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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ガラスフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/033 20060101AFI20250311BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20250311BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20250311BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C03B33/033
B28D5/00 Z
B28D7/04
B26F3/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021002955
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108103
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 陸
(72)【発明者】
【氏名】辻村 文人
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201573(JP,A)
【文献】特開2006-317484(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157440(WO,A1)
【文献】特開2008-308368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/023-037
B28D 5/00
B28D 7/04
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マザーガラスフィルムの切断予定線に曲げ応力を付与した状態で、前記切断予定線の一部に初期クラックを形成することにより、前記初期クラックを前記切断予定線に沿って進展させて前記マザーガラスフィルムを切断するガラスフィルムの製造方法であって、
上面側で負圧吸引力を発生させる定盤上に、前記マザーガラスフィルムの端部が前記定盤から食み出した部分である食み出し部が形成されるように前記マザーガラスフィルムを載置し、前記食み出し部に前記切断予定線が設けられ、
前記食み出し部の下方、かつ、前記定盤の上面よりも低い位置に配置された保持部材に倣うように前記食み出し部を曲げることで、前記切断予定線に曲げ応力を付与する、
ことを特徴とするガラスフィルムの製造方法。
【請求項2】
クラック形成部材が前記切断予定線の一部に前記初期クラックを形成し、
前記初期クラックは、前記切断予定線の端部に形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記曲げ応力により前記マザーガラスフィルムが曲げられて、
前記曲げられるマザーガラスフィルムの凹側に対する前記クラック形成部材の押圧によって前記初期クラックを進展させる、
ことを特徴とする、請求項2に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項4】
記クラック形成部材は、前記保持部材の一方の端部に設けられたガイド部によって前記初期クラックを形成する位置に案内される、
ことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記保持部材の端部に前記クラック形成部材が挿入されるスリットが形成されている、
ことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記保持部材は、湾曲形成された外周面を有し、
前記保持部材は、前記マザーガラスフィルムの前記食み出し部に対して、前記外周面を沿わすようにして配置される、
ことを特徴とする請求項1~請求項5の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記定盤に位置決め部材が設けられ、
前記マザーガラスフィルムが前記位置決め部材に当接することにより、前記保持部材の端部から前記マザーガラスフィルムの端部が食み出すように、前記定盤上における前記マザーガラスフィルムの位置が定められる、
ことを特徴とする、請求項1~請求項6の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記保持部材に前記切断予定線の目印となる切断ガイド線が表示されている、
ことを特徴とする、請求項1~請求項7の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記定盤を間に挟んだ両側において、前記保持部材が配置されている
ことを特徴とする、請求項1~請求項8の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記定盤の上に取り換え可能な保護シートを敷設し、
前記保護シートの上に前記マザーガラスフィルムを載置する、
ことを特徴とする、請求項1~請求項9の何れか一項に記載のガラスフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ受像機等の映像表示装置としては、従来普及していたCRT型ディスプレイに替わり、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及している。これらのフラットパネルディスプレイに用いられる板ガラスにおいては、薄肉化が推進されているのが実情である。
