(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】発光装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20250311BHJP
G03G 15/043 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B41J2/447 101D
B41J2/447 101A
G03G15/043
(21)【出願番号】P 2021025525
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠治
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036990(JP,A)
【文献】特開2008-210671(JP,A)
【文献】特開2005-224957(JP,A)
【文献】特開2020-123603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0020741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
G03G 15/043
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた第1の方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第1の発光部と、
前記第1の方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第2の発光部であって、前記第1の方向に交差する第2の方向に対して前記第1の発光部からずれた位置に配置され且つ第1の方向に沿って前記各第1の発光部に対してずれた位置に配置された前記第2の発光部と、
前記各第1の発光部に対して電気的に接続された第1の配線と、
前記各第2の発光部に対して電気的に接続された第2の配線であって、前記第1の方向および第2の方向に交差する第3の方向に対して前記第1の発光部の発光面側に配置された前記第2の配線と、
を備え、
前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差を小さくするように、
前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差に応じて、前記第2の発光部の一部を遮光材で覆うことで、前記第1の発光部と前記第2の発光部の光取り出し効率を調整する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に配置された複数の第1の発光部と、
前記基板上に配置され且つ前記第1の発光部とはずれた位置に配置された複数の第2の発光部と、
前記基板の発光側でかつ前記第1の発光部の光路に影響する位置に配置された配線と、
を備え、
前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差を小さくするように
、前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差に応じて、前記第2の発光部の一部を遮光材で覆うことで、前記第1の発光部と前記第2の発光部の光取り出し効率を調整する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記配線は各第2の発光部に電流を供給する配線である
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
第1の発光部に積層内で電流を供給する第1の配線、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の発光部の発光側に配置された第1電極と、
前記第2の発光部の発光側に配置され、前記第1電極よりも
、前記第1の発光部が間隔をあけて配置される方向である第1の方向に沿った幅が広い第2電極と、
を備えたことを特徴とする
請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2の発光部の光路に影響する位置に配置され、前記
各第2の発光部に対して電気的に接続された第2の配線と同材料の第3の配線、
を備えたことを特徴とする
請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2の発光部の光路に影響する位置に配置され、前記第2の配線と同じ層に積層された
前記第3の配線、
を備えたことを特徴とする
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の発光部の全てが接続される第1の接続線と、
前記第2の発光部の全てが接続される第2の接続線と、
前記第1の接続線に接続され、前記第1の接続線を通じて供給される電流を制限する第1の電流制限抵抗と、
前記第2の接続線に接続され、前記第2の接続線を通じて供給される電流を制限する第2の電流制限抵抗であって、前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差に応じて、前記第1の電流制限抵抗に対する抵抗値が設定された前記第2の電流制限抵抗と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし
7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1の発光部および第2の発光部の平均光量に応じて、前記第1の接続線および第2の接続線に印加される電圧を調整する、
ことを特徴とする
請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
像保持手段と、
前記像保持手段の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された像保持手段に潜像を形成する請求項1ないし
9のいずれかに記載の発光装置で構成された潜像形成装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、潜像を形成するための潜像形成装置や除電装置のような発光装置に関し、下記の特許文献1に記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1には、発光素子ヘッドにおいて、第1の発光素子列と第2の発光素子列とが千鳥状に配置されており、奇数番目の発光サイリスタにはφI端子から発光信号が供給され、偶数番目の発光サイリスタにはφIe端子から発光信号が供給される構成が記載されている。特許文献1の
図6に記載されているように、奇数番目の発光サイリスタに向かう配線は、偶数番目の発光サイリスタどうしの間を通過するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-201395号公報(「0018」-「0021」、
