(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】連続体製造方法および袋体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B31B 70/62 20170101AFI20250311BHJP
B65D 27/10 20060101ALI20250311BHJP
B31B 160/10 20170101ALN20250311BHJP
B31B 170/10 20170101ALN20250311BHJP
【FI】
B31B70/62
B65D27/10
B31B160:10
B31B170:10
(21)【出願番号】P 2021124337
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】辻 和政
(72)【発明者】
【氏名】山縣 茂
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-072471(JP,U)
【文献】米国特許第02847915(US,A)
【文献】特開平10-007154(JP,A)
【文献】実開平06-016241(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 70/62
B65D 27/10
B31B 160/10
B31B 170/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの資材が貼り合せられた袋体が順次切り取られる連続体を製造する連続体製造方法であって、
帯状に延在する前記資材のうち少なくとも一方に対して、前記袋体において貼り合せられる領域が前記資材の帯状に延在する帯長方向に沿って繰り返されたパターンで接着剤を塗工する糊付工程と、
前記糊付工程の後に、前記資材どうしを前記接着剤で貼り合せて、前記帯長方向に沿って前記袋体が連続して並ぶ半製品を製造する貼合工程と、
前記貼合工程の後に、前記資材のうち一方を谷折りするとともに前記資材のうち他方を山折りする第一折返と前記資材のうち一方を山折りするとともに前記資材のうち他方を谷折りする第二折返とを前記接着剤の塗工された領域に少なくとも一部が重複する折返線において交互に繰り返し、前記袋体が一つずつ重ね合わせられた状態に前記半製品を蛇腹状に折り畳んで前記連続体を製造する折畳工程と、
前記貼合工程の後であって前記折畳工程の前に、前記半製品における前記袋体どうしの境界で前記帯長方向と交差する帯幅方向に沿って前記資材に断続的な切れ込みを設ける切込工程と、を備え、
前記接着剤は、前記接着剤の硬化が完了する前であって前記接着剤で貼り合せられた前記資材どうしの相対的なズレが許容される状態の軟状態から前記接着剤によって貼り合せられた前記資材どうしの相対的なズレが許容されずに前記接着剤の硬化が完了した状態の硬状態へ硬化するのに所定期間を要し、
前記糊付工程は、前記折畳工程で折り返される前記折返線となる予定の領域のうち一部には前記接着剤を塗工せずに前記一部を除く他部のみに前記接着剤を塗工し、
前記切込工程は、前記接着剤の塗工されていない前記一部のみに前記切れ込みを設け、
前記折畳工程は、前記切込工程で設けられた断続的な前記切れ込み上の前記折返線で前記半製品を蛇腹状に折り畳み、前記資材どうしを貼り合せる前記接着剤が前記硬状態へ硬化する前の前記軟状態である前記所定期間中に前記折返線での折り返しを実施する
ことを特徴とする連続体製造方法。
【請求項2】
前記糊付工程は、前記帯長方向と交差する帯幅方向に対称な前記パターンで前記接着剤を塗工する
ことを特徴とする請求項1に記載の連続体製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の連続体製造方法で製造された前記連続体が前記折返線で切り分けられた袋体
の製造方法であって、
前記資材の一方において前記折返線で切り分けられた第一端縁と前記資材の他方において前記折返線で切り分けられた第二端縁と
が前記資材の一方および他方のそれぞれにおいて前記折返線での折り返しに最低限必要な寸法どうしの差分に対応する長さ分だけズレて設けられた
状態で前記連続体から前記袋体を切り取る
ことを特徴とする袋体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの資材が貼り合せられた袋体が順次切り取られる連続体を製造する方法および本方法で製造された袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