【0003】
特許文献1には、厚みが数百μm以下のガラスフィルム(薄板ガラス)が開示されている。特許文献1に記載の如く、ガラスフィルムの製造方法には、ガラスフィルム(マザーガラスフィルム)の切断予定線に引張応力(曲げ応力)を作用させた状態で、切断予定線の一部に初期クラックを形成することにより、初期クラックを切断予定線に沿って進展させてガラスフィルムを切断する方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のガラスフィルムは、ガラスフィルムを搬送するための搬送ローラを備えるガラスフィルム切断装置によって切断される。ガラスフィルム切断装置は、ガラスフィルムを切断する際に、ガラスフィルムの端部が自重により垂れ下がるように構成される。これにより、切断予定線に引張応力が作用するので、切断予定線の一部に初期クラックを形成すれば、初期クラックが切断予定線に沿って進展して、ガラスフィルムを切断することができる。かかるガラスフィルム切断装置には、ガラスフィルムの姿勢を保持する保持部材が設けられていないが、ガラスフィルムを上方から押さえる押さえ部材を備える他のガラスフィルム切断装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-121791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の搬送ローラを備えるガラスフィルム切断装置は、保持部材が設けられていないため、切断前後のマザーガラスフィルムの姿勢を保持することができず、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できないおそれがあった。また、上述の押さえ部材によって保持するとした場合、押さえ部材によって上方から押さえるようにマザーガラスフィルムを配置する必要があるため、作業性が低下してしまうおそれがあった。また、マザーガラスフィルムを上方から押さえるため、ガラスフィルムの上面に傷を付けてしまうおそれがあった。そこで、作業性の低下を防止するとともに、マザーガラスフィルムの上面に傷を付けずに、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できるガラスフィルムの製造方法が求められていた。
【0007】
本発明の課題は、作業性の低下を防止するとともに、ガラスフィルムの上面に傷を付けずに、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できるガラスフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明に係るガラスフィルムの製造方法は、マザーガラスフィルムの切断予定線に曲げ応力を付与した状態で、前記切断予定線の一部に初期クラックを形成することにより、前記初期クラックを前記切断予定線に沿って進展させて前記マザーガラスフィルムを切断するガラスフィルムの製造方法であって、上面側で負圧吸引力を発生させる定盤上に、前記マザーガラスフィルムの端部が食み出した部分である食み出し部が形成されるように前記マザーガラスフィルムを載置し、前記食み出し部に前記切断予定線が設けられることを特徴とする。
【0010】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、押さえ部材等により上方からマザーガラスフィルムを押さえるのではなく、定盤上でマザーガラスフィルムを吸着することにより切断前後のマザーガラスフィルムの姿勢を保持する。従って、作業性の低下を防止するとともに、ガラスフィルムの上面に傷を付けずに、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できる。
【0011】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記初期クラックは、前記切断予定線の端部に形成されることが好ましい。
【0012】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、マザーガラスフィルムの側方から初期クラックを形成することが可能となる。従って、初期クラックを形成する際に、上方からマザーガラスフィルムを押し割ってカケが発生することを防止できる。
【0013】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記曲げ応力により前記マザーガラスフィルムが曲げられて、前記曲げられるマザーガラスフィルムの凹側に対する押圧によって前記初期クラックを進展させることが好ましい。
【0014】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、曲げられるマザーガラスフィルムの凹側がガラスフィルムの下面となるように配置することにより、マザーガラスフィルムの上面が押圧されない。従って、上方からマザーガラスフィルムを押し割ってカケが発生することを防止することができるとともに、ガラスフィルムの上面に傷が付くことを防止できる。
【0015】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、クラック形成部材が前記切断予定線の一部に前記初期クラックを形成し、前記クラック形成部材は、ガイド部によって前記初期クラックを形成する位置に案内されることが好ましい。
