前後ブレースが設けられ、
前後ブレースの前端部は、前記ケース角部の車両後方側に隣接するように配置され、
前後ブレースの後端部は、前記内側クロスメンバの車両前方側に隣接するように配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記前後ブレースの少なくとも一部及び前記内側クロスメンバの少なくとも一部は、前記バッテリケースの底面部を介して前記外側クロスメンバに接合されていることを特徴とする、請求項3に記載の車両下部構
造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では、例えば、特許文献1に開示されているように、バッテリケースは、車体のフロア部の下面側に固定されている。特許文献1に開示されている構造では、フロア部の前部には、車両前方に延びるフロントサイドフレームが設けられており、該フロントサイドフレームの後部には、フロントサイドフレーム支持部が設けられている。フロントサイドフレーム支持部は、バッテリケースを支持するバッテリケース支持フレームに取り付けられている。
【0003】
この例におけるバッテリケース支持フレームの前部には、車幅方向に延びるフレーム部が設けられ、該フレームの車幅方向の両側には、バッテリ側直角部が設けられている。フロントサイドフレーム支持部が、フレーム部に設けられた複数の前締結部で締結されており、バッテリケース支持フレームの側部には、サイドシルに締結される複数の横締結部が設けられている。すなわち、この例では、フロントサイドフレーム支持部は、バッテリ側直角部の周辺に設けられた複数の締結部を介して、サイドシルに締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例の構造では、例えば前突等によりフロントサイドフレームに衝撃荷重を受けると、当該衝撃荷重は、フロントサイドフレーム支持部に入力され、その後、バッテリケース支持フレームのフレーム部に入力される。上記例のバッテリケース支持フレームには、多くの締結部が設けられているため、フロントサイドフレーム支持部に伝達された衝撃荷重は、複数の締結部に伝達され、バッテリケースへ伝達される。
【0006】
ところが、バッテリケース支持フレームに複数の締結部を設けることで、フレーム部には、締結部毎に衝撃荷重が入力されることになる。このような構造では、意図した方向に荷重が入力されない可能性がある。このように意図しない方向の衝撃荷重がバッテリケース支持フレームに入力されると、バッテリケースに対して意図しない荷重伝達が起こり、その結果、バッテリケースが破損する可能性がある。そのため、複数の締結部を有する上記例のような構造では、フロントサイドフレームに入力される衝撃荷重をバッテリケースに効果的に伝達させようとする上で、改善の余地があった。
【0007】
一方で、電動車両のバッテリパックは、大きな重量を有しているため、車体重量の中で大きな割合を占めることになる。重量物であるバッテリパックの慣性力は大きいため、車両走行時に前突等が起こると、当該慣性力により、バッテリパックの外側部を構成するバッテリケースの前部及びその周辺には、車両前方向に大きな負荷が作用することになる。そのため、バッテリパックの前部等の剛性を高める必要がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バッテリパックの前部の剛性を確保し、さらに、車両の前部からバッテリケースへの荷重伝達を促進することが可能な車両下部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る車両下部構造は、車両のフロア部の前部から車両前方に延びているフロントサイドメンバと、該フロントサイドメンバの車両後方側で車幅方向外側に設けられ、車両前後方向に延びているサイドシルと、を有し、前記フロア部の下面側で両側のサイドシルの間には、バッテリを収容するバッテリケースが、バッテリブラケットを介して固定されている。当該車両下部構造において、前記バッテリケースの前部は、車幅方向に延びるケース直線部と、該ケース直線部の車幅方向外側の両端から幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びるケース傾斜部とを有し、前記ケース直線部と前記ケース傾斜部とによりケース角部が形成されており、前記フロントサイドメンバの後部は、前記バッテリブラケットを介して、前記ケース角部に接合されており、前記バッテリケースの車両前方側には、フロントクロスメンバが配置され、前記フロントクロスメンバは、前記ケース直線部に対応するように車幅方向に延びるメンバ直線部と、該メンバ直線部の車幅方向両側部に設けられ、前記ケース傾斜部の対応するように傾斜するメンバ傾斜部と、を有し、前記メンバ直線部と前記メンバ傾斜部とによりメンバ角部が形成されており、前記バッテリブラケットは、前記フロントクロスメンバの前記メンバ角部を介して前記ケース角部に接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッテリパックの前部の剛性を確保し、さらに、車両の前部からバッテリケースへの荷重伝達を促進することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両下部構造を車両下方から見た下面図である。
