(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20250311BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20250311BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20250311BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
F16H57/04 J
F16H57/04 K
F16H57/04 Q
F16H57/031
F16H57/04 G
(21)【出願番号】P 2021036144
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】大庭 広平
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
F16H 57/04
F16H 57/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びる回転軸を中心として回転可能なシャフトを有するロータと、前記ロータよりも径方向外方に配置されるステータと、を有するモータ部と、
前記モータ部を収容するハウジングと、
供給制限部材と、
を備え、
前記シャフトは、
軸方向に延びるシャフト筒部と、
前記シャフト筒部の内側面に囲まれた中空部と、
を有し、
前記ハウジングは、
軸方向に延び、前記ステータを囲むモータ筒部と、
前記モータ筒部の軸方向端部に取り付けられるモータ蓋部と、
前記モータ筒部で囲まれて前記モータ
部を収容するモータ収容空間と、
冷媒が流れる冷媒流路と、
を有し、
前記冷媒流路は、
ポンプから送出される前記冷媒が流れる第1流路と、
前記モータ部に供給する前記冷媒が流れる第2流路と、
前記第2流路を流れる前記冷媒の一部を前記ステータの外側面に供給する第3流路と、
前記第2流路を流れる前記冷媒の他の一部を前記シャフトの前記中空部に供給する第4流路と、
を有し、
前記第4流路における最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さ
く、
前記供給制限部材は、前記シャフト筒部の軸方向一方端部に配置され、
前記供給制限部材は、
前記回転軸と交差する方向に広がる環状部と、
前記環状部の径方向内端部から軸方向他方に延びる筒状の制限部と、
を有し、
前記制限部の内周面で囲まれた空間は、前記第4流路の一部であり、
前記制限部における最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さい、駆動装置。
【請求項2】
前記第3流路の最小の流路断面積と、前記制限部の最小の流路断面積との比は3:1である、請求項
1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記モータ蓋部は、
前記シャフト筒部を回転可能に支持するベアリングと、
前記ベアリングを保持するベアリング保持部と、
を有し、
前記環状部は、前記ベアリングと軸方向において対向する、請求項
1又は請求項
2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記環状部は、軸方向に貫通する貫通孔を有する、請求項
3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第4流路は、前記第2流路から延びて前記モータ蓋部の内部に配置される孔部を含み、
前記孔部の最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さい、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
軸方向に沿って延びる回転軸を中心として回転可能なシャフトを有するロータと、前記ロータよりも径方向外方に配置されるステータと、を有するモータ部と、
前記モータ部を収容するハウジングと、
を備え、
前記シャフトは、
軸方向に延びるシャフト筒部と、
前記シャフト筒部の内側面に囲まれた中空部と、
を有し、
前記ハウジングは、
軸方向に延び、前記ステータを囲むモータ筒部と、
前記モータ筒部の軸方向端部に取り付けられるモータ蓋部と、
前記モータ筒部で囲まれて前記モータ部を収容するモータ収容空間と、
冷媒が流れる冷媒流路と、
を有し、
前記冷媒流路は、
ポンプから送出される前記冷媒が流れる第1流路と、
前記モータ部に供給する前記冷媒が流れる第2流路と、
前記第2流路を流れる前記冷媒の一部を前記ステータの外側面に供給する第3流路と、
前記第2流路を流れる前記冷媒の他の一部を前記シャフトの前記中空部に供給する第4流路と、
を有し、
前記第4流路における最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さく、
前記第4流路は、前記第2流路から延びて前記モータ蓋部の内部に配置される孔部を含み、
前記孔部の最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さい
、駆動装置。
【請求項7】
前記第3流路の最小の流路断面積と、前記孔部の最小の流路断面積との比は3:1である、
請求項5又は請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第2流路の最小の流路断面積は、前記第3流路の最小の流路断面積と前記第4流路の最小の流路断面積との和よりも大きい、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
軸方向に沿って延びる回転軸を中心として回転可能なシャフトを有するロータと、前記ロータよりも径方向外方に配置されるステータと、を有するモータ部と、
前記モータ部を収容するハウジングと、
を備え、
前記シャフトは、
軸方向に延びるシャフト筒部と、
前記シャフト筒部の内側面に囲まれた中空部と、
を有し、
前記ハウジングは、
軸方向に延び、前記ステータを囲むモータ筒部と、
前記モータ筒部の軸方向端部に取り付けられるモータ蓋部と、
前記モータ筒部で囲まれて前記モータ部を収容するモータ収容空間と、
冷媒が流れる冷媒流路と、
を有し、
前記冷媒流路は、
ポンプから送出される前記冷媒が流れる第1流路と、
前記モータ部に供給する前記冷媒が流れる第2流路と、
前記第2流路を流れる前記冷媒の一部を前記ステータの外側面に供給する第3流路と、
前記第2流路を流れる前記冷媒の他の一部を前記シャフトの前記中空部に供給する第4流路と、
を有し、
前記第4流路における最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さく、
前記第2流路の最小の流路断面積は、前記第3流路の最小の流路断面積と前記第4流路の最小の流路断面積との和よりも大きい
、駆動装置。
【請求項10】
前記
モータ蓋部は、前記モータ筒部の軸方向一方端部に取り付けら
れ、
前記第2流路、前記第3流路、及び前記第4流路は前記モータ蓋部に配置される、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分岐されたオイルの流路が形成された駆動装置が知られている。たとえば、流路は、ロータ軸内部に繋がる流路と、冷却パイプとに分岐される。(たとえば特開2019-129608号公報参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の駆動装置では、冷却パイプのオイル導入口にオリフィスが形成される。そのため、ロータ軸の内部の流路の断面積が大きい場合、圧力が抜けてしまい、冷却パイプにオイルを供給することができない。
【0005】
