(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御装置、プログラム、廃棄物処理施設、および廃棄物処理施設の運転方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20250311BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20250311BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
F23G5/50 Q
B66C13/48 C
F23G5/02 D
(21)【出願番号】P 2021148583
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 直之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守樹
(72)【発明者】
【氏名】片平 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】原田 泰博
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038012(JP,A)
【文献】特開2019-148409(JP,A)
【文献】特開2021-117867(JP,A)
【文献】特開昭56-028188(JP,A)
【文献】特開2023-063853(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212891(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23G 5/02
B66C 13/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を貯留可能に構成された貯留ピットに貯留された前記廃棄物を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部から取得した前記廃棄物の高さの計測情報に基づいて、前記貯留ピットの所定位置に対応させて前記廃棄物の高さを導出し、
前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を撮像可能な撮像部により撮像された撮像情報に基づいて、前記廃棄物の混合状態の度合いを示す混合度を判定し、
前記貯留ピット内の領域が複数に区分けされて設定された区画ごとに、前記区画における前記廃棄物の高さと前記区画に隣接した隣接区画における前記廃棄物の高さとの高低差を導出し、
前記区画ごとに前記混合度を判定し、前記混合度に基づいて前記貯留ピット内における複数の区画から、前記廃棄物を把持する区画である把持区画と、前記廃棄物を放下する区画である放下区画とを選択し、
前記選択された把持区画における前記高低差があらかじめ設定された把持閾値以上の場合に、前記選択された把持区画を、前記廃棄物を把持する区画に選択して出力し、
前記選択された放下区画における前記高低差があらかじめ設定された放下閾値以下の場合に、前記選択された放下区画を、前記廃棄物を放下する区画に選択して出力する
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記
把持区画における前記高低差があらかじめ設定された把持閾値未満
である場合、前記把持区画を、前記廃棄物を把持する区画から除外し、前記放下区画における前記高低差があらかじめ設定された放下閾値より大きい場合に、前記
放下区画を
、前記
廃棄物を放下する区画から除外する
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
混合度判定モデルによって前記混合度を判定し、
前記混合度判定モデルは、前記貯留ピット内の前記廃棄物を撮像した撮像部から取得してアノテーションされた撮像情報を学習用入力パラメータとし、前記撮像情報から作業者によって設定された混合度を学習用出力パラメータとした機械学習により生成された学習モデルである
請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記センサ部は、前記廃棄物に向けて電磁波を出射し、前記電磁波を出射した時点から前記廃棄物で反射した前記電磁波を受信する時点までの時間を計測する測距センサを含む
請求項1~
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記センサ部は、複数の測距センサを有し、
前記複数の測距センサはそれぞれ、前記複数の測距センサから出射される複数の電磁波のうちの少なくとも1つが、前記貯留ピットに貯留された廃棄物の上面の任意の位置に到達可能な位置に設置される
請求項1~
4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を把持および放下によって移動させる把持部を制御する把持部制御部と、を備えた制御装置であって、
前記把持部制御部は、
前記情報処理装置が出力した前記廃棄物を把持する区画において前記廃棄物を把持し、前記廃棄物を放下する区画において前記廃棄物を放下する指示信号を出力する
制御装置。
【請求項7】
廃棄物を貯留可能に構成された貯留ピットに貯留された前記廃棄物を管理する制御部を備えた情報処理装置の前記制御部に、
前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部から取得した前記廃棄物の高さの計測情報に基づいて、前記貯留ピットの所定位置に対応させて前記廃棄物の高さを導出し、
前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を撮像可能な撮像部により撮像された撮像情報に基づいて、前記廃棄物の混合状態の度合いを示す混合度を判定し、
前記貯留ピット内の領域が複数に区分けされて設定された区画ごとに、前記区画における前記廃棄物の高さと前記区画に隣接した隣接区画における前記廃棄物の高さとの高低差を導出し、
前記区画ごとに前記混合度を判定し、前記混合度に基づいて前記貯留ピット内における複数の区画から、前記廃棄物を把持する区画である把持区画と、前記廃棄物を放下する区画である放下区画とを選択し、
前記選択された把持区画における前記高低差があらかじめ設定された把持閾値以上の場合に、前記選択された把持区画を、前記廃棄物を把持する区画に選択して出力し、
前記選択された放下区画における前記高低差があらかじめ設定された放下閾値以下の場合に、前記選択された放下区画を、前記廃棄物を放下する区画に選択して出力する
ことを実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項
6に記載の制御装置と、
廃棄物を貯留する貯留ピットと、
前記制御装置の制御によって、前記廃棄物を把持および放下によって移動可能な把持部と、を備える
廃棄物処理施設。
【請求項9】
廃棄物を貯留可能に構成されているとともに、所定位置における前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部、および前記廃棄物を撮像可能な撮像部を備えた貯留ピットと、
前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を管理する制御部を備えた情報処理装置、および前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を把持および放下によって移動させる把持部を制御する把持部制御部を備えた制御装置と、
を備えた廃棄物処理施設の運転方法であって、
前記制御部が、
前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部から取得した前記廃棄物の高さの計測情報に基づいて、前記貯留ピットの所定位置に対応させて前記廃棄物の高さを導出し、
前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を撮像可能な撮像部により撮像された撮像情報に基づいて、前記廃棄物の混合状態の度合いを示す混合度を判定し、
前記貯留ピット内の領域が複数に区分けされて設定された区画ごとに、前記区画における前記廃棄物の高さと前記区画に隣接した隣接区画における前記廃棄物の高さとの高低差を導出し、
前記区画ごとに前記混合度を判定し、前記混合度に基づいて前記貯留ピット内における複数の区画から、前記廃棄物を把持する区画である把持区画と、前記廃棄物を放下する区画である放下区画とを選択し、
前記選択された把持区画における前記高低差があらかじめ設定された把持閾値以上の場合に、前記選択された把持区画を、前記廃棄物を把持する区画に選択して出力し、
前記選択された放下区画における前記高低差があらかじめ設定された放下閾値以下の場合に、前記選択された放下区画を、前記廃棄物を放下する区画に選択して出力し、
前記把持部制御部が、
前記制御部が出力した前記把持する区画および前記放下する区画に基づいて、前記廃棄物を移動させる