図4-
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、配線によって光量に影響を受ける発光部と影響を受けない発光部とがある場合に、発光部個別に光量を調整する場合に比べて、構成の複雑化を抑えつつ、発光部間での光量の差を抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の発光装置は、
予め定められた第1の方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第1の発光部と、
前記第1の方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第2の発光部であって、前記第1の方向に交差する第2の方向に対して前記第1の発光部からずれた位置に配置され且つ第1の方向に沿って前記各第1の発光部に対してずれた位置に配置された前記第2の発光部と、
前記各第1の発光部に対して電気的に接続された第1の配線と、
前記各第2の発光部に対して電気的に接続された第2の配線であって、前記第1の方向および第2の方向に交差する第3の方向に対して前記第1の発光部の発光面側に配置された前記第2の配線と、
を備え、
前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差を小さくするように、前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差に応じて、前記第2の発光部の一部を遮光材で覆うことで、前記第1の発光部と前記第2の発光部の光取り出し効率を調整する
ことを特徴とする。
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項2に記載の発明の発光装置は、
基板と、
前記基板上に配置された複数の第1の発光部と、
前記基板上に配置され且つ前記第1の発光部とはずれた位置に配置された複数の第2の発光部と、
前記基板の発光側でかつ前記第1の発光部の光路に影響する位置に配置された配線と、
を備え、
前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差を小さくするように、前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差に応じて、前記第2の発光部の一部を遮光材で覆うことで、前記第1の発光部と前記第2の発光部の光取り出し効率を調整する
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発光装置において、
前記配線は各第2の発光部に電流を供給する配線である
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発光装置において、
第1の発光部に積層内で電流を供給する第1の配線、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置において、
前記第1の発光部の発光側に配置された第1電極と、
前記第2の発光部の発光側に配置され、前記第1電極よりも、前記第1の発光部が間隔をあけて配置される方向である第1の方向に沿った幅が広い第2電極と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発光装置において、
前記第2の発光部の光路に影響する位置に配置され、前記各第2の発光部に対して電気的に接続された第2の配線と同材料の第3の配線、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発光装置において、
前記第2の発光部の光路に影響する位置に配置され、前記第2の配線と同じ層に積層された前記第3の配線、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の発光装置において、
前記第1の発光部の全てが接続される第1の接続線と、
前記第2の発光部の全てが接続される第2の接続線と、
前記第1の接続線に接続され、前記第1の接続線を通じて供給される電流を制限する第1の電流制限抵抗と、
前記第2の接続線に接続され、前記第2の接続線を通じて供給される電流を制限する第2の電流制限抵抗であって、前記第1の発光部と前記第2の発光部との光量差に応じて、前記第1の電流制限抵抗に対する抵抗値が設定された前記第2の電流制限抵抗と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発光装置において、
前記第1の発光部および第2の発光部の平均光量に応じて、前記第1の接続線および第2の接続線に印加される電圧を調整する、
ことを特徴とする。
【0016】
前記技術的課題を解決するために、請求項10に記載の発明の画像形成装置は、
像保持手段と、
前記像保持手段の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された像保持手段に潜像を形成する請求項1ないし9のいずれかに記載の発光装置で構成された潜像形成装置と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,2,10に記載の発明によれば、配線によって光量に影響を受ける発光部と影響を受けない発光部とがある場合に、発光部個別に光量を調整する場合に比べて、構成の複雑化を抑えつつ、発光部間での光量の差を抑制することができる。また、請求項1,2,10に記載の発明によれば、第2の発光部の一部を覆う遮光材で、発光部間での光量の差を抑制することができる。
請求項3に記載の発明によれば、第2の発光部に電流を供給する配線で光量に影響を受ける場合でも、光量の差を抑制することができる。
請求項4に記載の発明によれば、第1の配線は積層内で第1の発光部に電流を供給できる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、第2の電極の幅を第1の電極の幅よりも大きくして、発光部間での光量の差を抑制することができる。
請求項6に記載の発明によれば、第2の配線と同材料の第3の配線で遮光して、発光部間での光量の差を抑制することができる。
請求項7に記載の発明によれば、第3の配線を第2の配線と同じ層とした場合、第3の配線を別個に積層する工程を実行する場合に比べて、第3の配線を容易に製造できる。
請求項8に記載の発明によれば、2つの電流制限抵抗の値の設定で、発光部の光量差を抑制できる。
請求項9に記載の発明によれば、第1の接続線および第2の接続線に印加される電圧を調整して、第1の発光部と第2の発光部の光量のずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【
図2】
図2は実施例1の潜像形成装置の断面図である。
【
図4】
