(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】包装袋及び引裂き誘導線形成方法
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20250311BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20250311BHJP
B23K 26/359 20140101ALI20250311BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D75/62 A
B23K26/359
(21)【出願番号】P 2021025796
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】畠 源英
(72)【発明者】
【氏名】石坂 公一
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-099091(JP,A)
【文献】特開平10-310169(JP,A)
【文献】特開2017-036070(JP,A)
【文献】特開2016-008066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167860(US,A1)
【文献】特開2020-132172(JP,A)
【文献】特開2020-125142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B65D 75/62
B23K 26/359
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルム及び第2フィルムがそれらの周縁部を接合して袋状に形成され、第1フィルム及び第2フィルムのそれぞれの周縁部が接合されてなる第1接合部に引裂き開始部が形成されて、前記引裂き開始部からの引裂きを誘導する第1引裂き誘導線が前記第1フィルムに、前記引裂き開始部からの引裂きを誘導する第2引裂き誘導線が前記第2フィルムに、それぞれ形成された包装袋であって、
第1引裂き誘導線は、
前記引裂き開始部から前記第1接合部から離れる方向に延びる第1直線部分と、
前記第1直線部分から続き、湾曲して延びる湾曲部分と、を有し、
前記第2引裂き誘導線は、
前記第1引裂き誘導線の前記第1直線部分に重なるとともに、前記湾曲部分に重なることなく、前記引裂き開始部から延びる直線部分を有し、
前記第1引裂き誘導線において、
前記湾曲部分は、前記第1直線部分からなめらかに続く第1接続湾曲部分と、
前記第1接続湾曲部分からなめらかに続き、前記第1接続湾曲部分の湾曲方向と逆側に湾曲する主湾曲部分と、を有し、
前記第1直線部分と前記第1接続湾曲部分との境界点を含む第1特別領域が、引裂き開始部から前記第1特別領域に至る第1普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝で形成され、
前記第2引裂き誘導線において、
前記第1引裂き誘導線の前記第1特別領域に前記引裂きの方向において対応する第2特別領域が、前記第1引裂き誘導線における前記第1普通領域に前記引裂きの方向において対応する第2普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝で形成された、包装袋。
【請求項2】
前記湾曲部分において、
前記第1接続湾曲部分の
曲率半径は、前記主湾曲部分の
曲率半径より小さい、
請求項1記載の包装袋。
【請求項3】
前記第1引裂き誘導線における前記第1特別領域は、前記第1直線部分のその中心点までの間隔よりも前記第1接続湾曲部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第1所定点から、前記湾曲部分のその中心点までの間隔よりも前記第1直線部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第2所定点までの領域である、請求項1または2記載の包装袋。
【請求項4】
前記第1引裂き誘導線における前記第1所定点は、前記第1直線部分と前記第1接続湾曲部分との境界点である、請求項3記載の包装袋。
【請求項5】
前記第1引裂き誘導線は、
前記湾曲部分から続き、前記第1接合部に対向する第2接合部まで延びる第2直線部分を有し、
前記第2引裂き誘導線の直線部分は、前記第1引裂き誘導線の前記第2直線部分に重なって前記第2接合部まで延び、
前記第1引裂き誘導線において、
前記湾曲部分は、前記主湾曲部分から前記第2直線部分になめらかに続き、前記主湾曲部分の湾曲方向と逆側に湾曲する第2接続湾曲部分を有し、
前記第2直線部分と前記第2接続湾曲部分との境界点を含む第3特別領域が、前記第2直線部分
の第2接合部側端点から前記第3特別領域に至る第3普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝で形成され、
前記第2引裂き誘導線において、
前記第1引裂き誘導線の前記第3特別領域に前記引裂きの方向において対応する第4 特別領域が、前記第1引裂き誘導線の前記第3普通領域の前記引裂きの方向において対応する第4普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝にて形成された、請求項1乃至4のいずれかに記載の包装袋。
【請求項6】
前記第2接続湾曲部分の
曲率半径は、前記主湾曲部分の
曲率半径より小さい、
請求項5記載の包装袋。
【請求項7】
前記第1引裂き誘導線における前記第3特別領域は、前記第2直線部分のその中心点までの間隔よりも前記第2接続湾曲部
分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第3所定点から、前記湾曲部分のその中心点までの間隔よりも前記第2直線部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第4所定点までの領域である、請求項5または6記載の包装袋。
【請求項8】
前記第1引裂き誘導線の前記第3所定点は、前記第2直線部分と前記第2接続湾曲部分との境界点である、請求項7記載の包装袋。
【請求項9】
前記第1引裂き誘導線において、
前記湾曲部分における前記第1特別領域と前記第3特別領域との間の領域は、前記第1特別領域及び前記第3特別領域それぞれの線状溝より浅い及び又は細い線状溝で形成され、
前記第2引裂き誘導線において、
前記第1引裂き誘導線の前記第1特別領域と前記第3特別領域との間の領域に引裂きの方向において対応する領域は、前記第2特別領域及び前記第4特別領域それぞれの線状溝より浅い及び又は細い線状溝で形成された、請求項5乃至8のいずれかに記載の包装袋。
【請求項10】
前記第1フィルム及び第2フィルムのそれぞれは、表面層、内面層、及び前記表面層と前記内面層との間に位置する中間層にて形成され、
前記第1特別領域、前記第2特別領域、前記第3特別領域、及び前記第4特別領域のそれぞれの線状溝は、前記中間層の半分の深さより深い、請求項5乃至9のいずれかに記載の包装袋。
【請求項11】
前記内面層の厚さは、100μm より小さくない、請求項10記載の包装袋。
【請求項12】
前記第1引裂き誘導線は、
前記引裂き開始部を囲むとともに、前記第1直線部分と交差する補助誘導線を有し、
前記補助誘導線において、前記第1直線部分との交差点を含む所定領域は、他の領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝にて形成され、
前記第2引裂き誘導線は、
前記引裂き開始部を囲むとともに、前記直線部分と交差し、前記第1引裂き誘導線側の前記補助誘導線に重なる補助誘導線を有し、
当該補助誘導線において、前記直線部分との交差点を含む所定領域は、他の領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝にて形成された、請求項1乃至11のいずれかに記載の包装袋。
【請求項13】
請求項5乃至11のいずれかに記載された包装袋の引裂き誘導線を形成する方法であって、
前記第1フィルムに前記第1
引裂き誘導線を形成するに際し、
レーザ光を照射して、前記第1直線部分の前記第1普通領域から前記第1特別領域までの線状溝を形成する第1ステップと、
レーザ光を照射して、前記第1特別領域から前記第3特別領域までの線状溝を形成する第2ステップと、
