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7647114圧力応答性粒子、接着材料、印刷物の製造装置、印刷物の製造方法、印刷物、印刷物製造用シート、及び、印刷物製造用シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】圧力応答性粒子、接着材料、印刷物の製造装置、印刷物の製造方法、印刷物、印刷物製造用シート、及び、印刷物製造用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/00 20060101AFI20250311BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20250311BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20250311BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20250311BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250311BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20250311BHJP
   C08F 257/02 20060101ALI20250311BHJP
   G03G 8/00 20060101ALN20250311BHJP
【FI】
C08L51/00
C09J11/08
C09J201/00
B42D15/00 371
B42D15/00 341B
B32B27/00 M
B32B27/30 B
B32B27/30 A
C08F257/02
G03G8/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021006585
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110880
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 三枝子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 純明
(72)【発明者】
【氏名】山中 清弘
(72)【発明者】
【氏名】上脇 聡
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167471(JP,A)
【文献】特開2019-053182(JP,A)
【文献】特開2008-088590(JP,A)
【文献】特表2006-516299(JP,A)
【文献】特開2018-163198(JP,A)
【文献】特開2018-002889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F251/00 -283/00
C08F283/02 -289/00
C08F291/00 -297/08
C09J 1/00 - 5/10
C09J 5/10
C09J 9/00 -201/10
B32B 1/00 - 43/00
G03G 8/00
G03G 9/00 - 9/113
G03G 9/16
C08L 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂Aを含む海部、並びに、樹脂B1及び樹脂B2を含む島部で構成された海島構造を有し、
前記樹脂B1の100℃における粘度が、前記樹脂B2の100℃における粘度よりも小さく、
前記樹脂Aが、スチレン系樹脂からなり、
前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、(メタ)アクリル系樹脂からなり、
圧力により相転移して接着性を生じる
圧力応答性粒子。
【請求項2】
前記樹脂B1の重量平均分子量が、前記樹脂B2の重量平均分子量よりも小さい請求項1に記載の圧力応答性粒子。
【請求項3】
前記樹脂B2の重量平均分子量が、前記樹脂B1の重量平均分子量の2倍以上4倍以下である請求項2に記載の圧力応答性粒子。
【請求項4】
前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、分子量分布が5以上である樹脂からなる請求項1に記載の圧力応答性粒子。
【請求項5】
前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、分子量分布が10以上である樹脂からなる請求項4に記載の圧力応答性粒子。
【請求項6】
前記樹脂AのSP値-前記樹脂B1のSP値の値が、0.7MPa1/2以上である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子
【請求項7】
前記樹脂AのSP値-前記樹脂B2のSP値の値が、0.7MPa1/2以上である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項8】
前記樹脂B1のSP値-前記樹脂B2のSP値の値が、0.7MPa1/2以下である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項9】
前記島部における前記樹脂B1の含有量MB1と前記樹脂B2の含有量MB2との質量比MB1/MB2の値が、0.5以上2以下である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子。
【請求項10】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の圧力応答性粒子を含む接着材料。
【請求項11】
請求項10に記載の接着材料を収容し、前記接着材料に含まれる前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む
印刷物の製造装置。
【請求項12】
請求項10に記載の接着材料を用いるとともに、前記接着材料に含まれる前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置工程と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む
印刷物の製造方法。
【請求項13】
折り重なった記録媒体が、対向する面において、請求項10に記載の接着材料が含有する前記圧力応答性粒子によって接着されてなる、印刷物。
【請求項14】
重なった複数の記録媒体が、対向する面において、請求項10に記載の接着材料が含有する前記圧力応答性粒子によって接着されてなる、印刷物。
【請求項15】
基材と、
前記基材上に配置された、請求項10に記載の接着材料と、を有する、
印刷物製造用シート。
【請求項16】
請求項10に記載の接着材料を用いるとともに、前記接着材料に含まれる前記圧力応答性粒子を基材上に配置する配置工程を含む、
印刷物製造用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力応答性粒子、接着材料、印刷物の製造装置、印刷物の製造方法、印刷物、印刷物製造用シート、及び、印刷物製造用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通常の状態では粘着性、接着性共に示さず、加圧により剥離可能な感圧接着剤、微粒子充填剤、結着剤及び疎水性高分子を主成分とする接着層用組成物を塗工して接着層を設けた圧着葉書用紙において、該接着層がアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合物を含有することを特徴とする圧着葉書用紙が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、下記式1を満たす接着材料が記載されている。
式1:20℃≦T(1MPa)-T(10MPa)
式1において、T(1MPa)は、フローテスターを用いて測定した、印加圧力1MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度を表し、T(10MPa)は、フローテスターを用いて測定した、印加圧力10MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-229993号公報
【文献】特開2018-002889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、樹脂を1種のみ含む島部で構成された海島構造を有する場合に比べ、得られる圧着物における剥離力が高い圧力応答性粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 樹脂Aを含む海部、並びに、樹脂B1及び樹脂B2を含む島部で構成された海島構造を有し、前記樹脂B1の100℃における粘度が、前記樹脂B2の100℃における粘度よりも小さい圧力応答性粒子。
<2> 前記樹脂B1の重量平均分子量が、前記樹脂B2の重量平均分子量よりも小さい<1>に記載の圧力応答性粒子。
<3> 前記樹脂B2の重量平均分子量が、前記樹脂B1の重量平均分子量の2倍以上4倍以下である<2>に記載の圧力応答性粒子。
<4> 前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、分子量分布が5以上である樹脂からなる<1>に記載の圧力応答性粒子。
<5> 前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、分子量分布が10以上である樹脂からなる<4>に記載の圧力応答性粒子。
<6> 前記樹脂AのSP値-前記樹脂B1のSP値の値が、0.7MPa1/2以上である<1>乃至<5>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<7> 前記樹脂AのSP値-前記樹脂B2のSP値の値が、0.7MPa1/2以上である<1>乃至<6>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<8> 前記樹脂B1のSP値-前記樹脂B2のSP値の値が、0.7MPa1/2以下である<1>乃至<7>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<9> 前記島部における前記樹脂B1の含有量MB1と前記樹脂B2の含有量MB2との質量比MB1/MB2の値が、0.5以上2以下である<1>乃至<8>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<10> 前記樹脂Aが、スチレン系樹脂を含む<1>乃至<9>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<11> 前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、(メタ)アクリル系樹脂である<1>乃至<10>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子。
<12> <1>乃至<11>のいずれか1つに記載の圧力応答性粒子を含む接着材料。
<13> <12>に記載の接着材料を収容し、前記接着材料に含まれる前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む印刷物の製造装置。
<14> <12>に記載の接着材料を用いるとともに、前記接着材料に含まれる前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む印刷物の製造方法。
<15> 折り重なった記録媒体が、対向する面において、<12>に記載の接着材料が含有する前記圧力応答性粒子によって接着されてなる、印刷物。
<16> 重なった複数の記録媒体が、対向する面において、<12>に記載の接着材料が含有する前記圧力応答性粒子によって接着されてなる、印刷物。
<17> 基材と、前記基材上に配置された、請求項12に記載の接着材料と、を有する、印刷物製造用シート。
<18> <12>に記載の接着材料を用いるとともに、前記接着材料に含まれる前記圧力応答性粒子を基材上に配置する配置工程を含む、印刷物製造用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、樹脂を1種のみ含む島部で構成された海島構造を有する場合に比べ、得られる圧着物における剥離力が高い圧力応答性粒子が提供される。
<2>に係る発明によれば、前記樹脂B1の重量平均分子量が、前記樹脂B2の重量平均分子量以上である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<3>に係る発明によれば、前記樹脂B2の重量平均分子量が、前記樹脂B1の重量平均分子量の2倍未満又は4倍超である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<4>に係る発明によれば、前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、分子量分布が5未満である樹脂からなる場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<5>に係る発明によれば、前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、分子量分布が10未満である樹脂からなる場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記樹脂AのSP値-前記樹脂B1のSP値の値が、0.7MPa1/2未満である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<7>に係る発明によれば、前記樹脂AのSP値-前記樹脂B2のSP値の値が、0.7MPa1/2未満である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<8>に係る発明によれば、前記樹脂B1のSP値-前記樹脂B2のSP値の値が、0.7MPa1/2を超える場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<9>に係る発明によれば、前記島部における前記樹脂B1の含有量MB1と前記樹脂B2の含有量MB2との質量比MB1/MB2の値が、0.5未満又は2超である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<10>に係る発明によれば、前記樹脂Aが、(メタ)アクリル系樹脂である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<11>に係る発明によれば、前記樹脂B1及び前記樹脂B2が、スチレン系樹脂である場合に比べ、得られる圧着物における剥離力がより高い圧力応答性粒子が提供される。
<12>、<13>、<14>、<15>、<16>、<17>又は<18>に係る発明によれば、樹脂を1種のみ含む島部で構成された海島構造を有する圧力応答性粒子を適用した場合に比べ、得られる圧着物若しくは印刷物における剥離力がより高い接着材料、印刷物の製造装置、印刷物の製造方法、印刷物、印刷物製造用シート、又は、印刷物製造用シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る印刷物の製造装置の別の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る印刷物の製造装置の別の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0010】
本実施形態において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本実施形態において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本実施形態において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0016】
本実施形態において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0017】
本実施形態において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいい、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいう。