図4は実施例1の発光チップの構成の説明図である。
【
図5】
図5は実施例1の信号発生回路の構成及び回路基板上の配線(ライン)の構成の説明図である。
【
図6】
図6は、実施例1の発光チップの構成を説明する等価回路図の一例である。
【
図8】
図8は従来の構成の説明図であり、
図8Aは発光サイリスタが直線配列の場合の説明図、
図8Bは発光サイリスタが千鳥配置且つ配線を避けるように発光サイリスタの面積を小さくした場合の説明図、
図8Cは発光サイリスタの表面に配線を積層した場合の説明図である。
【
図9】
図9は
図8Cに示す従来構成の場合の光量分布の実験結果の説明図である。
【
図10】
図10は実施例1の構成における実験結果の説明図であり、
図10Aは電極幅の増加分と光量の関係の説明図、
図10Bは第2の発光サイリスタの電極の幅を0.8μm大きくした場合の実験結果の説明図である。
【
図11】
図11は供給電流と光出力との関係の実験結果である。
【
図12】
図12は第1の電流制限抵抗を200Ωとし且つ第2の電流制限抵抗を220Ωとした場合の電源電圧と光量比との関係の実験結果である。
【
図13】
図13は本発明における発光部の配置の別の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例としての実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向(媒体の幅方向)をX軸方向、左右方向(媒体の搬送方向)をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,-X,Y,-Y,Z,-Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0021】
(実施例1のプリンタUの全体構成の説明)
図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、本発明の実施例1の画像形成装置の一例としてのプリンタUは、プリンタの本体U1と、プリンタの本体U1に媒体を供給する供給装置の一例としてのフィーダーユニットU2と、利用者が操作を行う操作部UIと、プリンタの本体U1から排出された媒体の後処理を行う後処理装置の一例としてのフィニッシャーU3と、を有する。
【0022】
(実施例1のマーキングの構成の説明)
図1において、前記プリンタの本体U1は、プリンタUの制御を行う制御部(制御手段の一例)Cや、プリンタUの外部に図示しない専用のケーブルを介して接続された情報の送信装置の一例としてのプリント画像サーバCOMから送信された画像情報を受信する図示しない通信部、媒体に画像を記録する記録手段の一例としてのマーキング部U1a等を有する。前記プリント画像サーバCOMには、ケーブルまたはLAN:Local Area Network等の回線を通じて接続され、プリンタUで印刷される画像の情報が送信される画像の送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータPCが接続されている。
マーキング部U1aは、像保持手段の一例としてY:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の各色用の感光体Py,Pm,Pc,Pkと、写真画像等を印刷する場合に画像に光沢を出すための感光体Poと、を有する。感光体Py~Poは、表面が感光性の誘電体で構成されている。
【0023】
図1において、黒色の感光体Pkの周囲には、感光体Pkの回転方向に沿って、帯電手段の一例としての帯電器CCk、潜像の形成手段の一例としての露光機LPHk、現像手段の一例としての現像器Gk、一次転写手段の一例としての一次転写ロールT1k、像保持手段用の清掃手段の一例としての感光体クリーナCLkが配置されている。
他の感光体Py,Pm,Pc,Poの周囲にも同様に、帯電器CCy,CCm,CCc,CCo、露光機LPHy,LPHm,LPHc,LPHo、現像器Gy,Gm,Gc,Go、一次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1o、感光体クリーナCLy,CLm,CLc,CLoが配置されている。
マーキング部U1aの上部には、現像剤の収容手段の一例としてのトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kk,Koが着脱可能に支持されている。トナーカートリッジKy~Koには、現像器Gy~Goに補給される現像剤が収容されている。
【0024】
各感光体Py~Poの下方には、中間転写手段の一例であって、像保持手段の一例としての中間転写ベルトBが配置されている。中間転写ベルトBは、感光体Py~Poと一次転写ロールT1y~T1oとの間に挟まれる。中間転写ベルトBの裏面は、駆動手段の一例としてのドライブロールRdと、張力付与手段の一例としてのテンションロールRtと、蛇行防止手段の一例としてのウォーキングロールRwと、従動手段の一例としての複数のアイドラロールRfと、2次転写用の対向手段の一例としてのバックアップロールT2aと、可動手段の一例としての複数のリトラクトロールR1と、前記一次転写ロールT1y~T1oにより支持されている。
中間転写ベルトBの表面には、ドライブロールRdの近傍に、中間転写手段の清掃手段の一例としてのベルトクリーナCLBが配置されている。
【0025】
バックアップロールT2aには、中間転写ベルトBを挟んで、2次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bが対向して配置されている。また、バックアップロールT2aには、バックアップロールT2aに現像剤の帯電極性とは逆極性の電圧を印加するために、接触手段の一例としてのコンタクトロールT2cが接触している。
前記バックアップロールT2a、2次転写ロールT2b、コンタクトロールT2cにより、実施例1の二次転写手段の一例としての2次転写器T2が構成されており、一次転写ロールT1y~T1o、中間転写ベルトB、2次転写器T2等により、実施例1の転写手段の一例としての転写装置T1,B,T2が構成されている。
【0026】
2次転写器T2の下方には、収容手段の一例として給紙トレイTR1が設けられている。給紙トレイTR1には、媒体の一例としての記録シートSが収容される。給紙トレイTR1の右斜め上方には、取出手段の一例としてのピックアップロールRpと、捌き手段の一例としての捌きロールRsとが配置されている。捌きロールRsから、記録シートSが搬送される搬送路SHが延びている。搬送路SHに沿って、記録シートSを下流側に搬送する搬送手段の一例としての搬送ロールRaが複数配置されている。
捌きロールRsの下流側には、不要部の除去手段の一例としてのバリ取り装置Btが配置されている。バリ取り装置Btは、記録シートSを予め設定された圧力で挟んで下流側に搬送して、記録シートSの縁の不要部の除去、いわゆる、バリ取りを行う。