【
図2】
図1のバッテリケースの前部付近を拡大して示す拡大下面図である。
【
図3】
図2のA-A矢視の断面を示す斜視図である。
【
図5】
図1のフロントサイドメンバの変形例を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両下部構造の一実施形態について、図面(
図1~
図5)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印L、R方向は、車幅方向における左側、右側を示している。また、本実施形態の説明における「左右」は、車両室内の乗員が車両前方を向いたときの左右に対応している。また、矢印Uは車両上方を示している。
【0013】
本実施形態の車両下部構造は、車輪を駆動するためのモータ(図示せず)に電力を供給するバッテリを有する電動車両の下部構造である。当該車両下部構造は、フロントサイドメンバ10と、サイドシル18と、ロアメンバ21と、サイドブレース16と、バッテリパック40と、バッテリブラケット50と、フロントクロスメンバ60と、を有している。
【0014】
フロントサイドメンバ10は、
図1及び
図2に示すように、車体骨格を構成する剛性の高い部材である。フロントサイドメンバ10は、フロア部を構成するフロアパネル71の前部における車幅方向の両外側部から、車両前方向に延びている。2つのフロントサイドメンバ10は、車幅方向に互いに間隔を空けており、車体側部に設けられたホイルハウスパネル73の車幅方向内側に配置されている。2つのフロントサイドメンバ10の間には、駆動用のモータ等が配置されている。
【0015】
各フロントサイドメンバ10は、後側傾斜部12と、前側直線部11とを有している。後側傾斜部12は、フロアパネル71の前部から車両前方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜して延びている。後側傾斜部12の後部は、バッテリブラケット50に接合されている。後側傾斜部12の後部の周辺の構成については後で説明する。前側直線部11は、後側傾斜部12の前端から車両前方に延びている。
【0016】
また、フロントサイドメンバ10は、車両上方に開口を有するU字状の断面形状を有している。例えば、後側傾斜部12に位置するフロントサイドメンバ10の内側壁には、車幅方向内側に張り出し、車両前後方向に延びる内側フランジ(図示せず)が設けられ、外側壁には、車幅方向外側に張り出し、車両前後方向に延びる外側フランジ(図示せず)が設けられている。内側フランジ及び外側フランジは、例えば、車体のフロア部の一部を構成するダッシュロアパネル72等に接合されている。内側フランジ及び外側フランジの後部には、バッテリブラケット50が接合されている。
【0017】
サイドシル18は、
図1及び
図2に示すように、フロアパネル71の車幅方向の両外側に接合されている剛性の高い部材で、フロントサイドメンバ10よりも車幅方向外側でホイルハウスパネル73の車両後方側に配置され、車両前後方向に延びている。また、サイドシル18の前部と、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部とは、サイドブレース16によって連結されている。サイドシル18及び後側傾斜部12と、サイドブレース16との関係は後で説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、フロアパネル71の車幅方向中間部には、フロアトンネル71Aが設けられている。当該フロアトンネル71Aは、フロアパネル71のほぼ中央が車両上方に隆起するように形成され、車両前後方向に延びている。すなわち、フロアトンネル71Aを設けることによって、フロアパネル71の下面には、車両前後方向に延びる開口が形成される。
【0019】
ロアメンバ21は、
図2に示すように、フロントクロスメンバ60の後側傾斜部12の後部から車幅方向内側に向かって延びている。ロアメンバ21は、車両前後方向に所定の幅を有し、車幅方向に延びている中空の部材であり、車幅方向視で、車両上方側に開口を有する断面形状を有している。ロアメンバ21の車幅方向外側部は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12における底面部の一部を、車両下方側から覆った状態で、底面部に接合されている。ロアメンバ21の車幅方向内側部は、フロアトンネル71Aの開口縁に位置するフロアパネル71に接合されている。また、ロアメンバ21の車幅方向内側部は、フロアトンネル71Aの跨ぐように車幅方向に延びる中間部材28に接合されている。中間部材28及び左右のロアメンバ21により、車幅方向に延びる1つのロアクロスメンバ20を構成している。
【0020】
サイドブレース16は、
図1及び
