(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】海洋生物抑制装置
(51)【国際特許分類】
F28F 19/00 20060101AFI20250311BHJP
F28B 9/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
F28F19/00 501B
F28B9/00
F28F19/00 521
(21)【出願番号】P 2021090335
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2024-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】宮迫 義巳
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-162090(JP,A)
【文献】特開昭63-162091(JP,A)
【文献】特開2017-109534(JP,A)
【文献】特表2017-538622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0140048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 19/00
F28B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水が流入する流入口が形成された入口水室と、
一端側が前記入口水室と連通し、前記流入口から前記入口水室に流入した海水を内部に流す複数の細管と、が設けられた復水器に配置される海洋生物抑制装置であって、
前記入口水室に配置され、
複数の前記細管
全ての長手方向の一端側
の開口から他端側
の開口に向けて前記長手方向に沿うように紫外線光又は紫色光を発光
可能な発光部を備える海洋生物抑制装置。
【請求項2】
前記発光部は、屈折により指向性を高めた直進光を発光可能であり、
前記直進光の光軸は、前記細管の長手方向に見て前記細管の内壁の内側にある請求項1に記載の海洋生物抑制装置。
【請求項3】
前記発光部を支持する支持部と、前記支持部をスライド移動可能に保持するガイドと、を備える請求項1又は2に記載の海洋生物抑制装置。
【請求項4】
前記復水器は、複数の前記細管の他端側と連通し、複数の前記細管の内部から流入した海水が流出する排出口が形成された出口水室が設けられ、
前記出口水室に配置され、前記長手方向の他端側から一端側に向けて紫外線光又は紫色光を発光する他端側発光部を備える請求項1から3の何れかに記載の海洋生物抑制装置。
【請求項5】
前記発光部を保持する本体部と、前記本体部に推進力を与える推進部と、前記細管の一端側の端部を検知可能な検知部と、前記推進部を前記検知部の検知結果に基づいて制御する制御部と、を有する水中ドローンを備える請求項1又は2に記載の海洋生物抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生物抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所等の復水器において蒸気の冷却媒体として海水を使用している。しかし、復水器は、通水している配管内に貝やバイオフィルム等の海洋生物が付着することで配管内壁と海水との接触面積が減少して熱効率が低下するおそれがあった。特許文献1では、付着性汚損生物が繁殖しやすい個所に水中で紫外線光を照射して付着性汚損生物の繁殖を防止する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、復水器の細管は、全長が長く径が細いために、特許文献1に記載されているような方法では、細管内部に十分に光を照射することが難しかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より十分に復水器の細管の内壁に光を照射可能な海洋生物抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明による海洋生物抑制装置は、海水が流入する流入口が形成された入口水室と、一端側が前記入口水室と連通し、前記流入口から前記入口水室に流入した海水を内部に流す複数の細管と、が設けられた復水器に配置される海洋生物抑制装置であって、前記入口水室に配置され、前記細管の長手方向の一端側から他端側に向けて前記長手方向に沿うように紫外線光又は紫色光を発光する発光部を備える。
【0007】
(2)本発明による海洋生物抑制装置では、前記発光部は、屈折により指向性を高めた直進光を発光可能であり、前記直進光の光軸は、前記細管の長手方向に見て前記細管の内壁の内側にある。
【0008】
(3)本発明による海洋生物抑制装置は、前記発光部を支持する支持部と、前記支持部をスライド移動可能に保持するガイドと、を備える。
【0009】
(4)本発明による海洋生物抑制装置では、前記復水器は、複数の前記細管の他端側と連通し、複数の前記細管の内部から流入した海水が流出する排出口が形成された出口水室が設けられ、前記出口水室に配置され、前記長手方向の他端側から一端側に向けて紫外線光又は紫色光を発光する他端側発光部を備える。
