(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20250311BHJP
C08F 212/00 20060101ALI20250311BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20250311BHJP
C08F 20/44 20060101ALI20250311BHJP
C08F 291/02 20060101ALI20250311BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20250311BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20250311BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C08F2/00
C08F212/00
C08F220/10
C08F20/44
C08F291/02
C08L25/12
C08L33/04
C08L55/02
(21)【出願番号】P 2021049998
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲田 賢二郎
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054183(WO,A1)
【文献】特開2020-111639(JP,A)
【文献】特開2011-132426(JP,A)
【文献】特表2006-519900(JP,A)
【文献】特表2011-503276(JP,A)
【文献】特開2016-189166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00
C08F 212/00
C08F 220/10
C08F 20/44
C08F 291/02
C08L 25/12
C08L 33/04
C08L 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)撹拌機を備えた重合反応器に単量体(a)を含む樹脂原料を供給して重合反応させ、熱可塑性樹脂を含む重合体(A)を得る重合工程と、(II)前記重合体(A)から前記熱可塑性樹脂を取り出す回収工程を含む熱可塑性樹脂の製造方法であって、
前記(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性を算出し、
算出された前記物性に基づき、前記(I)工程及び前記(II)工程における前記運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御する
熱可塑性樹脂の製造方法であり、
前記単量体(a)が、芳香族ビニル系単量体(a1)およびシアン化ビニル系単量体(a2)を含む単量体であるか、または芳香族ビニル系単量体(a1)、シアン化ビニル系単量体(a2)および不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a3)を含む単量体であり、
前記(I)工程で用いる少なくとも三つの運転データが、前記重合反応器内の連鎖移動剤濃度、前記重合反応器内の重合開始剤濃度及び前記重合反応器内の液相温度を含み、前記(II)工程で用いる少なくとも一つの運転データが押出機動力を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の物性が、JIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の物性を算出する方法としてソフトセンサーを用いることを特徴とする、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂の製造方法で熱可塑性樹脂を製造し、次いで、(III)前記熱可塑性樹脂と、前記重合体(A)とは異なる重合体(B)とを溶融状態において混合することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記重合体(B)が、ゴム状重合体の存在下で芳香族ビニル系単量体(b1)およびシアン化ビニル系単量体(b2)を含む単量体(b)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B1)であることを特徴とする、請求項
4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記単量体(b)が、前記芳香族ビニル系単量体(b1)および前記シアン化ビニル系単量体(b2)と共重合可能な単量体(b3)をさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記単量体(b3)が、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体であることを特徴とする、請求項
6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データと、前記(III)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の物性を算出し、算出された前記物性に基づき、前記(I)工程、前記(II)工程及び前記(III)工程における前記運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御することを特徴とする、請求項
4~
7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記(III)工程で用いる少なくとも一つの運転データが、押出機動力を含むことを特徴とする、請求項
8に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物の物性が、JIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項
8又は
9に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物の物性を算出する方法としてソフトセンサーを用いることを特徴とする、請求項
8~1
0のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の製造において、樹脂の物性は以下の方法およびその方法を具体化する装置を用いて測定および制御されている。例えば、ビニル系樹脂を連続生産する場合では、まず、重合反応器に樹脂原料(ビニル系単量体等)を連続的に供給し、樹脂の製造条件を過去の運転条件に合わせて稼働させ、重合反応を行う(重合工程)。次に、この稼働状態において、重合工程以後の多くの工程を経た段階から、造粒された樹脂を採取して物性を測定する。この物性の測定値は、予め設定された物性の目標値と比較され、測定値と目標値との差異が確認される。最後に、この差異を調整するために、重合工程における重合条件の変更調整が行われる。
【0003】
しかし、上記の製造方法では、重合反応させてから最終製品となる樹脂の採取と物性評価を経て重合条件の変更調整に至るまでにかなりの時間を要するため(滞留時間による遅れ)、樹脂の物性を安定化させることが困難であるという問題を有していた。
【0004】
前記の問題を解決するために、従来より樹脂の製造ラインにオンライン計測器を設置し、計測値から樹脂の物性を連続的に算出することで、重合条件を調整する樹脂の製造方法が提案されている。
例えば、樹脂の製造ラインの最終反応器出口に粘度計を設置することで、最終的に得られる樹脂の粘度を連続的に測定し、その測定値をもとに重合条件を制御する樹脂の製造方法が開示されている(特許文献1~4参照)。また、反応器の運転データから、粘度を予測する方法(特許文献5参照)や、樹脂の造粒装置から、粘度を予測し、重合条件を制御する樹脂の製造方法(特許文献6参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-80577号公報
【文献】特開平9-71605号公報
【文献】特開2002-145966号公報
【文献】特開2005-23213号公報
【文献】特開2011-245742号公報
【文献】特開2020-111639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されている樹脂の製造方法では、製造工程中に追加で分析機器を設置する必要があり、製造工程が複雑化する。また、従来から備わっている各製造工程の運転データから樹脂の物性を算出し、重合条件を変更することで、得られる樹脂の物性ばらつきを低減することも可能であるが、従来提案された方法では精度が十分でなく、物性ばらつきの小さい樹脂を得ることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、物性のばらつきが小さい熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂組成物を得ることのできる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、重合反応器の運転データから最終製品となる樹脂の物性をリアルタイムで把握することは可能だが、重合後の回収工程の条件によっても樹脂の物性がばらつくこと、重合反応器の運転データの種類が少ない場合や、造粒工程を含む回収工程のみのデータでは、重合反応器で得られた重合体の樹脂特性を十分に予測できないため、最終製品となる熱可塑性樹脂の物性がばらつくことを発見した。そして、熱可塑性樹脂の製造方法について鋭意検討した結果、樹脂製造工程の上流プロセスである、重合反応器から得られる少なくとも三つ以上の運転データと、熱可塑性樹脂の回収工程から得られる少なくとも一つ以上の運転データから、最終製品となる熱可塑性樹脂の物性をリアルタイムで把握し、該物性を指標に重合工程または回収工程における少なくとも一つのプロセス変数を制御することで、物性のばらつきが小さい熱可塑性樹脂が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、次の構成をとる。