レーザ光を照射して、前記第3特別領域から前記第2直線部分の前記第3普通領域までの線状溝を形成する第3ステップと、を有する引裂き誘導線形成方法。
【請求項14】
請求項5乃至
11のいずれかに記載された包装袋の引裂き誘導線を形成する方法であって、
前記第2フィルムに前記第2引裂き誘導線を形成するに際し、
レーザ光を照射して、前記直線部分の第2普通領域から第2特別領域までの線状溝を形成する第1ステップと、
レーザ光を照射して、前記直線部分の前記第2特別領域から前記第4特別領域までの線状溝を形成する第2ステップと、
レーザ光を照射して、前記直線部分の前記第4特別領域から前記第4普通領域までの線状溝を形成する第3ステップと、を有する、引裂き誘導線の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性を有する包装袋及びその包装袋における引裂き誘導線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された包装袋(易開封易開口性包装用袋)が知られている。この包装袋では、袋の表裏を構成する積層シート1A(第1フィルム)及び積層シート1B(第2フィルム)のそれぞれに、易開封線LA、LB(引裂き誘導弱め線)が形成されている。そして、それら易開封線LA、LBは、引裂き方向に延びる同じ領域において相互に重なっている重なり部分(単線(m)、単線(M))と、引裂き方向に延びる同じ領域において相互に重なっていない分離部分(分岐線(n1、n2)、単線(M))とを有している(特許文献1の
図1参照)。
【0003】
このような包装袋では、ノッチから開始される包装袋(積層シート1A、積層シート1B)の引裂きが易開封線LA、LBに誘導されつつ進み、積層シート1A及び積層シート1Bが引裂かれて開封される(易開封性)。また、この包装袋では、包装袋の表裏(積層シート1A、1B)に形成された易開封線A、Bが相互に重なっていない分離部分(分岐線(n1、n2)、単線(M))を有しているので、易開封線LA、LBに沿って包装袋を引裂いて開封したときに、包装袋の開口部分の切り口縁線が前記分離部分において上下にずれるようになる。このため、そのずれた部分を摘まんで包装袋の前記開口部分を容易に開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような構造の包装袋では、ノッチから開始される引裂きが、一方の積層シート1Aでは、易開封線LAに沿って進み、他方の積層シート1Bでは、易開封線LBに沿って進む。積層シート1Aの易開封線LAと積層シート1Bの易開封線LBとが包装袋の幅全域にわたって重なっているのではなく、包装袋の略中央部分で分離している。このため、その分離している部分では、2つの易開封線LA、LBに沿った引裂き方向が異なり、積層シート1Aの易開封線LAに沿った引裂きと、積層シート1Bの易開封線LBに沿った引裂きとが相互に影響しあう。その結果、積層シート1A(または積層シート1B)の引裂きが、易開封線LA(または易開封線LB)から逸脱して、包装袋を適正に開封することができない場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、表裏の2枚のフィルム(シート)のそれぞれに形成された引裂き誘導線(易開封線)に沿って適正に引裂いて開封することができる包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装袋は、第1フィルム及び第2フィルムがそれらの周縁部を接合して袋状に形成され、第1フィルム及び第2フィルムのそれぞれの周縁部が接合されてなる第1接合部に引裂き開始部が形成されて、前記引裂き開始部からの引裂きを誘導する第1引裂き誘導線が前記第1フィルムに、前記引裂き開始部からの引裂きを誘導する第2引裂き誘導線が前記第2フィルムに、それぞれ形成された包装袋であって、第1引裂き誘導線は、前記引裂き開始部から前記第1接合部から離れる方向に延びる第1直線部分と、前記第1直線部分から続き、湾曲して延びる湾曲部分と、を有し、前記第2引裂き誘導線は、前記第1引裂き誘導線の前記第1直線部分に重なるとともに、前記湾曲部分に重なることなく、前記引裂き開始部から延びる直線部分を有し、前記第1引裂き誘導線において、前記湾曲部分は、前記第1直線部分からなめらかに続く第1接続湾曲部分と、前記第1接続湾曲部分になめらかに続き、前記第1接続湾曲部分の湾曲方向と逆側に湾曲する主湾曲部分と、を有し、前記第1直線部分と前記第1接続湾曲部分との境界点を含む第1特別領域が、引裂き開始部から前記第1特別領域に至る第1普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝で形成され、前記第2引裂き誘導線において、前記第1引裂き誘導線の前記第1特別領域に前記引裂きの方向において対応する第2特別領域が、前記第1引裂き誘導線における前記第1普通領域に前記引裂きの方向において対応する第2普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝で形成された、構成となる。
【0008】
このような構成により、第1引裂き誘導線(第1直線部分、湾曲部分)では、引裂き開始部から続く第1普通領域より、この第1普通領域から更に続く第1特別領域(第1直線部分と湾曲部分の第1接続湾曲部分との境界点を含む)のほうが引裂き易い。そして、その引裂きは、第1直線部分からなめらかに湾曲部分の第1接続湾曲部分に進む。また、第2引裂き誘導線(直線部分)では、第1引裂き誘導線の第1普通領域に引裂きの方向において対応する第2普通領域より、その第2普通領域から続き、第1引裂き誘導線の第1特別領域に引裂きの方向において対応する第2特別領域のほうが引裂き易い。
【0009】
第1フィルムでの第1引裂き誘導線に誘導される引裂きが第1直線部分から湾曲部分に移行する際に、その第1フィルムでの引裂き方向と、第2フィルムでの第2引裂き誘導線の直線部分に誘導される引裂きの方向とが分かれる。その第1フィルムでの引裂き方向と第2フィルムでの引裂き方向が分かれる際には、第1フィルムでは湾曲部分の引裂きがなめらかに進むとともに、その第1フィルム及び第2フィルムの2つの引裂きは、より引裂き易い第1特別領域及び第2特別領域を進む。
【0010】
本発明に係る包装袋において、前記湾曲部分において、前記第1接続湾曲部分の曲率半径は、前記主湾曲部分の曲率半径より小さい、構成とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線における前記第1特別領域は、前記第1直線部分のその中心点までの間隔よりも前記第1接続湾曲部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第1所定点から、前記湾曲部分のその中心点までの間隔よりも前記第1直線部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第2所定点までの領域である、構成とすることができる。
【0012】
このような構成により、第1引裂き誘導線において、より深い及び又は太い第1特別領域の長さが第1直線部分及びそれから続いて湾曲部分の中心点に至る長さの半分より小さくなる。このため、包装袋における落下強度、デザイン性、及び加工時間のいずれについても、大きく損なわれることを防止することができる。
【0013】
本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線における前記第1所定点は、前記第1直線部分と前記第1接続湾曲部分との境界点である、構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、第1所定点から第1直線部分と第1接続湾曲部分との境界点までの長さが実質的にゼロになり、より深い及び又は太い第1特別領域が更に少なくなるので、包装袋における落下強度、デザイン性、及び加工時間のいずれについても、更に好ましいものとなる。
【0015】
