(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
B62D25/08 H
(21)【出願番号】P 2021064053
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 悦二
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-001121(JP,A)
【文献】特開平04-031122(JP,A)
【文献】特開平05-213052(JP,A)
【文献】特開平06-286654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0017987(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112193024(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、
上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、
上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、
上記カウルグリルの下部に設けられ当該カウルグリルと協働して閉断面を形成する排水部材と、を備え、
上記排水部材は、車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部を備え、
上記流路部には、車幅方向において上記外気導入孔と重複する位置から上記吸気口に至る範囲の領域において、当該流路部を流れる空気の流速を低下させる風速低下部を備えたことを特徴とする
車両の前部構造。
【請求項2】
車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、
上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、
上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、
上記カウルグリルの下部に設けられ当該カウルグリルと協働して閉断面を形成する排水部材と、を備え、
上記排水部材は、車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部を備え、
上記流路部には、車幅方向において上記外気導入孔と重複する位置から上記吸気口に至る範囲の領域において、当該流路部を流れる空気の流速を低下させる風速低下部を備え、
上記風速低下部は上記流路部において車両前後方向に延びて車両側面視で一部が重複するように設けられる複数の第1リブにより形成された
車両の前部構造。
【請求項3】
上記第1リブは流路部の前端または後端から上記流路部の車両前後方向の流路幅内において、流路部中央側に延び、リブ中央側端部ほど車幅方向外側へ向けて傾斜している
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
上記複数の第1リブは、流路部の前端から車両前後方向の流路幅内において、流路部中央部まで延びる前側リブと、該前側リブと車幅方向に離間して設けられ、流路部の後端から車両前後方向の流路幅内において、流路部中央部まで延びる後側リブと、を備え、上記前側リブと上記後側リブとは、車両側面視で一部が重複するように設けられる
請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
上記排水部材は車幅方向に延びており、車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜する傾斜部を備えた
請求項1~4の何れか一項に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
上記排水部材は、上記流路部の後端から後方ほど上方に延びるスロープ形状部を備え、
上記スロープ形状部には車両前後方向に延びる第2リブが車幅方向に間隔を隔てて複数設けられた
請求項1~5の何れか一項に記載の車両の前部構造。
【請求項7】
上記スロープ形状部の上記第2リブは、下方ほど車幅方向内側に傾斜するスラント部位を備えた
請求項6に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前部構造に関し、詳しくは、車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、を備えたような車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントウインドシールドの下部にはカウルグリルが設けられており、このカウルグリルには空調用の外気を取入れる外気導入孔が形成されている。上述の外気導入孔から外気と同時にカウルグリル内に入ってきた水は、カウルグリル下方の排水部材を介して車幅方向外側に排水され、ダッシュパネルに開口形成された吸気口には空気のみを導入するように構成したものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上述のカウルグリルと上述の排水部材とで形成される閉断面の面積が小さい場合には、空調用のブロワの吸引力で吸引されて上記閉断面内を車幅方向に流れる空気の流速が速くなり、排水部材の水が高速の空気に巻き上げられて、水の飛沫が吸気口に侵入し、空調装置に不具合を及ぼすという懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、カウルグリルと排水部材とで形成される閉断面の面積が小さくても、排水部材の水が高速の空気に巻き上げられることを抑制することができる車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両の前部構造は、車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、上記カウルグリルの下部に設けられ当該カウルグリルと協働して閉断面を形成する排水部材と、を備え、上記排水部材は、車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部を備え、上記流路部には、車幅方向において上記外気導入孔と重複する位置から上記吸気口に至る範囲の領域において、当該流路部を流れる空気の流速を低下させる風速低下部を備えたものである。
