(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2726 20220101AFI20250311BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20250311BHJP
H02K 5/167 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
H02K1/2726
H02K21/14 M
H02K5/167 A
(21)【出願番号】P 2021030894
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 裕
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 朋広
(72)【発明者】
【氏名】関井 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 将寛
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏明
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-215294(JP,A)
【文献】特開2000-014065(JP,A)
【文献】特開平06-205554(JP,A)
【文献】特開平10-248222(JP,A)
【文献】特開2007-318962(JP,A)
【文献】特開平10-127004(JP,A)
【文献】特開2001-069738(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110994819(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2726
H02K 21/14
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心とするシャフトと、
前記シャフトの径方向外方に配置され、前記シャフトの上部を支持する上部軸受と、
前記上部軸受を保持する上部ブッシュと、
前記シャフトの外周面と径方向に対向するコイルを有するステータと、
を有し、
前記シャフトは、周方向に少なくとも2極以上でN極とS極とが交互に配置される着磁パターンを有し、
前記上部軸受の一部は、
前記上部ブッシュに対して上方に突出
し、
前記上部ブッシュは、前記上部軸受の下面と上下方向において接触する面を有する、モータ。
【請求項2】
前記ステータは、
前記コイルを構成し、軸方向に延びる筒状の空芯コイルと、
前記空芯コイルの径方向外方に配置され、軸方向に延びる筒状のバックヨークと、
を有し、
前記空芯コイルの外周面は、前記バックヨークの内周面に固定される、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記空芯コイルの上端と下端とは、前記バックヨークの上端と下端との軸方向間に配置される、請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ステータは、ステータコアを更に有し、
前記ステータコアは、
前記中心軸を中心とする環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向に内方に突出し、周方向に複数配列されるティースと、
を有し、
前記ティースは、
前記コイルを構成する導線が巻かれるティース本体部と、
前記ティース本体部の先端に配置され、周方向に拡がる傘部と、
を有する、請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記シャフトの径方向外方に配置され、前記シャフトの下部を支持する下部軸受を有し、
前記下部軸受を保持する下部ブッシュを更に有し、
前記下部ブッシュは、
軸方向と直交する方向に拡がるブッシュ底板部と、
前記ブッシュ底板部から上方に延び、径方向内方に配置される前記下部軸受を保持するブッシュ筒部と、
前記ブッシュ底板部から上方に突出し、前記シャフトの下端と軸方向に対向するブッシュ突起部と、
を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ブッシュ突起部の先端は、上方に凸となる球面である、請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記ブッシュ底板部は、軸方向に貫通する少なくとも1つのブッシュ貫通部を有し、
前記コイルの引出線は、前記ブッシュ貫通部を通って、前記下部ブッシュの下方に配置される回路基板に接続される、請求項5又は6に記載のモータ。
【請求項8】
前記ブッシュ筒部は、軸方向上端から下端まで延びる少なくとも1つのブッシュ切欠き部を有し、