【0027】
バリ取り装置Btの下流側には、重送の検知装置Jkが配置されている。重送の検知装置Jkは、通過する記録シートSの厚みを計測して、記録シートSが複数枚重なっている状態、いわゆる重送を検知する。
重送の検知装置Jkの下流側には、姿勢の補正手段の一例としての補正ロールRcが配置されている。補正ロールRcは、記録シートSの搬送方向に対する傾斜、いわゆるスキューを補正する。
補正ロールRcの下流側には、2次転写器T2への記録シートSの搬送時期を調整する調整手段の一例としてのレジストレーションロールRrが配置されている。また、レジストレーションロールRrの下流側には、媒体の案内手段の一例としてのシートガイドSG1が配置されている。
なお、フィーダーユニットU2にも、給紙トレイTR1やピックアップロールRp、捌きロールRs、搬送ロールRaと同様に構成された給紙トレイTR2,TR3等が設けられており、給紙トレイTR2,TR3からの搬送路SHは、プリンタの本体U1の搬送路SHに、重送の検知装置Jkの上流側で合流する。
【0028】
2次転写ロールT2bに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、媒体の搬送手段の一例としての搬送ベルトHBが複数配置されている。
搬送ベルトHBに対して、記録シートSの搬送方向の下流側には、定着手段の一例としての定着装置Fが配置されている。
定着装置Fの下流側のフィニッシャーU3には、湾曲の補正手段の一例としてのデカーラーHdが配置されている。デカーラーHdは、記録シートSに圧力を加えて、記録シートSの湾曲、いわゆるカールを補正する。
デカーラーHdの下流側には、積載手段の一例としての排出トレイTRhに向けて搬送路SHが延びている。搬送路SHの下流端には、排出手段の一例としての排出ロールRhが配置されている。
【0029】
デカーラーHdの下流側には、搬送路SHから分岐する搬送路の一例としての反転路SH2が形成されている。搬送路SHと反転路SH2との分岐部には、搬送方向の切替手段の一例としての第1のゲートGT1が配置されている。
反転路SH2には、正逆回転可能な搬送手段の一例としてのスイッチバックロールRbが複数配置されている。スイッチバックロールRbの上流側には、反転路SH2の上流部から分岐して、搬送路SHの反転路SH2との分岐部よりも下流側に合流する搬送路の一例としての接続路SH3が形成されている。反転路SH2と接続路SH3との分岐部には、搬送方向の切替手段の一例としての第2のゲートGT2が配置されている。
【0030】
前記反転路SH2の下流側には、定着装置Fの下方に、記録シートSの搬送方向を反転、いわゆる、スイッチバックさせるための折り返し路SH4が配置されている。折り返し路SH4には、正逆回転可能な搬送手段の一例としてのスイッチバックロールRbが配置されている。また、折り返し路SH4の入口には、搬送方向の切替手段の一例としての第3のゲートGT3が配置されている。
なお、折り返し路SH4の下流側の搬送路SHは、給紙トレイTR1の搬送路SHに合流している。
【0031】
(マーキングの動作)
前記プリンタUでは、パーソナルコンピュータPCから送信された画像情報を、プリント画像サーバCOMを介して受信すると、画像形成動作であるジョブが開始される。ジョブが開始されると、感光体Py~Poや中間転写ベルトB等が回転する。
感光体Py~Poは、図示しない駆動源により回転駆動される。
帯電器CCy~CCoは、予め設定された電圧が印加されて、感光体Py~Poの表面を帯電させる。
潜像形成装置の一例であって、発光装置の一例としての露光機LPHy~LPHoは、制御部Cからの制御信号に応じて、潜像を書き込む光Ly,Lm,Lc,Lk,Loを出力して、感光体Py~Poの帯電された表面に静電潜像を書き込む。
現像器Gy~Goは、感光体Py~Poの表面の静電潜像を現像する。
トナーカートリッジKy~Koは、現像器Gy~Goにおける現像に伴って消費された現像剤の補給を行う。
【0032】
一次転写ロールT1y~T1oは、現像剤の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧が印加され、感光体Py~Poの表面の可視像を中間転写ベルトBの表面に転写する。
感光体クリーナCLy~CLoは、一次転写後に感光体Py~Poの表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
中間転写ベルトBは、感光体Py~Poに対向する一次転写領域を通過する際に、O,Y,M,C,Kの順に、画像が転写されて積層され、2次転写器T2に対向する2次転写領域Q4を通過する。なお、単色画像の場合は、1色のみの画像が転写されて2次転写領域Q4に送られる。
【0033】
ピックアップロールRpは、受信した画像情報の大きさや記録シートSの指定と、収容された記録シートSの大きさや種類等に応じて、記録シートSの供給が行われる給紙トレイTR1~TR3から記録シートSを送り出す。
捌きロールRsは、ピックアップロールRpから送り出された記録シートSを1枚ずつ分離して捌く。
バリ取り装置Btは、通過する記録シートSに予め設定された圧力を印加してバリを除去する。
重送の検知装置Jkは、通過する記録シートSの厚さを検知することで、記録シートSの重送を検知する。
補正ロールRcは、通過する記録シートSを、図示しない壁面に接触させてスキューを補正する。
【0034】
レジストレーションロールRrは、中間転写ベルトBの表面の画像が2次転写領域Q4に送られる時期に合わせて、記録シートSを送り出す。
シートガイドSG1は、レジストレーションロールRrで送り出された記録シートSを2次転写領域Q4に案内する。
2次転写器T2は、コンタクトロールT2cを介してバックアップロールT2aに予め設定された現像剤の帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加され、記録シートSに中間転写ベルトBの画像を転写する。
ベルトクリーナCLBは、2次転写領域Q4で画像が転写された後の中間転写ベルトBの表面に残留した現像剤を除去して清掃する。
搬送ベルトHBは、2次転写器T2で画像が転写された記録シートSを表面に保持して下流側に搬送する。
【0035】
定着装置Fは、加熱部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧部材の一例としての加圧ロールFpとを有する。加熱ロールFhの内部には、熱源の一例としてのヒータhが収容されている。定着装置Fは、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する定着領域Q5を通過する記録シートSを加圧しながら加熱して、記録シートSの表面の未定着画像を定着する。前記加熱ロールFhおよび加圧ロールFpにより、実施例1の定着部材Fp,Fhが構成されている。