(1)(I)撹拌機を備えた重合反応器に単量体(a)を含む樹脂原料を供給して重合反応させ、熱可塑性樹脂を含む重合体(A)を得る重合工程と、(II)前記重合体(A)から前記熱可塑性樹脂を取り出す回収工程を含む熱可塑性樹脂の製造方法であって、前記(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性を算出し、算出された前記物性に基づき、前記(I)工程及び前記(II)工程における前記運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御することを特徴とする熱可塑性樹脂の製造方法。
(2)前記重合反応器内の設定温度、前記重合反応器内の設定圧力、重合開始剤供給量設定値および連鎖移動剤供給量設定値からなる群から選択される少なくとも一つを変化させることにより、前記少なくとも一つのプロセス変数を制御することを特徴とする、前記(1)に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
(3)前記(I)工程で用いる少なくとも三つの運転データが、前記重合反応器内の連鎖移動剤濃度、前記重合反応器内の重合開始剤濃度及び前記重合反応器内の液相温度を含み、前記(II)工程で用いる少なくとも一つの運転データが押出機動力を含むことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
(4)前記単量体(a)が、芳香族ビニル系単量体(a1)およびシアン化ビニル系単量体(a2)からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
(5)前記単量体(a)が、前記芳香族ビニル系単量体(a1)および前記シアン化ビニル系単量体(a2)と共重合可能な単量体(a3)をさらに含むことを特徴とする、前記(4)に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
(6)前記単量体(a3)が、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体であることを特徴とする、前記(5)に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
(7)前記熱可塑性樹脂の物性が、JIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
(8)前記熱可塑性樹脂の物性を算出する方法としてソフトセンサーを用いることを特徴とする、前記(1)~(7)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
【0010】
(9)前記(1)~(8)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂の製造方法で熱可塑性樹脂を製造し、次いで、(III)前記熱可塑性樹脂と、前記重合体(A)とは異なる重合体(B)とを溶融状態において混合することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(10)前記重合体(B)が、ゴム状重合体の存在下で芳香族ビニル系単量体(b1)およびシアン化ビニル系単量体(b2)を含む単量体(b)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B1)であることを特徴とする、前記(9)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(11)前記単量体(b)が、前記芳香族ビニル系単量体(b1)および前記シアン化ビニル系単量体(b2)と共重合可能な単量体(b3)をさらに含むことを特徴とする、前記(10)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(12)前記単量体(b3)が、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体であることを特徴とする、前記(11)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(13)前記(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データと、前記(III)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の物性を算出し、算出された前記物性に基づき、前記(I)工程、前記(II)工程及び前記(III)工程における前記運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御することを特徴とする、前記(9)~(12)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(14)前記(III)工程で用いる少なくとも一つの運転データが、押出機動力を含むことを特徴とする、前記(13)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(15)前記熱可塑性樹脂組成物の物性が、JIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(13)又は(14)に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(16)前記熱可塑性樹脂組成物の物性を算出する方法としてソフトセンサーを用いることを特徴とする、前記(13)~(15)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、熱可塑性樹脂の製造工程の上流プロセスである重合工程における運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、下流プロセスである回収工程における運転データのうちの少なくとも一つの運転データとから最終的に得られる樹脂の物性を算出し、該物性を指標として迅速に重合工程または回収工程のプロセス変数を制御することが特徴である。これにより、物性のばらつきが小さい熱可塑性樹脂を得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、算出した精度の高い物性値やその変動に対して、早い段階で重合工程や回収工程のプロセス変数を制御することで、プロセスの安定化が可能となる。
そして、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、本発明の方法で製造された熱可塑性樹脂を用いるので、物性のばらつきが小さい熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る熱可塑性樹脂の製造方法の一実施形態を示すフローシートである。
【
図2】本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法の一実施形態を示すフローシートである。
【
図3】本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法の他の実施形態を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂組成物の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものでは無く、任意に変更して実施しうる。
【0014】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0015】
(熱可塑性樹脂の製造方法)
本発明に係る熱可塑性樹脂の製造方法は、(I)撹拌機を備えた重合反応器に単量体(a)を含む樹脂原料を供給して重合反応させ、熱可塑性樹脂を含む重合体(A)を得る重合工程と、(II)前記重合体(A)から熱可塑性樹脂を取り出す回収工程を含む。
そして、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、樹脂製造工程の上流プロセスである(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、下流プロセスである(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性を算出し、算出された物性に基づき、(I)工程及び(II)工程における前記運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御する。