【0007】
またこの発明による車両の前部構造は、車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、上記カウルグリルの下部に設けられ当該カウルグリルと協働して閉断面を形成する排水部材と、を備え、上記排水部材は、車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部を備え、上記流路部には、車幅方向において上記外気導入孔と重複する位置から上記吸気口に至る範囲の領域において、当該流路部を流れる空気の流速を低下させる風速低下部を備え、上記風速低下部は上記流路部において車両前後方向に延びて車両側面視で一部が重複するように設けられる複数の第1リブにより形成されたものである。
【0008】
上記構成によれば、排水部材の流路部を流れる水の上方には、空気が閉断面内を車幅方向に流れる。上述の風速低下部により流路部の上方空間には空気抵抗が発生するので、閉断面内を流れる空気の速度(風速)が風速低下部にて低下させられる。この結果、ダッシュパネルの吸気口に対して、空気に巻き上げられた飛沫が同伴するのを抑制することができる。
【0009】
すなわち、カウルグリルと排水部材とで形成される閉断面の面積が小さくても、排水部材の水が高速の空気に巻き上げられることを抑制し、ダッシュパネルの吸気口に飛沫が同伴するのを抑制することができる。
【0010】
さらに上述したように、上記風速低下部は上記流路部において車両前後方向に延びて車両側面視で一部が重複するように設けられる複数の第1リブにより形成されたものであるため、複数の第1リブが閉断面内を車幅方向に流れる空気に対して抵抗となり、吸気口への飛沫同伴を抑制することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記風速低下部は上記流路部において車両前後方向に延びて車両側面視で一部が重複するように設けられる複数の第1リブにより形成されたものである。
上記構成によれば、複数の第1リブが閉断面内を車幅方向に流れる空気に対して抵抗となり、吸気口への飛沫同伴を抑制することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記第1リブは流路部の前端または後端から上記流路部の車両前後方向の流路幅内において、流路部中央側に延び、リブ中央側端部ほど車幅方向外側へ向けて傾斜しているものである。
上記構成によれば、流速の遅い水の流れは阻害
しない一方で、閉断面内を高速で流れる空気の流れは上記第1リブにて阻害することができ、空気の速度を低下させて、吸気口への飛沫同伴をさらに抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記複数の第1リブは、流路部の前端から車両前後方向の流路幅内において、流路部中央部まで延びる前側リブと、該前側リブと車幅方向に離間して設けられ、流路部の後端から車両前後方向の流路幅内において、流路部中央部まで延びる後側リブと、を備え、上記前側リブと上記後側リブとは、車両側面視で一部が重複するように設けられるものである。
【0014】
上記構成によれば、車両側面視において上記第1リブにて流路部上方の空間を幅方向に仕切ることができ、吸気口に導入される空気の速度をより効果的に低減することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記排水部材は車幅方向に延びており、車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜する傾斜部を備えたものである。
上記構成によれば、排水部材の上述の傾斜部は車幅方向外側ほど下方に傾斜しており、傾斜部上面の排水経路はダッシュパネルの吸気口に近づく程、下方に位置するので、吸気口への飛沫同伴をより一層抑制することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記排水部材は、上記流路部の後端から後方ほど上方に延びるスロープ形状部を備え、上記スロープ形状部には車両前後方向に延びる第2リブが車幅方向に間隔を隔てて複数設けられたものである。
【0017】
上記構成によれば、スロープ形状部を流れる水は上記流路部に向けて流下しつつ、スロープ形状部の水の上方を閉断面内において車幅方向に流れる空気の速度は、上述の第2リブにより低下させることができる。この結果、上述の吸気口への飛沫同伴をさらに抑制することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記スロープ形状部の上記第2リブは、下方ほど車幅方向内側に傾斜するスラント部位を備えたものである。
上記構成によれば、スロープ形状部を流れる水を、上記スラント部位により一旦、車幅方向内側へ変向させて、水の勢いを弱め、その流速を低下させることができる。これにより、水がスロープ形状部から流路部に流下合流する際の飛沫発生を抑制することができる。