本発明は、確実にステータの外側面に冷媒を供給できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な駆動装置は、モータ部と、モータ部を収容するハウジングと、を備える。前記モータ部は、ロータと、ステータと、を有る。前記ロータは、シャフトを有する。前記シャフトは、軸方向に沿って延びる回転軸を中心として回転可能である。前記ステータは、前記ロータよりも径方向外方に配置される。前記シャフトは、シャフト筒部と、中空部と、を有する。前記シャフト筒部は、軸方向に延びる。前記中空部は、前記シャフト筒部の内側面に囲まれる。前記ハウジングは、モータ筒部と、モータ収容空間と、冷媒流路と、を有する。前記モータ筒部は、軸方向に延び、前記ステータを囲む。前記モータ収容空間は、前記モータ筒部で囲まれて、前記モータを収容する。前記冷媒流路には、冷媒が流れる。前記冷媒流路は、第1流路と、第2流路と、第3流路と、第4流路と、を有する。前記第1流路には、ポンプから送出される前記冷媒が流れる。前記第2流路には、前記モータ部に供給する前記冷媒が流れる。前記第3流路は、前記第2流路を流れる前記冷媒の一部を前記ステータの外側面に供給する。前記第4流路は、前記第2流路を流れる前記冷媒の他の一部を前記シャフトの前記中空部に供給する。前記第4流路における最小の流路断面積は、前記第3流路における最小の流路断面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的な駆動装置によれば、確実にステータの外側面に冷媒を供給できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、Z軸方向から見た駆動装置の概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、X軸方向から見た駆動装置の概略的な構成図である。
【
図3】
図3は、Y軸方向から見た駆動装置の概略的な構成図である。
【
図5】
図5は、駆動装置を有する車両の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、モータ側油路の構成例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、駆動装置の他の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0010】
以下の説明では、駆動装置1が水平な路面上に位置する車両200に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示す。+Z方向が上方(重力方向とは向きが反対の鉛直上方)であり、-Z方向が下方(重力方向と同じ向きの鉛直下方)である。なお、以下の説明における「Z軸方向」は、本発明の「第2方向」の一例である。各々の構成要素において、上方における端部を「上端部」と呼び、軸方向における上端部の位置を「上端」と呼ぶ。さらに、下方における端部を「下端部」と呼び、軸方向における下端部の位置を「下端」と呼ぶ。また、各々の構成要素の表面において、上方を向く面を「上面」と呼び、下方を向く面を「下面」と呼ぶ。
【0011】
また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両200の前後方向を示す。なお、以下の説明における「X軸方向」は、本発明の「第1方向」の一例である。+X方向が車両200の前方であり、-X方向が車両200の後方である。ただし、+X方向が車両200の後方であり、-X方向が車両200の前方となることもありうる。
【0012】
Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両200の幅方向(左右方向)を示す。+Y方向が車両200の左方であり、-Y方向が車両200の右方である。但し、+X方向が車両200の後方となる場合には、+Y方向が車両200の右方であり、-Y方向が車両200の左方となることもありうる。すなわち、X軸方向に関わらず、単に+Y方向が車両200の左右方向の一方側となり、-Y方向が車両200の左右方向の他方側となる。また、駆動装置1の車両200への搭載方法によっては、X軸方向が車両200の幅方向(左右方向)で、Y軸方向が車両200の前後方向になることもありうる。下記の実施形態では、Y軸方向は、たとえばモータ部2の回転軸J2などと平行である。なお、以下の説明における「Y軸方向」は、本発明の「軸方向」の一例である。また、「+Y方向」は本発明の「軸方向一方」の一例であり、「-Y方向」は本発明の「軸方向他方」の一例である。
【0013】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ部2の回転軸J2などの所定の軸に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶことがある。また、所定の軸と直交する方向を単に「径方向」と呼び、所定の軸を中心とする周方向を「周方向」と呼ぶ。径方向のうち、軸へと近づく向きを「径方向内方」と呼び、軸から離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。各々の構成要素において、径方向内方における端部を「径方向内端部」と呼ぶ。さらに、外方における端部を「径方向外端部」と呼ぶ。また、各々の構成要素の側面において、径方向内方を向く側面を「径方向内側面」と呼び、径方向外方を向く側面を「径方向外側面」と呼ぶ。
【0014】
また、本明細書において、「環状」は、中心軸CAを中心とする周方向の全域に渡って切れ目の無く連続的に一繋がりとなる形状のほか、中心軸CAを中心とする全域の一部に1以上の切れ目を有する形状を含む。また、中心軸CAを中心として、中心軸CAと交差する曲面において閉曲線を描く形状も含む。
【0015】
また、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0016】
なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。
【0017】
<1.駆動装置1>
以下、図面を基に本発明の例示的な一実施形態にかかる駆動装置1について説明する。
図1から
図3は、実施形態に係る駆動装置1の概念図である。
図1は、Z軸方向から見た駆動装置1の概略的な構成図である。
図2は、X軸方向から見た駆動装置1の概略的な構成図である。
図3は、Y軸方向から見た駆動装置1の概略的な構成図である。
図4は、駆動装置1の斜視図である。
図5は、駆動装置1を有する車両200の一例を示す概略図である。なお、
図1から
図5は、あくまで概念図であり、各部の配置及び寸法は、実際の駆動装置1と同じであるとは限らない。
【0018】
駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、少なくともモータを動力源とする車両200に搭載される。駆動装置1は、上記の車両200の動力源として使用される。車両200は、駆動装置1と、バッテリー150と、を有する。バッテリー150は、駆動装置1に供給するための電力を蓄積する。駆動装置1は、車両200の例であれば、左右の前輪を駆動する。なお、駆動装置1は、少なくともいずれかの車輪を駆動すればよい。
【0019】
図1に示すように、駆動装置1は、モータ部2と、ギヤ部3と、ポンプ4と、ハウジング5と、オイルクーラ8と、を有する。モータ部2は、モータシャフト22を有するロータ21と、ロータ21よりも径方向外方に位置するステータ25と、を有する。モータシャフト22は、Y軸方向に沿って延びる回転軸J2を中心として回転可能である。なお、モータシャフト22は本発明の「シャフト」の一例であり、Y軸方向は前述の如く本発明の「軸方向」の一例である。ギヤ部3は、モータシャフト22の+Y方向における端部に接続される。ハウジング5は、モータ部2及びギヤ部3を収容する。ポンプ4は、ハウジング5内に収容されるオイルCLをモータ部2に供給する。前述の如く、駆動装置1は、ポンプ4を有する。オイルクーラ8は、オイルCLを冷却する。オイルクーラ8は、本実施形態ではポンプ4からモータ部2に供給されるオイルCLを冷却する。
【0020】