即ち、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、上流プロセス及び下流プロセスから得られる複数の運転データから精度良く樹脂の物性を予測できることに着目し、該物性を迅速に算出することにより、(I)工程または(II)工程のプロセス変数を制御して、樹脂の物性を一定に保つものである。
【0016】
本発明において、「運転データ」とは、各工程に付属している計測機器及びその他の付帯設備によって測定される、機器やシステムの稼働に伴う測定データをいい、「プロセス変数」とは、前記運転データに基づき制御される運転条件をいう。
【0017】
本発明で製造される熱可塑性樹脂としては特に制限は無いが、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、MAS樹脂(メチルメタクリレート-アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、MABS樹脂(メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレン-スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸メチル共重合体)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などが挙げられ、特にAS樹脂、MAS樹脂が好ましい。
【0018】
本発明で製造される熱可塑性樹脂の重合方法は特に制限は無く、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合、重縮合重合、重付加重合、リビング重合などが挙げられ、特にラジカル重合が好ましい。当該重合は、連続重合であってもバッチ重合であってもよい。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法を実施する製造装置は、
図1に示すように、樹脂原料を供給して重合反応を行う、撹拌機2を備えた重合反応器3と、重合反応器3で得られた反応物(重合物)から最終製品としての熱可塑性樹脂を取り出す樹脂回収部6とを備えている。撹拌機2の撹拌翼としては、例えばパドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ブルマージン翼、多段翼、アンカー翼、マックスブレンド翼およびダブルヘリカル翼を用いることができる。
【0020】
重合反応器3の排出口には排出装置4が備えられており、排出装置4により重合反応器3から排出された反応物が配管5を通って樹脂回収部6に送られ、樹脂回収部6で未反応物や溶剤等がベント7から除去されると共に、最終製品としての熱可塑性樹脂が造粒装置8から取り出される。ベント7から取り出された未反応物や溶剤等は、重合反応器3に戻されて再利用されてもよいし、系外に排出してもよい。
【0021】
<(I)工程:重合工程>
(I)工程は、撹拌機2を備えた重合反応器3に単量体(a)を含む樹脂原料を供給して重合反応させ、熱可塑性樹脂を含む重合体(A)を得る重合工程である。
【0022】
単量体(a)は目的とする樹脂により適宜選択される。
単量体(a)としては、例えば、ビニル系単量体、ビニル系単量体と共重合可能な単量体、オレフィン系単量体等が挙げられる。これらの単量体は単一で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
ビニル系単量体としては、例えば、芳香族ビニル系単量体(a1)、シアン化ビニル系単量体(a2)等が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体(a1)としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、o-エチルスチレン、o-クロロスチレン、o,p-ジクロロスチレンまたはこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、特に、スチレンとα-メチルスチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(a2)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはこれらの2種以上の混合物等が挙げられるが、特に、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ビニル系単量体と共重合可能な単量体(a3)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびN-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミドおよびアクリルアミド等の不飽和アミドなどが挙げられるが、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体が好ましい。ビニル系単量体と共重合可能な単量体(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2,3,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4-エチル-5-メチルオクチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ピレニル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、アントリル(メタ)アクリレート、フェナントリル(メタ)アクリレート、トリチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン及びプロピレン等のオレフィン;1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセン-1等のα-オレフィン(例えば炭素原子数2~12のα-オレフィン)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
樹脂原料は単量体(a)としてビニル系単量体を含むことが好ましく、芳香族ビニル系単量体(a1)及びシアン化ビニル系単量体(a2)からなる群から選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。また、芳香族ビニル系単量体(a1)及びシアン化ビニル系単量体(a2)からなる群から選択される少なくとも一つと、これらビニル系単量体と共重合可能な単量体(a3)とを含むことがさらに好ましい。
【0028】
単量体(a)の種類、配合量等は目的の熱可塑性樹脂に応じて適宜調整でき、任意である。
【0029】
樹脂原料には、上記した単量体(a)以外の単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒等を含有してもよい。
【0030】
単量体(a)以外の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0031】
本発明の(I)工程において、重合体(A)を製造する時、重合開始剤を使用せずに熱重合することも、重合開始剤を用いて開始剤重合することも、さらに熱重合と開始剤重合を併用することも可能である。重合開始剤としては、過酸化物またはアゾ系化合物などが用いられる。
【0032】
過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオクテート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどが挙げられる。
【0033】
また、アゾ系化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、1,1′-アゾビスシクロヘキサン-1-カーボニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′-アゾビスイソブチレート、1-t-ブチルアゾ-1-シアノシクロヘキサン、2-t-ブチルアゾ-2-シアノブタンおよび2-t-ブチルアゾ-2-シアノ-4-メトキシ-4-メチルペンタンなどが挙げられる。
【0034】
また、本発明の(I)工程において、重合体(A)を製造する時、重合度調節を目的として、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、四臭化炭素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤を添加することが好ましい。本発明に使用されるアルキルメルカプタンとしては、例えば、n-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン等が挙げられ、なかでも、特にn-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンおよびn-ドデシルメルカプタンが連鎖移動剤として好ましく用いられる。
【0035】
(I)工程の重合反応として連続溶液重合を選択する場合、上記単量体(a)のほかに、溶媒が使用される。使用する溶媒には飽和分の水が含まれていることも可能である。