【0018】
本実施形態において、記録媒体を折り重ね対向する面どうしを接着して形成した印刷物、又は、2以上の記録媒体を重ね対向する面どうしを接着して形成した印刷物を、「圧着印刷物」という。
【0019】
<圧力応答性粒子>
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、樹脂Aを含む海部、並びに、樹脂B1及び樹脂B2を含む島部で構成された海島構造を有し、前記樹脂B1の100℃における粘度が、前記樹脂B2の100℃における粘度よりも小さい。
【0020】
近年、圧力応答性樹脂粒子により圧着した圧着はがき等の圧着物においては、接着力の向上が求められている。
樹脂A及び樹脂Bを含む島部を有し、前記樹脂Aの100℃における粘度が、前記樹脂Bの100℃における粘度よりも小さい圧力応答性樹脂粒子を用いると、粘度の低い樹脂Aが良好に濡れ広がり、タック性(粘着性)を有することで接着性が向上するとともに、粘度の高い樹脂Bの凝集力が高いため、強度が向上することで、協奏的に接着力が向上し、得られる圧着物における剥離力が高い圧力応答性粒子が得られると推定さえる。
【0021】
以下、本実施形態に係る圧力応答性粒子の成分、構造及び特性について詳細に説明する。以下の説明において、特に断らない限り、「スチレン系樹脂」は「スチレン系モノマー及びその他のビニルモノマーを50質量%以上重合成分に含むスチレン系樹脂」を意味し、「(メタ)アクリル系樹脂」は「(メタ)アクリル化合物を50質量%以上重合成分に含むアクリル系樹脂」を意味する。
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を有する化合物であればよく、例えば、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0022】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、前記樹脂B1の100℃における粘度が、前記樹脂B2の100℃における粘度よりも小さい。
前記樹脂B2の100℃における粘度-前記樹脂B1の100℃における粘度の値は、剥離力向上の観点から、5,000Pa・s以上であることが好ましく、8,000Pa・s以上であることがより好ましく、10,000Pa・s以上20,000Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0023】
本実施形態における樹脂の100℃における粘度の測定方法は、以下の通りである。
フローテスター((株)島津作製所製フローテスターCFT-500)を用いて行う。樹脂を圧縮固化してペレット状の試料を作製する。作製した試料をフローテスターにセットして、測定温度を50℃以上150℃以下の範囲で50℃から徐々に加熱し(+1℃/minの昇温速度)、1MPaの押し出し圧力を印加した条件下で、試料の粘度を測定し、100℃の時の粘度を求める。
【0024】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、剥離力向上の観点から、前記樹脂B1の重量平均分子量(Mw)が、前記樹脂B2の重量平均分子量(Mw)よりも小さいことが好ましい。
また、前記樹脂B2の重量平均分子量は、剥離力向上の観点から、前記樹脂B1の重量平均分子量の1.2倍以上10倍以下であることが好ましく、前記樹脂B1の重量平均分子量の1.5倍以上7倍以下であることがより好ましく、前記樹脂B1の重量平均分子量の2倍以上4倍以下であることが特に好ましい。
前記樹脂B2の重量平均分子量-前記樹脂B1の重量平均分子量の値は、剥離力向上の観点から、10,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、30,000以上300,000以下であることが更に好ましく、50,000以上200,000以下であることが特に好ましい。
【0025】
前記樹脂B1の重量平均分子量は、保存安定性、付与性、及び、剥離力向上の観点から、5,000~200,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましく、15,000~80,000であることが更に好ましく、20,000~60,000であることが特に好ましい。
前記樹脂B2の重量平均分子量は、保存安定性、付与性、及び、剥離力向上の観点から、50,000~300,000であることが好ましく、100,000~300,000であることがより好ましく、120,000~280,000であることが更に好ましく、150,000~250,000であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る圧力応答性粒子における樹脂B1及び樹脂B2は、剥離力向上の観点から、分子量分布(Mw/Mn)の広い(例えば、3以上)の樹脂を含むことが好ましく、分子量分布の広い樹脂からなることがより好ましい。
また、前記樹脂B1及び前記樹脂B2は、剥離力向上の観点から、分子量分布が5以上である樹脂からなることが好ましく、分子量分布が10以上である樹脂からなることがより好ましく、分子量分布が10以上20以下である樹脂からなることが特に好ましい。
【0027】
本実施形態において樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、GPC装置として東ソー(株)製HLC-8120GPCを用い、カラムとして東ソー(株)製TSKgel SuperHM-M(15cm)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて行う。樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0028】
前記樹脂AのSP値(溶解度パラメータ)-前記樹脂B1のSP値の値は、剥離力向上の観点から、0.7MPa1/2以上であることが好ましく、1MPa1/2以上であることがより好ましく、1MPa1/2以上10MPa1/2以下であることが特に好ましい。
また、前記樹脂AのSP値-前記樹脂B2のSP値の値は、剥離力向上の観点から、0.7MPa1/2以上であることが好ましく、1MPa1/2以上であることがより好ましく、1MPa1/2以上10MPa1/2以下であることが特に好ましい。
更に、前記樹脂B1のSP値-前記樹脂B2のSP値の値は、剥離力向上の観点から、0.7MPa1/2以下であることが好ましく、0.5MPa1/2以下であることがより好ましく、-0.5MPa1/2以上0.5MPa1/2以下であることが特に好ましい。また、下限値は、-1MPa1/2以上であることが好ましく、-0.7MPa1/2以上であることがより好ましく、-0.5MPa1/2以上であることが特に好ましい
【0029】
前記樹脂AのSP値は、剥離力向上の観点から、20MPa1/2以上30MPa1/2以下であることが好ましく、20MPa1/2以上28MPa1/2以下であることがより好ましく、20MPa1/2以上27MPa1/2以下であることが特に好ましい。
また、前記樹脂B1のSP値は、剥離力向上の観点から、10MPa1/2以上20MPa1/2以下であることが好ましく、15MPa1/2以上20MPa1/2以下であることがより好ましく、17MPa1/2以上20MPa1/2以下であることが特に好ましい。
更に、前記樹脂B2のSP値は、剥離力向上の観点から、10MPa1/2以上20MPa1/2以下であることが好ましく、15MPa1/2以上20MPa1/2以下であることがより好ましく、17MPa1/2以上20MPa1/2以下であることが特に好ましい。
【0030】
本実施形態における各樹脂の溶解度パラメータ(SP値)は、Fedors法(Polym. Eng. Sci., 14, 147(1974))により算出される値である。
樹脂の溶解度パラメータ(SP値)については、例えば、樹脂がポリエステル樹脂であり、かつ、アルコール成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が用いられている場合、エチレンオキサイド付加物をプロピレンオキサイド付加物に変更することで、得られるポリエステル樹脂のSP値を下げることができる。また、樹脂がポリエステル樹脂であり、かつ、酸成分として用いられるジカルボン酸としてセバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸が用いられている場合、脂肪族ジカルボン酸からテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸に変更することで、逆にSP値を上昇させることができる。
また、樹脂のSP値は、SP値が既知の溶媒への溶解度を調べることによっても実測することができる。ただし、実際の樹脂同士の相溶化現象は、両樹脂の相互作用なども関係しているため、必ずしもSP値の大小だけできまるものではない。本実施形態においては、前記方法(すなわち、Fedors法)によりSP値が算出される。
【0031】
前記海部における樹脂Aの含有量は、剥離力向上の観点から、前記島部における樹脂B1及び樹脂B2の合計含有量よりも多いことが好ましい。
また、前記海部における樹脂Aの含有量は、剥離力向上の観点から、樹脂A、樹脂B1及び樹脂B2の合計含有量に対して、55質量%以上80質量%以下が好ましく、60質量%以上75質量%以下がより好ましく、65質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0032】
前記島部における前記樹脂B1の含有量MB1と前記樹脂B2の含有量MB2との質量比MB1/MB2の値は、剥離力向上の観点から、0.1以上10以下であることが好ましく、0.2以上5以下であることがより好ましく、0.5以上2以下であることが更に好ましく、0.8以上1.2以下であることが特に好ましい。
【0033】
前記樹脂Aは、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられるが、剥離力向上の観点から、スチレン系樹脂を含むことが好ましく、スチレン系樹脂からなることがより好ましい。
前記樹脂B1は、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられるが、剥離力向上の観点から、(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂からなることがより好ましい。
前記樹脂B2は、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられるが、剥離力向上の観点から、(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂からなることがより好ましい。
前記樹脂B1と前記樹脂B2とは、含まれる構成単位が異なる樹脂であっても、同じ樹脂であってもよい。含まれる構成単位が同じ樹脂である場合、例えば、各構成単位の質量比が異なる樹脂、各構成単位の質量比が同じであり、かつ重量平均分子量が異なる樹脂などが挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、着色剤、離型剤、その他添加剤を含有していてもよい。
以下に、前記樹脂A、前記樹脂B1及び前記樹脂B2として好適に用いられるスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂について述べる。
【0035】
-スチレン系樹脂-
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、スチレン系モノマー及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂を含有することが好ましく、前記樹脂Aとして、スチレン系樹脂を含有することがより好ましい。
【0036】
スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0037】
スチレン系樹脂を構成するスチレン以外のその他のビニルモノマーとしては、例えば、スチレン以外のスチレン系モノマー、アクリル系モノマーが挙げられる。
【0038】
スチレン以外のスチレン系モノマーとしては、例えば、ビニルナフタレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等のアルキル置換スチレン;p-フェニルスチレン等のアリール置換スチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン;p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン;m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン等のニトロ置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0042】
スチレン系樹脂を構成するその他のビニルモノマーとしては、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーのほかに、例えば、(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエン等のオレフィン;も挙げられる。
【0043】
スチレン系樹脂は、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、重合成分として(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0044】
スチレン系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。
【0045】
スチレン系樹脂は重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましく、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。
【0046】
スチレン系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、3,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、60,000以下が好ましく、55,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
【0047】
スチレン系樹脂のガラス転移温度は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが更に好ましく、80℃以下であることが特に好ましい。
【0048】
本実施形態において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0049】
樹脂のガラス転移温度は、重合成分の種類及び重合割合によって制御できる。ガラス転移温度は、主鎖に含まれるメチレン基、エチレン基、オキシエチレン基等の柔軟な単位の密度が高いほど低く、主鎖に含まれる芳香環、シクロヘキサン環等の剛直な単位の密度が高いほど高い傾向がある。また、ガラス転移温度は、側鎖における脂肪族基の密度が高いほど低い傾向がある。
【0050】
本実施形態において圧力応答性粒子全体に占めるスチレン系樹脂の質量割合は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0051】
-(メタ)アクリル系樹脂-
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、剥離力向上の観点から、(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。
