(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20250311BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20250311BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20250311BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C5/00 H
B60C11/12 D
B60C11/13 C
B60C11/03 B
B60C11/12 C
B60C11/12 A
B60C11/13 B
(21)【出願番号】P 2021136629
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中江 理緒
(72)【発明者】
【氏名】前田 敬之
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044512(JP,A)
【文献】特開平10-217719(JP,A)
【文献】特開2018-122707(JP,A)
【文献】特開2020-111244(JP,A)
【文献】特開2009-067180(JP,A)
【文献】国際公開第2014/030476(WO,A1)
【文献】特開昭59-176104(JP,A)
【文献】特開2016-037175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0189322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 5/00
B60C 11/12
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが規定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、
車両装着時に車両外側及び車両内側にそれぞれ位置する第1トレッド端及び第2トレッド端と、
前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端との間をタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝とを含み、
前記複数の主溝は、溝中心線がタイヤ赤道よりも前記第2トレッド端の側に位置する2本の内側主溝と、溝中心線がタイヤ赤道よりも前記第1トレッド端の側に位置する1本の外側主溝とを含み、
前記トレッド部は、前記外側主溝のタイヤ軸方向の外側に位置する第1陸部と、前記第1陸部に順次隣接する第2陸部、第3陸部及び第4陸部とに区分されており、
前記第2陸部には、前記第2陸部を横断する複数の第2横溝が設けられ、
前記第3陸部には、前記第3陸部を横断する複数の第3サイプが設けられ、
トレッド平面視において、前記複数の第2横溝は、前記複数の第3サイプをその長手方向に沿って前記第2陸部上に延長した仮想延長線を完全に包含するように形成されており、
前記第3陸部には、前記複数の第3サイプを除いて、前記第3陸部を横断するサイプ及び横溝が設けられていない、
タイヤ。
【請求項2】
前記内側主溝は、第1内側主溝と、前記第1内側主溝よりも前記第2トレッド端の側に位置する第2内側主溝とを含み、
前記第2陸部には、前記第1内側主溝から前記第1トレッド端の側に延びて、前記第2陸部内で終端する第2途切れ横溝が設けられ、
前記第2横溝及び前記第2途切れ横溝は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2途切れ横溝のタイヤ軸方向の長さは、前記第2陸部のタイヤ軸方向の幅の40%~60%である、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第2陸部には、前記第2途切れ横溝と前記外側主溝とを繋ぐ第2途切れサイプが設けられ、
トレッド平面視において、前記第2途切れ横溝は、前記第2途切れサイプをその長手方向に沿って前記第2陸部上に延長した仮想延長線を完全に包含するように形成されている、請求項2又は3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2途切れサイプの深さは、前記第2途切れ横溝の溝深さよりも小さい、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第2途切れ横溝は、前記第2途切れサイプと繋がる接合部を含み、
前記第2途切れ横溝の縦断面において、前記接合部の溝底は、曲率半径が5~12mmの円弧状である、請求項4又は5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記接合部は、前記第2途切れサイプに向かって、前記第2途切れ横溝の溝幅が連続して小さくなる、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1内側主溝は、一対の溝壁と、溝底とを含み、
前記第1内側主溝の前記一対の溝壁は、前記第1トレッド端の側に位置する第1外側溝壁を含み、
前記第1外側溝壁は、前記溝底からタイヤ半径方向の外側へ延びる第1溝壁部と、前記第1溝壁部よりもタイヤ半径方向の外側に位置し、かつ、前記第1溝壁部よりもトレッド法線に対して大きい角度で傾斜する第2溝壁部とを含み、
前記第2溝壁部の前記角度は、45~75度である、請求項2ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1内側主溝の前記一対の溝壁は、前記第2トレッド端の側に位置する第1内側溝壁を含み、
前記第1内側溝壁のトレッド法線に対する角度は、25~55度である、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1内側主溝は、長手方向に延びる一対の溝縁を含み、
前記一対の溝縁は、前記第1トレッド端の側に位置する外側溝縁を含み、
