(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】端末装置、無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20250311BHJP
H04W 48/08 20090101ALI20250311BHJP
H04W 76/11 20180101ALI20250311BHJP
【FI】
H04W48/16 110
H04W48/08
H04W76/11
(21)【出願番号】P 2021031701
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 晃
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-101553(JP,A)
【文献】特開2005-252812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信先が不特定の基地局装置であることを示すための第1種識別情報が含まれた信号を送信する送信部と、
基地局装置からの信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した信号から、前記基地局装置を識別するための第2種識別情報であって、かつ前記第1種識別情報とは異なる第2種識別情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部が前記第2種識別情報を抽出してからの期間を計測する計測部とを備え、
前記抽出部において前記第2種識別情報が抽出された場合に、前記送信部は前記第2種識別情報が含まれた信号を送信し、
前記計測部において計測した期間がしきい値を超えた場合に、前記送信部は前記第1種識別情報が含まれた信号を送信する端末装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記抽出部が前記第2種識別情報を抽出すると、前記期間をリセットする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記第1種識別情報は、第1のトーン信号であり、
前記第2種識別情報は、第2のトーン信号であり、
前記第1のトーン信号と前記第2のトーン信号は異なる請求項1または2に記載の端末装置。
【請求項4】
端末装置と、基地局装置とを備え、
前記端末装置は、
送信先が不特定の基地局装置であることを示すための第1種識別情報が含まれた信号を送信する送信部と、
前記基地局装置からの信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した信号から、前記基地局装置を識別するための第2種識別情報であって、かつ前記第1種識別情報とは異なる第2種識別情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部が前記第2種識別情報を抽出してからの期間を計測する計測部とを備え、
前記抽出部において前記第2種識別情報が抽出された場合に、前記送信部は前記第2種識別情報が含まれた信号を送信し、
前記計測部において計測した期間がしきい値を超えた場合に、前記送信部は前記第1種識別情報が含まれた信号を送信し、
前記基地局装置は、
前記端末装置からの信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信した信号に、前記第1種識別情報、あるいは前記第2種識別情報が含まれている場合、信号に含まれた情報を出力する出力部と、
前記第2種識別情報が含まれた信号を送信する送信部と、
を備える無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に通信のための接続を実行する端末装置、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基地局装置と端末装置とが含まれる無線通信システムにおける端末装置は、基地局装置により使用される周波数帯をサーチする。つまり、端末装置は、送信先の基地局装置を特定するために定期的に基地局装置を検索する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーチは定期的になされるべきであるので、端末装置におけるサーチのための処理が定期的に実行される。このような処理により消費電力が向上し、バッテリ駆動の端末装置では駆動時間が短縮される。そのため、端末装置において、送信先の基地局装置を特定するための処理を簡易にすることが求められる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、送信先の基地局装置を特定するための処理を簡易にすることで消費電力を削減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、送信先が不特定の基地局装置であることを示すための第1種識別情報が含まれた信号を送信する送信部と、基地局装置からの信号を受信する受信部と、受信部において受信した信号から、基地局装置を識別するための第2種識別情報であって、かつ第1種識別情報とは異なる第2種識別情報を抽出する抽出部と、抽出部が第2種識別情報を抽出してからの期間を計測する計測部とを備える。