本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線は、前記湾曲部分から続き、前記第1接合部に対向する第2接合部まで延びる第2直線部分を有し、前記第2引裂き誘導線の直線部分は、前記第1 引裂き誘導線の前記第2直線部分に重なって前記第2接合部まで延び、前記第1 引裂き誘導線において、前記湾曲部分は、前記主湾曲部分から前記第2直線部分になめらかに続く第2接続湾曲部分を有し、前記第2直線部分と前記第2接続湾曲部分との境界点を含む第3特別領域が、前記第2直線部分の第2接合部側端点から前記第3特別領域に至る第3普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝で形成され、前記第2引裂き誘導線において、前記第1引裂き誘導線の前記第3特別領域に前記引裂きの方向において対応する第4特別領域が、前記第1引裂き誘導線の前記第3普通領域の前記引裂きの方向において対応する第4普通領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝にて形成された、構成となる。
【0016】
このような構成により、第1引裂き誘導線(第1直線部分、湾曲部分、第2直線部分)では、第2直線部分の第2接合部側端点に至る第3普通領域より、この第3普通領域に続いていく第3特別領域(湾曲部分と第2直線部分との境界点を含む)のほうが引裂き易い。そして、その引裂きは、湾曲部分の第2接続湾曲部分から第2直線部分へなめらかに進む。また、第2引裂き誘導線(直線部分)では、第1引裂き誘導線の第3普通領域に引裂きの方向において対応する第4普通領域より、その第4普通領域に続いていき、第1引裂き誘導線の第3特別領域に引裂きの方向で対応する第4特別領域のほうが引裂き易い。
【0017】
第1フィルムでの第1引裂き誘導線に誘導される引裂きが湾曲部分から第2直線部分に移行する際に、分かれていた第1フィルムでの引裂き方向と、第2フィルムでの第2引裂き誘導線の直線部分に誘導される引裂き方向とが合致する。それら分かれていた第1フィルムでの引裂き方向と第2フィルムでの引裂き方向が合致する際には、第1フィルムでは湾曲部分の引裂きがなめらかに進むとともに、第1フィルム及び第2フィルムの2つの引裂きは、より引裂き易い第3特別領域及び第4特別領域を進む。
【0018】
本発明に係る包装袋において、前記第2接続湾曲部分の曲率半径は、前記主湾曲部分の曲率半径より小さい、構成とすることができる。
【0019】
また、本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線における前記第3特別領域は、前記第2直線部分のその中心点までの間隔よりも前記第2接続湾曲部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第3所定点から、前記湾曲部分のその中心点までの間隔よりも前記第2直線部分との前記境界点までの間隔のほうが小さい第4所定点までの領域である、構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、第1引裂き誘導線において、より深い及び又は太い第3特別領域の長さが第2直線部分及びそれから続いて湾曲部分の中心点に至る長さの半分より小さくなる。このため、包装袋における落下強度、デザイン性、及び加工時間のいずれについても、大きく損なわれることを防止することができる。
【0021】
本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線の前記第3所定点は、前記第2直線部分と前記第2接続湾曲部分との境界点である、構成とすることができる。
【0022】
このような構成により、第3所定点から第2直線部分と第2接続湾曲部分との境界点までの長さが実質的にゼロになり、より深い及び又は太い第3特別領域が更に少なくなるので、包装袋における落下強度、デザイン性、及び加工時間のいずれについても、更に好ましいものとなる。
【0023】
本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線において、前記湾曲部分における前記第1特別領域と前記第3特別領域との間の領域は、前記第1特別領域及び前記第3特別領域それぞれの線状溝より浅い及び又は細い線状溝で形成され、前記第2引裂き誘導線において、前記第1引裂き誘導線の前記第1特別領域と前記第3特別領域との間の領域に引裂きの方向において対応する領域は、前記第2特別領域及び前記第4特別領域それぞれの線状溝より浅い及び又は細い線状溝で形成された、構成となる。
【0024】
このような構成により、湾曲部分におけるより浅い及び又は深い線状溝で形成される領域が広くなるので、包装袋における落下強度、デザイン性、及び加工時間のいずれについても、大きく損なわれることを防止することができる。
【0025】
本発明に係る包装袋において、前記第1フィルム及び第2フィルムのそれぞれは、表面層、内面層、及び前記表面層と前記内面層との間に位置する中間層にて形成され、前記第1特別領域、前記第2特別領域、前記第3特別領域、及び前記第4特別領域のそれぞれの線状溝は、前記中間層の半分の深さより深い、構成とすることができる。
【0026】
このような構成により、比較的深い線状溝となる第1特別領域、第2特別領域、第3特別領域、及び第4特別領域のそれぞれを、比較的容易に形成することができる。
【0027】
また、本発明に係る包装袋において、前記内面層の厚さは、100μmより小さくない、構成とすることができる。
【0028】
フィルムの厚さに大きく影響する内面層の厚さが100μmより小さくない層構成のフィルムを用いた包装袋では、第1引裂き誘導線及び第2引裂き誘導線を部分的に深い及び又は太い線状溝で構成することとで、良好な引裂き開封特性を得ることができる。
【0029】
本発明に係る包装袋において、前記第1引裂き誘導線は、前記引裂き開始部を囲むとともに、前記第1直線部分と交差する補助誘導線を有し、前記補助誘導線において、前記第1直線部分との交差点を含む所定領域は、他の領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝にて形成され、前記第2引裂き誘導線は、前記引裂き開始部を囲むとともに、前記直線部分と交差し、前記第1引裂き誘導線側の前記補助誘導線に重なる補助誘導線を有し、当該補助誘導線において、前記直線部分との交差点を含む所定領域は、他の領域の線状溝より深い及び又は太い線状溝にて形成された、構成とすることができる。
【0030】
このような構成によれば、引裂き開始部から開始される包装袋(第1フィルム、第2フィルム)の引裂きが、第1フィルム側において、第1引裂き誘導線の第1直線部分から逸脱したとしても、補助誘導線に達すると、その補助誘導線を進んで、深い及び太い線状溝の所定領域から確実に第1直線部分に戻り、その後、第1直線部分に誘導されて進む。第2フィルムでの引裂きも、前記第1フィルム側での引裂きの第1引裂き誘導線の第1直線部分からの逸脱に連れて、第2引裂き誘導線の直線部分から逸脱したとしても、補助誘導線に達すると、その補助誘導線を進んで、深い及び太い線状溝の所定領域から確実に直線部分に戻り、その後、直線部分に誘導されて進む。
【0031】
本発明に係る引裂き誘導線形成方法は、前述した包装袋の引裂き誘導線を形成する方法であって、前記第1フィルムに前記第1引裂き誘導線を形成するに際し、レーザ光を照射して、前記第1直線部分の前記第1普通領域から前記第1特別領域までの線状溝を形成する第1ステップと、レーザ光を照射して、前記第1特別領域から前記第3特別領域までの線状溝を形成する第2ステップと、レーザ光を照射して、前記第3特別領域から前記第2直線部分の前記第3普通領域までの線状溝を形成する第3ステップと、有する構成とすることができる。
【0032】
このような構成によれば、第1フィルムに第1引裂き誘導線を形成するに際して、第1特別領域及び第3特別領域それぞれを照射されるレーザ光をオーバーラップさせて形成することができるので、第1特別領域及び第3特別領域を容易に深い線状溝として形成することができる。また、オーバーラップさせる際に、レーザ光の戻しの量(第1特別領域及び第3特別領域それぞれの長さに相当)をより少なくすることができるので、第1引裂き誘導線の線状溝を効率的に形成することができる。
【0033】
本発明に係る引裂き誘導線形成方法は、前述した包装袋の引裂き誘導線を形成する方法であって、前記第2フィルムに前記第2引裂き誘導線を形成するに際し、レーザ光を照射して、前記直線部分の第2普通領域から第2特別領域までの線状溝を形成する第1ステップと、レーザ光を照射して、前記直線部分の前記第2特別領域から前記第4特別領域までの線状溝を形成する第2ステップと、レーザ光を照射して、前記直線部分の前記第4特別領域から前記第4普通領域までの線状溝を形成する第3ステップと、を有する、構成となる。
【0034】
