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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 64/62 20250101AFI20250311BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250311BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20250311BHJP
【FI】
H10D64/62 B
H10D30/01 301F
H10D30/66 101T
H10D30/66 102D
H10D64/62 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021047645
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146600
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】玉祖 秀人
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/010405(WO,A1)
【文献】特開2010-103229(JP,A)
【文献】特開平04-102319(JP,A)
【文献】特開2012-099598(JP,A)
【文献】特表2013-520014(JP,A)
【文献】特開2013-055214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 64/62
H10D 30/66
H10D 30/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を備えた炭化珪素基板を準備する工程と、
前記第1主面の上に、少なくとも一部が前記第1主面に接する第1部分と、前記第1部分に繋がる第2部分と、を備えるNi膜を形成する工程と、
前記Ni膜の前記第1部分の上にSi膜を形成する工程と、
前記Si膜を形成する工程の後、前記Ni膜中のNiと前記Si膜中のSiとが反応する第1温度で第1熱処理を行い、反応前前駆体層を形成する工程と、
前記第1熱処理の後、ウェットエッチングにより前記第2部分を除去する工程と、
前記第2部分を除去する工程の後、前記第1温度よりも高い第2温度で第2熱処理を行う工程と、
を有し、
前記反応前前駆体層は、前記Ni膜中の未反応のNiを含み、
前記第2熱処理において、前記反応前前駆体層に含まれる未反応のNiと前記炭化珪素基板中のSiとが反応する炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1温度は、200℃以上400℃以下である請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2温度は、800℃以上1100℃以下である請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記Si膜を形成する工程は、
前記第1部分の上の第3部分と、前記第2部分の上の第4部分と、を備える第1Si膜を形成する工程と、
前記第4部分をケミカルドライエッチングにより除去する工程と、
を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記炭化珪素基板を準備する工程と前記Ni膜を形成する工程との間に、
前記第1主面の上に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールの底面において、前記第1主面を露出させる工程と、
を有し、
前記第1部分は、前記コンタクトホールの底面及び側面に設けられる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記コンタクトホールの底面における前記Si膜の膜厚は、5nm以上100nm以下である請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記コンタクトホールの底面における前記Ni膜の膜厚は、5nm以上100nm以下である請求項5または請求項6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1部分の上に前記Si膜が形成された状態において、前記Si膜に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのSi原子の数をNSi、前記第1部分に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのNi原子の数をNNiとしたとき、NNi≧NSi/2の関係が成り立つ請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記反応前前駆体層は、
前記Ni膜中の未反応のNiを含む第1領域と、
前記Si膜中のSiと反応した前記Ni膜中のNiを含む第2領域と、
を有し、
前記第1領域は、前記炭化珪素基板と前記第2領域との間にある請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の製造工程においては、ドレイン電極等を形成する際に、炭化珪素基板の表面にNi(ニッケル)膜を形成し、熱処理をすることにより、炭化珪素基板に含まれるSi(シリコン)とNiとにより合金化し、オーミック電極を形成する工程がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-276978号公報