前記外側溝縁とタイヤ赤道との間のタイヤ軸方向の離隔距離は、トレッド幅の2%以下である、請求項2ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第2陸部のタイヤ軸方向の幅は、トレッド幅の16%~24%である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記外側主溝の溝幅は、前記内側主溝の溝幅よりも小さい、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両への装着の向きが指定されたタイヤが記載されている。このタイヤのトレッド部には、内側トレッド端から車両外側へ、順に、第2主溝、第1主溝及び第3主溝が設けられている。そして、前記第1主溝ないし第3主溝の配置を特定するとともに、前記第3主溝の溝幅を、前記第1主溝及び前記第2主溝の溝幅よりも小としている。このようなタイヤは、サーキット等の高負荷走行時のドライグリップ性能を維持しつつ優れたウェット性能を発揮するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、サーキット走行といった高負荷走行時の操縦安定性能及び排水性能をさらに向上することが望まれている。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、サーキット走行といった高負荷走行時の操縦安定性能及び排水性能を向上させることができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両への装着の向きが規定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側及び車両内側にそれぞれ位置する第1トレッド端及び第2トレッド端と、前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端との間をタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝とを含み、前記複数の主溝は、溝中心線がタイヤ赤道よりも前記第2トレッド端の側に位置する2本の内側主溝と、溝中心線がタイヤ赤道よりも前記第1トレッド端の側に位置する1本の外側主溝とを含み、前記トレッド部は、前記外側主溝のタイヤ軸方向の外側に位置する第1陸部と、前記第1陸部に順次隣接する第2陸部、第3陸部及び第4陸部とに区分されており、前記第2陸部には、前記第2陸部を横断する複数の第2横溝が設けられ、前記第3陸部には、前記第3陸部を横断する複数の第3サイプが設けられ、トレッド平面視において、前記複数の第2横溝は、前記複数の第3サイプをその長手方向に沿って前記第2陸部上に延長した仮想延長線を完全に包含するように形成されており、前記第3陸部には、前記複数の第3サイプを除いて、前記第3陸部を横断するサイプ及び横溝が設けられていない、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタイヤは、上記の構成を採用することで、サーキット走行といった高負荷走行時の操縦安定性能及び排水性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図3】(a)は、
図1のB-B線断面図、(b)は、
図1のC-C線断面図である。
【
図4】
図1の第1陸部及び第2陸部の拡大図である。
【
図6】
図1の第2陸部及び第3陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本開示の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2を展開した平面図である。本開示のタイヤ1は、例えば、公道での通常走行に加え、サーキットでの高速走行も可能な乗用車用の空気入りタイヤに用いられる。但し、本開示のタイヤ1は、例えば、重荷重用や自動二輪車用の空気入りタイヤや、内部に圧縮空気が充填されない非空気式タイヤにも用いられる。
【0010】
トレッド部2は、車両への装着の向きが規定されている。これにより、トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端Toと、車両内側に位置する第2トレッド端Tiとを有する。
【0011】
第1トレッド端To及び第2トレッド端Tiは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。前記「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、第1トレッド端Toと第2トレッド端Tiとの間のタイヤ軸方向の離隔距離がトレッド幅TWである。
【0012】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"である。
【0013】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0014】
前記「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。
【0015】
本実施形態のトレッド部2は、第1トレッド端To及び第2トレッド端Tiとの間をタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3を含んでいる。
【0016】
複数の主溝3は、本実施形態では、溝中心線3cがタイヤ赤道Cよりも第2トレッド端Tiの側に位置する2本の内側主溝3Aと、タイヤ赤道Cよりも第1トレッド端Toの側に位置する1本の外側主溝3Bとを含んでいる。これら主溝3によって、トレッド部2は、外側主溝3Bのタイヤ軸方向の外側に位置する第1陸部7と、第1陸部7に順次隣接する第2陸部8、第3陸部9及び第4陸部10とに区分されている。なお、溝中心線3cは、溝幅の中心を通る線である。
【0017】
トレッド部2は、本実施形態では、タイヤ軸方向に延びる複数の横溝5と、タイヤ軸方向に延びる複数のサイプ6とが設けられている。サイプ6は、本明細書では、幅が1.5mm未満の切れ込み状に形成されたものである。主溝3及び横溝5は、本明細書では、溝幅が1.5mm以上の溝状に形成されたものである。また、「タイヤ軸方向に延びる」とは、本明細書では、タイヤ軸方向に対して80度以下で延びるものを含む。