【0016】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、切断予定線の一部に初期クラックを形成することが容易となる。従って、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できる。
【0017】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記曲げ応力によって曲げられる前記食み出し部の凹側に保持部材が配置されていることが好ましい。
【0018】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、保持部材に倣うように食み出し部が曲げられる。従って、保持部材に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できる。
【0019】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記保持部材の端部にスリットが形成されていることが好ましい。
【0020】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、クラック形成部材をスリットに挿入することにより、切断予定線の一部に初期クラックを形成することが容易となる。従って、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できる。
【0021】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記定盤に位置決め部材が設けられ、前記マザーガラスフィルムが前記位置決め部材に当接することにより、前記定盤上における前記マザーガラスフィルムの位置が定められることが好ましい。
【0022】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、マザーガラスフィルムにおける所定の位置を切断することが容易となる。従って、所定の寸法となるようにマザーガラスフィルムを切断することが容易となる。
【0023】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記保持部材に前記切断予定線の目印となる切断ガイド線が表示されていることが好ましい。
【0024】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを切断することが容易となる。従って、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できる。
【0025】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記定盤を間に挟んだ両側において、前記初期クラックを前記切断予定線に沿って進展させることによる前記マザーガラスフィルムの切断が可能であることが好ましい。
【0026】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、定盤を間に挟んだ両側の切断予定線間の寸法が所定の寸法となる。従って、所定の寸法となるようにマザーガラスフィルムを切断することができる。
【0027】
また、本発明に係るガラスフィルムの製造方法においては、前記定盤の上に取り換え可能な保護シートを敷設し、前記保護シートの上に前記マザーガラスフィルムを載置することが好ましい。
【0028】
このような本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、定盤の上に取り換え可能な保護シートを敷設することで、定盤の上に切断後にガラス粉が舞い上がったとしても保護シートにガラス粉が付着することとなり、保護シートを取り換えることで、容易にガラス粉を定盤の上から除去することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明におけるガラスフィルムの製造方法によれば、作業性の低下を防止するとともに、ガラスフィルムの上面に傷を付けずに、切断予定線に沿ってマザーガラスフィルムを精度よく切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】マザーガラスフィルムが載置された定盤の斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るガラスフィルムの製造方法を説明するためのガラスフィルム切断装置の斜視図である。
図3】定盤へのガラスフィルムの載置を説明するための模式図であって(a)は、模式平面図であり、(b)は、模式側面図であり、(c)は、模式正面図である。
図4】食み出し部の下方への押圧を説明するための模式図であって(a)は、模式平面図であり、(b)は、模式側面図であり、(c)は、模式正面図である。
図5】初期クラックの形成を説明するための模式図であって(a)は、模式平面図であり、(b)は、模式側面図であり、(c)は、模式正面図である。
図6】初期クラックの進展を説明するための模式平面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るガラスフィルムの製造方法を説明するためのガラスフィルム切断装置の斜視図である。