製袋技術の一つとして、帯状に延在する二つの資材を貼り合せ、貼り合せられた資材から袋体の切り取り可能な連続体を製造する技術が知られている。
たとえば、下記の三工程を実施して、袋体が順次切り取られる連続体を製造する技術が提案されている(特許文献1参照)。
・糊付工程:袋体において貼り合せられるコの字型の領域が繰り返して並ぶパタ
ーンで接着剤を資材に塗工する工程
・貼合工程:糊付工程で塗工された接着剤で二つの資材を貼り合せて袋体が連続
して並ぶ半製品を製造する工程
・折畳工程:袋体が一つずつ積み重ねられた状態に接着剤の塗工された領域に重
複する折返線で半製品をファンフォールド紙のように折り畳んで連
続体を製造する工程
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように折り畳まれた連続体では、
図10に示すように二つの資材1′,2′のうち内側の資材1′が谷折りされているとともに外側の資材2′が山折りされた折返線50′で折り返されている。そのため、外側の資材2′よりも内側の資材1′は、折返線50′での折り返しに最低限必要な寸法が短い。このような寸法の長短(差分)があるにもかかわらず、資材1′,2′どうしの相対的な位置が接着剤によって固定されるため、内側の資材1′が行き詰まって連続体に皺やヨレの発生を招くおそれがある。
よって、連続体や連続体から切り分けられる袋体の品質を確保するうえで改善の余地がある。
【0005】
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、連続体や連続体から切り分けられる袋体の品質を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する連続体製造方法は、二つの資材が貼り合せられた袋体が順次切り取られる連続体を製造する連続体製造方法である。本連続体製造方法は、帯状に延在する前記資材のうち少なくとも一方に対して、前記袋体において貼り合せられる領域が前記資材の帯状に延在する帯長方向に沿って繰り返されたパターンで接着剤を塗工する糊付工程と、前記糊付工程の後に、前記資材どうしを前記接着剤で貼り合せて、前記帯長方向に沿って前記袋体が連続して並ぶ半製品を製造する貼合工程と、前記貼合工程の後に、前記資材のうち一方を谷折りするとともに前記資材のうち他方を山折りする第一折返と前記資材のうち一方を山折りするとともに前記資材のうち他方を谷折りする第二折返とを前記接着剤の塗工された領域に少なくとも一部が重複する折返線において交互に繰り返し、前記袋体が一つずつ重ね合わせられた状態に前記半製品を蛇腹状に折り畳んで前記連続体を製造する折畳工程と、を備えている。前記接着剤は、前記接着剤の硬化が完了する前であって前記接着剤で貼り合せられた前記資材どうしの相対的なズレが許容される状態の軟状態から前記接着剤によって貼り合せられた前記資材どうしの相対的なズレが許容されずに前記接着剤の硬化が完了した状態の硬状態へ硬化するのに所定期間を要する。前記折畳工程は、前記資材どうしを貼り合せる前記接着剤が前記硬状態へ硬化する前の前記軟状態である前記所定期間中に前記折返線での折り返しを実施する。
【0007】
ここで開示する袋体は、上記の連続体製造方法で製造された前記連続体が前記折返線で切り分けられた袋体であって、前記資材の一方において前記折返線で切り分けられた第一端縁と前記資材の他方において前記折返線で切り分けられた第二端縁とは、前記資材の一方および他方のそれぞれにおいて前記折返線での折り返しに最低限必要な寸法どうしの差分に対応する長さ分だけズレて設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、連続体やこの連続体から切り分けられる袋体の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】連続体製造方法を実施する連続体製造装置を模式的に示す全体構成図である。
【
図2】糊付パートの要部を模式的に示す斜視図である。
【
図3】連続体製造方法を説明するフローチャートである。
【
図4】資材の皺やヨレが解消される作用機序を説明する模式図である。
【
図5】連続体から切り取られた袋体の要部を示す断面図である。
【
図6】接着剤の塗工された領域の第一変形例を示す平面図である。
【
図7】接着剤の塗工された領域の第二変形例を示す平面図である。
【
図8】接着剤の塗工された領域の第三変形例を示す平面図である。
【
図9】接着剤の塗工された領域の第四変形例を示す平面図である。
【