溶媒としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、テトラヒドロフランなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの中で極性溶媒が好ましく、より好ましくは、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン基を有する溶媒であり、さらにより好ましくは、重合体(A)の溶解性からメチルエチルケトンである。
【0036】
その他の樹脂原料は、それぞれ1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
単量体(a)を含む樹脂原料は、
図1に示したように、配管1から重合反応器3に供給され、撹拌機2により樹脂原料を撹拌することで重合を行い、所望の熱可塑性樹脂(高分子化合物)が生成(重合)する。重合反応は、重合反応器内の温度、重合反応器内の圧力、重合開始剤供給量(重合開始剤濃度)、連鎖移動剤供給量(連鎖移動剤濃度)、滞留時間等の重合条件を調整することにより制御することができる。
【0038】
本発明においては、樹脂材料を(I)工程の重合反応器に連続的に供給しても、断続的に供給してもよく、その重合様式は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれでもよいが、迅速に精度の高い物性を予測するために、重合様式は、連続塊状重合または連続溶液重合が好ましい。
【0039】
(I)工程では、目的の熱可塑性樹脂の他に未反応原料やオリゴマー、溶剤等が含まれた重合体(A)が得られるので、(II)工程で熱可塑性樹脂を単離する。
【0040】
<(II)工程:回収工程>
(II)工程は、(I)工程で得られた重合体(A)から熱可塑性樹脂を取り出す(単離する)回収工程である。
(II)工程では、樹脂回収部6で未反応物や溶剤等が除去され、単離された熱可塑性樹脂は造粒装置8で造粒される。
【0041】
樹脂回収部6は、例えば、押出機、脱揮缶、脱水機及び乾燥機等を含み、これらを単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。最終的な熱可塑性樹脂の物性を予測するために、押出機を有することが好ましく、2機の押出機を組み合わせることがさらに好ましい。
例えば、樹脂回収部6がベント7を有する押出機である場合、押出機のベント7は加熱下常圧状態または減圧状態であり、ベント口から揮発分が除去された後、押出機出口からストランド状の樹脂が得られ、その後、造粒装置8により造粒され、ペレット状の樹脂が得られる。
【0042】
<プロセス変数の制御>
以上のように、(I)工程および(II)工程により熱可塑性樹脂は製造されるが、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法では、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性を算出し、算出された物性に基づき、(I)工程及び(II)工程における運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御する。
【0043】
(運転データ)
(I)工程及び(II)工程に付属している計測機器としては、例えば、温度計、流量計、圧力計、電流指示計、電力計、液面計等が挙げられる。その他の付帯設備としては、例えば、分散制御システム(DCS,Distributed Control System)が挙げられる。DCSからは前記計測機器の指示だけでなく、プロセスに付帯する自動弁、調節弁等の多くのデータを取得することができる。
【0044】
ここで、熱可塑性樹脂の物性に最も関与するのは、最終的に得られる熱可塑性樹脂の重合度である。熱可塑性樹脂の重合度を決定する因子は複数あり、1つまたは2つの運転データのみでは重合度を正確に予測することは困難であり、より多くの運転データを活用することが好ましい。また、重合度が予測できた場合でも、(II)工程での樹脂回収条件によっても、最終的な樹脂の物性は変動する。このため、(I)工程だけでなく、(II)工程の運転データも活用して、最終的な樹脂の物性を予測することが好ましい。
【0045】
そこで、重合反応の外乱因子を含め、最終的な樹脂の物性を精度良く予測するために、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも三つの運転データと、(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データを用いる。
【0046】
(I)工程で得られる運転データとしては、例えば、重合反応器内の連鎖移動剤濃度、重合反応器内の重合開始剤濃度、重合反応器内の液相温度、重合反応器内のNOM(n-オクチルメルカプタン)濃度、重合反応器内のIPH(1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン)濃度、重合反応器内の樹脂温度、重合反応器の撹拌動力、重合反応器内の固形分濃度、重合反応器内の圧力、外気温、重合反応器のジャケット温度、AN(アクリロニトリル)流量、ST(スチレン)流量、MMA(メチルメタクリレート)流量、ギアポンプ回転数、重合反応器から吐出される樹脂の圧力、重合反応器内の樹脂液面の高さ、AN温度、ST温度、MMA温度等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の物性には、重合体(A)の分子量、固形分濃度、組成等に関連する情報が大きく影響を与えるため、これらのうちの少なくとも三つの運転データを用いることで、熱可塑性樹脂の物性に影響を与える複数のデータを包括することができ、よって迅速かつ正確な物性予測ができる。
【0047】
中でも、重合反応器内の連鎖移動剤濃度、重合反応器内の重合開始剤濃度及び重合反応器内の液相温度は、樹脂の重合反応において重合度を決定する因子であるため、これらの運転データを用いるのが好ましい。
重合反応器内の重合反応器内の連鎖移動剤濃度は、配管1から供給される連鎖移動剤量と、重合反応器内の液面計から得られる重合体(A)の量の比で算出される。重合反応器内の重合開始剤濃度は、配管1から供給される重合開始剤量と、重合反応器内の重合体(A)の量の比で算出される。重合反応器内の液相温度は重合反応器内に設置された温度計から得られる。
【0048】
(II)工程で得られる運転データとしては、例えば、押出機動力、押出機ベント真空度、押出機バレル温度、押出機スクリュ回転数、押出機入口樹脂温度、押出機出口樹脂温度等が挙げられる。(I)工程で重合された重合体(A)には未反応原料やオリゴマー等が残存しており、これらを除去した後に最終的な熱可塑性樹脂が得られるため、最終的な熱可塑性樹脂の物性を予測するには、樹脂の重合度に加え、未反応原料やオリゴマー等の残存物の量も考慮できる運転データを活用することが好ましい。
【0049】
本発明では、(II)工程に付属している計測機器及びその他の付帯設備から得られる少なくとも一つの連続的または断続的な運転データとして、押出機動力を用いるのが好ましい。
押出機動力は、押出機に付帯した電力計から得られる。
【0050】
(プロセス変数)
本発明では、上記の運転データに基づき、(I)工程における重合反応又は(II)工程における樹脂回収条件を、プロセス変数の調整により制御する。
【0051】
重合反応の制御は、算出された物性を目標の樹脂物性に近づけるべく、より好ましくは目標の樹脂物性となるように、(I)工程における運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を変化させる。また、樹脂回収条件の制御は、算出された物性を目標の樹脂物性に近づけるべく、より好ましくは目標の物性となるように、(II)工程における運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を変化させて行う。
【0052】
(I)工程の重合反応を制御するためのプロセス変数としては、重合反応器内の設定温度、重合反応器内の設定圧力、重合開始剤供給量設定値、連鎖移動剤供給量設定値、重合反応器ジャケット温度設定値、重合反応器排出装置の排出出力設定値、樹脂原料供給量設定値、回収原料供給量設定値等が挙げられる。
中でも、重合反応器内の設定温度、重合反応器内の設定圧力、重合開始剤供給量設定値および連鎖移動剤供給量設定値からなる群から選択される少なくとも一つを変更することでプロセス変数を調整するのが好ましい。
【0053】
重合反応器内の温度が上がると、最終的に得られる樹脂の重合度が低下し、押出機動力が変化し、また温度が下がると、最終的に得られる樹脂の重合度が増加し、押出機動力が変化する。
重合反応器内の圧力が高くなると、最終的に得られる樹脂の重合度が低下し、押出機動力が変化し、また圧力が低くなると、最終的に得られる樹脂の重合度が増加し、押出機動力が変化する。
また、重合開始剤供給量が多いと、最終的に得られる樹脂の重合度が低下し、押出機動力が変化し、また重合開始剤供給量が少ないと、最終的に得られる樹脂の重合度が増加し、押出機動力が変化する。
そして、連鎖移動剤供給量が多いと、最終的に得られる樹脂の重合度が低下し、押出機動力が低下し、また連鎖移動剤供給量が少ないと、最終的に得られる樹脂の重合度が増加し、押出機動力が増加する。
また、押出機にベントが備わっている場合は、ベントから除去される未反応原料またはオリゴマー等の量により、押出機動力が変化する。
【0054】
最終的に得られる物性を(II)工程におけるプロセス変数の制御によって行う場合は、少なくとも一つのプロセス変数として、樹脂回収部の樹脂温度、樹脂回収部の加熱温度、樹脂回収部の樹脂圧力、樹脂回収部における真空度、押出機回転数が挙げられる。
