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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】保守端末
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021067910
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162865
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下石 浩二
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-048712(JP,A)
【文献】特開2007-062854(JP,A)
【文献】特開2009-161310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
報知器と、
複数の号機カルテが記憶された記憶手段と、
エレベーターの制御盤との接続を検出する検出手段と、
前記検出手段によって接続が検出された制御盤を有するエレベーターの号機カルテを、前記記憶手段に記憶された前記複数の号機カルテの中から特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された号機カルテに基づいて、保守員がこれから行う作業の中にかごの上で行う第1作業又は昇降路のピットで行う第2作業が含まれるか否かを判定する判定手段と、
前記第1作業又は前記第2作業が含まれると前記判定手段によって判定されると、前記報知器から注意喚起を行う報知制御手段と、
を備え、
前記複数の号機カルテのそれぞれに、エレベーターを識別するための識別情報と当該エレベーターの点検日及び点検内容を特定するための点検情報とが登録された保守端末。
【請求項2】
前記検出手段によって接続が検出された制御盤から、エレベーターを識別するための識別情報を取得する取得手段を更に備え、
前記特定手段は、前記取得手段によって取得された識別情報に基づいて号機カルテを特定する請求項1に記載の保守端末。
【請求項3】
保守員が情報を入力するための入力装置を更に備え、
前記特定手段は、前記入力装置から入力された情報に基づいて号機カルテを特定する請求項1に記載の保守端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの保守員によって使用される保守端末に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーターに関するシステムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムは、サーバ、保守端末、及びエレベーターを備える。保守員は、保守端末を用いてエレベーターの点検を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-48712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保守員は、エレベーターの点検を行う際に様々な場所に移動する。例えば、エレベーターの点検時に、1人の保守員がかごの中にいて、もう1人の保守員が昇降路のピットにいる場合がある。かごの中にいる保守員がピットにいる保守員に気付かずにかごを動かしてしまうような状況は避けなければならない。従来では、このような状況を発生させないための報知が適切に行われていなかった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、エレベーターの点検が開始される際に、保守員に対して適切な報知を行うことができる保守端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る保守端末は、報知器と、複数の号機カルテが記憶された記憶手段と、エレベーターの制御盤との接続を検出する検出手段と、検出手段によって接続が検出された制御盤を有するエレベーターの号機カルテを、記憶手段に記憶された複数の号機カルテの中から特定する特定手段と、特定手段によって特定された号機カルテに基づいて、保守員がこれから行う作業の中にかごの上で行う第1作業又は昇降路のピットで行う第2作業が含まれるか否かを判定する判定手段と、第1作業又は第2作業が含まれると判定手段によって判定されると、報知器から注意喚起を行う報知制御手段と、を備える。複数の号機カルテのそれぞれに、エレベーターを識別するための識別情報と当該エレベーターの点検日及び点検内容を特定するための点検情報とが登録される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る保守端末であれば、エレベーターの点検が開始される際に、保守員に対して適切な報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エレベーターの例を示す図である。
図2】保守端末の機能を説明するための図である。
図3】保守端末の動作例を示すフローチャートである。
図4】保守端末の他の動作例を示すフローチャートである。
図5】保守端末のハードウェア資源の例を示す図である。