【文献】特開2017-175115号公報
【文献】特開2012-99598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化珪素基板は、Siの他にC(炭素)を含むため、炭化珪素に含まれるSiがNiとの合金化に用いられると、未反応のCが生じ、この未反応のCが合金化されたオーミック電極の表面等に析出する場合がある。オーミック電極の表面にCが析出すると、オーミック電極の上に、金属配線層を形成した際に、信頼性の低下等を招くおそれがある。
【0005】
本開示は、オーミック電極の形成の際に炭素の析出を抑制できる炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置の製造方法は、第1主面を備えた炭化珪素基板を準備する工程と、前記第1主面の上に、少なくとも一部が前記第1主面に接する第1部分と、前記第1部分に繋がる第2部分と、を備えるNi膜を形成する工程と、前記Ni膜の前記第1部分の上にSi膜を形成する工程と、前記Si膜を形成する工程の後、NiとSiとが反応する第1温度で第1熱処理を行う工程と、前記第1熱処理の後、ウェットエッチングにより前記第2部分を除去する工程と、前記第2部分を除去する工程の後、前記第1温度よりも高い第2温度で第2熱処理を行う工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、オーミック電極の形成の際に炭素の析出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、参考例に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図2図2は、参考例に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図3図3は、参考例に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図4図4は、参考例に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図5図5は、参考例に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図6図6は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図7図7は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図8図8は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図9図9は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図10図10は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図11図11は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図12図12は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図13図13は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図14図14は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図15図15は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図16図16は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図17図17は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図18図18は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図19図19は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図20図20は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図21図21は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図22図22は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図23図23は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図24図24は、炭化珪素半導体装置の一例を示す断面図である。
図25図25は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図26図26は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図27図27は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、第1主面を備えた炭化珪素基板を準備する工程と、前記第1主面の上に、少なくとも一部が前記第1主面に接する第1部分と、前記第1部分に繋がる第2部分と、を備えるNi膜を形成する工程と、前記Ni膜の前記第1部分の上にSi膜を形成する工程と、前記Si膜を形成する工程の後、NiとSiとが反応する第1温度で第1熱処理を行う工程と、前記第1熱処理の後、ウェットエッチングにより前記第2部分を除去する工程と、前記第2部分を除去する工程の後、前記第1温度よりも高い第2温度で第2熱処理を行う工程と、を有する。