図10】資材に皺やヨレの発生を招く課題を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、連続体製造方法を実施するための形態を説明する。
本実施形態の連続体製造方法は、連続体を製造する方法である。本製法の製造対象である連続体は、複数の袋体が連続してつながった状態であって、袋体が一つずつ重ね合わせられた状態に折り返されている。このような状態に折り畳まれた連続体は折返線で袋体が順次切り取り可能であり、切り取られた袋体では二つの資材が貼り合せられている。
【0011】
上記のように二つの資材が貼り合せられた袋体が順次切り取られる連続体を製造する連続体製造方法は、連続体を製造する連続体製造装置において実施される。
本実施形態では、連続体から切り取られる袋体が正面視で矩形状をなす例を挙げる。この袋体は、矩形状の輪郭を構成する四辺のうち三辺に沿うコの字型の領域が貼り合せられ、残りの一辺に沿って開口が設けられている。
【0012】
本実施形態の説明では、連続体の製造過程が上流から下流へ進捗する方向をMD方向(Machine Direction)とし、MD方向の沿う平面においてMD方向に直交する方向をCD方向(Cross Direction)とする。これらのMD方向およびCD方向の双方に直交する方向をTD方向(Transverse Direction)とする。MD方向はいわゆる「流れ方向」であり、CD方向はいわゆる「幅方向」であり、TD方向はいわゆる「厚さ方向」である。
【0013】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、連続体製造方法に関する構成を項目[1]で述べる。そして、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
[1.構成]
本項目[1]では、連続体製造方法を実施する連続体製造装置を小項目[1-1]で説明し、その後に連続体製造方法を小項目[1-2]で説明する。
【0014】
[1-1.装置]
連続体製造装置は、
図1に示すように、帯状に延在する二つの資材1,2を接着剤3で貼り合せて、袋体4(
図1では二箇所のみに符合を付す)が連続してつながった連続体5を製造する装置である。
この製造装置には、下記の四パート10,20,30,40が設けられている。
・糊付パート10:資材1,2に接着剤3を塗工するパート
・貼合パート20:接着剤3で資材1,2を貼り合せるパート
・切込パート30:貼り合せられた資材1,2に切れ込み9を設けるパート
・折畳パート40:切れ込み9の設けられた資材1,2を折り返して畳むパート
【0015】
これらの四パート10,20,30,40は、MD方向に沿って直列に配設されている。具体的に言えば、資材1,2の送給される糊付パート10に対して下流側に貼合パート20が設けられている。貼合パート20の下流側に切込パート30が設けられ、切込パート30の下流側に折畳パート40が設けられている。
本実施形態では、糊付パート10に送給される資材1,2として、紙製の資材(原紙)を例示する。ただし、資材1,2は、紙製に限られず、接着剤3で貼り合せ可能であって折り返し可能な物性を有していれば種々の資材を適用することができる。
【0016】
糊付パート10での塗工や貼合パート20での貼り合せに用いられる接着剤3には、下記の軟状態から下記の硬状態へ硬化するのに所定期間を要するタイプが用いられる。
・軟状態:接着剤3の硬化が完了する前であって接着剤3で貼り合せられた資材
1,2どうしの相対的なズレが許容される状態
・硬状態:接着剤3によって貼り合せられた資材1,2どうしの相対的なズレが
許容されずに接着剤3の硬化が完了した状態
【0017】
本実施形態の接着剤3は、糊付パート10で塗工されたときや貼合パート20で資材1,2どうしが貼り合せられたときに軟状態であるほか、切込パート30で切れ込み9が設けられたときや折畳パート40で折り畳まれたときにも軟状態を維持している。すなわち、糊付パート10から折畳パート40までの製造過程が進捗するのに要する時間(期間)よりも長い所定期間の接着剤3が選定されている。このような接着剤3は、いわゆる瞬間接着剤や速硬化型のように硬化期間の短いタイプの接着剤ではなく、遅硬化型接着剤と言える。
【0018】
<糊付パート>
糊付パート10に送給される二つの資材1,2は、それぞれが帯状に延在している。資材1,2のうち、一方の第一資材1は袋体4においてたとえばオモテ側をなす半部に対応し、他方の第二資材2は袋体4においてたとえばウラ側をなす半部に対応する。