廃棄物処理施設の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、制御装置、プログラム、廃棄物処理施設、および廃棄物処理施設の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ焼却炉に投入されたごみを安定的に燃焼させるための取り組みとして、ごみピット内に堆積したごみの性状を均一にする作業、いわゆる攪拌をあらかじめ行った上で、ごみシュートを介して焼却炉にごみを投入して焼却がされている。ごみの攪拌は、作業者の目視に基づいたクレーンの操作、または自動制御によってクレーンを制御することによって実行されている。近年、ごみピット内に堆積したごみの攪拌の状態、すなわち混合度をデータ化して顕在化させることによって、攪拌を効果的に行う方法が種々検討されている。
【0003】
特許文献1においては、ごみピット内でのごみの攪拌状態を認識することを目的としたごみ攪拌状態測定装置が開示されている。特許文献1に開示された技術は、実際のごみの攪拌状態を把握するために、実際のごみピット内のごみの移動回数が記憶された攪拌度マップを作成する技術である。
【0004】
特許文献2においては、ごみピットにおけるごみの攪拌状態を全体的かつ視覚的に把握することを試みた、ごみピットにおけるごみ攪拌状態の表示装置が開示されている。特許文献2に開示された技術は、ごみの攪拌状態をごみ攪拌度で表すとともに、ごみピットのエリアにて、ごみ攪拌度を三次元の棒状図形として表示する技術である。特許文献2に記載された技術は、ごみピット内における攪拌状態を全体的かつ視覚的に把握して、バケットの移動軌跡を三次元で表示できるようにして、クレーン操作の検証を行うことを目的としている。
【0005】
特許文献3においては、ごみ質の攪拌状況を評価するごみの混合度評価システムに関する技術が開示されている。特許文献3に開示された技術は、ごみ質の攪拌状況を把握するために、ごみピット内のごみを撮像し、三次元高さ情報を算出し、撮像した画像と三次元高さ情報から補正した画像を二値化し、二値化画像から各評価エリアのごみの混合度を評価する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6381395号公報
【文献】特許第6440374号公報
【文献】特許第6457137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3に開示された技術においては、ごみの貯留ピットに堆積した廃棄物の高さ(レベル)を考慮することなく画像を抽出しごみの混合度を判定している。そのため、実際にクレーンで攪拌の作業を行う際に、番地(区画)によって、ごみの高低差が開きすぎてしまうという課題がある。これにより、クレーンによって廃棄物の把持が困難になったり、バケットなどの把持部が転倒したりする課題も生じている。さらに、廃棄物の堆積状態における高低差が大きくなると、廃棄物の状態を把握するために貯留ピットを撮像する際に、死角となる部分が生じ、混合度の判定の精度が低下するという課題もある。
【0008】
そのため、ごみ等の廃棄物の貯留ピット内において、廃棄物の高さおよび混合度を略均一にして、廃棄物の高さおよび混合度を略均一の状態に維持可能な技術の開発が求められていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、貯留ピット内における廃棄物の高さおよび混合度を略均一にして維持することが可能な情報処理装置、制御装置、プログラム、廃棄物処理施設、および廃棄物処理施設の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、廃棄物を貯留可能に構成された貯留ピットに貯留された前記廃棄物を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、前記制御部は、前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部から取得した前記廃棄物の高さの計測情報に基づいて、前記貯留ピットの所定位置に対応させて前記廃棄物の高さを導出し、前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を撮像可能な撮像部により撮像された撮像情報に基づいて、前記廃棄物の混合状態の度合いを示す混合度を判定し、前記貯留ピット内の領域が複数に区分けされて設定された区画ごとに、前記区画における前記廃棄物の高さと前記区画に隣接した隣接区画における前記廃棄物の高さとの高低差を導出し、前記判定された前記混合度と前記導出された前記高低差とに基づいて、前記廃棄物を把持する区画および前記廃棄物を放下する区画をそれぞれ選択して出力する。
【0011】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記区画ごとに前記混合度を判定し、前記混合度に基づいて前記貯留ピット内における複数の区画から、前記廃棄物を把持する区画である把持区画を選択し、前記選択された把持区画における前記高低差があらかじめ設定された把持閾値以上の場合に、前記選択された把持区画を、前記廃棄物を把持する区画に設定する。
【0012】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記区画ごとに前記混合度を判定し、前記混合度に基づいて前記貯留ピット内における複数の区画から、前記廃棄物を放下する区画として放下区画を選択し、前記選択された放下区画における前記高低差があらかじめ設定された放下閾値以下の場合に、前記選択された放下区画を、前記廃棄物を把持する区画に設定する。
【0013】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、これらの構成において、前記制御部は、前記選択された区画における前記高低差があらかじめ設定された把持閾値未満または放下閾値より大きい場合に、前記選択された区画を前記選択から除外する。
【0014】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、混合度判定モデルによって前記混合度を判定し、前記混合度判定モデルは、前記貯留ピット内の前記廃棄物を撮像した撮像部から取得してアノテーションされた撮像情報を学習用入力パラメータとし、前記撮像情報から作業者によって設定された混合度を学習用出力パラメータとした機械学習により生成された学習モデルである。
【0015】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記センサ部は、前記廃棄物に向けて電磁波を出射し、前記電磁波を出射した時点から前記廃棄物で反射した前記電磁波を受信する時点までの時間を計測する測距センサを含む。
【0016】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記センサ部は、複数の測距センサを有し、前記複数の測距センサはそれぞれ、前記複数の測距センサから出射される複数の電磁波のうちの少なくとも1つが、前記貯留ピットに貯留された廃棄物の上面の任意の位置に到達可能な位置に設置される。
【0017】
本発明の一態様に係る制御装置は、上記の発明による情報処理装置と、前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を把持および放下によって移動させる把持部を制御する把持部制御部と、を備えた制御装置であって、前記把持部制御部は、前記情報処理装置が出力した前記廃棄物を把持する区画において前記廃棄物を把持し、前記廃棄物を放下する区画において前記廃棄物を放下する指示信号を出力する。
【0018】
本発明の一態様に係るプログラムは、廃棄物を貯留可能に構成された貯留ピットに貯留された前記廃棄物を管理する制御部を備えた情報処理装置の前記制御部に、前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部から取得した前記廃棄物の高さの計測情報に基づいて、前記貯留ピットの所定位置に対応させて前記廃棄物の高さを導出し、前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を撮像可能な撮像部により撮像された撮像情報に基づいて、前記廃棄物の混合状態の度合いを示す混合度を判定し、前記貯留ピット内の領域が複数に区分けされて設定された区画ごとに、前記区画における前記廃棄物の高さと前記区画に隣接した隣接区画における前記廃棄物の高さとの高低差を導出し、前記判定された前記混合度と前記導出された前記高低差とに基づいて、前記廃棄物を把持する区画および前記廃棄物を放下する区画をそれぞれ選択して出力することを実行させる。
【0019】
本発明の一態様に係る廃棄物処理施設は、上記の発明による制御装置と、廃棄物を貯留する貯留ピットと、前記制御装置の制御によって、前記廃棄物を把持および放下によって移動可能な把持部と、を備える。
【0020】