このような構成により、第2フィルムに第2引裂き誘導線を形成するに際して、第2特別領域及び第4特別領域それぞれを照射されるレーザ光をオーバーラップさせて形成することができるので、第2特別領域及び第4特別領域を容易に深い線状溝として形成することができる。また、オーバーラップさせる際に、レーザ光の戻しの量(第2特別領域及び第4特別領域それぞれの長さに相当)をより少なくすることができるので、第2引裂き誘導線の線状溝を効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る包装袋によれば、引裂き開始部から第1引裂き誘導線及び第2引裂き誘導線に誘導されつつ第1フィルム及び第2フィルムが引裂かれる過程で、その第1フィルムでの引裂き方向と第2フィルムでの引裂き方向が分かれる際には、その引裂きは、第1直線部分からなめらかに湾曲部分の第1接続湾曲部分に進むとともに、第1フィルム及び第2フィルムの2つの引裂きが、より引裂き易い第1特別領域及び第2特別領域を進む。このため、その第1フィルムでの引裂き方向と第2フィルムでの引裂き方向が分かれる際に、第1フィルム(または第2フィルム)の引裂きが、第2フィルム(または第1フィルム)の引裂きに影響されにくく、第1引裂き誘導線(または第2引裂き誘導線)から逸脱し難くなる。よって、表裏の2枚のフィルムのそれぞれに形成された引裂き誘導線に沿って適正に引裂いて開封することができる。
【0036】
また、本願発明(請求項5)に係る包装袋によれば、更に、分かれていた第1フィルムでの第1引裂き誘導線の湾曲部分に誘導される引裂き方向と、第2フィルムでの第2引裂き誘導線の直線部分に誘導される引裂き方向とが合致する際に、その引裂きは、湾曲部分の第2接続湾曲部分から第2直線部分からなめらかに進むとともに、第1フィルム及び第2フィルムの2つの引裂きは、より引裂き易い第3特別領域及び第4特別領域を進む。このため、その第1フィルムでの引裂き方向と第2フィルムでの引裂き方向が合致する際に、第1フィルム(または第2フィルム)の引裂きが、第2フィルム(または第1フィルム)の引裂きに影響されにくく、第1引裂き誘導線(または第2引裂き誘導線)から逸脱し難くなる。よって、表裏の2枚のフィルムのそれぞれに形成された引裂き誘導線に沿って適正に引裂いて開封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る包装袋の要部を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す包装袋を構成する表側フィルム(第1フィルム)及び裏側フィルム(第2フィルム)のそれぞれの層構成の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1引裂き誘導線における主誘導線の湾曲部分の詳細な形状を拡大して示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す包装袋に形成される第1引裂き誘導線及び第2引裂き誘導線を拡大して示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第1引裂き誘導線における第1特別領域を拡大して示す図である。
【
図5B】
図5Bは、第1引裂き誘導線における第3特別領域を拡大して示す図である。
【
図6A】
図6Aは、第1引裂き誘導線の主誘導線の形成方法を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示す方法にて形成された第1引裂き誘導線の主誘導線を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、第2引裂き誘導線の主誘導線の形成方法を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示す用法にて形成された第2引裂き誘導線の主誘導線を示す図である。
【
図8】
図8は、1回のレーザ照射にて形成される第1引裂き誘導線及び第2引裂き誘導線(線状溝)の断面形状を示す断面図である。
【
図9】
図9は、複数回(2回)のレーザ照射にて形成される第1引裂き誘導線及び第2引裂き誘導線(線状溝)の断面形状を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示す包装袋を開封する際の第1フィルム及び第2フィルムの引裂かれ方の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、包装袋の引裂きについての実験結果を示す図である。
【
図12】
図12は、
図10に示す引裂かれ方により引裂き開封された包装袋の開封切り口を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0039】
本発明の実施の形態に係る包装袋は、
図1に示すように構成される。
【0040】
図1において、この包装袋100は、例えば、プラスチックファスナ付きパウチであって、表側フィルム100a(第1フィルム)と裏側フィルム100b(第2フィルム)とが、それぞれの周縁部を接合させて袋状に形成されている。表側フィルム100a及び裏側フィルム100bのそれぞれは、例えば、
図2に示すように、ポリエチレンテレフタレートで形成されたPET層101(表面層)、ポリアミド合成樹脂であるナイロンで形成されたNY層102(中間層)及びポリエチレンで形成されたPE層103(内面層)が積層された構造となっている。PET層101は、透明性が高く、伸び縮みし難い寸法安定性に優れた性質を有し、印刷層として好適である。NY層102は、衝撃や折り曲げに強く、孔が開き難い性質を有し、強度確保のための層である。PE層103は、100℃~130℃程度の温度で溶融する性質を有し、熱溶着に適したシーラント層としての層である。
【0041】
このようにPET層101(表面層)及びPE層103(内面層)が表裏の最も外側に配置されるとともにNY層102(中間層)がそれらの内側に配置された構造の表側フィルム100a及び裏側フィルム100bは、それぞれのPE層103を対向させた状態で表側フィルム100a及び裏側フィルム100bのそれぞれの周縁部のPE層103が熱溶着されて(接合され)、袋状に形成される。これにより、PE層103(内面層)を内側にして、
図1に示すように、周辺のシール部(接合部)16、17、18(シール部18に対向する下側のシール部は省略)により封止された包装袋100が形成される。
【0042】
図1に戻って、包装袋100には、上側のシール部18から下方に所定距離だけ離れた位置に、横方向で対向する2つのシール部16、17の間で直線的に延びる、プラスチックファスナ19が設けられている。このプラスチックファスナ19は、公知の構造であって開閉自在である。プラスチックファスナ19を境にして、上側のシール部18と反対側の部分に内容物(例えば、飲食物)の収容部が形成されている。開封後は、プラスチックファスナ19を開放することにより、収容部から内容物を取り出すことができる。一方、プラスチックファスナ19を閉鎖することにより、内容物が収容された収容部を密封することができる。
【0043】
なお、底部にガゼット部が設けられている包装袋100の場合には、表側フィルム100a及び裏側フィルム100bのそれぞれの上側の周縁部は、プラスチックファスナ19を開放した状態で収容部に内容物を収容した後に、プラスチックファスナ19を閉鎖して収容部を密封した状態でシールされ、上側のシール部18が形成される。また、包装袋100がガゼット部を有さない平パウチの場合には、表側フィルム100a及び裏側フィルム100bのそれぞれの上側のシール部18が形成された後、下側の周縁部より内容物を収容し、下側のシール部(図示略)が形成される。
【0044】
また、
図1において、表側フィルム100aに第1引裂き誘導線10が形成されるとともに、裏側フィルム100bに第2引裂き誘導線20が形成されている。包装袋100の左側のシール部16(第1接合部)に左ノッチ15a(引裂き開始部)が形成されている。包装袋100の右側のシール部17(第2接合部)には右ノッチ15b(引裂き開始部)が、左ノッチ15aに対向するように形成されている。第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線20のそれぞれは、シール部16の外縁線から反対側のシール部17の外縁線まで延びている。
【0045】