糊付パート10では、資材1,2の少なくとも一方に対して接着剤3を塗工する。接着剤3が塗工される面は、資材1,2どうしが対面する側の表面(ひょうめん)であり、袋体4では外側に露出しない側のいわばウラ面である。ここでは、第一資材1のみに接着剤3を塗工する糊付パート10を例示する。ただし、第二資材2のみに接着剤3を塗工してもよく、資材1,2の双方に接着剤3を塗工してもよい。
【0019】
第一資材1に対する接着剤3の塗工領域6(
図2には網点で示す)は、第二資材2に対面する側の表面(ひょうめん)であって、袋体4において貼り合せられる領域がMD方向(資材の帯状に延在する帯長方向)に沿って繰り返されたパターンに設定されている。この塗工領域6には、MD方向に沿って連続する領域が含まれている。
具体的な塗工領域6の一例としては、
図2に示すように、コの字型をなす単位領域60の繰り返された第一パターン領域6Aが挙げられる。
【0020】
第一パターン領域6Aでは、コの字型の開放側をCD方向の一側(
図2では下側)に向けた単位領域60がMD方向に沿って繰り返されている。単位領域60のコの字型を下記の三領域61,62,63に細別すれば、横領域61,62がCD方向に沿って延在するとともにMD方向に沿って交互に設けられ、縦領域63がMD方向に沿って延在する。
・第一横領域61:コの字における二つの横辺のうち上側の横辺に対応する領域
・第二横領域62:コの字における二つの横辺のうち下側の横辺に対応する領域
・ 縦領域63:コの字における縦辺に対応する領域
【0021】
ここで例示する横領域61,62は、第一資材1におけるCD方向の寸法よりもやや小さく設定されており、第二資材2(
図1参照)におけるCD方向の寸法と等しくまたはほぼ等しく設定されている。換言すれば、第二資材2よりも幅広な第一資材1が採用されている。また、横領域61,62においてCD方向の一側の端部T1,T2は、第一資材1におけるCD方向の一側の端縁11から離間している。
【0022】
これらの横領域61,62は、互いに間隔をあけて配置される。詳細に言えば、着目した一つの単位領域60において下流側の横領域(
図2では第二横領域62)は、着目した一つの単位領域60に対して下流側に隣接する単位領域60において上流側の横領域(
図2では第一横領域61)との間に隙間69をあけて配置される。
なお、一つの単位領域60において下流側の横領域(
図2では第二横領域62)に対して上流側の横領域(
図2では第一横領域61)は、上述のようにコの字における横辺に対応することから、MD方向に離間して配置される。
【0023】
ここで例示する縦領域63は、第一資材1においてCD方向の他側(
図2では上側)の端縁12を含んでいる。
着目した一つの単位領域60の縦領域63は、着目した一つの単位領域60に対して上流側および下流側に隣接する単位領域60の縦領域63とつながっている。この縦領域63は、上記のように隙間69が設けられることから、横領域61,62に対してややMD方向に延出した領域とも言える。このように設定された縦領域63は、MD方向に沿って連続している。したがって、隙間69に対してCD方向の他側には縦領域63がMD方向に沿って延在している。
【0024】
<貼合パート>
図1に示すように、貼合パート20は、糊付パート10で塗工された接着剤3で資材1,2どうしを貼り合せて、MD方向に沿って袋体4が連続して並ぶ半製品5′を製造するパートである。
なお、ここでいう「半製品5′」は、連続体5の半製品である。連続体5は折り畳まれて層状に構成されているのに対し、半製品5′は折り畳まれておらずMD方向に沿って面状に構成されている。
【0025】
この貼合パート20では、第一資材1におけるCD方向の他側の端縁12(
図2参照)と第二資材2におけるCD方向の他側の端縁とがTD方向視で一致する位置関係で資材1,2どうしが貼り合せられる。
第二資材2よりも幅広な第一資材1が採用されていることから、第一資材1におけるCD方向の一側の端縁11(
図2参照)は、第二資材2におけるCD方向の一側の端縁よりもCD方向の一側に位置する。第二資材2におけるCD方向の一側の端縁よりも第一資材1においてCD方向の一側に延出した領域は、各袋体4において揺動自在であって開口を開閉自在なフラップ(「ベロ」や「蓋」などとも称される)となる。
【0026】
<切込パート>
切込パート30は、半製品5′における袋体4どうしの境界でCD方向(MD方向と交差する方向)に沿って資材1,2に断続的な切れ込み(以下「ミシン目」と称する,