【0018】
横溝5は、本実施形態では、第1陸部7に配された第1横溝30と、第2陸部8に配された第2横溝31と、第4陸部10に配された第4横溝32とを含んでいる。サイプ6は、第2陸部8に配された第2サイプ40と、第3陸部9に配された第3サイプ41と、第4陸部10に配された第4サイプ42とを含んでいる。
【0019】
図6は、第2陸部8及び第3陸部9の平面図である。
図6に示されるように、第2横溝31は、第2横断横溝31Aを含んでいる。第2横断横溝31Aは、第2陸部8を横断している。第3サイプ41は、第3陸部9を横断する第3横断サイプ41Aとして形成されている。換言すると、第2横断横溝31A及び第3横断サイプ41Aのそれぞれは、両端が主溝3に繋がっている。これにより、水の流れの良さが向上し、排水性能が向上する。
【0020】
タイヤ赤道C側に位置する第2陸部8及び第3陸部9は、第1トレッド端Toに隣接する第1陸部7、及び、第2トレッド端Tiに隣接する第4陸部10よりも、その踏面T上の水膜が排出されにくい。本開示のタイヤ1では、トレッド平面視において、第2陸部8の第2横断横溝31Aは、第3横断サイプ41Aをその長手方向に沿って第2陸部8上に延長した仮想延長線41cを完全に包含するように形成されている。このような第2横断横溝31A及び第3横断サイプ41Aは、連続して接地する。この接地により、第2横断横溝31A及び第3横断サイプ41Aは、互いに大きく開くように変形するので、第2陸部8及び第3陸部9の踏面T上の水膜を大きく集めて外側主溝3B及び内側主溝3Aに排出することができる。このため、優れた排水性能が発揮される。本明細書では、前記「仮想延長線」は、溝の溝中心線、又は、サイプの中心線を延長した線である。前記「完全に包含」とは、本明細書では、仮想延長線が、溝のタイヤ軸方向の内端から外端まで連続して、溝の上に位置することをいう。
【0021】
第3陸部9には、第3横断サイプ41Aを除いて、第3陸部9を横断する横溝5及びサイプ6が設けられていない。これにより、直進走行時に大きな接地圧の作用する第3陸部9の陸部剛性の低下が抑えられる。このため、優れた操縦安定性能が発揮される。
【0022】
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図2には、外側主溝3Bの横断面が示される。
図2に示されるように、外側主溝3Bは、一対の溝壁13と、溝底14とを含んでいる。一対の溝壁13は、それぞれ、溝底14からタイヤ半径方向の外側へ延びる第1溝壁部15と、第1溝壁部15よりもタイヤ半径方向の外側に位置し、かつ、第1溝壁部15よりもトレッド法線nに対して大きい角度θ2で傾斜する第2溝壁部16とを含んでいる。第2溝壁部16の角度θ2は、40~75度(°)であるのが望ましい。このような第2溝壁部16は、大きな横力が作用した場合でも、外側主溝3Bの溝縁3eが踏面状に捲れる巻き込みや、この巻き込みによって接地圧が不均一となることを抑制し、や操縦安定性能を向上する。また、第2溝壁部16は、外側主溝3B付近の第1陸部7及び第2陸部8の横剛性等を高めるため、横力を受けたときの外側主溝3Bの変形に伴う溝容積の減少が抑制される。これにより、排水性能が向上する。さらに、角度θ2が40度以上であるので、前記巻き込みや、この巻き込みによる接地圧の不均一性が一層抑制される。角度θ2が75度以下であるので、第1陸部7及び第2陸部8の容積が確保されて、その剛性が高く維持される。このような観点より、角度θ2は、50度以上がさらに望ましく、70度以下がさらに望ましい。トレッド法線nは、陸部の踏面T、又は、踏面Tが後述する横溝5やサイプ6によって形成されない部分では、これらを埋めることで得られる仮想踏面Taに対する法線である。
【0023】
特に限定されるものではないが、第2溝壁部16の角度θ2と第1溝壁部15のトレッド法線nに対する角度θ1との差(θ2-θ1)は、40度以上が望ましく、45度以上がさらに望ましく、70度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。
【0024】
第1溝壁部15と第2溝壁部16とは、本実施形態では、溝中心線3c側に向かって凸の屈曲部Kを介して繋がっている。屈曲部Kは、例えば、2本の直線が交差することで形成されても良いし、円弧状で形成されても良い。第1溝壁部15及び第2溝壁部16は、本実施形態では、直線状に延びている。
【0025】
図1に示されるように、内側主溝3A及び外側主溝3Bは、例えば、それぞれ、タイヤ周方向に沿って直線状に延びている。このような内側主溝3A及び外側主溝3Bは、溝内の水をスムーズに流すことに役立つ。内側主溝3A及び外側主溝3Bは、例えば、それぞれ、ジグザグ状や波状に延びてもよい。
【0026】
外側主溝3Bの溝幅W1は、内側主溝3Aの溝幅W2のそれぞれよりも小さく形成されている。このような外側主溝3Bは、旋回走行時、大きな横力の作用する車両外側のトレッド部2の剛性を高く維持して、直進走行時の排水性能を高く維持する。特に限定されるものではないが、外側主溝3Bの溝幅W1は、内側主溝3Aの溝幅W2のそれぞれの0.6倍以上が望ましく、0.7倍以上がより望ましく、0.9以下が望ましく、0.8倍以下がより望ましい。溝幅は、第2溝壁部を有するような主溝3の場合、本明細書では、前記第2溝壁部を含む長さである。
【0027】
図2に示されるように、外側主溝3Bの溝幅W1は、外側主溝3Bの溝深さd1以上である。これにより、旋回走行時において、第1陸部7や第2陸部8のタイヤ軸方向の倒れ込み等変形が抑制されるので、操縦安定性能がさらに向上する。また、これら陸部7、8の変形が抑制されることで、外側主溝3Bの溝容積が小さくなることが抑制されるため、高負荷走行時の高い排水性能が発揮される。
【0028】
第1陸部7及び第2陸部8の剛性を高く維持しつつ、排水性能を高めるために、外側主溝3Bの溝幅W1は、外側主溝3Bの溝深さd1の1.5倍以上が望ましく、1.8倍以上がさらに望ましく、3.0倍以下が望ましく、2.7倍以下がさらに望ましい。
【0029】