本発明の一態様に係る廃棄物処理施設の運転方法は、廃棄物を貯留可能に構成されているとともに、所定位置における前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部、および前記廃棄物を撮像可能な撮像部を備えた貯留ピットと、前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を管理する制御部を備えた情報処理装置、および前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を把持および放下によって移動させる把持部を制御する把持部制御部を備えた制御装置と、を備えた廃棄物処理施設の運転方法であって、前記制御部が、前記廃棄物の高さを計測可能なセンサ部から取得した前記廃棄物の高さの計測情報に基づいて、前記貯留ピットの所定位置に対応させて前記廃棄物の高さを導出し、前記貯留ピットに貯留された前記廃棄物を撮像可能な撮像部により撮像された撮像情報に基づいて、前記廃棄物の混合状態の度合いを示す混合度を判定し、前記貯留ピット内の領域が複数に区分けされて設定された区画ごとに、前記区画における前記廃棄物の高さと前記区画に隣接した隣接区画における前記廃棄物の高さとの高低差を導出し、前記判定された前記混合度と前記導出された前記高低差とに基づいて、前記廃棄物を把持する区画および前記廃棄物を放下する区画をそれぞれ選択して出力し、前記把持部制御部が、前記制御部が出力した前記把持する区画および前記放下する区画に基づいて、前記廃棄物を移動させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る情報処理装置、制御装置、プログラム、廃棄物処理施設、および廃棄物処理施設の運転方法によれば、貯留ピット内における廃棄物の高さおよび混合度を略均一にして維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるピット管理システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるピット管理装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による貯留ピットの平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った貯留ピットの断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿った貯留ピットの断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による貯留ピットの区画を説明するための平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態による区画領域ごとの高低差の定義を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による管理装置によって制御される廃棄物貯留設備の運転方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図3のIV-IV線に沿った貯留ピットにおいて4台のセンサ部を設けた場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0024】
(ピット管理システム)
図1は、本発明の一実施形態による情報処理装置が適用されるピット管理システムを示す。
図1に示すように、ピット管理システム1は、ネットワーク2を介して相互に通信可能な、ピット管理装置10と、廃棄物貯留設備20と、廃棄物焼却設備30とを備える。廃棄物処理施設3は、少なくとも廃棄物貯留設備20および廃棄物焼却設備30を備える。ピット管理装置10は、ネットワーク2を通じて廃棄物処理施設3と通信可能な外部に設けられていても、廃棄物処理施設3の一部であってもよい。また、ピット管理装置10は、廃棄物貯留設備20の内部に設けられていてもよく、設置場所は限定されない。
【0025】
ネットワーク2は、有線通信や無線通信が適宜組み合わされて構成され、インターネット回線網や携帯電話回線網などの通信網から構成される。ネットワーク2は、例えば、専用線、インターネットなどの公衆通信網、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、携帯電話などの電話通信網や公衆回線、VPN(Virtual Private Network)などの一または複数の組み合わせからなる。ピット管理装置10と廃棄物貯留設備20と廃棄物焼却設備30とは、ネットワーク2を介して接続されている。
【0026】
(廃棄物貯留設備)
廃棄物貯留部としての廃棄物貯留設備20は、制御部21、通信部22、撮像部23、センサ部24、把持部25、および貯留ピット26を備える。貯留ピット26には、把持部25が移動可能に設けられているとともに、撮像部23およびセンサ部24が設けられている。把持部25は、ピット管理装置10の制御部11から送信される制御信号に基づいて、制御部21が制御する。制御部21は、制御部11から送信される制御信号に基づいて、撮像部23およびセンサ部24を制御してもよい。なお、ピット管理装置10の制御部11が、撮像部23、センサ部24、および把持部25を直接的に制御してもよい。
【0027】
制御部21は、具体的に、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアを有するプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。制御部21は、RAMやROMなどの主記憶部に格納された各種プログラムに従い、通信部13,22を通じてピット管理装置10から入力された制御信号などに基づいて、撮像部23、センサ部24、および把持部25を制御する。
【0028】
通信部22は、例えば、LANインターフェースボード、有線通信のための有線通信回路、または無線通信のための無線通信回路である。LANインターフェースボードや有線通信回路や無線通信回路は、ネットワーク2に接続される。送信部および受信部としての通信部22は、ネットワーク2に接続して、ピット管理装置10との間で通信を行う。
【0029】
撮像部23は、例えば撮像カメラ231,232を有する。撮像部23は、撮像カメラ231、232によって、貯留ピット26内の廃棄物26a、特に表面を撮像可能に構成される。なお、撮像部23は、例えば把持部25のバケット253を撮像して、バケット253が把持した廃棄物26aを撮像可能に構成してもよい。撮像部23は、貯留ピット26内の廃棄物26aの状態、すなわち廃棄物26aの状態を撮像し、撮像した撮像画像データを撮像情報として、通信部22を介してピット管理装置10に送信する。撮像部23は、撮像した廃棄物26aの撮像画像データを、撮像情報として通信部22を介してピット管理装置10に送信してもよい。
【0030】
センサ部24は、複数、例えばLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)などの2台の測距センサ241,242を含んで構成される。なお、センサ部24は、測距センサ以外にも、例えばレーザセンサや赤外線センサ、またはこれらのセンサを組み合わせたセンサなどから構成してもよい。測距センサ241,242は、設置されている位置から貯留ピット26内の廃棄物26aの表層までの距離を計測可能に構成される。測距センサ241,242は、貯留ピット26の水平面における2次元的な位置情報(x,y)に関連付けて、測距センサ241,242から廃棄物26aまでの距離を計測できる。測距センサ241,242を有するセンサ部24は、計測した距離を、通信部22を介してピット管理装置10に送信する。
【0031】
把持部25は、貯留ピット26に貯留されている廃棄物26aを把持して移動させる。開閉部としてのバケット253は、廃棄物26aを把持できる。移動部としてのクレーン252は、バケット253を連結して移動可能に構成される。クレーン252には、荷重計251が設けられている。荷重計251は、バケット253が把持した廃棄物26aの重量を計測可能に構成される。荷重計251が計測した廃棄物26aの重量のデータ(荷重データ)は、通信部22を介してピット管理装置10に送信される。
【0032】
貯留ピット26の上方におけるクレーン252の貯留ピット26における水平面の2次元(x,y)での現在位置、移動経路、移動範囲、および移動速度などの、いわゆるクレーン252の作業動作に関するパラメータは、把持部25から制御部21および通信部22を介して、ピット管理装置10に逐次送信される。同様に、バケット253の3次元(x,y,z)の現在位置、開時間、閉時間、開閉回数、および開放量などの、バケット253の作業動作に関するパラメータは、把持部25から制御部21および通信部22を介して、ピット管理装置10に逐次送信される。
【0033】
貯留ピット26は、廃棄物26aを一時的に貯留可能なピットである。貯留ピット26内の廃棄物26aは、把持部25によって把持されて、廃棄物焼却設備30の焼却炉33に供給され、焼却される。
【0034】
(廃棄物焼却設備)