図2に二点鎖線で示す)9を設けるパートである。この切込パート30で設けられるミシン目9は、上述の隙間69および縦領域63を横断して半製品5′のCD方向全域に亘って延在している。
ただし、隙間69のみにミシン目9が切れ込まれていても(縦領域63にはミシン目9が切れ込まれていなくても)よい。
【0027】
<折畳パート>
折畳パート40は、上述の塗工領域6(
図2参照)を跨ぐ(塗工領域6に少なくとも一部が重複する)折返線50において下記の第一折返および第二折返を交互に繰り返し、袋体4が一つずつ重ね合わせられた状態に半製品5′を蛇腹状に折り畳んで連続体5を製造するパートである。
・第一折返:第一資材1を谷折りするとともに第二資材2を山折りする折り返し
・第二折返:第一資材1を山折りするとともに第二資材2を谷折りする折り返し
なお、「谷折り」とは折目が内側に入るように折ることを意味し、「山折り」とは折目が外側に出るように折ることを意味する。
【0028】
折畳パート40での折り返しが実施される折返線50は、上記の第一折返が実施される第一折返線51と上記の第二折返が実施される第二折返線52との二種を内包する折目である。折畳パート40では、半製品5′に対して第一折返線51における第一折返の実施と第二折返線52における第二折返が実施とが交互に繰り返される。このようにして、ファンフォールド紙のように半製品5′が折り畳まれた連続体5が製造される。
【0029】
ここで例示する折返線50は、第一パターン領域6Aの縦領域63(
図2参照)を跨いでおり、ミシン目9上の折線である。すなわち、隙間69および縦領域63を横断してCD方向全域に亘る折線が折返線50である。このようにして、切込パート30で設けられたミシン目9上の折返線50で半製品5′が蛇腹状に折り畳まれる。
上記のように接着剤3の塗工されていない隙間69を折返線50が横断することから、糊付パート10は、折畳パート40で折り返される折返線50となる予定の領域のうち一部(すなわち隙間69の領域)には接着剤3を塗工しないと言える。この糊付パート10は、ミシン目9となる予定の領域のうち縦領域63を横断する部分(折返線50となる予定の領域のうち一部を除く他部)のみに接着剤3を塗工するとも言える。
【0030】
本実施形態の折畳パート40は、資材1,2どうしを貼り合せる接着剤3が上述の硬状態へ硬化する前に半製品5′の折り返しを実施する。すなわち、折畳パート40では、接着剤3が上述の軟状態である所定期間中に半製品5′が折返線50で折り返される。
【0031】
[1-2.方法]
つぎに、
図3のフローチャートを参照して、上記の連続体製造装置によって実施される連続体製造方法を説明する。
この製法では、連続体製造装置の構成として上述の各パート10,20,30,40において、その名称のうち「パート」を「工程」に置換した工程を実施する。詳細に言えば、糊付パート10では糊付工程が実施され、貼合パート20では貼合工程が実施され、切込パート30では切込工程が実施され、折畳パート40では折畳工程が実施される。
【0032】
まず、第一資材1(資材1,2のうち少なくとも一方)に対して、袋体4において貼り合せられる領域がMD方向に沿って繰り返されたパターンで接着剤3を塗工する糊付工程を実施する(ステップS10)。この糊付工程は、折畳工程で折り返される折返線50となる予定の領域や切込工程で切れ込まれるミシン目9となる予定の領域のうち一部には接着剤3を塗工しない。
上記のパターンに設定された塗工領域6に接着剤3を塗工する糊付工程の後に、資材1,2どうしを接着剤3で貼り合せて、MD方向に沿って袋体4が連続して並ぶ半製品5′を製造する貼合工程を実施する(ステップS20)。
【0033】
貼合工程の後(折畳工程の前)に、半製品5′における袋体4どうしの境界でCD方向に沿って資材1,2にミシン目9を設ける切込工程を実施する(ステップS30)。
切込工程の後(貼合工程の後)に、接着剤3の塗工領域6を跨ぐ折返線50において上述の第一折返と上述の第二折返とを交互に繰り返し、袋体4が一つずつ重ね合わせられた状態に半製品5′を蛇腹状に折り畳んで連続体5を製造する折畳工程を実施する(ステップS40)。この折畳工程は、切込工程で設けられたミシン目9上の折返線50で半製品5′を蛇腹状に折り畳む。さらに、本折畳工程は、資材1,2どうしを貼り合せる接着剤3が硬状態へ硬化する前の軟状態である上述の所定期間中に折返線50での折り返しを実施する。
【0034】
[2.作用および効果]