また、前記(メタ)アクリル系樹脂は、剥離力向上の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であることが好ましく、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含む(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であることがより好ましく、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、かつ重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であることが特に好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が3個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。スチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が3個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、80:20~20:80であることが好ましく、70:30~30:70であることがより好ましく、60:40~40:60であることが更に好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0061】
(メタ)アクリル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差は、圧力によって転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、1個以上4個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましく、3個又は4個であることが更に好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル系樹脂は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる圧力応答性粒子を形成する観点から、重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種がアクリル酸n-ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとであることが特に好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0063】
また、中でも、(メタ)アクリル系樹脂としては、剥離力向上の観点から、2種以上のアルキル基の炭素数が3個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体が好ましく、2種又は3種のアルキル基の炭素数が3個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体がより好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、又は、アクリル酸ヘキシル及びアクリル酸プロピルの共重合体が特に好ましい。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;スチレン;スチレン以外のスチレン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエン等のオレフィン;が挙げられる。これらビニルモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
(メタ)アクリル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含む場合、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、12万以上が更に好ましく、15万以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、25万以下が好ましく、22万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0068】
本実施形態において圧力応答性母粒子全体に占める(メタ)アクリル系樹脂の質量割合は、圧力によって相転移しやすい圧力応答性粒子を形成する観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0069】
前記樹脂B1及び前記樹脂B2の組み合わせとしては、剥離力向上の観点から、
樹脂B1として、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体と、樹脂B2として、アクリル酸ヘキシル及びアクリル酸プロピルの共重合体との組み合わせ、
樹脂B1として、アクリル酸ヘキシル及びアクリル酸プロピルの共重合体と、樹脂B2として、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体との組み合わせ、
樹脂B1及び樹脂B2として、共重合比が異なる2種のアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、
樹脂B1及び樹脂B2として、分子量分布が10以上であるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、
などが好適に挙げられる。
【0070】
本実施形態において圧力応答性母粒子に含まれるスチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂の合計量は、圧力応答性母粒子全体に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0071】
-その他の樹脂-
圧力応答性粒子は、例えば、ポリスチレン;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;などを含有していてもよい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
-各種の添加剤-
圧力応答性粒子は、必要に応じて、着色剤(例えば、顔料、染料)、離型剤(例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス)、帯電制御剤などを含有していてもよい。
【0073】
本実施形態に係る圧力応答性粒子を透明な圧力応答性粒子とする場合は、圧力応答性粒子中の着色剤量は圧力応答性母粒子全体に対して1.0質量%以下であることが好ましく、圧力応答性粒子の透明性を高める観点からは少ないほど好ましい。
【0074】
-圧力応答母粒子の構造-
圧力応答性粒子の内部構造は、樹脂Aを含む海部、並びに、樹脂B1及び樹脂B2を含む島部で構成された海島構造を有する。
海島構造としては、樹脂Aを含む海部と、前記海部に分散した樹脂B1及び樹脂B2を含む島部とを有する海島構造が好ましく、前記樹脂Aとして、スチレン系樹脂を含む海部と、前記海部に分散した、前記樹脂B1及び前記樹脂B2として、(メタ)アクリル系樹脂を含む島部とを有する海島構造がより好ましい。
前記島部は、樹脂B1及び樹脂B2を含むドメイン(島、独立した1つの島部分)、樹脂B1を含み、かつ樹脂B2を含まないドメイン、樹脂B2を含み、かつ樹脂B1を含まないドメイン等を有していてもよいが、樹脂B1及び樹脂B2を含むドメインを少なくとも有していることが好ましい。
また、前記島部は、樹脂B1及び樹脂B2を含まないドメインを有していてもよい。
【0075】
圧力応答性粒子が海島構造を有する場合、島部の平均径は、200nm以上500nm以下が好ましい。島部の平均径が500nm以下であると、圧力によって圧力応答性母粒子が相転移しやすく、島部の平均径が200nm以上であると、圧力応答性母粒子に求められる機械的強度(例えば、現像器内で攪拌された際に変形しにくい強度)に優れる。これらの観点から、島部の平均径は、220nm以上450nm以下がより好ましく、250nm以上400nm以下が更に好ましい。
【0076】
海島構造の島部の平均径を上記範囲に制御する方法としては、例えば、後述する圧力応答性粒子の製造方法において、スチレン系樹脂の量に対する(メタ)アクリル系樹脂の量を増減する、凝集した樹脂粒子を融合・合一する工程において高温に維持する時間を増減する、等が挙げられる。
【0077】
海島構造の確認、及び島部の平均径の測定は、次の方法により行う。
圧力応答性粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。海島構造の海部と島部とは、四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムによる樹脂の染色度合いに起因する濃淡で区別され、これを利用して海島構造の有無を確認する。SEM画像から100個の島部を無作為に選択し、各島部の長径を計測し、長径100個の平均値を平均径とする。
【0078】
圧力応答性粒子は、単層構造の圧力応答性粒子であってもよいし、コア部とコア部を被覆するシェル層とを有するコア・シェル構造の圧力応答性粒子であってもよい。加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、圧力応答性粒子はコア・シェル構造であることが好ましい。
【0079】
圧力応答性粒子がコア・シェル構造を有する場合、圧力によって相転移しやすい観点から、コア部がスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。更に、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、シェル層がスチレン系樹脂を含有することが好ましい。スチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。(メタ)アクリル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。
【0080】
圧力応答性粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部がスチレン系樹脂を含む海部と、海部に分散した(メタ)アクリル系樹脂を含む島部とを有することが好ましい。島部の平均径は、先述の範囲であることが好ましい。更に、コア部が上記構成であることに加えて、シェル層がスチレン系樹脂を含有することが好ましい。この場合、コア部の海部とシェル層とが連続した構造となり、圧力によって圧力応答性母粒子が相転移しやすい。コア部の海部及びシェル層に含まれるスチレン系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。コア部の島部に含まれる(メタ)アクリル系樹脂の具体的形態は、先述のとおりである。
【0081】
シェル層に含まれる樹脂としては、ポリスチレン;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;なども挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
シェル層の平均厚は、圧力応答性粒子の変形抑制の観点から、120nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましく、140nm以上が更に好ましく、圧力によって圧力応答性母粒子が相転移しやすい観点から、550nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。
【0083】
シェル層の平均厚は、次の方法により測定する。
圧力応答性粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。SEM画像から10個の圧力応答性母粒子断面を無作為に選択し、圧力応答性母粒子1個につきシェル層の厚さを20か所計測して平均値を算出し、圧力応答性母粒子10個の平均値を平均厚とする。
【0084】
圧力応答性粒子の体積平均粒径(D50v)は、圧力応答性母粒子の取り扱いの容易さの観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましく、圧力によって圧力応答性母粒子全体が相転移しやすい観点から、12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、9μm以下が更に好ましい。
【0085】
圧力応答性粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)及びアパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて測定する。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量%水溶液2mLに圧力応答性母粒子を0.5mg以上50mg以下加え分散させ、次いで、電解液(ISOTON-II、ベックマン・コールター社製)100mL以上150mL以下と混合し、超音波分散機で1分間分散処理を行い、得られた分散液を試料とする。試料中の粒径2μm以上60μm以下の粒子50000個の粒径を測定する。小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0086】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、外添剤を含まない粒子であっても、樹脂Aを含む海部、並びに、樹脂B1及び樹脂B2を含む島部で構成された海島構造を有する圧力応答性母粒子を含み、外添剤を含む粒子であってもよい。
【0087】
[外添剤]
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0088】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0089】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0090】
外添剤の外添量は、圧力応答性母粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0091】
〔圧力応答性粒子の特性〕
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、少なくとも2つのガラス転移温度を有するところ、ガラス転移温度の1つは樹脂Aのガラス転移温度と推測され、もう1つは樹脂B1及び樹脂B2のガラス転移温度と推測される。
また、本実施形態に係る圧力応答性粒子は、少なくとも3つのガラス転移温度を有していてもよく、ガラス転移温度の1つは樹脂Aのガラス転移温度と推測され、もう1つはガラス転移温度の1つは樹脂B1のガラス転移温度と推測され、更にもう1つは樹脂B2のガラス転移温度と推測される。
【0092】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上であることが好ましい。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、その上限が、例えば、140℃以下であり、130℃以下であり、120℃以下である。
【0093】
本実施形態に係る圧力応答性粒子が示す最も低いガラス転移温度は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0094】
本実施形態に係る圧力応答性粒子が示す最も高いガラス転移温度は、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。
【0095】
本実施形態において、圧力応答性粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0096】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力によって相転移する圧力応答性粒子であり、下記の式1を満たすことが好ましい。
式1・・・10℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下に粘度10,000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下に粘度10,000Pa・sを示す温度である。
【0097】
温度差(T1-T2)は、圧力によって圧力応答性粒子が相転移しやすい観点から、10℃以上であり、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、加圧されていない状態で圧力応答性粒子が流動化することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
【0098】
温度T1の値は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、115℃以下が更に好ましい。温度T1の下限は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。