また、スロープ形状部を流れる水を、ダッシュパネルの吸気口から車幅方向内側へ離間した位置において上述の流路部に流下合流させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、カウルグリルと排水部材とで形成される閉断面の面積が小さくても、排水部材の水が高速の空気に巻き上げられることを抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の車両の前部構造を備えた車両前部の平面図。
【
図2】
図1からカウルグリルを取外して示す車両前部の平面図。
【
図3】
図2からカバー部材を取外して示す車両前部の平面図。
【
図7】
図3のB―B線に沿う車両右側過半部の矢視断面図。
【
図8】
図3のC―C線に沿う車両右側過半部の矢視断面図。
【
図10】
図9で示した車両右側のカウルセンタの単品斜視図。
【
図11】
図3から車両右側のカウルセンタを取外した状態で示す要部の平面図。
【
図14】
図11のD―D線矢視方向から見た状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
カウルグリルと排水部材とで形成される閉断面の面積が小さくても、排水部材の水が高速の空気に巻き上げられることを抑制するという目的を、車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、上記カウルグリルの下部に設けられ当該カウルグリルと協働して閉断面を形成する排水部材と、を備え、上記排水部材は、車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部を備え、上記流路部には、車幅方向において上記外気導入孔と重複する位置から上記吸気口に至る範囲の領域において、当該流路部を流れる空気の流速を低下させる風速低下部を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0022】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部構造を示し、
図1は当該車両の前部構造を備えた車両前部の平面図、
図2は
図1からカウルグリルを取外して示す車両前部の平面図、
図3は
図2からカバー部材を取外して示す車両前部の平面図である。
【0023】
また、
図4は
図3の斜視図、
図5はワイパモータとその周辺構造を示す正面図、
図6は
図2のA―A線矢視断面図である。
さらに、
図7は
図3のB―B線に沿う車両右側過半部の矢視断面図、
図8は
図3のC―C線に沿う車両右側過半部の矢視断面図である。
【0024】
車両の前部構造の説明に先立って、まず、前部車体構造について説明する。
図6、
図7に示すように、エンジンルーム1(
図1~
図4参照)と車室2とを車両前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設けている。このダッシュロアパネル3は車幅方向に延びており、当該ダッシュロアパネル3の車幅方向左右両端部は、図示しないヒンジピラーに連結されている。
【0025】
上述のヒンジピラーは、車両の上下方向に延びるように立設されている。このヒンジピラーは、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合固定して、車両の上下方向に延びるヒンジピラー閉断面を有する車体強度部材である。
【0026】
上述のヒンジピラーの下端部には、当該下端部から車両後方に延びるサイドシルが設けられている。このサイドシルはサイドシルインナとサイドシルアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体強度部材である。
【0027】
また、上述のヒンジピラーの上端部には、当該上端部から後方かつ上方へ斜め方向に延びるフロントピラーが設けられている。このフロントピラーはフロントピラーインナとフロントピラーアウタとを接合固定して、車両の後上方向に斜めに延びるフロントピラー閉断面を備えた車体強度部材である。
【0028】
図1~
図4に示すように、左右一対のフロントピラーと、車両上部前側に位置するフロントヘッダと、後述するカウルパネル13とで囲繞形成されたフロントウインドシールド配置用の開口部には、フロントウインドシールド4(いわゆる、フロントウインドガラス)が設けられている。
【0029】
ここで、上述のダッシュロアパネル3は、
図6に示すように、フロントウインドシールド4の下端部に位置し、車幅方向に延びてエンジンルーム1と車室2とを車両前後方向に仕切るパネル部材である。
【0030】
一方、
図1~
図4に示すように、上述の左右のヒンジピラーの上端前部には、当該上端前部から車両前方に延びる左右一対のエプロンレインフォースメント5が設けられている。
図1~
図4に示すように、ダッシュロアパネル3の車幅方向両端側から車両前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム6を設けている。このフロントサイドフレーム6は上述のエプロンレインフォースメント5に対して車幅方向内側で、かつ車両上下方向の下側に位置している。
【0031】
また、上述のフロントサイドフレーム6は、
図7、
図8に示すように、フロントサイドフレームインナ6aとフロントサイドフレームアウタ6bとを接合固定して、車両の前後方向に延びるフロントサイドフレーム閉断面6cを備えた車体強度部材である。
【0032】
図1~
図4に示すように、上述のフロントサイドフレーム6に固定されて上方に突出し、図示しないフロントサスペンション装置のダンパ上部を支持するサスペンションタワー部7を設けている。