前記ブッシュ切欠き部は、前記ブッシュ貫通部と軸方向に重なる、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ブッシュ筒部の外周面を囲む筒状体の内周面は、前記ブッシュ筒部の外周面と径方向に対向し、軸方向に延びる少なくとも1つの切欠き溝を有し、
前記切欠き溝は、前記ブッシュ貫通部と軸方向に重なる、請求項7に記載のモータ。
【請求項10】
前記切欠き溝の上端部は、軸方向において、前記コイルの下端部と前記ブッシュ筒部の上端部との間に位置する、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記シャフトの径方向外方に配置され、前記シャフトに固定される環状部材を更に有し、
前記環状部材は、前記コイルと前記上部軸受との軸方向間に配置され、前記上部軸受と軸方向に重なる、請求項1から10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
前記シャフトの径方向外方に配置され、前記シャフトに固定される環状部材を更に有し、
前記環状部材は、前記コイルと前記上部軸受との軸方向間に配置され、前記上部軸受と軸方向に重なり、
前記上部軸受と前記環状部材との軸方向距離は、前記ブッシュ突起部の上端と前記下部軸受の上端との軸方向距離よりも小さい、請求項5から10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項13】
前記シャフトの軸方向の磁気中心は、前記ステータの軸方向の磁気中心と一致する、請求項1から12のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項14】
前記シャフトの軸方向の磁気中心は、前記ステータの軸方向の磁気中心よりも、軸方向上方に位置する、請求項1から12のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項15】
前記ステータの径方向外方に配置され、前記ステータを囲むケースを更に有する、請求項1から14のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項16】
前記シャフトは、前記着磁パターンを形成する材料とは異なる材料で構成され、外周面に配置されるコーティング層を有する、請求項1から15のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項17】
前記シャフトの磁極パターンが形成される軸方向の範囲は、前記コイルと径方向に重なる範囲である、請求項1から16のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータと磁気的に相互作用する、軸線方向に伸びる筒状の永久磁石のシャフトとを含み、シャフトの一部に沿った滑らかな表面を有し、該表面に軸線方向に交互に配置された半径方向のN極およびS極が設けられている、リニアステッパーモータが知られる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、インナーロータ型のモータが知られる(例えば特許文献2参照)。インナーロータ型のモータは、ステータと、ステータに囲まれるロータとを含む。ロータは、磁石保持体を介して軸に取り付けられた複数個の永久磁石を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2004-521589号公報
【文献】特開2009-213348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、インナーロータ型のモータを用いたギヤードモータを小型化する場合、ギヤが取り付けられる軸が細くなり、軸にねじれが生じ易くなる可能性がある。また、小型化に伴い、モータの組み立てが難しくなる可能性がある。
【0006】
本開示は、インナーロータ型のモータの小型化に適した技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的なモータは、上下に延びる中心軸を中心とするシャフトと、前記シャフトを支持する軸受と、前記シャフトの外周面と径方向に対向するコイルを有するステータと、を有する。前記シャフトは、周方向に少なくとも2極以上でN極とS極が交互に配置される着磁パターンを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、インナーロータ型のモータの小型化に適した技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るモータの構成を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すモータを、中心軸を含む平面で切った縦断面図である。
【
図3】