また、駆動装置1は、インバータユニット7をさらに備える。インバータユニット7は、モータ部2に駆動電力を供給する。
【0021】
ハウジング5の内部には、モータ部2、ギヤ部3、ポンプ4、及びインバータユニット7を収容する収容空間が設けられる。この収容空間は、後述するように、モータ部2を収容するモータ収容部61と、ギヤ部3を収容するギヤ収容部62と、インバータユニット7を収容するインバータ収容部63と、ポンプ4を収容するポンプ収容部64と、に区画される。なお、インバータユニット7は、後述する第4ハウジング部材54と一体的に固定される。
【0022】
<1-1.モータ部2>
モータ部2は、ハウジング5のモータ収容部61に収容される。モータ部2は、ロータ21と、ステータ25と、を有する。
【0023】
<1-1-1.ロータ21>
ロータ21は、バッテリー(図示省略)からステータ25に電力が供給されることで、水平方向に延びる回転軸J2を中心として回転する。ロータ21は、モータシャフト22のほか、ロータコア23と、ロータマグネット24と、をさらに有する。
【0024】
モータシャフト22は、回転軸J2に沿って延びる。モータシャフト22は、回転軸J2を中心として回転する。モータシャフト22は、第1モータベアリング281と第2モータベアリング282とによって回転可能に支持される。第1モータベアリング281は、たとえばボールベアリングであり、ハウジング5の後述する第3ハウジング部材53に保持される。第2モータベアリング282は、たとえばボールベアリングであり、ハウジング5の後述する側板部512に保持される。
【0025】
モータシャフト22は、筒状の中空シャフトである。モータシャフト22は、中空部220と、Y軸方向に延びるシャフト筒部221と、を有する。中空部220は、シャフト筒部の内側面に囲まれて、後述する第3供給路557(第4流路55d)と繋がる。詳細には、中空部220は、シャフト筒部の-Y方向側の端部にて第3供給路557(第4流路55d)と繋がる。また、モータシャフト22は、シャフト孔部222をさらに有する。シャフト孔部222は、シャフト筒部221を径方向に貫通する。
【0026】
モータシャフト22の+Y方向側の端部には、ギヤ部3の後述する中空の伝達シャフト310が挿通されて接続される。本実施形態では、両者は、スプライン嵌合される。或いは、両者は、溶接等の固定方法にて接合されてもよい。モータシャフト22の中空部220は、伝達シャフト310の後述する中空部3101と、第1モータベアリング281を収容する第1モータベアリング保持部531とに連通する。
【0027】
ロータコア23は、Y軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア23は、モータシャフト22の径方向外側面に固定される。前述の如く、ロータ21は、ロータコア23を有する。また、ロータコア23には、複数のロータマグネット24が固定される。複数のロータマグネット24は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0028】
ロータコア23は、ロータ貫通孔230を有する。ロータ貫通孔230は、ロータコア23をY軸方向に貫通し、シャフト孔部222と接続される。ロータ貫通孔230は、中空部220を経由して第3供給路557(第4流路55d)に接続される。詳細には、ロータコア23は、ロータ連通部231を有する。ロータ連通部231は、ロータコア23の径方向内側面からロータ貫通孔230に貫通する空間であり、ロータ貫通孔230とシャフト孔部222とを接続する。ロータ貫通孔230は、ロータ21を内部から冷却するオイルCLの流通経路として利用される。モータシャフト22の中空部220を流通するオイルCLは、後述するように、シャフト孔部222及びロータ連通部231を経由してロータ貫通孔230に流入できる。こうすれば、ロータ21が回転する際、オイルCLが、ロータ貫通孔230のY軸方向における端部から流出する。このオイルCLは、ロータ21の回転による遠心力によってステータ25のY軸方向における端部に供給され、特にステータ25のY軸方向における端部に配置される後述のコイルエンド271に供給される。このオイルCLにより、ステータ25のY軸方向における端部を冷却することができ、特にステータ25のコイルエンド271を冷却できる。
【0029】
<1-1-2.ステータ25>
ステータ25は、ロータ21を径方向外方から囲み、ロータ21を回転駆動する。前述の如く、ステータ25は、ロータ21よりも径方向外方に配置される。すなわち、モータ部2は、ステータ25の内側にロータ21が回転可能に配置されたインナーロータ型モータである。ステータ25は、ステータコア26と、コイル27と、ステータコア26とコイル27との間に介在するインシュレータ(図示省略)とを有する。ステータ25は、ハウジング5に保持される。ステータコア26は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯(図示省略)を有する。
【0030】
磁極歯の間には、コイル線が掛けまわされる。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル27を構成する。コイル線は、図示略のバスバーを介してインバータユニット7に接続される。コイル27は、ステータコア26の軸方向端面から突出するコイルエンド271を有する。コイルエンド271は、ロータ21のロータコア23の端部よりも軸方向に突出する。
【0031】
<1-2.ギヤ部3>
次に、ギヤ部3は、モータ部2の駆動力を車両200の車輪を駆動する駆動シャフトDsに伝達する。ギヤ部3の詳細について、図面を参照して説明する。
図1などに示すように、ギヤ部3は、ハウジング5のギヤ収容部62に収容される。ギヤ部3は、減速装置31と、差動装置32と、を有する。
【0032】
<1-2-1.減速装置31>
減速装置31は、モータシャフト22に接続される。減速装置31は、モータ部2の回転速度を減じて、モータ部2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させ、増大させたトルクを差動装置32へ伝達する。
【0033】
減速装置31は、伝達シャフト310と、第1ギヤ(中間ドライブギヤ)311と、第2ギヤ(中間ギヤ)312と、第3ギヤ(ファイルナルドライブギヤ)313と、中間シャフト314と、を有する。モータ部2から出力されるトルクは、モータシャフト22、伝達シャフト310、第1ギヤ311、第2ギヤ312、中間シャフト314及び第3ギヤ313を介して差動装置32の第4ギヤ321へ伝達される。各ギヤのギヤ比及びギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置31は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。モータシャフト22及び伝達シャフト310は、スプライン嵌合される。
【0034】
伝達シャフト310は、回転軸J2を中心としてY軸方向に延び、モータシャフト22とともに回転軸J2を中心として回転する。モータシャフト22は、第1ギヤベアリング341と第2ギヤベアリング342とによって回転可能に支持される。第1ギヤベアリング341は、たとえばボールベアリングであり、後述するようにハウジング5の側板部512に保持される。第2ギヤベアリング342は、たとえばボールベアリングであり、後述する第2ハウジング部材52に保持される。
【0035】
伝達シャフト310は、筒状の中空シャフトである。伝達シャフト310は、中空部3101と、Y軸方向に延びる筒状の伝達シャフト筒部3102と、を有する。中空部3101は、伝達シャフト筒部3102の内側面に囲まれて、伝達シャフト筒部3102の+Y方向側の端部にて後述するギヤ側油路525と繋がる。伝達シャフト筒部3102の-Y方向側の端部は、モータシャフト22の+Y方向側の端部に接続される。また、伝達シャフト筒部3102の+Y方向側の端部は、第2ギヤベアリング342を介して第2ギヤベアリング保持部521により回転可能に保持される。