デカーラーHdは、定着装置Fを通過した記録シートSに圧力を加えて、記録シートSの湾曲、いわゆるカールを除去する。
【0036】
デカーラーHdを通過した記録シートSは、両面印刷が行われる場合には、第1のゲートGT1が作動して、反転路SH2に搬送され、折り返し路SH4でスイッチバックされて、搬送路SHを通じて、レジストレーションロールRrに再送され、2面目の印刷が行われる。
排出トレイTRhに排出される記録シートSは、画像が記録された面が上面となる状態で排出される場合、いわゆるフェイスアップ排出の場合には、搬送路SHを搬送され、排出ロールRhにより排出トレイTRhに排出される。
【0037】
一方、画像が記録された面が下面となるように排出される場合、いわゆるフェイスダウン排出の場合には、搬送路SHから反転路SH2に一旦搬入される。そして、記録シートSの搬送方向の後端が第2のゲートGT2を通過後、スイッチバックロールRbの正回転が停止する。そして、第2のゲートGT2が切り替わり、スイッチバックロールRbが逆回転をして、記録シートSが接続路SH3を搬送されて排出トレイTRhに搬送される。
排出トレイTRhには、排出された記録シートSが積載される。
【0038】
(潜像形成装置の説明)
実施例1では、露光機(プリントヘッド)LPHy~LPHoとして、装置の小型化の要請を受けて発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を主走査方向に複数、配列して発光素子アレイとしたLEDプリントヘッド(LPH:LED Print Head)を用いた記録装置が採用されている。
また、基板上に複数の発光素子が列状に設けられ、順次点灯制御される自己走査型発光素子アレイ(SLED)を搭載する発光チップでは、発光ダイオードに直列結合された発光サイリスタが使用されている。サイリスタは、アノード、カソード、及び少なくとも1つのゲートを有し、一定以上の電圧がゲートに印加されている状態でアノードとカソードとの間に電圧が印加されることによりオン状態となり、保持電流以上の電流がアノードとカソード間に流れている間はオン状態を維持する素子である。
【0039】
図2は実施例1の潜像形成装置の断面図である。
図3は実施例1の発光部の上面図である。
図2において、発光装置の一例としてのプリントヘッドLPHy~LPHoの構成を示した断面図である。プリントヘッドLPHy~LPHoは、枠体の一例としてのハウジング61と、発光手段本体の一例としての光出射装置65と、光学手段の一例としてのロッドレンズアレイ64と、を備える。光出射装置65は、複数の発光素子を有する光源部63を備える。ロッドレンズアレイ64は、光源部63から出射された光を感光体Py~Poの表面に結像させて感光体Py~Poを露光する。
光出射装置65は、光源部63や光源部63を駆動する信号発生回路110(
図3参照)等を搭載する回路基板62を備えている。
【0040】
ハウジング61は、例えば金属で形成され、回路基板62及びロッドレンズアレイ64を支持し、光源部63の発光素子の光を出射する面である発光面がロッドレンズアレイ64の焦点面となるように設定されている。また、ロッドレンズアレイ64は、感光体Py~Poの軸方向(主走査方向)に沿って配置されている。
【0041】
(光出射装置65)
図3において、光源部63は、回路基板62上に、一例として20個の発光チップC1~C20を備える。そして、発光チップC1~C20は、主走査方向であるX方向に二列に千鳥に配置して構成されている。
実施例1では、発光チップCk(C1~C20)の数として、合計20個を用いたが、これに限定されず、設計や仕様に応じて適宜変更可能である。
【0042】
光出射装置65は、光源部63を駆動する信号発生回路110を備える。信号発生回路110は、例えば集積回路(IC)などで構成されている。なお、光出射装置65が信号発生回路110を搭載していなくともよい。このときは、信号発生回路110は、光出射装置65の外部に設けられ、発光チップC1~C20を制御する制御信号などを、ケーブルなどを介して供給する。ここでは、光出射装置65は信号発生回路110を備えているとして説明する。
【0043】
図4は実施例1の発光チップの構成の説明図である。
図5は実施例1の信号発生回路の構成及び回路基板上の配線(ライン)の構成の説明図である。
図4において、発光チップCkは、一例として表面形状が長方形である半導体の基板80上に設けられた半導体積層体により構成されている。そして、基板80の表面において、一長辺側に長辺に沿って千鳥状に複数の発光素子(実施例1では、発光サイリスタL1,L2,L3,…)が配置されている。
【0044】
実施例1では、発光サイリスタL1~L20は、予め定められた第1の方向である主走査方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第1の発光部(第1の発光サイリスタ)L1,L3,L5,…,L19と、主走査方向に沿って間隔をあけて配置された複数の第2の発光部(第2の発光サイリスタ)L2,L4,L6,…,L20と、を有し、第2の発光サイリスタL2,L4,…,L20は、主走査方向に交差する副走査方向(第2の方向の一例)に対して、第1の発光サイリスタL1,L3,…,L19からずれた位置に配置され、且つ、主走査方向に沿って各第1の発光サイリスタL1,L3,…,L19に対してずれた位置に配置されている。
なお、以下、nを自然数として、第1の発光サイリスタL1,L3,…,L19を「第1の発光サイリスタL2n-1」と表記し、第2の発光サイリスタL2,L4,…,L20を「第2の発光サイリスタL2n」と表記する場合がある。
なお、実施例1では、2列の発光サイリスタL1~L20で構成した場合を例示したが、3列以上とすることも可能である。また、発光サイリスタの個数も20個に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
【0045】
図4、
図5において、発光チップCkは、基板80の表面の長辺方向の両端部に、各種の制御信号等を取り込むための複数のボンディングパッドである端子(φ1端子、φ2端子、Vg端子、VI端子、φWa端子、φWb端子及びφR端子)を備える。なお、これらの端子は、基板80の一端部からφWa端子、φ1端子、VI端子及びVg端子の順に設けられ、基板80の他端部からφR端子、φWb端子及びφ2端子の順に設けられている。そして、発光部102は、Vg端子とφ2端子との間に設けられている。さらに、基板80の裏面にはVsub端子として裏面電極(図示せず)が設けられている。
なお、各種の制御信号や端子については、例えば、特開2020-049720号公報等に記載されているように、従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
(発光チップCk)
図6は、実施例1の発光チップの構成を説明する等価回路図の一例である。