外側主溝3Bの溝底14は、例えば、溝深さが最大となる最大深さ部14Aと、最大深さ部14Aの両側に繋がり、かつ、外側主溝3Bの外側に向かって凸の円弧状となる一対の立上げ部14Bとを含んでいる。外側主溝3Bの溝底14は、本実施形態では、略U字状に形成されている。溝底14の形状は、このような態様に限定されるものではない。
【0030】
特に限定されるものではないが、外側主溝3Bの第2溝壁部16の幅W3(
図1に示す)は、外側主溝3Bの第2溝壁部16の角度θ2(°)を用いたときに、下記式(1)を満足するのが望ましい。角度θ2が小さいほど、幅W3が大きく設定されるので、外側主溝3Bの変形による溝容積の減少が抑制される。幅W3は、本明細書では、外側主溝3Bの溝幅方向の長さである。なお、幅W3は、2.0~4.0mmであるのが望ましい。
1×cosθ2≦W3(mm)≦7×cosθ2…(1)
【0031】
第2溝壁部16のタイヤ半径方向の高さh1は、例えば、外側主溝3Bの溝深さd1の15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、35%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。
【0032】
特に限定されるものではないが、第1溝壁部15の角度θ1は、0度以上が望ましく、5度以上がさらに望ましく、20度以下が望ましく、15度以下がさらに望ましい。
【0033】
図1に示されるように、内側主溝3Aは、例えば、第1内側主溝11と、第1内側主溝11よりも第2トレッド端Ti側に位置する第2内側主溝12とを含んでいる。第1内側主溝11は、例えば、各主溝3の中で最もタイヤ赤道Cに隣接している。
【0034】
第1内側主溝11の溝幅W2aは、第2内側主溝12の溝幅W2bよりも大きい。これにより、排水されにくいタイヤ赤道C付近の排水性能が高められて、優れた排水性能が発揮される。特に限定されるものではないが、第1内側主溝11の溝幅W2aは、第2内側主溝12の溝幅W2bの1.1倍以上が望ましく、1.2倍以上がより望ましく、1.5倍以下が望ましく、1.4倍以下がより望ましい。
【0035】
第1内側主溝11は、長手方向に延びる一対の溝縁18を含んでいる。各溝縁18は、第1トレッド端Toの側に位置する外側溝縁18aを含んでいる。外側溝縁18aと、タイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向の離隔距離Laは、トレッド幅TWの2%以下である。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。外側溝縁18aは、本実施形態では、タイヤ赤道C上に位置している。
【0036】
図3(a)は、
図1のB-B線断面図である。
図3(a)には、第1内側主溝11の横断面が示される。
図3(a)に示されるように、第1内側主溝11は、一対の溝壁20と、溝底21とを含んでいる。第1内側主溝11の溝壁20は、第1トレッド端Toの側に位置する第1外側溝壁20Aと、第2トレッド端Tiの側に位置する第1内側溝壁20Bとを含んでいる。第1内側主溝11の溝底21は、外側主溝3Bの溝底14と同様に、溝深さが最大となる最大深さ部21Aと、最大深さ部21Aの両側に繋がって、第1内側主溝11の外側に向かって凸の円弧状となる一対の立上げ部21Bとを含んでいる。第1内側主溝11の溝底21は、例えば、略U字状に形成されている。
【0037】
第1外側溝壁20Aは、溝底21からタイヤ半径方向の外側へ延びる第1溝壁部23と、第1溝壁部23よりもタイヤ半径方向の外側に位置し、かつ、第1溝壁部23よりもトレッド法線nに対して大きい角度θ4で傾斜する第2溝壁部24とを含んでいる。これにより、第1外側溝壁20Aが連なる外側溝縁18aが踏面状に捲れる巻き込みや、この巻き込みによって接地圧が不均一となることを抑制し、や操縦安定性能を向上する。
【0038】
第1内側溝壁20Bは、例えば、溝底21からタイヤ半径方向の外側へ直線状に延びている。第1内側溝壁20Bは、本実施形態では、溝底21と踏面Tとの間を直線状に延びている。
【0039】
第1外側溝壁20Aの第1溝壁部23のトレッド法線nに対する角度θ3は、第1内側溝壁20Bのトレッド法線nに対する角度θ5よりも小さく形成されている。これにより、相対的に車両外側に配される第2陸部8の容積が確保される。また、第1内側主溝11の第3陸部9側では、溝容積を大きくすることができる。第1外側溝壁20Aの角度θ3は、25度以上が望ましく、35度以上がさらに望ましく、55度以下が望ましく、45度以下がさらに望ましい。
【0040】
また、第1内側主溝11の第1外側溝壁20Aの第1溝壁部23の角度θ3は、外側主溝3Bの第1溝壁部15の角度θ1よりも大きく形成されている。これにより、相対的に車両外側に配される第1陸部7の容積が確保される。また、第1内側主溝11の第2陸部8側では、溝容積を大きくすることができる。第1外側溝壁20Aの第1溝壁部23の角度θ3と外側主溝3Bの第1溝壁部15の角度θ1との差(θ3-θ1)は、15度以上が望ましく、20度以上がさらに望ましく、35度以下が望ましく、30度以下がさらに望ましい。
【0041】
第1内側主溝11の第1内側溝壁20Bの角度θ5(°)は、例えば、トレッド幅TW(mm)の5%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、20%以下が望ましく、10%以下がさらに望ましい。
【0042】
第1内側主溝11の第2溝壁部24の角度θ4は、第1内側溝壁20Bの角度θ5よりも大きく形成されている。このような第2溝壁部24は、より効果的に踏面状に捲れる巻き込みや、この巻き込みによって接地圧が不均一となることを抑制する。第2溝壁部24の角度θ4と第1内側溝壁20Bの角度θ5との差(θ4-θ5)は、10度以上が望ましく、15度以上がさらに望ましく、30度以下が望ましく、25度以下がさらに望ましい。第2溝壁部24の角度θ4は、例えば、45度以上が望ましく、55度以上がさらに望ましく、75度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。第1内側溝壁20Bの角度θ5は、例えば、25度以上が望ましく、35度以上がさらに望ましく、55度以下が望ましく、45度以下がさらに望ましい。