図8】初期クラックの形成を説明するための模式図であって(a)は、模式平面図であり、(b)は、模式側面図であり、(c)は、模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の第一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0032】
ガラスフィルムGの製造方法では、ガラスフィルム切断装置1を用いてマザーガラスフィルムMGを切断する。マザーガラスフィルムMG(ガラスフィルムG)の厚さは、10μm~200μmであることが好ましい。
【0033】
図1図2及び図5を用いて、ガラスフィルム切断装置1の構成について説明する。ガラスフィルム切断装置1は、主に定盤2、クラック形成部材3、ガイド部材4、保持部材5、位置決め部材6を備えている。なお、本実施形態において、切断されるマザーガラスフィルムMGは、矩形状となっている。
【0034】
図1及び図2に示すように、定盤2は、マザーガラスフィルムMGが載置されるものである。定盤2は、例えば上面2aが矩形状になっており、上面2aには複数の吸引孔2bが設けられている。吸引孔2bは、負圧装置(図示しない)にそれぞれ連通されており、吸引孔2bの内部が負圧装置によって負圧に維持される。そのため、定盤2の上面2aに載置されるマザーガラスフィルムMGは、吸引孔2bで発生する負圧吸引力によって定盤2に保持される。定盤2の上面2aが多孔質体で形成される場合は、吸引孔2bは設けられていなくてもよい。なお、定盤2には、マザーガラスフィルムMGの端部Aが定盤2から食み出した部分である食み出し部Bが形成されるように、マザーガラスフィルムMGが載置される。
【0035】
図5に示すように、クラック形成部材3は、マザーガラスフィルムMGの切断予定線L1の一部に初期クラックDを形成するものである。クラック形成部材3は、例えば切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成する。クラック形成部材3は、例えば棒状のやすりである。クラック形成部材3は、先細り形状を呈していることが好ましい。これにより、クラック形成部材3を下方から上方に向かって移動させることで、マザーガラスフィルムMGの上面2a側に接触せずに、切断予定線L1の端部Eを切削することができる。なお、初期クラックDを形成可能な方向であれば、クラック形成部材3の移動する方向は限定されない。
【0036】
ガイド部材4は、初期クラックDを形成する位置にクラック形成部材3を案内するものである。ガイド部材4は、保持部材5の一方の端部5aに設けられている。ガイド部材4は、例えば板状であり、クラック形成部材3を案内する側面が鉛直となるように設けられている。ガイド部材4は、クラック形成部材3を案内する側面の上方に切断予定線L1の端部Eが位置するように配置される。そのため、クラック形成部材3は、クラック形成部材3を案内するガイド部材4の側面を摺動して、切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成できる。
【0037】
保持部材5は、マザーガラスフィルムMGの食み出し部Bを下方に案内するものである。図2に示すように、保持部材5は、マザーガラスフィルムMGの食み出し部Bの下方に配置され、定盤2の側面に沿って平行に設けられている。保持部材5は、定盤2の上面2aよりも低い位置に配置され、定盤2の吸引孔2bに吸着されたマザーガラスフィルムMGが剥がれにくくなるように構成されている。保持部材5は、例えば一方に延出する断面視扇形状の部材からなり、凸状に曲げられたマザーガラスフィルムMGの食み出し部Bに対して、湾曲形成された外周面を沿わすようにして配置される。なお、保持部材5は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば一方に延出する断面視円弧状の部材からなるものであってもよい。或いは、保持部材5は、中空の円筒体(パイプ)や中実の円柱体であってもよい。或いは、保持部材5は、上述の円柱体よりも小径の複数のローラにより構成されてもよい。この場合、複数のローラは、凸状に曲げられたマザーガラスフィルムMGの食み出し部Bに対して、それぞれ外周面を沿わすようにして、湾曲方向に配列される。また、ローラは、定盤2の側面に平行な軸周りにそれぞれ回転自在であり、マザーガラスフィルムMGの食み出し部Bとの摩擦を小さくすることができる。保持部材5は、樹脂材料で構成されていることが好ましく、金属により構成される場合は、その外周を覆うように発泡樹脂シートが設けられていることが好ましい。保持部材5は、切断予定線L1の目印となる切断ガイド線L2が保持部材5の軸方向に沿って表示されている。切断ガイド線L2は、保持部材5の中央部に表示されているが、保持部材5の両端に亘って表示されてもよく、その長さは限定されない。なお、保持部材5は必ずしも必須ではなく、図1に記載されているように、マザーガラスフィルムMGの食み出し部Bを自重もしくは下方に押圧することで、保持部材5を使用せずに切断予定線L1に曲げ応力を付与してもよい。
【0038】
上述したガイド部材4及び保持部材5は、定盤2を挟んで対向する両側にそれぞれ設けられている。即ち、定盤2を挟んで対向する両側にて、ガイド部材4によってクラック形成部材3を案内して切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成できるとともに、保持部材5によってマザーガラスフィルムMGの食み出し部Bを下方に案内できる。つまり、重力の反作用によって、マザーガラスフィルムMGの食み出し部Bは、保持部材5によって、上方に押圧されることとなる。
【0039】