【0010】
(5)本発明による海洋生物抑制装置は、前記発光部を保持する本体部と、前記本体部に推進力を与える推進部と、前記細管の一端側の端部を検知可能な検知部と、前記推進部を前記検知部の検知結果に基づいて制御する制御部と、を有する水中ドローンを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より十分に復水器の細管の内壁に光を照射可能な海洋生物抑制装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る復水器を示す概略図である。
【
図2】第1の変形例に係る復水器を示す概略図である。
【
図3】第2の変形例に係る復水器を示す概略図である。
【
図4】第3の変形例に係る復水器を示す概略図である。
【
図5】第3の変形例に係る水中ドローンのハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図6】第4の変形例に係る復水器を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る復水器1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る復水器1を正面から見た場合の断面を示す概略図である。
【0014】
復水器1は、火力発電等におけるタービンを回した後の蒸気を冷却して凝縮させる復水処理を行う装置である。復水器1では、冷却媒体として海水が用いられている。復水器1により復水された水は、給水系統を介して再びボイラ等で加熱されて蒸気となり、タービンを回して再び復水器1に戻る。復水器1は、ハウジング10と、管板11と、入口水室20と、複数の細管30と、出口水室40と、海洋生物抑制装置50と、を備える。
【0015】
ハウジング10は、蒸気口12と、復水口13とが形成される箱型の中空形状の構造である。蒸気口12は、ハウジング10の上部に形成され、蒸気がタービンを回した後にハウジング10内に流入する時に通過する開口形状である。復水口13は、ハウジング10の下部に形成され、復水した後の水が流出する時に通過する開口形状である。
【0016】
管板11は、ハウジング10の左右方向の各端部に固定されている。管板11は、平面部に複数の穴部11aが形成されている。穴部11aは、細管30の端部を嵌合可能な穴である。また、左側の管板11に形成される複数の穴部11aと、右側の管板11に形成される複数の穴部11aとは、左右方向から見て、略一致するように形成されている。このため、複数の細管30は、一端部を右側の管板11の穴部11aに嵌合し、他端部を左側の管板11の穴部11aに嵌合させることで、入口水室20と出口水室40とを連通できる。
【0017】
また、入口水室20は、流入口20aと、管板嵌合部20bとが形成される箱型の中空形状の構造である。流入口20aは、不図示の配管と接続しており、配管から流れてくる海水が流入する時に通過する開口形状である。管板嵌合部20bは、上述の管板11の側面部に嵌合可能な開口形状である。入口水室20は、管板嵌合部20bを管板11の側面部に嵌合させることで、ハウジング10の側面に固定される。
【0018】
また、出口水室40は、排出口40aと、管板嵌合部40bとが形成される箱型の中空形状の構造である。排出口40aは、不図示の配管と接続しており、出口水室40内に流れてきた海水が配管に排出される時に通過する開口形状である。管板嵌合部40bは、上述の管板11の側面部に嵌合可能な開口形状である。出口水室40は、管板嵌合部40bを管板11の側面部に嵌合させることで、ハウジング10の側面に固定される。
【0019】
細管30は、伝熱性の高い材質で形成される細長い管である。例えば、細管30は、銅合金製で、径が20~25mm、全長が10mの管である。細管30は、復水器1において複数設けられる。細管30は、上述のように両端部が
図1における左右の管板11のそれぞれ穴部11aに嵌合され固定される。
【0020】
上述のように、復水器1において入口水室20と、出口水室40とは、複数の細管30を介して連結されている。
【0021】
従って、本実施形態に係る復水器1では、入口水室20に流入した海水が複数の細管30に通水され、蒸気口12からハウジング10内に流入した蒸気を冷却して復水させる。復水された水は、復水口13を介して流出する。また、蒸気を冷却した後の海水は、細管30から出口水室40に流れ、排出口40aを介して流出する。
【0022】
このような復水器1は、蒸気を冷却するための冷却媒体として海水を細管30に通水している。海水には貝やバイオフィルムといった海洋生物が含まれ、細管30の内壁に海洋生物が付着するおそれがある。海洋生物抑制装置50は、海洋生物の付着抑制のために入口水室20内に設けられ、入口水室20から細管30内壁に光を照射することで海洋生物の付着を抑制する。本実施形態に係る海洋生物抑制装置50が照射する光は、例えば400nm~440nmの波長の紫色光である。しかし、これに限らず、例えば、海洋生物抑制装置50が照射する光は、紫外線でも良い。
【0023】