【0043】
特に限定されるものではないが、第2溝壁部24のタイヤ半径方向の高さh2は、第1内側主溝11の溝深さd2aの40%以上が望ましく、45%以上がさらに望ましく、60%以下が望ましく、55%以下がさらに望ましい。
【0044】
図3(b)は、
図1のC-C線断面図である。
図3(b)には、第2内側主溝12の横断面が示される。
図3(b)に示されるように、第2内側主溝12は、一対の溝壁27と、溝底28とを含んでいる。溝底28は、例えば、溝深さが最大となる最大深さ部28Aと、最大深さ部28Aの両側に繋がって、第2内側主溝12の外側に向かって凸の円弧状となる一対の立上げ部28B、28Bとを含んでいる。溝底28は、本実施形態では、略U字状に形成されている。一対の溝壁27は、例えば、それぞれ、溝底21からタイヤ半径方向の外側へ直線状に延びている。各溝壁27は、本実施形態では、溝底28から踏面Tまで延びている。
【0045】
このように、外側主溝3Bの一対の溝壁13及び第1内側主溝11の第1外側溝壁20Aは、本実施形態では、前記第1溝壁部と前記第2溝壁部とを含んで形成されている。また、第1内側主溝11の第1内側溝壁20B及び第2内側主溝12の各溝壁27は、前記第2溝壁部を有することなく形成されている。これにより、トレッド部2の車両内側の領域と車両外側の領域との剛性バランスが優れるので、高負荷走行時の操縦安定性能と排水性能とがより向上する。
【0046】
第2内側主溝12の一対の溝壁27は、第1トレッド端Toの側に位置する第2内側溝壁27Aと、第2トレッド端Tiの側に位置する第2外側溝壁27Bとを含んでいる。そして、第2内側溝壁27Aのトレッド法線nに対する角度θ6は、第2外側溝壁27Bのトレッド法線nに対する角度θ7よりも小さく形成されている。第2内側溝壁27Aの角度θ6は、第2外側溝壁27Bの角度θ7の60%以上が望ましく、65%以上がさらに望ましく、90%以下が望ましく、85%以下がさらに望ましい。第2外側溝壁27Bの角度θ7(°)は、例えば、トレッド幅TW(mm)の5%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、20%以下が望ましく、15%以下がさらに望ましい。第2外側溝壁27Bの角度θ7は、例えば、30度以上が望ましく、35度以上がさらに望ましく、50度以下が望ましく、45度以下がさらに望ましい。第2外側溝壁27Bの角度θ7は、例えば、第1内側主溝11の第1内側溝壁20Bの角度θ5と同じであるのが望ましい。
【0047】
第1内側主溝11の溝幅W2a(
図1に示す)は、例えば、第1内側主溝11の溝深さd2a(
図3(a)に示す)以上である。第2内側主溝12の溝幅W2b(
図1に示す)は、例えば、第2内側主溝12の溝深さd2b以上である。これにより、各陸部8~10の剛性の変化が小さくなり、高負荷走行時の操縦安定性能が高く維持される。第1内側主溝11の溝幅W2aは、本実施形態では、第1内側主溝11の溝深さd2aよりも大きい。第2内側主溝12の溝幅W2bは、本実施形態では、第2内側主溝12の溝深さd2bよりも大きい。
【0048】
図1に示されるように、第1陸部7のタイヤ軸方向の幅Waは、第2陸部8、第3陸部9及び第4陸部10のそれぞれのタイヤ軸方向の幅Wb、Wc、Wdよりも大きく形成されている。これにより、旋回走行時に最も大きな横力の作用する第1陸部7の横剛性が高められるので、高負荷走行時の操縦安定性能が向上する。
【0049】
高負荷走行時の操縦安定性能を高めるために、第1陸部7の幅Waは、幅が最も小さい陸部、本実施形態では、第3陸部9の幅Wcの1.3倍以上が望ましく、1.5倍以上がさらに望ましく、2.1倍以下が望ましく、1.9倍以下がさらに望ましい。
【0050】
操縦安定性能及び排水性能をバランス良く高めるために、第1陸部7のタイヤ軸方向の幅Waは、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。第2陸部8のタイヤ軸方向の幅Wbは、トレッド幅TWの15%~25%であるのが望ましい。なお、第2陸部8の幅Wbは、トレッド幅TWの16%以上がさらに望ましく、17%以上が一層望ましく、24%以下がさらに望ましく、21%以下が一層望ましい。第3陸部9のタイヤ軸方向の幅Wcは、トレッド幅TWの8%~22%であるのが望ましい。第4陸部10のタイヤ軸方向の幅Wdは、トレッド幅TWの18%~28%であるのが望ましい。
【0051】
タイヤ周方向の任意の位置のタイヤ軸方向線X上において、複数の横溝5及び複数のサイプ6の少なくとも一つがタイヤ軸方向線Xに交差するように配置されている。これにより、タイヤ周方向の任意の位置で、排水効果が得られる。また、このような構成により、タイヤ周方向において、トレッド部2の横剛性の変化が小さくなるので、より高い操縦安定性能を得ることができる。
【0052】
横溝5のそれぞれは、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。横溝5は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1方向(
図1では、右上がり)に傾斜している。これにより、タイヤ1の回転を利用して、横溝5内の水がタイヤ軸方向の一方側へ向かってスムーズに排出される。サイプ6のそれぞれも、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。サイプ6は、例えば、それぞれ、前記第1方向に傾斜している。
【0053】
複数の横溝5及び複数のサイプ6のそれぞれのタイヤ軸方向に対する角度αは、例えば、5~60度であるのが望ましい。角度αが5度以上であるので、タイヤ1の回転を利用して、横溝5やサイプ6内の水をスムーズに排出することができる。角度αが60度以下であるので、各陸部7~10の横剛性の低下を抑制することができる。このような作用を効果的に発揮させるために、角度αは、15度以上がより望ましく、45度以下がより望ましい。
【0054】
図4は、第1陸部7及び第2陸部8の拡大平面図である。