図6において、以下で説明する各素子は、広く用いられる回路記号にて表記している。なお、各端子(φ1端子、φ2端子、φWa端子、φR端子、VI端子、Vg端子)の位置は、
図4と異なるが、説明の便宜上、図中左端に示している。そして、Vsub端子は、裏面電極として基板80の裏面に設けられている。
ここでは、信号発生回路110との関係において発光チップC1を例に、発光チップCkを説明し、他の発光チップC2~C20の説明は省略する。
【0047】
発光チップCkは、発光サイリスタL1,L2,L3,…、転送サイリスタT1,T2,T3,…、結合トランジスタQt1,Qt2,Qt3,…、セットサイリスタW1,W2,W3,…、設定トランジスタQw1,Qw2,Qw3,…を備える。
なお、発光サイリスタL1,L2,L3,…をそれぞれ区別しない場合には、発光サイリスタLと表記する。他についても同様とする。転送サイリスタT、結合トランジスタQt、セットサイリスタW、設定トランジスタQwは、発光サイリスタLの配列(
図4)に沿って、配列されている。
転送サイリスタTが転送素子の一例であり、セットサイリスタWが、設定素子の一例である。第1の実施例1においては、発光サイリスタLと抵抗RI1,RI2、抵抗Rnによって、発光装置が構成されている。
【0048】
そして、発光チップCkは、消灯サイリスタRT1,RT2を備える。なお、消灯サイリスタRT1,RT2をそれぞれ区別しない場合には、消灯サイリスタRTと表記する。
さらに、発光チップCkは、複数の抵抗を備える。なお、抵抗については、発光サイリスタL1,L2,L3,…などの区別する番号を付さない。
【0049】
発光サイリスタL、転送サイリスタT、セットサイリスタW、消灯サイリスタRTは、pnpn構造を有するサイリスタである。転送サイリスタTは、転送サイリスタT1に示すようにアノード、第1ゲートGtf、第2ゲートGts、カソードを有する4端子素子である。なお、
図6においては、第1ゲートGtfを(Gtf)と表記する。他についても同様である。また、同等の他の素子には符号を付していない。他についても同様である。
セットサイリスタWは、セットサイリスタW1に示すようにアノード、第1ゲートGwf、第2ゲートGws、カソードを有する4端子素子である。一方、発光サイリスタLは、発光サイリスタL1に示すようにアノード、ゲートGl、カソードを有する3端子素子である。同様に、消灯サイリスタRTは、消灯サイリスタRT1に示すように、アノード、ゲートGr、カソードを有する3端子素子である。
【0050】
結合トランジスタQt及び設定トランジスタQwは、pnpバイポーラトランジスタである。奇数番号の結合トランジスタQtは、結合トランジスタQt1に示すようにエミッタE、ベースB、第1コレクタCf、第2コレクタCsを有する4端子素子である。偶数番号の結合トランジスタQtは、結合トランジスタQt2に示すように、エミッタE、ベースB、コレクタCを有する3端子素子である。つまり、奇数番号の結合トランジスタQtは、マルチコレクタであり、偶数番号の結合トランジスタQtは、シングルコレクタである。
また、設定トランジスタQwは、設定トランジスタQw1に示すように、エミッタE、ベースB、コレクタCを有する3端子素子である。よって、設定トランジスタQwも、シングルコレクタである。
【0051】
そして、発光チップCkは、上記の素子を接続する複数の配線を備える。
発光チップCkは、Vg端子に接続された電源線71を備える。電源線71には、電源電圧供給部170から、電源ライン200bにより接続されたVg端子を介して電源電圧Vgが供給される。
発光チップCkは、φ1端子、φ2端子に各々抵抗R1,R2を介して接続された転送信号線72a,72bを備える。φ1端子、φ2端子には、転送信号発生部120から、転送信号ライン201,202を介して転送信号φ1,φ2が各々送信される。また、発光チップCkは、φWa端子、φWb端子に各々抵抗R3,R4を介して接続された設定信号線73a,73bを備える。φWa端子、φWb端子には、設定信号発生部130から、設定信号ライン203a-1,203b-1により設定信号φWa1,φWb1が送信される。
抵抗R1,R2,R3,R4は、電圧を維持するために設けられた電流制限抵抗である。
【0052】
そして、発光チップCkは、VI端子に抵抗RI1,RI2を各々介して接続された点灯信号線75a,75bを備える。VI端子には、点灯電圧供給部150から点灯電圧VIが供給される。点灯信号線75a,75bは、点灯電圧線の一例であって、点灯電圧VIは、点灯電圧の一例である。
さらに、発光チップCkは、φR端子に抵抗Rr1,Rr2を介して各々接続された消灯信号線76a,76bを備える。φR端子には、消灯信号発生部140から消灯信号ライン204により消灯信号φRが送信される。
【0053】
そして、発光チップCkは、基板80の裏面電極にVsub端子を備える。Vsub端子には、基準電圧供給部160から電源ライン200aにより基準電圧Vsubが供給される。Vsub端子は、基準電圧線の一例である。
【0054】
図7は実施例1の発光チップの要部説明図であり、
図7Aは平面図、
図7Bは
図7AのVIIB-VIIB線断面図、
図7Cは
図7AのVIIC-VIIC線断面図、
図7Dは
図7AのVIID-VIID線断面図である。
図7において、実施例1の発光チップCkでは、第1の発光サイリスタL1,L3,…,L19には、それぞれ設定トランジスタQw1,Qw3,…のコレクタ(C)から延びる第1の配線301が接続されている。第2の発光サイリスタL2,L4,…,L20には、それぞれ設定トランジスタQw2,Qw4,…のコレクタ(C)から延びる第2の配線302が接続されている。
【0055】
図7Bにおいて、第1の配線301は、基板80上に積層されて形成されている。なお、第1の配線301のさらに表面側に絶縁層303が積層されている。すなわち、第1の配線301は、積層の内側で電流を供給する構成である。
図7Cにおいて、第2の配線302は、基板80上に積層された絶縁層303のさらに表面に積層された金属材料で構成されており、第2の発光サイリスタL2nに電流を供給する。実施例1の第2の配線302は、第1の発光サイリスタL2n-1どうしの間を通過し且つ第1の発光サイリスタL2n-1の外縁部の一部を覆うように表面側に配置されており、第1の発光サイリスタL2n-1の外縁部の電極部304と通電しないように、絶縁層303を挟んで表面側に配置されている。
【0056】