【0012】
第1熱処理において、Ni膜のNiのほとんどがSi膜のSiとの反応による反応前駆体層の生成に費やされ、反応前駆体層は第1主面の近傍にSi膜のSiと反応していない未反応の僅かなNiを含む。第2熱処理において、未反応の僅かなNiが、炭化珪素基板から拡散してくるSiと反応し、オーミック電極が形成される。このとき、炭化珪素基板から拡散するSiの量は僅かであるため、炭素の析出を抑制できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記第1温度は、200℃以上400℃以下であってもよい。この場合、ニッケルシリサイドの反応前駆体層を形成しやすい。
【0014】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記第2温度は、800℃以上1100℃以下であってもよい。この場合、反応前駆体層からオーミック電極を形成しやすい。
【0015】
〔4〕 〔1〕~〔3〕において、前記Si膜を形成する工程は、前記第1部分の上の第3部分と、前記第2部分の上の第4部分と、を備える第1Si膜を形成する工程と、前記第4部分をケミカルドライエッチングにより除去する工程と、を有してもよい。この場合、オーミック電極を形成する範囲を制御しやすい。
【0016】
〔5〕 〔1〕~〔4〕において、前記炭化珪素基板を準備する工程と前記Ni膜を形成する工程との間に、前記第1主面の上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールの底面において、前記第1主面を露出させる工程と、を有し、前記第1部分は、前記コンタクトホールの底面及び側面に設けられてもよい。この場合、コンタクトホール内にオーミック電極を形成しやすい。
【0017】
〔6〕 〔5〕において、前記コンタクトホールの底面における前記Si膜の膜厚は、5nm以上100nm以下であってもよい。Si膜の膜厚が5nm未満であると、面内の局所ばらつきが数nmであっても、局所ばらつきの影響を無視できず、プロセスを制御しにくくなる。また、Si膜の膜厚が100nm超であると、反応前駆体層の組成を十分に制御できなくなるおそれがある。
【0018】
〔7〕 〔5〕又は〔6〕において、前記コンタクトホールの底面における前記Ni膜の膜厚は、5nm以上100nm以下であってもよい。Ni膜の膜厚が5nm未満であると、面内の局所ばらつきが数nmであっても、局所ばらつきの影響を無視できず、プロセスを制御しにくくなる。また、Ni膜の膜厚が100nm超であると、反応前駆体層の組成を十分に制御できなくなるおそれがある。
【0019】
〔8〕 〔1〕~〔7〕において、前記第1部分の上に前記Si膜が形成された状態において、前記Si膜に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのSi原子の数をNSi、前記第1部分に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのNi原子の数をNNiとしたとき、NNi≧NSi/2の関係が成り立ってもよい。炭化珪素とニッケルとを反応させて形成されるオーミック電極は、NiSiを主成分とする。反応前に、Niが過剰気味であって、NNi≧NSi/2の関係が成り立っていると、良好な反応性でNiSiを主成分とするオーミック電極を形成しやすい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0021】
〔参考例〕
まず、炭化珪素半導体装置の製造方法において、炭化珪素基板の表面にオーミック電極を形成する工程について説明する。炭化珪素基板の表面に、オーミック電極を形成する際には、炭化珪素基板の表面に、スパッタリングによりNi膜を形成した後、ウェットエッチング等により、不要なNi膜を除去する。その後、加熱することにより、炭化珪素基板に含まれるSiとNiとを合金化させて、オーミック電極となるニッケルシリサイド膜を形成する。この際、Niとの合金化のために炭化珪素基板の表面のSiが奪われるため、未反応のCがニッケルシリサイド膜の表面に析出する。その後、スパッタリングによりAl膜を形成し配線層を形成した場合、オーミック電極となるニッケルシリサイド膜の表面にCが析出していると、Al膜が剥がれやすいため、信頼性の低下を招くおそれがある。
【0022】
このための対策として様々な方法が考えられる。
【0023】
例えば、炭化珪素基板の表面に、NiとSiを含む膜を形成した後、所望の領域以外のNiとSiを含む膜を除去して、熱処理をする方法が考えられる。この方法では、NiとSiを含む膜のNiとSiとを合金化させ、オーミック電極を形成するため、オーミック電極を形成する際に、炭化珪素基板に含まれるSiが奪われることはほとんどない。従って、Cの析出を防ぎやすい。
【0024】
しかしながら、Niはドライエッチングによる除去が困難であり、Siはウェットエッチングによる除去が困難である。このため、NiとSiを含む膜は、ドライエッチングでもウェットエッチングでも除去することが困難である。また、所望の領域にNiとSiを含む膜を形成する方法として、リフトオフにより形成する方法が挙げられる。しかし、リフトオフでは、剥離した膜が再付着する場合があり、信頼性の低下を招くため好ましくはない。
【0025】
従って、炭化珪素基板の表面に、NiとSiを含む膜を形成して熱処理をする方法では、所望の領域以外の領域のNiとSiを含む膜を除去することは困難である。このため、所望の領域にNiとSiを含む膜を残すことは容易ではない。
【0026】