ごみ焼却部としての廃棄物焼却設備30は、燃焼制御装置(ACC)31、センサ部32、および焼却炉33を備える。燃焼制御装置31は、あらかじめ定められた操作量基準値の設定に基づいて、それぞれの操作端の操作量として、燃焼用空気量、冷却用空気量、ごみ供給装置送り速度、および火格子送り速度などを制御する。ごみ焼却炉である焼却炉33は、廃棄物26aの燃焼が行われる炉、廃棄物26aを投入する廃棄物投入口、およびボイラ(いずれも図示せず)などを備える。センサ部32は、例えば種々の場所に設けられた温度計や圧力計などから構成される。センサ部32によって計測された、焼却炉33の内部の状態、および焼却炉33に関連する施設、具体的には、例えば電力を発電するための発電施設における、圧力や速度などの種々の物理量は、センサ部32からセンサ情報として出力される。センサ部32から出力されたセンサ情報は、パラメータとして燃焼制御装置31に供給される。燃焼制御装置31は、入力されたパラメータに基づいて焼却炉33の燃焼を制御する。
【0035】
(ピット管理装置)
図2は、
図1におけるピット管理装置10の詳細を示す。
図2に示す情報処理装置としてのピット管理装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13、および入出力部14を備える。制御部11および通信部13はそれぞれ、物理的には上述した制御部21および通信部22と同様である。
【0036】
記憶部12は、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、またはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部12を構成してもよい。
【0037】
記憶部12には、ピット管理装置10の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどを格納可能である。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することで、所定の目的に合致した機能を実現できる。
【0038】
記憶部12には、廃棄物レベル情報121、種類情報122、堆積情報123、混合度判定モデル124が格納されている。廃棄物レベル情報121、種類情報122、および堆積情報123はいずれも、記憶部12にデータベースとして検索可能に格納されている。
【0039】
廃棄物レベル情報121は、貯留ピット26に貯留されている廃棄物26aのレベルに関する情報である。廃棄物レベル情報121は、貯留ピット26内の2次元座標、すなわち、番地などの所定位置(x,y)に関連付けられた廃棄物26aのレベル(高さ、廃棄物レベルz)などの計測情報を含む。廃棄物レベル情報121は、廃棄物26aの表面の形状を表す点群データを含むマッピングデータを含んでいてもよい。廃棄物レベル情報121は、貯留ピット26内の廃棄物26aを、例えば所定の直方体状、具体的には例えば500mm四方の立方体状に分割した複数のユニットとして管理する場合に、各ユニットの容積、嵩密度、重量、および貯留日数などの履歴情報を含んでもよい。
【0040】
種類情報122は、貯留ピット26における廃棄物26aの種類に関する情報を含む。種類情報122は、例えば、塵芥収集車が貯留ピット26に廃棄物26aを搬入した際に、搬入した廃棄物26aを1種類であると仮定して判定された種類の情報などを含むが必ずしも限定されない。種類情報122は、把持部25によって廃棄物26aの積み替えが行われた後の貯留ピット26内の3次元座標(x,y,z)で規定された所定位置ごとの種類の情報を含む。すなわち、種類情報122は、廃棄物26aの表面形状が計測された際に、廃棄物26aの表面の3次元の位置座標(x,y,z)に関連付けされて判定された廃棄物26aの種類の情報を含む。
【0041】
堆積情報123は、上述のように得られた廃棄物レベル情報121と、判定された廃棄物26aの種類情報122とが関連付けされて、生成される情報である。すなわち、堆積情報123は、撮像部23によって撮像されて種類判定部112によって判定された種類情報122が、貯留された廃棄物26aの廃棄物レベル情報121に基づいた3次元座標(x,y,z)に関連付けされて生成された3次元マップ情報である。これにより、制御部11は、貯留ピット26内に貯留された廃棄物26aの表面に限らず、表面から下層に埋もれている廃棄物26aの情報についても、堆積情報123として蓄積可能になる。
【0042】
堆積情報123は、貯留ピット26における作業領域に関する作業領域情報を含んでいてもよい。作業領域情報は、搬入領域(搬入エリア)、積替領域(積替エリア)、および投入領域(投入エリア)などの領域に関する情報を含む。なお、作業領域情報は、バケット253などによって廃棄物26aを粉砕する領域である粉砕領域(粉砕エリア)の情報を含んでいてもよい。これにより、制御部11によって、搬入エリア、積替エリア、投入エリア、および粉砕エリアのそれぞれの堆積情報を区分けすることが可能になる。
【0043】
混合度判定モデル124は、貯留ピット26内の廃棄物26aを撮像した撮像部23から取得した撮像情報を入力パラメータとし、廃棄物26aの混合状態の度合いを表す混合度を出力パラメータとした学習モデルから構成される。なお、学習モデルは学習済みモデルとも単にモデルとも称される。また、混合度は、不連続的な数値やランクであっても、連続的な数値やレベルであってもよい。混合度判定モデル124は、貯留ピット26内の廃棄物26aを撮像した撮像部23から取得してアノテーションされた撮像情報を学習用入力パラメータとし、撮像情報に基づいて作業者により設定された混合度を学習用出力パラメータとした教師あり学習などの機械学習により生成される。なお、機械学習は、例えば、ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)などの種々の機械学習を採用できる。
【0044】
本実施形態においては、制御部11がロードした各種プログラムの実行によって、レベル導出部111、種類判定部112、堆積情報生成部113、クレーン制御部114、混合度判定部115、および学習部116の機能が実行される。また、各種プログラムには、本実施形態による処理を実現可能な人工知能や学習済みモデルを実現するプログラムも含まれる。
【0045】
レベル導出部111は、貯留ピット26に貯留された廃棄物26aに対して、位置を代表する領域を設定できる。具体的に例えば、バケット253の水平方向の大きさを基準として、貯留ピット26の底面に平行な平面で区分けを行って番地(x,y)を設定できる。また、番地に基づいて、搬入領域、積替領域、および投入領域などの領域を設定することも可能である。搬入領域261は、塵芥収集車(パッカー車)からごみが搬入される領域であり、隔壁によって区分けされている場合もある。積替領域は、貯留ピット26に設けられたクレーンによって、搬入領域から廃棄物26aの積み替えが行われる積替エリアである。投入領域は、焼却炉33に投入される廃棄物26aが貯留される投入エリアである。
【0046】
レベル導出部111は、センサ部24から供給される少なくとも1つ、好適には複数の距離情報に基づいて、貯留ピット26内の廃棄物26aの高さ(廃棄物レベルz)を算出したり判定したりすることができる。すなわち、レベル導出部111は、センサ部24から入力される所定位置(x,y)の廃棄物26aまでの距離に基づいて、廃棄物26aの高さ、すなわち廃棄物レベルzを導出する。これにより、レベル導出部111は、貯留ピット26内の廃棄物26aの少なくとも表面を3次元座標(x,y,z)でマッピングすることができる。なお、センサ部24以外にも、バケット253のクレーンロープ長を用いて、所定位置(x,y)の廃棄物26aの高さの情報を蓄積することにより、廃棄物レベルzを所定位置(x,y)に関連付いた廃棄物レベルzとして導出することが可能となる。廃棄物レベルzの導出方法については、必ずしも上述した方法に限定されず種々の方法を採用することができる。
【0047】
次に、レベル導出部111による廃棄物レベルzの導出方法について説明する。
図3、
図4、および
図5は、本実施形態による貯留ピット26を示す図である。
図3は、貯留ピット26の上方からの平面図である。
図4および
図5はそれぞれ、貯留ピット26における
図3のIV-IV線およびV-V線に沿った断面図である。
【0048】
図3に示す例においては、例えばバケット253の水平方向の大きさを基準として、貯留ピット26の底面に平行な平面が区分けされて番地(x,y)が設定されている。なお、貯留ピット26内の区分けについては種々の区分けの方法を採用することができ、
図3に示す例に限定されない。さらに、番地(x,y)については、バケット253の大きさを基準にした場合、変数x,yはともに離散的になるが、連続的に設定してもよい。なお、貯留ピット26への廃棄物26aの投入は、貯留ピット26に配設された搬入扉を開いた後、搬入領域261に向けて行われる。搬入扉は例えば開閉式であって、貯留ピット26の側壁に沿って所定間隔ごとに複数配設されている。廃棄物処理施設3の廃棄物貯留設備20に搬入される廃棄物26aは、いずれかの搬入扉を通じて貯留ピット26内に投入される。貯留ピット26内における廃棄物26aの積み替え、攪拌、および投入ホッパ331への投入は、クレーン252の3軸駆動によって行われる。
【0049】