位置決め部材6は、定盤2に載置されたマザーガラスフィルムMGの位置を定めるためのものである。位置決め部材6は、マザーガラスフィルムMGにおいて端部Aに隣接する端部Cが当接することより、マザーガラスフィルムMGの位置が定められるように構成される。位置決め部材6は、保持部材5の軸方向に対して直交する、定盤2の側面の上部に設けられている。位置決め部材6は、保持部材5の端部5aからマザーガラスフィルムMGの端部Cが食み出すように、マザーガラスフィルムMGの位置が定められるように構成される。マザーガラスフィルムMGの端部Cの保持部材5の端部5aからの食み出し幅は、1mm~10mmであることが好ましい。位置決め部材6は、例えば板状であり、マザーガラスフィルムMGが当接する側面が鉛直となるように設けられている。
【0040】
次に、以上のように構成されたガラスフィルム切断装置1を用いたガラスフィルムGの切断方法を説明する。
【0041】
図3に示すように、まず、作業者は、食み出し部Bが形成されるようにマザーガラスフィルムMGを定盤2に載置する。このとき、作業者は、マザーガラスフィルムMGの端部Cを位置決め部材6に当接させることにより、マザーガラスフィルムMGを位置決めすることができる。また、マザーガラスフィルムMGは、複数の吸引孔2bによって定盤2に保持される。なお、マザーガラスフィルムMGは、クラック形成部材3が側方から当接できる程度にマザーガラスフィルムMGが保持部材5の端部5aから食み出した状態となるように、位置決め部材6によって位置決めされる。
【0042】
このような本発明におけるガラスフィルムGの製造方法によれば、押さえ部材等で上方から押さえるのではなく、定盤2上で吸着することにより切断前後のマザーガラスフィルムMGの姿勢を保持する。従って、作業性の低下を防止するとともに、ガラスフィルムGの上面に傷を付けずに、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGを精度よく切断できる。
また、マザーガラスフィルムMGにおける所定の位置を切断することが容易となる。従って、所定の寸法となるようにマザーガラスフィルムMGを切断することが容易となる。例えば、マザーガラスフィルムMGの端部Cの延伸方向に対して直交方向にマザーガラスフィルムMGを切断することが容易となる。
【0043】
図4に示すように、次に、作業者は、切断予定線L1と切断ガイド線L2が一致するように、食み出し部Bを下方に押圧する(矢印F参照)。そして、食み出し部Bの下方への移動に伴って、切断ガイド線L2が表示された部分に沿って保持部材5がマザーガラスフィルムMGの凹側を上方に押圧する。これにより、マザーガラスフィルムMGは、保持部材5に倣うように凸状に曲げられる。
【0044】
このような本発明におけるガラスフィルムGの製造方法によれば、保持部材5によりマザーガラスフィルムMGの上面が押圧されない。従って、ガラスフィルムGの上面に傷が付くことを防止できる。
また、保持部材5に倣うように食み出し部Bが曲げられる。従って、切断ガイド線L2が表示された部分に沿ってマザーガラスフィルムMGを精度よく切断できる。
また、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGを切断することが容易となる。従って、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGを精度よく切断できる。
【0045】
図5に示すように、次に、作業者は、保持部材5に倣うようにマザーガラスフィルムMGが凸状に曲げられた状態、即ち、切断予定線L1に曲げ応力が付与された状態で、ガイド部材4によって案内される位置である切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成させる。具体的には、作業者は、下方から上方に向かってクラック形成部材3を移動させて、切断予定線L1の端部Eを切削する(矢印H参照)。
【0046】
図6に示すように、初期クラックDを形成すると、切断予定線L1に作用している曲げ応力によって、曲げ応力の応力集中に起因する引き裂き力が初期クラックDの先端に作用して、初期クラックDが切断予定線L1に沿って連続的に進展する。これにより、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGが切断されることになる。
【0047】
このような本発明におけるガラスフィルムGの製造方法によれば、マザーガラスフィルムMGの側方から初期クラックDが形成される。従って、初期クラックDを形成する際に、上方からマザーガラスフィルムMGを押し割ってカケが発生することを防止できる。
また、切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成することが容易となる。従って、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGを精度よく切断できる。
【0048】
上述したように、保持部材5及びガイド部材4は、定盤2を挟んで対向する両側にそれぞれ設けられている。従って、作業者は、定盤2を間に挟んだ両側において、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGを切断することができる。
【0049】
このような本発明におけるガラスフィルムGの製造方法によれば、定盤2を間に挟んだ両側の切断予定線L1間の寸法が所定の寸法となる。従って、所定の寸法となるようにマザーガラスフィルムMGを切断することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態では、作業者により行われる方法を例示したが、本発明の方法は作業者により行われることに限定されるものではない。例えば、作業者ではなくロボット等の機械装置によって行われるものであってもよい