また、上記以外の方法としては、レジスト等を用いることなくオーミック電極を形成する方法が考えられる。図1図5は、参考例に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0027】
参考例では、まず、図1に示されるように、炭化珪素基板10の表面となる第1主面10aに、コンタクトホール21を有する層間絶縁膜となる絶縁膜20を形成し、コンタクトホール21及び絶縁膜20を覆うTiN膜30を形成する。その後、コンタクトホール21の底面21aのTiN膜30を除去することにより開口部30aを形成し、炭化珪素基板10の第1主面10aを露出させる。
【0028】
次に、図2に示されるように、スパッタリングによりNi膜40を形成する。コンタクトホール21の底面21aにおいて露出している炭化珪素基板10の第1主面10aと、TiN膜30との上に、Ni膜40が形成される。
【0029】
次に、500℃以上700℃以下の温度で熱処理を行う。この結果、図3に示されるように、炭化珪素基板10とNi膜40との界面において、NiとSiとが合金化したニッケルシリサイドの反応前駆体層41が形成される。なお、TiN膜30は、この熱処理において、Niが絶縁膜20に進入することを防ぐために形成されている。
【0030】
次に、図4に示されるように、Ni膜40を希塩酸又は希硝酸を用いたウェットエッチングにより除去する。この結果、TiN膜30の開口部30aの炭化珪素基板10の第1主面10aに反応前駆体層41が残る。
【0031】
次に、図5に示されるように、反応前駆体層41を約1000℃の温度で熱処理をすることにより、オーミック電極41aが形成される。
【0032】
このように形成されるオーミック電極41aは、厚さが数nmと極めて薄いため、この後の工程において、配線層を形成する際の逆スパッタリングにより、オーミック電極41aが除去されてしまう場合がある。また、この方法では、オーミック電極41aの表面に未反応のCが析出してしまう。
【0033】
〔第1実施形態〕
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図6は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図7図12は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0034】
まず、図7に示されるように、第1主面10aと、反対側の第2主面10bとを有する炭化珪素基板10を準備し(ステップS101)、第1主面10aを覆うNi膜140をスパッタリングにより形成する(ステップS102)。Ni膜140は、少なくとも一部が炭化珪素基板10の第1主面10aに接する第1部分141と、第1部分141に繋がる第2部分142とを備える。
【0035】
次に、図8に示されるように、Ni膜140の上にSi膜150をスパッタリングにより形成する(ステップS103)。Si膜150は、第1部分141の上の第3部分153と、第2部分142の上の第4部分154とを備える。
【0036】
次に、図9に示されるように、Si膜150の第4部分154を除去する(ステップS104)。具体的には、Si膜150の第3部分153を覆う不図示のレジストパターンを形成し、ケミカルドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない第4部分154を除去する。第4部分154の除去により、Ni膜140の第2部分142がSi膜150の第3部分153から露出する。その後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。Ni膜140の上にSi膜150の第3部分153が残る。第4部分154の除去前の、第3部分153及び第4部分154を備えたSi膜150は第1Si膜の一例である。
【0037】
次に、200℃以上400℃以下、例えば、約350℃の温度で第1熱処理を行う(ステップS105)。第1熱処理の温度は、NiとSiとは反応するが、SiCに含まれるSiとNiとは反応しない温度である。第1熱処理において、Ni膜140の第1部分141のNiとSi膜150の第3部分153のSiとが反応し、図10に示されるように、ニッケルシリサイドの反応前駆体層161が形成される。このとき、Si膜150から第4部分154が除去されているため、Ni膜140の第2部分142はSi膜150と反応せず、そのまま残る。本開示においては、第1熱処理の温度を第1温度ということがある。第1温度は炭化珪素基板10の温度である。例えば、第1熱処理は炉を用いて行われ、炭化珪素基板10の温度は炉内温度と実質的に等しい。
【0038】
Ni膜140のNiとSi膜150のSiとの反応は、Ni膜140とSi膜150との界面から進行する。第1熱処理は、Ni膜140のNiのすべてがSiと反応する前に停止する。このため、反応前駆体層161は第1主面10aの近傍に、Si膜150の第3部分153のSiと反応していない未反応の僅かなNiを含む。
【0039】
次に、図11に示されるように、ウェットエッチングにより、Ni膜140の第2部分142を除去する(ステップS106)。第1主面10aの上に反応前駆体層161が残る。反応前駆体層161に含まれる未反応のNiはウェットエッチングのエッチャントに晒されないため、反応前駆体層161中に残存する。
【0040】