表側フィルム100aに形成される第1引裂き誘導線10は、シール部16の外縁線からシール部17の外縁線まで延びる主誘導線11、シール部16の左ノッチ15a及び主誘導線11の端部を囲んでその主誘導線11に交差するように形成された第1補助誘導線12a、及びシール部17の右ノッチ15b及び主誘導線11の端部を囲んで主誘導線11に交差するように形成された第2補助誘導線12bを含む。また、裏側フィルム100bに形成される第2引裂き誘導線20は、シール部16の外縁線からシール部17の外縁線まで直線状に延びる主誘導線21、シール部16の左ノッチ15a及び主誘導線21の端部を囲んで主誘導線21に交差するように形成された第1補助誘導線22a、及びシール部17の右ノッチ15b及び主誘導線21の端部を囲んで主誘導線21に交差するように形成された第2補助誘導線22bを含む。
【0046】
なお、左ノッチ15a及び右ノッチ15bは、表裏の主誘導線11及び主誘導線21の端部に重なるように形成されるが、製造条件のばらつき等により、左ノッチ15aと主誘導線11若しくは主誘導線21が、または、右ノッチ15bと主誘導線11若しくは主誘導線21が、正確に重ならない場合があり得る。
【0047】
包装袋100(表側フィルム100a、裏側フィルム100b)を、左ノッチ15aから始まる引裂き方向(幅方向)に、3つの領域、第1領域E1、第2領域E2及び第3領域E3に略均等に分ける場合、第1領域E1では、表側フィルム100aにおける第1補助誘導線12a及び主誘導線11の直線部分111(第1直線部分)の組と、裏側フィルム100bにおける第1補助誘導線22a及び主誘導線21の直線部分211の組とが、同じ形状であって、相互に重なっている。第2領域E2では、表側フィルム100aの主誘導線11は、第1領域E1の直線部分111からなめらかに続いて、プラスチックファスナ19側に(包装袋100の下方側に)突出するように湾曲した湾曲部分112になるとともに、裏側フィルム100bの主誘導線21は、第1領域E1の直線部分211からそのままつづく直線部分212になっている。このように、第2領域E2では、表側フィルム100aにおける主誘導線11(湾曲部分212)と、裏側フィルム100bにおける主誘導線21(直線部分212)とは、重なることなく分かれている。また、第3領域E3では、第1領域E1と同様に、表側フィルム100aにおける第2補助誘導線12b及び主誘導線11の直線部分113(第2直線部分)の組と、裏側フィルム100bにおける第2補助誘導線22b及び主誘導線21の直線部分213の組とが、同じ形状であって、相互に重なっている。
【0048】
第1引裂き誘導線10における主誘導線11の湾曲部分112の更に詳細な形状は、
図3に示される。
【0049】
図3において、曲線部分112は、直線部分111からなめらかに続き、包装袋100において上側のシール部18(
図1参照)側(
図3において上方)に凸となるよう湾曲した円弧状の第1接続湾曲部分1121と、その第1接続湾曲部分1121から更になめらかに続き、第1接続湾曲部分1121の湾曲方向と逆側に湾曲した円弧状の主湾曲部分1120とを有する。湾曲部分112は、更に、主湾曲部分1120から直線部分113(第2直線部分)になめらかに続き、主湾曲部分1120の湾曲方向とは逆側に湾曲した円弧状の第2接続湾曲部分1122を有する。第1接続湾曲部分1121及び第2接続湾曲部分1122それぞれの湾曲度合いを表すその曲率半径R2は、それら接続湾曲部分1121、1122の間に位置する主湾曲部分1120の湾曲度合いを表すその曲率半径R1より小さい(R2<R1:湾曲の度合いが大きい)。例えば、包装袋100(表側フィルム100a、及び裏側フィルム100b)の幅が160mmであって、湾曲部分112の幅が53mmの場合、第1接続湾曲部分1121及び第2接続湾曲部分1122それぞれの曲率半径R2は、28.5mmに設定され、主湾曲部分1120の曲率半径R1は、90mmに設定される。
【0050】
このような第1接続湾曲部分1121、主湾曲部分1120、及び第2接続湾曲部分1122がなめらかに接続した形状の曲線部分112は、緩やかな曲線として構成される。このため、第1フィルム100aをその湾曲部分112に沿って抵抗感少なく引裂くことができ、その引裂きが湾曲部分112から逸脱し難いものとなる。
【0051】
次に、上述したような形状となる湾曲部分112を含む第1引裂き誘導線10と直線部分211、212、213を含む第2引裂き誘導線20とは、更に詳細には、
図4、
図5A及び
図5Bに示すように構成される。
【0052】
図4において、第1引裂き誘導線10の主誘導線11は、シール部16の外縁線から延びる直線部分111(第1直線部分)、その直線部分111から続いて湾曲して延びる湾曲部分112(第1接続湾曲部分1121を介して)、及びその湾曲部分112から続いてシール部17の外縁線まで延びる直線部分113(第2直線部分)にて構成される。このような第1引裂き誘導線10(主誘導線11)において、
図5Aに拡大して示すように、直線部分111のその中心点までの間隔Lc1よりも湾曲部分112(第1接続湾曲部分1121:
図3参照)との境界点(直線部分111の端と湾曲部分112(第1接続湾曲部分1121)の端の重なった点)までの間隔(実質ゼロ)のほうが小さい第1所定点としてのその境界点P1そのものから、湾曲部分112の第2所定点P2までの領域が第1特別領域112aとして設定される。この第1特別領域112aは、直線部分111(第1直線部)の左ノッチ15aから第1特別領域112a(端点P1)までの第1普通領域、即ち、直線部分111全体の線状溝より深い線状溝で形成される。前記第2所定点P2は、
図5Aに拡大して示すように、湾曲部分112のその中心点Poまでの間隔Ls2よりも直線部分111との境界点P1までの間隔Ls1のほうが小さい点に決められる。即ち、湾曲部分112において、直線部分111(第1直線部分)との境界点P1と第2所定点P2との間隔Ls1(深い線状溝として形成される第1特別領域112aに対応)は、直線部分111との境界点P1とその中心点Poとの間隔Loの1/2より小さい。
【0053】
一方、
図4に戻って、第2引裂き誘導線20(主誘導線21)の直線部分(211、212、213)において、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)の第1特別領域112aに左ノッチ15aからの引裂き方向Dtにおいて対応する領域が第2特別領域212aとして設定される。この第2特別領域212aは、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)における直線部分111(第1普通部分)に引裂き方向Dtにおいて対応する直線部分211(第2普通領域)の線状溝より深い線状溝にて形成される。
【0054】
また、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)において、
図5Bに拡大して示すように、直線部分113(第2直線部分)のその中心点までの間隔Lc2よりも湾曲部分112(第2接続湾曲部分1122:
図3参照)との境界点までの間隔(実質間隔ゼロ)のほうが小さい第3所定点としてのその境界点P3そのものから、湾曲部分112の第4所定点P4までの領域が第3特別領域112bとして設定される。この第3特別領域112bは、直線部分113(第2直線部分)の右ノッチ15bから第3特別領域112bまでの第3普通領域、即ち、直線部分113全体の線状溝より深い線状溝で形成される。前記第4所定点P4は、
図5Bに拡大して示すように、湾曲部分112のその中心点Poまでの間隔Ls4よりも直線部分113(第2直線部分)との境界点P3までの間隔Ls3のほうが小さい点に決められる。即ち、湾曲部分112において、直線部分113との境界点P3と第4所定点P4との間隔Ls3(深い線状溝として形成される第3特別領域112bに対応)は、直線部分113との境界点P3とその中心点Poとの間隔Loの1/2より小さい。
【0055】
一方、
図4に戻って、第2引裂き誘導線20(主誘導線21)の直線部分(211、212、213)において、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)の第3特別領域112bに引裂き方向Dtにおいて対応する領域が第4特別領域212bとして設定される。この第4特別領域212bは、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)における直線部分113(第3普通領域)に引裂き方向Dtにおいて対応する直線部分213(第4普通領域)の線状溝より深い線状溝にて形成される。