抽出部において第2種識別情報が抽出された場合に、送信部は第2種識別情報が含まれた信号を送信し、計測部において計測した期間がしきい値を超えた場合に、送信部は第1種識別情報が含まれた信号を送信する。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、無線通信システムである。この無線通信システムは、端末装置と、基地局装置とを備える。端末装置は、送信先が不特定の基地局装置であることを示すための第1種識別情報が含まれた信号を送信する送信部と、基地局装置からの信号を受信する受信部と、受信部において受信した信号から、基地局装置を識別するための第2種識別情報であって、かつ第1種識別情報とは異なる第2種識別情報を抽出する抽出部と、抽出部が第2種識別情報を抽出してからの期間を計測する計測部とを備える。抽出部において第2種識別情報が抽出された場合に、送信部は第2種識別情報が含まれた信号を送信し、計測部において計測した期間がしきい値を超えた場合に、送信部は第1種識別情報が含まれた信号を送信し、基地局装置は、端末装置からの信号を受信する受信部と、受信部において受信した信号に、第1種識別情報、あるいは第2種識別情報が含まれている場合、信号に含まれた情報を出力する出力部と、第2種識別情報が含まれた信号を送信する送信部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送信先の基地局装置を特定するための処理を簡易にすることで消費電力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)-(d)は、本実施例の比較対象となる無線通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)-(b)は、本実施例に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【
図3】
図2(a)-(b)の無線通信システムの構成を示す図である。
【
図4】
図3の端末装置による送信手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)-(b)は、無線通信システムの第1適用例の動作概要を示す図である。
【
図6】
図6(a)-(b)は、無線通信システムの第2適用例の動作概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、基地局装置と端末装置とを含む無線通信システムに関する。複数の端末装置間において通信する場合、通信可能な距離を長くするために、基地局装置が使用される。さらに、通信可能な距離を長くするために、複数の基地局装置が配置され、複数の基地局装置がネットワークにより接続される。このときに、端末装置の利便性、例えば、どこにいても周波数変更などの操作をしないことを考慮すると、複数の基地局装置には同一の周波数が使用される。その結果、同時アクセスが発生しうる。
【0013】
同時アクセスの発生を抑制するために、例えば、トランキング方式が使用される。トランキング方式では、端末装置は必ず制御局にアクセスしてから、空きチャンネルへの移行がなされる。しかしながら、トランキング方式を実行する場合、使用される周波数が多くなるとともに、システムのコストも向上する。
【0014】
一方、1つの周波数を使用ながら同時アクセスの発生を抑制するために、ビーコン方式が使用される。ビーコン方式では、基地局装置からビーコンが送信されている状況において、端末装置は、スキャンにより信号を受信すると、信号強度の高い基地局装置を選択して使用する。その際、端末装置は、送信先の基地局装置を特定(当該基地局装置を識別するための識別情報を取得)してから、取得した識別情報を付加して信号を送信する。ビーコン方式は、トランキング式よりは簡易な構成で実現可能ではあるが、端末装置は、基地局装置からのビーコンを常に受信しなければならいので、消費電力が増加し、バッテリによる駆動時間が短くなってしまう。また、1つの周波数を使用ながら同時アクセスの発生を抑制するために、基地局装置の配置とアンテナの指向性を利用することも可能である。しかしながら、端末装置の場所によっては同時アクセスが発生してしまう場合、基地局装置の周辺の気候条件(降雪、降雨等)により同時アクセスが発生してしまう場合がある。
【0015】
送信先の基地局装置を特定するための処理を簡易にするために、本実施例に係る端末装置は、基地局装置を特定するための探索を行わず、不特定の基地局装置宛てに信号を送信する。この送信に応答して、基地局装置は、自局の識別情報を端末装置に送信する。端末装置は、基地局装置から受信した信号に含まれた識別情報を取得する。以後、端末装置は、取得した識別情報を使用して基地局装置への送信を実行する。ここで、端末装置を保持したユーザが移動することによって、端末装置が基地局装置(以下、「第1基地局装置」という)の通信エリアから外れて、別の基地局装置(以下、「第2基地局装置」という)の通信エリアに移動することもある。その際、端末装置が第1基地局装置に信号を送信し続けないようにするために、端末装置は、制限時間を設けて送信先の基地局装置を不特定の状態に戻す。