図3は、シャフトの着磁パターンの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、下部ブッシュ及びその周辺を拡大して示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、下部ブッシュの構成を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、モータの上部の構成を拡大して示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、モータの好ましい構造を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係るモータの第1変形例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係るモータの第2変形例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係るモータの第3変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、
図1および
図2に示すモータ100の中心軸Aの延びる方向を単に「軸方向」と呼び、モータ100の中心軸Aを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。本明細書では、
図2に示す方向にモータ100を配置した場合の軸方向を上下方向と定義する。なお、上下方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。
【0011】
<1.モータの概要>
図1は、本開示の実施形態に係るモータ100の構成を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示すモータ100を、中心軸Aを含む平面で切った縦断面図である。詳細には、
図2は、
図1に示すP方向と直交する平面で切った概略断面図である。
図1および
図2に示すように、モータ100はロータ11を有する。また、モータ100は、軸受12と、ステータ13とを有する。
【0012】
ロータ11は、上下に延びる中心軸Aを中心とするシャフト111を有する。すなわち、モータ100はシャフト111を有する。ロータ11は、中心軸Aを中心として回転可能に設けられる。ロータ11は、後述するように磁界を発生させる回転子である。シャフト111は、上下方向に延びる柱状であり、詳細には円柱状である。本実施形態のモータ100においては、不図示のギヤがシャフト111の上端部に取り付けられる。ギヤは、例えば減速機に含まれる。モータ100は、いわゆるギヤードモータである。
【0013】
なお、本実施形態では、シャフト111は、上端部に軸方向に延びるシャフト切欠き部111aを有する。シャフト切欠き部111aが設けられることにより、シャフト111の上端部は、軸方向からの平面視においてD字状である。シャフト切欠き部111aが設けられることにより、シャフト111の上端部に取り付けられるギヤを、シャフト111に対して回転し難くすることができる。ただし、シャフト切欠き部111aは、設けられなくてもよく、この場合、例えばギヤをシャフト111に圧入することにより、ギヤのシャフト111に対する回転を抑制してもよい。
【0014】
軸受12は、シャフト111を支持する。詳細には、軸受12は、シャフト111を回転可能に支持する。本実施形態では、軸受12は、上部軸受121と下部軸受122とを有する。上部軸受121は、シャフト111の径方向外方に配置され、シャフト111の上部を支持する。下部軸受122は、シャフト111の径方向外方に配置され、シャフトの111下部を支持する。
【0015】
上部軸受121および下部軸受122は、筒状である。上部軸受121および下部軸受122の内周面と、シャフト111の外周面とが径方向に対向する。上部軸受121および下部軸受122は、例えばスリーブベアリング又はボールベアリングであってよい。本実施形態では、上部軸受121および下部軸受122は、スリーブベアリングある。各軸受121、122とシャフト111との径方向間にはグリースが配置されてもよい。スリーブベアリングは、例えば、金属の焼結体、又は、ポリアセタール等の樹脂で構成されてよい。
【0016】
ステータ13は、モータ100の電機子である。ステータ13は、ロータ11と径方向に対向し、ロータ11を囲む。すなわち、モータ100は、インナーロータ型のモータである。ステータ13は、ロータ11と径方向に対向するコイル131を有する。ステータ13は、例えばステータコア又はバックヨークを含んでよい。本実施形態では、ステータ13は、前述のコイル131を構成する空芯コイルと、バックヨーク132とを有する。
【0017】
空芯コイル131は、軸方向に延びる筒状である。詳細には、空芯コイル131は、中心軸Aを中心とする円筒状である。空芯コイル131は、ロータ11と径方向に間隔をあけて配置され、ロータ11の外周面を囲む。空芯コイル131は界磁コイルであり、空芯コイル131に駆動電流が供給されることにより、ロータ11に周方向のトルクが発生して、ロータ11が中心軸Aを中心として回転する。