【0036】
なお、本実施形態の例示に限定されず、伝達シャフト310は、モータシャフト22と同じ部材であってもよく、つまり一体であってもよい。言い換えると、モータシャフト22は、ハウジング5のモータ収容部61とギヤ収容部62とを跨いで延びる中空シャフトであってもよい。この場合、モータシャフト22の+Y方向側の端部は、ギヤ収容部62側に突出し、第2ギヤベアリング342により回転可能に支持される。また、モータシャフト22の中空部220は、第1モータベアリング281を収容する第1モータベアリング保持部531と、第2ギヤベアリング342を収容する第2ギヤベアリング保持部521と、に連通する。
【0037】
第1ギヤ311は、伝達シャフト310の外周面に設けられる。第1ギヤ311は、伝達シャフト310と同一の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。第1ギヤ311及び伝達シャフト310が別の部材である場合には、第1ギヤ311及び伝達シャフト310は、焼き嵌め等にて強固に固定される。第1ギヤ311は、伝達シャフト310とともに、回転軸J2を中心に回転可能である。
【0038】
中間シャフト314は、回転軸J2と平行な中間軸J4に沿って延び、ハウジング5に中間軸J4を中心として回転可能に支持される。中間シャフト314の両端は、第3ギヤベアリング343と第4ギヤベアリング344とに回転可能に支持される。第3ギヤベアリング343は、たとえばボールベアリングであり、ハウジング5の側板部512に保持される。第4ギヤベアリング344は、たとえばボールベアリングであり、第2ハウジング部材52に保持される。
【0039】
第2ギヤ312及び第3ギヤ313は、中間シャフト314の外周面に設けられる。第2ギヤ312及び第3ギヤ313はそれぞれ、中間シャフト314と同一の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。第2ギヤ312と中間シャフト314が別の部材である場合には、両者は、焼き嵌め等にて強固に固定される。第3ギヤ313と中間シャフト314が別の部材である場合には、両者は、焼き嵌め等にて強固に固定される。第3ギヤ313は、第2ギヤ312よりも側板部512側(つまり-Y方向)に配置される。第2ギヤ312及び第3ギヤ313は、中間シャフト314を介して接続される。第2ギヤ312及び第3ギヤ313は、中間軸J4を中心として回転可能である。第2ギヤ312は、第1ギヤ311に噛み合う。第3ギヤ313は、差動装置32の第4ギヤ321と噛み合う。
【0040】
伝達シャフト310のトルクは、第1ギヤ311から第2ギヤ312に伝達される。そして、第2ギヤ312に伝達されたトルクは、中間シャフト314を介して第3ギヤ313に伝達される。さらに、第3ギヤ313に伝達されたトルクは、差動装置32の第4ギヤ321に伝達される。このようにして、減速装置31は、モータ部2から出力されたトルクを、差動装置32に伝達する。
【0041】
<1-2-2.差動装置32>
差動装置32は、駆動シャフトDsに取り付けられる。差動装置32は、モータ部2の出力トルクを駆動シャフトDsに伝達する。駆動シャフトDsは、差動装置32の左右にそれぞれ取り付けられている。差動装置32は、例えば、車両200の旋回時に、左右の車輪(駆動シャフトDs)の速度差を吸収しつつ、左右の駆動シャフトDsに同トルクを伝える機能を有する。差動装置32は、たとえば、第4ギヤ(リングギヤ)321と、ギヤハウジング(不図示)と、一対のピニオンギヤ(不図示)と、ピニオンシャフト(不図示)と、一対のサイドギヤ(不図示)と、を有する。
【0042】
第4ギヤ321は、回転軸J2と平行な差動軸J5を中心として回転可能である。第4ギヤ321には、モータ部2から出力されるトルクが減速装置31を介して伝えられる。また、第4ギヤ321の-Z方向側の部分は、ギヤ収容部62内の下部のオイル溜りPに浸かる。たとえば、オイルCLは、差動装置32の第4ギヤ321が回転するときに、第4ギヤ321の歯面によって掻きあげられる。そのオイルの一部は、ギヤ収容部62の内部に供給され、ギヤ収容部62内の減速装置31及び差動装置32の各々のギヤ、ベアリングの潤滑に利用される。また、掻き揚げられたオイルCLの他の一部は、後述する受け皿部524に溜められた後、後述するギヤ側油路525及び伝達シャフト310の中空部3101を通じてモータシャフト22の中空部220に供給され、ステータ25の冷却に利用される。
【0043】
<1-3.ポンプ4及びオイルクーラ8>
次に、ポンプ4は、電気により駆動する電動ポンプであり、ハーネスケーブル(図示省略)を介してインバータユニット7と接続される。すなわち、ポンプ4は、インバータユニット7により駆動される。ポンプ4には、トロコイダルポンプ、遠心ポンプなどを採用できる。ポンプ4は、ハウジング5に形成されたポンプ収容部64に設けられる。例えば、ポンプ4は、ハウジング5に対して図示しないボルトで固定される。
【0044】
ポンプ4の吸込口41は、後述する第1油路551を塞ぐように、第1油路551に挿入される。ポンプ4の吸込口41は、後述する第1油路551を介して、ストレーナ42と接続される。ストレーナ42は、ハウジング5のギヤ収容部62に配置される。ストレーナ42は、ギヤ収容部62の後述するオイル溜りP(
図2など参照)の中に配置される。ストレーナ42は、その下面に配置された流入口(図示省略)からポンプ4の駆動によってオイルCLを吸い込んで、ポンプ4の吸込口41に供給する。ストレーナ42には、フィルタ等の濾過構造(図示省略)が取り付けられる。濾過構造の取り付けにより、ポンプ4への異物の混入、モータ部2への異物の混入を抑制することができる。
【0045】
ポンプ4の吐出口43は、ポンプ収容部64に開口する。すなわち、ポンプ4から突出されたオイルCLは、ポンプ収容部64を満たす。ポンプ収容部64には、後述する第2油路552が接続される。ポンプ4は、吸込口41から吸い込んだオイルCLを吐出口43から吐出し、第2油路552を介してオイルクーラ8に送出する。
【0046】
オイルクーラ8は、第2油路552を介してポンプ4から送出されるオイルCLと、第2油路552を含む後述のモータ側油路55とは別系統で供給される冷媒REとの熱交換を行う。これにより、オイルクーラ8は、ポンプ4から送出されたオイルCLを冷却する。オイルクーラ8で冷却されたオイルCLは、後述する第3油路553及び第4油路554を介してモータ部2に供給される。冷媒REは、インバータユニット7の図示しないIGBTやSIC素子などを冷却した後、オイルクーラ8に供給される。
【0047】
ポンプ収容部64は、インバータ収容部63を囲む周壁部514に形成される(
図3参照)。たとえば、インバータ収容部63のうちのインバータユニット7が占める空間以外のデッドスペースを利用して、ポンプ収容部64を配置できる。こうすれば、ポンプ4をコンパクトに配置できるので、駆動装置1の小型化に貢献できる。
【0048】
<1-4.ハウジング5>
次に、ハウジング5の構成を説明する。
図6は、ハウジング5の分解図である。
図6に示すように、ハウジング5は、第1ハウジング部材51を有する。第1ハウジング部材51は、筒状の筒部511を有する。つまり、ハウジング5は、筒部511を有する。筒部511は、Y軸方向に延び、ステータ25を囲む。なお、筒部511は、本発明の「モータ筒部」の一例である。また、第1ハウジング部材51は、側板部512をさらに有する。つまり、ハウジング5は、側板部512を有する。側板部512は、筒部511の+Y方向側の端部を覆う。本実施形態では、筒部511及び側板部512は、同一の部材である。但し、この例示に限定されず、筒部511及び側板部512は別の部材であってもよい。
【0049】
また、ハウジング5は、第2ハウジング部材52をさらに有する。第2ハウジング部材52は、側板部512の+Y方向側の端部に取り付けられる。第2ハウジング部材52は及び側板部512は、後述するギヤ収容部62を構成する。