貯留ピット26の上部の腰壁付近には、撮像部23としての撮像カメラが少なくとも1台、好適には複数台配設されている。複数台のカメラを設置する場合、カメラの死角の発生を抑制するために、死角となる部分が生じる可能性が低い位置、例えば廃棄物26aの搬入領域261の側に設置することが好ましい。
図3および
図4においては、2台の撮像カメラ231,232が設けられている。撮像カメラ231,232は、例えばCCDカメラやCMOSカメラなどの撮影カメラを有して構成されるが、必ずしもこれらに限定されない。撮像カメラ231,232は、廃棄物26aの種類により変化する廃棄物26aの色調を識別可能に構成される。撮像カメラ231,232は例えば、貯留ピット26の内側壁の上部で、貯留ピット26内の廃棄物26aを撮影可能な壁に設置してもよい。撮像カメラ231,232は、1台でもよく、3台以上設置することも可能である。撮像部23は、廃棄物26aの種類を検知可能であれば、種々の装置を使用できる。
【0050】
貯留ピット26にはセンサ部24を構成する複数、例えば2台の測距センサ241,242が設置されている。測距センサ241,242はそれぞれ、出射した複数の電磁波の少なくとも1つが、貯留ピット26に貯留された廃棄物26aの表面の任意の位置に到達可能な位置に設置することが好ましいが限定されない。具体的に例えば、測距センサ241,242は、それぞれの撮像カメラ231,232の近傍で貯留ピット26の上部の腰壁付近に設置される。なお、測距センサ241,242のそれぞれの設置場所については必ずしも限定されないが、測距センサ241,242の指向性および光の到達距離に基づいて設置位置および設置台数を設定できる。
【0051】
図4に示すように、貯留ピット26内においては、廃棄物26aが貯留された状態において、測距センサ241,242により廃棄物レベルzを測定できる。すなわち、貯留ピット26の搬入領域261側の2隅の上部に設置されたそれぞれの測距センサ241,242から、廃棄物26aの表面の所定位置Pまでの距離を測定できる。この場合、測距センサ241と所定位置Pとの距離l
1と、測距センサ241からの電磁波の出射角度θ
1とによって、所定番地(x,y)における廃棄物レベルzを計測できる。一方で、測距センサ242と所定位置Pとの距離l
2と、測距センサ242からの電磁波の出射角度θ
2とによって、所定番地(x,y)における廃棄物レベルzを計測できる。ピット管理装置10のレベル導出部111は、これらの測距センサ241,242から取得した位置情報に基づいて、貯留ピット26内における所定番地(x,y)での廃棄物レベルzを導出できる。
【0052】
また、
図5に示すように、貯留ピット26内において、それぞれの測距センサ241,242から、廃棄物26aの表面の所定位置P
0までの距離を測定できる。測距センサ241によって、所定位置P
0までの距離l
10と、測距センサ241からの電磁波の出射角度θ
1とによって、所定番地(x,y)における廃棄物レベルzを計測して、所定位置P
0の点群データを取得できる。なお、測距センサ241,242から廃棄物26aの所定位置P
0までの距離l
10,l
20に基づいて、廃棄物レベルzを導出することも可能である。このように、測距センサ241,242からの距離情報や角度情報に基づいて、レベル導出部111は、貯留ピット26内の所定位置Pにおける廃棄物26aの廃棄物レベルzを、即時的かつ連続的に導出できる。
【0053】
図5に示すように、廃棄物貯留設備20において使用されるクレーン252は、焼却炉33の投入ホッパ331を備えた貯留ピット26の上方に設けられる。クレーン252は、クレーンガーダ254を走行レール256に沿って走行可能に配設されている。クレーン252は、クレーンガーダ254上に横行可能に配設されたクラブ255にワイヤーロープの巻き上げおよび巻き下げによって、所定量の廃棄物26aを把持可能なバケット253を昇降するように配設される。
【0054】
また、
図5に示す測距センサ241と所定位置P
1との距離l
11に関しては例えば、測距センサ241から出射された電磁波が、高く積み上げられた廃棄物26aによって遮断されて死角が生じる場合がある。この場合、制御部11のレベル導出部111は、遮断された部分に対してマスキング処理を実行することが可能である。すなわち、レベル導出部111は、センサ部24により計測された対象物の位置が、計測対象となる廃棄物26aの所定位置ではないと判定した場合に、所定位置ではない部分をマスキングするマスキング処理を実行可能である。
【0055】
マスキング処理の実行の要否を判定する場合には、例えば次のような方法を採用できる。すなわち、測距センサ241,242から廃棄物26aに向けて電磁波を出射させ、電磁波を貯留ピット26に堆積した廃棄物26aの表面を走査して距離を計測する際に、走査中に計測された距離が所定閾値以上変化した場合に、その部分にマスキング処理を実行できる。この場合、距離が所定閾値以上変化した後に電磁波が照射された対象物は、計測すべき所定位置における廃棄物26aではなく、遮断した廃棄物26aであるか他の物体である可能性が高いためである。これにより、レベル導出部111はセンサ部24からの距離の情報に対して、マスキング処理を行う部分を判定できる。なお、マスキング処理の要否および範囲については、レベル導出部111によって、教師データを用いた機械学習により得られた学習モデルや学習済みモデルを読み込むことにより判定してもよい。
【0056】
マスキング処理が実行された上で、測距センサ242と所定位置P1との距離l21と、測距センサ242からの電磁波の出射角度θ2とによって、所定番地(x1,y1)における廃棄物レベルz1を計測できる。すなわち、測距センサ242によって所定位置P1の点群データを取得できる。なお、上述した測距センサ241から出射された電磁波が所定位置Pに到達する前に遮断される場合とは、廃棄物26aに遮断される場合に限定されない。すなわち、貯留ピット26内に存在する種々の物体、例えばバケット253などによって遮断される場合においても、レベル導出部111は得られた点群データに対してマスキング処理を実行する。
【0057】
本実施形態による測距センサ241,242が例えばLiDARから構成される場合、使用される電磁波は、典型的には近赤外線や赤外線等である。これにより、カメラなどは暗所においては撮像困難であるが、測距センサ241,242であれば、暗所であっても、距離の測定が可能になる。また、測距センサ241,242によって検出可能な物体の寸法は波長以上の大きさのものである。測距センサ241,242から出射される電磁波は、光束の密度が高く、コヒーレンスが高く、波長が極めて短いため、小さな物体に照射しても反射されやすい。そのため、測距センサ241,242は、廃棄物26aに向けて電磁波を出射し、電磁波を出射した時点から廃棄物26aによって反射された電磁波を受信する時点までの時間を計測しやすくなる。これにより、測距センサ241,242は、貯留ピット26に貯留される廃棄物26aの表面や表層までの距離を、精度よく容易に計測できる。また、LiDARなどの測距センサ241,242によって距離を計測していることにより、時間応答性をmsecオーダーにすることができるので、測定間隔を短縮でき、ほぼ連続的に、測距センサ241,242から廃棄物26aまでの距離を計測できる。そのため、例えば、バケット253の移動や振れなどの動きを追尾することができるので、バケット253の振れ止めを最適化できる。
【0058】
また、貯留ピット26内をバケット253が移動しているときには、測距センサが1台であると、測距センサ241,242のうちの一方の電磁波が、バケット253に遮られて所定位置の廃棄物26aに照射されない可能性がある。この場合においても、測距センサ241,242の一方から出射された電磁波が、バケット253に遮断されずに廃棄物26aに照射できる可能性が確保できる。そのため、バケット253が貯留ピット26内を移動しているときにも、測距センサ241,242のうちの少なくとも1つから、廃棄物26aまでの距離を計測できるので、測距センサを1台のみ使用する場合に比して、所定位置の廃棄物レベルzを測定できる可能性が向上する。すなわち、バケット253の移動中であっても、貯留ピット26内における廃棄物26aの高さを、センサ部24によって即時的により高い確率で測定することが可能となる。
【0059】
以上のように、測距センサ241,242のうちの少なくとも1台によって廃棄物26aの上層を測定できる。これにより、貯留ピット26内の廃棄物26aの表面を、貯留ピット26の水平面に沿った全面、すなわち全ての番地(x,y)に亘って、廃棄物レベルzを計測できる。
【0060】
種類判定部112は、搬入領域261に搬入された廃棄物26aの種類(種別ともいう)を判定する。また、種類判定部112は、クレーン252によって廃棄物26aが攪拌されたり積み替えられたりした際に、撮像カメラ231,232から供給された撮像情報に基づいて、攪拌後や積替後の廃棄物26aの種類や状態を判定する。これにより、種類判定部112は、種類情報を生成する。種類情報は、廃棄物26aの種類や状態の情報を含む。
【0061】