図2に示すように、ロアメンバ21の外側部と、サイドシル18の前部とを繋ぐように、車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている。サイドブレース16は、詳細な図示は省略しているが、車両上方に開口するU字形の断面形状を有している。U字形の断面形状を構成する前壁16a及び後壁16bのそれぞれの上部には、フランジ16c,16dが設けられており、該フランジ16cは、フロアパネル71に接合されている。なお、前壁16aのフランジ16cは、ホイルハウスパネル73の後部付近に位置するフロアパネル71に接合されている。
【0021】
また、サイドブレース16のU字形の断面形状を構成する下面部における車幅方向内側部は、ロアメンバ21を介して、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部における底面部を覆うように配置されている。フロントサイドメンバ10を覆っている下面部は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の底面部における車幅方向外側部に、スポット溶接等により接合されている。また、当該下面部は、ロアメンバ21の外側部にも接合されている。
【0022】
バッテリパック40は、内部のバッテリを収容しており、フロアパネル71の下面側に固定されている重量物である。バッテリパック40の内部に収容されているバッテリは、例えば、駆動用のモータにケーブル(図示せず)等を介して電力を供給する。ケーブルは、例えば、フロアトンネル71A内に配索され、モータに接続される。なお、バッテリパック40は、バッテリと、該バッテリを収容するバッテリケース40Aを有している。また、バッテリケース40Aの内部には、内側クロスメンバ45及び前後ブレース48が設けられている。
【0023】
バッテリケース40Aは、
図1に示すように、車両前後方向に延びており、さらに、両側のサイドシル18の間の全域に渡って車幅方向に延びている。バッテリケース40Aの前部は、ケース直線部41と、ケース傾斜部42とを有している。ケース直線部41は、バッテリケース40Aの前部における車幅方向の中央部に設けられ、車幅方向に延びている。ケース傾斜部42は、ケース直線部41の車幅方向の両外側に設けられ、ケース直線部41の車幅方向外側部から車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている。また、バッテリケース40Aの前部には、ケース直線部41とケース傾斜部42とにより、ケース角部43が形成されている。
【0024】
フロントクロスメンバ60は、
図1及び
図2に示すように、バッテリケース40Aの車両前方側に配置され、車体骨格を構成する部材の一つであり、全体として車幅方向に延びる部材である。フロントクロスメンバ60は、メンバ直線部61と、メンバ傾斜部62とを有している。メンバ直線部61は、車幅方向両側のフロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の間に配置され、車幅方向に延びている部分である。メンバ傾斜部62は、メンバ直線部61の車幅方向外側部から車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている部分である。また、フロントクロスメンバ60には、メンバ直線部61とメンバ傾斜部62とによりメンバ角部63が形成されている。すなわち、フロントクロスメンバ60は、全体で車両前方に凸となるように形成されている。
【0025】
メンバ直線部61及び両側のメンバ傾斜部62は、バッテリケース40Aのケース直線部41及び両側のケース傾斜部42を、車両前方側から覆うように配置されている。そのため、メンバ傾斜部62の傾斜角度は、ケース傾斜部42の傾斜角度とほぼ同じ角度で傾斜している。
【0026】
フロントクロスメンバ60は、
図3及び
図4に示すように、天面部65a及び後壁65bを構成するL字状の断面を有する上側部材65と、前壁66b及び底部66aを構成するL字状の断面を有する下側部材66とを有し、これらが接合されることにより構成されている。上側部材65の後壁65bの下端には、車両後方に突出するフランジ65cが設けられ、該フランジ65cは、下側部材66の底部66aに接合され、同様に、下側部材66の前壁66bの上端には、車両前方に突出するフランジ66cが設けられ、該フランジ66cは、上側部材65の天面部65aに接合され、これにより中空構造が構成されている。
【0027】
バッテリブラケット50は、
図2及び
図3に示すように、バッテリケース40Aを車体のフロア部の下部に取り付けるための部材である。バッテリブラケット50は、フロントクロスメンバ60を介してバッテリケース40Aに接合されている。
【0028】
バッテリケース40Aの前部にケース角部43を設けて、パネル剛性の起点とし、その部分にバッテリブラケット50を配置することにより、バッテリパック40と車体との接合剛性を確保することが可能となる。また、フロントサイドメンバ10の後部付近にバッテリブラケット50が配置されるため、本実施形態の構造は、前突等による衝撃荷重がフロントサイドメンバ10に入力されたとき、当該衝撃荷重を、バッテリパック40に向けて車両後方向へ効率的を伝達することが可能である。