図4に示すように、このサスペンションタワー部7は、エプロンレインフォースメント5の内側面を構成する前側サイドパネル8aと、上述のフロントサイドフレーム6との間に跨がって取付けられている。ここで、上述のサスペンションタワー部7としてはストラットタワー部を採用してもよい。
上述の前側サイドパネル8aに対して、車両前後方向に連続するように、後側サイドパネル8bが設けられている(
図4参照)。
【0033】
図1~
図4に示すように、上述のフロントサイドフレーム6の前端部において、当該前端部とエプロンレインフォースメント5の前部とを車両上下方向に連結する連結部材9を設けている。
【0034】
一方、
図1~
図4に示すように、上述のエンジンルーム1の車幅方向左右両側部は、フロントフェンダパネル10により覆われている。また、上述のエンジンルーム1の上方は、ボンネット(図示せず)により開閉可能に覆われている。
【0035】
ここで、
図1~
図3に示すように、上述のフロントフェンダパネル10はエプロンレインフォースメント5に対して複数の取付け部材11を用いて固定されている。また、上述のボンネットは、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを備え、ボンネットアウタパネルの周縁部をヘミング加工して、ボンネットアウタパネルとボンネットインナパネルとを一体化したものである。
【0036】
図6に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端には上端折曲げ部3aが一体形成されると共に、車幅方向一端側、この実施例では車幅方向右端側には、空調用の空気を取入れる吸気口3b(
図7、
図8参照)が開口形成されている。
【0037】
図6に示すように、上述のダッシュロアパネル3の上端折曲げ部3aには、ダッシュアッパパネル12を介して断面略ハット形状のカウルパネル13を設けている。当該カウルパネル13と上述のダッシュアッパパネル12との間には、車幅方向に延びるカウル閉断面14を形成して、カウル部の剛性向上を図るように形成している。
【0038】
図6に示すように、上述のカウルパネル13の前低後高状に傾斜する上壁部13aには、接着剤15を介して上述のフロントウインドシールド4が取付けられている。
【0039】
図2~
図5に示すように、上述のフロントウインドシールド4の車幅方向左側の下方には電装部品としてのワイパモータ16が設けられている。このワイパモータ16は、
図5に示すワイパモータ支持ブラケット17で支持されている。
また、上述のワイパモータ16は、
図5に示すように、車幅方向に離間配置された一対のワイパピボットWP1,WP2間に配設されている。
【0040】
図1~
図4に示すように、車幅方向左端部側に位置する一方のワイパピボットWP1には、ワイパアーム20を介してワイパブレード21が取付けられており、ワイパピボットWP1に対して車幅方向内側に位置する他方のワイパピボットWP2には、ワイパアーム22を介してワイパブレード23が取付けられている。
【0041】
上述のワイパモータ16の駆動時には、一対のワイパピボットWP1,WP2を支点として、左右のワイパアーム20,22を介して左右のワイパブレード21,23が同時に駆動されてフロントウインドシールド4を払拭するように構成している。
【0042】
図1に示すように、フロントウインドシールド4の下方(この実施例では、フロントウインドシールド4の傾斜下方)で、かつ上述のワイパモータ16の上方には、ダッシュロアパネル3の車両前方に位置するカウルグリル24を備えている。
【0043】
図1に示すように、このカウルグリル24は車幅方向の略全幅にわたって延びている。また、
図6に示すように、このカウルグリル24は前後の上面部24a,24bと、前後の縦壁部24c,24dと、図示しないカウルシールを取付けるカウルシール取付け部24eとを備えている。
【0044】
さらに、
図1に示すように、上述のカウルグリル24の後側の上面部24bにおいて、車幅方向中間部位から車幅方向右側に片寄った部位には、メッシュ構造の外気導入孔25が開口形成されている。
上述の外気導入孔25は、
図7、
図8に示すように、ダッシュロアパネル3の吸気口3bから車幅方向他端側としての車幅方向内方側に離間した位置に形成されている。
【0045】
図1、
図3に示すように、カウルグリル24の車幅方向左側前方には、補機類としてのリザーバタンク(図示せず)と、補機類としてのヒューズボックス(図示せず)を収納するヒューズボックス収納ケース27との上方を覆うカバー部材30(
図1参照)が設けられている。
【0046】
また、
図1、
図3に示すように、カウルグリル24の車幅方向右側前方には、補機類としてのバッテリ31と、補機類としてのヒューズボックスを収納するヒューズボックス収納ケース28との上方を覆うカバー部材33(
図1参照)が設けられている。
図6に示すように、カウルグリル24の下部には、当該カウルグリル24と協働して車幅方向に延びる閉断面26を形成する排水部材60が設けられている。
【0047】
図2、
図3、
図4に示すように、フロントウインドシールド4の下方において、車幅方向中間部に間隔を隔てて左右の樋部材としてのカウルセンタ40,41が設けられている。これらの各カウルセンタ40,41はフロントウインドシールド4から滴下する水を受ける雨樋部材である。
左右の各カウルセンタ40,41は、何れもカウルグリル24と排水部材60との間の上述の閉断面26内に設けられている(
図6参照)。
【0048】