【0056】
なお、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)において、湾曲部分112の第1特別領域112aと第3特別領域112bとの間の領域(
図4における第2所定点P2と第4所定点P4との間の領域)は、直線部分111(第1直線部分:第1普通領域)及び直線部分113(第2直線部分:第3普通領域)と同様に、第1特別領域112a及び第3特別領域112bそれぞれの線状溝より浅い線状溝にて形成される。また、第2引裂き誘導線20(主誘導線21)において、第2特別領域212aと第4特別領域212bとの間の領域(直線部分212に含まれる)は、直線部分211(第2普通領域)及び直線部分213(第4普通部分)と同様に、第2特別領域212a及び第4特別領域212bそれぞれの線状溝より浅い線状溝にて形成される。
【0057】
上述した第1引裂き誘導線10の主誘導線11は、例えば、レーザ光の照射によって表側フィルム100aに線状溝として形成される。
【0058】
具体的には、
図6Aに示すように、工程(1)、(2)、(3)の順番に、部分的にオーバーラップさせながら、直線から湾曲線の一端部に続く第1部分11(1)、湾曲線の第2部分11(2)、湾曲線の他端部から直線に続く第3部分11(3)の3回に分けてレーザ光の照射を行う。レーザ光の2回の照射を受けるオーバーラップした部分(P1-P2間、P4-P3間)は、レーザ光の1回の照射しか受けない他の部分の線状溝より深い線状溝として形成される。これにより、
図6Bに示すように、湾曲部分112の両端部に位置する第1特別領域112a(P1-P2間に対応)及び第3特別領域112b(P4-P3間に対応)のそれぞれが、直線部分111(第1直線部分:第1普通領域)の線状溝、直線部分113(第2直線部分:第3普通領域)の線状溝、及び湾曲部分112の第1特別領域112aと第3特別領域112bとの間の領域の線状溝のいずれよりも深い線状溝にて形成される。
【0059】
また、第2引裂き誘導線20の主誘導線21も、同様に、レーザ光の照射によって裏側フィルム100bに線状溝として形成される。
【0060】
具体的には、
図7Aに示すように、工程(1)、(2)、(3)の順番に、部分的にオーバーラップさせながら、3つの直線部分21(1)、21(2)、21(3)の3回に分けてレーザ照射を行う。この場合も、レーザ光の2回の照射を受けるオーバーラップした部分は、レーザ光の1回の照射しか受けない他の部分の線状溝より深い線状溝として形成される。これにより、
図7Bに示すように、中央の直線部分212の両端部に位置する第2特別領域212a及び第4特別領域212bのそれぞれが、直線部分211の線状溝、直線部分213の線状溝、及び直線部分212の第2特別領域212aと第4特別領域212bとの間の領域の線状溝のいずれよりも深い線状溝にて形成される。
【0061】
表側フィルム100a及び裏側フィルム100bにおいて、レーザ光の1回の照射により形成される線状溝110(直線部分111、113、湾曲部分112の一部、直線部分211、213、直線部分212の一部に対応)は、
図8に示すように、PET層101(表面層)からNY層102(中間層)に至る深さを有する。また、表側フィルム100a及び裏側フィルム100bにおいて、レーザ光の2回の照射により形成される線状溝120(第1特別領域112a、第2特別領域212a、第3特別領域112b、第4特別領域212b)は、NY層102(中間層)の半分より深い深さ、例えば、
図9に示すように、PET層101(表面層)からNY層102(中間層)とPE層103(内面層)との境界に至る深さを有する。
【0062】
なお、第1引裂き誘導線10において、左ノッチ15a及び主誘導線11の端部を囲むように形成された第1補助誘導線12a及び右ノッチ15b及び主誘導線11の端部を囲むように形成された第2補助誘導線12bのそれぞれの主誘導線11との交点を含む所定領域121a、121b(
図4参照)は、他の領域の線状溝(レーザ光1回照射)より深い線状溝(レーザ光2回照射)にて形成される。また、第2引裂き誘導線20において、左ノッチ15a及び主誘導線21の端部を囲むように形成された第1補助誘導線22a及び右ノッチ15b及び主誘導線21の端部を囲むように形成された第2補助誘導線22bのそれぞれの主誘導線21との交点を含む所定領域221a、221b(
図4参照)も、他の領域の線状溝より深い線状溝にて形成される。
【0063】
前述した構造の包装袋100は、例えば、
図10に示すように開封することができる。
【0064】
図10において、シール部16の左ノッチ15aから、反対側のシール部17に向けて、包装袋100(表側フィルム100a、裏側フィルム100b)を引裂き始めると、第1領域E1において、表側フィルム100aでの引裂きは、主誘導線11の直線部分111に誘導されつつ進む。前記引裂きが、直線部分111(主誘導線11)から逸脱したとしても、第1補助誘導線12aに達すると、その第1補助誘導線12aを進んで深い線状溝の所定領域121a(
図4参照)から確実に主誘導線11の直線部分111に戻り、その後、その直線部分111に誘導されつつ進む。このとき、裏側フィルム100bでの引裂きも、同様に、主誘導線21の直線部分211に誘導されつつ進み、その引裂きがその直線部分211(主誘導線21)から逸脱したとしても、第1補助誘導線22aを進んで深い線状溝の所定領域221a(
図4参照)から確実に直線部分211に戻り、その直線部分211に誘導されつつ進む。
【0065】
第1領域E1は、表側フィルム100aにおける第1補助誘導線12a(10)及び主誘導線11(10)の直線部分111の組と、裏側フィルム100bにおける第1補助誘導線22a(20)及び主誘導線21(20)の直線部分211の組とが同じ形状で重なっている。このため、第1領域E1での包装袋100の引裂きでは、表側フィルム100a及び裏側フィルム100bは、同時的に、その重なった2つの引裂き誘導線(12a(10)、22a(20)、111、211)に誘導されつつ、実際の引裂き線(
図10におけるLa、Lb参照)がずれることなく重なって引裂かれていく。
【0066】
包装袋100の引裂きが、第1領域E1から第2領域E2に移ると、表側フィルム100aの引裂きは、主誘導線11(10)の直線部分111から湾曲部分112に移り、湾曲部分112に誘導されつつ進む。一方、裏側フィルム100bの引裂きは、主誘導線21(20)の直線部分211から引き続き直線部分212に移り、その直線部分212に誘導されつつ進む。
【0067】
第2領域E2は、表側フィルム100aにおける主誘導線11(10)の湾曲部分112と、裏側フィルム100bにおける主誘導線21(20)の直線部分212とが、異なる形状で重なることなく分離している。このため、第2領域E2での包装袋100の引裂きでは、表側フィルム100a及び裏側フィルム100bは、重なることのない分離した2つの引裂き誘導線(主誘導線11(10)の湾曲部分112、主誘導線21(20)の直線部分212)に誘導されつつ、実際の引裂き線(
図10におけるLa、Lb参照)がずれた状態で引裂かれていく。
【0068】
包装袋100の引裂きが、第2領域E2から第3領域E3に移ると、表側フィルム100aの引裂きは、主誘導線11(10)の湾曲部分112から直線部分113に移り、主誘導線11(10)の直線部分113に誘導されつつ進む。そして、その引裂きが主誘導線11(10)の直線部分113に誘導されつつ、シール部17の外縁線に達する。一方、裏側フィルム100bの引裂きも同様に、主誘導線21(20)の直線部分212から引き続き直線部分213に移り、主誘導線21(20)の直線部分213に誘導されつつ進む。そして、その引裂きが主誘導部21(20)の直線部分213に誘導されつつ、シール部17の外縁線に達する。
【0069】
第3領域E3は、第1領域E1と同様に、表側フィルム100aにおける主誘導線11(10)の直線部分113と、裏側フィルム100bにおける主誘導線21(20)の直線部分213とが同じ形状(直線)で重なっている。このため、第3領域E3での包装袋100の引裂きでは、表側フィルム100a及び裏側フィルム100bは、同時的に、2つの重なった引裂き誘導線(直線部分113、直線部分213)に誘導されつつ実際の引裂き線(
図10におけるLa、Lb参照)がずれずに重なって引裂かれていき、その引裂きは一気に、シール部17の外縁線に達する。