図4に示されるように、第1横溝30は、第1陸部7を横断する第1横断横溝30Aと、第1陸部7内で途切れる第1途切れ横溝30Bとを含んでいる。
【0055】
第1横断横溝30Aと第1途切れ横溝30Bとは、タイヤ周方向に等ピッチP1で位置されている。等ピッチとは、本明細書では、ピッチの最大値と最小値との差が、ピッチの最大値の10%以内のものを含む。
【0056】
第1横断横溝30Aは、外側主溝3Bからタイヤ軸方向に対して同じ角度α1で延びる内側第1部分33Aと、内側第1部分33Aに連なって内側第1部分33Aよりもタイヤ軸方向に対して小さな角度α2で延びる外側第1部分33Bとを含んでいる。外側第1部分33Bは、第1トレッド端Toに繋がっている。
【0057】
第1途切れ横溝30Bは、タイヤ軸方向に対して同じ角度α3で延びる内側第2部分34Aと、内側第2部分34Aと第1トレッド端Toとを繋ぐ外側第2部分34Bとを含んでいる。外側第2部分34Bは、例えば、内側第2部分34Aよりも小さな角度α4で傾斜している。
【0058】
特に限定されるものではないが、第1途切れ横溝30Bのタイヤ軸方向の長さL1は、第1陸部7の幅Wa(
図1に示す)の65%以上が望ましく、70%以上がさらに望ましく、85%以下が望ましく、80%以下がさらに望ましい。
【0059】
内側第1部分33A及び内側第2部分34Aは、例えば、直線状に延びている。内側第1部分33A及び内側第2部分34Aは、本実施形態では、平行に延びている。前記「平行」は、本明細書では、それぞれの傾斜の角度の差の絶対値が0度であるのは勿論、10度以下を含む。内側第1部分33Aの角度α1及び内側第2部分34Aの角度α3は、例えば、10度以上が望ましく、15度以上がさらに望ましく、30度以下が望ましく、25度以下がさらに望ましい。外側第1部分33B及び外側第2部分34Bは、例えば、平行に延びている。
【0060】
第2横溝31は、本実施形態では、第2途切れ横溝31Bをさらに含んでいる。第2横断横溝31A及び第2途切れ横溝31Bは、タイヤ周方向に沿って交互に設けられている。第2横断横溝31Aと第2途切れ横溝31Bとは、タイヤ周方向に等ピッチP2で並べられている。なお、タイヤ周方向に隣接する第2横断横溝31A同士も、タイヤ周方向に等ピッチP3で並べられている。
【0061】
第2途切れ横溝31Bは、本実施形態では、第1内側主溝11から第1トレッド端Toの側に延びて、第2陸部8内で終端している。第2横断横溝31A及び第2途切れ横溝31Bは、例えば、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。これにより、第2陸部8の剛性段差が抑制される。第2横断横溝31A及び第2途切れ横溝31Bは、本実施形態では、平行に延びている。第2横断横溝31Aのタイヤ軸方向に対する角度α5は、例えば、10度以上が望ましく、15度以上がさらに望ましく、30度以下が望ましく、25度以下がさらに望ましい。
【0062】
第2サイプ40は、少なくとも一端が第2陸部8内で終端する第2途切れサイプ40Aとして形成されている。第2途切れサイプ40Aは、外側主溝3Bと第2途切れ横溝31Bとを繋いでいる。第2途切れサイプ40Aは、第2途切れ横溝31Bのタイヤ軸方向の外端31eに繋がっている。第2途切れサイプ40Aの幅Wfは、長手方向に沿って一定である。
【0063】
トレッド平面視において、第2横断横溝31Aは、第1横断横溝30Aをその長手方向に沿って第2陸部8上に延長した仮想延長線30cを完全に包含するように形成されている。これにより、第2横断横溝31A及び第1横断横溝30Aを含む1本の仮想溝が形成されるので、排水性能が向上する。また、第1横断横溝30Aと第2横断横溝31Aとは、同じようなタイミングで接地するので、これら溝30A、31Aが大きく開くように変形し、見かけの溝容積が大きくなる。このため、排水性能がさらに向上する。
【0064】
第2横断横溝31Aは、例えば、直線状に延びている。これにより、溝内を水が流れた場合に、剥離現象が抑えられ、流水抵抗が小さくなるので、排水性能が高く維持される。
【0065】
トレッド平面視において、第2途切れ横溝31Bは、本実施形態では、第2途切れサイプ40Aをその長手方向に沿って第2陸部8上に延長した仮想延長線40cを完全に包含するように形成されている。
【0066】
第2途切れ横溝31Bのタイヤ軸方向の長さL2は、第2陸部8の幅Wbの40%~60%であるのが望ましい。第2途切れ横溝31Bの長さL2が第2陸部8の幅Wbの40%以上であるので、排水性能が維持される。第2途切れ横溝31Bの長さL2が第2陸部8の幅Wbの60%以下であるので、操縦安定性能が維持される。このため、第2途切れ横溝31Bの長さL2は、第2陸部8の幅Wbの45%以上がより望ましく、55%以下がより望ましい。
【0067】
第2途切れ横溝31Bの溝幅W7は、例えば、第2横断横溝31Aの溝幅W6と同じである。これにより、第2陸部8の剛性段差が小さく維持される。本実施形態では、第2途切れ横溝31Bの溝幅W7の最大値と、第2横断横溝31Aの溝幅W6の最大値とが同じである。前記「同じ」とは、本明細書では、各横溝の溝幅の差が0mmであるのは勿論、これらの差の絶対値が3mm以内のものを含む。
【0068】
第2途切れ横溝31Bは、例えば、第2途切れサイプ40Aと繋がる接合部35を含んでいる。接合部35は、本実施形態では、第2途切れ横溝31Bのタイヤ軸方向の外端31eを含んでいる。接合部35は、第2途切れサイプ40Aに向かって、第2途切れ横溝31Bの溝幅W7が連続して小さくなっている部分である。
【0069】
図5は、
図1のD-D線断面図である。
図5には、第2途切れ横溝31B及び第2途切れサイプ40Aの縦断面が示される。
図5に示されるように、第2途切れサイプ40Aの深さd6は、第2途切れ横溝31Bの溝深さd5よりも小さく形成されていても良い。
【0070】
第2途切れ横溝31Bの縦断面において、接合部35の溝底35sは、タイヤ半径方向の内側に向かって凸の円弧状に形成されている。このような接合部35は、第2陸部8の剛性段差を小さく抑えるので、操縦安定性能を高める。接合部35の溝底35sの曲率半径Rは、5mm以上が望ましく、7mm以上がさらに望ましく、12mm以下が望ましく、9mm以下がさらに望ましい。