【0016】
図1(a)-(d)は、比較対象となる無線通信システム2000の構成を示す。
図1(a)における無線通信システム2000は、基地局装置2100と総称される第1基地局装置2100a、第2基地局装置2100b、端末装置2200と総称される第1端末装置2200a、第2端末装置2200bを含む。無線通信システム2000に含まれる基地局装置2100の数、端末装置2200の数は「2」に限定されない。第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bは、図示しないネットワークにより接続される。
【0017】
第1基地局装置2100aと通信可能なエリアが第1通信エリア2110aと示され、第2基地局装置2100bと通信可能なエリアが第2通信エリア2110bと示される。ここでは、第1通信エリア2110aと第2通信エリア2110bとが重複しないように、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bとが配置される。第1通信エリア2110a内に第1端末装置2200aと第2端末装置2200bとが存在しており、第1端末装置2200aは第1基地局装置2100aに信号を送信し、第2端末装置2200bは第1基地局装置2100aから信号を受信する。
【0018】
図1(b)における無線通信システム2000は、
図1(a)と同様であるが、第1通信エリア2110aと第2通信エリア2110bとが重複するように、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bとが配置される。第1端末装置2200aから送信される信号は、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bに受信される。第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bは、信号を送信する。第2端末装置2200bは、第1基地局装置2100aからの信号を受信するので、第1端末装置2200aと通信可能である。第3端末装置2200cは、第1基地局装置2100aからの信号と、第2基地局装置2100bからの信号とを受信する。無線通信システム2000がデジタル無線通信システムである場合、第3端末装置2200cにおいて輻輳状態が発生し、信号が復調されない。一方、無線通信システム2000がアナログ無線通信システムである場合、第3端末装置2200cにおいて強い方の信号が混信状態で聞こえる。以下の説明では、無線通信システム2000がデジタル無線通信システムであるとする。
【0019】
図1(c)は、
図1(b)の第3端末装置2200cにおいて発生しうる輻輳を防止するための動作概要を示す。第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bは、自局の識別情報(以下、「基地局ID」という)が含まれた信号を間欠送信する。第1基地局装置2100aの基地局IDと第2基地局装置2100bの基地局IDとは異なる。第1端末装置2200aは、第1基地局装置2100aからの信号と、第2基地局装置2100bからの信号を受信し、信号強度の大きい方の信号を送信した基地局装置2100を選択する。これは、信号強度の大きい方の信号を送信した基地局装置2100の基地局IDを選択することに相当する。
【0020】
図1(d)は、
図1(c)に続く処理である。
図1(c)において、第1端末装置2200aは、第1基地局装置2100aの基地局IDを選択する。第1端末装置2200aは、第1基地局装置2100aの基地局IDを含めた信号を送信する。第1基地局装置2100aは、受信した信号に自局の基地局IDが含まれているので、当該信号を送信する。そのため、第2端末装置2200bと第3端末装置2200cは、第1基地局装置2100aからの信号を受信する。一方、第2基地局装置2100bは、受信した信号に自局の基地局IDが含まれていないので、当該信号を送信しない。このような処理の結果、第3端末装置2200cにおいて輻輳が発生しない。しかしながら、基地局装置2100は信号を間欠送信しなければならず、端末装置2200は、常に受信動作をしなければならない。端末装置2200の消費電力が大きくなり、端末装置2200のバッテリ駆動時間が短くなる。
【0021】
図2(a)-(b)は、無線通信システム1000の構成を示す。
図2(a)における無線通信システム1000は、基地局装置100と総称される第1基地局装置100a、第2基地局装置100b、端末装置200と総称される第1端末装置200a、第2端末装置200b、第3端末装置200cを含む。無線通信システム1000に含まれる基地局装置100の数は「2」に、端末装置200の数は「3」に限定されない。第1基地局装置100aと第2基地局装置100bは、図示しないネットワークにより接続される。
【0022】