次に、800℃以上1100℃以下、例えば、約1000℃の温度で第2熱処理を行う(ステップS107)。第2熱処理の温度は、第1温度よりも高く、SiCに含まれるSiと、反応前駆体層161に含まれるNiとが反応する温度である。第2熱処理において、反応前駆体層161に含まれる未反応のNiが炭化珪素基板10に含まれるSiと反応する。この結果、図12に示されるように、反応前駆体層161から、第1主面10aとオーミック接触する電極層162が形成される。電極層162には炭化珪素基板10に含まれるSiが拡散しており、電極層162はオーミック電極として機能し得る。本開示においては、第2熱処理の温度を第2温度ということがある。第2温度は炭化珪素基板10の温度である。例えば、第2熱処理は炉を用いて行われ、炭化珪素基板10の温度は炉内温度と実質的に等しい。
【0041】
本実施形態では、電極層162の形成の際に、反応前駆体層161に含まれる未反応の僅かなNiが、炭化珪素基板10から拡散してくるSiと反応する。このため、炭化珪素基板10から拡散するSiの量は僅かであり、未反応のCが生成される量は僅かである。従って、電極層162の表面にCが析出することはほとんどない。このため、電極層162の上にAl等の配線層を形成しても、配線層の電極層162からの剥がれを抑制できる。なお、配線層は、TiNとAlとを順で積層した膜であってもよい。
【0042】
本実施形態では、第3部分153及び第4部分154を備えるSi膜150を形成し、その後、第4部分154をケミカルドライエッチングにより除去している。このため、電極層162を形成する範囲を制御しやすい。
【0043】
また、第4部分154の除去に伴って、Ni膜140の第2部分142が露出する。第4部分154の除去が反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)により行われた場合、第2部分142が露出したときにイオンの衝撃により第2部分142からNiが飛散するおそれがある。Niは磁性体であるため、Niが飛散すると、イオンの動きが乱され、エッチングの制御が不安定になるおそれがある。これに対し、本実施形態では、Si膜150の第4部分154の除去がケミカルドライエッチングにより行われるため、Niの飛散が抑制される。また、Niが飛散したとしても、ケミカルドライエッチングに用いられるラジカルはNiの磁性の影響を受けない。従って、本実施形態では、エッチングを安定して実施できる。
【0044】
第1温度が200℃以上400℃以下であるため、ニッケルシリサイドの反応前駆体層161を形成しやすい。第2温度が800℃以上1100℃以下であるため、反応前駆体層161から、オーミック電極として機能し得る電極層162を形成しやすい。
【0045】
好ましくは、Ni膜140及びSi膜150は、Si膜150に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのSi原子の数をNSi、Ni膜140に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのNi原子の数をNNiとしたとき、NNi≧NSi/2の関係が成り立つような膜厚で形成する。この場合、反応前に、Niが過剰気味であって、NNi≧NSi/2の関係が成り立っており、NiSiを主成分とする電極層162を良好な反応性で形成しやすい。なお、厚さ方向とは、Ni膜140及びSi膜150の膜厚方向を意味するものとし、Ni膜140及びSi膜150の膜面に対し垂直な方向である。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。図13は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図14図23は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0047】
まず、図14に示されるように、第1主面10aと、反対側の第2主面10bとを有する炭化珪素基板10を準備し(ステップS201)、炭化珪素基板10の第1主面10aに、層間絶縁膜となる膜厚が0.8μmの絶縁膜20を化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成する(ステップS202)。絶縁膜20は、例えば酸化シリコン膜である。
【0048】
次に、図15に示されるように、絶縁膜20にコンタクトホール21を形成する(ステップS203)。具体的には、絶縁膜20の上面20aに、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光現像を行うことにより、コンタクトホール21が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。その後、RIE等のドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域の絶縁膜20を除去し、炭化珪素基板10の第1主面10aを露出させることによりコンタクトホール21を形成する。その後、不図示のレジストパターンは、有機溶剤等により除去する。底面21aが炭化珪素基板10の第1主面10aとなり、側面21bが絶縁膜20となるコンタクトホール21が形成される。
【0049】
次に、図16に示されるように、コンタクトホール21の底面21a及び側面21bと、絶縁膜20の上面20aとを覆うTiN膜130をスパッタリングにより形成する(ステップS204)。形成されるTiN膜130の膜厚t1は、10nm以上200nm以下である。TiN膜130の膜厚t1は、TiN膜130のうちコンタクトホール21の底面21aにおける厚さである。
【0050】
次に、図17に示されるように、コンタクトホール21の底面21aのTiN膜130を除去することにより開口部130aを形成する(ステップS205)。この結果、炭化珪素基板10の第1主面10aが開口部130aから露出する。
【0051】