図6には車両右側のカウルセンタ41のみを示すが、左右の各カウルセンタ40,41はカウルパネル13の前壁部13bから車両前方に延びるように設けられている。車両左側のカウルセンタ40は
図2~
図5に示すように、上述のワイパモータ16(電装部品)の直後部に設けられている。
【0049】
図6~
図8において、18はダッシュアッパパネル12から車両前方に延びるカウルレインアッパであり、19はダッシュロアパネル3の上部から車両前方に延びるカウルレインロアである。
【0050】
図9は
図3の車両右側要部の斜視図、
図10は
図9で示した車両右側のカウルセンタ41の単品斜視図、
図11は
図3から車両右側のカウルセンタ41を取外した状態で示す要部の平面図である。また、
図12は
図11の車両右側部の拡大斜視図、
図13は
図11の車両右側部の拡大平面図、
図14は
図11のD―D線矢視方向から見た状態で示す斜視図である。
【0051】
図5に示すように、ワイパモータ16は一対のワイパピボットWP1,WP2間に位置しており、ワイパピボットWP1,WP2は、カウルセンタ40の流路部から滴下した水滴を下方に排水するピボット排水通路としての受皿50,51を備えている。
この受皿50,51は排水経路の一部を構成するものである。
【0052】
車幅方向右側に位置するカウルセンタ41は、
図7~
図10に示すように構成している。
すなわち、車幅方向に延びる底壁41aと、底壁41aの前部から上方に立上がる前壁41bと、底壁41aの後部から後上に延びる後壁41cと、底壁41aの車幅方向内端の前側部から上方に立上がる内側壁41dと、底壁41aの車幅方向外端から上方に立上がる外側壁41eと、を備えている。
【0053】
上述のカウルセンタ41の車幅方向内端部、すなわち、ダッシュロアパネル3の吸気口3bから車幅方向内方に離間した位置には、排水部材60に水を排水する排水部41fが形成されている(
図7、
図10参照)。この排水部41fは車幅方向内側ほど下方に下がるように傾斜状に形成されている。
【0054】
また、
図10に示すように、上述の内側壁41dと、底壁41aの切欠部41gとの間には、排水用の開口部41hが形成されている。
さらに、上述の排水部41fは、
図7に示すように、車幅方向の中間部、または車幅方向中間部よりも他端側としての車両左方(図示の右側)に設けられており、ダッシュロアパネル3の吸気口3bと排水部41fとの間の車幅方向の距離を確保するように構成している。
【0055】
一方、上述の排水部材60は、
図7、
図8に示すように車幅方向に延びており、この排水部材60は同図に示すように、外気導入孔25に車両平面視で重複する位置において、上方に位置するトップデッキ部61を備えている。このトップデッキ部61は
図7、
図8に矢印αで示す車幅方向の所定範囲にわたって形成されている。
【0056】
上述の排水部材60の長手方向側、すなわち、排水部材60の上記トップデッキ部61の左右両側には、車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜する傾斜部62,63が形成されている。
【0057】
図7に示すように、車両右側のカウルセンタ41における上述の排水部41fは、排水部材60のトップデッキ部61と車幅方向において略同じ位置に設けられている。
【0058】
これにより、カウルセンタ41の排水部41fと排水部材60のトップデッキ部61との間の上下方向の距離が小さくなり、カウルセンタ41の排水部41fから上下方向の距離が小さい排水部材60のトップデッキ部61に対して排水することで、飛沫が発生しにくくなるように構成している。
【0059】
また、カウルセンタ41の排水部41fはダッシュロアパネル3の吸気口3bから車幅方向に離間しており、飛沫が生じても閉断面26内を流れる空気に飛沫が同伴するのを抑制するように構成している。
【0060】
さらに、カウルセンタ41の排水部41fと排水部材60のトップデッキ部61とは、外気導入孔25に車両平面視で重複する位置に存在しており、外気導入孔25の形成領域における閉断面26内の圧力は外気と同圧であって、閉断面26の中では空気の流速が最も遅い。このように、外気と同圧で空気流速が低いトップデッキ部61に排水するので、飛沫が生じても、当該飛沫が閉断面26内の空気の流れに同伴することを、さらに抑制するように構成したものである。
【0061】
さらに、
図7、
図8に示すように、排水部材60の傾斜部63は車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜しており、この傾斜部63上面は、ダッシュロアパネル3の吸気口3bに近づく程、下方に位置するので、飛沫同伴をさらに抑制するように構成している。
【0062】
上記排水部材60のトップデッキ部61における断面構造は、
図6、
図14に示すように構成している。
すなわち、前部フランジ61aの後端に縦壁61bを介して中間フランジ61cを連結し、この中間フランジ61cの後部には、凹壁部61dを介して底壁61eを連結すると共に、底壁61eの後部には上方に立上がる後壁61fを一体連結している。
【0063】
また、上述の凹壁部61dと底壁61eとの境界部には、上方に立上がる仕切壁61gを一体形成し、この仕切壁61gと底壁61e前部との間に車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部64を形成している。
【0064】
図12に示すように、上述の傾斜部63には、底壁63aと、該底壁63aの後部から上方に立上がる後壁63bと、底壁63aの前部に形成されトップデッキ部61の凹壁部61dと連続する壁部63cと、で上述の流路部64に連通する傾斜部63側の流路部65が形成されている。この流路部65は傾斜部63に沿って車幅方向に延びて水が流れる経路を形成するものである。