【0070】
上述した包装袋100の引裂きでは、表側フィルム100aの第1引裂き誘導線10の主誘導線11に誘導される引裂きが直線部分111(第1直線部分)から湾曲部分112に移行する。その際、その表側フィルム100aでの引裂き方向と、裏側フィルム100bでの第2引裂き誘導線20の主誘導線21における直線部分211から直線部分212に誘導される引裂き方向とが分かれる。その表側フィルム100aでの引裂き方向と裏側フィルム100bでの引裂き方向とが分かれる際には、表側フィルム100aにおいて緩やかな曲線部分112(第1接続湾曲部分1121、主湾曲部分1120:
図3参照)に誘導されて引裂きがなめらかに進むとともに、その表側フィルム100a及び裏側フィルム100bの2つの引裂きは、深い線状溝で形成されてより引裂き易い第1特別領域112a及び第2特別領域212a(
図4参照)を進む。このため、その表側フィルム100aでの引裂き方向と裏側フィルム100bでの引裂き方向が分かれる際に、表側フィルム100a(または裏側フィルム100b)の引裂きは、裏側フィルム100b(または表側フィルム100a)の引裂きに影響され難く、第1引裂き誘導線10の主誘導線11(または第2引裂き誘導線20の主誘導線21)から逸脱し難い。
【0071】
また、表側フィルム100aの第1引裂き誘導線10の主誘導線11に誘導される引裂きが更に進んで湾曲部分112から直線部分113(第2直線部分)に進む。その際、分かれていた表側フィルム100aの引裂き方向と、裏側フィルム100bの第2引裂き誘導線20の主誘導線21における直線部分212から直線部分213に移って誘導される引裂き方向とが合致する。それら分かれていた表側フィルム100aの引裂き方向と裏側フィルム100bでの引裂き方向とが合致する際には、表側フィルム100aにおいて緩やかな曲線部分112(主湾曲部分1120、第2接続湾曲部分1122:
図3参照)に誘導されて引裂きがなめらかに進むとともに、その表側フィルム100a及び裏側フィルム100bの2つの引裂きは、より引裂き易い第3特別領域112b及び第4特別領域212bを進む(
図4参照)。このため、その表側フィルム100aでの引裂き方向と裏側フィルム100bでの引裂き方向が合致する際に、表側フィルム100a(または裏側フィルム100b)の引裂きが、裏側フィルム100b(または表側フィルム100a)の引裂きに影響され難く、第1引裂き誘導線10の主誘導線11(または第2引裂き誘導線20の主誘導線21)から逸脱し難い。
【0072】
よって、上述した包装袋100によれば、表側フィルム100aに形成される第1引裂き誘導線10の主誘導線11及び裏側フィルム100bに形成される第2引裂き誘導線20の主誘導線21が相互に重ならない部分(湾曲部分112、直線部分212)を含んでいても、それら第1引裂き誘導線10(主誘導線11)及び第2引裂き誘導線20(主誘導線21)のいずれからも逸脱することなく誘導されつつ適正に引裂いて開封することができる。
【0073】
ところで、適正に引裂き開封ができるという観点からは、第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線20の全体を深い及び又は太い線状溝で形成することが好ましい。しかし、引裂き誘導線の全体を深い及び又は太い線状溝で形成すると、落下強度が低下し、特に、プラスチックファスナ19の無い、かつ、比較的大きい容量の平パウチの場合、落下強度の問題が顕在化してしまう。また、引裂き誘導線全体が深い及び又は太い線状溝で形成されると、包装袋100の表面絵柄のデザイン性を損なう可能性があり、また、レーザ光の照射回数を全体的に増やす等、加工時間も増大してしまう。
【0074】
しかし、前述した包装袋100では、表裏2枚のフィルム100a、100bのそれぞれに形成される引裂き誘導線10、20の一部分(第1特別領域112a、第2特別領域212a、第3特別領域112b、第4特別領域212b)だけを深い及び又は太い線状溝に形成するので、落下強度、デザイン性、及び加工時間のいずれについて、大きく損なわれるものとはならない。
【0075】
以下の包装袋1~包装袋5について、引裂き開封性能について実験を行った。その結果を
図11に示す。
【0076】
・包装袋1:
透明蒸着PETで形成された12μm厚のPET層(表面層)
ナイロンで形成された15μm厚のNY層(中間層)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成された130μm厚のPE層(内面層)
・包装袋2:
透明蒸着PETで形成された12μm厚のPET層(表面層)
ナイロンで形成された15μm厚のNY層(中間層)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成された150μm厚のPE層(内面層)
・包装袋3:
PETで形成された12μm厚のPET層(表面層)
アルミ蒸着のPETで形成された12μm厚のPET層(中間層)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成された110μm厚のPE層(内面層)
・包装袋4:
PETで形成された12μm厚のPET層(表面層)
ナイロンで形成された15μm厚のNY層(中間層)
アルミ箔で形成された7μm厚のアルミ層(内面層)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成された60μm厚のPE層(内面層)
・包装袋5:
ナイロンで形成された15μm厚のNY層(表面層)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成された80μm厚のPE層(内面層)
【0077】
包装袋1、包装袋2、包装袋3、及び包装袋5のそれぞれについて、実施の形態で示したように第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線20のそれぞれを部分的にレーザ光の2回照射によって形成したもの(以下、湾曲部分2回加工品という)を10枚、及び、引裂き誘導線の全ての部分をレーザ光の1回の照射で形成したもの(以下、湾曲部分1回加工品という)を10枚用意して、それらを実際に引裂いてみた。また、包装袋4については、湾曲部分1回加工品を160枚用意して、それらを実際に引裂いてみた。
【0078】
その結果、
図11に示すように、包装袋1については、湾曲部分1回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて正常に開封できたものが10枚のうち5枚であった(開封成功率50%)のに対して、湾曲部分2回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて正常に開封できたものが10枚のうち9枚であった(開封成功率90%)。包装袋2については、湾曲部分1回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて正常に開封できたものが10枚のうち6枚であった(開封成功率60%)のに対して、湾曲部分2回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて正常に開封できたものが10枚のうち9枚であった(開封成功率90%)。また、包装袋3については、湾曲部分1回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて開封できたものが10枚のうち3枚であった(開封成功率30%)のに対して、湾曲部分2回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて正常に開封できたものが10枚のうち9枚であった(開封成功率90%)。
【0079】
更に、包装袋4については、湾曲部分1回加工品で、引裂き誘導線に誘導されて開封できたものが、160枚のうち156枚(開封成功率97.5%)であった。また、包装袋5については、湾曲部分1回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて開封できたものが10枚のうち9枚であり(開封成功率90%)、湾曲部分2回加工品では、引裂き誘導線に誘導されて開封できたものが10枚のうち10枚であった(開封成功率100%)。
【0080】