本実施形態の連続体製造方法は、上述のように構成されるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)本連続体製造方法の折畳工程は、資材1,2どうしを貼り合せる接着剤3が硬状態へ硬化する前の軟状態である所定期間中に折返線50での折り返しを実施する。このように接着剤3が固まる前に半製品5′を折返線50で折り返す折畳工程は、折返線50における折り返しに最低限必要な資材1,2の寸法が相違する(いわば周差が有る)ことを前提としている。そのうえで、本折畳工程は、資材1,2どうしが硬状態の接着剤3によって貼り合せられていると相対的なズレが許容されず皺やヨレの発生を招くことに立脚して、所定期間中に半製品5′を折返線50で折り返すという構成を備えている。
【0035】
図4に例示するように、第一折返線51において折り返しに最低限必要な寸法は、内側の第一資材1のほうが外側の第二資材2よりも短い。そのうえで、資材1,2どうしを貼り合せる接着剤3が軟状態であるため、内側の第一資材1が外側の第二資材2に対して相対的なズレが許容され、上記の皺やヨレを伸ばすようにして内側の第一資材1が外側の第二資材2に対して相対的に自ずとズレる(
図4ではズレを波型の矢印で例示する)。
【0036】
一方、第二折返線52において折り返しに最低限必要な寸法は、外側の第一資材1のほうが内側の第二資材2よりも長い。そのうえで、資材1,2どうしを貼り合せる接着剤3が軟状態であるため、内側の第二資材2が外側の第一資材1に対して相対的なズレが許容され、皺やヨレを伸ばすようにして内側の第二資材2が外側の第一資材1に対して相対的に自ずとズレる。
【0037】
第一折返線51において内側の第一資材1のズレは、このズレが生じた第一折返線51に隣接する第二折返線52において相殺される。同様に、第二折返線52において内側の第二資材2のズレは、このズレが生じた第二折返線52に隣接する第一折返線51において相殺される。折返線51,52における相殺により資材1,2のズレが蓄積することなく、連続体5における皺やヨレの発生を抑えることができる。
よって、連続体5や連続体5から切り取られる袋体4の品質を確保することができる。
【0038】
(2)上記のような作用機序によって折返線50で資材1,2のズレが生じることから、本実施形態の連続体製造装置で製造された連続体5から切り取られた各袋体4は、
図5に示すように、資材1,2における端縁41,42の一方が他方よりも延出している。詳細に言えば、第一資材1においてミシン目9上の折返線50で切り分けられた第一端縁41と第二資材2においてミシン目9上の折返線50で切り分けられた第二端縁42とは、資材1,2のそれぞれにおいて折返線50での折り返しに最低限必要な寸法どうしの差分に対応する長さ分だけズレて設けられる。このようにミシン目9の端面が面一ではない袋体4は、皺やヨレが抑えられ、品質が確保される。
【0039】
(3)半製品5′における袋体4どうしの境界でCD方向に沿って資材1,2に設けられたミシン目9上の折返線50で半製品5′が蛇腹状に折り畳まれるため、半製品5′を折返線50で円滑に折り返すことができる。このようにして連続体5を円滑に折り畳むことができるため、連続体5の品質を高めることができる。連続体5から切り取られる袋体4の品質も向上させることができる。
【0040】
(4)糊付工程は、折畳工程で折り返される折返線50となる予定の領域のうち一部には接着剤3を塗工しないため、折返線50のうち接着剤3の塗工されていない一部では接着剤3によって制限されることなく資材1,2どうしの相対的なズレが許容される。そのため、連続体5における皺やヨレの発生抑制に寄与し、連続体5や袋体4の品質向上に資する。
折返線50は切込工程で切れ込まれるミシン目9上に位置することから、ミシン目9となる予定の領域のうち一部にも接着剤3が塗工されない。そのため、ミシン目9の切れ込みを通じて接着剤3がはみ出るのを抑えることができる。この点からも、連続体5や連続体5から切り取られる袋体4の品質を向上させることができる。
【0041】
(5)そのほか、紙製の資材1,2が用いられることにより、樹脂フィルム製の資材が用いられるのに比較して、いわゆる脱プラスチックを推進することができ、環境負荷の抑制に寄与する。
なお、連続体製造装置は連続体製造方法と同様の作用および効果を得ることができる。
【0042】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0043】
たとえば、糊付工程によって資材に接着剤が塗工される領域は、上述の第一パターン領域6Aに限らず、さまざまな領域を採用してもよい。
塗工領域6の第一変形例としては、
図6に例示する第二パターン領域6Bが挙げられる。第二パターン領域6Bは、上述の第一パターン領域6A(