【0065】
図12に示すように、上述の排水部材60は傾斜部63の外側端部に排水ダクト66を備えている。
すなわち、上述の流路部65の下流部65aを、上記後壁63bの延長部63dと、側壁63eと、前壁63fとで囲繞すると共に、上記下流部65aと上述の各要素63d,63e,63fとの間に流下孔63gを形成することにより、上述の排水ダクト66が構成されている。
上述の排水ダクト66により流路(流下孔63g参照)を確保することで、飛沫発生をより一層確実に抑制すべく構成している。
【0066】
図11~
図14に示すように、上述の流路部64,65には、車幅方向において外気導入孔25(
図1参照)と重複する位置からダッシュロアパネル3の吸気口3bに至る範囲の領域において、当該流路部64,65を流れる空気の流速を低下させる風速低下部としての複数の第1リブ68,69,73bが設けられている。
【0067】
この実施例では、
図11~
図14に示すように、上述の第1リブ68,69は、トップデッキ部61に近接する傾斜部63の流路部65底面から上方に立上がるように形成されており、第1リブ73bは流路部64の底面から上方に立上がるように形成されているが、第1リブ68,69の形成範囲は、外気導入孔25と重複する位置から吸気口3bに至る範囲の領域であれば、実施例の位置に限定されるものではない。
【0068】
上述の第1リブ68,69,73bは
図11~
図14に示すように、車幅方向に間隔を隔てて複数設けられると共に、これら第1リブ68,69,73bのうちの2つの第1リブ68,69の前端は壁部63cに当接しており、各第1リブ68,69の下端は流路部65の上面に当接している。また、第1リブ73bは後述する第2リブ73の前端に設けられている。
【0069】
上述の風速低下部としての第1リブ68,69,73bにより流路部65の上方空間には空気抵抗が発生し、閉断面26(
図6参照)を流れる空気の速度が低下し、これにより、ダッシュロアパネル3の吸気口3bに対して、空気に巻き上げられた飛沫が同伴するのを抑制するように構成している。
【0070】
つまり、カウルグリル24と排水部材60とで形成される閉断面26の面積が小さくても、排水部材60の水が、高速の空気に巻き上げられることを抑制し、ダッシュロアパネル3の吸気口3bに飛沫が同伴するのを抑制すべく構成したものである。
【0071】
図11~
図14、特に、
図14に示すように、上述の複数の第1リブ68,69,73bは上記流路部65,64において、車両前後方向に延びると共に、車幅方向に間隔を隔てて複数設けられており、これら第1リブ68,69,73bは車両側面視で一部が重複するように設けられた風速低下部である。
【0072】
これにより、上述の複数の第1リブ68,69,73bが閉断面26内を車幅方向に流れる空気に対して抵抗となり、ダッシュロアパネル3の吸気口3bへの飛沫同伴を抑制するように構成している。
【0073】
図13に示すように、上述の複数の第1リブ68,69,73bは流路部65,64の前端または後端から上記流路部65,64の車両前後方向の流路幅内において、流路部65,64を塞がないように流路部中央側に延び、リブ中央側端部ほど車幅方向外側へ向けて傾斜している。すなわち、この実施例においては、複数の第1リブ68,69,73bのうち2つの第1リブ68,69はその前端から後端にかけて車幅方向外側へ向けて傾斜するように形成されている。
【0074】
これにより、流路部65,64を流れる流速が遅い水の流れは阻害しない一方で、閉断面26(
図6参照)内を高速で流れる空気の流れは上述の各第1リブ68,69,73bにて阻害して、当該空気の速度を低下させることにより、吸気口3bへの飛沫同伴をさらに抑制すべく構成したものである。
【0075】
この実施例においては、
図13に示すように、平面視で、第1リブ68,69よりも上流側の流路部65における壁部63cと、当該第1リブ68,69との成す角度は、115~120度に設定しているが、この数値に限定されるものではない。
【0076】
また、
図13に示すように、上記複数の第1リブ68,69,73bは、流路部65の前端から車両前後方向の流路幅内において、流路部65中央部まで延びる前側リブ(第1リブ68,69参照)と、該前側リブと車幅方向に離間して設けられ、流路部64の後端から車両前後方向の流路幅内において、流路部64中央部まで延びる後側リブ(第1リブ73b参照)と、を備え、上記前側リブと上記後側リブとは、車両側面視で一部が重複するように設けられている。
【0077】
これにより、車両側面視において上記第1リブ68,69,73bにて流路部65,64上方の空間を幅方向に仕切り、吸気口3b(
図7参照)に導入される空気の速度をより効果的に低減すべく構成している。
【0078】
図6、
図14に示すように、上述の排水部材60は、流路部64の車両前後方向の後端から車両後方ほど上方に延びるスロープ形状部67を備えており、このスロープ形状部67におけるカウルセンタ41の車幅方向内端部と対応する位置には、車両前後方向に延びる複数の第2リブ71,72,73が、車幅方向に間隔を隔てて設けられている。
【0079】
これにより、スロープ形状部67を流れる水が流路部64に向けて流下しつつ、スロープ形状部67の水の上方を閉断面26(
図6参照)内において車幅方向に流れる空気の速度は、上述の第2リブ71,72,73により低下させられる。この結果、
図7、
図8に示すダッシュロアパネル3の吸気口3bへの飛沫同伴をさらに抑制するように構成している。
【0080】
詳しくは、