【0018】
バックヨーク132は、空芯コイル131の径方向外方に配置され、軸方向に延びる筒状である。詳細には、バックヨーク132は、中心軸Aを中心とする円筒状である。バックヨーク132は、複数の磁性鋼板を軸方向に積層して構成される。本実施形態では、複数の円環状の磁性鋼板が軸方向に積層されることにより、バックヨーク132が形成される。バックヨーク132の内周面は、空芯コイル131の外周面と径方向に対向し、空芯コイル131を囲む。空芯コイル131の外周面は、バックヨーク132の内周面に固定される。例えば、空芯コイル131は、接着剤によりバックヨーク132に固定される。空芯コイル131およびバックヨーク132は、上部軸受121と下部軸受122との軸方向間に配置される。
【0019】
本実施形態のように、ステータ13を空芯コイル131とバックヨーク132とを用いて構成する場合、バックヨーク132に空芯コイル131を挿入することによって簡単にステータ13を組み立てることができる。すなわち、本構成によれば、モータ100の組立性を向上することができる。また、バックヨーク132が磁性鋼板を積層して構成されるために、渦電流を抑制してロータ11の回転効率の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本実施形態では、好ましい形態として、空芯コイル131の上端131Uと下端131Lとは、バックヨーク132の上端132Uと下端132Lとの軸方向間に配置される。本構成によれば、空芯コイル131に駆動電流を流すことにより発生する磁束を効率良くバックヨーク132に通すことができ、モータ100の磁気特性を向上することができる。
【0021】
モータ100は、ケース14と、下部ブッシュ16とを更に有する。また、モータ100は、上部ブッシュ15を更に有する。
【0022】
ケース14は、ステータ13の径方向外方に配置され、ステータ13を囲む。詳細には、ケース14は、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では、ケース14は、中心軸Aを中心とする円筒状である。ケース14の内周面は、バックヨーク132の外周面と径方向に対向し、バックヨーク132の外周面を囲む。モータ100がケース14を有する構成とすることにより、ステータ13を覆って保護することができる。
【0023】
なお、モータ100がケース14を有しない構成としてもよい。これにより、モータ100の小型化を図ることができる。ケース14は、例えば、金属又は樹脂で構成される。例えば、ケース14を金属で構成することにより、モータ100の剛性を高めることができる。また、例えば、ケース14を絶縁体で構成することにより、磁束の漏洩を抑制することができる。例えば、ケース14の内周面は、接着剤を用いてバックヨーク132の外周面に固定されてよい。ケース14が樹脂で構成される場合、ケース14とバックヨーク132とがインサート成型により単一の部材として構成されてもよい。
【0024】
上部ブッシュ15は、上部軸受121を保持する。上部ブッシュ15は、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では、上部ブッシュ15は、中心軸Aを中心とする円筒状である。詳細には、上部ブッシュ15は、外周面から径方向外方に突出する環状のブッシュフランジ部151を上端部に有する。また、上部ブッシュ15は、内周面から径方向内方に突出する環状のブッシュ内環状部152を下端部に有する。
【0025】
上部ブッシュ15は、筒状のケース14の上部からケース14内に嵌め込まれる。上部ブッシュ15は、ブッシュフランジ部151がケース14の上端に当たる位置までケース14内に嵌め込まれる。また、筒状の上部ブッシュ15の上部から、上部ブッシュ15内に上部軸受121が嵌め込まれる。上部軸受121は、ブッシュ内環状部152の上端に当たる位置まで嵌め込まれる。上部軸受121は、例えば、圧入、圧入接着、或いは、カシメにより、上部ブッシュ15に固定されてよい。
【0026】
本実施形態では、上部軸受121の一部は、上部ブッシュ15に対して上方に突出する。このように構成することで、例えば、上部軸受121をモータ100の上部に配置されるギヤボックス(不図示)等の位置決めに使用することができる。なお、上部ブッシュ15は、ブッシュフランジ部151とブッシュ内環状部152とのうち少なくとも一方を有しなくてもよい。
【0027】
下部ブッシュ16は、下部軸受122を保持する。下部ブッシュ16は、その一部が筒状のケース14の下部からケース14内に嵌め込まれる。下部ブッシュ16の詳細な構成については後述する。なお、上部ブッシュ15と下部ブッシュ16とは、例えば、金属又は樹脂で構成される。上部ブッシュ15及び下部ブッシュ16とは、例えば接着剤を用いてケース14に固定される。ケース14およびブッシュ15、16が樹脂である場合には、ケース14とブッシュ15、16とは溶着により固定されてよい。ケース14およびブッシュ15、16が金属である場合には、ケース14とブッシュ15、16とは溶接により固定されてよい。