【0071】
特に限定されるものではないが、第2途切れサイプ40Aの深さd6は、外側主溝3Bの溝深さd1の20%以上が望ましく、35%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、65%以下がさらに望ましい。
【0072】
図1に示されるように、本実施形態では、第2横断横溝31A及び第1横断横溝30Aは、第3横断サイプ41Aを第1陸部7及び第2陸部8へ延長した仮想延長線41cを包含するように形成されている。これにより、上述の作用がより一層効果的に発揮される。
【0073】
第3陸部9は、本実施形態では、内側主溝3Aに繋がる凹部45を含んでいる。凹部45は、第1内側主溝11に繋がる第1凹部45Aと、第2内側主溝12に繋がる第2凹部45Bとを含んでいる。このような凹部45は、内側主溝3Aの溝容積を大きくするのに役立つ。
【0074】
第3横断サイプ41Aは、本実施形態では、第1凹部45Aと第2凹部45Bとを繋ぐように延びている。これにより、第3横断サイプ41Aと各凹部45とが同じタイミングで接地するので、両者が大きく開くように変形し、見かけの容積が大きくなるため排水性能が向上する。
【0075】
凹部45は、例えば、タイヤ周方向の長さLbが、第3陸部9のタイヤ軸方向の中間位置9cに向かって小さくなっている。凹部45のタイヤ周方向の長さLbは、本実施形態では、第3陸部9の中間位置9cに向かって連続して小さくなっている。トレッド平面視、凹部45は、例えば、三角形状である。このような凹部45は、第3陸部9の陸部剛性の低下を抑える。凹部45は、このような形状に限定されるものではない。
【0076】
凹部45の長さLbの最大値は、凹部45のタイヤ軸方向の長さLcの120%以上が望ましく、130%以上がさらに望ましく、160%以下が望ましく、150%以下がさらに望ましい。凹部45のタイヤ軸方向の長さLcは、第3陸部9の幅Wcの10%以上が望ましく、15%以上がさらに望ましく、30%以下が望ましく、25%以下がさらに望ましい。凹部45の深さd7(
図3(b)に示す)は、内側主溝3Aの溝深さd2a、d2bの30%以上が望ましく、40%以上がさらに望ましく、70%以下が望ましく、60%以下がさらに望ましい。
【0077】
図7は、第4陸部10の平面図である。
図7に示されるように、第4陸部10の第4横溝32は、第2トレッド端Tiに繋がりかつ第4陸部10で途切れる第4外側横溝32Aと、第2内側主溝12に繋がりかつ第4陸部10で途切れる第4内側横溝32Bとを含んでいる。第4陸部10の第4サイプ42は、第2トレッド端Tiに繋がりかつ第4陸部10で途切れる第4途切れサイプ42Aである。第4途切れサイプ42Aは、本実施形態では、第4内側横溝32Bと第2トレッド端Tiとを繋いでいる。
【0078】
第4外側横溝32Aのタイヤ軸方向の内端32iは、第4内側横溝32Bのタイヤ軸方向の外端32eよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。換言すると、第4陸部10には、外側横溝32Aと第4内側横溝32Bとがタイヤ軸方向で重複する重複部Yが形成されている。このような重複部Yは、第4陸部10の踏面の水膜を好適に排出することができる。操縦安定性能と排水性能とをバランス良く高めるために、重複部Yのタイヤ軸方向の長さLdは、第4陸部10の幅Wdの3%以上が望ましく、5%以上がさらに望ましく、15%以下が望ましく、10%以下がさらに望ましい。内端32i及び外端32eは、各横溝32A、32Bの溝中心線32c上の位置である。
【0079】
トレッド平面視、第4内側横溝32Bは、第4途切れサイプ42Aをその長手方向に沿って第4陸部10上に延長した仮想延長線42cを完全に包含するように形成されている。これにより、第4内側横溝32Bと第4途切れサイプ42Aとは、同じようなタイミングで接地するので、これら溝32B及びサイプ42Aが大きく開くように変形し、見かけの溝容積やサイプの容積が大きくなる。このため、排水性能が向上する。
【0080】
第4横溝32及び第4サイプ42のタイヤ軸方向に対する角度α7は、例えば、第1横溝30、第2横溝31、第2サイプ40及び第3サイプ41のタイヤ軸方向に対する角度α6(
図6に示す)よりも大きい。換言すると、第4陸部10に形成される横溝5及びサイプ6の角度α7は、第1陸部7~第3陸部9に形成される横溝5及びサイプ6の角度α6よりも大きい。特に限定されるものではないが、第4横溝32及び第4サイプ42の角度α7は、25度以上が望ましく、30度以上がさらに望ましく、45度以下が望ましく、40度以下がさらに望ましい。
【0081】
本実施形態のトレッド部2のランドシー比(S/L)は、15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、35%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。前記ランドシー比は、各陸部7~10の踏面Tの面積の総和(L)と、踏面Tと同じ高さ位置にある両トレッド端To、Ti間の溝の面積の総和(S)との比である。
【0082】
以上、本開示の一実施形態が詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0083】
図1の基本パターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤの操縦安定性能及び排水性能についてテストがされた。各テストタイヤの共通仕様、及び、テスト方法は、以下の通りである。
【0084】
<操縦安定性能>
各テストタイヤが下記テスト車両の全輪に装着された。テストドライバーが、前記テスト車両を乾燥アスファルト路面のテストコースにて高速走行させた。このときの安定性や操作性に基づく操縦安定性能がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で示される。数値が大きい程、優れており、90以下の場合、そのタイヤは不合格となる。
タイヤサイズ:245/40R18
リム:18×8.5J
内圧(kPa):220(全輪)