【0055】
よって、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データとを用いて最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性を算出することにより、速やかに重合反応条件又は樹脂回収条件を制御することができる。
【0056】
なお、上記したとおり、樹脂の物性は、(I)工程における少なくとも三つの運転データを用い、かつ(II)工程における少なくとも一つの運転データを用いるが、(I)工程において使用する運転データ数は、五つ以上が好ましく、十以上がより好ましく、また(II)工程において使用する運転データ数は、三つ以上が好ましく、五つ以上がより好ましい。なお、使用する運転データ数が多いほどプロセス変数のより正確な制御ができるため、上限は特に限定されない。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法において、(I)工程、(II)工程の運転データは、迅速に樹脂の物性を予測するために、連続的に測定することが好ましい。ここで、「連続的に測定する」とは、測定をし続ける限り一定間隔で間欠的に測定する場合を含み、「連続して測定する」および「一定間隔で間欠的に測定する」ことを意味する。
【0058】
なお、間欠的に測定する場合は、重合反応させてから最終製品となる樹脂を採取するまでの滞留時間の半分未満の時間で行うことが好ましい。重合反応器の撹拌機動力および重合反応器内の固形分濃度の測定間隔は、前記滞留時間に応じて適宜設定されればよいが、60分以下の間隔で連続して行うことがより好ましく、1秒~30分の間隔がさらに好ましく、1秒~10分の間隔が特に好ましい。
【0059】
このように、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法では、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データを用いて最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性を算出することにより、速やかに重合反応の条件を制御することで、生成する樹脂の物性制御を精度高く安定して行うことができる。
【0060】
<物性>
本発明で制御する熱可塑性樹脂の物性は、JIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0061】
特に本発明では樹脂の重合度に依存する樹脂流動性の指標であるMFRについては精度良く予測できる。また、MFRを安定的に制御することにより、樹脂の流動性が安定化するため、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度も安定化する。尚、MFRの上昇により引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度は低下し、MFRの低下により、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度は上昇する。樹脂の光学特性であるYIについては、最終的な樹脂を得るまでの熱履歴によって変動するが、(I)工程、(II)工程から得られる運転データから熱履歴を予測することで、最終的な樹脂のYIを予測することが出来る。またYIの上昇により、HAZEは上昇し、YIの低下により、HAZEは低下する。
【0062】
このように、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法では、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂の物性としてJIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つを算出し、速やかに(I)工程または(II)工程のプロセス変数のうちの少なくとも一つを制御することで生成する樹脂の物性制御を精度高く安定して行うことができる。
【0063】
<物性算出方法>
本発明では熱可塑性樹脂の物性を算出する方法としてソフトセンサーを活用することが好ましい。ソフトセンサーとは、比較的簡易に測定される変数の測定値と目的とする状態量の関係を数学的に算出するものである。本発明ではソフトセンサーを活用し、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データとを用いて、統計モデルを選択・使用し、熱可塑性樹脂の物性推算式を作成するのが好ましい。
【0064】
上記の統計モデルは特に限定されないが、線形モデル、非線形モデル等、通常のソフトセンサー構築に利用される統計モデルが利用できるが、線形モデルでは過学習のため、精度が劣る場合があるため、非線形モデルが好ましい。
ソフトセンサーを活用する場合は、上記の通り、測定される変数の測定値と目的とする状態量との関係を過去のデータを学習し、その推算式を予め作成する。その後、オンラインで測定される変数の測定値と推算式から、オンラインで目的とする状態量を算出する。過学習とは、この過去のデータから作成した推算式が、実際に予測するべきオンラインの未知データに適用した場合に、推算式から予測した状態量と、実際の状態量が適合しないことである。よって、本発明では、精度の良い統計モデルとして、非線形モデルが好ましい。
【0065】
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本発明は、上記した(I)工程及び(II)工程により熱可塑性樹脂を得た後、次いで、(III)工程として、得られた熱可塑性樹脂と、重合体(A)とは異なる重合体(B)を溶融状態において混合して熱可塑性樹脂組成物を製造する方法も提供する。
【0066】
<(III)工程:混合工程>
重合体(B)としては特に制限は無いが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、MAS樹脂(メチルメタクリレート-アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、MABS樹脂(メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレン-スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸メチル共重合体)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などが挙げられる。
【0067】
中でも、重合体(B)は、ゴム状重合体の存在下で芳香族ビニル系単量体(b1)およびシアン化ビニル系単量体(b2)を含む単量体(b)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B1)であることが好ましい。
【0068】
グラフト共重合体(B1)を構成するゴム状重合体とは、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどであり、具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(ブタジエン-アクロロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン-アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン-メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン-アクリル酸エチル)エチレン-プロピレンラバー、エチレン-プロピレン-ジエンラバー、ポリ(エチレン-イソブチレン)、ポリ(エチレン-アクリル酸メチル)などが挙げられる。
これらのゴム状重合体は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム状重合体のうち、ジエン系ゴムが好ましく用いられ、ジエン系ゴムの中でもポリブタジエン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)、エチレン-プロピレンラバーが特に好ましく用いられる。
【0069】
芳香族ビニル系単量体(b1)としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、o-エチルスチレン、o-クロロスチレン、o,p-ジクロロスチレンまたはこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、特に、スチレンとα-メチルスチレンが好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体(b2)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはこれらの2種以上の混合物等が挙げられるが、特に、アクリロニトリルが好ましく用いられる。
芳香族ビニル系単量体(b1)及びシアン化ビニル系単量体(b2)はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
また、単量体(b)は、芳香族ビニル系単量体(b1)及びシアン化ビニル系単量体(b2)で構成される場合と、芳香族ビニル系単量体(b1)及びシアン化ビニル系単量体(b2)並びにこれらと共重合可能な単量体(b3)を含有する場合がある。