【0028】
<2.モータの詳細構成>
(2-1.シャフト)
シャフト111は、周方向に少なくとも2極以上でN極とS極とが交互に配置される着磁パターンを有する。すなわち、シャフト111がマグネットの機能を兼ねる。このために、ロータ11は、シャフト111とは別部材となるマグネットを有しない。コイル131は、シャフト111の外周面と径方向に対向する。詳細には、空芯コイル131は、シャフト111と径方向に間隔をあけて対向する。
【0029】
このようにシャフト111にマグネットの機能を持たせた構成とすると、シャフトとマグネットとを別部材とする構成に比べて、モータ100の径方向のサイズを小型化することができる。また、このような構成によれば、シャフトとマグネットとが別部材である構成のモータの体格と同じとした場合には、シャフト111を太くすることができ、シャフト111の剛性を向上することができる。すなわち、このような構成によれば、モータ100の体格が小さい場合でも、シャフト111にねじれ等が生じ難くすることができ、モータ100の信頼性を向上することができる。また、このような構成によれば、シャフト111と別にマグネットを配置する必要がないために、部品点数を減らすことができ、モータ100の組立性の向上とコストの低減とを図ることができる。
【0030】
図3は、シャフト111の着磁パターンの一例を示す模式図である。
図3は、シャフト111を軸方向と直交する面で切った断面の着磁パターンを示す。
図3に示す例では、シャフト111は、周方向に4極でN極とS極とが交互に配置された着磁パターンを有する。ただし、当該着磁パターンは例示であり、周方向に並ぶ極数は2極、6極、8極等、様々な極数であってよい。
【0031】
シャフト111は、着磁することができる材料で構成されればよい。シャフト111は、例えば、ネオジウム、鉄、ホウ素を主成分とするネオジウム磁石等の希土類磁石で構成されてよい。シャフト111は、その全体が磁化された構成であってよい。ただし、シャフト111は、一部が磁化された構成であってもよい。シャフト111は、少なくとも空芯コイル131と径方向に対向する領域が磁化されていることが好ましい。すなわち、シャフト111の磁極パターンが形成される軸方向の範囲は、コイル131と径方向に重なる範囲であることが好ましい。シャフト111の磁極パターンが形成される軸方向の範囲がコイル131と径方向に重なる範囲のみである構成とすると、例えば軸受21又はブッシュ15、16等で生じる鉄損の影響を小さくすることができる。すなわち、磁気効率の向上を図ることができる。
図2に示す例では、シャフト111の磁極パターンが形成される軸方向の上端の位置は、空芯コイル131の上端131Uと同じ軸方向高さであることが好ましい。また、シャフト111の磁極パターンが形成される軸方向の下端の位置は、空芯コイル131の下端131Lと同じ軸方向高さであることが好ましい。
【0032】
シャフト111の軸方向の磁気中心は、ステータ13の軸方向の磁気中心と一致してよい。このように構成することにより、ロータ11の磁気中心と、ステータ13の磁気中心とを合わせることができ、磁気効率を良好とすることができる。
【0033】
ただし、本実施形態では、シャフトの軸方向の磁気中心は、ステータ13の軸方向の磁気中心よりも、軸方向上方に位置する。このように構成すると、モータ100の駆動時において、シャフト111に対して軸方向下方に向けた力を与えることができ、シャフト111の上下動を抑制することができる。この結果、モータ100の振動および騒音を抑制することができる。
【0034】
(2-2.モータ下部の構成)
図4は、下部ブッシュ16及びその周辺を拡大して示す概略断面図である。
図4は、
図2の下部側を拡大して示した図である。
図5は、下部ブッシュ16の構成を示す概略斜視図である。
図4および
図5に示すように、下部ブッシュ16は、ブッシュ底板部161と、ブッシュ筒部162と、ブッシュ突起部163と、を有する。
【0035】
ブッシュ底板部161は、軸方向と直交する方向に拡がる。本実施形態では、ブッシュ底板部161は、軸方向からの平面視において四隅に切欠きを有する矩形板状である。ブッシュ筒部162は、ブッシュ底板部161から上方に延び、径方向内方に配置される下部軸受122を保持する。本実施形態では、ブッシュ筒部162は、中心軸Aを中心とする円筒状である。下部軸受122は、ブッシュ筒部162内に嵌め込まれる。ブッシュ筒部162の内周面と下部軸受122の外周面とは、径方向に対向する。下部軸受122は、その下面がブッシュ底板部161の上面に当たる位置まで嵌め込まれる。下部軸受122は、例えば、圧入、圧入接着、或いは、カシメによりブッシュ筒部162に固定される。
【0036】