堆積情報生成部113は、種類判定部112によって判定されて得られた廃棄物26aの種類情報122を、センサ部24による計測に基づいて得られる所定位置の廃棄物26aの廃棄物レベル情報121に基づいて、3次元座標(x,y,z)に関連付けする。これにより、廃棄物26aの3次元マップを連続して継続的に生成できる。また、測距センサ241,242から、貯留ピット26内における廃棄物26aの点群データを取得できるので、廃棄物26aの表面の形状を即時的または断続的に取得できる。これにより、堆積情報生成部113は、廃棄物26aの表面形状をマッピングした点群データを含む堆積情報123を生成できる。堆積情報123は、廃棄物26aの表面形状の3次元マッピング情報を含む。生成された堆積情報は、記憶部12の堆積情報123に格納される。なお、堆積情報生成部113は、所定時間間隔ごとに不連続で断続的に、堆積情報123を生成してもよい。
【0062】
混合度判定手段としての混合度判定部115は、種類判定部112から取得した廃棄物26aの種類や状態、および撮像カメラ231,232から取得した画像情報に基づいて、貯留ピット26に貯留された廃棄物26aの混合度を判定する。廃棄物26aの混合度の判定は、撮像した貯留ピット26内の廃棄物26aの画像情報を入力パラメータとして混合度判定モデル124に入力し、混合度が出力パラメータとして出力される。なお、混合度は、例えばあらかじめ廃棄物26aの色味や細かさなどにより定義された互いに比較可能な度数である。混合度判定部115は、貯留ピット26の水平面に沿った位置座標(x,y)に基づいた所定の区画ごと、例えばx方向に沿った所定間隔、およびy方向に沿った所定間隔で区画された矩形状の領域(以下、区画)ごとに、廃棄物26aの混合度を測定可能である。出力された位置座標(x,y)ごとの混合度の情報は、堆積情報123として記憶部12に格納される。
【0063】
また、学習手段としての学習部116は、撮像した貯留ピット26内の廃棄物26aの画像情報を学習用入力パラメータとし、取得した画像情報に対して設定された混合度を学習用出力パラメータとした機械学習により混合度判定モデル124を導出できる。生成された混合度判定モデル124は、機械学習を行ったコンピュータから学習部116に供給され、記憶部12に格納される。
【0064】
本実施形態において、把持部制御部としてのクレーン制御部114は、クレーン252を3軸駆動させてバケット253によって所望の位置の廃棄物26aを把持する指示信号や、把持した廃棄物26aをばら撒いたりする指示信号を出力して、制御部21に送信する。制御部21は、受信した指示信号に基づいて把持部25のクレーン252およびバケット253を制御する。なお、クレーン制御部114によって直接的にクレーン252を制御してもよい。
【0065】
クレーン制御部114は、取得した廃棄物レベル情報121および混合度の情報を含む堆積情報123に基づいて、積替を行うことが可能である。ここで、本実施形態によるクレーン制御部114による把持部25の制御、特に積替の制御について説明する。
図6は、本実施形態による貯留ピット26の区画を説明するための平面図である。
図7は、本実施形態による区画ごとの高低差の定義を説明するための図である。
【0066】
図6に示すように、本実施形態においては、貯留ピット26の水平面(xy平面)に沿って、x方向に沿った所定間隔、およびy方向に沿った所定間隔で区分けされた、所定位置(x,y)ごとの区画Sが設定される。
図6に示す例では、貯留ピット26がx方向に11分割され、y方向に20分割されて、全体で220の矩形状の区画Sが設定されている。また、区画Sの位置を規定するために、区画Sの中心を所定位置P(x、y)と設定することができるが、区画Sの頂点を所定位置Pに設定しても良く、限定されない。
【0067】
区画Sは、水平面に沿った貯留ピット26の領域であって、例えば把持部25のクレーン252により駆動されるバケット253の水平方向の大きさに基づいて設定可能であるが、限定されない。ここで、区画Sに隣接する隣接区画を区画S1とする。隣接区画S1は、区画Sが隅にある場合には周囲3箇所の区画となり、区画Sが外壁に沿った位置である場合には周囲5箇所の区画となり、それ以外の場合には周囲8箇所の区画となる。
【0068】
図7に示すように、区画S,S
1にはそれぞれ、廃棄物26aが堆積されている。廃棄物26aが搬入されたり積み替えられたりした場合、区画Sにおける廃棄物26aの堆積量、例えば区画Sの廃棄物レベルZと、隣接する区画S1の廃棄物レベルZ
1との間に高低差Δhが生じる。本実施形態において高低差Δhは、区画Sにおける廃棄物レベルZと区画S
1における廃棄物レベルZ
1とに基づいて以下の(1)式で定義される。
Δh=Z-Z
1 …(1)
【0069】
(1)式からZ>Z1の場合にΔh>0(正)となり、Z<Z1の場合にΔh<0(負)となる。なお、区画Sの廃棄物レベルZおよび区画S1の廃棄物レベルZ1はそれぞれ、区画S,S1における廃棄物レベルzの代表値を選択できる。ここで、代表値としては、例えば、区画S,S1のそれぞれで、廃棄物レベルzが最も大きい値や最も小さい値などを採用したり、区画S,S1における廃棄物レベルzの平均値などを採用したり、堆積状態が凹の場合に最小の廃棄物レベルzかつ凸の場合に最大の廃棄物レベルzを採用したりすることができる。また、隣接する区画S,S1における廃棄物レベルzの代表値として、Δhの絶対値(|Δh|=|Z-Z1|)が最も大きくなるような廃棄物レベルZ,Z1を採用することも可能である。クレーン制御部114は、以上のように定義された高低差Δhおよび混合度に基づいて、廃棄物26aの積替を実行することができる。クレーン制御部114による廃棄物の26aの積替の制御の詳細については、後述する。
【0070】
また、例えば所定位置P
0から所定位置P
1(
図5参照)に移動する際に、バケット253が廃棄物26aの頂部を回避可能な移動経路を導出することも可能である。クレーン制御部114は、導出した移動経路に基づいて、クレーン252を移動させる。これにより、従来、例えば所定位置P
0から所定位置P
1に移動する際に、把持部25のバケット253を廃棄物26aの頂部より高い位置まで引き上げてから移動させていたのに比して、バケット253の引き上げ長さを短縮でき、クレーン252の移動効率を向上できる。例えば、廃棄物26aを横に移動させるだけの場合であれば、バケット253を引き上げるワイヤーロープの巻き上げを最低限にして、廃棄物26aを移動させることができる。これにより、廃棄物26aに対する処理、例えば攪拌や積替などの目的に合わせて、バケット253を最適な高さで移動させることができる。
【0071】
また、バケット253から廃棄物26aを放下する際には、放下する番地(x,y)における廃棄物レベルzに合わせて放下高を変更できるので、バケット253を必要以上に巻き上げないようにできる。すなわち、制御部21によって把持部25を自動運転させる際に、廃棄物26aが積み上げられて生じた山を回避可能な高さでクレーン252およびバケット253を移動できる。したがって、把持部25の無駄な動作を低減できるので、把持部25の自動運転を効率的に実行でき、稼働率を低減できる。
【0072】
さらに、堆積情報123を蓄積したり更新したりすることによって、制御部11,21は、常に最新の堆積情報123に基づいて、バケット253による廃棄物26aの把持や放下の必要な高さを導出して制御できる。制御部11,21、特に学習部116による機械学習によってクレーン制御部114に適用する学習モデルを構築することにより、クレーン252およびバケット253を含む把持部25を自動制御可能になる。そのため、クレーン制御部114は、クレーン252およびバケット253を、把持部25の動作の目的に合わせて、適切な高さや適切な移動経路で移動させることが可能になる。なお、機械学習は、例えば、ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)、強化学習、または深層強化学習などの種々の機械学習を採用できる。
【0073】
入出力部14は、例えばタッチパネルディスプレイやスピーカマイクロホンなどから構成することができる。入力手段としての入出力部14は、例えば廃棄物貯留設備20に設置された撮像部23やセンサ部24から、通信部22を通じて送信された各種情報を入力して、制御部11に出力するインターフェースを含む。なお、撮像部23やセンサ部24から入出力部14への情報の送信は、有線通信を用いても無線通信を用いてもよい。また、入出力部14は、キーボードや入力用のボタン、レバーや、液晶などのディスプレイに重畳して設けられる手入力のためのタッチパネル、または音声認識のためのマイクロホンなどの、ユーザインターフェースを含む。作業者などが入出力部14を操作することによって、制御部11に所定の情報を入力可能に構成される。出力手段としての入出力部14は、制御部11による制御に従って、ディスプレイモニタに廃棄物貯留設備20の貯留ピット26内の画像などを表示したり、タッチパネルディスプレイの画面上に文字や図形などを表示したり、スピーカから音声を出力したりする。すなわち、入出力部14は、所定の情報を外部に報知可能に構成される。なお、入出力部14における入力部および出力部を別体に構成しても良い。
【0074】
(廃棄物処理施設の運転方法)