【0050】
また、ハウジング5は、第3ハウジング部材53をさらに有する。なお、第3ハウジング部材53は、本発明の「モータ蓋部」の一例である。第3ハウジング部材53は、筒部511の-Y方向側の端部に取り付けられる。なお、-Y方向側の端部は、本発明の「軸方向一方端部」に対応する。第3ハウジング部材53は、筒部511の-Y方向側の端部を閉じて塞ぐ。
【0051】
第3ハウジング部材53が筒部511と接触する接触部530は、
図3に示すようにY軸方向から見て環状である。ハウジング5は、筒部511と第3ハウジング部材53とが接する一繋がりの接触部530を有する。第3ハウジング部材53は、シャフト筒部221を回転可能に支持する第1モータベアリング281を有する。なお、第1モータベアリング281は、本発明の「ベアリング」の一例である。また、第3ハウジング部材53は、第1モータベアリング281を保持する第1モータベアリング保持部531を有する。なお、第1モータベアリング保持部531は、本発明の「ベアリング保持部」の一例である。第1モータベアリング保持部531は、第1モータベアリング281を介してモータシャフト22の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。
【0052】
また、ハウジング5は、第4ハウジング部材54をさらに有する。第4ハウジング部材54は、筒部511よりも鉛直上方に配置される。なお、鉛直上方は、Y軸方向と垂直である。第4ハウジング部材54は、第1ハウジング部材51の上部に取り付けられる。
【0053】
また、ハウジング5は、モータ収容部61をさらに有する。モータ収容部61は、筒部511で囲まれて、モータ部2を収容する。なお、モータ収容部61は、本発明の「モータ収容空間」の一例である。詳細には、モータ収容部61は、筒部511、側板部512、及び第3ハウジング部材53で囲まれた空間であって、モータ部2を収容する。
【0054】
また、ハウジング5は、ギヤ収容部62をさらに有する。ギヤ収容部62は、側板部512及び第2ハウジング部材52で囲まれた空間であって、ギヤ部3を収容する。ギヤ収容部62の鉛直方向下部には、オイルCLが溜まるオイル溜りPがある。モータ収容部61及びギヤ収容部62は、側板部512により区画される。
【0055】
また、ハウジング5は、インバータユニット7を収容するインバータ収容部63をさらに有する。インバータ収容部63は、筒部511、後述する板部513、及び、後述する周壁部514に囲まれた空間である。インバータ収容部63は、+Z方向に開口する。この開口は、第4ハウジング部材54に覆われる。なお、第4ハウジング部材54には、インバータユニット7が一体的に固定されている。すなわち、第4ハウジング部材54の下側にインバータユニット7が一体的に固定されることで、インバータユニット7が、インバータ収容部63に下向きに固定される。なお、第4ハウジング部材54には、図示しないインバータ冷却路が設けられていてもよい。
【0056】
また、ハウジング5は、ポンプ収容部64を有する。ポンプ収容部64は、ポンプ4を収容する。ポンプ収容部64は、第1ハウジング部材51に形成される。つまり、第1ハウジング部材51は、ポンプ収容部64をさらに有する。
【0057】
次に、第1ハウジング部材51は、板部513と、周壁部514と、をさらに有する。つまり、ハウジング5は、板部513と、周壁部514と、を有する。板部513は、Y軸方向と垂直なX軸方向において筒部511から広がる。周壁部514は、Y軸方向及びX軸方向と垂直なZ軸方向から見て、インバータ収容部63を囲む。詳細には、板部513は、筒部511の外側面から-X方向に広がる。周壁部514は、筒部511の上端部及び板部513から+Z方向に突出し、鉛直方向から見てインバータ収容部63を囲む(
図1参照)。
【0058】
また、第1ハウジング部材51は、挿通孔5120と、第1駆動シャフト通過孔515と、第2モータベアリング保持部516と、第1ギヤベアリング保持部517と、第3ギヤベアリング保持部518と、側板開口519と、をさらに有する。
【0059】
挿通孔5120及び第1駆動シャフト通過孔515は、側板部512に配置され、側板部512をY軸方向に貫通する。挿通孔5120の中心は、回転軸J2と一致する。挿通孔5120の-Y方向側には、第2モータベアリング保持部516が配置される。挿通孔5120の+Y方向側には、第1ギヤベアリング保持部517が配置される。
【0060】
第1駆動シャフト通過孔515には、駆動シャフトDsが回転可能な状態で貫通する。なお、第2ハウジング部材52には、第2駆動シャフト通過孔523が配置される。第2駆動シャフト通過孔523は、第2ハウジング部材52を軸方向に貫通する孔である。駆動シャフトDsは、第2駆動シャフト通過孔523を回転可能な状態で貫通する。第2駆動シャフト通過孔523は、軸方向から見て第1駆動シャフト通過孔515と重なる。これにより、差動装置32の軸方向(Y方向)の両端に配置される駆動シャフトDsは、差動軸J5回りに回転する。駆動シャフトDsと第1駆動シャフト通過孔515との間、及び駆動シャフトDs及び第2駆動シャフト通過孔523間は、オイルCLの漏れを抑制するため、オイルシール(不図示)が設けられる。駆動シャフトDsの先端には、車輪を回転させる車軸(不図示)が接続される。
【0061】
第2モータベアリング保持部516は、挿通孔5120の縁部から-Y方向に延びる。第2モータベアリング保持部516には、第2モータベアリング282の外輪が固定される。第2モータベアリング282の内輪には、モータシャフト22の+Y方向側の端部が固定される。なお、第3ハウジング部材53の+Y方向側には、第1モータベアリング保持部531が配置される。第1モータベアリング保持部531及び第2モータベアリング保持部516の中心軸はそれぞれ、回転軸J2と一致する。第1モータベアリング保持部531には、第1モータベアリング281の外輪が固定される。第1モータベアリング281の内輪にはモータシャフト22の-Y方向側の端部が固定される。これにより、モータ部2は、ロータ21のY軸方向両端を第1モータベアリング281及び第2モータベアリング282を介して、ハウジング5に回転可能に支持される。
【0062】
第1ギヤベアリング保持部517は、挿通孔5120の縁部から+Y方向に延びる。第1ギヤベアリング保持部517には、第1ギヤベアリング341の外輪が固定される。第1ギヤベアリング341の内輪には、伝達シャフト310の-Y方向側の端部が固定される。なお、第2ハウジング部材52の-Y方向側には、第2ギヤベアリング保持部521が配置される。第2ギヤベアリング保持部521及び第1ギヤベアリング保持部517の中心軸は、回転軸J2と一致する。第2ギヤベアリング保持部521には、第2ギヤベアリング342の外輪が固定される。第2ギヤベアリング342の内輪には、伝達シャフト310が固定される。これにより、伝達シャフト310は、第1ギヤベアリング341及び第2ギヤベアリング342を介して、ハウジング5の側板部512及び第2ハウジング部材52に回転可能に支持される。
【0063】
次に、第3ギヤベアリング保持部518は、側板部512から+Y方向に延びる筒状である。第3ギヤベアリング保持部518は、第1ギヤベアリング保持部517よりも-X方向且つ+Z方向に配置される。そして、第3ギヤベアリング保持部518には、第3ギヤベアリング343の外輪が固定される。また、第3ギヤベアリング343の内輪には、中間シャフト314が固定される。なお、第2ハウジング部材52の-Y方向側には、第4ギヤベアリング保持部522が配置される。第4ギヤベアリング保持部522は、第2ハウジング部材52から-Y方向に延びる筒状である。第3ギヤベアリング保持部518及び第4ギヤベアリング保持部522の中心軸は、中間軸J4と一致する。第4ギヤベアリング保持部522には、第4ギヤベアリング344の外輪が固定される。また、第4ギヤベアリング344の内輪には、中間シャフト314の+Y方向側の端部が固定される。これにより、中間シャフト314は、第3ギヤベアリング343及び第4ギヤベアリング344を介して、ハウジング5の側板部512及び第2ハウジング部材52に回転可能に支持される。