【0029】
また、本実施形態のバッテリブラケット50は、
図1及び
図2に示すように、フロントクロスメンバ60のメンバ角部63に接合されている。詳細には、バッテリブラケット50は、フロントクロスメンバ60の下側部材66のメンバ角部63に位置する前壁66bに接合されている。バッテリブラケット50の後部における車幅方向内側には、
図3に示すように、車幅方向内側に張り出し、車両上下方向に延びる内側フランジ54が設けられ、車幅方向の外側には、車幅方向外側に張り出し、車両上下方向に延びる外側フランジ(図示せず)が設けられている。内側フランジ54は、フロントクロスメンバ60のメンバ角部63を構成するケース直線部41の前壁66bにスポット溶接等により接合され、外側フランジは、メンバ角部63を構成するケース傾斜部42の前壁66bにスポット溶接等により接合されている、すなわち、バッテリブラケット50は、メンバ角部63を中心の左右両側の前壁66bに接合されている。
【0030】
上記したようにフロントクロスメンバ60のメンバ直線部61及びメンバ傾斜部62によって形成される前方へ凸となる形状は、バッテリケース40Aのケース直線部41及びケース傾斜部42によって形成される凸形状に対応しているため、ケース角部43及びメンバ角部63の剛性により、バッテリパック40の前部の剛性を高めることができ、これらの角部43,63で、バッテリパック40が車体に固定されている。
【0031】
また、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、ロアクロスメンバ20及びサイドブレース16は、フロントクロスメンバ60のメンバ直線部61及びメンバ傾斜部62に対応する形状を有している。すなわち、ロアクロスメンバ20は、上記したように、メンバ直線部61と同様に車幅方向に延びており、サイドブレース16は、メンバ傾斜部62と同様に傾斜している。ロアクロスメンバ20とサイドブレース16とにより、角部が形成されており、当該角部の角度は、フロントクロスメンバ60のメンバ角部63の角度とほぼ同じ角度で形成されている。
【0032】
また、ロアクロスメンバ20及び両側のサイドブレース16は、フロントクロスメンバ60のメンバ直線部61及び両側のメンバ傾斜部62を、車両前方側から覆うように配置されている。そのため、サイドブレース16の傾斜角度は、メンバ傾斜部62の傾斜角度とほぼ同じ角度で傾斜している。
【0033】
バッテリブラケット50は、フロントサイドメンバ10の後部、ロアメンバ21の車幅方向端部及びサイドブレース16の前部が接合される接合部分に接合されている。この例では、バッテリブラケット50は、車両下方視で、
図1及び
図2に示すように、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の後部に重なるように配置された状態で、ロアクロスメンバ20のロアメンバ21の後部に接合されている。バッテリブラケット50は、
図3に示すように、メンバ角部63から車両前方に延びる平坦な平面部51を有している。該平面部51は、ロアメンバ21の下面部のうち、車幅方向外側部に接合されている。ここで、ロアメンバ21の下面部とバッテリブラケット50の平面部51とは、互いに当接した状態で、スポット溶接等により接合されてもよい。また、下面部及び平面部51が、ボルト等により締結されてもよい。
【0034】
また、本実施形態のバッテリブラケット50は、フロントサイドメンバ10の下部にも接合されている。この例では、バッテリブラケット50の平面部51はボルト孔52が設けられ、平面部51は、フロントサイドメンバ10の後側傾斜部12の底面部14にサイドブレース16を介して、ボルト等により接合されている。
【0035】
ロアクロスメンバ20とサイドブレース16を上記のように構成することで、ロアクロスメンバ20とサイドブレース16との接合部に形成される角部と、メンバ角部63とが、バッテリブラケット50を介して接合されている。このように構成することで、ロアクロスメンバ20のロアメンバ21、サイドブレース16、バッテリブラケット50及びフロントクロスメンバ60等の部材が密となる部分で、衝撃荷重を受けることができる。さらに、この構成によれば、これらの部材の周辺の部材に、衝撃荷重を分散させることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、バッテリケース40Aの下面側には、車幅方向に延びる外側クロスメンバ55が設けられている。外側クロスメンバ55は、バッテリケース40Aの前端に対して、車両後方に間隔を空けて配置されている。また、外側クロスメンバ55は、車幅方向視で、凹凸を有する板状で、外側クロスメンバ55の上部において凸となる面が接合面となり、バッテリケース40Aの下面にスポット溶接等により接合されている。
【0037】
また、バッテリケース40Aの内部の内側クロスメンバ45は、
図3及び