次に、本実施形態による廃棄物処理施設である廃棄物貯留設備20の運転方法について説明する。
図8は、本実施形態によるピット管理装置10によって制御される廃棄物貯留設備20の運転方法を説明するためのフローチャートである。なお、ステップST1は、作業者による処理であり、ステップST2~ST15はピット管理装置10による制御に基づいた処理である。なお、以下の説明において、それぞれの構成要素間での情報の送受信は通信部13,22およびネットワーク2を介して行われるが、この点についての都度の説明は省略する。
【0075】
図8に示すように、まず、ステップST1において、作業者は準備を行う。すなわち、ステップST1において作業者は、貯留ピット26の所定位置、例えば貯留ピット26の上部の腰壁付近に、少なくとも1台の撮像カメラ231、好適には
図3に示すように複数台の撮像カメラ231,232を設置する。なお、撮像カメラ231,232の設置位置は、可能な限り死角が生じない箇所に設けることが好ましい。
【0076】
次に、ステップST2に移行してピット管理装置10の制御部11は、廃棄物貯留設備20の制御部21を介して撮像部23を制御することにより、貯留ピット26内の廃棄物26aを撮像する。撮像部23は、廃棄物26aの撮像情報を生成してピット管理装置10に送信する。レベル導出部111は、撮像部23から供給された撮像情報に基づいて、撮像された廃棄物26aの位置(x,y)を特定する。
【0077】
続いて、ステップST3に移行して、制御部11の種類判定部112は、撮像部23から供給された撮像情報に基づいて、撮像された廃棄物26aの種類や状態を判定して種類情報122として記憶部12に格納する。また、堆積情報生成部113は、生成された種類情報122を区画Sの位置(x,y)(以下、番地(x,y)という)に対応させて堆積情報123を生成して、記憶部12に格納する。これにより、制御部11は、廃棄物26aの種類や状態を区画Sの番地(x,y)に対応させて区別可能になる。堆積情報123が生成された後、制御部11の混合度判定部115は、撮像部23から取得した撮像情報を混合度判定モデル124に入力して、区画Sの番地(x,y)に対応した混合度を含む堆積情報123を生成する。混合度判定部115は、区画Sの番地(x,y)に対応した混合度を含む堆積情報123を記憶部12に格納する。
【0078】
続いて、ステップST4に移行してレベル導出部111は、廃棄物26aの廃棄物レベルzを測定する。廃棄物レベルzの測定は連続的に行うことが好ましいが、断続的に行ってもよい。制御部21がセンサ部24を制御して、測距センサ241などから貯留ピット26内の廃棄物26aに電磁波を照射する際の照射角度θ、および照射距離lを計測することで、廃棄物26aの廃棄物レベルzを計測する。レベル導出部111は、計測された廃棄物レベルzを取得して番地(x,y)との関連付けを行う。堆積情報生成部113は、番地(x,y)に関連付けされた廃棄物レベルzの計測値に基づいて、貯留ピット26内の廃棄物26aの上面のマッピング処理を行い、廃棄物26aの点群データP(x,y,z)を生成する。堆積情報生成部113は、点群データP(x,y,z)と廃棄物26aの種類や状態とを関連付けして、堆積情報123を生成し、記憶部12に格納する。なお、上述したステップST2~ST4の処理は継続して繰り返し実行される。
【0079】
次に、ステップST5に移行して制御部11のレベル導出部111は、混合度を含む堆積情報123を取得して、貯留ピット26における混合度が最も低い区画S(番地(x,y))(
図7参照)を選択する。なお、最も低い区画Sが複数存在した場合、レベル導出部111は、複数の区画Sから任意の1つの区画を選択する。
【0080】
次に、ステップST6に移行してレベル導出部111は、選択した区画Sの廃棄物レベルZと、区画Sに隣接する区画S1における廃棄物レベルZ1とにおける高低差Δhを導出する。なお、区画Sの高低差Δhは、1つの区画Sに対して隣接する区画S1の数の分だけ導出される。すなわち、高低差Δhは、区画Sの位置(x,y)に応じて3通り、5通り、または8通り導出されるが、限定されない。レベル導出部111は、導出した複数の高低差Δhの中から、高低差Δhの絶対値(|Δh|)が最も大きい高低差Δhを選択する。続いてレベル導出部111は、選択した高低差Δhと把持閾値との比較を行う。ここで、把持閾値とは、あらかじめ設定された廃棄物26aの把持を行うことが可能な閾値であって負の値である。
【0081】
ステップST7に移行してレベル導出部111は、選択した高低差Δhが把持閾値未満であるか否かを判定する。レベル導出部111が、選択した高低差Δhは把持閾値未満であると判定した場合(ステップST7:Yes)、ステップST8に移行する。高低差Δhが把持閾値未満である場合、高低差Δhの絶対値(|Δh|)は把持閾値の絶対値よりも大きいことになる。すなわち、選択した区画Sにおける廃棄物レベルzは、隣接する区画S1の廃棄物レベルzに比して、把持閾値の絶対値より低くなる。換言すると、廃棄物26aの堆積状態は、選択した区画Sが隣接する区画S1に比して把持閾値の絶対値より大きく凹んでいることになり、積替によって廃棄物26aを他の区画に積み替えることは好ましくない。そこで、ステップST8に移行してレベル導出部111は、ステップST5において選択した区画Sを、把持区画から除外する処理を実行する。その後、ステップST5に復帰する。
【0082】
復帰したステップST5においてレベル導出部111は、貯留ピット26における把持区画から除外された区画S以外の区画から、上述と同様にして最も混合度の低い区画を選択し、ステップST6,ST7を実行する。ステップST5~ST8は、ステップST7においてレベル導出部111が、選択した高低差Δhを把持閾値以上であると判定するまで繰り返し実行される。
【0083】
一方、ステップST7においてレベル導出部111が、選択した高低差Δhは把持閾値未満ではないと判定した場合(ステップST7:No)、ステップST9に移行する。高低差Δhが把持閾値未満ではない、すなわち把持閾値以上である場合、高低差Δhの絶対値(|Δh|)は把持閾値の絶対値よりも小さいことになる。すなわち、選択した区画Sにおける廃棄物レベルzは隣接する区画S1の廃棄物レベルzに比して低いが、把持閾値の絶対値ほど低くなっていない。換言すると、廃棄物26aの堆積状態は、選択した区画Sの部分は隣接する区画S1に比して把持閾値の絶対値の深さほどは凹んでいないことになる。ステップST9においてレベル導出部111は、ステップST5において選択した区画Sを把持区画Sとして設定する。レベル導出部111は、選択した把持区画Sの情報を廃棄物レベル情報121として記憶部12に格納する。また、レベル導出部111は、設定した把持区画Sを放下区画から除外する。
【0084】
次に、ステップST10に移行して制御部11のレベル導出部111は、混合度を含む堆積情報123を取得して、貯留ピット26におけるステップST9において設定された把持区画S以外で、混合度が最も低い区画S(番地(x,y))を選択する。その後、ステップST11に移行してレベル導出部111は、ステップST6と同様に選択した区画Sの廃棄物レベルZと、区画Sに隣接する区画S1における廃棄物レベルZ1とにおける高低差Δhを導出する。レベル導出部111は、導出した複数の高低差Δhの中から、高低差Δhの絶対値(|Δh|)が最も大きい高低差Δhを選択する。続いてレベル導出部111は、選択した高低差Δhと放下閾値との比較を行う。ここで、放下閾値とは、あらかじめ設定された凸状の堆積状態に基づいた閾値であって、隣接する区画S1との高低差Δhが放下閾値より大きい場合には、廃棄物26aの放下を行う区画Sとして好ましくないと判断できる程度の閾値である。
【0085】
ステップST12に移行してレベル導出部111は、選択した高低差Δhが放下閾値より大きいか否かを判定する。レベル導出部111が、選択した高低差Δhは放下閾値より大きいと判定した場合(ステップST12:Yes)、ステップST13に移行する。高低差Δhが放下閾値より大きい場合、高低差Δhの絶対値(|Δh|)も放下閾値の絶対値よりも大きいことになる。すなわち、選択した区画Sにおける廃棄物レベルzは、隣接する区画S1の廃棄物レベルzに比して、放下閾値およびその絶対値より高くなっている。換言すると、選択した区画Sにおける廃棄物26aの堆積状態は、隣接する区画S1に比して放下閾値の絶対値より大きく積み上げられて凸になっている。この区画Sに廃棄物26aを放下すると、さらに積み上がってしまうことから、貯留ピット26における廃棄物26aの堆積状態において凹凸が大きくなり、廃棄物26aの放下は好ましくない。そこで、ステップST13においてレベル導出部111は、ステップST10において選択した区画Sを、放下区画から除外する処理を実行する。その後、ステップST10に復帰する。
【0086】
復帰したステップST10においてレベル導出部111は、貯留ピット26における把持区画から除外された区画S以外の区画から、上述と同様にして最も混合度の低い区画を選択し、ステップST11,ST12を実行する。ステップST9~ST13は、ステップST12においてレベル導出部111が、選択した高低差Δhを放下閾値以下であると判定するまで繰り返し実行される。