【0064】
側板開口519は、モータ収容部61とギヤ収容部62とを区画する側板部512に配置される。ハウジング5は、側板開口519を備える。側板開口519は、側板部512を軸方向に貫通し、モータ収容部61とギヤ収容部62とを接続する。側板開口519は、特に、モータ収容部61の下部とギヤ収容部62の下部とを連通させる。側板開口519は、モータ収容部61内の下部に溜ったオイルCLをギヤ収容部62に移動可能にする。ギヤ収容部62に移動したオイルCLは、オイル溜りPに流入できる。
【0065】
次に、第2ハウジング部材52の構成を説明する。第2ハウジング部材52は、第1ハウジング部材51の側板部512の+Y方向側に取り付けられる。第2ハウジング部材52の形状は、側板部512側に開口する凹形状である。第2ハウジング部材52の開口は、側板部512に覆われる。
図1などに示すように、第2ハウジング部材52は、第2ギヤベアリング保持部521と、第4ギヤベアリング保持部522と、第2駆動シャフト通過孔523と、を有する。なお、これらの説明は、前述したので、ここでは省略する。
【0066】
第2ハウジング部材52は、受け皿部524と、ギヤ側油路525と、ギヤ側制限部材526と、を有する。言い換えると、ハウジング5は、受け皿部524と、ギヤ側油路525と、ギヤ側制限部材526と、を有する。
【0067】
受け皿部524は、第4ギヤ321よりも差動軸J5を基準とする径方向外方に配置され、+Z方向(つまり鉛直上方)に開口する。受け皿部524には、第4ギヤ321によって掻き上げられたオイルCLが貯められる。受け皿部524は、側板部512から+Y方向に延びる。受け皿部524の+Y方向側の端部は、第2ハウジング部材52の-Y方向を向く内面に連結される。
【0068】
ギヤ側油路525は、第2ハウジング部材52の内部に形成される。ギヤ側油路525は、受け皿部524の+Y方向側の端部と第2ギヤベアリング保持部521とを繋ぐオイルCLの通路である。また、油路627の一端は、受け皿部524の+Y方向側の端部と接続されて、受け皿部524と繋がる。ギヤ側油路525の他端は、第2ギヤベアリング保持部521と繋がる。受け皿部524に貯まったオイルCLは、ギヤ側油路525に供給される。
図2に示すように、ギヤ側油路525に供給されたオイルCLの一部は、第2ギヤベアリング342に供給される。また、ギヤ側油路525に供給されたオイルCLの他の一部は、伝達シャフト310の+Y方向側の端部から中空部3101に流入して-Y方向に流れて、モータシャフト22の中空部220に流入する。
【0069】
ギヤ側制限部材526は、ギヤ側油路525から第2ギヤベアリング342に供給されるオイルCLの量を制限する。この制限により、ギヤ側油路525から伝達シャフト310の中空部3101を通じてモータシャフト22の中空部220に供給されるオイルCLを確保できる。ギヤ側制限部材526は、第2ギヤベアリング342とY軸方向に対向する環状部(符号省略)と、環状部の径方向内端部から-Y方向に延びて伝達シャフト310の内部に挿通される筒部(符号省略)と、を有する。環状部は、環状部をY軸方向に貫通する貫通孔(符号省略)を有する。オイルCLは、貫通孔を通じて第2ギヤベアリング342に供給されるとともに、筒部を通じて伝達シャフト310の内部に供給される。
【0070】
<1-5.モータ側油路55>
次に、
図1から
図3及び
図7を参照して、モータ側油路55を説明する。
図7は、モータ側油路55の構成例を示す概略図である。なお、
図7は、+Z方向から-Z方向を見ている。
【0071】
たとえば
図1から
図3に記載の如く、ハウジング5は、オイルCLが流れるモータ側油路55をさらに有する。なお、モータ側油路55は、本発明の「冷媒流路」の一例である。また、オイルCLは、潤滑液であり、本発明の「冷媒」の一例である。モータ側油路55の一部は第1ハウジング部材51に配置され、残りの一部は第3ハウジング部材53に配置される。モータ側油路55は、ポンプ4によってギヤ収容部62のオイル溜りPから吸い上げられてオイルクーラ8で冷却されたオイルCLがモータ部2に向かって流れる流路である。
【0072】
モータ側油路55は、第1油路551と、第2油路552と、第3油路553と、第4油路554と、を含む。第1油路551、第2油路552、及び第3油路553は、第1ハウジング部材51に形成される。
【0073】
第1油路551は、前述の如く、ギヤ収容部62とポンプ4の吸込口41とを接続し、特に、ギヤ収容部62の鉛直方向下部とポンプ4の吸込口41とを接続する。本実施形態では、第1油路551は、側板部512の内部に形成される。
【0074】
第2油路552は、ポンプ4の吐出口43とオイルクーラ8とを接続し、ポンプ4から吐出されたオイルCLをオイルクーラ8に供給する。第3油路553は、後述する接続流路5531を介して第4油路554と接続される。なお、第2油路552及び第3油路553は、第1流路55aを構成する。モータ側油路55は、ポンプ4から送出されるオイルCLが流れる第1流路55aを有する。第1流路55aは、第1ハウジング部材51に配置される。
【0075】
第2油路552及び第3油路553(第1流路55a)は、板部513及び周壁部514のうちのどちらかに配置される。たとえば、実施形態では、第2油路552及び第3油路553は、周壁部514の内部に形成される。但し、この例示に限定されず、第2油路552及び第3油路553(第1流路55a)の少なくともいずれかは、板部513の内部に形成されてもよい。こうすれば、たとえば、インバータ収容部63のうちのインバータユニット7が占める空間以外のデッドスペースを利用して、第2油路552及び第3油路553(第1流路55a)を配置できる。従って、モータ側油路55をコンパクトに配置できるので、駆動装置1の小型化に貢献できる。
【0076】
第4油路554は、第3油路553とモータ収容部61とを接続する。第4油路554は、第3ハウジング部材53内に配置される。言い換えると、第4油路554は、第3ハウジング部材53に形成される貫通孔である。こうすれば、駆動装置1の部品点数を増やすことなく、第4油路554を配置できる。
【0077】
また、モータ側油路55は、接続流路5531をさらに有する。接続流路5531は、モータ収容部61内において、第3油路553(第1流路55a)と第4油路554(第2流路55b)とを接続する。また、軸方向から見て、接続流路5531は、第1ハウジング部材51及び第3ハウジング部材53間の接触部530の内側に配置される(たとえば
図3参照)。こうすれば、確実に接続流路5531の一部をモータ収容部61内に配置できる。
【0078】
本実施形態では、接続流路5531により接続される第3油路553(第1流路55a)の端部及び第4油路554(第2流路55b)の端部は、間隙を有して互いに対向する。こうすれば、接続流路5531を簡易な構成にすることができる。
【0079】
接続流路5531は、接続管5530の内側面に囲まれた空間である。ハウジング5は、第3油路553(第1流路55a)と、第4油路554(第2流路55b)とを接続する筒状の接続管5530を有する。接続管5530は、Y軸方向に延びる。
【0080】
次に、第4油路554は、第1供給路555と、第2供給路556と、第3供給路557と、を有する。第1供給路555は、接続流路5531を介して第3油路553と接続される。第2供給路556は、第1供給路555とオイル供給部558とを接続する。第3供給路557は、第1供給路555とモータシャフト22の中空部220とを接続する。つまり、第4油路554の一方端部は第1供給路555であり、第4油路554の他方端部は第2供給路556及び第3供給路557に分岐する。
【0081】