第1基地局装置100aと通信可能なエリアが第1通信エリア110aと示され、第2基地局装置100bと通信可能なエリアが第2通信エリア110bと示される。ここでは、第1通信エリア110aと第2通信エリア110bとが重複するように、第1基地局装置100aと第2基地局装置100bとが配置される。第1端末装置200aは、第1通信エリア110a内であって、かつ第2通信エリア110b外である位置に存在する。第1端末装置200aは、送信先の基地局装置100が決まっていない場合に、送信先が不特定の基地局装置であることを示すための基地局ID(以下、「第1種識別情報」ともいう)が含まれた信号を送信する。第1種識別情報は、例えば、「Null」である。これは、不特定の基地局装置100に信号を送信することに相当する。また、信号の最終的な宛先となる第2端末装置200bと第3端末装置200cのアドレスも信号に含まれる。第1端末装置200aからの信号は、第1基地局装置100aに受信される。
【0023】
第1基地局装置100aは、第1端末装置200aからの信号を受信し、かつ受信した信号に第1種識別情報が含まれる場合、自局の基地局IDが含まれた信号を第1端末装置200aに送信する。自局の基地局IDは、基地局装置100を識別するための識別情報であり、「第2種識別情報」と呼ばれてもよい。また、第1基地局装置100aは、第1基地局装置100aから受信した信号を、第2端末装置200bと第3端末装置200cに送信する。第2端末装置200bと第3端末装置200cは第1基地局装置100aからの信号を受信する。
【0024】
第1端末装置200aは、第1基地局装置100aからの信号を受信すると、第1基地局装置100aの基地局IDを取得する。これに続いて、第1端末装置200aは、第1基地局装置100aの基地局IDが含まれた信号を送信する。その際、信号の最終的な宛先となる第2端末装置200bと第3端末装置200cのアドレスも信号に含まれる。これは、第1基地局装置100aに信号を送信することに相当する。
【0025】
第1基地局装置100aは、第1端末装置200aからの信号を受信し、かつ受信した信号に第1種識別情報が含まれる場合、第1端末装置200aから受信した信号を、第2端末装置200bと第3端末装置200cに送信する。第2端末装置200bと第3端末装置200cは第1基地局装置100aからの信号を受信する。
【0026】
図2(b)は、
図2(a)に続く処理を示す。第1端末装置200aは、第1通信エリア110aと第2通信エリア110bに含まれる位置に存在する。第1端末装置200aは、第1基地局装置100aの基地局IDが含まれた信号を送信する。その際、信号の最終的な宛先となる第2端末装置200bと第3端末装置200cのアドレスも信号に含まれる。第1基地局装置100aは、第1端末装置200aからの信号を受信し、かつ受信した信号に自局の基地局IDが含まれる場合、これまでと同様の処理を実行する。一方、第2基地局装置100bは、第1端末装置200aからの信号を受信し、かつ受信した信号に第1基地局装置100aの基地局IDが含まれる場合、第1基地局装置100aの基地局IDが自局の基地局IDと異なるので、これまでの処理を実行しない。その結果、第1端末装置200aからの信号は、第1基地局装置100aにおいて処理され、第2基地局装置100bにおいて処理されない。
【0027】
図3は、無線通信システム1000の構成を示す。基地局装置100は、無線通信部120、処理部130、記憶部140、有線通信部150を含み、無線通信部120は、送信部122、受信部124を含み、処理部130は、出力部132を含む。端末装置200は、無線通信部220、処理部230、記憶部240を含み、無線通信部220は、送信部222、受信部224を含み、処理部230は、抽出部232、計測部234を含む。
【0028】
端末装置200の記憶部240は、送信先が不特定の基地局装置100であることを示すための第1種識別情報、例えばNullを記憶する。処理部230は、信号を送信するタイミングにおいて、記憶部240から第1種識別情報を取得し、第1種識別情報が含まれた信号を生成する。その際、処理部230は、信号の最終的な宛先となる他の端末装置200のアドレスも信号に含める。送信部222は、処理部230において生成された信号を送信する。これは、不特定の基地局装置100への信号の送信に相当する。
【0029】
基地局装置100の受信部124は、端末装置200からの信号を受信する。処理部130は、受信部124において受信した信号に、第1種識別情報あるいは自局の基地局IDが含まれているか否かを判定する。自局の基地局IDは記憶部140に記憶されており、前述の第2種識別情報に相当する。信号に第1種識別情報が含まれている場合、処理部130は、自局の基地局IDが含まれた信号を生成し、送信部122は、信号を端末装置200に送信する。また、信号に第1種識別情報が含まれている場合、出力部132は、信号に含まれた情報を出力する。ここでは、送信部122が、最終的な宛先となる他の端末装置200に信号を転送する。また、有線通信部150が他の基地局装置100に信号を送信してもよい。
【0030】