上記実験結果から、表側フィルム100aに形成される第1引裂き誘導線10の主誘導線11及び裏側フィルム100bに形成される第2引裂き誘導線20の主誘導線21が相互に重ならない部分(湾曲部分112、直線部分212)を含んでいる包装袋(包装袋1~包装袋3参照)では、湾曲部分1回加工品では、正常な開封ができなくても、湾曲部分2回加工品であれば、それら第1引裂き誘導線10(主誘導線11)及び第2引裂き誘導線20(主誘導線21)のいずれからも逸脱することなく誘導されつつ適正に引裂いて開封することができる、ということが分かった。このように、第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線を部分的に(第1特別領域、第2特別領域、第3特別領域、第4特別領域)深い及び又は太い線状溝で構成する(湾曲部分2回加工)ことにより、その引裂き開封性能を改善することができることが分かった。
【0081】
また、比較的薄い表側フィルム100a及び裏側フィルム100bで形成される包装袋100(包装袋4、包装袋5)は、第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線20を部分的に深い及び又は太い線状溝で構成するまでもなく、その引裂き開封性能は良好である。従って、湾曲部分2回加工などにより第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線を部分的に深い及び又は太い線状溝で構成することは、比較的薄いフィルムで構成される包装袋にも勿論有効(例えば、包装袋5参照)ではあるが、一般に引裂き難いある程度の厚さのある表裏のフィルム100a、100bで構成される包装袋100(包装袋1~包装袋3参照)に対して、引裂き開封性能が改善されるという意味で、特に有効であることがわかる。包装袋を構成するフィルムの厚さは、内面層(PE層)の厚さに大きく依存する(
図11参照)。
図11に示す結果において、内面層の厚さが80μm(包装袋5参照)では、湾曲部分1回加工品及び湾曲部分2回加工品の双方において、引裂き開封性能に実質的な差が無く、ともに良好である一方、内面層の厚さが110μm以上の比較的厚い包装袋(包装袋1、包装袋2、包装袋3)では、湾曲部分2回加工等により第1引裂き誘導線及び第2引裂き誘導線20を部分的に深い及び又は深い線状溝で構成することの効果(引裂き開封性の改善)が明確に表れている。このことから、内面層の厚さが前記80μmと110μmの間の100μmより小さくない層構造のフィルムを用いた包装袋では、第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線20を部分的に深い及び又は太い線状溝で構成することで、良好な引裂き開封特性を得ることができると推察される。
【0082】
上述したように包装袋100が開封されると、
図12に示すように、表側フィルム100aの開封切り口の縁線Laが、主誘導線11(10)の直線部分111、湾曲部分112、直線部分113に対応するようになる(第1補助誘導線12a(10)が含まれる場合もある)。また、裏側フィルム100bの開封切り口の縁線Lbが、主誘導線21(20)の直線部分211、212、213に対応するようになる(第1補助誘導線22a(20)が含まれる場合もある)。ここで、第1引裂き誘導線10及び第2引裂き誘導線20の、第2領域E2(
図10参照)に対応した、主誘導線11(10)の湾曲部分112と主誘導線21(20)の直線部分212とが分離して重ならないように形成されているので、それら分離した部分(112、212)に対応した表側フィルム100aの開封切り口の縁線Laの部分と、裏側フィルム100bの開封切り口の縁線Lbの部分とは、重ならずに、量Δだけずれた状態になる。そして、それらずれた部分の裏側フィルム100bを摘んで開封された包装袋100を開き、プラスチックファスナ19を容易に開放することができる。
【0083】
なお、上述した包装袋100において、右側のシール部17に設けられた右ノッチ15bから引裂きを開始した場合であっても、包装袋100(表側フィルム100a、裏側フィルム100b)は、上述したのと同様に、第1引裂き誘導線10(主誘導線11)及び第2引裂き誘導線20(主誘導線21)のいずれからも逸脱することなく誘導されつつ適正に引裂いて開封することができる。
【0084】
また、上述した実施の形態では、表裏のフィルム100a、100bは、
図2に示すような3層構造であったが、これに限定されない。例えば、NY層102とPE層103との間に、ガス遮蔽性を有するアルミ等の金属層を設けるようにしてもよい。この場合、深い線状溝は、例えば、表面層のPET層からNY層102の半分より深い深さに形成することができる。また、中間層を複数の層で構成することや、更に他の層構成であってもよい。
【0085】
第1引裂き誘導線10の主誘導線11における前記第1特別領域112aは、湾曲部分112のその直線部分111との境界点P1(第1所定点)と第2所定点P2との間の領域、即ち、湾曲部分112内の領域であったが、直線部分111の中心点よりも湾曲部分112との境界点に近い第1所定点P1と湾曲部分112の第2所定点P2との間の領域、即ち、直線部分111内の第1所定点P1から湾曲部分112内の第2所定点P2につづく領域であってもよい。また、第3特別領域112bについても、同様に、直線部分113の中心点よりも湾曲部分112との境界点に近い第3所定点P3と湾曲部分112の第4所定点との間の領域、即ち、直線部分113内の第3所定点P3から湾曲部分112内の第4所定点P4につづく領域であってもよい。
【0086】
上述した実施の形態では、第1特別領域112a、第2特別領域212a、第3特別領域112b、第4特別領域212bのそれぞれは、レーザ光の照射回数を2回にてより深い線状溝にて形成したが、その照射回数は、2回に限定されない。その照射回数は、他の部分を形成するためのレーザ光の照射回数より多ければよい。また、当該他の部分に対するレーザ光の照射回数も1回に限定されず、前記各特別領域112a、212a、112b、212bを形成するためのレーザ光の照射回数より少なければよい。
【0087】
また、上述した実施の形態では、第1特別領域112a、第2特別領域212a、第3特別領域112b、第4特別領域212bのそれぞれは、レーザ光の照射回数を増やして、他の部分より深い線状溝にて形成したが、これに限られない。それら特別領域は、他の部分より太い線状溝、あるいは、深いかつ太い線状溝にて形成することもできる。
【0088】
また、それぞれ部分的に深い線状溝として形成される第1引裂き誘導線10の主誘導線11及び第2引裂き誘導線20の主誘導線21の形成方法は、
図6A、
図7Aに示す方法に限定されない。例えば、主誘導線11、21を1回の照射で形成し、その後、第1特別領域112a、第2特別領域212a、第3特別領域112b、第4特別領域212bに相当する部分に対して更にレーザ光を1回照射するようにしてもよい。
【0089】
更に、レーザ光の出力を高めたり、レーザ光を低速にて走査(移動)したりすることで、深い及び又は太い線状溝を形成することができる。また、少しずつずらしながらレーザ光を複数回走査(移動)することで、実質的に太い線状溝を形成することもできる。
【0090】
なお、本発明は、前述した実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から除外するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る包装袋は、表裏の2枚のフィルム(シート)のそれぞれに形成された引裂き誘導線(易開封線)に沿って適正に引裂いて開封することができるという効果を有し、易開封性を有する包装袋として有用である。
【符号の説明】
【0092】
10 第1引裂き誘導線
11 主誘導線
111 直線部分
112 湾曲部分
1120 主湾曲部分
1121 第1接続湾曲部分
1122 第2接続湾曲部分
112a 第1特別領域
112b 第3特別領域
113 直線部分
12a 第1補助誘導線
12b 第2補助誘導線
15a 左ノッチ
15b 右ノッチ
16、17、18 シール部
19 プラスチックファスナ
20 第2引裂き誘導線
21 主誘導線
212a 第2特別領域
212b 第4特別領域
211、212、213 直線部分
22a 第1補助誘導線
22b 第2補助誘導線
100 包装袋
100a 表側フィルム
100b 裏側フィルム
101 PET層
102 NY層
103 PE層