車両:排気量2000ccの四輪駆動車
【0085】
<排水性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、水深5mmの水たまりが設けられた半径100mのアスファルト路面を走行させた。そして、このときの前輪の横加速度が計測された。前記横加速度は、速度55~80km/hの前輪の平均横Gである。結果は、比較例1の平均横Gの値を100とする指数で示されている。数値が大きい程、優れており、90以下の場合、そのタイヤは不合格となる。
テストの結果が表1~表4に示される。
各表の「A」は、第2横断横溝が第3横断サイプの仮想延長線を完全に包含していることを意味する。
「B」は、第2横断横溝が第3横断サイプの仮想延長線を完全には包含していないことを意味する。
「※1」は、第3陸部を横断する横溝及びサイプが設けられないことを意味する。
「※2」は、第3陸部を横断する横溝が設けられていることを意味する。
「La/TW」が負表示のものは、第1内側横溝がタイヤ赤道を延びていることを意味する。
主溝は、3本である。
各主溝及び各横溝の溝幅は、同じである。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比して、操縦安定性能及び排水性能が向上していることが理解される。
【0092】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0093】
[本開示1]
車両への装着の向きが規定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、
車両装着時に車両外側及び車両内側にそれぞれ位置する第1トレッド端及び第2トレッド端と、
前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端との間をタイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝とを含み、
前記複数の主溝は、溝中心線がタイヤ赤道よりも前記第2トレッド端の側に位置する2本の内側主溝と、溝中心線がタイヤ赤道よりも前記第1トレッド端の側に位置する1本の外側主溝とを含み、
前記トレッド部は、前記外側主溝のタイヤ軸方向の外側に位置する第1陸部と、前記第1陸部に順次隣接する第2陸部、第3陸部及び第4陸部とに区分されており、
前記第2陸部には、前記第2陸部を横断する複数の第2横溝が設けられ、
前記第3陸部には、前記第3陸部を横断する複数の第3サイプが設けられ、
トレッド平面視において、前記複数の第2横溝は、前記複数の第3サイプをその長手方向に沿って前記第2陸部上に延長した仮想延長線を完全に包含するように形成されており、
前記第3陸部には、前記複数の第3サイプを除いて、前記第3陸部を横断するサイプ及び横溝が設けられていない、
タイヤ。
[本開示2]
前記内側主溝は、第1内側主溝と、前記第1内側主溝よりも前記第2トレッド端の側に位置する第2内側主溝とを含み、
前記第2陸部には、前記第1内側主溝から前記第1トレッド端の側に延びて、前記第2陸部内で終端する第2途切れ横溝が設けられ、
前記第2横溝及び前記第2途切れ横溝は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している、本開示1に記載のタイヤ。
[本開示3]
前記第2途切れ横溝のタイヤ軸方向の長さは、前記第2陸部のタイヤ軸方向の幅の40%~60%である、本開示2に記載のタイヤ。
[本開示4]
前記第2陸部には、前記第2途切れ横溝と前記外側主溝とを繋ぐ第2途切れサイプが設けられ、
トレッド平面視において、前記第2途切れ横溝は、前記第2途切れサイプをその長手方向に沿って前記第2陸部上に延長した仮想延長線を完全に包含するように形成されている、本開示2又は3に記載のタイヤ。
[本開示5]
前記第2途切れサイプの深さは、前記第2途切れ横溝の溝深さよりも小さい、本開示4に記載のタイヤ。
[本開示6]
前記第2途切れ横溝は、前記第2途切れサイプと繋がる接合部を含み、
前記第2途切れ横溝の縦断面において、前記接合部の溝底は、曲率半径が5~12mmの円弧状である、本開示4又は5に記載のタイヤ。
[本開示7]
前記接合部は、前記第2途切れサイプに向かって、前記第2途切れ横溝の溝幅が連続して小さくなる、本開示6に記載のタイヤ。
[本開示8]
前記第1内側主溝は、一対の溝壁と、溝底とを含み、
前記第1内側主溝の前記一対の溝壁は、前記第1トレッド端の側に位置する第1外側溝壁を含み、
前記第1外側溝壁は、前記溝底からタイヤ半径方向の外側へ延びる第1溝壁部と、前記第1溝壁部よりもタイヤ半径方向の外側に位置し、かつ、前記第1溝壁部よりもトレッド法線に対して大きい角度で傾斜する第2溝壁部とを含み、
前記第2溝壁部の前記角度は、45~75度である、本開示2ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示9]
前記第1内側主溝の前記一対の溝壁は、前記第2トレッド端の側に位置する第1内側溝壁を含み、
前記第1内側溝壁のトレッド法線に対する角度は、25~55度である、本開示8に記載のタイヤ。
[本開示10]
前記第1内側主溝は、長手方向に延びる一対の溝縁を含み、
前記一対の溝縁は、前記第1トレッド端の側に位置する外側溝縁を含み、
前記外側溝縁とタイヤ赤道との間のタイヤ軸方向の離隔距離は、トレッド幅の2%以下である、本開示2ないし9のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示11]
前記第2陸部のタイヤ軸方向の幅は、トレッド幅の16%~24%である、本開示1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。
[本開示12]
前記外側主溝の溝幅は、前記内側主溝の溝幅よりも小さい、本開示1ないし11のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0094】
1 タイヤ
2 トレッド部
5 横溝
6 サイプ
7 第1陸部
8 第2陸部
9 第3陸部
31 第2横溝
41 第3サイプ
41c 仮想延長線