温度T2の値は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。温度T2の上限は、85℃以下が好ましい。
【0099】
圧力応答性粒子が圧力によって相転移しやすいことを示す指標として、圧力1MPa下に粘度10,000Pa・sを示す温度T1と、圧力4MPa下に粘度10,000Pa・sを示す温度T3との温度差(T1-T3)が挙げられ、温度差(T1-T3)は5℃以上であることが好ましい。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力によって相転移しやすい観点から、温度差(T1-T3)が5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
温度差(T1-T3)は、一般的に25℃以下である。
【0100】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、温度差(T1-T3)が5℃以上となる観点から、圧力4MPa下に粘度10,000Pa・sを示す温度T3が90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。温度T3の下限は、60℃以上が好ましい。
【0101】
温度T1、温度T2及び温度T3を求める方法は、次のとおりである。
圧力応答性粒子を圧縮してペレット状の試料を作製する。ペレット状の試料をフローテスター((株)島津製作所製、CFT-500)にセットして、印加圧力を1MPaに固定して、1MPaにおける温度に対する粘度を測定する。得られた粘度のグラフから、印加圧力1MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度T1を決定する。印加圧力1MPaを10MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T2を決定する。印加圧力1MPaを4MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T3を決定する。温度T1と温度T2から温度差(T1-T2)を算出する。温度T1と温度T3から温度差(T1-T3)を算出する。
【0102】
〔圧力応答性粒子の製造方法〕
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、圧力応答性母粒子を製造後、圧力応答性母粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0103】
圧力応答性母粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により圧力応答性母粒子を得ることがよい。
【0104】
圧力応答性母粒子を凝集合一法により製造する場合、例えば、
スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂粒子が分散したスチレン系樹脂粒子分散液を準備する工程(スチレン系樹脂粒子分散液準備工程)と、
スチレン系樹脂粒子分散液中で(メタ)アクリル系樹脂を重合し、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する工程(複合樹脂粒子形成工程)と、
複合樹脂粒子が分散した複合樹脂粒子分散液中で複合樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、
凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、圧力応答性母粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、圧力応答性母粒子を製造する。
【0105】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤及び離型剤を含まない圧力応答性母粒子を得る方法について説明する。着色剤、離型剤、その他添加剤は、必要に応じて用いてもよい。圧力応答性母粒子に着色剤及び離型剤を含有させる場合は、複合樹脂粒子分散液と着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合した後、融合・合一工程を行う。着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液は、例えば、材料を混合した後、公知の分散機を用いて分散処理を行うことで作製できる。
【0106】
-スチレン系樹脂粒子分散液準備工程-
スチレン系樹脂粒子分散液は、例えば、界面活性剤によりスチレン系樹脂粒子を分散媒中に分散させた分散液である。
【0107】
分散媒としては、例えば、水、アルコール類などの水系媒体が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。これらの中でも、アニオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば、スチレン系樹脂と分散媒とを混合し、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等を用いて攪拌して分散させる方法が挙げられる。
【0110】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する別の方法としては、乳化重合法が挙げられる。具体的には、スチレン系樹脂の重合成分と連鎖移動剤又は重合開始剤とを混合した後、界面活性剤を含有する水系媒体を更に混合し、攪拌して乳化液を作製し、乳化液中でスチレン系樹脂を重合する。この際、連鎖移動剤としてドデカンチオールを用いることが好ましい。
【0111】
スチレン系樹脂粒子分散液中に分散するスチレン系樹脂粒子の体積平均粒径は、100nm以上250nm以下が好ましく、120nm以上220nm以下がより好ましく、150nm以上200nm以下が更に好ましい。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)にて粒径を測定し、小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0112】
スチレン系樹脂粒子分散液に含まれるスチレン系樹脂粒子の含有量は、30質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0113】
-複合樹脂粒子形成工程-
スチレン系樹脂粒子分散液と(メタ)アクリル系樹脂の重合成分とを混合し、スチレン系樹脂粒子分散液中で(メタ)アクリル系樹脂を重合し、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する。
【0114】
複合樹脂粒子は、スチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とがミクロ相分離の状態で含まれる樹脂粒子であることが好ましい。当該樹脂粒子は、例えば、下記の方法で製造することができる。
【0115】
スチレン系樹脂粒子分散液に、(メタ)アクリル系樹脂の重合成分(少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー群)を添加し、必要に応じて水系媒体を添加する。次いで、分散液をゆっくりと攪拌しながら、分散液の温度をスチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えばスチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱する。次いで、温度を保ちながら、重合開始剤を含有する水系媒体をゆっくりと滴下し、更に1時間以上15時間以下の範囲で長時間攪拌を継続する。この際、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0116】
詳細な機序は必ずしも明らかではないが、上記の方法を採用した場合、スチレン系樹脂粒子中にモノマーと重合開始剤とが含浸し、スチレン系樹脂粒子の内部で(メタ)アクリル酸エステルが重合すると推測される。これによって、スチレン系樹脂粒子の内部に(メタ)アクリル系樹脂が含まれており、粒子内部においてスチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とがミクロ相分離の状態を形成している複合樹脂粒子が得られると推測される。
【0117】
上記の複合樹脂粒子の製造中又は製造後に、複合樹脂粒子が分散している分散液にスチレン系樹脂の重合成分(すなわち、スチレン系モノマー及びその他のビニルモノマー)を添加し、重合反応を継続してもよい。これにより、粒子内部にスチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とがミクロ相分離の状態を形成し、且つ、粒子表面にスチレン系樹脂が付着した複合樹脂粒子が得られると推測される。粒子表面にスチレン系樹脂が付着した複合樹脂粒子を用いて製造した圧力応答性粒子は、粗粉の発生が比較的少ない。
複合樹脂粒子の表面に付着させるスチレン系樹脂の重合成分であるその他のビニルモノマーは、複合樹脂粒子の内部に有るスチレン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂を構成しているモノマーの少なくとも1種と同種のモノマーを含むことが好ましく、具体的には、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0118】
複合樹脂粒子分散液中に分散する複合樹脂粒子の体積平均粒径は、140nm以上300nm以下が好ましく、150nm以上280nm以下がより好ましく、160nm以上250nm以下が更に好ましい。
【0119】
複合樹脂粒子分散液に含まれる複合樹脂粒子の含有量は、20質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0120】
-凝集粒子形成工程-
複合樹脂粒子分散液中で複合樹脂粒子を凝集させ、目的とする圧力応答性母粒子の径に近い径を持つ凝集粒子を形成する。
例えば、凝集粒子形成工程において、2種以上の複合樹脂粒子分散液を用いて凝集させることで、圧力応答性母粒子中に、組成の異なる成分を導入することができる。
【0121】
具体的には、例えば、複合樹脂粒子分散液に凝集剤を添加すると共に、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、スチレン系樹脂のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、スチレン系樹脂のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、複合樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
【0122】
凝集粒子形成工程においては、複合樹脂粒子分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0123】
凝集剤としては、例えば、複合樹脂粒子分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0124】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0125】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、スチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えばスチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、圧力応答性母粒子を形成する。
【0126】
以上の工程を経て得られた圧力応答性母粒子は、通常、スチレン系樹脂を含む海部と、当該海部に分散した(メタ)アクリル系樹脂を含む島部とを有する海島構造を有する。複合樹脂粒子においてはスチレン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂とがミクロ相分離の状態であったところ、融合・合一工程において、スチレン系樹脂が互いに集まって海部になり、(メタ)アクリル系樹脂が互いに集まって島部になるものと推測される。
【0127】
海島構造の島部の平均径は、例えば、複合樹脂粒子形成工程において使用するスチレン系樹脂粒子分散液の量又は少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルの量を増減すること、融合・合一工程において高温に維持する時間を増減すること、等によって制御できる。
【0128】
コア・シェル構造の圧力応答性母粒子は、例えば、
凝集粒子分散液を得た後、凝集粒子分散液とスチレン系樹脂粒子分散液とを更に混合し、凝集粒子の表面に更にスチレン系樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造の圧力応答性母粒子を形成する工程と、
を経て製造する。
上記工程を経て得られるコア・シェル構造の圧力応答性母粒子は、スチレン系樹脂を含むシェル層を有する。スチレン系樹脂粒子分散液の代わりに他の種類の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を用いて、他の種類の樹脂を含むシェル層を形成してもよい。
【0129】
融合・合一工程終了後、溶液中に形成された圧力応答性母粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態の圧力応答性母粒子を得る。洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0130】
そして、本実施形態に係る圧力応答性粒子は、例えば、得られた乾燥状態の圧力応答性母粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使って圧力応答性粒子の粗大粒子を取り除いてもよい。
【0131】
<接着材料>
本実施形態に係る接着材料は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む。
また、本実施形態に係る接着材料は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含んでいてもよい。
【0132】
本実施形態に係る接着材料が液体組成物である場合、本実施形態に係る接着材料は、分散媒を含むことが好ましい。
分散媒としては、例えば、水;プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール等のアルコール類;などの水系媒体が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
本実施形態に係る接着材料が液体組成物である場合、圧力応答性樹脂粒子の含有量は、特に制限はないが、接着材料全体に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0134】
また、本実施形態に係る接着材料は、界面活性剤、分散安定剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0135】
<カートリッジ>
本実施形態に係るカートリッジは、本実施形態に係る圧力応答性粒子又は本実施形態に係る接着材料を収容し、印刷物の製造装置に着脱されるカートリッジである。カートリッジが印刷物の製造装置に装着されたとき、カートリッジと、印刷物の製造装置が有する、圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段とが供給管で接続される。
カートリッジから配置手段に圧力応答性粒子が供給され、カートリッジ内に収容されている圧力応答性粒子が少なくなったら、そのカートリッジが交換される。
【0136】
<印刷物の製造装置、印刷物の製造方法、印刷物>
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、本実施形態に係る圧力応答性粒子又は本実施形態に係る接着材料を収容し、前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む。
本実施形態に係る印刷物は、本実施形態に係る圧力応答性粒子又は本実施形態に係る接着材料により接着されてなる印刷物であればよい。