図6】保守端末のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、エレベーターの例を示す図である。エレベーターは、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3を上下に移動する。昇降路3は、建物に形成された上下に延びる空間である。かご1及びつり合いおもり2は、ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。図1は、1:1ローピング方式のエレベーター装置を一例として示す。
【0011】
ロープ4は、巻上機5に巻き掛けられる。かご1は、巻上機5によって駆動される。制御盤6は、巻上機5を制御する。即ち、かご1の移動は、制御盤6によって制御される。図1は、巻上機5及び制御盤6が昇降路3の上方の機械室7に設けられる例を示す。巻上機5及び制御盤6は、昇降路3に設けられても良い。巻上機5は、昇降路3の頂部に設けられても良いし、昇降路3のピットに設けられても良い。
【0012】
監視装置8は、制御盤6に接続される。監視装置8は、ネットワーク9を介して外部機器と通信する。当該外部機器に、サーバ10が含まれる。一例として、サーバ10は、当該エレベーターを管理する遠隔の情報センターに備えられる。サーバ10は、多数のエレベーターを管理する。
【0013】
保守端末20は、エレベーターの保守員が携帯する端末である。保守員は、エレベーターの点検を行う際に保守端末20を現場に持ち込む。保守員は、保守端末20を用いてエレベーターの点検を行う。例えば、保守端末20は、点検に必要なデータを制御盤6から取得する機能を有する。保守端末20は、点検に必要な指令を制御盤6に送る機能を有する。保守端末20は、例えばスマートフォンである。保守端末20は、タブレット型の端末でも良い。保守端末20は、エレベーターの点検のために設計された専用の端末でも良い。
【0014】
図2は、保守端末20の機能を説明するための図である。保守端末20は、入力装置21、及び報知器22を備える。保守員は、入力装置21から情報を入力する。保守端末20は、報知器22として表示器を備える。保守端末20は、報知器22としてスピーカを備えても良い。保守端末20は、報知器22として表示器とスピーカの双方を備えても良い。入力装置21及び報知器22は、タッチパネル式の一体型の装置でも良い。入力装置21は、キーボード、或いはマウスであっても良い。
【0015】
保守端末20は、記憶部23、通信部24、検出部25、取得部26、特定部27、判定部28、及び報知制御部29を更に備える。通信部24は、保守端末20の通信機能を司る。報知制御部29は、報知器22を制御する。以下に、図3及び図4も参照し、保守端末20が有する機能について詳しく説明する。図3は、保守端末20の動作例を示すフローチャートである。
【0016】
上述したように、サーバ10は、多数のエレベーターを管理する。サーバ10には、管理する各エレベーターの号機カルテが保存されている。号機カルテには、エレベーターの保守に関する様々な情報が含まれる。例えば、号機カルテには、エレベーターを識別するための識別情報とそのエレベーターの点検日及び点検内容を特定するための点検情報とが含まれる。当該識別情報は、ビル番号と号機番号との組み合わせで表されても良い。点検情報には、過去に行われた点検に関する作業実績と、これから行われる点検に関する作業計画とが含まれる。作業計画には、例えば、点検日時、担当保守員名、及び作業内容等が含まれる。
【0017】
保守端末20では、サーバ10に接続されたか否かが判定される(S101)。保守員は、エレベーターの現場に行く前に、例えば事務所において保守端末20をサーバ10に接続する。これにより、S101でYesと判定される。保守員は、保守端末20をサーバ10に接続すると、自分が担当するエレベーターの号機カルテをサーバ10からダウンロードする。保守員が担当するエレベーターは1つではない。このため、保守端末20の記憶部23には、複数の号機カルテが記憶される(S102)。
【0018】
図4は、保守端末20の他の動作例を示すフローチャートである。図4は、保守員がエレベーターの点検を開始する時の保守端末20の動作フローを示す。上述したように、保守員は、エレベーターの点検を行う際に保守端末20を現場に持ち込む。この時、保守端末20の記憶部23には、複数の号機カルテが記憶されている。
【0019】
保守端末20では、エレベーターの制御盤6に接続されたか否かが判定される(S201)。図2は、通信部24が監視装置8を介して制御盤6に接続される例を示す。通信部24は、監視装置8に有線で接続されても良いし、無線で接続されても良い。保守員は、点検を行うエレベーターの現場に到着すると、先ず保守端末20を制御盤6に接続する。これにより、S201でYesと判定される。
【0020】
検出部25は、保守端末20が制御盤6に接続されたことを検出する(S202)。制御盤6との接続が検出部25によって検出されると、取得部26は、その制御盤6からエレベーターを識別するための識別情報を取得する(S203)。
【0021】
特定部27は、S202で制御盤6との接続が検出部25によって検出されると、その制御盤6を有するエレベーターの号機カルテを、記憶部23に記憶された複数の号機カルテの中から特定する(S204)。一例として、特定部27は、S203で取得部26によって取得された識別情報に基づいて、号機カルテを特定する。例えば、特定部27は、S204において、取得部26が制御盤6から取得した識別情報と同一の識別情報を含む号機カルテを記憶部23から抽出する。
【0022】
他の例として、保守員は、保守端末20を制御盤6に接続すると、入力装置21からエレベーターの識別情報を入力する。特定部27は、入力装置21から入力された識別情報に基づいて、号機カルテを特定する。例えば、特定部27は、入力装置21から入力された識別情報と同一の識別情報を含む号機カルテを記憶部23から抽出する。