【0071】
単量体(b3)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびN-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミドおよびアクリルアミド等の不飽和アミドなどが挙げられるが、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体が好ましい。単量体(b3)はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2,3,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4-エチル-5-メチルオクチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ピレニル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、アントリル(メタ)アクリレート、フェナントリル(メタ)アクリレート、トリチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0073】
グラフト共重合体(B1)の原料である単量体(b)は、熱可塑性樹脂への分散性の観点から、(I)工程における単量体(a)と同じものであることが好ましい。
【0074】
(III)工程において、熱可塑性樹脂と重合体(B)の混合方法は特に制限はなく、(I)工程、(II)工程で製造し、造粒した熱可塑性樹脂と、重合体(B)を、ベント付き押出機に連続的に添加して、溶融状態において混合することができる。
【0075】
また、色調、耐衝撃性の点から、(II)工程で溶融状態の重合体(A)をベント付き押出機に供給し、未反応原料やオリゴマーをベントから除去した後の押出機中の溶融状態にある熱可塑性樹脂に重合体(B)を添加した後、溶融混合する方法が好ましい。溶融混合は添加混合時に行ってもあるいは混合物単離後、例えば溶融成形時に行ってもよい。
【0076】
連続添加方法には特に制限はなく、任意の方法で添加することが可能である。通常、各種のフィーダー類、例えばベルト式フィーダー、スクリュー式フィーダー、押出機などが使用されるが、押出機が特に好ましく用いられる。これら連続添加装置は定量できるものが好ましい。また、連続添加装置は加熱装置を有していて重合体(B)を半溶融または溶融状態で添加すると混合状態が良くなり好ましい。この目的には加熱装置を有している押出機などを使用することができる。
【0077】
また、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系等の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の光安定剤等の各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール-A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料および染料、水やシリコーンオイル、流動パラフィンなどの液体を添加する工程を追加することもできる。更に、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加する工程を追加することもできる。これら添加物の添加方法については特に制限はなく、重合体(B)とともに連続的に添加することも可能であり、また重合体(A)及び重合体(B)の混合物単離後に後工程として添加する等種々の方法を用いることができる。
【0078】
本発明において、(III)工程の運転データは、重合体(B)または、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の物性に関与する重要な情報が含まれているため、最終的な熱可塑性樹脂組成物の物性を精度良く予測するために、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データと、(III)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうち少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の物性を算出し、算出された物性に基づき、(I)工程、(II)及び(III)工程における運転データを与えるプロセス変数のうちの少なくとも一つのプロセス変数を制御することが好ましい。
【0079】
ここで、(I)工程及び(II)工程で得られる運転データ及びプロセス変数は、上記したとおりである。
【0080】
(III)工程で得られる運転データとしては、例えば、押出機動力、押出機スクリュ回転数、押出機バレル温度、熱可塑性樹脂の流量、重合体(B)の流量、添加剤の流量、総吐出流量、押出機出口樹脂温度、重合体(B)の含水率等が挙げられる。
中でも押出機動力を用いるのが好ましい。
【0081】
(III)工程の混合条件を制御するためのプロセス変数としては、例えば、樹脂混合部の出口樹脂温度、樹脂混合部の加熱温度、樹脂混合部の樹脂圧力、樹脂混合部における真空度、樹脂混合部のスクリュ回転数、重合体(B)の供給量等が挙げられる。中でも、樹脂混合部の加熱温度、樹脂混合部における真空度、樹脂混合部のスクリュ回転数、及び重合体(B)の供給量から選ばれる少なくとも一つを変更することでプロセス変数を調整するのが好ましい。
【0082】
熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、本発明で制御する熱可塑性樹脂組成物の物性はJIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0083】
熱可塑性樹脂組成物を製造する場合、熱可塑性樹脂と重合体(B)のそれぞれの物性に依存して、熱可塑性樹脂組成物の物性は変動する。特に、(III)工程においては重合体(B)の物性に関連する運転データが含まれるため、(I)工程及び(II)工程の運転データと共に、(III)工程の運転データの少なくとも一つを用いることで、MFRを特に精度良く予測できる。また、MFRを安定的に制御することにより、樹脂組成物の流動性が安定化するため、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度も安定化する。尚、MFRの上昇により引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度は低下し、MFRの低下により、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度は上昇する。樹脂組成物の光学特性であるYIについては、最終的な樹脂組成物を得るまでの熱履歴によって変動するが、(I)工程、(II)工程及び(III)工程から得られる運転データから熱履歴を予測することで、最終的な樹脂組成物のYIを予測することが出来る。またYIの上昇により、HAZEは上昇し、YIの低下により、HAZEは低下する。
【0084】
このように、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、前記(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データと、(III)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の物性としてJIS、ISO及びASTMのいずれかに準拠した方法で測定された、引張強さ、曲げ強さ、アイゾット衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、MFR、YI及びHAZEからなる群から選択される少なくとも一つを算出し、速やかに(I)工程、(II)工程及び(III)工程のプロセス変数のうちの少なくとも一つを制御することで、生成する熱可塑性樹脂組成物の物性制御を精度高く安定して行うことができる。
【0085】
本発明では熱可塑性樹脂組成物の物性を算出する方法としてソフトセンサーを活用することが好ましい。ソフトセンサーを活用し、(I)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも三つの運転データと、(II)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データ、及び(III)工程において得られる連続的または断続的な運転データのうちの少なくとも一つの運転データとを用いて、統計モデルを選択・使用し、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の物性推算式を作成するのが好ましい。
【0086】
上記の統計モデルは特に限定されず、上記したモデルと同様のものが利用でき、好ましいモデルも同様である。
【0087】
本発明において、(III)工程を行う方法としては、例えば、
図2に示すように、(I)工程及び(II)工程に連続して行う方法(連結法)と、
図3に示すように、(I)工程及び(II)工程により得られた熱可塑性樹脂の造粒物を使って行う方法(CE法)等が挙げられる。
【0088】
連結法で行う場合の製造装置は、