【0051】
次に、図7及び図8を用いて、第二実施形態に係るガラスフィルムGの製造方法について説明する。以下においては、第一実施形態に係るガラスフィルムGの製造方法の説明で用いた名称と符号を用いることで、同じものを指すこととする。ここでは、第一実施形態に係るガラスフィルムGの製造方法に対して相違する部分を中心に説明する。
【0052】
図7及び図8に示すように、保持部材5は、保持部材5の端部5aにスリット5bが形成されている。スリット5bは、例えば保持部材5の軸方向と平行な溝が鉛直方向に貫通するように形成され、クラック形成部材3を鉛直方向に挿入可能な寸法を有している。マザーガラスフィルムMGは、スリット5bの上方に切断予定線L1の端部Eが位置するように配置される。そのため、クラック形成部材3は、スリット5bに挿入された状態で、切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成できる。なお、本実施形態においては、スリット5bが形成されているため、保持部材5上に設けられている切断ガイド線L2を省略してもよい。
【0053】
次に、以上のように構成されたガラスフィルム切断装置1によるガラスフィルムGの切断方法を説明する。
【0054】
図8に示すように、作業者は、保持部材5に倣うようにマザーガラスフィルムMGが凸状に曲げられた状態、即ち、マザーガラスフィルムMGの切断予定線L1に曲げ応力を付与した状態で、スリット5bによって案内される位置である切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成させる。具体的には、作業者は、スリット5bにクラック形成部材3を挿入した状態で、下方から上方に向かってクラック形成部材3を移動させて、切断予定線L1の端部Eを切削する(矢印J参照)。この際、スリット5bの内側面5cをガイド部として、クラック形成部材3の案内を行うことが好ましい。
【0055】
このような本発明におけるガラスフィルムGの製造方法によれば、クラック形成部材3をスリット5bに挿入してマザーガラスフィルムMGを切削することにより、切断予定線L1の端部Eに初期クラックDを形成することが容易となる。従って、切断予定線L1に沿ってマザーガラスフィルムMGを精度よく切断できる。
【0056】
なお、第二実施形態に係るガラスフィルム切断装置1によってマザーガラスフィルムMGの両端を切断した後、切断によって形成されたマザーガラスフィルムMGの端部を位置決め部材6に当接させて、第一実施形態に係るガラスフィルム切断装置1によってマザーガラスフィルムMGの両端を切断することができる。これにより、マザーガラスフィルムMGの四方を切断して、所定の寸法の矩形状となるようにマザーガラスフィルムMGを切断することができる。
【0057】
上記の実施形態では、定盤2の上面2a上に直接マザーガラスフィルムMGを載置していたが、定盤2の上面2a上に図示しない保護シートを敷設し、保護シートの上にマザーガラスフィルムMGを載置してもよい。マザーガラスフィルムMGの切断後、微小なガラス粉が舞い上がる場合があり、この微小なガラス粉が定盤2の上面2aに付着する場合がある。ガラス粉が定盤2の上面2aに付着した状態で次のマザーガラスフィルムMGを載置し、マザーガラスフィルムMGの吸引を行うと、マザーガラスフィルムMGがガラス粉に押さえつけられることとなり、マザーガラスフィルムMGの表面に傷が生じるおそれがある。このような場合であったとしても、保護シートを取り換えることで、容易にガラス粉を除去することができる。
【0058】
定盤2の上面2a上に敷設する保護シートとしては、合紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルム、発泡ポリエチレンシート等の発泡樹脂シートを好適に使用することができる。特に、クッション性を有するため、保護シートとして発泡樹脂シートを使用することが好ましい。樹脂フィルムや発泡樹脂シート等の通気性を有しない保護シートを使用する場合、定盤2でマザーガラスフィルムMGを吸引できるように、保護シートに孔を形成することが好ましい。保護シートに形成する孔としては、直径1mm~5mmの孔を、10mm~50mmの間隔で形成することが好ましい。保護シートは、定盤2の上面2aから食み出してもよいが、マザーガラスフィルムMGの良好な切断性を維持するために、保持部材5には敷設されないことが好ましい。
【0059】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。更に種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 ガラスフィルム切断装置
2 定盤
2a 定盤の上面
3 クラック形成部材
4 ガイド部材
5 保持部材
5a 保持部材の端部
5b スリット
6 位置決め部材
A マザーガラスフィルムの端部
B 食み出し部
C マザーガラスフィルムの端部
D 初期クラック
G ガラスフィルム
L1 切断予定線
L2 切断ガイド線
MG マザーガラスフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
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図8