次に、図18に示されるように、露出している炭化珪素基板10の第1主面10aの上と、TiN膜130の上とに、スパッタリングによりNi膜140を形成する(ステップS206)。Ni膜140は、少なくとも一部が炭化珪素基板10の第1主面10aに接する第1部分141と、第1部分141に繋がる第2部分142とを備える。本実施形態では、概ね、第1部分141は、コンタクトホール21の底面21aを覆うとともに、TiN膜130を介して側面21bを覆い、第2部分142は、TiN膜130を介して絶縁膜20の上面20aを覆う。形成されるNi膜140の膜厚t2は、例えば、5nm以上100nm以下である。Ni膜140の膜厚t2は、Ni膜140のうちコンタクトホール21の底面21aにおける厚さである。なお、第1部分141と第2部分142との境界は厳密でなくてもよい。
【0052】
次に、図19に示されるように、Ni膜140の上にSi膜150をスパッタリングにより形成する(ステップS207)。Si膜150は、第1部分141の上の第3部分153と、第2部分142の上の第4部分154とを備える。形成されるSi膜150の膜厚t3は、例えば、5nm以上100nm以下である。Si膜150の膜厚t3は、Si膜150のうちコンタクトホール21の底面21aにおける厚さである。本実施形態では、概ね、第3部分153は、Ni膜140及びTiN膜130を介してコンタクトホール21の底面21a及び側面21bを覆い、第4部分154は、Ni膜140及びTiN膜130を介して絶縁膜20の上面20aを覆う。なお、第3部分153と第4部分154との境界は厳密でなくてもよい。
【0053】
次に、図20に示されるように、Si膜150の第4部分154を除去する(ステップS208)。具体的には、Si膜150の第3部分153を覆う不図示のレジストパターンを形成し、ケミカルドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない第4部分154を除去する。第4部分154の除去により、Ni膜140の第2部分142がSi膜150の第3部分153から露出する。その後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。Ni膜140の上にSi膜150の第3部分153が残る。
【0054】
次に、200℃以上400℃以下、例えば、約350℃の温度で第1熱処理を行う(ステップS209)。第1熱処理の温度は、NiとSiとは反応するが、SiCに含まれるSiとNiとは反応しない温度である。第1熱処理において、Ni膜140の第1部分141のNiとSi膜150の第3部分153のSiとが反応し、図21に示されるように、ニッケルシリサイドの反応前駆体層261が形成される。このとき、Si膜150から第4部分154が除去されているため、Ni膜140の第2部分142はSi膜150と反応せず、そのまま残る。
【0055】
Ni膜140のNiとSi膜150のSiとの反応は、Ni膜140とSi膜150との界面から進行する。第1熱処理は、Ni膜140のNiのすべてがSiと反応する前に停止する。このため、反応前駆体層261は、コンタクトホール21の底面21aの近傍に、Si膜150の第3部分153のSiと反応していない未反応の僅かなNiを含む。
【0056】
次に、図22に示されるように、ウェットエッチングにより、Ni膜140の第2部分142を除去する(ステップS210)。コンタクトホール21の底面21a及び側面21bに反応前駆体層261が残る。反応前駆体層261に含まれる未反応のNiはウェットエッチングのエッチャントに晒されないため、反応前駆体層261中に残存する。
【0057】
次に、800℃以上1100℃以下、例えば、約1000℃の温度で第2熱処理を行う(ステップS211)。第2熱処理の温度は、第1温度よりも高く、SiCに含まれるSiと、反応前駆体層261に含まれるNiとが反応する温度である。第2熱処理において、反応前駆体層261に含まれる未反応のNiが炭化珪素基板10に含まれるSiと反応する。この結果、図23に示されるように、反応前駆体層261から、炭化珪素基板10の第1主面10aとオーミック接触するオーミック領域262aを含む電極層262が形成される。オーミック領域262aはオーミック電極として機能し得る。
【0058】
オーミック領域262aには、炭化珪素基板10に含まれていたSiが拡散している。本実施形態では、オーミック領域262aの形成の際に、反応前駆体層261に含まれる未反応の僅かなNiが、炭化珪素基板10から拡散してくるSiと反応する。このため、炭化珪素基板10から拡散するSiの量は僅かであり、未反応のCが生成される量は僅かである。従って、電極層262の表面にCが析出することはほとんどない。このため、電極層262の上にAl等の配線層を形成しても、配線層の電極層262からの剥がれを抑制できる。なお、配線層は、TiNとAlとを順で積層した膜であってもよい。
【0059】
また、本実施形態においても、Si膜150の第4部分154の除去がケミカルドライエッチングにより行われるため、エッチングを安定して実施できる。
【0060】
本実施形態では、Ni膜140の第1部分141は、コンタクトホール21の底面21a及び側面21bに設けられる。このため、コンタクトホール21内にオーミック領域262aを含む電極層262を形成しやすい。
【0061】
Si膜150の膜厚は、好ましくは、5nm以上100nm以下であり、より好ましくは、10nm以上80nm以下である。また、Ni膜140の膜厚は、好ましくは、5nm以上100nm以下であり、より好ましくは、10nm以上80nm以下である。これらは、安定した厚さの反応前駆体層261を得るためである。
【0062】