図4に示すように、ケース直線部41の車両後方側に間隔を空けて配置され、且つ、車両前後方向で、外側クロスメンバ55に対応する位置に設けられている。内側クロスメンバ45は、車幅方向視で、車両下方に開口するU字状の断面形状を有しており、U字状の断面形状を構成する前壁45aの下端及び後壁45cの下端には、それぞれ車両前方及び車両後方に張り出すフランジ45b,45dが設けられており、これらのフランジ45b,45dが、バッテリケース40Aの底面にスポット溶接等により接合されている。内側クロスメンバ45の前後のフランジ45b,45dと、外側クロスメンバ55の接合面は、バッテリケース40Aの底面(下面)を介して、3枚接合されてもよい。
【0038】
また、バッテリケース40Aの内部の前後ブレース48は、車両前後方向に延びる部材で、バッテリケース40Aの内部における前部に設けられている。内側クロスメンバ45は、車両前後方向視で、車両下方に開口するU字状の断面形状を有しており、U字状の断面形状を構成する左右の側壁48aの下端には、それぞれ左右に張り出すフランジ48bが設けられており、これらのフランジ48bが、バッテリケース40Aの底面にスポット溶接等により接合されている。
【0039】
また、前後ブレース48の前端部は、ケース角部43の車両後方側に隣接するように配置され、前後ブレース48の後端部は、内側クロスメンバ45の車両前方側に隣接するように配置されている。
【0040】
前後ブレース48を設けることにより、ケース角部43やメンバ角部63等を安定して支持することが可能となる。衝撃荷重により、バッテリブラケット50やフロントクロスメンバ60等が変形したときに、ケース角部43が前後ブレース48の前端に当接することで、ケース角部43を強固にすることが可能となる。さらに、前後ブレース48により、ケース角部43の変形を抑制することも可能となる。
【0041】
また、上記構成のように内側クロスメンバ45を設けることにより、前後ブレース48を車両後方側から安定して支持することが可能となる。なお、本実施形態では、前後ブレース48の後端は、内側クロスメンバ45の前壁45aに対して間隔を空けて配置されているが、当該後端を、前壁45aに接合してもよい。
【0042】
また、前後ブレース48の少なくとも一部及び内側クロスメンバ45の少なくとも一部は、バッテリケース40Aの底面を介して外側クロスメンバ55に接合されている。例えば、内側クロスメンバ45の前後のフランジ45b,45dと、外側クロスメンバ55の接合面は、バッテリケース40Aの底面(下面)を介して、3枚接合されてもよい。また、前後ブレース48の左右のフランジ45bの後部と、外側クロスメンバ55の接合面とが、バッテリケース40Aの底面(下面)を介して、3枚接合されてもよい。
【0043】
前後ブレース48及び内側クロスメンバ45を、バッテリケース40Aの底面を介して外側クロスメンバ55に接合することにより、前後ブレース48の後部の剛性が向上する。そのため、前後ブレース48は、ケース角部43及びメンバ角部63等を車両後方側から、より安定して支持することが可能となる。
【0044】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0045】
また、本実施形態では、バッテリブラケット50は、フロントサイドメンバ10の後部、ロアメンバ21の車幅方向端部及びサイドブレース16の前部が接合される接合部分に接合されているが、これに限らない。当該接合部分の周辺に、バッテリブラケット50の平面部51が接合されてもよい。
【0046】
また、バッテリブラケット50は、フロントクロスメンバ60のメンバ角部63に位置する前壁66bに接合されているが、これに限らない。メンバ角部63等に重なれば、フロントクロスメンバ60の底部66aに接合されてもよいし、バッテリケース40Aの前部の下部に接合されてもよい。
【0047】
また、本実施形態のフロントサイドメンバ10は、後側傾斜部12を有しているが、これに限らない。例えば、
図5に示すように、車両前後方向に直線状に延びるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 フロントサイドメンバ
11 前側直線部
12 後側傾斜部
16 サイドブレース
16a 前壁
16b 後壁
16c フランジ
16d フランジ
18 サイドシル
20 ロアクロスメンバ
21 ロアメンバ
28 中間部材
40 バッテリパック
40A バッテリケース
41 ケース直線部
42 ケース傾斜部
43 ケース角部
45 内側クロスメンバ
45a 前壁
45b フランジ
45c 後壁
45d フランジ
48 前後ブレース
48a 側壁
48b フランジ
50 バッテリブラケット
51 平面部
52 ボルト孔
54 内側フランジ
55 外側クロスメンバ
60 フロントクロスメンバ
61 メンバ直線部
62 メンバ傾斜部
63 メンバ角部
65 上側部材
65a 天面部
65b 後壁
65c フランジ
66 下側部材
66a 底部
66b 前壁
66c フランジ
71 フロアパネル
71A フロアトンネル
72 ダッシュロアパネル
73 ホイルハウスパネル