本実施形態に係る印刷物としては、例えば、折り重なった記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係る接着材料が含有する前記圧力応答性粒子によって接着されてなる、印刷物、又は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係る接着材料が含有する前記圧力応答性粒子によって接着されてなる、印刷物が好適に挙げられる。
【0137】
配置手段は、例えば、圧力応答性粒子を記録媒体上に付与する付与装置を備え、更に、記録媒体上に付与された圧力応答性粒子を記録媒体上に固定する固定装置を備えてもよい。
【0138】
圧着手段は、例えば、圧力応答性粒子が配置された記録媒体を折り重ねる折り装置、又は、圧力応答性粒子が配置された記録媒体と別の記録媒体とを重ねる重ね装置と、重なった記録媒体を加圧する加圧装置と、を備える。
【0139】
圧着手段が備える加圧装置は、圧力応答性粒子が配置された記録媒体に圧力を印加する。これによって、記録媒体上において圧力応答性粒子が流動化し接着性を発揮する。
【0140】
本実施形態に係る印刷物の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法が実施される。本実施形態に係る印刷物の製造方法は、本実施形態に係る圧力応答性粒子又は本実施形態に係る接着材料を用いるとともに、前記圧力応答性粒子を記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む。
【0141】
配置工程は、例えば、圧力応答性粒子を記録媒体上に付与する工程を含み、更に、記録媒体上に付与された圧力応答性粒子を記録媒体上に固定する工程を含んでもよい。
【0142】
圧着工程は、例えば、記録媒体を折り重ねる折り工程又は記録媒体と別の記録媒体とを重ねる重ね工程と、重なった記録媒体を加圧する加圧工程と、を備える。
【0143】
圧力応答性粒子は、記録媒体の全面に配置されてもよく、記録媒体の一部に配置されてもよい。圧力応答性粒子は、記録媒体上に1層又は複数層配置される。圧力応答性粒子の層は、記録媒体の面方向に連続した層であってもよいし、記録媒体の面方向に不連続な層であってもよい。圧力応答性粒子の層は、圧力応答性粒子が粒子のまま並んだ層であってもよく、隣接する圧力応答性粒子どうしが融合して並んだ層であってもよい。
【0144】
記録媒体上の圧力応答性粒子(好ましくは透明な圧力応答性粒子)の量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m以上50g/m以下であり、1g/m以上40g/m以下であり、1.5g/m以上30g/m以下である。記録媒体上の圧力応答性粒子(好ましくは透明な圧力応答性粒子)の層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0145】
本実施形態に係る印刷物の製造装置に適用する記録媒体としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。記録媒体は、片面又は両面に画像を有していてもよい。
【0146】
以下、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0147】
図1は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す印刷物の製造装置は、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200とを備える。矢印は、記録媒体の搬送方向を示す。
【0148】
配置手段100は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を用いて、圧力応答性粒子を記録媒体P上に配置する装置である。記録媒体Pには、片面又は両面に予め画像が形成されている。
【0149】
配置手段100は、付与装置110と、付与装置110の下流に配置された固定装置120とを備えている。
【0150】
付与装置110は、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に付与する。付与装置110が採用する付与方法としては、例えば、スプレー法、バーコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ラミネート法、電子写真法などが挙げられる。付与方法に応じて、圧力応答性粒子Mを分散媒に分散させ液体組成物を調製し、液体組成物を付与装置110に適用してもよい。
【0151】
付与装置110によって圧力応答性粒子Mが付与された記録媒体Pは固定装置120へ搬送される。
【0152】
固定装置120は、例えば、加熱源を備え、通過する記録媒体P上の圧力応答性粒子Mを加熱し、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に固定させる加熱装置;一対の加圧部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)を備え、通過する記録媒体Pを加圧し、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に固定させる加圧装置;内部に加熱源を備える一対の加圧部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)を備え、通過する記録媒体Pを加圧及び加熱し、圧力応答性粒子Mを記録媒体P上に固定させる加圧加熱装置;などである。
【0153】
固定装置120が加熱源を有する場合、固定装置120によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、10℃以上80℃以下が好ましく、20℃以上60℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下が更に好ましい。
【0154】
固定装置120が加圧部材を有する場合、加圧部材が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよい。
【0155】
記録媒体Pは、配置手段100を通過することによって、画像上に圧力応答性粒子Mが付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0156】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0157】
圧着手段200は、折り装置220と加圧装置230とを備え、記録媒体P1を折り重ねて圧着する手段である。
【0158】
折り装置220は、当該装置を通過する記録媒体P1を折り重ね、折り重なった記録媒体P2を作製する。記録媒体P2の折り重なり方は、例えば、二つ折り、三つ折り、四つ折りであり、記録媒体P2の一部のみが折り重なっている形態でもよい。記録媒体P2は、対向する2つの面の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、圧力応答性粒子Mが配置された状態である。
【0159】
折り装置220は、記録媒体P2に圧力を印加する一対の加圧部材(例えば、ロール/ロール、ベルト/ロール)を有していてもよい。折り装置220の加圧部材が記録媒体P2に印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよい。
【0160】
圧着手段200は、折り装置220の代わりに、記録媒体P1と別の記録媒体とを重ねる重ね装置を備えていてもよい。記録媒体P1と別の記録媒体との重なりの形態は、例えば、記録媒体P1上に別の記録媒体が1枚重なっている形態、記録媒体P1上の複数個所に別の記録媒体が1枚ずつそれぞれ重なっている形態などである。別の記録媒体は、片面又は両面に予め画像が形成されている記録媒体でもよく、画像が形成されていない記録媒体でもよく、予め作製しておいた圧着印刷物でもよい。
【0161】
折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0162】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する記録媒体P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
【0163】
加圧装置230を通過する記録媒体P2に圧力が印加されると、記録媒体P2上において圧力応答性粒子Mが圧力によって流動化し接着性を発揮する。
【0164】
加圧装置230は内部に、記録媒体P2を加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。なお、加圧装置230が内部に加熱源を有しないことは、加圧装置230が備えるモーター等の発熱により、加圧装置230内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0165】
記録媒体P2が加圧装置230を通過することによって、折り重なった面どうしが流動化した圧力応答性粒子Mによって接着され、圧着印刷物P3が作製される。圧着印刷物P3は、対向する2つの面どうしが、一部又は全部、接着されている。
【0166】
完成した圧着印刷物P3は、加圧装置230から搬出される。
【0167】
圧着印刷物P3の第一の形態は、折り重なった記録媒体が、対向する面において、圧力応答性粒子Mによって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、折り装置220を備える印刷物の製造装置によって製造される。
【0168】
圧着印刷物P3の第二の形態は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、圧力応答性粒子Mによって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、重ね装置を備える圧着印刷物の製造装置によって製造される。
【0169】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体P2を折り装置220(又は重ね装置)から加圧装置230へ連続して搬送する形態の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2を貯留し、記録媒体P2の貯留量が予め定められた量に達した後、記録媒体P2を加圧装置230に搬送する形態の装置でもよい。
【0170】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とが離隔している場合、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、例えば、記録媒体P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0171】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段100と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって圧力応答性粒子Mが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって圧力応答性粒子Mが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって圧力応答性粒子Mによって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0172】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0173】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段を更に含んでもよい。有色画像形成手段は、例えば、色材として有色のインクを用いてインクジェット方式により記録媒体上に有色インク画像を形成する手段、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する手段等が挙げられる。
【0174】
上記構成の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法であって、色材を用いて記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程を更に含む製造方法が実施される。有色画像形成工程は、具体的には、例えば、色材として有色のインクを用いてインクジェット方式により記録媒体上に有色インク画像を形成する工程、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する工程等が挙げられる。
【0175】
<印刷物製造用シート、印刷物製造用シートの製造方法>
本実施形態に係る印刷物製造用シートは、基材と、前記基材上に配置された本実施形態に係る圧力応答性粒子と、を有し、基材と、前記基材上に配置された、本実施形態に係る接着材料と、を有することが好ましい。
本実施形態に係る印刷物製造用シートは、本実施形態に係る圧力応答性粒子を用いて製造される。基材上の圧力応答性粒子は、基材上に配置される前の粒子形状を保っていてもよく、保っていなくてもよい。
【0176】
本実施形態に係る印刷物製造用シートは、例えば、記録媒体に記録された情報を秘匿したい場合に記録媒体に重ねて接着されるマスキングシート;記録媒体どうしを重ねて接着する際に、記録媒体上に接着剤層を設けるために使用される剥離シート;などに適用される。
【0177】
本実施形態に係る印刷物製造用シートに適用する基材としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。基材には、片面又は両面に画像が形成されていてもよい。
【0178】
本実施形態に係る印刷物製造用シートにおいて、圧力応答性粒子は、基材の全面に配置されていてもよく、基材の一部に配置されていてもよい。圧力応答性粒子は、基材上に1層又は複数層配置されている。圧力応答性粒子の層は、基材の面方向に連続した層であってもよいし、基材の面方向に不連続な層であってもよい。圧力応答性粒子の層は、圧力応答性粒子が粒子のまま並んだ層であってもよく、隣接する圧力応答性粒子どうしが融合して並んだ層であってもよい。
【0179】
基材上の圧力応答性粒子の量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m以上50g/m以下であり、1g/m以上40g/m以下であり、1.5g/m以上30g/m以下である。基材上の圧力応答性粒子の層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0180】
本実施形態に係る印刷物製造用シートは、例えば、本実施形態に係る圧力応答性粒子を用いるとともに、前記圧力応答性粒子を基材上に配置する配置工程を含む製造方法によって製造される。
【0181】
配置工程は、例えば、圧力応答性粒子を基材上に付与する付与工程を含み、更に、基材上に付与された圧力応答性粒子を基材上に固定する固定工程を含んでもよい。
【0182】
付与工程は、例えば、スプレー法、バーコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ラミネート法、電子写真法などの付与方法により実現される。付与工程の付与方法に応じて、圧力応答性粒子を分散媒に分散させ液体組成物を調製し、液体組成物を付与工程に適用してもよい。
【0183】
固定工程は、例えば、基材上の圧力応答性粒子を加熱源で加熱し、圧力応答性粒子を基材上に固定する加熱工程;圧力応答性粒子が付与された基材を一対の加圧部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)にて加圧し、圧力応答性粒子を基材上に固定する加圧工程;圧力応答性粒子が付与された基材を、内部に加熱源を備える一対の加圧部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)にて加圧及び加熱し、圧力応答性粒子を基材上に固定する加圧加熱工程;などである。
【0184】
<電子写真方式による印刷物の製造>
本実施形態に係る圧力応答性粒子を電子写真方式に適用する実施形態例を説明する。電子写真方式においては、圧力応答性粒子はトナーとして使用される。
【0185】
〔静電荷像現像剤〕