言い換えると、モータ側油路55は、第1供給路555を有する。なお、第1供給路555は、第2流路55bを構成する。モータ側油路55は、第2流路55bを有する。第1供給路555(第2流路55b)には、モータ部2に供給するオイルCLが流れる。
【0082】
また、モータ側油路55は、第2供給路556と、第3供給路557と、をさらに有する。なお、第2供給路556は第3流路55cを構成し、第3供給路557は第4流路55dを構成する。モータ側油路55は、第3流路55cと、第4流路55dと、を有する。第2供給路556(第3流路55c)は、第1供給路555(第2流路55b)を流れるオイルCLの一部をステータ25の外側面に供給する。第3供給路557(第4流路55d)は、第1供給路555(第2流路55b)を流れるオイルCLの他の一部をモータシャフト22の中空部220に供給する。なお、第3供給路557は、第1モータベアリング281にもオイルCLを供給する。
【0083】
第1供給路555(第2流路55b)、第2供給路556(第3流路55c)、及び第3供給路557(第4流路55d)は第3ハウジング部材53に配置される。こうすれば、駆動装置1の部品点数を増やすことなく、第1供給路555(第2流路55b)、第2供給路556(第3流路55c)、及び第3供給路557(第4流路55d)を配置できる。
【0084】
また、第2供給路556(第3流路55c)及び第3供給路557(第4流路55d)は、Y軸方向と交差する方向に延びる。こうすれば、第2供給路556(第3流路55c)及び第3供給路557(第4流路55d)の配置に伴う第3ハウジング部材53のY軸方向におけるサイズの増大を抑制できる。
【0085】
第3供給路557(第4流路55d)における最小の流路断面積は、第2供給路556(第3流路55c)における最小の流路断面積よりも小さい。モータシャフト22の中空部220にオイルCLを供給する第3供給路557(第4流路55d)の最小の流路断面積がステータ25の外部にオイルCLを供給する第2供給路556(第3流路55c)における最小の流路断面積よりも小さいので、第1供給路555(第2流路55b)を流れるオイルCLは、第3供給路557(第4流路55d)よりも第2供給路556(第3流路55c)に流れ易くなる。従って、モータ側油路55を流れるオイルCLの流圧をあまり強くしなくても、第2供給路556(第3流路55c)に十分な量のオイルCLを流して、ステータ25の外側面に供給することができる。
【0086】
第3供給路557(第4流路55d)は、孔部5570を含む。孔部5570は、第1供給路555(第2流路55b)から延びて、第3ハウジング部材53の内部に配置される。孔部5570は、第1供給路555(第2流路55b)から第1モータベアリング保持部531に連通する。孔部5570の一方端部は、第1供給路555(第2流路55b)に繋がる。孔部5570の他方端部は、第1モータベアリング保持部531の内部に繋がる。好ましくは、孔部5570の最小の流路断面積は、第2供給路556(第3流路55c)における最小の流路断面積よりも小さい。こうすれば、孔部5570の最小の流路断面積の調節により、モータシャフト22の中空部220に供給されるオイルCLの量などを調節できる。但し、この例示は、孔部5570の最小の流路断面積が第2供給路556(第3流路55c)における最小の流路断面積以上である構成を排除しない。
【0087】
次に、第2供給路556(第3流路55c)は、オイル供給部558に繋がる。オイル供給部558は、モータ部2とともにモータ収容部61に収容される。駆動装置1は、オイル供給部558をさらに備える。オイル供給部558は、Y軸方向に延びる筒状の部材であって、ステータ25よりも径方向外方且つ回転軸J2よりも鉛直上方(つまり+Z方向)に配置される。オイル供給部558の内部は、第2供給路556(第3流路55c)と繋がる。また、オイル供給部558の内部は、側板部512をY軸方向に貫通する孔部5121を介して、第3ギヤベアリング保持部518と繋がる。
【0088】
オイル供給部558は、散布孔5581を有する。散布孔5581は、オイル供給部558の内側面から外側面に貫通して、ステータ25の外側面に向かって開口する。こうすれば、オイル供給部558は、第3供給路557(第4流路55d)を流れるオイルCLを散布孔5581からステータ25の外側面に向けて散布でき、ステータ25をその径方向外側面から冷却することができる。
【0089】
なお、第2供給路556(第3流路55c)から供給されるオイルCLをステータの外側面に供給する手段は、上述の例示に限定されない。
図8は、駆動装置1の他の構成例を示す概略図である。なお、
図8は、駆動装置1をX軸方向から見ている。
図8に示すように、第2供給路556(第3流路55c)は、オイル供給部558に代えて、モータオイルリザーバー559に繋がってもよい。モータオイルリザーバー559は、モータ収容部61の上部に配置されて鉛直上方(つまり+Z方向)に開口したトレイである。モータオイルリザーバー74は、モータ収容部61内において、ステータ25よりも鉛直上方に配置される。モータオイルリザーバー74の底部には、滴下孔5590が形成される。滴下孔5590からオイルCLを滴下することで、モータ部2を冷却できる。滴下孔5590は、たとえば、ステータ25のコイルエンド271の上部に形成される。コイルエンド271は、滴下孔5590から滴下されるオイルCLにより冷却される。
【0090】
次に、第3供給路557(第4流路55d)は、第1モータベアリング保持部531を経由して、モータシャフト22の中空部220に繋がる。前述の如く、モータシャフト22の中空部220は、ロータコア23のロータ貫通孔230と接続される。たとえば、モータシャフト22の中空部220は、凹部223、シャフト孔部222、ロータ連通部231(
図5参照)を経由してロータ貫通孔230と繋がる。つまり、ロータ貫通孔230は、第1モータベアリング保持部531及び中空部220を経由して第2供給路556(第3流路55c)と接続される。そのため、ロータ21が回転する際、ロータ貫通孔230のY軸方向における端部からステータ25のY軸方向における端部にオイルCLが供給される。従って、ロータ貫通孔230から供給されるオイルCLにより、ステータ25のY軸方向における端部を冷却することができ、特にステータ25のコイルエンド271を冷却できる。
【0091】
なお、モータ部2を冷却したオイルCLは、モータ収容部61の下部に溜まった後、側板開口519を通じて、ギヤ収容部62の下部のオイル溜りPに流れる。つまり、第2供給路556(第3流路55c)からオイル供給部558を経由してステータ25の径方向外側面に供給されてステータ25を冷却したオイルCLは、モータ収容部61の下部に溜まった後、側板開口519を通じて、ギヤ収容部62の下部のオイル溜りPに流れる。また、第3供給路557(第4流路55d)からロータ貫通孔230を経由してコイルエンド271などに供給されたオイルCLは、モータ収容部61の下部に溜まった後、側板開口519を通じて、ギヤ収容部62の下部のオイル溜りPに流れる。
【0092】
第3供給路557(第4流路55d)には、中空部220へのオイルCLの供給量を制限する供給制限部材5571が配置される。
図7に示すように第1モータベアリング保持部531内において、供給制限部材5571は、シャフト筒部221の-Y方向側の端部に配置される。駆動装置1は、供給制限部材5571を備える。なお、-Y方向側の端部は、本発明の「軸方向一方端部」の一例である。
【0093】
図9は、供給制限部材5571の斜視図である。供給制限部材5571は、回転軸J2と交差する方向に広がる環状部5572と、環状部5572の径方向内端部から+Y方向に延びる筒状の制限部5573と、を有する。なお、+Y方向は、本発明の「軸方向他方」の一例である。制限部5573の内周面で囲まれた空間は、第3供給路557(第4流路55d)の一部である。制限部5573における最小の流路断面積は、第2供給路556(第3流路55c)における最小の流路断面積よりも小さい。このように、シャフト筒部221の-Y方向に供給制限部材5571を配置することにより、モータシャフト22の中空部220に供給されるオイルCLの量を制限して、環状部5572よりも-Y方向側にオイルCLを溜めることができる。さらに、制限部5573の流路断面積、Y軸方向における長さなどの調節により、モータシャフト22の中空部220に供給されるオイルCLの流圧、量などを調節できる。従って、これらの調節により、オイルCLを途切れさせることなく、モータシャフト22の中空部220に供給できる。