本実施形態に係る海洋生物抑制装置50は、発光部としての照射装置50aと、支持部としての支持部材50bと、ガイドとしてのレール50cと、不図示の駆動部と、を有する。
【0024】
照射装置50aは、不図示のLEDランプと、不図示のレンズを有し、レンズは、LEDランプから照射された光の一部を屈折させて指向性を高めた直線光にする。即ち、照射装置50aは、指向性を高めた直進光を照射可能である。なお、照射装置50aが照射する光は、直進光に限らず、拡散光でも良い。
【0025】
支持部材50bは、照射装置50aを支持しつつ、レール50c上にスライド移動可能に保持されている。また、支持部材50bは、駆動部の駆動によってレール50c上をスライド移動する。
【0026】
レール50cは、入口水室20の内壁のうち右側の側面に設けられている。レール50cは、複数の細管30のうちそれぞれの細管30の入口水室20側の端部前に照射装置50aが移動して照射できるように敷設されている。即ち、本実施形態に係る照射装置50aは、駆動部の駆動により照射装置50aを支持する支持部材50bがレール50c上をスライド移動することで複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように紫外線光又は紫色光を発光できる。
【0027】
なお、本実施形態に係る海洋生物抑制装置50は、ガイドとしてレール50cを有するが、これに限らない。例えば、海洋生物抑制装置50は、ガイドとしてポールを有しても良い。
【0028】
以上のように構成される海洋生物抑制装置50は、海水が流入する流入口20aが形成された入口水室20と、一端側が入口水室20と連通し、流入口20aから入口水室20に流入した海水を内部に流す複数の細管30と、が設けられた復水器1に配置される海洋生物抑制装置50であって、入口水室20に配置され、細管30の長手方向の一端側から他端側に向けて長手方向に沿うように紫外線光又は紫色光を発光する照射装置50aを備える。
【0029】
これにより、本実施形態に係る海洋生物抑制装置50は、より十分に復水器1の細管30の内壁に光を照射可能である。
【0030】
また、海洋生物抑制装置50では、照射装置50aは、屈折により指向性を高めた直進光を発光可能であり、直進光の光軸は、細管30の長手方向に見て細管30の内壁の内側にある。
【0031】
これにより、照射装置50aは、より多くの光を細管30の内部に照射できる。
【0032】
また、海洋生物抑制装置50は、照射装置50aを支持する支持部材50bと、支持部材50bをスライド可能に保持するレール50cと、を備える。
【0033】
これにより、本実施形態に係る海洋生物抑制装置50は、照射装置50aを移動させて一台の照射装置50aで複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように照射できるため、照射装置50aの設置台数を削減でき、装置の導入コストや維持コストが削減できる。
【0034】
[変形例]
【0035】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、上述の実施形態を変形し、以下に例示するような変形例とすることができる。また、以下に例示するような変形例を組み合わせることもできる。
【0036】
<第1の変形例>
上述した実施形態に係る海洋生物抑制装置50Aは、駆動部の駆動により照射装置50aを支持する支持部材50bがレール50c上をスライド移動することで複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように紫外線光又は紫色光を発光できた。しかし、これに限らない。例えば、照射装置50aを支持する支持部材50bは、線状部材として移動可能に保持されたワイヤー50dによって支持され、ワイヤー50dを動かすことで照射装置50aが複数の細管30それぞれの前に移動して照射できるようにしても良い。以下に、詳細を説明する。
【0037】
第1の変形例に係る海洋生物抑制装置50Aの構成について、
図2を用いて説明する。なお、既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ名称をつけて詳細な説明を省略する場合がある。
図2は、第1の変形例に係る復水器1を正面から見た場合の断面を示す概略図である。
【0038】
本変形例に係る復水器1は、ハウジング10と、管板11と、入口水室20と、複数の細管30と、出口水室40と、海洋生物抑制装置50Aと、を備える。海洋生物抑制装置50Aは、照射装置50aと、支持部材50bと、ワイヤー50dと、を有する。ワイヤー50dは、線状部材であり、線状に細長く圧延された鋼材や線状に成形された樹脂等である。本変形例に係る支持部材50bは、ワイヤー50d上に固定されている。
【0039】
また、ワイヤー50dは、両端部をそれぞれ不図示の2つの滑車に固定され、滑車の回転により移動可能に保持されている。また、2つの滑車のうちの1つは、不図示のモータと連結しており、モータの駆動により滑車が回転するようになっている。即ち、照射装置50aは、モータの駆動により回転する滑車によってワイヤー50dが移動することで移動する。
【0040】