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を少なくとも含むものである。本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係る圧力応答性粒子のみを含む一成分現像剤であってもよいし、本実施形態に係る圧力応答性粒子とキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0186】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0187】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0188】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0189】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0190】
二成分現像剤における圧力応答性粒子とキャリアとの混合比(質量比)は、圧力応答性粒子:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0191】
〔印刷物の製造装置、印刷物の製造方法〕
電子写真方式を適用した印刷物の製造装置は、本実施形態に係る圧力応答性粒子又は本実施形態に係る接着材料を含む現像剤を収容し、前記圧力応答性粒子を電子写真方式により記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む。
【0192】
本実施形態に係る印刷物の製造装置によって、電子写真方式による印刷物の製造方法が実施される。本実施形態に係る印刷物の製造方法は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を用いて、前記圧力応答性粒子を電子写真方式により記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む。
【0193】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む前記配置手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を圧力応答性粒子付与部として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える。
前記配置手段は、記録媒体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を固定する固定手段を更に備えることが好ましい。
【0194】
本実施形態に係る印刷物の製造方法が含む前記配置工程は、例えば、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
本実施形態に係る静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を圧力応答性粒子付与部として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
を含む。
前記配置工程は、記録媒体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を固定する固定工程を更に含むことが好ましい。
【0195】
前記配置手段は、例えば、感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;圧力応答性粒子付与部の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;圧力応答性粒子付与部の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。前記配置手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に圧力応答性粒子付与部が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された圧力応答性粒子付与部を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された圧力応答性粒子付与部を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0196】
前記配置手段は、現像手段を含む部分が、前記配置手段に着脱するカートリッジ構造(いわゆるプロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0197】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む圧着手段は、本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置された記録媒体に圧力を印加する。これによって、記録媒体上において本実施形態に係る圧力応答性粒子が流動化し接着性を発揮する。本実施形態に係る圧力応答性粒子を流動化させる目的で圧着手段が記録媒体に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0198】
本実施形態に係る圧力応答性粒子は、記録媒体の全面に配置されてもよく、記録媒体の一部に配置されてもよい。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、記録媒体上に1層又は複数層配置される。本実施形態に係る圧力応答性粒子の層は、記録媒体の面方向に連続した層であってもよいし、記録媒体の面方向に不連続な層であってもよい。本実施形態に係る圧力応答性粒子の層は、圧力応答性粒子が粒子のまま並んだ層であってもよく、隣接する圧力応答性粒子どうしが融合して並んだ層であってもよい。
【0199】
記録媒体上の本実施形態に係る圧力応答性粒子(好ましくは透明な圧力応答性粒子)の量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m以上50g/m以下であり、1g/m以上40g/m以下であり、1.5g/m以上30g/m以下である。記録媒体上の本実施形態に係る圧力応答性粒子(好ましくは透明な圧力応答性粒子)の層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0200】
本実施形態に係る印刷物の製造装置に適用する記録媒体としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。記録媒体は、片面又は両面に画像を有していてもよい。
【0201】
以下、電子写真方式を適用した本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0202】
図2は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。図2に示す印刷物の製造装置は、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200とを備える。矢印は、感光体の回転方向又は記録媒体の搬送方向を示す。
【0203】
配置手段100は、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を用いて、本実施形態に係る圧力応答性粒子を電子写真方式により記録媒体P上に配置する直接転写方式の装置である。記録媒体Pには、片面又は両面に予め画像が形成されている。
【0204】
配置手段100は、感光体101を有している。感光体101の周囲には、感光体101の表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)102、帯電した感光体101の表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)103、静電荷像に圧力応答性粒子を供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)104、現像した圧力応答性粒子付与部を記録媒体P上に転写する転写ロール(転写手段の一例)105、及び転写後に感光体101の表面に残存する圧力応答性粒子を除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)106が順に配置されている。
【0205】
配置手段100が本実施形態に係る圧力応答性粒子を記録媒体P上に配置する動作について説明する。
まず、帯電ロール102によって感光体101の表面が帯電される。帯電した感光体101の表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置103がレーザ光線を照射する。それにより、本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置パターンの静電荷像が感光体101の表面に形成される。
【0206】
感光体101上に形成された静電荷像は、感光体101の走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体101上の静電荷像が、現像装置104によって現像され圧力応答性粒子付与部になる。
【0207】
現像装置104内には、少なくとも本実施形態に係る圧力応答性粒子とキャリアとを含む現像剤が収容されている。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、現像装置104の内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体101の表面が現像装置104を通過していくことにより、感光体101表面の静電荷像に圧力応答性粒子が静電的に付着し、静電荷像が圧力応答性粒子によって現像される。圧力応答性粒子付与部が形成された感光体101は、引き続き走行し、感光体101上の圧力応答性粒子付与部が転写位置へ搬送される。
【0208】
感光体101上の圧力応答性粒子付与部が転写位置へ搬送されると、転写ロール105に転写バイアスが印加され、感光体101から転写ロール105に向う静電気力が圧力応答性粒子付与部に作用し、感光体101上の圧力応答性粒子付与部が記録媒体P上に転写される。
【0209】
感光体101上に残留した圧力応答性粒子は感光体クリーニング装置106で除去されて回収される。感光体クリーニング装置106は、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等である。感光体クリーニング装置106は、感光体の表面に残留した本実施形態に係る圧力応答性粒子が圧力により流動化して感光体の表面に膜状に付着する現象を抑制する観点から、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0210】
圧力応答性粒子付与部が転写された記録媒体Pは固定装置(固定手段の一例)107へと搬送される。固定装置107は、例えば、一対の固定部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)である。配置手段100は、固定装置107を備えていなくてもよいが、記録媒体Pから本実施形態に係る圧力応答性粒子が脱落することを抑制する観点から、固定装置107を備えていることが好ましい。固定装置107が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.2MPa以上1MPa以下が好ましい。
【0211】
固定装置107は内部に、記録媒体Pを加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。固定装置107が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、150℃以上220℃以下が好ましく、155℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、固定装置107が内部に加熱源を有しないことは、配置手段100が備えるモーター等の発熱により、固定装置107内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0212】
記録媒体Pは、配置手段100を通過することによって、画像上に本実施形態に係る圧力応答性粒子が付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0213】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0214】
圧着手段200は、折り装置220と加圧装置230とを備え、記録媒体P1を折り重ねて圧着する手段である。
【0215】
折り装置220は、当該装置を通過する記録媒体P1を折り重ね、折り重なった記録媒体P2を作製する。記録媒体P2の折り重なり方は、例えば、二つ折り、三つ折り、四つ折りであり、記録媒体P2の一部のみが折り重なっている形態でもよい。記録媒体P2は、対向する2つの面の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置された状態である。
【0216】
折り装置220は、記録媒体P2に圧力を印加する一対の加圧部材(例えば、ロール/ロール、ベルト/ロール)を有していてもよい。折り装置220の加圧部材が記録媒体P2に印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、1MPa以上10MPa以下が好ましい。
【0217】
圧着手段200は、折り装置220の代わりに、記録媒体P1と別の記録媒体とを重ねる重ね装置を備えていてもよい。記録媒体P1と別の記録媒体との重なりの形態は、例えば、記録媒体P1上に別の記録媒体が1枚重なっている形態、記録媒体P1上の複数個所に別の記録媒体が1枚ずつそれぞれ重なっている形態などである。別の記録媒体は、片面又は両面に予め画像が形成されている記録媒体でもよく、画像が形成されていない記録媒体でもよく、予め作製しておいた圧着印刷物でもよい。
【0218】
折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0219】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する記録媒体P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
【0220】
加圧装置230を通過する記録媒体P2に圧力が印加されると、記録媒体P2上において本実施形態に係る圧力応答性粒子が圧力によって流動化し接着性を発揮する。加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力は、3MPa以上300MPa以下が好ましく、10MPa以上200MPa以下がより好ましく、30MPa以上150MPa以下が更に好ましい。
【0221】
加圧装置230は内部に、記録媒体P2を加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していても、有していなくてもよい。加圧装置230が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体P2の表面温度は、30℃以上120℃以下が好ましく、40℃以上100℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が更に好ましい。なお、加圧装置230が内部に加熱源を有しないことは、加圧装置230が備えるモーター等の発熱により、加圧装置230内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0222】
記録媒体P2が加圧装置230を通過することによって、折り重なった面どうしが流動化した本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着され、圧着印刷物P3が作製される。圧着印刷物P3は、対向する面どうしが、一部又は全部、接着されている。
【0223】
完成した圧着印刷物P3は、加圧装置230から搬出される。
【0224】
圧着印刷物P3の第一の形態は、折り重なった記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、折り装置220を備える印刷物の製造装置によって製造される。
【0225】
圧着印刷物P3の第二の形態は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されてなる、圧着印刷物である。本形態の圧着印刷物P3は、重ね装置を備える圧着印刷物の製造装置によって製造される。