なお、下部ブッシュ16は、ブッシュ筒部162が筒状のケース14の下部からケース14内に嵌め込まれることにより、ケース14に取り付けられる。ブッシュ筒部162は、ブッシュ底板部161がケース14の下端に当たる位置までケース14内に嵌め込まれる。
【0037】
ブッシュ突起部163は、ブッシュ底板部161から上方に突出し、シャフト111の下端と軸方向に対向する。詳細には、ブッシュ突起部163は、軸方向からの平面視において、ブッシュ筒部162の中心と重なる位置に配置される。すなわち、ブッシュ突起部163は、ブッシュ底板部161の上面の中心軸Aが通る位置に配置される。本実施形態では、ブッシュ突起部163は、ブッシュ筒部162内に嵌められた下部軸受122の内周面に囲まれる。ブッシュ突起部163は、筒状の下部軸受122に嵌められたシャフト111の下端と軸方向に対向する。
【0038】
本構成の下部ブッシュ16によれば、ブッシュ突起部163によってシャフト111を受けることができるために、シャフト111の軸方向の位置を安定させることができる。また、本構成の下部ブッシュ16によれば、シャフト111の軸方向の磁気中心とステータ13との位置関係を安定させることができる。なお、本実施形態では、好ましい形態として、ブッシュ突起部163は、シャフト111の下端と接触する。
【0039】
また、本実施形態では、好ましい形態として、ブッシュ突起部163の先端は、上方に凸となる球面である。本構成によれば、シャフト111とブッシュ突起部163との接触面積を減らして、シャフト111の回転時における部材の摩耗を抑制することができる。これにより、例えば摩耗により生じる異物の影響をモータ100が受ける可能性を低減することができる。また、モータ100の寿命を延ばすことができる。
【0040】
図4および
図5に示すように、ブッシュ底板部161は、軸方向に貫通する少なくとも1つのブッシュ貫通部164を有する。ブッシュ貫通部164は、軸方向からの平面視において、少なくとも一部がケース14の外周面よりも径方向内方に配置されることが好ましい。ブッシュ貫通部164は、貫通孔であってもよいし、切欠きであってもよい。コイル131の引出線131aは、ブッシュ貫通部164を通って、下部ブッシュ16の下方に配置される回路基板17に接続される。このように構成することにより、コイル131の引出線131aの回路基板17への引き回しを簡単に行うことができる。
【0041】
詳細には、上述のように、コイル131は筒状の空芯コイルである。空芯コイル131から引き出される引出線131aの数は、複数である。例えば、U相、V相、W相がスター結線される構成の場合、引出線131aの数は4本となり、デルタ結線される構成の場合には、引出線131aの数は3本である。ブッシュ貫通部164の数は、引出線131aの数と同数設けられてよい。この場合、ブッシュ貫通部164の数は複数となる。ただし、複数の引出線131aは、その全部、或いは、一部が途中で纏められて一本とされてもよく、このような構成の場合には、ブッシュ貫通部164の数は、引出線131aの数より少なくてもよい。複数の引出線131aの全てが纏められて一本とされる場合には、ブッシュ貫通部164の数は1つであってよい。なお、本実施形態では、ブッシュ貫通部164の数は3つである。
【0042】
回路基板17には、例えば、不図示の外部ドライバからの出力電流を、引出線131aを介して空芯コイル131に供給するための配線パターンが設けられる。引出線131aの先端は、例えば、回路基板17に半田を用いて電気的に接続される。回路基板17は、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板(FPC)、リジッドフレキシブル基板等であってよい。本実施形態では、回路基板17は、下部ブッシュ16の下面に固定される。回路基板17の固定手法は、例えば接着、螺子止め、カシメ等であってよい。また、本実施形態においては、回路基板17を下方から覆う回路ケース18が設けられる。ただし、回路ケース18は、設けられなくてもよい。
【0043】
本実施形態では、ブッシュ筒部162は、軸方向上端から下端まで延びる少なくとも1つのブッシュ切欠き部165を有する。ブッシュ切欠き部165は、ブッシュ貫通部164の数と同数である。本実施形態では、ブッシュ切欠き部165の数は3つである。ただし、上述のブッシュ貫通部164と同様に、ブッシュ切欠き部165の数は、コイル131からの引出線131aの引き出し方に応じて、3つより多くされたり、3つより少なくされたりしてもよい。例えば、U相、V相、W相の各相から2本の引出線131aを引き出し、回路基板17上で結線する構成の場合には、ブッシュ切欠き部165の数は6つとしてよい。なお、ブッシュ切欠き部165が設けられるために、ブッシュ筒部162は、詳細には、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の円弧柱状体により構成される。