図7Aにおいて、発光チップCkは、第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nとの光量差を小さくするように、第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nとに光取り出し効率を調整する。光取り出し効率とは、供給されるエネルギーのうち、どの程度の光を対象物に対する光として取り出すかの効率のことである。光取り出し効率は、供給されるエネルギーをどのようにして伝えるか、発光部としてどの程度の変換率でエネルギーを光に変えるか、光をどの程度対象物に向けた光とするか、等によってその効率が変化する。実施例1では、第1の発光サイリスタL2n-1の第1の電極304の幅L1に対して、第2の発光サイリスタL2nの外縁の第2の電極305の幅L2の方が、差分Δだけ大きくなるように設定されている。すなわち、第2の配線302で第1の発光サイリスタL2n-1の外周部が覆われて発光量が減少することに対応して、第2の発光サイリスタL2nの第2の電極305の幅を大きくして遮蔽することによって、光量差が小さくなるように調整している。本実施では、遮断によって光取り出し効率を調整している。したがって、実施例1では、第2の電極305の差分Δで増加した部分は、第2の発光サイリスタL2nの光を遮る遮光材としても機能している。
【0057】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の発光チップCkでは、第2の発光サイリスタL2n用の第2の配線302が第1の発光サイリスタL2n-1の外縁の一部を覆う状態で配置されており、第1の発光サイリスタL2n-1の発光量に影響を与える。すなわち、解像度が高くなるほど、第2の配線302が第1の発光サイリスタL2n-1からの光がロッドレンズアレイ64に入光する光量が変わるほど、第2の配線302の位置が第1の発光サイリスタL2n-1に近くなっていく。言い換えると、第2の配線302が、光軸(発光サイリスタLの中央)の外側である外縁の光路に影響を与え、いわば、壁のように機能する。
第2の配線302での第1の発光サイリスタL2n-1の光量の低下に応じて、実施例1では、第2の電極305の幅が広く形成されている。したがって、第2の配線302によって光量に影響を受ける第1の発光サイリスタL2n-1と影響を受けない第2の発光サイリスタL2nとがある場合に、発光サイリスタLの個別に光量を調整する場合に比べて、構成の複雑化を抑えつつ、発光サイリスタLの間での光量の差を抑制することができる。また、例えばLPHの平均光量を供給電圧で調整するような電源電圧可変を前提とする使い方であっても、供給電圧にかかわらず光量差が調整される。
【0058】
図8は従来の構成の説明図であり、
図8Aは発光サイリスタが直線配列の場合の説明図、
図8Bは発光サイリスタが千鳥配置且つ配線を避けるように発光サイリスタの面積を小さくした場合の説明図、
図8Cは発光サイリスタの表面に配線を積層した場合の説明図である。
図8Aに示すように、発光サイリスタ01が千鳥配置ではない直線上の配列の場合、画像の解像度を細かくしていこうとすると、発光サイリスタ01の面積を狭くする必要がある。しかしながら、発光サイリスタ01の微細化には限界があり、微細化するとコストが上昇する問題もある。
【0059】
図8Bに示すように、発光サイリスタを手前側の第1の発光サイリスタ02と奥側の第2の発光サイリスタ03のように千鳥状に配置することで、発光サイリスタ02,03の中心同士の主走査方向の間隔を短くすることが可能であり、すなわち、解像度を細かくすることが可能となる。しかしながら、
図8Bに示すように、第2の発光サイリスタ03への配線04を、第1の発光サイリスタ02を避けて、間を通過させるには、第1の発光サイリスタ02の幅が小さくなり、手前側の第1の発光サイリスタ02と第2の発光サイリスタ03とで、電流密度が変わり、発光量にばらつきが発生する問題がある。
【0060】
図9は
図8Cに示す従来構成の場合の光量分布の実験結果の説明図である。
図8Cに示すように、第1の発光サイリスタ06と第2の発光サイリスタ07を同じ構成とし、第2の配線08が第1の発光サイリスタ06の外縁の表面側を通過するように構成した場合、
図8Bに示す場合に比べれば、発光量のばらつきを抑制することは可能であるが、完全にばらつきを解消することは困難である。第1の発光サイリスタ06の1つずつに対して、個別に、光量の調整量を調整するメモリや電流の調整回路を設けることで調整を行うことも不可能ではないが、構成が複雑化する問題がある。
図9において、512個の発光サイリスタを有する発光チップについて実験を行った。第2の発光サイリスタ07の平均光量を1とした場合に、個体差等で生じる第2の発光サイリスタの光量の標準偏差が0.028であった。また、第1の発光サイリスタ06の平均光量は0.89であり、標準偏差は0.030であった。したがって、第1の発光サイリスタ06と第2の発光サイリスタ07との平均光量のずれは11%(=1-0.89)であった。
【0061】
図10は実施例1の構成における実験結果の説明図であり、
図10Aは電極幅の増加分と光量の関係の説明図、
図10Bは第2の発光サイリスタの電極の幅を0.8μm大きくした場合の実験結果の説明図である。
図10Aにおいて、第2の発光サイリスタL2nの第2の電極305の幅L2の増加分(差分Δ)と出力される光量の実験結果から、出力を11%減らすには、差分Δを0.8μmにすればよいことが読み取れる。これに応じて、差分Δを0.8μmとした発光チップCkを作成して実験を行った結果が
図10Bである。
図10Bに示すように、第2の発光サイリスタL2nの平均光量が0.90となり、第1の発光サイリスタL2n-1の平均光量0.89との差が1%となり、改善されることが確認された。
【0062】
なお、実施例1では、第2の電極305の幅L2を広げる場合に、主走査方向の幅を広げる場合を例示したが、これに限定されない。副走査方向の幅を広げることも可能であるし、主走査方向と副走査方向の幅の両方を変更する構成とすることも可能である。
また、実施例1では、第2の電極305の幅を広げる、すなわち、差分Δの部分(第3の配線の一例)は、第2の電極305における幅L1に相当する部分と、同一の材料で構成した場合を例示したが、これに限定されず、別の材料で第3の配線を構成することも可能である。
【実施例2】
【0063】
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例2は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0064】
実施例2の発光チップCkでは、第1の発光サイリスタL2n-1の全てが接続される第1の点灯信号線75b(第1の接続線)には、第1の電流制限抵抗RI2が接続されている。また、第2の発光サイリスタL2nの全てが接続される第2の点灯信号線75a(第2の接続線)には、第2の電流制限抵抗RI1が接続されている。実施例2では、第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nとの光量差を小さくするように、2つの抵抗RI1,RI2の抵抗値が設定されることで、第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nの光取り出し効率が調整されている。したがって、第1の発光サイリスタL2n-1に供給される電圧、電流と、第2の発光サイリスタL2nに供給される電圧、電流とが、発光量に応じて調整される。