【0226】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体P2を折り装置220(又は重ね装置)から加圧装置230へ連続して搬送する形態の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2を貯留し、記録媒体P2の貯留量が予め定められた量に達した後、記録媒体P2を加圧装置230に搬送する形態の装置でもよい。
【0227】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とが離隔している場合、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、例えば、記録媒体P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0228】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段100と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0229】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0230】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段を更に含んでもよい。有色画像形成手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
有色の静電荷像現像剤を収容し、有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着手段と、を備える。
【0231】
上記構成の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法であって、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程を更に含む製造方法が実施される。有色画像形成工程は、具体的には、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着工程と、を含む。
【0232】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む有色画像形成手段は、例えば、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;有色のトナー画像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;有色のトナー画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。有色画像形成手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に有色のトナー画像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0233】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤の配置手段と有色画像形成手段とが中間転写方式を採用している場合、配置手段と有色画像形成手段とは、中間転写体及び二次転写手段を共有していてもよい。
【0234】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む像現像剤の配置手段と有色画像形成手段とは、熱定着手段を共有していてもよい。
【0235】
以下、有色画像形成手段を備える本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0236】
図3は、電子写真方式を適用した本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。図3に示す印刷物の製造装置は、記録媒体への本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置と有色画像形成とを一括で行う印刷手段300と、印刷手段300の下流に配置された圧着手段200とを備える。
【0237】
印刷手段300は、5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段である。印刷手段300は、本実施形態に係る圧力応答性粒子(T)を配置するユニット10Tと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色画像を形成するユニット10Y、10M、10C及び10Kとを備えている。ユニット10Tが、本実施形態に係る圧力応答性粒子を含む現像剤を用いて記録媒体P上に本実施形態に係る圧力応答性粒子を配置する配置手段である。ユニット10Y、10M、10C及び10Kがそれぞれ、有色トナーを含む現像剤を用いて記録媒体P上に有色画像を形成する手段である。ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、電子写真方式を採用している。
【0238】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。ユニット10T、10Y、10M、10C、10Kは、印刷手段300に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0239】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kの下方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22、支持ロール23、及び対向ロール24に巻きつけて設けられ、ユニット10Tからユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置21が備えられている。
【0240】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kはそれぞれ、現像装置(現像手段の一例)4T、4Y、4M、4C及び4Kを備える。現像装置4T、4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、圧力応答性粒子カートリッジ8Tに収められた本実施形態に係る圧力応答性粒子、又は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの供給がなされる。
【0241】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、本実施形態に係る圧力応答性粒子を記録媒体上に配置するユニット10Tについて代表して説明する。
【0242】
ユニット10Tは、感光体1Tを有している。感光体1Tの周囲には、感光体1Tの表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2T、帯電した感光体1Tの表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3T、静電荷像に圧力応答性粒子を供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4T、現像した圧力応答性粒子付与部を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5T、及び一次転写後に感光体1Tの表面に残存する圧力応答性粒子を除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Tが順に配置されている。一次転写ロール5Tは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Tに対向した位置に設けられている。
【0243】
以下、ユニット10Tの動作を例示しながら、記録媒体P上に本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置と有色画像形成とを行う動作について説明する。
まず、帯電ロール2Tによって感光体1Tの表面が帯電される。帯電した感光体1Tの表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置3Tがレーザ光線を照射する。それにより、本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置パターンの静電荷像が感光体1Tの表面に形成される。
【0244】
感光体1T上に形成された静電荷像は、感光体1Tの走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体1T上の静電荷像が、現像装置4Tによって現像され圧力応答性粒子付与部になる。
【0245】
現像装置4T内には、少なくとも本実施形態に係る圧力応答性粒子とキャリアとを含む現像剤が収容されている。本実施形態に係る圧力応答性粒子は、現像装置4Tの内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体1Tの表面が現像装置4Tを通過していくことにより、感光体1T表面の静電荷像に圧力応答性粒子が静電的に付着し、静電荷像が圧力応答性粒子によって現像される。圧力応答性粒子付与部が形成された感光体1Tは、引き続き走行し、感光体1T上の圧力応答性粒子付与部が一次転写位置へ搬送される。
【0246】
感光体1T上の圧力応答性粒子付与部が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Tに一次転写バイアスが印加され、感光体1Tから一次転写ロール5Tに向う静電気力が圧力応答性粒子付与部に作用し、感光体1T上の圧力応答性粒子付与部が中間転写ベルト20上に転写される。感光体1T上に残留した圧力応答性粒子は感光体クリーニング装置6Tで除去されて回収される。感光体クリーニング装置6Tは、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等であり、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0247】
ユニット10Y、10M、10C及び10Kにおいても、ユニット10Tと同様の動作が、有色トナーを含む現像剤を用いて行われる。ユニット10Tにて圧力応答性粒子付与部が転写された中間転写ベルト20が、ユニット10Y、10M、10C、10Kを順次通過し、中間転写ベルト20上に各色のトナー画像が多重転写される。
【0248】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kを通して圧力応答性粒子付与部及びトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する対向ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に給紙され、二次転写バイアスが対向ロール24に印加される。このとき、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力が圧力応答性粒子付与部及びトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上の圧力応答性粒子付与部及びトナー画像が記録媒体P上に転写される。
【0249】
圧力応答性粒子付与部及びトナー画像が転写された記録媒体Pは熱定着装置(熱定着手段の一例)28へと搬送される。熱定着装置28は、ハロゲンヒータ等の加熱源を備え、記録媒体Pを加熱する。熱定着装置28によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、150℃以上220℃以下が好ましく、155℃以上210℃以下がより好ましく、160℃以上200℃以下が更に好ましい。熱定着装置28を通過することにより、有色のトナー画像が記録媒体P上へ熱定着される。
【0250】
熱定着装置28は、記録媒体Pから本実施形態に係る圧力応答性粒子が脱落することを抑制する観点、及び、有色画像の記録媒体Pへの定着性を向上させる観点から、加熱と共に加圧を行う装置であることが好ましく、例えば、内部に加熱源を備える一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)であってもよい。熱定着装置28が加圧を行う場合、熱定着装置28が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.2MPa以上1MPa以下が好ましい。
【0251】
記録媒体Pは、印刷手段300を通過することによって、有色画像及び本実施形態に係る圧力応答性粒子が付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0252】
図3における圧着手段200の構成は、図2における圧着手段200と同じでよく、圧着手段200については構成及び動作の詳細な説明を省略する。
【0253】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、印刷手段300と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。印刷手段300と圧着手段200とが離隔している場合、印刷手段300と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0254】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、印刷手段300と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子が配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって本実施形態に係る圧力応答性粒子によって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0255】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して有色画像形成工程、配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0256】
[プロセスカートリッジ]
電子写真方式による印刷物の製造装置に適用するプロセスカートリッジを説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された静電荷像を圧力応答性粒子付与部として現像する現像手段を備え、印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0257】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、現像手段と、必要に応じて、感光体、帯電手段、静電荷像形成手段、転写手段などから選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0258】
プロセスカートリッジの実施形態例として、感光体と、感光体の周囲に備えられた帯電ロール(帯電手段の一例)、現像装置(現像手段の一例)及び感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)とが筐体により一体化されたカートリッジが挙げられる。筐体は、露光のための開口部を有する。筐体は、取り付けレールを有し、取り付けレールを介してプロセスカートリッジが印刷物の製造装置に装着される。
【0259】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例
【0260】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、量を示す「部」及び「%」とは、特に断りがない限り、質量基準である。
【0261】
(実施例1乃至8、及び、比較例1乃至3)
<スチレン系樹脂粒子を含む分散液の調製>
[スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製]
・スチレン :390部
・アクリル酸n-ブチル:100部
・アクリル酸 : 10部
・ドデカンチオール :7.5部