図2に示したように、樹脂原料を供給して重合反応を行う、撹拌機10を備えた重合反応器11と、重合反応器11で得られた重合体(A)から未反応原料等を取り出す第1樹脂回収部14と、重合体(B)を供給する樹脂添加部19を備えた第2樹脂回収部17とを備えている。第2樹脂回収部17でさらに未反応原料等を取り出し、その後段で熱可塑性樹脂と重合体(B)を混合した後に造粒装置20で混合物が造粒され、最終的な熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0089】
重合反応器11の排出口には排出装置12が備えられており、排出装置12により重合反応器11から排出された反応物が配管13を通って第1樹脂回収部14に送られ、第1樹脂回収部14で未反応物や溶剤等がベント15から除去される。第1樹脂回収部14で回収された熱可塑性樹脂は、配管16を通って第2樹脂回収部17に送られ、第2樹脂回収部17でも同様に未反応物や溶剤等がベント18から除去された後、重合体(B)と溶融混合される。
【0090】
撹拌機10の撹拌翼としては、例えばパドル翼、タービン翼、プロペラ翼、ブルマージン翼、多段翼、アンカー翼、マックスブレンド翼およびダブルヘリカル翼を用いることができる。本発明の方法では、上記した工程の他に、任意の工程を含んでもよい。その他の工程としては、樹脂冷却工程、樹脂乾燥工程等が挙げられる。
【0091】
CE法で行う場合の製造装置は、
図3に示したように、
図1に示したような熱可塑性樹脂の製造装置と、熱可塑性樹脂と重合体(B)を溶融混合する混合装置を備える。混合装置は、樹脂混合部22を備え、熱可塑性樹脂の製造装置により製造された熱可塑性樹脂の造粒物は、樹脂混合部22に付属された樹脂添加部21に重合体(B)とともに投入され、樹脂混合部22で溶融混合された後に、造粒装置23で造粒され、最終的な熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0092】
図2に示す第1樹脂回収部14及び第2樹脂回収部17、並びに
図3に示す樹脂混合部22としては、押出機を有することが好ましい。
【0093】
本発明の方法は、手動または自動で行うことができる。上記の重合制御をプログラム化してコンピューターに組み込むことにより、重合条件を自動制御することが可能である。なお、自動制御プログラムは自作してもよく、また市販のプログラムソフトであるKnowledge Power(アズビル株式会社)やExapilot(横河電機株式会社)などを用いることもできる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の樹脂の製造方法をさらに具体的に説明するため、以下に実施例を挙げて説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0095】
実施例及び比較例中で、樹脂のMFR(Melt Flow Rate)は、ISO1133に記載の方法により、AS樹脂、MAS樹脂では、温度220℃、荷重58.8Nの条件、ABS樹脂、MABS樹脂では、温度220℃、荷重98.0Nで測定した。
また、樹脂のYIは、JISK7373に記載の方法に従って測定した。
【0096】
(参考例1)グラフト共重合体(B-1-1)の製造方法(乳化重合)
ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%、屈折率1.52)50質量部(固形分換算)、純水200質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄(0.01質量部)およびリン酸ナトリウム0.1質量部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃に温調し、撹拌下で、スチレン35質量部、アクリロニトリル15質量部およびn-ドデシルメルカプタン0.3質量部の混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25質量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム2.5質量部および純水25質量部の混合物を5時間かけて連続滴下し、滴下終了後さらに1時間保持して重合を終了させた。
重合を終了したラテックスを1.5%硫酸で凝固し、次いでアルカリで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(B-1-1)を調製した。
【0097】
(参考例2)グラフト共重合体(B-1-2)の製造方法(乳化重合)
ポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%)50質量部(固形分換算)、純水180質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部およびリン酸ナトリウム0.1質量部を反応容器に仕込み、窒素置換後65℃に温調し、撹拌下、スチレン11.5質量部、アクリロニトリル4.0質量部、メチルメタクリレート34.5質量部およびn-ドデシルメルカプタン0.3質量部の混合物を4時間かけて連続滴下した。同時に並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25質量部、乳化剤であるオレイン酸ナトリウム2.5質量部および純水25質量部の混合物を5時間かけて連続滴下し、滴下終了後さらに1時間保持して重合を終了させた。
重合を終了したラテックス状生成物を、硫酸1.0質量部を加えた95℃の水2000質量部中に、撹拌しながら注いで凝固させ、次いでアルカリで中和、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(B-1-2)を調製した。
【0098】
(実施例1)
樹脂製造装置は
図1に示したものを使用した。
撹拌機2としてヘリカルリボン翼を備えた重合反応器3(容量20L)と樹脂回収部6として押出機を備えた連続式の樹脂製造装置を用い、スチレン(ST)70質量部、アクリロニトリル(AN)30質量部、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(重合開始剤)0.014質量部、n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.215質量部からなる樹脂原料を、重合反応器3に連続的に供給し、連続重合させた。
この時、重合反応器3内の滞留時間が4時間となるように重合反応器3内の液量と樹脂原料の供給速度を設定した。
【0099】
運転データとして、表1の運転データ番号1に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した。
さらにこの予測値をもとに重合反応器内の温度を130~140℃の範囲で、重合反応器内の圧力を0.11~0.17MPaの範囲で、重合開始剤供給量を0.011~0.017質量部の範囲で、連鎖移動剤供給量を0.213~0.217質量部の範囲で、それぞれ制御した。なお、前記の重合制御は、運転支援自動化パッケージ“Knowledge Power”(アズビル株式会社)を用いて予めプログラム化し、自動で制御した。各運転データの測定間隔は、自動プログラムのため60秒以下であった。
以上の条件下で1日運転を継続し、生成した樹脂のMFRを2時間に1回の頻度で測定した結果を表2に示す。
【0100】
重合反応器からギアポンプにより排出された重合体A-1は、押出機にて未反応物を脱揮させた後、押出機出口から溶融樹脂をストランド状に吐出させ、ペレタイザーにより造粒し、樹脂ペレットを得た。
【0101】
(実施例2)
表1の運転データ番号2に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0102】
(比較例1)
表1の運転データ番号3に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0103】
(実施例3)
メチルメタクリレート(MMA)72質量部、スチレン(ST)24質量部、アクリロニトリル(AN)4質量部、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(重合開始剤)0.014質量部、n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.215質量部からなる樹脂原料を、重合反応器3に連続的に供給したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0104】
(比較例2)
表1の運転データ番号4に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例3と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0105】
(比較例3)
実施例3において、運転データを表1の運転データ番号3に基づきリアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例3と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0106】
(比較例4)
MFRを予測せずに、MFRを制御した以外は実施例3と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0107】