【0065】
(実施例2の作用)
図11は供給電流と光出力との関係の実験結果である。
図12は第1の電流制限抵抗を200Ωとし且つ第2の電流制限抵抗を220Ωとした場合の電源電圧と光量比との関係の実験結果である。
前記構成を備えた実施例2の発光チップCkでは、電流制限抵抗RI1,RI2の調整で、発光サイリスタLの光量差が抑制される。
図11に示すように、発光サイリスタLへの供給電流を変更すると光の出力が変動する。また、
図12において、実施例2の構成において、第1の電流制限抵抗RI2を200Ωとし且つ第2の電流制限抵抗RI1を220Ωとした場合に、電源電圧VIを変動させると、第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nとの光量比が変動することが確認された。
【0066】
実施例2では、
図12において、光量比が1となる場合、すなわち、第1の発光サイリスタL2n-1と第2発光サイリスタL2nとの光量比が殆どなくなる電源電圧である3.3Vとすることで、光量のずれが抑制される。すなわち、電源電圧が所定の値に固定されている場合には、2つの電流制限抵抗RI1,RI2の一方または両方の値を調整することで、光量差を抑制することが可能である。なお、この方法は、供給電圧が変化しないような構成や電源電圧が一定の構成に適用するとなおよい。その理由は、LPHの平均光量を供給電圧で調整するような電源電圧可変を前提とする使い方では、供給電圧よって調整される光量差も変化する。
また、実施例1の調整と実施例2の調整のいずれか一方の調整を行うことも可能であるが、両方を行うことも可能である。
【0067】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H010)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としてのプリンタUを例示したが、これに限定されず、例えば、複写機、FAX、あるいはこれらの複数または全ての機能を有する複合機等により構成することも可能である。また、電子写真方式の画像形成装置に限定されず、インクジェット方式や熱転写方式等、任意の画像形成装置に適用可能である。
【0068】
(H02)前記実施例において、プリンタUとして、5色の現像剤が使用される構成を例示したが、これに限定されず、例えば、単色の画像形成装置や、4色以下または6色以上の多色の画像形成装置にも適用可能である。
(H03)前記実施例において、像保持手段の一例として、無端帯状の中間転写ベルトBを例示したが、これに限定されない。例えば、円筒状の中間転写ドラムや、感光体ドラム、感光体ベルトにも適用可能である。また、中間転写体を有せず、感光体から直接記録シートSに画像を記録する構成にも適用可能である。
【0069】
(H04)前記実施例において、第2の発光サイリスタL2nに点灯/消灯の信号を送る第2の配線302が第1の発光サイリスタL2n-1の光量に影響を与える構成を例示したがこれに限定されない。信号の配線でなく、給電の配線等、発光サイリスタの発光に影響を与える任意の配線に対して適用可能である。
(H05)前記実施例において、第2の電極305の幅L2を広げる場合を例示したがこれに限定されない。例えば、第2の点灯信号線75aを伸ばして第2の電極305の一部を覆うように(第1の電極304が覆われる面積と同じ面積になるように)構成することも可能である。また、第2の点灯信号線75aとは異なる配線(第3の配線)を形成して、第2の電極305の一部を覆うように配置することも可能である。このとき、第3の配線は、第2の配線302と同じ層として形成することで、第2の配線と同一の成膜、エッチング工程で製造することも可能である。
【0070】
(H06)前記実施例において、発光部として、発光サイリスタの構造を例示したがこれに限定されない。例えば、発光部は発光ダイオードのみでもよい。また、配線も発光部のそれぞれ電流を供給する構成、例えば、特開2020-123603号公報等に記載の構成に適用することも可能である。また、発光ダイオード等からなるLEDヘッドの構成に限定されず、例えば、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)等の積層基板を有する構成にも適用可能である。
(H07)前記実施例において、第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nが複数ある場合について例示したが、これに限定されない。第1の発光サイリスタL2n-1と第2の発光サイリスタL2nが1つずつの場合にも適用可能である。また、例えば(H06)と(H07)を組み合わせて、発光部はVCSELで構成し、第1のVCSELと第2のVCSELが1つずつの場合など、変形例どうしを適宜組み合わせてもよい。
【0071】
(H08)前記実施例において、発光装置の例として画像形成装置に使用されるプリントヘッドの場合について例示したが、これに限定されない。光伝送に使用される発光素子アレイに適用してもよく、その場合は光伝送路と組み合わせてもよく、第1の発光部からの発光と第2の発光部からの発光を同じ光伝送路にいれてもよいし、異なる光伝送路にいれてもよい。また、光計測に使用される発光基板に適用しても良く、第1の発光部と第2の発光部の発光を、受光する受光素子を同じ基板上に構成してもよく、また、第1の発光部と第2の発光部からの発光が物体に届くまえに通過するレンズを追加してもよい。
(H09)実施例では、発光部を発光サイリスタの1つ1つに適用し、第1の発光サイリスタL1,L3,…,L19への第1の配線301が接続されているような構成を例示したがこれに限定されない。例えば発光素子群に対して電流を供給する構成としてもよい。
【0072】
図13は本発明における発光部の配置の別の例の説明図である。
(H010)実施例1で例示したように発光サイリスタLが千鳥状に配列された構成を例示したが、これに限定されない。例えば、
図13に示すように、発光サイリスタLが列状ではなく、面状に密集させて配置されている場合において、外周側の第1の発光サイリスタL1′と、内側の第2の発光サイリスタL2′とに対して、第2の発光サイリスタL2′への第2の配線302′が、実施例1と同様に、第1の発光サイリスタL1′の間を通過するように配置されている場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
75a…第2の接続線、
75b…第1の接続線、
80…基板、
301…第1の配線、
302…第2の配線、配線、
304…第1電極、
305…遮光材、第2電極、第3の配線、
L1,L3,L2n-1…第1の発光部、
L2,L4,L2n…第2の発光部、
LPH…発光装置、
RI1…第2の電流制限抵抗、
RI2…第1の電流制限抵抗。