上記の材料を混合し溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)8部をイオン交換水205部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化し、乳化液を得た。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)2.2部をイオン交換水462部に溶解し、撹拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた重合用フラスコに仕込み、撹拌しながら73℃まで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム3部をイオン交換水21部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して15分間かけて滴下した後、前記乳化液を、定量ポンプを介して160分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、スチレン系樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が174nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が49,000、ガラス転移温度が54℃、固形分量が42%のスチレン系樹脂粒子分散液(St1)を得た。
【0262】
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を乾燥してスチレン系樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計((株)島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-100℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が1つ観察された。表1にガラス転移温度を示す。
【0263】
[スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St14)の調製]
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製と同様にして、但しモノマーを表1に記載の通りに変更して、スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St14)を調製した。
【0264】
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)等の組成及び物性を表1に示す。表1においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA
【0265】
【表1】
【0266】
<複合樹脂粒子を含む分散液の調製>
[複合樹脂粒子分散液(M1)の調製]
・スチレン系樹脂粒子分散液(St1):1190部(固形分500部)
・アクリル酸2-エチルヘキシル : 250部
・アクリル酸n-ブチル : 250部
・イオン交換水 : 982部
上記の材料を重合用フラスコに仕込み、25℃で1時間撹拌した後、70℃に加熱した。
過硫酸アンモニウム2.5部をイオン交換水75部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して60分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと撹拌を続けながら重合用フラスコを70℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、複合樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が219nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が219,000、固形分量が32%の複合樹脂粒子分散液(M1)を得た。
【0267】
複合樹脂粒子分散液(M1)を乾燥して複合樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計((株)島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表2にガラス転移温度を示す。
【0268】
[複合樹脂粒子分散液(M2)~(M13)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但しスチレン系樹脂粒子分散液(St1)を表3に記載の通りに変更して、又は、(メタ)アクリル系樹脂の重合成分を表2に記載の通りに変更して、複合樹脂粒子分散液(M2)~(M13)を調製した。
【0269】
複合樹脂粒子分散液(M1)等中に含まれるポリエステル樹脂等の組成及び物性を表2に示す。表2においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA、アクリル酸ヘキシル:HA、アクリル酸プロピル:PA
【0270】
【表2】
【0271】
<圧力応答性粒子の調製>
[圧力応答性粒子(1)の調製]
・複合樹脂粒子分散液(M1(Ac1の成分)) :252部
・複合樹脂粒子分散液(M7(Ac7の成分)) :252部
・イオン交換水 :710部
・アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1): 1部
【0272】
温度計及びpH計を備えた反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて回転数5,000rpmで分散しながら、2.0%硫酸アルミニウム水溶液を23部添加した。次いで、反応容器に撹拌機及びマントルヒーターを設置し、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)170部を5分間かけて投入した。投入終了後、50℃に30分間保持した後、1.0%水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーのpHを6.0に調整した。次いで、5℃ごとにpHを6.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。光学顕微鏡と電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、10時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水で容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0273】
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粒子を除去し、メッシュを通過したスラリーをアスピレータで減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間撹拌した。次いで、アスピレータで減圧濾過し、濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間撹拌した後、再度アスピレータで減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
【0274】
洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕き、25℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、圧力応答性母粒子(1)を得た。圧力応答性母粒子(1)は、体積平均粒径が8.0μmであった。
【0275】
圧力応答性母粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、RY50)1.5部とを混合し、サンプルミルを用いて回転速度13,000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、圧力応答性粒子(1)を得た。
【0276】
圧力応答性粒子(1)を試料にして、示差走査熱量計((株)島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表3にガラス転移温度を示す。
【0277】
圧力応答性粒子(1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。圧力応答性粒子(1)は、島部が存在するコア部と、島部が存在しないシェル層とを有していた。海部はスチレン系樹脂を含み、島部は(メタ)アクリル系樹脂を含んでいた。既述の測定方法にて島部の平均径を求めた。表3に島部の平均径を示す。
【0278】
[圧力応答性粒子(2)~(8)の調製]
圧力応答性粒子(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表3に記載の通りに変更して、圧力応答性粒子(2)~(8)を調製した。
【0279】
[比較用の圧力応答性粒子(c1)~(c3)の調製]
圧力応答性粒子(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表3に記載の通りに変更して、圧力応答性粒子(c1)~(c3)を調製した。
【0280】
[剥離力の評価]
記録媒体として富士ゼロックス(株)製のハガキ用紙V424を用意した。富士ゼロックス(株)製の画像形成装置DocuCentre C7550I並びに富士ゼロックス(株)製の市販品のイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを用いて、ハガキ用紙の片面に、黒色文字とフルカラー写真画像とが混在した面積密度30%の画像を形成し、画像を定着させた。
ハガキ用紙の画像形成面の全体に、圧力応答性粒子を付与量3g/mとなるように散布し、ベルトロール型固定機を通過させて、ハガキ用紙の画像形成面に圧力応答性粒子を固定させ、圧力応答性粒子の層を形成した。
画像形成面に圧力応答性粒子の層を有するハガキ用紙を、トッパン・フォームズ(株)製のシーラーPRESSLE multiIIを用いて、画像形成面が内側になるように二つ折りにし、二つ折りにしたハガキ用紙に圧力を印加し、内側の画像形成面どうしを圧力90MPaで接着した。
上記の装置及び条件で、画像形成面が内側になるように二つ折りにされ、且つ画像形成面どうしが接着されたハガキを連続して10通作製した。
10通目のハガキを長辺方向に幅15mmで裁断し長方形の試験片を作製して、90度剥離試験を行った。90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、更に試験片3枚の荷重(N)を平均した。剥離に要する荷重である剥離力(N)を下記のとおり分類した。表3に結果を示す。
A:0.8N以上
B:0.6N以上、0.8N未満
C:0.4N以上、0.6N未満
D:0.2N以上、0.4N未満
E:0.2N未満
【0281】
【表3】
【0282】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、得られる圧着物における剥離力が高いことがわかる。
【0283】
(実施例101乃至110、及び、比較例101乃至104)
<電子写真方式による印刷物の製造>
圧力応答性粒子(1)~(8)及び(c1)~(c3)のいずれか10部と下記の樹脂被覆キャリア(1)100部とをV型ブレンダーに入れ20分間撹拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤(1)~(8)及び(c1)~(c3)をそれぞれ得た。
【0284】
-樹脂被覆キャリア(1)-
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント(株)製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間撹拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、撹拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリア(1)を得た。
【0285】
印刷物の製造装置として、図3に示す形態の装置を用意した。すなわち、記録媒体への本実施形態に係る圧力応答性粒子の配置と有色画像形成とを一括で行う5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段と、折り装置及び加圧装置を有する圧着手段とを備える印刷物の製造装置を用意した。
印刷手段が有する5つの現像器にそれぞれ、本実施形態に係る現像剤(又は比較用の現像剤)、イエローの現像剤、マゼンタの現像剤、シアンの現像剤及びブラックの現像剤を入れた。イエロー等の各色の現像剤は、富士ゼロックス(株)製の市販品を使用した。
記録媒体として富士ゼロックス(株)製のハガキ用紙V424を用意した。
ハガキ用紙に形成する画像は、黒色文字とフルカラー写真画像とが混在した面積密度30%の画像とし、ハガキ用紙の片面に形成した。
本実施形態に係る圧力応答性粒子(又は比較用の圧力応答性粒子)の付与量は、ハガキ用紙の画像形成面の画像形成領域に、表4に記載の付与量(1g/m~3g/m)とした。
折り装置は、画像形成面が内側になるようにハガキ用紙を二つ折りにする装置とした。
加圧装置は、圧力90MPaとした。
上記の装置及び条件で、画像形成面が内側になるように二つ折りにされ、且つ画像形成面どうしが接着されたハガキを連続して10通作製した。
10通目のハガキを長辺方向に幅15mmで裁断し長方形の試験片を作製して、90度剥離試験を行った。90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、更に試験片3枚の荷重(N)を平均した。剥離に要する荷重である剥離力(N)を下記のとおり分類した。表4に結果を示す。
A:0.8N以上
B:0.6N以上、0.8N未満
C:0.4N以上、0.6N未満
D:0.2N以上、0.4N未満
E:0.2N未満
【0286】
【表4】
【0287】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、得られる印刷物における剥離力が高いことがわかる。特に、付与量が低い場合でも良好な剥離力を発現することがわかる。
【符号の説明】
【0288】
100 配置手段
110 付与装置
120 固定装置
200 圧着手段
220 折り装置
230 加圧装置
231、232 加圧ロール
M 圧力応答性粒子
P 記録媒体
P1 画像上に圧力応答性粒子が付与された記録媒体
P2 折り重なった記録媒体
P3 圧着印刷物
【0289】
101 感光体
102 帯電ロール(帯電手段の一例)
103 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
104 現像装置(現像手段の一例)
105 転写ロール(転写手段の一例)
106 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
107 固定装置(固定手段の一例)
【0290】
300 印刷手段
1T、1Y、1M、1C、1K 感光体
2T、2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3T、3Y、3M、3C、3K 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
4T、4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5T、5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6T、6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8T 圧力応答性粒子カートリッジ
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10T、10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
21 中間転写体クリーニング装置
22 駆動ロール
23 支持ロール
24 対向ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 熱定着装置(熱定着手段の一例)
図1
図2
図3