端末装置200の受信部224は、基地局装置100からの信号を受信する。抽出部232は、受信した信号から、基地局装置100の基地局IDを第2種識別情報として抽出する。抽出部232は、抽出した基地局IDを記憶部240に記憶させる。また、計測部234は、抽出部232が基地局IDを抽出してからの期間を計測する。処理部230は、信号を送信するタイミングにおいて、記憶部240から基地局IDを取得し、基地局IDが含まれた信号を生成する。つまり、基地局IDが第1種識別情報の代わりに使用される。その際、処理部230は、信号の最終的な宛先となる他の端末装置200のアドレスも信号に含める。送信部222は、処理部230において生成された信号を送信する。
【0031】
基地局装置100の受信部124は、端末装置200からの信号を受信する。処理部130は、受信部124において受信した信号に、第1種識別情報あるいは自局の基地局IDが含まれているか否かを判定する。信号に自局の基地局IDが含まれている場合、出力部132は、信号に含まれた情報を出力する。ここでは、送信部122が、最終的な宛先となる他の端末装置200に信号を転送する。また、有線通信部150が他の基地局装置100に信号を送信してもよい。
【0032】
基地局装置100が端末装置200に信号を送信すべき場合、処理部130は、信号に自局の基地局IDを含め、送信部122は、信号を端末装置200に送信する。端末装置200の受信部224は、基地局装置100からの信号を受信する。抽出部232は、受信した信号から、基地局装置100の基地局IDを抽出する。計測部234は、期間を計測している場合に、抽出部232が基地局IDを抽出すると、期間をリセットしてから期間の計測を継続する。また、処理部230は、受信した信号を処理する。
【0033】
端末装置200の処理部230は、計測部234において計測した期間がしきい値を超えた場合に、記憶部240に記憶した基地局IDを削除する。この状況において、処理部230は、信号を生成する際、基地局IDの代わりに第1種識別情報を信号に含める。そのため、端末装置200が不特定の基地局装置100へ信号を送信する処理に戻る。
【0034】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0035】
以上の構成による無線通信システム1000の動作を説明する。
図4は、端末装置200による送信手順を示すフローチャートである。送信部222は、Nullを設定した信号を送信する(S10)。受信部224は、基地局装置100からの信号を受信する(S12)。抽出部232は、信号から基地局IDを抽出する(S14)。計測部234は計測を開始する(S16)。送信部222は、基地局IDを設定した信号を送信する(S18)。受信部224が基地局装置100からの信号を受信した場合(S20のY)、ステップ14に戻る。受信部224が基地局装置100からの信号を受信しない場合(S20のN)、計測した期間が満了しなければ(S22のN)、ステップ20に戻る。計測した期間が満了すれば(S22のY)、送信部222は、Nullを設定した信号を送信する(S24)。
【0036】
以下では、これまで説明した実施例の適用例を説明する。
図5(a)-(b)は、無線通信システム1000の第1適用例の動作概要を示す。
図5(a)は、比較対象となる無線通信システム2000の動作を示す。無線通信システム2000は、ビル2300内の連絡に使用される。第1基地局装置2100aが4Fに設置され、第2基地局装置2100bが1Fに設置され、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bはネットワーク(図示せず)で接続される。第1通信エリア2110aが3Fから5Fをカバーし、第2通信エリア2110bがB2Fから2Fをカバーする。しかしながら、現実的には、第1通信エリア2110aと第2通信エリア2110bとの一部が重複する。
【0037】
第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bが同一の周波数を使用すると、端末装置2200は、両方の基地局装置2100にアクセスしてしまうことによって輻輳が発生しうる。輻輳の発生を抑制するために、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bには別の周波数が設定される。端末装置2200を使用するユーザが3Fから2Fに移動する場合、ユーザは端末装置2200に設定される周波数を変えなくてはならない。
【0038】
図5(b)は、本実施例の無線通信システム1000の動作を示す。無線通信システム1000は、ビル300内の連絡に使用される。第1基地局装置100aが4Fに設置され、第2基地局装置100bが1Fに設置され、第1基地局装置100aと第2基地局装置100bはネットワーク(図示せず)で接続される。第1通信エリア110aが3Fから5Fをカバーし、第2通信エリア110bがB2Fから2Fをカバーする。前述のごとく、第1基地局装置100aと第2基地局装置100bが同一の周波数を使用しても、端末装置200は、いずれかの基地局装置100にしかアクセスしないので、輻輳が発生しない。また、端末装置200を使用するユーザが3Fから2Fに移動する場合、ユーザは端末装置200に設定される周波数を変えなくてもよい。