【0044】
ブッシュ切欠き部165は、ブッシュ貫通部164と軸方向に重なる。これにより、ブッシュ切欠き部165とブッシュ貫通部164とを用いて、コイル131の引出線131aを簡単に回路基板17へ引き回すことができる。なお、本実施形態では、複数のブッシュ切欠き部165のそれぞれが、ブッシュ貫通部164と軸方向に重なる。
【0045】
(2-3.モータ上部の構成)
図6は、モータ100の上部の構成を拡大して示す概略断面図である。
図6は、
図2の上部側を拡大して示した図である。
図6に示すように、モータ100は、シャフト111の径方向外方に配置され、シャフト111に固定される環状部材19を更に有する。本実施形態では、環状部材19は、中心軸Aを中心とする円環状の板状部材である。環状部材19は、例えば金属により構成される。環状部材19は、例えば、その内側にシャフト111が圧入されることによりシャフト111に固定される。環状部材19は、シャフト111の外周面に対して径方向外方に突出する。
【0046】
環状部材19は、コイル131と上部軸受121との軸方向間に配置され、上部軸受121と軸方向に重なる。このような構成とすると、シャフト111が上方に抜けようとした場合に、環状部材19がストッパとして作用するために、シャフト111が上方に抜けることを防止することができる。
【0047】
本実施形態では、環状部材19は、下端の位置が上部軸受121の下端より下方である上部ブッシュ15よりも下方に配置され、上部ブッシュ15と軸方向に重なる。このために、環状部材19は、上部ブッシュ15と接触することによりストッパとしての機能を発揮する。ただし、例えば、環状部材19の径方向のサイズを大きくできない事情があったり、ブッシュ内環状部152が設けられない構造であったりすると、環状部材19が上部ブッシュ15と軸方向に重ならいこともある。このような場合でも、環状部材19が上部軸受121と軸方向に重なるために、環状部材19は、上部軸受121と接触することによりストッパとしての機能を発揮する。
【0048】
図7は、モータ100の好ましい構造を説明するための模式図である。
図7は、
図2に示す断面の一部を示す図である。詳細には、
図7は、モータ100の上部と下部とを示し、モータ100の中間部分を省略している。
図7に示すように、好ましい形態として、上部軸受121と環状部材19との軸方向距離D1は、ブッシュ突起部163の上端と下部軸受122の上端との軸方向距離D2よりも小さい。このような構成とすることにより、環状部材19をストッパとして機能させて、シャフト111が下部軸受122から抜けることを防止できる。
【0049】
<3.変形例>
(3-1.第1変形例)
図8は、本開示の実施形態に係るモータ100の第1変形例を説明するための図である。
図8は、第1変形例のモータ100Aを、中心軸Aと直交する方向に切った横断面図である。第1変形例のモータ100Aは、ステータ13Aの構成が上述した実施形態のステータ13と異なる。上述した実施形態と同様に、ステータ13Aは、磁化されたシャフト111Aの外周面と径方向に対向するコイル131Aを有する。
図8では、コイル131Aは破線で示されている。コイル131Aの詳細な構成は、上述の実施形態と異なる。コイル131Aは、周方向に複数配列される。
【0050】
ステータ13Aは、ステータコア133を更に有する。例えば、ステータコア133は、磁性鋼板を軸方向に積層して構成される。ステータコア133は、コアバック1331とティース1332とを有する。コアバック1331は、中心軸Aを中心とする環状である。詳細には、コアバック1331は円環状である。ティース1332は、コアバック1331から径方向に内方に突出し、周方向に複数配列される。本変形例では、ティース1332の数が4つの場合を例示しているが、ティース1332の数は、シャフト111Aの磁極数に応じて変更されてよい。
【0051】
ティース1332は、ティース本体部1332aと、傘部1332bとを有する。ティース本体部1332aは、コイル131Aを構成する導線が巻かれる。傘部1332bは、ティース本体部1332aの先端に配置され、周方向に拡がる。本変形例のようにステータ13Aを構成すると、マグネットの機能を有するシャフト111Aと、ステータコア133との径方向の間隔を小さくすることができ、磁気特性の向上を図ることができる。
【0052】
なお、本変形例は、コアバック1331の径方向外方にケース14Aが配置される。ただし、モータ100Aは、ケース14Aを有しなくてもよい。
【0053】
(3-2.第2変形例)
図9は、本開示の実施形態に係るモータ100の第2変形例を説明するための図である。
図9は、第2変形例のモータ100Bを、中心軸Aを含む平面で切った縦断面図である。