図7に示すように、上述のカウルセンタ41の排水部41fと上下方向に対応する上述の排水部材60の底壁61eには、流路部64の後端から車両後方に向けて傾斜するスロープ形状部67が設けられている。これにより、樋部材であるカウルセンタ41の排水部41fから排水部材60のスロープ形状部67に滴下した水が、当該スロープ形状部67に沿って後方部から前方部に向けて流下し、流路部64に至るように構成している。
【0081】
加えて、上述のスロープ形状部67には、
図12、
図13に示すように、当該スロープ形状部67から上方に立上がると共に、車両の前後方向に延びるリブ71,72,73が車幅方向に間隔を隔てて複数設けられている。これらの複数のリブ71,72,73により、閉断面26内を流れる空気の勢いを弱め、これにより、飛沫同伴の抑制効果をさらに高めるように構成している。
【0082】
この実施例では、
図13に示すように、上述の第2リブ71,72,73は合計3つ設けられており、このうち、最も車幅方向内側に位置する1つの第2リブ71は車両前後方向に略真っ直ぐに設けられているが、残り2つの第2リブ72,73は次のようなスラント部位72a,73aを有している。
【0083】
すなわち、上述のスラント部位72a,73aは、第2リブ72,73の前後方向の中間部において、
図13、
図14に示すように、下方ほど車幅方向の内側に傾斜するものである。
【0084】
これにより、スロープ形状部67を流れる水を、上記スラント部位72a,73aにより一旦、車幅方向内側へ変向させて、水の勢いを弱め、その流速を低下させる。よって、水がスロープ形状部67から流路部64に流下合流する際の飛沫発生を抑制するように構成している。さらに、スロープ形状部67を流れる水を、ダッシュロアパネル3の吸気口3b(
図7、
図8参照)から車幅方向内側へ離間した位置において上述の流路部64に流下合流させるように構成している。
【0085】
図12、
図13においては車両右側の第1リブ68,69,73bおよび第2リブ71,72,73の構造について説明したが、
図4、
図11に示すように、車両左側においても車両右側の第1リブ68,69および第2リブ71,72,73と左右略対称に、複数のリブが設けられている。
【0086】
ところで、
図7、
図8に示すように、補機類としてのヒューズボックス収納ケース28およびバッテリ31を格納する補機類配置スペース34は、カバー部材33(
図1参照)と、後側サイドパネル8bと、ホイールハウス35と、インシュレータ36と、で囲繞されている。
【0087】
上述のホイールハウス35は後側サイドパネル8bとフロントサイドフレームアウタ6bとの間に連結されている。また、上述のインシュレータ36は排水部材60の傾斜部63における傾斜下端部下面とフロントサイドフレームインナ6aとの間に連結されている。
【0088】
フロントウインドシールド4から滴下する水の流れは次のようになる。
すなわち、フロントウインドシールド4を伝って滴下する水は、一旦、
図7に示すカウルセンタ41で受け止められる。カウルセンタ41に滴下した水は、ダッシュロアパネル3の吸気口3bから車幅方向に離間する位置の排水部41fから
図7に示す排水部材60のトップデッキ部61に流下する。
【0089】
トップデッキ部61に流下した水はスロープ形状部67に沿って流路部64(
図7参照)に至り、該流路部64から同図に示す傾斜部63の流路部65を介して排水ダクト66内を経て下方に排出される。
【0090】
図11~
図14に示すように、上記流路部64,65を流れる空気の流速を低下させる風速低下部としての第1リブ68,69,73bを備えているので、閉断面26(
図13参照)内を流れる空気の速度が第1リブ68,69,73bにより低下させられ、これにより、ダッシュロアパネル3の吸気口3bに対して、空気に巻き上げられた飛沫の同伴を抑制することができるものである。
【0091】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0092】
このように、上記実施例の車両の前部構造は、車幅方向に延びてエンジンルーム1と車室2とを車両前後方向に区画するダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)と、上記ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)の車幅方向一端側に設けられる吸気口3bと、上記吸気口3bから車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔25を備えるカウルグリル24と、上記カウルグリル24の下部に設けられ当該カウルグリル24と協働して閉断面26を形成する排水部材60と、を備え、上記排水部材60は、車幅方向に延びて水が流れる経路となる流路部64,65を備え、上記流路部64,65には、車幅方向において上記外気導入孔25と重複する位置から上記吸気口3bに至る範囲の領域において、当該流路部64,65を流れる空気の流速を低下させる風速低下部(第1リブ68,69)を備えたものである(
図1、
図6、
図7、
図11~
図14参照)。
【0093】
この構成によれば、排水部材60の流路部64,65(特に、流路部65参照)を流れる水の上方には、空気が閉断面26内を車幅方向に流れる。上述の風速低下部(第1リブ68,69)により流路部64,65の上方空間には空気抵抗が発生するので、閉断面26内を流れる空気の速度(風速)が風速低下部(第1リブ68,69)にて低下させられる。この結果、ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)の吸気口3bに対して、空気に巻き上げられた飛沫が同伴するのを抑制することができる。