本実施形態に係るワイヤー50dは、照射装置50aが複数の細管30それぞれの前に移動して照射できるように配置されている。即ち、本実施形態に係る照射装置50aは、駆動部の駆動によりワイヤー50dがスライド移動することによって、複数の細管30それぞれの前に移動して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように照射できる。
【0041】
以上のように構成される海洋生物抑制装置50Aは、照射装置50aを支持する支持部材50bと、支持部材50bをスライド移動可能に保持するワイヤー50dと、を備える。
【0042】
これにより、本実施形態に係る海洋生物抑制装置50Aは、照射装置50aを移動させて一台の照射装置50aで複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように照射できるため、照射装置50aの設置台数を削減でき、装置の導入コストや維持コストを低減できる。また、海洋生物抑制装置50Aは、照射装置50aの移動ルートを変える改造を行う際に滑車等の部品を流用できるため、改造時におけるコストも低減できる。
【0043】
<第2の変形例>
上述した実施形態に係る海洋生物抑制装置50では、照射装置50aは、入口水室20に設けられていた。しかし、これに限らない。例えば、海洋生物抑制装置50Bは、
図3に示すように入口水室20の他に出口水室40にも出口側発光部としての照射装置50aが設けられても良い。
【0044】
第2の変形例に係る海洋生物抑制装置50Bは、入口水室20及び出口水室40それぞれに、照射装置50aと、支持部材50bと、レール50cと、不図示の駆動部と、を有する。即ち、海洋生物抑制装置50Bは、入口水室20に加えて出口水室40にも照射装置50aが設けられている。言い換えると、海洋生物抑制装置50Bは、複数の細管30の他端側と連通し、複数の細管30の内部から流入した海水が流出する排出口40aが形成された出口水室40が設けられ、出口水室40に配置され、長手方向の他端側から一端側に向けて紫外線光又は紫色光を発光する照射装置50aを有する。
【0045】
これにより、本変形例に係る海洋生物抑制装置50Bでは、細管30の一端側からだけでなく他端側からも光を照射するため、より十分に光を照射することができ、細管30の内壁へのより海洋生物の付着を抑制することができる。
【0046】
<第3の変形例>
上述した実施形態では、海洋生物抑制装置50は、駆動部の駆動により照射装置50aを支持する支持部材50bがレール50c上をスライド移動することで複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように紫外線光又は紫色光を発光できた。しかし、これに限らない。例えば、照射装置50aを支持する支持部材50bは、
図4に示すような自律航行可能な水中ドローン50eに搭載され、照射装置50aを複数の細管30それぞれの前に移動させて入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように照射できるようなルートを予め水中ドローン50eに登録させて自律航行させても良い。以下に、詳細を説明する。
【0047】
第3の変形例に係る海洋生物抑制装置50Cの構成について、
図4を用いて説明する。なお、既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ名称をつけて詳細な説明を省略する場合がある。
図4は第3の変形例に係る復水器1を正面から見た場合の断面を示す概略図である。
【0048】
第3の変形例に係る海洋生物抑制装置50Cは、水中を自律航行可能な不図示の水中ドローン50eと、水中ドローン50e上に搭載された照射装置50aと、を有する。水中ドローン50eは、
図5に示すように、CPU70と、ROM71と、RAM72と、推進部73と、検知部74と、記憶部75と、通信部76と、バッテリ77と、バス78と、入出力インターフェース79と、を有する。
【0049】
CPU70は、ROM71に記録されているプログラム、又は、記憶部75からRAM72にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。言い換えると、水中ドローン50eの各種の制御を行う制御部80は、演算処理を実行するCPU70によって実現される。
【0050】
RAM72には、CPU70が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0051】
CPU70、ROM71及びRAM72は、バス78を介して相互に接続されている。このバス78にはまた、入出力インターフェース79も接続されている。入出力インターフェース79には、推進部73、検知部74、記憶部75、通信部76及びバッテリ77が接続されている。
【0052】
推進部73は、例えばプロペラと操舵とにより構成される。しかし、推進部73の構成は、これに限らず、例えば向きの異なる複数のプロペラを備えても良いし、噴射方向を操作可能なウォータジェットノズルを備えていても良い。
【0053】
検知部74は、入口水室20内壁や細管30の端部を検知可能である。検知部74は、例えば、カメラやソナーである。