図9に示すように、第2変形例のモータ100Bも、シャフト111Bの下部を支持する下部軸受122Bを保持する下部ブッシュ16Bを有する。上述の実施形態と同様に、下部ブッシュ16Bは、ブッシュ底板部161Bと、ブッシュ筒部162Bと、ブッシュ突起部163Bと、ブッシュ貫通部164Bとを有する。ただし、本変形例では、ブッシュ筒部162Bは、上述したブッシュ切欠き部165(
図5等参照)を有しない。
【0054】
ブッシュ筒部162Bの外周面を囲む筒状体132Bの内周面は、ブッシュ筒部162Bの外周面と径方向に対向する。本変形例では、筒状体132Bは、筒状のバックヨークである。バックヨーク132Bの構成は、上述の実施形態と同様である。すなわち、本変形例では、下部ブッシュ16Bは、バックヨーク132Bの下方からバックヨーク132Bに嵌め込まれる。なお、筒状体132Bは、バックヨーク132Bに替えて、バックヨーク132Bの径方向外方に配置されるケースであってもよい。この場合には、下部ブッシュ16Bはケースに嵌め込まれる。
【0055】
筒状体132Bの内周面は、軸方向に延びる少なくとも1つの切欠き溝132Baを有する。切欠き溝132Baの数は、コイル131Bの引出線131aBの数、或いは、引出線131aBの束の数に対応する数である。切欠き溝132Baは、例えば、軸方向からの平面視において、筒状体132Bの内周面に対して径方向外方に凹む半円形状等であってよい。
【0056】
切欠き溝132Baは、ブッシュ底板部161Bに設けられる軸方向に貫通するブッシュ貫通部164Bと軸方向に重なる。このような構成によれば、切欠き溝132Baによってコイル131Bの引出線131aBを引き回すスペースを確保することができ、引出線131aBの処理を容易に行うことができる。なお、引出線131aBは、上述の実施形態と同様に、回路基板17Bに電気的に接続される。
【0057】
なお、本変形例では、好ましい形態として、切欠き溝132Baの上端部は、軸方向において、コイル131Bの下端部とブッシュ筒部162Bの上端部との間に位置する。これによれば、コイル131Bの引出線131aBの処理の際に、引出線131aBを切欠き溝132Baに通し易くすることができる。すなわち、モータ100Bの組立性を向上することができる。
【0058】
(3-3.第3変形例)
図10は、本開示の実施形態に係るモータ100の第3変形例を説明するための図である。
図10は、第3変形例のモータが有するシャフト111Cを軸方向と直交する面で切った断面を模式的に示す図である。
【0059】
図10に示すように、本変形例では、シャフト111Cは、外周面に配置されるコーティング層1112を有する。コーティング層111Cは、着磁パターンを形成する材料とは異なる材料で構成される。詳細には、シャフト111Cは、シャフト本体部1111と、シャフト本体部1111の外周面を覆うコーティング層1112とを有する。シャフト本体部1111は、例えば希土類磁石等のマグネット材料で構成され、例えば円柱状である。コーティング層1112は、好ましい形態として、シャフト本体部1111の全体を覆う。
【0060】
このように構成すると、マグネット材料で構成されるシャフト本体部1111が錆びることを防止することができ、モータの磁気特性の低下を抑制することができる。また、コーティング層1112が設けられることにより、シャフト111Cの回転時における摩擦による損失を低減することができる。また、コーティング層1112が設けられることにより、シャフト111Cの剛性を向上することができる。
【0061】
コーティング層1112は、例えば、マグネット材料で構成されるシャフト本体部1111を表面処理して構成されてよい。詳細には、コーティング層1112は、シャフト本体部1111の表面をメッキ処理して構成されてよい。メッキ処理により形成されるコーティング層1112は、例えばニッケルメッキ層であってよい。
【0062】
<4.留意事項>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の技術は、例えば家電、自動車、船舶、航空機、列車、ロボット等に使用されるモータに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
12・・・軸受
13、13A・・・ステータ
14、14A・・・ケース
16、16B・・・下部ブッシュ
17、17B・・・回路基板
19・・・環状部材
100、100A、100B・・・モータ
111、111A、111B、111C・・・シャフト
121・・・上部軸受
122、122B・・・下部軸受
131、131A、131B・・・コイル
131a、131aB・・・引出線
132、132B・・・バックヨーク、筒状体
132Ba・・・切欠き溝
133・・・ステータコア
161、161B・・・ブッシュ底板部
162、162B・・・ブッシュ筒部
163、163B・・・ブッシュ突起部
164、164B・・・ブッシュ貫通部
165・・・ブッシュ切欠き部
1112・・・コーティング層
1331・・・コアバック
1332・・・ティース
1332a・・・ティース本体部
1332b・・・傘部
A・・・中心軸