【0094】
すなわち、カウルグリル24と排水部材60とで形成される閉断面26の面積が小さくても、排水部材60の水が高速の空気に巻き上げられることを抑制し、ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)の吸気口3bに飛沫が同伴するのを抑制することができる。
【0095】
この発明の一実施形態においては、上記風速低下部は上記流路部64,65において車両前後方向に延びて車両側面視で一部が重複するように設けられる複数の第1リブ68,69により形成されたものである(
図14参照)。
【0096】
この構成によれば、複数の第1リブ68,69が閉断面26(
図6参照)内を車幅方向に流れる空気に対して抵抗となり、吸気口3b(
図7参照)への飛沫同伴を抑制することができる。
【0097】
この発明の一実施形態においては、上記第1リブ68,69,73bは流路部64,65の前端または後端から上記流路部64,65の車両前後方向の流路幅内において、流路部中央側に延び、リブ中央側端部ほど車幅方向外側へ向けて傾斜しているものである(
図13参照)。
【0098】
この構成によれば、流速の遅い水の流れは阻害しない一方で、閉断面26内を高速で流れる空気の流れは上記第1リブ68,69,73bにて阻害することができ、空気の速度を低下させて、吸気口3bへの飛沫同伴をさらに抑制することができる。
【0099】
この発明の一実施形態においては、上記複数の第1リブ68,69,73bは、流路部65の前端から車両前後方向の流路幅内において、流路部65中央部まで延びる前側リブ(第1リブ68,69参照)と、該前側リブと車幅方向に離間して設けられ、流路部64の後端から車両前後方向の流路幅内において、流路部64中央部まで延びる後側リブ(第1リブ73b参照)と、を備え、上記前側リブと上記後側リブとは、車両側面視で一部が重複するように設けられるものである(
図13参照)。
【0100】
この構成によれば、車両側面視において上記第1リブ68,69,73bにて流路部65,64上方の空間を幅方向に仕切ることができ、吸気口3b(
図7参照)に導入される空気の速度をより効果的に低減することができる。
【0101】
この発明の一実施形態においては、上記排水部材60は車幅方向に延びており、車幅方向外側に向かうほど下方に傾斜する傾斜部63を備えたものである(
図7、
図8参照)。
【0102】
この構成によれば、排水部材60の上述の傾斜部63は車幅方向外側ほど下方に傾斜しており、傾斜部63上面の排水経路はダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)の吸気口3bに近づく程、下方に位置するので、吸気口3bへの飛沫同伴をより一層抑制することができる。
【0103】
この発明の一実施形態においては、上記排水部材60は、上記流路部64の後端から後方ほど上方に延びるスロープ形状部67を備え、上記スロープ形状部67には車両前後方向に延びる第2リブ71,72,73が車幅方向に間隔を隔てて複数設けられたものである(
図13、
図14参照)。
【0104】
この構成によれば、スロープ形状部67を流れる水は上記流路部64に向けて流下しつつ、スロープ形状部67の水の上方を閉断面26内において車幅方向に流れる空気の速度は、上述の第2リブ71,72,73により低下させることができる。この結果、上述の吸気口3bへの飛沫同伴をさらに抑制することができる。
【0105】
この発明の一実施形態においては、上記スロープ形状部67の上記第2リブ71,72,73は、下方ほど車幅方向内側に傾斜するスラント部位72a,73aを備えたものである(
図13参照)。
【0106】
この構成によれば、スロープ形状部67を流れる水を、上記スラント部位72a,73aにより一旦、車幅方向内側へ変向させて、水の勢いを弱め、その流速を低下させることができる。これにより、水がスロープ形状部67から流路部64に流下合流する際の飛沫発生を抑制することができる。
【0107】
また、スロープ形状部67を流れる水を、ダッシュパネル(ダッシュロアパネル3)の吸気口3bから車幅方向内側へ離間した位置において上述の流路部64に流下合流させることができる。
【0108】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル3に対応し、
以下同様に、
風速低下部は、第1リブ68,69,73bに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0109】
例えば、
図14に示す第1リブ68,69,73bの付け根部に、流路部65の上流側と下流側とを連通させる連通口を開口形成して、流路部65の壁部63cと第1リブ68,69との成す角度を、直角または、それ以下に設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明は、車幅方向に延びてエンジンルームと車室とを車両前後方向に区画するダッシュパネルと、上記ダッシュパネルの車幅方向一端側に設けられる吸気口と、上記吸気口から車幅方向他端側に離間した位置に外気導入孔を備えるカウルグリルと、を備えた車両の前部構造について有用である。
【符号の説明】
【0111】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
3b…吸気口
24…カウルグリル
25…外気導入孔
26…閉断面
60…排水部材
63…傾斜部
64,65…流路部
67…スロープ形状部
68,69…第1リブ(風速低下部、前側リブ)
71,72,73…第2リブ
72a,73a…スラント部位
73b…第1リブ(風速低下部、後側リブ)