【0087】
一方、ステップST12においてレベル導出部111が、選択した高低差Δhは放下閾値以下であると判定した場合(ステップST12:No)、ステップST14に移行する。高低差Δhが放下閾値以下である場合、選択した放下区画Sにおける廃棄物レベルzは隣接する区画S1の廃棄物レベルzに比して、放下閾値およびその絶対値ほど高くなっていない。そこで、ステップST14においてレベル導出部111は、ステップST10において選択した区画Sを放下区画Sとして設定する。レベル導出部111は、選択した放下区画Sの情報を廃棄物レベル情報121として記憶部12に格納する。
【0088】
次に、ステップST15に移行してクレーン制御部114は、記憶部12から廃棄物レベル情報121を読み出して、レベル導出部111が選択した把持区画Sおよび放下区画Sの情報を取得する。クレーン制御部114は、把持部25を制御して、取得した把持区画Sにおける廃棄物26aをバケット253により把持し、バケット253を放下区画Sの位置まで移動させて、廃棄物26aを放下する。これにより、クレーン制御部114は、混合度が低い区画Sから他の混合度が低い区画Sに廃棄物26aを積み替えて混合度を略均一化できるとともに、廃棄物レベルzが比較的高い区画Sから比較的低い区画Sに廃棄物26aを積み替える作業を実行できる。以上により、ピット管理装置10による廃棄物貯留設備20の運転が実行される。ステップST2~ST15は、廃棄物貯留設備20の稼働中において繰り返し実行される。
【0089】
(変形例)
図9に示すように、貯留ピット26の上部の4隅に4台の撮像カメラ231,232,233,234をそれぞれ設ける一方、それぞれの撮像カメラ231~234の近傍に4台の測距センサ241,242,243,244を設けることも可能である。この場合、撮像カメラ231の死角となる部分が撮像カメラ234によって撮像可能になったり、撮像カメラ234の死角となる部分が撮像カメラ231によって撮像可能になったりする。また、測距センサ241の死角となる部分が測距センサ244によって計測可能になったり、測距センサ244の死角となる部分が測距センサ241によって計測可能になったりする。
【0090】
この場合、
図5に示すように、測距センサ243によって所定位置P
0までの距離l
30と、測距センサ243からの電磁波の出射角度θ
2とによって、所定番地(x,y)における廃棄物レベルzを計測して、測距センサ243によって所定位置P
0の点群データを取得できる。測距センサ243,244から廃棄物26aの所定位置P
0までの距離l
30,l
40に基づいて、廃棄物レベルzを導出することも可能である。すなわち、測距センサ243,244によって所定位置Pの点群データP(x,y,z)を精度良く取得できる。
【0091】
変形例においては、撮像カメラ231~234を貯留ピット26の外壁の上部の4隅に設けるとともに、測距センサ241~244を貯留ピット26の外壁の上部の4隅に設けていることにより、廃棄物26aによって生じる撮像不能な箇所、いわゆる死角の発生を低減することが可能となる。
【0092】
測距センサ241~244が、貯留ピット26の4隅の上部に設置されていることにより、測距センサ241~244の少なくとも1台によって廃棄物26aの上層を測定できる。これにより、貯留ピット26に貯留された廃棄物26aの表面を、貯留ピット26の水平面に沿った全面、すなわち全ての番地(x,y)に亘って、廃棄物レベルzを計測することができる。また、貯留ピット26内における廃棄物26aの点群データを取得できるので、即時的に廃棄物26aの表面形状を測定して、廃棄物26aの表面形状がマッピングされた点群データを含む堆積情報123を生成することができる。
【0093】
さらに、
図5に示すように、測距センサ243と所定位置P
0との距離l
31、および測距センサ243からの電磁波の出射角度θ
2とによって、所定番地(x
1,y
1)における廃棄物レベルz
1を計測することで、測距センサ243により所定位置P
1の点群データを取得できる。この場合、測距センサ244から出射された電磁波が所定位置P
1に到達しなくても、距離l
31に基づいて、所定位置P
1の廃棄物レベルz
1を導出して、点群データを取得可能となる。
【0094】
また、測距センサ241~244が平面矩形状の貯留ピット26の4隅に設けられていることにより、測距センサ241~244のうちの少なくとも1つから出射された電磁波が、バケット253に遮断されずに廃棄物26aに照射できる可能性がさらに向上する。これにより、センサ部24による廃棄物レベルzの測定精度、さらには点群データの生成の精度をより一層向上させることができる。
【0095】
以上説明した一実施形態によれば、撮像部23によって撮像されて生成される貯留ピット26内の廃棄物26aの画像情報において、死角の部分を低減できるので、廃棄物26aの混合度の測定の精度を向上できる。混合度の測定の精度が向上すると、貯留ピット26内において、廃棄物26aの混合度を略均一にする際の積替の方法が選択しやすくなるので、いわゆるごみ質を均一化でき、廃棄物26aを焼却炉33に投入して燃焼させる場合において安定的な燃焼を実現できる。これにより、ボイラ蒸気量の制御が容易になるので、電力の安定供給を実現できる。
【0096】
また、一実施形態によれば、バケット253によって廃棄物26aを把持する際に把持が容易になったり、バケット253が転倒することを抑制できたりするため、把持部25の運転時間の短縮につながるとともに効率的な運転を実現できる。また、廃棄物26aの廃棄物レベルzを貯留ピット26内において略均一にすることができるので、把持部25におけるバケット253の上下方向(z方向)に沿った移動を低減できて、廃棄物処理施設3におけるエネルギー消費を低減できる。すなわち、貯留ピット26内における廃棄物26aの廃棄物レベルzを略均一化できるとともに、廃棄物26aの混合度を貯留ピット26内で略均一にして維持できる。
【0097】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0098】
例えば上述した一実施形態において、撮像部23を構成する少なくとも1台、好適には複数台の撮像カメラ231~234は、少なくとも1台をクレーンガーダ254の例えば下部に設けても良い。少なくとも1台の撮像カメラ231~234は、廃棄物26aの表面全体を撮影可能に構成するのが好ましい。この場合、例えば、投入ホッパ331を除いた貯留ピット26の略中央部などに配設することも可能である。
【0099】
例えば上述した一実施形態においては、貯留ピット26において、積替を行う基準でありレベル導出部111によって選択されて高低差Δhが導出される区画Sと、混合度を測定する区画Sとを共通の区画にしたが、必ずしも共通の区画に限定されるものではない。例えば、混合度を測定する区画の大きさを、高低差Δhが導出される区画Sの大きさ未満にしたり、反対に、高低差Δhが導出される区画Sの大きさを、混合度を測定する区画の大きさ未満にしたりすることも可能である。
【0100】
また、上述した一実施形態において人工知能を用いる場合に、機械学習の一例としてニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)を用いているが、それ以外の方法に基づく機械学習を行ってもよい。例えば、サポートベクターマシン、決定木、単純ベイズ、k近傍法など、他の教師あり学習を用いてもよい。また、教師あり学習に代えて半教師あり学習を用いてもよい。
【0101】
また、一実施形態においては、上述してきた「部」を、「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御回路に読み替えることができる。
【0102】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「その後」、「続いて」などの表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本実施の形態を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。すなわち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 ピット管理システム
2 ネットワーク
3 廃棄物処理施設
10 ピット管理装置
11,21 制御部
12 記憶部
13,22 通信部
14 入出力部
20 廃棄物貯留設備
23 撮像部
24,32 センサ部
25 把持部
26 貯留ピット
26a 廃棄物
30 廃棄物焼却設備
31 燃焼制御装置
33 焼却炉
111 レベル導出部
112 種類判定部
113 堆積情報生成部
114 クレーン制御部
115 混合度判定部
116 学習部
121 廃棄物レベル情報
122 種類情報
123 堆積情報
124 混合度判定モデル
231,232,233,234 撮像カメラ
241,242,243,244 測距センサ
251 荷重計
252 クレーン
253 バケット
254 クレーンガーダ
255 クラブ
256 走行レール
261 搬入領域
331 投入ホッパ