【0023】
他の例として、保守員は、保守端末20を制御盤6に接続すると、入力装置21からビル番号を入力する。かかる場合、特定部27は、入力装置21から入力されたビル番号が識別情報に含まれる号機カルテを記憶部23から抽出する。この時、特定部27によって複数の号機カルテが抽出されれば、保守員は、入力装置21によってその中から1つの号機カルテを選択する。特定部27は、その選択された号機カルテを、当該エレベーターの号機カルテと特定する。
【0024】
次に、判定部28は、当該エレベーターにおいて保守員がこれから行う作業の中に、かご1の上で行う第1作業が含まれるか否かを判定する(S205)。判定部28は、特定部27によって特定された号機カルテに基づいて、S205の判定を行う。第1作業は予め設定される。例えば、判定部28は、特定部27によって特定された号機カルテから、当該エレベーターにおいて当日に予定されている作業内容を特定する。判定部28は、特定した作業内容の1つでも第1作業に相当すれば、S205でYesと判定する。
【0025】
また、判定部28は、当該エレベーターにおいて保守員がこれから行う作業の中に、昇降路3のピットで行う第2作業が含まれるか否かを判定する(S206)。判定部28は、特定部27によって特定された号機カルテに基づいて、S206の判定を行う。第2作業は予め設定される。例えば、判定部28は、特定した作業内容の1つでも第2作業に相当すれば、S206でYesと判定する。
【0026】
少なくともS205又はS206の一方でYesと判定されると、報知制御部29は、報知器22から注意喚起を行う(S207)。例えば、報知制御部29は、「本日の点検では、かご上での作業又はピット内での作業が予定されています。かご上又はピット内で作業を行う時は他の方にその旨を知らせてから作業を開始してください。他の場所で作業を行う場合も他の方がかご上又はピット内で作業を行っている可能性があります。作業時に自分で判断できない場合は、上長に相談してください。」といった内容をスピーカから流したり、表示器に表示したりする。
【0027】
なお、S205及びS206の双方でNoと判定されると、S207での注意喚起は行われない、かかる場合、処理は終了する。
【0028】
本実施の形態に示す例では、エレベーターの点検が開始される際に、その点検においてかご1の上での作業が予定されていれば、保守員に対して注意を促すための適切な報知が行われる。即ち、保守員は、かご1での作業が予定されていることを認識した上で、エレベーターの点検を行うことができる。保守員は、自分がかご1の上にいなくても他の保守員がかご1の上にいる可能性があることを、点検を開始する際に把握することができる。
【0029】
同様に、本実施の形態に示す例では、エレベーターの点検が開始される際に、その点検において昇降路3のピットでの作業が予定されていれば、保守員に対して注意を促すための適切な報知が行われる。即ち、保守員は、ピットでの作業が予定されていることを認識した上で、エレベーターの点検を行うことができる。例えば、保守員は、自分がピットにいなくても他の保守員がピットにいる可能性があることを、点検を開始する際に把握することができる。
【0030】
本実施の形態では、S205の判定とS206の判定との双方が行われる好適な例について説明した。S205の判定又はS206の判定の一方のみが行われる場合であっても一定の効果は期待できる。
【0031】
図5は、保守端末20のハードウェア資源の例を示す図である。保守端末20は、ハードウェア資源として、プロセッサ31とメモリ32とを含む処理回路30を備える。処理回路30に複数のプロセッサ31が含まれても良い。処理回路30に複数のメモリ32が含まれても良い。
【0032】
本実施の形態において、符号23~29に示す各部は、保守端末20が有する機能を示す。符号24~29に示す各部の機能は、プログラムとして記述されたソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現できる。当該プログラムは、メモリ32に記憶される。保守端末20は、メモリ32に記憶されたプログラムをプロセッサ31によって実行することにより、符号24~29に示す各部の機能を実現する。記憶部23の機能はメモリ32によって実現される。メモリ32として、半導体メモリ等が採用できる。
【0033】
図6は、保守端末20のハードウェア資源の他の例を示す図である。図6に示す例では、保守端末20は、プロセッサ31、メモリ32、及び専用ハードウェア33を含む処理回路30を備える。
図6は、保守端末20が有する機能の一部を専用ハードウェア33によって実現する例を示す。保守端末20が有する機能の全部を専用ハードウェア33によって実現しても良い。専用ハードウェア33として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 4 ロープ、 5 巻上機、 6 制御盤、 7 機械室、 8 監視装置、 9 ネットワーク、 10 サーバ、 20 保守端末、 21 入力装置、 22 報知器、 23 記憶部、 24 通信部、 25 検出部、 26 取得部、 27 特定部、 28 判定部、 29 報知制御部、 30 処理回路、 31 プロセッサ、 32 メモリ、 33 専用ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6