好ましくは、Ni膜140及びSi膜150は、コンタクトホール21の底面21aにおいて、Si膜150に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのSi原子の数をNSi、Ni膜140に含まれる厚さ方向に積算される単位面積当たりのNi原子の数をNNiとしたとき、NNi≧NSi/2の関係が成り立つような膜厚で形成する。この場合、反応前に、Niが過剰気味であって、NNi≧NSi/2の関係が成り立っており、NiSiを主成分とする電極層262を良好な反応性で形成しやすい。
【0063】
(炭化珪素半導体装置の構成)
次に、第2実施形態に係る方法により製造される炭化珪素半導体装置の一例について説明する。図24は、炭化珪素半導体装置の一例を示す断面図である。
【0064】
炭化珪素半導体装置1は、図24に示されるように、例えば、縦型MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。具体的には、炭化珪素半導体装置1は、炭化珪素基板10と、電極層262と、配線層70と、ゲート絶縁膜25と、ゲート電極71とを有し、ゲート電極71は、層間絶縁膜となる絶縁膜20に覆われている。炭化珪素基板10は、第1n型層11、第2n型層12、p型ボディ層13、n型ソース領域14及びp型領域18を有する。第1n型層11及びn型ソース領域14は、第2n型層12よりも高濃度でn型不純物元素がドープされている。p型領域18は、p型ボディ層13よりも高濃度で不純物元素がドープされている。
【0065】
電極層262は、第1実施形態に倣って形成されており、炭化珪素基板10の第1主面10a上において、n型ソース領域14にオーミック接触している。電極層262の厚さは、例えば、100nm以上200nm以下程度である。電極層262の上及び絶縁膜20の上面20aには、配線層70が形成されている。
【0066】
ゲート電極71は、炭化珪素基板10の第1主面10a上にゲート絶縁膜25を介して設けられており、p型ボディ層13の表面側であるチャネル領域13aに対向している。また、炭化珪素基板10の第2主面10b上にドレイン電極72が設けられている。
【0067】
炭化珪素半導体装置1では、電極層262から配線層70が剥離しにくい。
【0068】
なお、炭化珪素基板10のドレイン電極72に面する側にp型コレクタ層を形成することにより、縦型MOSFETの代わりに縦型IGBT(insulated gate bipolar transistor)としてもよい。また、炭化珪素基板10に形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれる構造(トレンチゲート構造)であってもよい。
【0069】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として、Ni膜140の第1部分141及び第2部分142の各範囲と、Si膜150の第3部分153及び第4部分154の各範囲との点で第2実施形態と相違する。図25図27は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0070】
第3実施形態では、図25に示されるように、まず、第2実施形態と同様にして、Si膜150の形成までの処理を行う。第3実施形態では、概ね、第1部分141は、TiN膜130から離れてコンタクトホール21の底面21aを覆い、第2部分142は、底面21aの第1部分141とTiN膜130との間の部分を覆うとともに、TiN膜130を介して側面21b及び絶縁膜20の上面20aを覆う。第3部分153は第1部分141の上にあり、第4部分154は第2部分142の上にある。Si膜150の形成の後、Si膜150の第3部分153を覆うレジストパターン371を形成する。
【0071】
次に、第2実施形態と同様に、Si膜150のケミカルドライエッチングを行う。この結果、図26に示されるように、レジストパターン371が形成されていない第4部分154が除去される。その後、レジストパターン371は有機溶剤等により除去する。Ni膜140の上にSi膜150の第3部分153が残る。
【0072】
次に、第2実施形態と同様に、第1熱処理から第2熱処理までの処理(ステップS209~S211)を行う。この結果、図27に示されるように、炭化珪素基板10の第1主面10aとオーミック接触する電極層362が開口部130aの内側にTiN膜130から離れて形成される。電極層362には炭化珪素基板10に含まれるSiが拡散しており、電極層362はオーミック電極として機能し得る。
【0073】
第3実施形態によっても第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 炭化珪素半導体装置
10 炭化珪素基板
10a 第1主面
10b 第2主面
11 第1n型層
12 第2n型層
13 p型ボディ層
13a チャネル領域
14 n型ソース領域
18 p型領域
20 絶縁膜
20a 上面
21 コンタクトホール
21a 底面
21b 側面
25 ゲート絶縁膜
30 TiN膜
30a 開口部
40 Ni膜
41 反応前駆体層
41a オーミック電極
70 配線層
71 ゲート電極
72 ドレイン電極
130 TiN膜
130a 開口部
140 Ni膜
141 第1部分
142 第2部分
150 Si膜
153 第3部分
154 第4部分
161 反応前駆体層
162 電極層
261 反応前駆体層
262 電極層
262a オーミック領域
362 電極層
371 レジストパターン
図1
図2
図3
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