【0054】
記憶部75は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、水中ドローン50eの種々のデータを保存する装置である。
【0055】
通信部76は、ネットワークケーブルを介して他のコンピュータとの間で通信を行う装置である。しかし、これに限らず、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(Wireless Fidelity)の通信規格に基づいた通信方式で他のコンピュータと通信を行っても良い。
【0056】
バッテリ77は、水中ドローン50eに電力を供給する。例えば、バッテリ77はリチウムイオン電池によって構成される。なお、有線ケーブルを用いて電力を供給してもよい。
【0057】
本実施形態に係る水中ドローン50eの制御部80は、検知部74の検知結果に基づいて推進部73の駆動を制御可能である。また、本実施形態に係る水中ドローン50eの記憶部75には、複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように照射装置50aが照射できるようなルートが記憶されている。従って、本実施形態に係る制御部80は、予め記憶したルートを水中ドローン50eが移動するように検知部74の検知結果に基づいて推進部73の駆動を制御する。
【0058】
本変形例に係る海洋生物抑制装置50Cは、照射装置50aを保持する水中ドローン50eと、水中ドローン50eに推進力を与える推進部73と、細管30の一端側の端部を検知可能な検知部74と、推進部73を検知部74の検知結果に基づいて制御する制御部80と、を有する水中ドローン50eを備える。
【0059】
これにより、本変形例に係る海洋生物抑制装置50Cは、より十分に復水器1の細管30の内壁に光を照射可能である。また、海洋生物抑制装置50Cは、入口水室20内に設置するための構造等を設けずに配置できるため、復水器1の使用を止めずに配置可能である。また、本変形例に係る海洋生物抑制装置50Cは、入口水室20内に設置するための構造等を設けずに配置するため、復水器1の使用を止めずに海洋生物抑制装置50Cのメンテナンスができ、メンテナンス性が向上している。なお、本変形例に係る復水器1には、水中ドローン50eの部品等の異物が細管30等に流入することを抑制するための網を入口水室20内に設けることが好ましい。
【0060】
<第4の変形例>
上述した実施形態に係る海洋生物抑制装置50では、照射装置50aは、細管30の長手方向に向けて支持部材50bに固定されていた。しかし、これに限らない。例えば、照射装置50aは、
図6に示すように照射装置50aを回動可能に支持する首振り機構を備えた支持部材50fに固定させてもよい。この場合、照射装置50aは、
図6に示すように回動して照射方向を変更できる。以下に、詳細な説明を行う。
【0061】
第4の変形例に係る海洋生物抑制装置50Dの構成について、
図6を用いて説明する。なお、既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ名称をつけて詳細な説明を省略する場合がある。
図6は、第4の変形例に係る復水器1を正面から見た場合の断面を示す概略図である。
【0062】
第4の変形例に係る海洋生物抑制装置50Dは、
図6に示すように照射装置50aと、照射装置50aを回動可能に支持する支持部材50fと、支持部材50fをスライド移動可能に支持するレール50cと、不図示の駆動部と、を有する。支持部材50fは、駆動部の駆動によってレール50c上をスライド移動する。また、支持部材50fは、駆動部の駆動によって照射装置50aを回動させる。
【0063】
これにより、本変形例に係る海洋生物抑制装置50Dは、複数の細管30に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように照射でき、更に入口水室20内にも照射することができ、より効率的に細管30の内壁への海洋生物の付着を抑制できる。
【0064】
なお、本実施形態に係る海洋生物抑制装置50は、照射装置自体を移動することで、複数の細管に対して入口水室20側から出口水室40側に向けて細管30の長手方向に沿うように光を照射していた。しかし、これに限らない。例えば、海洋生物抑制装置50は、照射装置50aの照射する光を導入する導光部を備え、レール50c上をスライド移動する支持部材50bに導入部を固定しても良い。導光部は、例えば光ファイバーである。この場合でも、海洋生物抑制装置50は、より十分に復水器1の細管30の内壁に光を照射可能である。
【0065】
また、本実施形態では、発光部が発光する光は、指向性を高めた直進光であったが、これに限らず、例えば拡散光でも良い。また、本実施形態に係る海洋生物抑制装置50及び第1の変形例に係る海洋生物抑制装置50Aの支持部材50bは、不図示の駆動部の駆動によりスライド移動可能となっていたが、これに限らず、人力によってスライド移動させても良い。
【符号の説明】
【0066】
20 入口水室
20a 流入口
30 細管
50 海洋生物抑制装置
50a 照射装置