【0094】
たとえば本実施形態では、第2供給路556(第3流路55c)の最小の流路断面積と、制限部5573の最小の流路断面積との比は3:1である。両者の流路断面積をこのようにすることにより、供給制限部材5571とモータシャフト22の中空部220とにオイルCLをバランス良く供給できる。
【0095】
好ましくは、第1供給路555(第2流路55b)の最小の流路断面積は、第2供給路556(第3流路55c)の最小の流路断面積と第3供給路557(第4流路55d)の最小の流路断面積との和よりも大きい。こうすれば、第1供給路555(第2流路55b)から第2供給路556(第3流路55c)及び第3供給路557(第4流路55d)に途切れなく十分な量のオイルCLを供給できる。従って、第1供給路555(第2流路55b)、第2供給路556(第3流路55c)、及び第3供給路557(第4流路55d)において、オイルCLの流圧の低下を防止して、この流圧を高めることができる。但し、この例示は、第1供給路555(第2流路55b)の最小の流路断面積が第2供給路556(第3流路55c)の最小の流路断面積と第3供給路557(第4流路55d)の最小の流路断面積との和以下である構成を排除しない。
【0096】
環状部5572は、本実施形態では、回転軸J2を基準とする径方向に広がる。たとえば、Y軸方向から見て、環状部5572の径方向内端部は、シャフト筒部221の-Y方向側の端部における径方向内端部よりも径方向内方に配置される。一方、環状部5572の径方向外端部は、シャフト筒部221よりも径方向外方に配置される。環状部5572は、第1モータベアリング281とY軸方向において対向する。こうすれば、第3供給路557(第4流路55d)から第1モータベアリング281に供給されるオイルCLの量を環状部5572によって制限できる。
【0097】
好ましくは
図9に示すように、環状部5572は、Y軸方向に貫通する貫通孔5574を有する。本実施形態では、4つの貫通孔5574が、回転軸J2を中心とする周方向に等間隔で配置される。但し、この例示に限定されず、貫通孔5574の数は、単数であってもよいし、4以外の複数であってもよい。環状部5572に貫通孔5574を配置することにより、第3供給路557(第4流路55d)から第1モータベアリング281に供給されるオイルCLの量を貫通孔5574の口径、数などによって調節できる。なお、この例示は、環状部5572に貫通孔5574が配置されない構成を排除しない。
【0098】
制限部5573は、シャフト筒部221の-Y方向側の端部に挿通され、中空部220内に配置される。制限部5573は、大径筒部5575と、小径筒部5576と、を有する(
図9参照)。大径筒部5575は、有底筒状であり、環状部5572の径方向内端部から+Y方向に延びる。大径筒部5575のY軸方向と交差する方向に広がる底部には、開口5577が配置される。小径筒部5576は、筒状であり、開口5577の外縁部から+Y方向に延びる。Y軸方向から見て、小径筒部5576の口径は、大径筒部5575の口径よりも小さい。
【0099】
本実施形態では、小径筒部5576の最小の流路断面積は、第2供給路556(第3流路55d)における最小の流路断面積よりも小さい。こうすることで、小径筒部5576の流路断面積、Y軸方向における長さなどの調節により、モータシャフト22の中空部220に供給されるオイルCLの流圧、量などを調節できる。
【0100】
<1-6.第3供給路の変形例>
なお、上述の実施形態では、第3供給路557(第4流路55d)に供給制限部材5571が配置される。但し、この例示に限定されず、第3供給路557(第4流路55d)には供給制限部材5571が配置されなくてもよい。
図10は、第3供給路557(第4流路55d)の変形例を示す。
【0101】
図10では、孔部5570の最小の流路断面積は、第2供給路556(第3流路55c)における最小の流路断面積よりも小さい。孔部5570の最小の流路断面積、孔部5570の一方端部から他方端部までの長さを調節することにより、モータシャフト22の中空部220に供給されるCLの量などを調節できる。
【0102】
また、第2供給路556(第3流路55c)の最小の流路断面積と、孔部5570の最小の流路断面積との比はたとえば3:1である。両者の流路断面積をこのようにすることにより、ステータ25の外側面とモータシャフト22の中空部220とにオイルCLをバランス良く供給できる。
【0103】
<2.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、たとえば、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)及び電気自動車(EV)などの車両の駆動用モータに有用である。
【符号の説明】
【0105】
1・・・駆動装置、2・・・モータ部、21・・・ロータ、22・・・モータシャフト、220・・・中空部、221・・・シャフト筒部、222・・・シャフト孔部、223・・・凹部、23・・・ロータコア、230・・・ロータ貫通孔、231・・ロータコア連通部、24・・・ロータマグネット、25・・・ステータ、26・・・ステータコア、27・・・コイル、271・・・コイルエンド、281・・・第1モータベアリング、282・・・第2モータベアリング、3・・・ギヤ部、31・・・減速装置、310・・・伝達シャフト、3101・・・中空部、3102・・・伝達シャフト筒部、311・・・第1ギヤ、312・・・第2ギヤ、313・・・第3ギヤ、314・・・中間シャフト、32・・・差動装置、321・・・第4ギヤ、341・・・第1ギヤベアリング、342・・・第2ギヤベアリング、343・・・第3ギヤベアリング、344・・・第4ギヤベアリング、4・・・ポンプ、41・・・吸込口、42・・・ストレーナ、43・・・吐出口、5・・・ハウジング、51・・・第1ハウジング部材、511・・・筒部、512・・・側板部、5120・・・挿通孔、5121・・・孔部、513・・・板部、514・・・周壁部、515・・・第1駆動シャフト通過孔、516・・・第2モータベアリング保持部、517・・・第1ギヤベアリング保持部、518・・・第3ギヤベアリング保持部、519・・・側板開口、52・・・第2ハウジング部材、521・・・第2ギヤベアリング保持部、522・・・第4ギヤベアリング保持部、523・・・第2駆動シャフト通過孔、524・・・受け皿部、525・・・ギヤ側油路、526・・・ギヤ側制限部材、53・・・第3ハウジング部材、530・・・接触部、531・・・第1モータベアリング保持部、54・・・第4ハウジング部材、55・・・モータ側油路、55a・・・第1流路、55b・・・第3流路、55c・・第2流路、55d・・・第4流路、551・・・第1油路、552・・第2油路、553・・第3油路、5530・・・接続管、5531・・・接続流路、554・・・第4油路、555・・・第1供給路、556・・・第2供給路、557・・・第3供給路、5570・・・孔部、5571・・・供給制限部材、5572・・・環状部、5573・・・制限部、5574・・・貫通孔、5575・・・大径筒部、5576・・・小径筒部、5577・・・開口、558・・・オイル供給部、5581・・・散布孔、559・・・モータオイルリザーバー、5590・・・滴下孔、61・・・モータ収容部、62・・・ギヤ収容部、63・・・インバータ収容部、64・・・ポンプ収容部、7・・・インバータユニット、8・・・オイルクーラ、CL・・・オイル、Ds・・・駆動シャフト、J2・・・回転軸、J4・・・中間軸、J5・・・差動軸、P・・・オイル溜り、RE・・・冷媒、200・・・車両、150・・・バッテリー