【0039】
図6(a)-(b)は、無線通信システム1000の第2適用例の動作概要を示す。
図6(a)は、比較対象となる無線通信システム2000の動作を示す。無線通信システム2000は、複数の基地局装置2100を中継装置2400経由で接続して、通信エリア(図示せず)を構築する。第1基地局装置2100aは、VHF帯固定系基地局無線装置2250、350MHz帯固定系基地局無線装置2252を含み、中継装置2400は、350MHz帯固定系基地局無線装置2450、400MHz帯固定系基地局無線装置2452を含み、第2基地局装置2100bは、400MHz帯固定系基地局無線装置2260、VHF帯固定系基地局無線装置2262を含む。
【0040】
無線通信システム2000では、各基地局装置2100の通信エリアは重複しないように、各基地局装置2100が設置される。しかしながら、季節や気象条件の影響により、各基地局装置2100の通信エリアに重複が発生することがある。通信エリアが重なることにより、制御局側の割り込み通信に影響が及ぼされる。端末装置2200から送信された信号は、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bの双方で通信エリア内に中継される。中継装置2400では、第1基地局装置2100aと第2基地局装置2100bの双方からの信号を受信するので、衝突が発生する。
【0041】
事務所では、ユーザが、第1基地局装置2100aで受信した信号に含まれた音声を聞く。その際、端末装置2200の送信中に、事務所側から割り込んで、信号を送信することがある。第1基地局装置2100aの通信エリア内では、事務所からの信号を受信できるが、第2基地局装置2100bのエリアには、中継装置2400で衝突が発生しているので、事務所からの信号は到達しない。
【0042】
図6(b)は、本実施例の無線通信システム1000の動作を示す。無線通信システム1000は、複数の基地局装置100を中継装置400経由で接続して、通信エリア(図示せず)を構築する。第1基地局装置100aは、VHF帯固定系基地局無線装置250、350MHz帯固定系基地局無線装置252を含み、中継装置400は、350MHz帯固定系基地局無線装置450、400MHz帯固定系基地局無線装置452を含み、第2基地局装置100bは、400MHz帯固定系基地局無線装置260、VHF帯固定系基地局無線装置262を含む。
【0043】
端末装置200から送信された信号は、第2基地局装置100bでのみ受信されるので、中継装置400で中継され、第1基地局装置100aから送信される。事務所からの割り込み送信も、第1基地局装置100aの350MHz帯固定系基地局無線装置252から送信され、中継装置400はその信号を受信して中継動作を行う。第2基地局装置100bは、中継装置400からの信号を受信して送信する。
【0044】
本実施例によれば、基地局装置からの信号を受信した場合、当該基地局装置に対応する第2種識別情報を第1種識別情報の代わりに含んだ信号を送信するので、基地局装置からの信号のスキャンを不要にできる。また、基地局装置からの信号のスキャンが不要になるので、送信先の基地局装置を特定するための処理を簡易にできる。また、基地局装置からの信号のスキャンが不要になるので、バッテリセーバを起動できる。また、バッテリセーバが起動するので、消費電力を低減できる。また、消費電力が低減するので、バッテリ駆動時間を長くできる。また、第2種識別情報を抽出してからの期間がしきい値を超えた場合に、第1種識別情報が第2種識別情報の代わりに含まれた信号を送信するので、他の基地局装置に切りかえることができる。また、期間を計測している場合に、第2種識別情報を抽出すると、期間をリセットするので、第2種識別情報の使用期間を延長できる。
【0045】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0046】
本実施例において無線通信システム1000は、デジタル無線通信システムであるとしている。しかしながらこれに限らず例えば、無線通信システム1000は、アナログ無線通信システムであってもよい。アナログ無線通信システムは、例えば、アナログ無線、特定小電力である。この場合、これまでの第1種識別情報は、第1のトーン信号であり、第2種識別情報は、第2のトーン信号である。また、第1のトーン信号と第2のトーン信号は異なる。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0047】
100 基地局装置、 110 通信エリア、 120 無線通信部、 122 送信部、 124 受信部、 130 処理部、 132 出力部、 140 記憶部、 150 有線通信部、 200 端末装置、 220 無線通信部、 222 送信部、 224 受信部、 230 処理部、 232 抽出部、 234 計測部、 240 記憶部、 1000 無線通信システム。