(比較例5)
実施例3において、運転データを表1の運転データ番号5に基づきリアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例3と同様の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
実施例1~2、比較例1は、AS樹脂を作製した例であるが、実施例1~2は比較例1に比べて樹脂の物性制御精度が高く、生成した樹脂は、物性のばらつきが小さかった。同様に、実施例3、比較例2~5は、MAS樹脂を作製した例であるが、実施例3は比較例2~5に比べて樹脂の物性制御精度が高く、生成した樹脂は、物性のばらつきが小さかった。
【0111】
(実施例4)
樹脂製造装置は
図2に示したものを使用した。
撹拌機10としてヘリカルリボン翼を備えた重合反応器11(容量20L)にスチレン(ST)70質量部、アクリロニトリル(AN)30質量部、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(重合開始剤)0.014質量部、n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.215質量部からなる樹脂原料を、連続的に供給し、連続重合させ、重合体A-9を得た。次いで、第1樹脂回収部14としてのベントを備えた第1押出機、第2樹脂回収部17としてのベントを備えた第2押出機で未反応物等を除去した。
樹脂添加部19として第3押出機を用い、参考例1のグラフト共重合体B-1-1を表3に記載の添加比率となるように第3押出機から第2押出機の途中に連結して供給し、第2押出機の後段でグラフト共重合体B-1-1を混合した後に、第2押出機の出口から溶融樹脂をストランド状に吐出させ、造粒装置20としてのペレタイザーにより造粒し、樹脂組成物ペレットを得た。
【0112】
運転データとして、表4の運転データ番号6に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した。
さらにこの予測値をもとに重合反応器内の温度を130~140℃の範囲で、重合反応器内の圧力を0.11~0.17MPaの範囲で、重合開始剤供給量を0.011~0.017質量部の範囲で、連鎖移動剤供給量を0.213~0.217質量部の範囲で、それぞれ制御した。なお、前記の重合制御は、運転支援自動化パッケージ“Knowledge Power”(アズビル株式会社)を用いて予めプログラム化し、自動で制御した。各運転データの測定間隔は、自動プログラムのため60秒以下であった。
【0113】
以上の条件下で1日運転を継続し、生成した樹脂組成物のMFRを2時間に1回の頻度で測定した結果を表5に示す。
【0114】
(実施例5)
メチルメタクリレート(MMA)72質量部、スチレン(ST)24質量部、アクリロニトリル(AN)4質量部、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(重合開始剤)0.014質量部、n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.215質量部からなる樹脂原料を、重合反応器11に連続的に供給し、連続重合させ、重合体A-10を得たこと、参考例2のグラフト共重合体B-1-2を表3に記載の添加比率となるように第3押出機から第2押出機の途中に連結して供給し、第2押出機の後段でグラフト共重合体B-1-2を混合した以外は、実施例4と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0115】
(実施例6)
実施例5と同様の樹脂原料及び樹脂製造装置を使用し、表4の運転データ番号7に記載の各運転データと実測したYIデータをもとに、ソフトセンサーによりYIを予測する回帰式を算出し、この回帰式をもとにリアルタイムにYIを予測した。
さらに算出したYI予測値をもとに第2押出機の樹脂混合部出口温度を220~260℃、樹脂混合部の加熱温度を150~250℃、樹脂混合部の樹脂圧力を3~6MPa、樹脂混合部における真空度を20~100Torr、樹脂混合部のスクリュ回転数を100~300rpmで、それぞれ制御し、実施例1と同様の方法で樹脂ペレットを得た。なお、前記の重合制御は、実施例5と同様に運転支援自動化パッケージ“Knowledge Power”(アズビル株式会社)を用いて予めプログラム化し、自動で制御した。各運転データの測定間隔は、自動プログラムのため60秒以下であった。
【0116】
以上の条件下で1日運転を継続し、生成した樹脂の2時間毎にサンプリングし、YIを測定した結果を表5に示す。
【0117】
(実施例7)
表4の運転データ番号7に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例5と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0118】
(実施例8)
樹脂製造装置は
図3に示したものを使用した。
撹拌機2としてヘリカルリボン翼を備えた重合反応器3(容量20L)と樹脂回収部6として第1押出機を用い、メチルメタクリレート(MMA)72質量部、スチレン(ST)24質量部、アクリロニトリル(AN)4質量部、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(重合開始剤)0.014質量部、n-オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.215質量部からなる樹脂原料を、重合反応器3に連続的に供給し、連続重合させた。この時、重合反応器3内の滞留時間が4時間となるように重合反応器3内の液量と樹脂原料の供給速度を設定した。重合反応器からギアポンプにより排出された重合体A-13は、第1押出機にて未反応物を脱揮させた後、第1押出機の出口から溶融樹脂をストランド状に吐出させ、造粒装置8としてのペレタイザーにより造粒し、熱可塑性樹脂のペレットを得た。
この熱可塑性樹脂のペレットとグラフト共重合体B-1-2を、樹脂添加部21としての重量式添加フィーダーから、表3に記載した比率で樹脂混合部22としての第4押出機に供給し、溶融状態で混合した後に、押出機出口から溶融樹脂をストランド状に吐出させ、造粒装置23としてのペレタイザーにより造粒し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0119】
運転データとして、表4の運転データ番号7に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した。
さらにこの予測値をもとに重合反応器内の温度を130~140℃の範囲で、重合反応器内の圧力を0.11~0.17MPaの範囲で、重合開始剤供給量を0.011~0.017質量部の範囲で、連鎖移動剤供給量を0.213~0.217質量部の範囲で、それぞれ制御した。なお、前記の重合制御は、運転支援自動化パッケージ“Knowledge Power”(アズビル株式会社)を用いて予めプログラム化し、自動で制御した。各運転データの測定間隔は、自動プログラムのため60秒以下であった。
【0120】
以上の条件下で1日運転を継続し、生成した樹脂のMFRを2時間に1回の頻度で測定した結果を表5に示す。
【0121】
(比較例6)
表4の運転データ番号8に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例5と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0122】
(比較例7)
表4の運転データ番号9に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例5と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0123】
(比較例8)
表4の運転データ番号10に記載の各運転データと実測したMFRデータをもとに、ソフトセンサーによりMFRを予測する回帰式を算出し、この回帰式を元に、リアルタイムにMFRを予測した以外は、実施例5と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0124】
(比較例9)
MFRを予測せずに、MFRを制御した以外は実施例5と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0125】
(比較例10)
実施例6と同様の樹脂原料、製造装置、運転条件で樹脂の生産を1日継続し、生成した樹脂を2時間毎にサンプリングし、YIを測定した。尚、生産中はYIの予測は実施しなかった。結果を表5に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
以上のように、実施例4~8は、比較例6~10と比較して樹脂組成物の物性制御精度が高く、生成した樹脂組成物は、物性のばらつきが小さかった。
【符号の説明】
【0130】
1,5,9,13,16:配管
2,10:撹拌機
3,11:重合反応器
4,12:樹脂排出装置(ギアポンプ)
6:樹脂回収部(第1押出機)
7,15,18:ベント
8,20,23:造粒装置(ペレタイザー)
14:第1樹脂回収部(第1押出機)
17:第2樹脂回収部(第2押出機)
19:樹脂添加部(第3押出機)
21:樹脂添加部(重量式添加フィーダー)
22:樹脂混合部(第4押出機)