図2参照)に対して、第一パターン領域6Aの横領域61,62をCD方向全域に亘って延在するように延長させた構成が相違し、その他の構成は同様である。すなわち、CD方向全域に亘って延在する横領域61′,62′と第一パターン領域6Aの縦領域63と同様の縦領域63′とを単位領域60′とし、この単位領域60′の繰り返された第二パターン領域6Bを採用してもよい。
【0044】
塗工領域6の第二変形例としては、
図7に例示する第三パターン領域6Cが挙げられる。第三パターン領域6Cは、CD方向(帯幅方向)に対称なパターンである。詳細には、コの字型の開放側をMD方向の一側(
図7では上流側)に向けた単位領域60″がMD方向に沿って繰り返されている。この単位領域60″では、横領域61″,62″がMD方向に沿って延在し、縦領域63″がCD方向に沿って延在する。
【0045】
第三パターン領域6Cが採用された場合には、糊付パートや糊付工程においてCD方向(帯幅方向)に対称なパターンで接着剤を塗工することになる。このようにバランスよく接着剤が塗工されることにより、連続体におけるCD方向の一側と他側とで厚みが相違するのを抑えることができ、連続体や袋体の品質向上に寄与する。
なお、糊付工程によって資材に接着剤が塗工される領域は、第一パターン領域6Aの隙間69にも接着剤が塗工された第四パターン領域6D(
図8参照)であってもよく、同様に第二パターン領域6Bの隙間69′にも接着剤が塗工された第五パターン領域6E(
図9参照)であってもよい。これらのようにミシン目(
図8,
図9に二点鎖線で示す)となる予定の領域の大部分または全部に接着剤が塗工される場合には、接着剤の塗工された領域に大部分または全部が重複する折返線において折り返しが実施される。上記のように隙間69,69′にも接着剤が塗工された領域6D,6Eが採用された場合には、簡素な塗工領域の設定により、糊付パート(糊付工程を実施するパート)のメンテナンスや調整作業の軽減を図ることができる。
【0046】
切込工程(切込パート)は、少なくとも折畳工程の前に実施(折畳パートよりも上流側に配設)すればよい。一方、切込工程を省略してもよい。切込工程を省略すれば、簡素な工程(装置構成)で連続体を製造することができる。
そのほか、溶媒の揮発が進行するにつれて硬化する接着剤が用いられる場合には、溶媒の揮発度合いを調整することによって軟状態から硬状態へ変移する期間(すなわち所定期間)を調整することができる。
【0047】
水系溶媒が蒸発(揮発)するほど硬化する接着剤が用いられた場合の一例としては、第一資材に樹脂フィルムのラミネートされた紙材を用いるとともに第二資材にラミネートされていない紙材を用いることが挙げられる。これらの資材が用いられた場合には、ラミネートされていない第二資材によって水系溶媒の蒸発が確保されるとともにラミネートされた第一資材によって水系溶媒の蒸発が抑えられるため、接着剤の未硬化を防ぎつつ所定期間を長期化することができる。敷衍して言えば、資材の選定によって所定期間の長短を調整することができる。
【0048】
さいごに、資材および接着剤のそれぞれについて、本連続体製造方法に用いることのできる具体例を下掲のように列挙する。
資材は、植物由来のパルプを主成分とする一般的に用いられている紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。具体的には、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等が挙げられ、これらのなかでも晒クラフト紙、未晒クラフト紙を資材に用いることが好ましい。
接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、酢酸ビニル系、ゴム系、ビニル系などが挙げられる。これらのなかでもエチレン・酢酸ビニル系の接着剤を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 第一資材(資材)
10 糊付パート
11 CD方向の一側の端縁
12 CD方向の他側の端縁
2 第二資材(資材)
20 貼合パート
3 接着剤
30 切込パート
4 袋体
40 折畳パート
41 第一端縁
42 第二端縁
5 連続体
5′ 半製品
50 折返線
51 第一折返線
52 第二折返線
6 塗工領域
6A 第一パターン領域
6B 第二パターン領域
6C 第三パターン領域
60 単位領域
61 第一横領域
62 第二横領域
63 縦領域
69 隙間
9 ミシン目(断続的な切れ込み)
T1 端部
T2 端部